真・東方夜伽話

約束~満天の星の下で~

2009/01/07 04:25:50
最終更新
サイズ
57.42KB
閲覧数
1257

分類タグ

約束~満天の星の下で~

紅の羅宇屋

※始 紅魔の雑用からの注意※

色々二番煎じ気分です。
リグルが男の子です
文字数が28000・・・・・・一時間ほど暇なら
えろい部分が薄いです。前半ネチョ無しです。中盤でやっとネチョです。
チルノは馬鹿っぽくないです。英語できます。
リグミスです。珍カップだと思います。

以上を了解・確認できた方は下へスクロールしてくだし


※紅魔の雑用からの注意 終※










奪い合うのは人の性(さが)。
求め合うのも人の性。
想い続けるも人の性。

なら、妖怪はどうだろう?
求めることも、奪うことも、想うこともないのか?
・・・・・・否。

ただ、そこに恋があればこそ。
相手を激しく、優しく、求め合う恋が、あればこそなのだ。

だから、妖怪も求むのだと。
だから、妖怪も奪うのだと。
だから、妖怪も想うのだと。

・・・・・・だから、人も妖怪も、それを確たるものにしようと、約束を交わす。

求めているから。
奪いたいから。
想っているから。

たとえその恋がかなわなくとも、約束で縛ってしまえば―――――――――――――













「ほら、ミスティ! こっちこっち!」

紅魔館を畔に置いた、巨大な湖。
気温は常に十度を下回り、冬は氷点下を切らぬときは無いとのこと。
馬鹿で意地悪と悪評を買う氷の妖精が仕切っている。

「ま、待ってリグル。速過ぎよ」

その湖を囲むように広がる、鬱葱とした森。
暗い所為で、いっそう怪しく見える。

「ミスティが遅いだけだって!」

白く靄のかかる、獣道のひとつ。
リグル・ナイトバグは進んだ。・・・・・・ミスティア・ローレライを連れて。

目的は、彼の見つけた秘密の場所へ、彼女を案内すること。
彼自身は何度も行っているらしく、心配は要らないらしい。
実際ここは妖怪・・・もとい幼怪の遊び場となっていて、それほど心配事も無いそうだ。

「ほら、こっち――――――っわ?!」

器用に進むな・・・と思っていると、彼は唐突に姿を消した。

「ちょ、リグル――――――――?!」

急いで追いかけると、そこに足場はなかった。

「えっ、えぇ、えぇぇぇぇぇ―――――――――?!」

ずずずずずっ!
土に滑り、急降下していく。
混乱していて、空を飛ぶどころではなかった。

やがて落ちた先は、平地とは思えない場所だった。

「山、じゃないよね、ここ?」
「森、よね・・・どうしてこんなところが・・・・・・?」

彼の連れてきたかったところは、ここではないようだ。
しかし、思いのほか彼女は楽しんでいた。

「まぁいいじゃない。・・・・・・ほら、空見て」

草木は眠らぬ子の一つ。
星の瞬くその夜に、空を仰ぐは妖二つ。

「うわぁ・・・・・・綺麗だね、ミスティ」

蠍に殺され、星となった英雄。
英雄を殺し、星となった蠍。
天は我が物と君臨する獅子。
悲しき死を遂げた熊の親子。
道楽貴族に使い捨てられ、星となった高貴な水瓶。
何人も狩れぬ魔物を討ち取った弓使い。今は蠍を狙っているそうな。

逸話こそ美しいが、形など理解できるものはそう多くない。あって英雄くらいだ。
蠍などどこに見えるのやら。

満天の星空とは、真に明かりの無い場所でのみ見ることが適うもの。
馬鹿みたいに明かりのある場所で見えるものではない。
その点を挙げると、幻想郷はすばらしい星見の場だ。
現に一度人間がそのためだけに入ってきたこともあるほどに。

「・・・・・・すごいよ、ここ・・・・・・」
「リグルが連れて行きたかった場所と、どっちがすごい?」

彼女はふざけて、彼に訊く。
それに彼は笑って答える。

「当然、こっち」

その笑い顔は、優しかった。
彼女の知っている白黒魔女とは、まるで正反対。
静かで、それでいて内に秘めた活発さ。
悪く言うなら、一時の落ち着き。

彼女には、それが、眩しかった。
綺麗だ、と思えた。
格好良い、とも思えた。

「―――――――!」

確かに感じる、確かに聞こえる。
今までうっすらとしていたものの輪郭が、その存在を靄から晴らした。
―――――――――――恋、だ。

「・・・・・・そろそろ、行こうか」

彼のいつも見せる快活さを、
彼の時折見せる哀しい顔を、
彼の持ち前の優しい性格も、
彼の隠していた努力さえも、
彼女は今、愛しいと感じた。

「あ・・・うん」

その時間を惜しむように、彼女たちはその場から(魔法が何故か働かないので、よじ登って)立ち去った。
二人の爪は割れこそしなかったものの、土が入り肉に食い込み、相当染みるようだ。
血が際限を持って流れ出ている。

「いったぁ~・・・ね、チルノの湖に行って洗おうよ」
「え? あぁ、そうね」

辿り着いたのは五分の後。さすがに急いでいたので復活した魔力を使い、空を飛び湖までの道のりを短縮した。

「やっぱり冷たいわ・・・・・・」
「仕方ないよ、チルノの湖だもん」

氷の湖・・・・・・普段は霧で覆われた陰湿な湖だが、今夜は驚くほど晴れている。
ぱしゃぱしゃと水を浴む二人。
他から見れば手を洗う少女たちにしか見えないが。

リグルは、ここに来た頃からずいぶん成長したように見える。
見た目は非常に、少女のようだ。童顔だ。ベイビーフェイスだ。少女と思われて仕方ない顔だ。もって生まれたものは誰にも変えられない。
仕方ないかと今までもあきらめ続けているので、それほど苦しくはない。
男の子としてではなく、対等の妖怪として扱ってくれる友達もできた。
――――――――――――当然、片思いの相手も。

「ちょっと! あたいの湖だから冷たいって、どういう意味なの?!」
「まあまあ、チルノちゃん」
「落ち着いて、チルノ」

冬の妖三人衆、登場。
一人は馬鹿、一人は季節限定、一人は空気。
モットーは『白く! 冷たく! ほっそりと!』との噂。

「あ・・・チルノ」
「・・・・・・リグル・・・・・・」

馬鹿だと思っていたチルノは、それほど馬鹿でもないようだ。
証拠に、恋する乙女の顔をした。

「ごめんなさいね、お邪魔してしまって」

ふとましい―――――もとい、グラマーなボディラインを持つ女性、レティ・ホワイトロックは通称『冬の忘れ物』。『黒幕』とも呼ばれる。冬の間チルノが比較的おとなしいのも、彼女のお陰といわれている。

リグルとミスティは手を(服で)拭く。
リグルはチルノの表情に首をかしげ、ミスティは見えなくなっている大妖精を目で探している。さすが空気、無意識で行動しているかのような影の薄さ。

「レティ、帰ってきてたんだ」
「ええ、チルノが心配だったから」
「あぁ、なるほど・・・・・・・・・」

チルノのお姉さん的存在・・・それがレティ。
その分、チルノの中で巨大な存在となっている。
離れている間は当然チルノは寂しいわけで、それは大妖精も埋められない。

「ねえレティ、今年はどれくらいいられるの?」
「んー、そうねえ・・・いつもどおり、雪を掘ったら土筆(つくし)の芽があるくらい、暖かくなるまで、かしら?」
「た・・・例えがややこしいよ!」
「なに言ってんのさリグル! つまり、雪を掘らなきゃレティは長く居てくれるってことなのよ!」

それも違うと思う・・・とリグルは突っ込めない。
相変わらず、ミスティは大妖精を探している。

「チルノ、大妖精は?」
「え、あ・・・・・・どこにもいないのかな? おーい、大ちゃーん」

チルノが呼ぶが、戻ってくることも声が返ってくることもない。
不審に思い、レティにどこに行ったのか聞いてみたが、

「大ちゃん? あら・・・・・・どこに行っちゃったのかしら?」
「・・・・・・もう、大ちゃんてば・・・・・・」

レティはふと思い出す。
チルノの、リグルを見つめる瞳を。
そしてそれを見つめる、寂しげな大妖精を。

「・・・・・・あらら・・・くすくす・・・・・・」

大人の女性だけに許される、含みのある笑み。
どうやら、レティは察したようだ。

「幻想郷も、そろそろ春かしら・・・」

いやいや違うから。
春なのは頭の中だけ。

しかし、それは二月の半ばの話。
それほど、遠くないかもしれない。

彼女の生きる場所が冬ではない。
彼女が、冬に生かされているようなものだ。
季節が来れば、冬について行かなくてはいけない。

それは、春にいれば、消滅するということ。
それは、氷の妖精と離れなくてはいけないということ。
それは、幻想郷に、別れを告げなくてはいけないということ。

湖の冷たさ、嫌いではないがそれでは足りない。
氷点下の世界で彼女は生きているのだ。
雪か、零度以下。それが彼女の生きる条件の一部なのだ。

彼女にとって、チルノの春を見られないのは至極残念なことだが、今はチルノの成長を称え賞賛することが先だろう。恋をできるほどに、『女の子』になったのだから。

「わっ?! レティ、どうしたのさ!?」
「別に? 私の好きでやってるだけよ?」
「やめてよレティ、子供みたいだから!」
「いいじゃないの、私にとってはずっと子供みたいなものよ」

優しく、冷たい手で冷たい髪を撫でる。
おめでとう、と。

「そ、それよりレティ! 大ちゃん探しに行こう!」
「え? あ、私が行くからチルノはこの子達といたら・・・」
「なに言ってんの! 大ちゃんがいなくなってるんだから、探しに行かないと!」

本当に友達思いね・・・と、またレティはチルノの頭を撫でた。

「わ・・・なんかレティが変よ。まあいいわ、じゃあね! リグル、ミスティ!」
「ぁ・・・じゃ、じゃあね、チルノ」
「バイバイ」

夜蟲と夜雀と氷精は手を振りあい、氷精が湖の中心に向かって飛び立っていった。

「待ってチルノ、置いていかないで~」

・・・・・・・・・『冬の忘れ物』を忘れていったようだ。


宵は未だ丑の刻。そろそろ草木も体を折り曲げ始めるころ。
月も妖しさを失い、徐々に冷たくなっていった。
取り残された二人は、そこからでもよく見える星を仰ぎ、呟いた。

「ねぇ、リグル」
「ん?」
「・・・・・・また、行こうね」

小さく、決意を込めて。
小さく、覚悟を決めて。
小さく、恋心を秘めて。

「・・・うん」
「約束だよ」
「・・・・・・うん」

彼女と彼は、静かに、約束した。
今度来るときは――――――――とも、考えている。
また、あの場所へ行こう。
星を二人で、見上げよう。
冗談など微塵も感じさせない、完璧なまでの『約束』。









今年の冬は、いつもより暖かく、春は例年より早く訪れた。
巫女や魔女には願ってもない朗報。
幽霊は異変のタイミングを誤ったと悔恨。
薬師はこれが生涯三度目の温暖化だと言っていた。
山はいつも以上に騒がしく、地底は異常なまでに静かだ。
そして氷精は、氷の湖で泣き腫らしていた。
それさえも凍らせようと、湖は冷たさを増していく・・・・・・残酷なまでに。

「行かないでよ、レティ! まだ四月にもなってない!」
「ごめんなさいね、チルノ。私もいたいけど、冬は待ってくれないから」

一年に一度、チルノにとっておそらく一番辛い日の一つだろう。
――――――――そう、レティの見送りだ。

大妖精は湖の哨戒へ出かけている。一応、紅魔館の管轄なので、住まう代償として部下の妖精と湖の見回りを義務づけられている。今日はレティが旅立つ日ということで、湖管理の責任者――――――チルノの上司――――――がチルノだけを見送りに行かせたのだ。

「ここなら一年中寒いし、レティも困らないよ!」
「そういうことじゃないの。私は、『冬の最後についていく』ことが存在意義なの。そうでしか生きていけない妖怪なのよ」

『冬の忘れ物』たる理由、悲しい性・・・一つ処に長く留まれないレティは、チルノや大妖精以外に殆ど友達がいないのだ。一年、世界を回りやっと幻想郷で半年の休暇がある程度・・・意外と忙しいのだ、冬の妖怪は。

「・・・・・・レティ! 何年も、何年も同じ事の繰り返し・・・もう嫌なの! レティが望むなら、この場所を一年中冬にしてもいい! だからッ、だから・・・!」
「・・・・・・・・・チルノ」

彼女は微笑んで、氷精をその冷たい体で抱きしめた。

「私なしでも、ちゃんと生きていられたでしょう?」
「でも! それは、レティが・・・・!」
「私は毎年、同じように来てるわよ? でも、今年は少し早かっただけ。もうしばらくしたら、冬だけの世界になる・・・永琳も言ってたじゃないの」

温暖期のあとの氷河期・・・の事だろうか、さすが齢数億は時間感覚が違う。
その『もうしばらく』が、幾百幾千、或いは幾万年とは微塵も気づいていないレティ。永琳の年齢を知らないのかもしれない。

「それに、貴女のことだもの、ひょっとしたら私込みでデートなんてしちゃうかもしれないし」
「そっ、そんな事しないわよ!!」
「くすっ、冗談よ」

レティはチルノから離れ、そして進むべき方向を見据え、チルノに最後の言葉をかける。
まるでそれは姉。
まるでそれは母。
そして・・・・・・唯一無二の友。

「私なしでも、立派に一人前の恋をしてみせたじゃない・・・・・・今度来るまでに、決着がつくといいわね」
「レ、ティ―――――――」

さよならも言わず、また言わせず、寒空へと飛び立っていった。
さよならなんかは言わないわ・・・なんて格好つけた気障な台詞だろう。
しかし、彼女に湿っぽいのは禁物だろう。そんな気が、チルノにはした。
だから、最後の言葉は噤んだ。心の中に、留めてしまって、鍵をかけよう。

「ありがとう、バイバイ、またね――――――――」

彼女が聞こえていないなら、言ったことにはならないはずだ。
きっと、そうだ。







「チルノ!」
「あ・・・・・・リグル」

数分遅れて、リグルは舞い降りた。
息を切らし、この寒空の中全力で飛んできたのがわかった。
肩で息をするリグルに、チルノは問う。

「どうして、ここに・・・?」
「はぁっ、はぁっ・・・・・・れ、レティは?」

答えを聞いた途端、彼は愕然とする。

「え・・・・・・もう、行っちゃったの?」
「うん・・・でも、どうして?」
「まぁ、レティはボクの相談にも、乗ってくれたし・・・・・・見送りくらい、したかったから・・・」

残念そうにうつむくリグル。
それにつられてチルノも悲しそうな顔になる。

「チルノ・・・・・・?」
「バカリグル・・・あんたがそんな顔してるからよ・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

リグルは感じた。
我慢していたのだと。
或いは、言葉のあやで言いくるめられただけで、ほんの一瞬納得しただけなのではないか、と。

「チルノ・・・・・・」
「折角、泣かないでいいかな、泣かなくて済むかな、って、思ったのに・・・・・・馬鹿、馬鹿・・・!」
「・・・ごめん・・・」

レティの見よう見まねで、チルノを慰めようと、抱きしめた。
友達が泣いているのに、黙って立ち尽くしていられるほど、リグルは冷たくなかった。
つまりは、彼は優しいということだ。

「・・・・・・な、なによ・・・」
「泣いていいよ・・・・・・我慢してたんでしょ」
「だから、あんたの所為だって・・・・・・」
「だから、こうやって慰めてるんだよ」

チルノは驚き、リグルから離れようとした。
しかしリグルの力は意外と強く、今のチルノの体制では剥がせるほど力は出ない。

チルノの肌は固まった雪のように冷たく、髪は冬の神社の氷柱ほど痛い。
肌の周りに氷の破片すら見て取れる。
触れているだけで凍傷にもかかりそうなチルノの体。
彼はそれを今強く抱いている。当然、身体が無事なわけがない。

「っ、リグル! あんた・・・・・・!」
「大丈夫だから」

徐々に芯から冷たくなりつつあるリグルの腕。
普通に過ごすだけなら問題ない程度に薄着だが、零下何度かわからないほど冷たいチルノの体を抱きしめているのだ。大丈夫なはずがない。

「何言ってんの?! そんなことしたら・・・」
「大丈夫だから」
「そんなわけないでしょ! 放して!」
「チルノは、いつも辛かったんだ。僕だってこれくらい、分けてもらっても罪は無いはずだよ」

自分の体の恐ろしさは、チルノ自身が一番わかっている。
当然、このままリグルが抱きしめ続けていれば何が起こるかも。
無理に力をかければ、凍傷寸前の腕を引き千切ることになるのも。

「馬鹿! あんたにそんなことしてもらわなくてもいいのよ!」
「じゃあさっきの涙は?!」

チルノは息を呑む。
答えられない。
レティがいないことを、確かに彼女は悲しんでいた。
いつも、心のどこかでレティを探していた。

「・・・・・・それ、は・・・・・・!」
「やっぱり、レティがいないのは寂しいんでしょ?」
「だったら何?!」

何かを覚悟した顔で、彼は呟いた。

「・・・・・・約束するよ。レティがいない間、僕が代わりにいてあげる」

一度体を離して、彼女の手をとり、固く誓う。

「・・・・・・ほんと?」
「・・・うん、本当」

恋ではなく、同情で。
しかし軽いものでもない、並の思いでは出来ない。

悲しいからといって、逃げていいわけではない。
しかし、目の前で、片思いの相手が自分の逃げ道を示してくれている。
だから彼女は、逃げようと思った。
彼が傍にいてくれるなら。
たとえそれが同情であろうと。
いつか、自分に振り向いてくれるだろうと信じて―――――――――――――。






季節はめぐり、春が訪れた。花は競うように咲き乱れ、人々は花見に興じ、妖さえも酒を片手に飲めや歌えやの大騒ぎ・・・・・・・・・神社は妖怪や人間がごった返す始末。

「やっぱり、夜っていっても割にいるわねぇ・・・・・・」
「そうだね・・・まあ、妖怪しかいないだけマシなんじゃないかな」
「紫さまと藍さまはいないよ。紫さまは寝てるし、藍さまは結界の巡回に行ってるから」
「ま、注文なんてしてくるやつもいなくて私は嬉しいけど」

リグルとチルノとミスティと橙は、いつものように集まった。
今日は、人間や強すぎる妖怪を避けるために、夜桜で花見をする事にした。
チルノとリグルが同時に現れたのには少し不安を覚えたミスティ。レティの一件を知らない彼女は、リグルとチルノがとても仲良くしているように見えた。

「『あたいたち』は重箱、一緒に作ったのよ。あたいはほとんど、何もしてないけど」
(ぇ・・・・・・? あたいたち・・・・・・?)
「ミスティは?」


この花見は、各自食べ物と酒を持ち寄るルール。橙は自分の持って来たものを出そうと、袋を抱えそわそわしている。

ミスティは『あたいたち』と言う言葉にショックを受けていた。いや、ショックと言う言葉では到底、言い表せないだろう。
つまりそれは、今日一緒に行動していたということ。
そして、チルノのために重箱まで仕立てたという。
 胸の奥に、小さな痛みが、また溜まった。

「ミスティ?」
「っあ! うん、どうしたの?」
「いや、ミスティは何を持ってきたのかなぁって・・・・・・大丈夫?」
「別に大丈夫よ。えぇと・・・焼酎と焼き鳥を持ってきたわ」

先程焼いたばかりでまだ湯気の立つ焼き鳥の入った重箱と、酩酊と思わしき焼酎を大きめの鞄から取り出した。
下を向いている彼女は、どこか寂しく見えた。

「ありきたりというかミスティらしいというか・・・・・・」
「な、何よ! うちにはこれくらいしかないわよ! 悪かったわね!」
「でも、お花見にはお酒とおつまみだよ。ミスティ、気にしないでいいって」

声をかけつつ、ミスティを覗き込む橙。
はぁ、と溜息をついていたミスティは、ただそれだけでは醸し出せない、不安と動揺が感じられた。

(うにゃぁ・・・・・・ミスティ・・・・・・)

振り向かないのは知っていても、想われないのはわかっていても、橙はミスティを想い続けている。
想い人の想い人は、途端に仲良くなった氷精と互いに食べさせあっている。彼は少し哀しそうだが。

「ほら、リグル。あーんして」
「あ、あーん・・・・・・」

見ていられない、と橙は目を離しミスティへ目が向く。

「―――――――――!!」
「っ?! み、みす、てぃ・・・・・・」

涙こそ出ないが目を見開き、「ぁ・・・・・・ぁ・・・っ」と声を漏らしている。
その目は、虚ろに見えた。切なそうにも、見えた。

「リグル・・・・・・リグル・・・」
「み・・・・・・みす・・・」

声が出ない。
ミスティ、その一言すら絞り出す事ができない。
入り込む隙は、ないのか。
悲しく見えるその瞳は、橙の一言すら感じる事はできないだろう。

どうしようもなく、ミスティは一人だった。

「あーん」

自分から口をあけるチルノ。

「はいはい・・・」

リグルは渋々と箸をチルノへと運ぶ。

「むぐ。うんうん」

納得したように頷いて、チルノはにっこりと笑った。

(ミスティ・・・・・・・・・)
(ごめん・・・・・・)

二人が、彼女を心配しているのを知らず、彼女は一人になっていた。








幻想郷の梅雨は、比較的短い。
梅雨前線がどうのこうのというより、『梅雨』という自然概念が幻想入りしていないせいだろう。

「あ、橙」
「・・・チルノ?」

氷の湖を越えて、山にでも暇つぶしに行こうと考えていた橙。
あの日以来、ミスティはあまり外出していないようだ。やはり、リグルとチルノの一件が響いているのだろうか・・・いや、確実に響いているだろう。

「ちょうどよかった。あんたに話があったのよ」
「は・・・話?」
「ミスティの事でね」

ミスティ。
その言葉に橙は反応し、ぴくりと耳を震わせる。

「どうして・・・ミスティがあんなに落ち込んでるのか、知ってるの?」
「たぶん、だけど・・・あたいが、リグルと一緒にいるからじゃないかな・・・って思ってるの」

知ってるならなんで、と思う。
そしてチルノは、自分とリグルの約束を話した。
そして橙は知った・・・チルノがどれほど寂しかったか、どれほどリグルに恋していたか。
そこまでして欲しいものなのか、などとも考えてしまう。

(・・・・・・違う違う! きっと私だって、同じ状況だったら・・・・・・)

きっと、ミスティに甘えていただろう。

「それでね・・・・・・あたい、少しでもミスティを慰めたいけど・・・でも、その・・・」
「・・・リグルを取られた、って考えてるミスティに受け入れてもらえるか・・・ってこと?」

こくん、と小さくチルノは頷く。
本当に、申し訳なさそうに見える。いや、そのとおりなのだろう。

「橙、ミスティを慰めてあげられない?!」
「え、えぇ? 私?」
「うん。あたいじゃ駄目だろうし。それに・・・」

とん。
チルノの冷たい指が、橙の胸元に触れる。
そして笑って、

「ミスティと一緒にいられるでしょ?」

びくっ!
橙の身体が震える。
確かに、実質慰められなくても、自分とミスティは一緒にいられる。
あわよくばミスティを慰め、自分と言う存在を求めてくれるかもしれない。
ローリスクハイリターン、とはこのことだろう。

「・・・わかった、私、やってみるよ!」
「本当? ありがとう、ミスティ。恩に着るわ」
「ううん、私もミスティのそばにいてあげたいから!」

山に向かっていた身体を反転させ、迷い家へ一直線。

「じゃね、チルノ!」
「うん、またね!」

全速力で飛び出す橙。
それをみて、チルノは楽しそうに笑った。

「・・・・・・ふふっ、流石あたい、天才だわ」

うまくいけばミスティは、リグルの事をあきらめる。
罪の意識にとらわれることなく、リグルは自分のそばにいられるだろう。
計算ずく、ということらしい。


馬鹿なのは外面だけ・・・なのだろうか。







「・・・・・・なるほどなぁ・・・・・・」
「はい、そういうことなんです」

迷い家。
橙が使役しようと野良猫を集めているがちっとも懐かず、周りばかりにたかるようになってしまった、八雲一家の家。
そこで、八雲 藍は腕を組んで考え事をしていた。
しかし内心、

(ちぇぇぇええぇぇん! どうして、どうしてあの夜雀なんだ!)

と狼狽気味。
せめてもっとマシな奴なら・・・と心の中の藍は頭を抱えて叫んでいる。
当然内容は、ミスティが家に来る、そして橙はミスティに恋しているということ。
家に飛び帰った橙の相談を受け、藍は非常に困惑していた。

「藍さま?」
「あ! い、いや、その・・・まぁ、やさしく接してあげるんだぞ。じゃあ私は、少し台所で洗い物でもしてくるよ」

と、ありきたりなアドバイスを施し、そそくさと去っていく藍。

「え、あ、藍さま・・・」
「ふふ、藍ってば薄情なんだか、恥ずかしがりやなんだか」
「ふぇっ? 紫さま・・・?」

橙が振り向くと、そこには黒紫のスキマから上半身を出して不敵に笑う、金髪の女性がいた・・・・・・スキマ妖怪、八雲 紫だ。
外の世界につながりを持つ彼女は、外の道具も数多く揃えていたりする。

「ねぇ、橙?」
「あ、は、はい、何ですか?」
「・・・そのミスティって子のこと、好きなんでしょ?」

言われて、顔を紅くして俯く橙。
くすくすと紫は、それを見て笑っている・・・からかうようではなく、恋に目覚めた娘を見る母のような笑顔で。

「あらあら・・・・・・橙ってば、可愛いのね」
「うぅぅ・・・・・・」
「あのね、橙。そういうのは・・・・・・」

スキマから這い出し、橙に四つ這いになって迫る。
その動きの艶っぽさにあてられ、橙はさらに赤面していく。

「・・・こうやって迫って、押し倒して・・・・・・」
「ふにゃぁぁ?! 紫さま、やめてください・・・!」
「・・・無理やり、犯っちゃえばいいのよ。何なら、お手本を見せましょうか?」

その顔を近づけ、妖しく、そして艶かしく微笑む紫。
何か誘われるような未知の感覚に、橙は口を半開きにして「うにゃぁ」と呟いていた。
下腹部に不思議な、熱いものを感じつつ。

「・・・・・・クス、冗談よ。その感覚、ミスティにとっておきなさい」
「・・・はい、紫さま」

この女性には、何でも見透かされているのか。
そんな錯覚にも陥るほど、彼女はつかみどころのない性格をしていた。
ふわふわとした感覚を体に残して、橙は口を開く。

「紫さま・・・あの、」
「ふふっ、リグルに連絡しておくわね」

本当に、何でも見透かされているのではないか・・・いや、自分の式の式のことなど手に取るようにわかっているのだろう。
やはり紫は、くえない女性だった。

「はい、えと、お願いします」
「お願いされたわ。ちゃんと犯るのよ?」
「ふぇっ?! いや、そのっ・・・・・・」
「冗談よ。橙の好きにすればいいわ」

くすくすと笑い、スキマを開いてどこかへ消えていった紫。
それを見ていた橙は、まだ治まらない動悸をどうしようか・・・と、紫に迫られた体勢のまま止まっていた。

「ミスティのために、とっておきなさい、かぁ・・・・・・」

どきどき、と脈打つ心臓のある部分・・・胸を手で押さえ、その激しさを再確認。
どれだけミスティが好きか、というのをそれで表せるのなら、橙は今誰よりもミスティを想っているだろう。





短すぎる露の所為で、まだ春の陽気が抜けきらない幻想郷。
宵の少し眠い身体をおして、ミスティは迷い家へ向かっていた。
「橙から大事な話がある」と紫に言われ、少し怪しみながらも橙が待っているらしいので、しぶしぶ彼女は空を飛んでいる次第。

「はぁ・・・こんな日はゆっくり寝たいなぁ・・・」

ため息をつき、目印となる魔法の森の小路をそれなりの速度で抜ける。これでも夜雀、鴉天狗に及ばずとも相応のスピードはある。
そのまま一里ほど飛ぶと、目指す先は見えてきた。
いつにも増して怪(妖)しい雰囲気を持つ、猫が周囲12尺を境に大量に群がっている和風作りの建物、迷い家。ミスティはうぅむ、と首をかしげて玄関へ降り立った。

「いつもより怪しいなぁ」

つぶやいて、彼女は軽くノック。
パタパタと音がして、すぐに猫又は現れた。

「あのスキマに呼ばれたんだけど」
「私が頼んだの。さ、あがって。お茶とか用意するよ」
「え? あ、えぇ、わかったわ」

そして橙はミスティを先導し、廊下を歩き始めた。

「そういえば、大事な話って?」
「・・・・・・まぁまぁ、焦らないで。眠いのはわかるけど」
「うぅん・・・・・・できれば眠いのが覚めるやつがいいなぁ」
「コーヒーとか紅茶とか?」
「コーヒー・・・ミルク入れてよ。あと砂糖も」
「うん、わかった」

話している間に、和室のひとつに通されるミスティ。割と綺麗な部屋で、部屋の奥には意味不明の掛け軸まである。

「適当に座ってて。飲み物用意してくるから」
「うん」

また、パタパタと小走りで去っていく。
その動きは、どこか嬉しそうだった。

「・・・・・・・・・?」

それにミスティは訝しみつつ、部屋の壁を眺めていた。














ぽたっ。

スポイトからまた一滴、橙はミスティのマグに垂らす。
中身は媚薬。それほど強力ではない。紫の、いらぬ気遣いだ。

ぽたっ。

もう、適量だろう。手を離し、ビンの中にスポイトを戻した。
そして、コーヒーメーカーから作ったコーヒーを注ぎ込む。藍の、温かい気遣いだ。
そしてそのコーヒーに、暖めていたミルクを入れた。橙の、ミスティに対する気遣いだ。

「・・・・・・ちゃんとできるかなぁ・・・・・・?」

盆へ乗せ、橙はパタパタとやや急いで歩き出した。





(不思議・・・あんまり手入れされてないようで、実はかなり行き届いた手入れが為されてある。・・・・・・あそこの鳥形の細工なんて鳥そのもの・・・すごいなぁ)

インテリアに詳しいのか、ミスティは部屋のさまざまな場所を食い入るように見ている。

「・・・・・・ミスティ?」
「ひゃっ! あ、橙。ありがとう」
「どうしたの? 壁ばっか見て。なんか面白いものでもあった?」
「んー、まぁ、そんなとこ」

コーヒーとビスケットを乗せた盆を机に置く。
そして、二人は座り、湯気の立つコーヒーを手に取った。
ホットミルクを入れている所為か、温度は落ちていない。
ゆっくりと啜り、ミスティは息をつく。

「・・・・・・ねぇ、橙」
「?」
「大事な話って・・・・・・?」

そうなのだ。
今宵、ミスティを呼び出したのは『大事な話があるから』。決してコーヒーメーカーを自慢するためではない。
既に橙は、コーヒーを幾らか口にしている。
微かに火照る感覚を覚えつつ、ミスティへとすり寄っていく。

「あのね、ミスティ・・・・・・」
「う、うん」

そのときミスティには、橙が「女」に見えた。
その尻尾の動きにさえ、艶かしさを感じた。
僅かに紅潮した顔も、艶やかさを垣間見た。
やや蕩けた瞳も、怪しく笑うように見える表情も、自分に近付くその身体の曲線さえも。
・・・・・・綺麗だ、と。

「私・・・ミスティのこと、好きなの」

言葉に詰まることはない。
薬の所為か、気持ちをぶつけることに躊躇いを感じなかったようだ。
さらにミスティへ身を寄せ、今にも口づけせんとばかりに顔を近付けた。
橙の表情は、覚悟に決まっていた。

「・・・・・・・・・え?」

しばらくの沈黙の後、口を開いたのはミスティ。

「私のこと、好き、って・・・・・・?」
「うん、そうだよ」

こくん、と頷く橙。
その事実に、ミスティは困惑することしか出来ない。

(いや、だって、そんな、女の子同士で、好きなんて・・・・・・)

目の前で、息を呑んで自分の答えを待つ、橙。
何とか、答えないと・・・と、頭の中で必死に考えをめぐらせる。
理解できた、といえば嘘になる程の浅い理解で、彼女はなんとか言葉を返した。

「・・・私、好きな人がいるの!」
「・・・・・・知ってるよ」

途端に、橙の目は悲しくなる。
しかし、視線を落としたりはしない。じっと、ミスティだけを見つめている。
・・・・・・そして、橙は微笑んだ。

「知ってる。私だって、馬鹿じゃないもん。でも、私・・・・・・少しでもミスティに悲しい顔はさせたくないから・・・・・・だから、代わりでも、私がそばにいるよ」
「橙・・・・・・」
「ミスティ、私がいるから、泣かないで? 私が全部、守ってあげるから」

正直、橙の気持ちには困惑している。
だが、本気だということはわかった。
ただ、彼女は逃げる事はしたくない。
彼への気持ちは、軽くはないから。
彼女もまた、覚悟を決めて言葉を返す。
今度ははっきり、理解して。

「ごめん。私も、リグルには本気なの・・・橙の気持ちはわかったわ。でも、私は・・・逃げたくない」
「・・・チルノとリグルが、一緒にいても?」
「うん。今橙に頼ったら、自分の気持ちに嘘ついたことになる・・・それに、私は約束してるの」

馬鹿らしいけど、事実。
どうでもいいかもしれない。
軽い、口約束のようなもの。
それでも、彼女にとっては『約束』。
かけがえのない、彼との。

「『また、あの場所で星を見ようね』・・・・・・て、口に出したら結構恥ずかしいね」
「・・・・・・ぁ・・・」

橙は、痛感した。
居場所はない・・・彼女の心に、自分の入り込む隙など、微塵もない。
・・・・・・友達、以上にはなれない・・・ということだろう。

(――――――――――――――それでも!)

諦めきれない?
未練がある?
悔しい?

違う。
「見返りを求めること」が恋なら。
「幸せを願うこと」が愛なら。
橙は、ミスティを愛している。

泣かないで欲しい。
笑っていて欲しい。
幸せでいて欲しい。
願うことくらいは、許されるはずだ。

「ミスティ―――――――――」
「橙? んっ・・・・・・」

しかし、だ。
なぜ、幸せを願うとこうなるのか。
橙自身にもわかっていない。
気がつけばミスティに口づけていたのだから。

「・・・ん」
「・・・・・・ッ・・・ちぇ、ん・・・?」

咄嗟に唇を離した事を、後悔した。
・・・もう、引き返せない。

「んぅ・・・・・・!!」
「ふっ・・・ん・・・」

あんな表情の、ミスティを見てしまったら。
引き返す気など、起こるはずもなかった。

「ん・・・ふぁっ?!」

薬で高揚しているのもあるだろう。
だが、橙には、そんなことはどうでもよかった。
ただ、欲しい。
ミスティが、欲しい。
 押し倒し、彼女の口内へ侵入する。

「ちゅ・・・んぁ・・・っ、ふぅ・・・・・・」
「んんっ、んくぅ・・・!」

力などはいるはずもない。
快感に悶え、薬がそれを後押しし、逃げ道などないとわかっている。
それでもなお、彼女は逃げようとしている。
――――――――――本物、なのだろう。リグルへの気持ちは。
でも、いまさら止まれない。
この気持ちに、流されてしまおう。

「んんっ・・・・・・ぷぁ。・・・・・・ッ橙、どうして・・・!」
「わかんないよ。自分が何してるかもわかってないし」
「だったら―――――!」
「でも、これ」

と言って、指差すのは湯呑み。

「媚薬入ってる」
「入れたの?」
「・・・・・・紫さまが『砂糖の代わりに』って、勝手に」

軽く冗談。というか嘘。
紫はそんなまどろっこしい事をしない。
しかし、ミスティはそれを知らなかった。

「・・・・・・それに、ミスティも・・・我慢できないんじゃないの?」
「ぅ・・・できるわ。がまんできなくなったら一人でするし」

事実、相当ミスティもきている。
我慢の限界も近い。
限界を超えたとき、自分が何をしでかすかわかったものでもない。
・・・・・・今、彼女はリグルへの想いだけで均衡を保っているようなものだ。

「そんなことしなくても・・・私がしてあげるから」
「や・・・っ、橙、何か変っ、だよ・・・・・・ひゃんっ!」

橙が、ミスティの首を甘噛みした。
・・・・・・ぴくり、と震えるミスティ。
媚薬効果で、相当敏感になっているようだ。

「大丈夫。私に任せて・・・ね」
「んやぁ・・・っ、ちぇん・・・・・・」

確かに・・・橙とミスティの媚薬の現れ方が違う。
ミスティは敏感に、橙はやや心持ちに余裕が。
・・・紫の取り計らい、だろうか?

「くぅん・・・あぁ・・・ふぁ」

くちゅ、ぴちゃ・・・・・・じゅるっ。
ただ軽く噛むだけの行為が、次第に淫靡になっていく。
それにあわせるように、ミスティの声は甘く、切なくなる。
もう、彼女も止まることはないだろう。

「んんっ。くふぅ・・・っひぁぁ」

橙は、ミスティの上着を慣れた手つきで剥がし、ブラウスの下に手を伸ばした。
薄く、まだ膨らみかけて間もない胸を優しく撫でる。

「やぁ・・・んぁ・・・っ、ちぇん・・・」
「ミスティ、今だけでいいから・・・」

せめて、この刹那を、自分のものに。

今だけは、彼女に素直になろう。
今だけは、彼女を求めてみよう。
今だけは、彼女を想っていよう。

この気持ちが、『恋』でなくなる・・・・・・『愛』になる前に。

その先の突起をつねり、薄くつまみ、撫でる。
下から、鎖骨も優しく愛撫した。
・・・・・・わざと淫靡な音を立て、反対の鎖骨を舐めた。

「っひあぁ・・・くぅん・・・んんっ、ふぅ・・・」
「ぴちゅ、ぅん。ふっ・・・ぴちゃ」
「やぁん・・・おと、っ・・・たてちゃぁ・・・ひぁあっ?!」
「・・・わ、もうべとべと」

橙はミスティの秘部を軽く触る。
媚薬の効果もあってか、すでにそこは濡れそぼっていた。
軽く触れるだけで、くちゅ・・・と卑猥な音を立てるそこは、快感を求めてひくついている。

「ふぁぁん・・・・・・せつないよぉ・・・」

せがまれている・・・・・・と感じた橙は、こくりと小さく頷いた。

「・・・ミスティ・・・」
「・・・・・・・・・ッぁぁぁああぁっ!」

処女膜を破らない程度に、指で膣内を掻き回す。
そもそも、指で届くような場所に処女膜などありはしない。
垂れる愛液は、畳に吸われていく。

「んっ! あっ! やぁっ・・・くぅん! ちぇんっ、ちぇん!」
「もっと、もっと・・・気持ち良くなって、私の指で・・・!」
「ふあぁっ、んぁう! きもちっ、いい・・・! いいよぉ!」

息を乱し、身体を反らして悶えるミスティ。

寂しい、などという感情はすでに通り越した。
ミスティは、リグルとの『約束の場所』があるという。
チルノもおそらく、『約束』によってリグルをつなぎとめているのだろう。

(・・・・・・悲しくなんかない。私は、ミスティが幸せなら、それで・・・・・・)

嘘はついていない。
自分をしっかり見据えて、彼女は答えてくれた。
安易な拒絶もしない。

・・・強い。彼女は、おそらく彼に恋したから、強くなったのだろう。

彼も、また随分と色々な面で強くなっている。
なにかに、努力を惜しまない。必死で、向かってくる。

それが、彼女を強くしたのだろう。
求めているから・・・・・・リグルと、一緒にいたいから、ミスティはここまで強くなれた。

それは、橙にとって、喜ぶべきこと。
幸せをつかむ、その姿は、何よりも輝いて見えるはず。
・・・・・・それなのに。

「ひぁぁっ! んん! くぅっ! っはぁ、ふぁ・・・!」

どうして・・・こんなに悔しい?
リグルに、全力で恋するミスティが。
大好きなミスティに、全力で恋されているリグルが。
悔しくて、たまらない。

「ちぇんっ、んぁあっ! くふっ、んくぅ!」

どれほど愛しても、届くはずはない・・・・・・わかっている。
愛とは、願うことだから。
陰から見守り、尽くす想いだから。

「やっ、ん! くぅ・・・あっ、んぅ! ひぁあぁ!」

袖をつかむ力が、次第に強くなる。
絶頂が近いのか。
橙は、その動きにラストスパートを掛けた。

終わりが近いと、知っている。
それでも尽くす。
彼女の幸せが、今の自分の幸せだから―――――――――――――。

「んっ・・・・・・ふぁぁぁああああぁぁぁっ!!」






「・・・・・・ねぇ、ひとつ約束して」

橙は、全てを終わらせた後、呟いた。

「・・・・・・?」

橙のその眼は、笑っていた。
自身を嘲るように。

「こんなことしたけど・・・また、友達でいて欲しいの」

馬鹿らしい。
こんな約束、受け入れなくて当然だ。
さあ、きっぱり言ってくれ。

しかし、ミスティは、首を縦に振った。

(ぇ―――――――――?)

どうして・・・?
わからない。
あれだけ酷いことをしておいて。

「・・・橙・・・」

笑い返すミスティ。
まったく、不可解だ。
今、ミスティと友達でいたいのは・・・ただの執着、彼女がいないことの恐怖から逃げたいだけなのに。
しかし彼女は、笑って自分の名前を呟いている。

「どう、して・・・・・・」
「自分で切り出しておいて、それはないわよ・・・」
「でも、あんなことしたし・・・・・・」

むしろ、切り捨ててくれたほうが楽だった。
苦しまなくて済むから。
紫と藍と、三人だけで幸せに生きていけただろう。
・・・・・・ミスティは、知っている。今の橙のそばにいることが、どれだけ苦になるか。
だからこそ、そばにいていいと言ったのだ。

「だからだよ。自分の気持ちを、通して欲しいから。自分の気持ちに、嘘をつかないで欲しいから。だから・・・・・・」

すっくと立ち上がり、ミスティは背を向ける。

「『約束』だよ。ずっと、友達」

その拳は、握りきられていた。

「・・・・・・もう、行くね。・・・・・・もし、もしもだけど・・・リグルがここに来たら、私が待ってるって伝えて?」

一歩一歩、縁側へと歩みを進めるミスティ。

「待って!」
「・・・・・・?」


「友達でも、ずっと好きだから! 私、ミスティのこと、絶対に諦めたりしないから!」

ミスティは振り向かない。
しかし、クスリと笑ったように聞こえた。
そして、風をはらんで、夜雀は夜空へ飛び立って行った。
猫又は、それをじっと、見送った。


first kiss:恋人とする、初めての口づけのこと。
      それ以外の人との口付けは、範疇に無し。







「ち・・・チルノ? 一体、どうしたの・・・?」
「別に。そろそろいいかなぁ・・・って」
「いいって、何が・・・・・・?」
「ぇ・・・そりゃ、こういう事よ?」

チルノが、リグルを壁に押し付けている。
そして飄々と言葉を紡いでいる。

「だっ、だめだよ! ボクだって、好きな人くらい・・・・・・!」
「・・・・・・ッ」

顔をいきなり近付ける。
危機感を覚えたリグルは、咄嗟にチルノから飛びのいた。

「どう、して・・・・・・?」
「その言葉、そっくりチルノに返す」
「・・・・・・く」

チルノが腕を横に振る。
氷塊が、リグルに迫る。

「逃げないで。あたいだけ見て。・・・・・・そばにいてよ、リグル・・・・・・・そのために、あのスキマに頼んで・・・・・・普通の妖精にして貰ってるんだから」

しゃがんで回避。
今度は縦に腕を振った。
鋭い氷の刃は、リグルの外套を簡単に引き裂いた。

「ッ・・・・・・! チルノ、どうしてこんな!」
「・・・約束したじゃない。『レティの代わりに、いてくれる』・・・って」
「でも!」
「レティはしてくれたよ? どうしようもなく切ないときに、ちゃんと慰めてくれたよ」

彼女は、泣いていた。
レティと重ならないことではない。
振り向かないことに、絶望して。
彼女は、ただ、求めていた。それを手にできないことがわかって、哀しくて泣いている。

「・・・・・・ごめん、チルノ。ボクは・・・・・・初めては好きな人としたい」
「・・・・・・・・・好きに、なってくれないの?」
「友達だもん、そんな感情は・・・」
「――――――――――わかったわ」

それでも、と踏み出す勇気は、なかった。

「・・・・・・ごめん」
「いいの」

しばしの静寂が訪れた。
それは、悔やむためのひと時だった。

『チルノー、リグルいるー?』

ノックと共に、彼女の家に来訪者が。
後悔の時間は終わった。

「・・・いるわ。入っていいから」

ぎぃ、と扉を開けたのは橙。
少し心配そうな顔をしている。

「リグル・・・ミスティのことなんだけど」
「み、ミスティの? ・・・・・・どうしたの?」
「リグルと『約束してる』って、どこかに行っちゃったの。それで、もしリグルと会えたなら、伝えて欲しい・・・って、伝言預かってて」

チルノの表情が、翳った。

「『待ってる』・・・・・・っていってた。行ってあげて? 私は、チルノと遊びにきたんだもん」
「約束・・・約束・・・・・・約束・・・・・・・・・ぁ――――――――――――――――!!」

何かをはっと思い出したように、リグルは硬直した。

「チルノ、ごめん! ボク、行かなきゃ・・・!」
「え、リグル、ぇえ?!」

チルノが反応する間もなく、彼は扉を開いて飛び立つ。
――――――――――――約束の場所へ。







今夜は一段と、星が綺麗だ。北極星を中心に、宝石が爆ぜたかのようだ。

その美貌と才能を認められ、星となり永久に語り継がれる乙女。
幾百の英雄を乗せ、幾千の戦を駆け巡り、天に昇った白き天馬。
天の川を往かんとし、過ちで星になった美しき白鳥。
世界に初めて産み落とされ、神の御使いと称えられた双子。
 美しい逸話は、形から理解不能である。

「ミスティ!」

ずざざざ、と坂を下る音が背後から。
振り向くと、そこには想い人の夜蟲が。

「ここにいる、って聞いたから・・・」
「だ、誰に?」
「橙。約束してるんでしょ、って」

もし来たらでいいのに・・・と、彼女は思った。
だが、橙は決して無駄なことはしていない。
ありがとう、と心の中で小さく、呟いた。

「覚えててくれたのね。・・・・・・ありがとう」
「ううん。ミスティとの約束だもん、忘れるわけないよ」

(・・・私との、約束だから・・・?)

ややの違和感。・・・・・・ミスティは、少し戸惑った。
・・・・・・にこり、と笑ってリグルは続けた。

「チルノは、レティがいなくてずっと寂しかったんだ。だから、ボクがそばにいるって約束して・・・・・・それで、あんなにボクに甘えるようになったんだよ」
「約束・・・?」
「チルノ、ずっと我慢してたみたい・・・ボクが、何とかしてあげたくて」

・・・内心、ほっとした。
リグルがチルノと、好きあっているのだと思っていた。
こんなことでほっとするのも、どうかとも思うが。

「リグルは優しいね」
「ううん。・・・チルノを、ちゃんと慰めてあげたいけど、ボクじゃできなかったから・・・」
「慰める・・・って、ちゃんとできてるじゃない」
「できてないよ。・・・・・・だって、ボクじゃ・・・チルノにしてあげられないもん・・・」

って、何を・・・?
口を開く前に、塞がれた。
次に開放されたとき、何を、とは問えなかった。

「・・・・・・レティは、してくれた・・・って。でも、できないよ・・・・・・」

呟いた彼は、悲しい眼をしていた。

罪の意識に苛まれる者の瞳の色を。
約束を守れなかったと悔やむ者の眼を。
裏切ってしまったと絶望するものの眼を。

――――――――――受け止めてあげないと、私が。

気がつけば、ミスティはリグルを抱きしめていた。

「・・・・・・ミスティ・・・?」
「・・・リグルは何も悪くないよ。そういう事は、本当に好きな人とじゃないと・・・しちゃ駄目なんだよ、きっと」
「あ・・・・・・」

全部、受け入れられる。
リグルなら、全部。
慰めてあげられる。
だから・・・・・・そんな顔をしないで。

「リグル・・・ちょっと聞いてもいい?」
「・・・何?」
「さっきのキスって、どういう意味だったの・・・・・・?」
「・・・・・・・・・言わせる?」

身体を離して、彼は笑った。
相変わらず、割と快活に。
しかし、その顔はこれまで見たことないほど真っ赤だった。

「・・・・・・勘違いしてもいいの?」
「勘違いじゃないよ」
「・・・・・・チルノじゃないの?」
「チルノは友達だよ」
「・・・・・・でも、こんな私だよ?」
「だからだよ」

そして、長い溜めのあと・・・・・・もう一度キス。

「ん・・・・・・」
「・・・・・・リグル・・・ホント?」
「ホント。ミスティこそ、ホント?」
「・・・当たり前じゃない・・・」

約束。
絆を明確にするための、ある種の鎖。
彼女たちの場合、それは気持ちを通じ合わせるためのもの。
そして、より強く、確かに、感じるためのものだった。

「・・・・・・チルノのところに、帰るよ」
「え・・・?!」

笑って、彼は言った。
その手は、握られている。
夢じゃない。
なのに、どうして?

「約束してるんだ。・・・チルノが、寂しいことに変わりはない。ボクがそばにいないと、壊れそうで・・・それくらい、悲壮感が漂ってる、っていうか、なんていうか・・・」
「・・・リグル・・・・・・」
「で、でもっ。好きなのはミスティだよ」

そうだった。
彼は、そういう性格だった。
友達を放っておけない性格の、優しい夜蟲だった。
彼のそういうところも、好きになったんだった。

「うん。わかったよ・・・チルノのそばにいてあげて」

だったら、受け入れてあげないと。認めてあげないと。
全部好きになったんだから。

「・・・・・・・・・ミスティ」
「ん?」

こてっ。
次の瞬間、ミスティは仰向けにになっていた。
すぐ目の前には、リグルの顔がある。
・・・要するに、押し倒されたのだ。

「帰ってもまた・・・チルノに迫られるよ、ボク」
「うん・・・」
「だから、初めては・・・好きな人とがいい」
「・・・って、ここで?」
「・・・・・・ミスティの、全部が欲しい。ミスティを全部、受け止めたいんだ」
「リグル・・・・・・」

覚悟の決まった目。
普段の彼は絶対できない目。
やや潤んでいる、愛らしい目。
・・・・・・こんなにも彼に好かれているのに、何故拒む理由がある?
ミスティは、リグルの頬に触れて、小さく頷いた。

「ミスティ・・・・・・。大好き」
「うん、私も」

呟いた直後、二人の身体に異変が起きた。

「「――――――――――――ッ?!」」

(かっ、身体が・・・・・・急、に・・・?!)
(なにこれ・・・変な、感じ・・・?)




同時、某所にて。

「うふふ・・・男の子は前に、境界を操ったし・・・女の子はさっき、橙の薬で私の操作を受け付けるようにしたし・・・・・・面白いわ、人の恋の手伝いって」
「やらしい。あんた何考えてんの? あの場所だって、隠してたくせに」
「だって~、それは貴女と来たかったんだもの~」
「・・・・・・・・・馬鹿。じゃあ、もっといい場所見つけときなさい」
「そうさせてもらうわ。・・・ふふっ、真っ赤になっちゃって可愛いわ」
「・・・・・・何よ。うるさいわね」

紅白と紫がじゃれるのは放っておいて。




「ミスティ・・・・・・」
「んむぅっ?!」

何の前触れもなく、もう一度口付けを交わす。
ミスティは目を白黒させ、ただ狼狽するだけだった。
そして、それだけでは終わらせなかった。

「・・・・・・んぅ・・・」
「・・・ふ・・・っ、ん?!」

リグルが、ミスティの口内へ舌を差し込む。
彼自身でさえ、少し卑猥すぎるのではないかと感じるほどにそのキスは激しかった。
ただひたすら、ミスティを欲している・・・その表れとも、言えた。

「ん・・・む、ふぁ・・・っ」
「くちゅっ・・・ふっ、んぁぁ・・・ん・・・」

ミスティは、全身を駆け巡る淡い快感の中、ふと考えた。
これが、恋なのだ・・・と。こんなにも彼が求めてくれる――――――それを嬉しく思うのは、他でもなく恋をしているからだ。この、幼い夜蟲に。
リグルの舌の動きに応えるように、彼女は自身の舌を絡め、吸いたて、艶かしく蠢かせた。

「んんっ・・・ふぁ・・・んぅ・・・・・・んぁっ」
「ふぅ・・・む・・・、んくぅ・・・」
「・・・・・・・・・っぷぁ・・・。ミスティ、上手・・・」

唇を離すと、キスの余韻・・・唾液で作られた銀色の橋がかかった。
すぐにそれは途切れ、互いの息遣いも感じられるほど顔が近かったことを知る。

「・・・・・・そんなことないわ。私だって、初めてなんだもん」

小さな嘘をついた。
本当に初めて、というわけではない。
・・・ズキン、と心が痛んだ。

「ね、リグル。もう一回しよ・・・?」
「うん・・・・・・んっ、ふぅ・・・」

鬱陶しいほど煌く星の許、二人は淫靡な口吻を交わす。
リグルがミスティに折り重なり、その手をつなぎあって、互いの気持ちを確かめるように唇を重ね、舌を絡ませあっていた。

「くぅん・・・ふぁあ・・・ん・・・」
「く・・・ふぅ・・・ぁん、っんんっ・・・・・・」

永遠とも思えたその時は、彼の突然の愛撫によって終わりを告げた。

「んっ、ふあぁっ・・・・・・っんくぅ・・・はぁっ・・・りぐ、る・・・」
「ミスティ・・・可愛い・・・もっと鳴いて・・・!」

膨らみの殆どない胸部の、桜色の突起をつまみ上げた。

「ぁああっ! リグルっ、そこ、だめっ・・・んんん!」
「・・・・・・んちゅ・・・・・・」
「ひぁぁあっ?!」

こんどは、ねぶるようにそこを舐め上げる。
そのたびに、ミスティは気持ち良さそうな甘い声を立てた。
リグルは上気し、もう自分が何を言っているのか分からない。

「んぁぁ・・・ふあっぁぁ! やだっ、やだぁ・・・くるぅ・・・ッ、なんかくるよっ!!」
「んちゅぅ・・・ふぅ、んむぅ・・・れろっ、みふひぃ・・・!」
「・・・・・・っんぁぁぁあああぁ!!」

びくんびくん、とその身を痙攣させて絶頂するミスティ。
その様にすら、リグルは更なる興奮を覚えた。
・・・・・・もっと、見たい。もっと、犯したい。もっと、ミスティが欲しい・・・・・・!
彼は、何を考える間もなくその指を秘所へ持って行った。

「・・・・・・んっ」
「ミスティ・・・すごい、濡れてる・・・」
「はぁっ・・・はぁっ・・・リグルが・・・あんな、激しくするから・・・」

首筋へ軽くキスをして、リグルは呟く。

「・・・・・・・・・ミスティ・・・もう・・・ボク・・・!」

性急過ぎではないか・・・いや、リグルが自分に興奮している・・・。
そう思うだけで、自分の秘所がさらに溢れてくる事を確かに感じた。
・・・もう、いいだろう。

「うん。リグル・・・・・・きて・・・私を、貴方のものにして・・・・・・・・・!!」
「ミスティ――――――――――」

覚悟の決まった顔で、ミスティはリグルの興奮しきった屹立を受け入れた。

「くぅッ・・・」
「っ――――――――――っつ・・・たあぁあっ」
「ミスティ?!」

ぶつっ・・・。
リグルの肉棒に、何か壁のようなものが。
それを一気に突き破ると、ミスティは辛そうな表情を浮かべた。

(・・・・・・これが、処女膜・・・?)

「だっ、大丈夫・・・?」
「うんッ・・・だい、じょうぶ・・・! すきに、うごいていいよ・・・・・・っつ!」
「大丈夫じゃないよ・・・ミスティ・・・」

破瓜の痛みは、相当のものと聞く。
そんな中、自分を気遣ってくれるミスティがどうしようもなく、愛しく感じた。
・・・・・・ぎゅぅと、彼女を抱きしめる。
痛みを、少しでも和らげてあげたい・・・・・・少しでも、気持ち良くなって欲しい。

「・・・・・・り、リグル・・・?」
「ボクだけじゃ駄目・・・ミスティにも、気持ち良くなってもらいたいよ」
「・・・・・・・・・うん・・・」

抱き返される。
優しく、強く。
・・・ミスティ。と、心の中で小さく、何度も呟いた。
大好きだよ、とも。

「・・・んっ、ふぅ・・・はぁっ・・・」

ミスティの息遣いに、やや色がかかってきた。
どうやら、もう動いてもいいようだ。
リグルは、小さく首を傾げた。
それにミスティは小さく頷いて返した。

「んっ・・・」
「く・・・ふぅ・・・っ」

ゆっくり、身体を引いていく。
少し、ミスティの身体が震えた。
その時の、秘部の締め付けだけで射精しそうになる衝動を抑えて、動き始める。

「んぁぁああぁ・・・・・・っ、くぅぅぅっ・・・」
「はぁ・・・っ、ミスティ・・・気持ちいい・・・っ?」
「わかんない・・・でもっ、ふぁぁっ・・・奥のほう、変な感じ・・・っくぅ・・・・・・」

徐々に、動きを激しくしていく。
そのたびに、彼女は切なそうに喘いだ。
それが嬉しくて、リグルはその勢いを加速度的に速めていった。

「っあぁあぁっ! リグルっ、そんな、はげしっ・・・くぅぅぅん!」
「ミスティ・・・ミスティ・・・!」
「やぁっ、んぁあっ! んっ、くぅぅっ! リグルっ、んぁあ――――――!」

またびくりと痙攣するミスティ。
どうやら、もう一度絶頂を迎えたようだ。
一度動きを止め、リグルは心配そうな目を向ける。

「はぁ・・・んぅ・・・っ、ふぁ・・・」
「大丈夫、ミスティ?」
「んっ・・・大丈夫。また、イッただけだから・・・・・・」

リグルは、もう一度動き出す。
ぐちゅっ、と湿った音が再び夏の夜空に響き始めた。
誰に聞こえるでもなく、それは二人の頭の中を真っ白に塗りつぶした。

「んぁあっ、ふあぁ、んんっ! くふぅ、んゃぁぁっ! リグル、リグル・・・・・・!」
「はぁっ、くぅ・・・! きもちいいよ、ミスティ!」
「っくぅん・・・!! ひぁ、っふぁあっ!」

うわ言のように、互いの名を呼びあう。
まるでそれが、互いの性感を高めあっているかのように。
まるでそれが、互いの存在を確認する唯一の手段であるかように。
まるでそれが、互いを愛しあう行為であるかのように。

「くふぅ・・・んぁぁっ! だめっ、リグルぅ! もうだめっ、きちゃうよぉッ!!」
「・・・・・・っく、ボクも、もう・・・!」





「ひぁぁあぁああぁああああっ、ぁぁあぁあああ!!」
「ミスティ――――――――――!!」






そして、二人の約束は果たされた。
『もう一度、ここで星を見よう』
今度来るときは―――――――――という、願望も叶っていた。
夜雀は、夜蟲と、気持ちを通わせたのだった。












「・・・・・・・・・じゃあ、ボク行くね」
「うん、じゃあね」

彼女はもう、恐れていない。
一人ではないことが、わかったから。
離れていても、その気持ちは通じているから。

いつもより輝いて見える星空の許、彼女は歩き出した。

いつもより煌いて見える星空の許、彼は飛び立った。

またここへ。
口にせずとも、その約束は再び交わされた。









氷の湖、紅魔館付近・・・・・・チルノの住む家。
今では、リグルもそこに居座っているらしく、彼の私物もそう少なくはない。
そんな中、チルノは一人で震えていた。

リグルがいない寂しさでもなく、
レティがいない寂しさでもない。

・・・・・・ミスティに、リグルをとられたのではないか?
それだけが、彼女の思考を埋め尽くしていた。

もともと、リグルに振り向いて欲しいから、彼をそばに置いたのだ。
世間では馬鹿と嘲られているも、こんなことを隠すため・・・・・・嘘を嘘と思わせないためだ。

恐怖、悪寒、慄然。
これで彼が離れていってしまえば、自分のしたことはなんだったのだろう。
レティの別れを利用して手に入れた、彼との関係も・・・・・・全て、泡沫と消える。
自分は、そばにいることもできなくなる・・・・・・・・・・・・。

「チルノ? ごめん、急に飛び出して行っちゃって」

帰ってきた。
どうして?

「・・・どうして帰ってきたの?」
「そりゃあ、約束したもん。そばにいてあげなきゃ、チルノ、なんか壊れちゃいそうで」

そんなわけがない。
こんなに狡猾で、自分の一挙一動すら操りきってしまう、最低の妖精が・・・・・・
想い人がいないだけで、壊れたりなどするものか。

「・・・・・・それに」

まだ、続くのか。
まあいい。いずれは目の前から消える・・・その前に、彼の声を堪能しておくのも悪くない。

「ミスティと気持ちが通じたからって、チルノと一緒にいない理由にはならないよ」

・・・・・・やはりか。
そんなところだろうと思った。
――――――――――ミスティもリグルも、一緒にいるときの互いの態度が違いすぎる。
両想いであることは、一目瞭然なのだ。
それなのに自分は引き裂いて、自分に縛り付けて。
最低だ・・・分かっていたのに、いざつきつけられると、辛いものがある。

「・・・ごめん、チルノ・・・」
「なに謝ってんのよ」
「だって・・・・・・その、さっき・・・」
「ぁ・・・・・・」

彼に、迫ったのだった。
その時点でもう逃げられてもおかしくない。
だから、去って行ったのだとも思っていた。
―――――――戻ってきた・・・なら・・・今度は、無理にでも。
受け入れてもらおうなんて思わない。
狂おうとも考えていない。
ただ、せめて、彼を、この身に刻んでおきたい。

「その・・・えと、チルノ・・・・・・」
「っリグル!」
「わ、あぁぁっ?!」

床に押し倒し、騎乗位・・・だっただろうか、彼の上に乗る。
そして、彼の肩に体重を掛けて、動けなくする。

「嘘でもいい・・・・・・二番目でもいい・・・・・・あたいのこと・・・好きって言って・・・・・・!」
「・・・・・・・・・・・・ちる、の・・・」
「お願い・・・っ・・・」

涙には目を浮かべて。
奥歯をかみ締めて。
咽び泣いてすらいる。
なんて、酷いんだろう。泣き落としなんて。
――――――――わかっている。もうどうでもいい。

「――――――――――チルノ・・・好きだよ」

儚げに微笑んで。
真摯さを奥に秘めて。
だが、同情や哀れみであることは見えている。

だからこそ、チルノは彼に口付けたのだ。

「んっ――――――?!」

無理矢理舌で、彼の口内に割って入る。
当然受け止めることはできない。だが、知ったことではない・・・・・・リグルの口内を蹂躙する。さながら、『犯す』という言葉がもっとも似合うその行為は、双方に快感を齎しはしない。

「んんっ、くふぅっ?! むぅ、んんんんっ!!」
「ふっ、む・・・んぅ」

そんなことを気にも止めず、チルノは彼の舌に自分の舌を絡め、奥歯を舐める。
初めは目を白黒させていたリグルも、その行為に否応なく興奮を覚えてしまう。
その陰茎も、大きさを増してきている。それもそのはず、彼女は自分の秘所を押し付けて半分擦るようにして動いているのだ。

「ふぅ・・・む、んちゅぅ・・・くふぅ・・・ふぁぁっ」
「んむっ・・・くぅ、んちゅ・・・くちゅぅ・・・」
「んんっ・・・・・・ふぅ・・・っ、くぅん・・・・・・」

チルノ自身、その行為に没頭している。
声色に色がかかり、秘部も熱を帯びて、頬は紅く染まっている。
その唇をふと離すと、銀色の橋がかかった。
ともに息を荒げ、熱っぽい視線を送りあっている。
それは、彼にとって不本意なものでしかなかった。

「・・・・・・はぁっ、んっ・・・チルノっ、どうして・・・・・・」
「・・・どうせミスティと済ませてきたんでしょ?」
「っ――――――――――――うん」
「だったらいいじゃない・・・・・・」

チルノは、リグルの短パンのファスナーを、何の予告もなく下ろした。
震える屹立が、チルノの目の前へ露わになった。

「・・・これが・・・リグルの・・・」

半ば恍惚とした表情で、チルノは彼の分身へと顔を近づける。
手で握り、先にキスをした。

「ち、チルノ・・・どうしたの・・・んぁっ!」
「・・・ふふっ、リグル・・・あたいが気持ち良くしたげる・・・んっ」

亀頭を咥えこみ、じゅる、と吸いたてた。
すると、面白いように彼の身体もびくりと震え、甘い声を上げる。
滑らかな手の上下運動も、初めてを感じさせないなにかがある。
彼の先走りと、チルノの口淫によって垂れた唾液が、肉棒を濡らし、潤滑油になっていく。
裏筋にちろちろと下を擦りつけ、カリ首にわずかに歯を立てる。

「んやあぁっ、チルノ、やりなれてるぅ・・・っ?!」
「んんっ、ふぅ・・・っぷぁ。そりゃ、レティにもついてたし」
「ぇ?! れ、レティに?!」
「うん、レティのはもうちょっと大きかったわよ」

そこまで言うと、もう一度彼女はリグルの一物へ顔を移した。
今度は奥まで咥えこみ、激しく吸う。

「んぁぁぁぁあ・・・・・・!」
「んぐ・・・・ぅ、んん・・・・・・」

リグルがふと顔を上げ、チルノを見る。

(―――――――――ッ!!)

目を瞑り、必死で自分のモノを咥えこむチルノ。
その姿が、リグルにはひどく扇情的で、蠱惑的に見えた。
艶っぽい。色っぽい。いやらしい
―――――――――――――我慢が利かない。

「チルノっ、ボク、もうっ・・・出ちゃう・・・っ!」
「んっ・・・むぐぅ・・・ふっ、んぐっ・・・・・・・」
「っ、ふぁぁぁぁああぁぁあああっ!!」

どぷっ、びゅくびゅくっ!

「んんんんっ、んぐぅぅっ?!」


深く咥え、チルノはその喉の奥へリグルの白濁を受け止めた。
喉に熱く絡みつき、ねっとりとした感覚を延々味わう羽目になるチルノ。
飲み込むまで、しばらく時間がかかった。

「けほっ、けほっ・・・んっ、リグル・・・出しすぎ・・・」
「はぁっ・・・・・・はぁっ・・・・・・ごめん、チルノ・・・」
「・・・今度は、あたいが気持ち良くなっていいのよね?」
「へっ・・・? ぁ、うぅ・・・うん・・・」

チルノがスカートをたくし上げると、そこにはドロワーズやショーツの類は見受けられなかった。
太腿には愛液の筋が幾条も伝い、リグルのズボンすら濡らしていた。
てらてらと卑猥に輝くそれを、まじまじとリグルは見つめる。
たちまち、彼女のそこからはさらに蜜が溢れ出し、さらに彼の短パンをべとべとにした。

「チルノ・・・見られてて、濡れたの・・・?」
「ばっ、そんなわけないでしょ!? そんな見ないでよ、恥ずかしい・・・・・・」
「わ・・・もっと濡れてきた・・・」
「バカリグルっ! もう知らない!」

前戯など必要ないほどに濡れそぼった秘所をリグルの肉棒にあてがい、一気に腰を落とした。ぐちゅっ、という淫らな水音が二人の頭に響く。
チルノは少し痛みに震えたが、すぐに快感に変わっていく。

「はぁっ・・・・・・リグルの、見た目よりちょっとおっきいかも・・・♪」
「楽しそうに言わないでよ・・・・・・」

こっちはこっちで辛いんだから、と言いたげ。
しかし、チルノが問答無用で上下運動を始めた所為で、彼の言葉はつぐまれてしまった。
腰をくねるような動作も混ぜ、リグルの・・・そして自身の性感を高めていく。

「っ、んぅ・・・・・・」
「はぁっ、はぁっ・・・リグル、気持ちいい、よ! んっ、くぅ!」
「うぅ・・・ん、ふぁぁ・・・」

複雑な上下運動が逆にもどかしくなったのか、リグルはチルノの腰を掴み、自身が動き始めた。
にやり、と彼女は笑う。彼の手を取り、自身も単純なピストン運動に没頭を始めた。
もう、彼の理性など彼女が取り去ってしまったのだろうか。

「あぁっ、んぁ、っくぅ! っ、ふぁぁあっ!」
「チルノ・・・っ、凄い、締め付け・・・て・・・っ!」

リグルのズボンはいつの間にか脱ぎ捨てられ、チルノもいつしかブラウス一枚という極端な薄着で行為に熱中していた。
確かに、半ば獣のように腰を振る今の二人には、服などただの不要な布切れかもしれない。
蕩けた視線で見つめあい、火照った息を共有し、更なる快感の高みを求めて彼女の奥へと肉棒を突き立てる・・・・・・その行為を獣のようと言えないのなら、なんと称せばいいのやら。

「ぅぁああっ、リグル、りぐるぅ!」
「んっ、くぅ・・・ふぁ、っん・・・!」
「ひあぁ――――っ、ああっ、ふぁぁぁ!」
「ちっ、チルノ・・・・・・そんなっ、強くしたら・・・・・・もうっ・・・」
「だっ、め。まだっ・・・あたいが・・・・・・んくぅっ!」

一度、リグルが強く突きあげる。
それだけで、チルノは絶頂の寸前まで駆け上がっていった。
何よりも、仮にとはいえ『彼に求められた』という悦びが、彼女を昂ぶらせたのだった。

「ぁああぁぁぁあ!」
「・・・はっ・・・はぁ、これでどう?」
「んっ、ふぁ・・・ぁくぅ・・・」

呼吸に余裕がない・・・・・・どちらも、その限界は近い。
チルノはリグルに馬乗りになり、恍惚の表情で身体を上下させている。
その口の端には、唾液が幾条も垂れていた。
リグルはもう何をしているのかもわからず、何を考えているのかもわからず、ただひたすらに肉棒をチルノの膣内に突き上げている。

「くぅっ、んぁ、ふ・・・ぅ。も、ボク・・・・・・っ!」
「んんっ、ふぁあ! んにゅ、くぅ・・・ぁう! んぁああっ!」
「っ、く・・・・・・ぁぐ、んっ―――――――――――っ!!」
「やぁっ、ふぁぁああぁああぁあああああっ!!」


嘘でもいい。好きって言って? リグル。
うん。好きだよ、チルノ。
二番目でもいい。私として? リグル。
うん、いいよ。チルノ。




手に入れたものは、何もない。
哀れみと、刹那の快楽。
求めたものは、あまりにも儚かった。
想い人も、友達も。

「はぁっ・・・く、ふぁ・・・ん。リグル・・・」
「・・・・・・はぁ・・・っ・・・チルノ・・・」

これ以上、彼に甘えてはいられない。
・・・湖の中心にでも引っ越すか。
寂しくなる。二ヶ月ほどとはいえ、彼との生活は楽しかった。
同時に虚しくもあったが。

最後に言わせて―――――――――――――





「ありがとう、ごめんね」







約束は果たされた。
『レティの代わりに傍にいる』
それも、最悪の形で。
こうして、氷精と夜蟲の曲がった生活は、終わりを告げたのだった。







氷の湖、ほとりにある小さな小屋。
そこで、彼は目覚めた。

「・・・・・・チル、ノ・・・・・・?」

昨晩交わった氷精はどこかに消え、代わりに置き手紙があった。
文面はミミズが這ったような文字・・・・・・英語、という奴だろう。リグルはこれがある程度読める。
内容はこうだ。

『I'm sorry first of all.
 I was telling a lie to you.
 I loved you in reality, and I wanted to exist with you.
 There is no substitution of her.
 I'm sorry that I selfishly damage you.
 Because I will not rely on you any longer.
 However, I want to coexist as a friend.
 If you permit, I want to become your friend again.
 ――――――――――――Please go to Misty’s place early.
 Perhaps, she is waiting for you.

 Good-bye. Let's meet again.


                             Cirno』

「・・・・・・ぁ・・・」

まず、ごめんね。
あたい、嘘ついてたの。
・・・・・・・本当は、リグルのことが好きだから、そばにいてほしかった。レティの代わりなんて、だれにもできない。
あたいの我侭でリグルを傷つけて、ごめん。
だからもう、リグルには頼るつもりはないわ。
・・・・・・・・・・・・でも、虫のいい話だけど、まだリグルの友達でいたいの。
リグルが許してくれるんだったら、私、もう一度あなたの友達になりたい・・・・・・なんて、すごく勝手だけど。
―――――――――――――――早くミスティのところに行ってあげてよ。あの子、きっと待ってる。

それじゃあまた。                  チルノより



「知ってた・・・知ってたよ、チルノ・・・・・・だから、あんなことしたんじゃないか・・・!」

友達でいたい。
慰めてあげたい。
彼女が辛かったのは、事実だから。
たとえ真の動機が何であったとしても、彼女が寂しかったのは本当だから。

「・・・・・・」

行こう。
ミスティのところへ。
言っていたじゃないか、自分が。
ミスティを好きだと。











夏至を越え、泳ぎ仕舞いの時期となった幻想郷。
橙、ミスティ、リグル、チルノの四人は、妖怪の山から降りる、別の川辺で今年最後の水遊びに興じることにした。
ちなみにミスティはツーピース、橙は紫の要らぬ配慮からスクール水着。リグルはサーフパンツ、チルノは氷色のワンピースという、個性のそれなりにある水着となった。

「それっ」
「わ。やったな橙? そら、お返しっ!」
「ひゃっ・・・このー!」
「あはははっ」

川面を揺らす、少年少女。
リグルと橙は水をかけあっていた。
橙は式だが、その紫の用意した水着の力によって式が剥がれずにいる。

「・・・・・・・・・」

チルノはそれを、やや遠い目で見ていた。
友達でいるといっても、彼女はその罪の意識が邪魔をして、なかなか混ざれずにいた。

「・・・・・・・・・」

ミスティはその隣で、リグルを、そしてチルノを見つめていた。
もう、とうにチルノのことなど咎める気持ちはない。距離のできてしまったチルノを、何とかもう一度以前のようにしたい・・・そう思っていた。

「どうしたの、ミスティ?」
「あ・・・うぅん、なんでもないわ」
「・・・・・・・・・チルノ。遊ぼ?」
「ぇ・・・いいよ、あたいは」

少し膨れてみせるリグル。
おもむろにチルノに近づき・・・手をつかんだ。

「ちょ、何・・・?」
「何のための友達? もう夏は短いし、遊ばなきゃ。・・・・・・ね、ミスティ」
「それもそうね。・・・・・・うん」

ミスティも頷き、羽織っていたパーカーを取り去って水へと入った。
リグルもチルノの手を引き、無理矢理水へと叩きこんだ。

「わぷっ! なにすんのよっ!」
「あはは、チルノもびしょびしょ!」
「そのための水着でしょうが! それっ!」
「わぁっ! あはは・・・ひゃわ!」
「それそれそれー!」
「ちょ、ミスティ・・・うわわっ」

四人で水を掛けあい、じゃれる。
この時間が、チルノには何よりの幸せに思えた。
自らの罪を忘れられるこの時間が。
・・・・・・リグルへの気持ちを諦めきったわけではないが。





もう、誰も一人ではなかった。
あぁぁぁぁ

シリーズものをかこうかと思ってgdgdになってしまったです・・・
この後は咲レミ・もこかぐ・ゆかれいむとかかきたいです・・・
いぇ、テーマが同じなだけで関連薄いかもしれません。


二番煎じとか気にしたくないです・・・・・・!
紅の羅宇屋
コメント




1.ソースケ削除
いいですねえ。
雑用さんのSSはいつ読んでもきれいで、読後感が非常によいです!
ちるのかわいいよちるの
次回作も楽しみにしています。
2.tinkame削除
全体を通して、どろっとした昼ドラの様なイメージを受けました。
チルノの心情が切ないっす。
でも、最後には希望も見えて、何だかホッとしました。
幼く書かれがちな四人の拙いながらも真剣な恋愛模様が良かったです。GJ
3.紅魔の雑用削除
感想、ありがとうございます。
では、程好くレスなどを。


>>ソースケ氏
毎度毎度自分のつたない愚文に感想、ありがとうございます。
「死」や「離別」などのテーマを使えば簡単に感動話はできてしまいますが、
読んだ後どこかえぐられるような、問いかけられるようなものがあります。
自分はそれをしたくなくて、読んでも後に引きすぎないものをかくようにしているんです。

宣言します。今月中に後ひとつ落とします。駄文です多分。


>>ちんかめ氏
ありがとうございます。
なんていうか貴方のファンの一人なので、感想をいただけると非常に嬉しい気分になります。
自分で読み返して、「略奪愛とか昼ドラ・月9かこれ?」と腐女子な妹の前で呟いてしまいました。
でも、こういうのもたまには悪くないかな、と思ってしまった自分がいました。だからこのSSがあるのですが。
チルノは、ターニングポイントを作るために必要な位置づけでした。
馬鹿でなくなったのは自分の至らぬところですが・・・・・・意外性は十分だったでしょう?(サクッ
最後の部分は、どうもこじつけや蛇足に思えてしまったのですが・・・・・・どろっとしたものにはしっかりと終わりを、と思ってどうしても外せませんでした。
不器用でまっすぐな恋愛、というのは難しいです。
それを少しでも感じていただけたら、感激のいたりです。
4.名前が無い程度の能力削除
頭イイチルノって新鮮だなぁ。
なんと言うか、非常に少女らしい物語だと感じました。昼ドラと言うよりはマーガレット辺り(適当)のような、微笑ましい感じのドロドロな関係。そんな印象でした。
ただ最後にどうしても一つ。
お前が焼き鳥持って来たら駄目だろ……みすちー!
5.紅魔の雑用削除
>>4氏

少女マンガ的・・・ですか。
確かに、そんな感じしますね。
絵描き目指す友達が読んでたんですけど、記憶喪失とか強姦未遂とか、ブラックなネタ多し・・・ですからね。

昔読んだ同人誌でみすちーが焼き鳥売ってたんですよ。
二次設定的に受け入れてしまっていた自分がいたんです。
うぅむ、二次設定は諸説多いので難しいですね・・・?
さまざまな設定のSSをかいていけば、しっくりくるのができると思いますので・・・これからも覗いてやってください