真・東方夜伽話

温もりをあげたいから

2008/11/18 01:21:33
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温もりをあげたいから

ばっきゅう

 




 ※ネチョまで長めです。
 




 
 



  その日メディスン・メランコリーは住み慣れた無名の丘を離れ、妖怪の山の麓に広がる樹海に来ていた。
 

 「こんなに遠くまで来たのは初めてね~。山には天狗だの河童だのがいるらしいけどちっとも見かけないわね。もっと山の上のほうかしら?」

 
  彼女は時々こうやっていろんな場所へ足を運ぶ。生まれたばかりの妖怪である自分は知識や経験が不足している。自身が目標にしてる「人形解放」の
 ためにはもっと見識を広げる必要がある。それにもしかしたら自分みたいな動ける人形が幻想郷のどこかにいるかもしれない。そんな人形を仲間に出来
 れば実に心強い。そのためには鈴蘭畑にこもっていてはだめだ。だから彼女は少しづつ行動範囲を広げている。傍から見ればふらふら彷徨っているよう
 にも見えるが。
 
 
  樹海の中は生い茂る木々が天然の屋根になり、昼間なのに薄暗い。メディはずんずん奥へと進んでいく。一歩進むたびに木の枝や落ち葉を踏んでガサ
 ガサ音が鳴る。この場所には自分以外の気配は感じられない。メディの心にわずかの不安が生じるが、それでも足を止めることはない。こうして森の
 中を進むと何だか探検しているみたいでメディのまだ幼い心はわくわくしてくる。それが不安感を心の奥へと押しやっていた。
  しばらく進んだが目に見えるのはさっきと変わらぬ風景。特に目印になるものがないのでどこも同じ場所のように見える。さすがに疲れてしまったの
 かメディは大きな木のたもとにペタリと腰を下ろした。


 「何よここ、全然何も無いじゃないの……。はぁ……疲れちゃったよスーさん。仕方ないからそろそろ帰ろうか?」


  いつも傍らにいる小さな人形に愚痴をこぼしていると、ふと耳にかすかな音が飛び込んできた。チョロチョロと水が流れる音。どうやら近くに川が
 流れているらしい。ちょうど喉が渇いていたので都合がいい。メディはその場から腰を上げると、お尻の部分に付いた土を掃って音のする方へと
 向かって行った。
  茂みをかき分けると小川が流れていた。川の水は清らかで透き通っている。川べりへ近付き両手で水を掬って口に運ぶと、澄んだ水が喉の渇きを潤お
 していく。ほっと一息ついていると突然声が聞こえてきた。


 「あら、ここで何してるのかしら?」

 
  声のした方向を見ると一人の少女が川の上流からふわふわ飛んで来る。緑色の髪を胸の前でリボンで縛っている。頭にも赤いリボンを着けており、
 服はゴシックロリータ調で自分の服と少し似ている。得体の知れない奴が近付いて来てメディは警戒心を露わにした。


 「何してようが私の勝手でしょ。誰よあなたは」
 「私は"鍵山 雛"。人間たちの厄を集めてる厄神よ」
 「厄神……? 何よそれ」
 「厄神というのは人間たちが流し雛に乗せて流した厄を集めてそれを見張るのが仕事。そしてある程度溜まったら神々にそれを渡すのよ」
 「流し雛ですって!? 知ってるわ! 人間たちが自分たちの我が身可愛さに人形を捨てる野蛮な風習! 人形の人権というものをまったく考えない
 愚かな行為! まだそんなことしてるのね人間は、あきれてものも言えないわ」
 

  メディは激しい口調で人間を非難する。人間に対する憎しみがメディの中にふつふつと湧き上がってくる。雛は突然怒り出したメディに驚いた。


 「ちょ、ちょっとあなたどうしたのよ。勘違いしてるみたいだけど流し雛は別に人形を捨ててるわけじゃ……」
 「捨ててるじゃない、どう考えたって。流し雛なんて即刻廃止すべき……待って、あなた雛っていうんだっけ? ということはあなたも流し雛なの?」
 「ええ、元々はね。人間たちが流し雛に込めた思いが人形に宿り形となったのが私」
 「じゃああなた人形なの?」  
 「まあそうとも言えるわね」


  その言葉を聞いて、さっきまで怒ってたメディの表情が途端に明るくなる。


 「こんなところに仲間がいたなんて! 私も人形なのよ。あなたみたいな自分でものを考えたり動いたり出来る人形を探してたのよ!」
 「えっ……人形って、まさか……」


  雛は地面に降り立つと、メディに近づきその身体をまじまじと観察し始めた。


 「あなたもしかして人形が妖怪化したものなの?」
 「そうよ。スーさんの力で動けるようになったのよ」
 「スーさん?」


  聞き慣れない名を耳にして雛は首を傾げる。


 「スーさんはスーさんよ」
 「いや、それじゃわからないわ……。どんな人なの?」
 「人じゃないわよ。スーさんは美しく可憐だけど強い毒を持つ鈴蘭の花」
 「あ、鈴蘭だからスーさんなのね。理解したわ。さて特に用がないならここから離れなさい。ここにいるとあなたに厄がうつってしまうわ」
 「厄? そんなの怖くないわよ。毒の力に比べたら厄なんて問題にならないわ。私は神経毒に精神の毒、毒なら何でも操れるんだから」
 「へぇ……あなた毒を操れるの……。私と同じで物騒な能力持ってるのね……」


  雛の表情に一瞬陰りが見えた。しかしメディはかまわず言葉を繋ぐ。


 「あなたなら頼もしい戦力になりそうだわ。どう? あなたも人形解放同盟の一員にならない?」

 
  怪しい宗教の勧誘のように雛を誘うメディ。ちなみに人形解放同盟などというのはたった今メディが立ち上げた。


 「人形解放って具体的には何するつもり?」
 「人間によって自由を奪われ、いいようにこき使われ、玩具にされてる人形たちを解放するのよ。そして人形の人形による人形のための世界を作るの。
 素晴らしい計画でしょ」
 「どうかしらね。人形は人の形、人の移し身。人形は人に作られて、人に存在意義を与えられて初めて人形たり得るのよ。人形が人間から解放されたら
 それはもう人形ではないわ」

 
  雛は落ち着いた口調で淡々と話す。メディはてっきり同じ人形だから賛同してくれると思っていたので、少し意気消沈した。


 「むぅ~……。何よ、あなたもいつぞやの変な奴と同じこと言うわね……」


  ここで言ってる変な奴とは以前花が咲き乱れる異変の時にメディが出会った閻魔のことである。彼女もメディの器の小ささ、経験の無さを説き、人形
 解放に否定的だった。あの閻魔の話は耳が痛かったが、そのおかげでメディは外の世界を知ろうと思ったのである。


 「厄云々を抜きにしてもそろそろ帰った方がいいわよ。暗くなってきたし」
 「え……あ、本当だ」


  見上げると空はほんのり赤く染まっている。ここら辺の地理には詳しくないので暗くなったら迷ってしまうかもしれない。雛の言うとおり帰った方が
 良さそうだ。


 「わかった、今日のところは帰るわ。でもせっかく同志を見つけたんだもの、諦めないわよ」
 「はいはい、……あ、ちょっと待って」
 「えっ……うわっ!?」


  突然雛に抱き締められる。もがいて抜け出そうとするが雛は放してくれない。


 「い、いきなり何すんのよ!?」
 「静かに……あなたの身体に厄が憑いたから私の身体に移してるのよ。少しだからすぐ済むわ」


  雛に抱き締められてると、雛の体温が伝わってくる。雛の髪が鼻先に当たりほのかにいい香りがする。さっきまでもがいてたメディだったが、今は
 不思議と心が落ち着いていくのを感じた。


 「はい、終わり。気を付けて帰りなさいよ」
 「う……うん……」
 「あら、顔赤いけどまだ厄が取れてなかったかしら?」
 「わわわ、取れた! 取れたから! まったくもう……そういえば私の名前言ってなかったわね。私メディ。メディスン・メランコリー。
 これからよろしくね」
 「うんよろしく……ってあなたまた来るつもり? 私のそばに来ると厄が移るって言ってるじゃない」
 「関係ないわ。何としても人形解放同盟に入ってもらうわよ。……それじゃまたね」

 
  メディはそう言って空に浮かび上がっていく。


 「え……あ、うんまたね……」


  雛はメディの姿が視界から消えるとひとつ小さく息をついた。


 「ふぅ……変な奴ね。来るなって言ってるのに……。……またね、か」
 





  夕日は沈みかけ、空には一番星が輝きだしていた。雛は樹海の奥へと姿を消し、メディも住処である無名の丘へ帰り着いた。二人の関係は
 こうして始まったのだ。














  それからメディは何度も雛のいる樹海を訪れた。そのたびに雛が厄が移ってしまうから来るなと忠告するのだが、相変わらずメディは聞く耳を
 持たない。
  メディは人形を解放することが如何に急務か、演説するように雛に説く。雛は苦笑いしながらもメディの力説に耳を傾けていた。初めて会った時と
 同じで雛が協力してくれる素振りは見せないが、それでもメディは雛に自分のことを話すのが楽しくなっていた。雛もメディのしつこさに根負けしたの
 か、追い返そうとすることを止めメディと普通に話すようになった。大体話を振るのはメディで、内容は鈴蘭が昨日よりも元気に咲いているとか、どこ
 ぞの氷精が鈴蘭を凍らせて遊んでたので毒を撒いて追い払ったとかたわいないことばかりである。  
 


  




  その日もいつものようにメディは雛の所へやって来た。二人で川のほとりに並んで座りのんびりしていると不意にメディが口を開いた。


 「ねえ、雛っていつもここにいるけどここから出ることはないの?」
 「え……そうね、ほとんどここからは出ないわね。私の周りには厄が集まるから人のいる所には行けないわ。厄を浴びたら不幸になってしまうからね」
 「私は別に不幸になんてなってないけど」
 「それはあなたが帰るときに私があなたに憑いた厄を吸い取ってるからよ。あれをしなかったらあなたも厄の影響を受けるわ」


  雛の言うとおり、別れる際には必ず厄を取ってもらっている。正直雛に抱き締められるとくすぐったい気持ちになるが、悪い気はしなかった。


 「じゃあいいじゃないの。人に会ってもそうやって厄を祓えば」
 「いちいち会う人全員の厄を取ってたらきりがないわよ。……それにいくら厄を祓えばいいとはいえ、やっぱり大量の厄を纏った私に近づかれるのを
 人間は嫌がるはずよ」

 
  雛はそう言うと俯いて押し黙った。雛の瞳には寂しさが宿っているように感じられる。


 「……人間は本当に勝手な生き物ね。雛のおかげで暮らしていけるのに、雛に近づこうとしないなんて」
 「しょうがないわよ。誰だって不幸にはなりたくはないわ」
 「でもそれじゃあ雛はどうなるのよ。今のままじゃ好きな所に行けないじゃない。こんな薄暗いとこでひっそり暮らしてるなんて、他人は不幸にならなく
 ても雛が不幸だわ」
 「別に私は今の生活を不幸だなんて思ってないわ。静かなのは嫌いじゃないし。人間が平和に暮らしていけるなら私はそれで満足だわ」


  雛の台詞はメディには理解できなかった。どうして自分を犠牲にしてまで人間のために生きてるのか。雛は不幸ではないと言っているが、雛の時折
 見せる寂しげな顔を見てると、とても今の雛の境遇は幸せとは思えない。雛の優しい性格を知っているだけに尚更不憫になった。


 「ねえ、雛。もう厄を集める仕事はやめちゃいなさいよ。そんなことしてても雛には何の得にもならないじゃない」
 「ダメよ、そんなこと……。私が厄を集めなかったら、狭い幻想郷は厄で溢れてしまうわ。妖怪たちはまだ平気でも人間はそれじゃ生きていけない。
 人間は絶え間なく不幸が続くことに耐えられないわ」
 「いいじゃん、それで。人間も雛のありがたみと己のか弱さが分かるでしょうよ。人間が不幸になったって私たちには関係ないわ。人間は雛がいないと
 生きていけないけど、雛は人間がいなくても生きていけるんだから」


  メディが人間に対する侮蔑を込めて言い放った直後――――。


 「それは違う!」


  雛が立ち上がり大きな声を上げる。メディは身体をびくんと震わせて驚き、雛の顔を見る。初めて見る雛の怒りの表情にメディは困惑しつつも、自分
 も立ち上がって言葉を発した。


 「違うって何がよ……。人間なんてそんなものでしょ」
 「確かに人間は弱い生き物よ。でも私は人間を守ることに誇りを感じてるわ。だから……私は厄を集めることを止めない。人間を見放したりしないわ」
 「そんな……どうしてそこまで人間を守ろうとするの!? 人間なんて自分勝手で汚い生き物よ。流し雛として捨てられて、そしてこんな日の当たらな
 い所で頑張ってる雛に何もしないじゃない。結局自分たちさえ幸せなら他人なんてどうでもいいのよ。そんな人間を守ろうとするなんて雛は馬鹿よ!!」


  語気を荒くして言い放つメディ。その言葉を聞いた雛の顔が怒った顔から悲しそうな顔に変化していく。


 「……そうね。私は馬鹿かもね……」
 「あ……」


  覇気の無いか細い声で呟く雛。メディは自分が言ってはいけないことを口走ったのに気づいた。二人の間に沈黙が流れる。こんな時どうすればいいか
 メディの幼い心では分からなかった。重苦しい空気に耐えられなくなったメディはしばらくしてようやく短い言葉を紡いだ。


 「……あの……、わたしもう帰る……」


  雛の顔を見ることが出来ず、その場からすぐに離れようと雛に背を向けると力の無い声が背中越しに聞こえてきた。


 「待って……厄を取るから……」


  後ろから腕を廻してくる雛。普段は苦にならない行為だが、今は早く放してほしかった。今雛はどんな顔をしてるだろう。振り返れば確かめることが
 出来るけどそれは出来なかった。振り向けばきっとそこには悲しんでる雛の顔があるはずだから。悲しんでる雛は見たくない。しかも自分が雛を傷つけ
 てしまった。そう考えると胸が苦しくて堪らなかった。しばらくして雛が腕を離す。


 「取れたわよ……」
 「うん……」


  メディはそのまま別れの言葉も言わずに空に飛び立った。雛は何も言わずただ小さくなるメディの姿を眺めていた。誰もいなくなった川のほとりで
 小さくしゃくり上げる声が響いたが、それを聞く者はいなかった。




   
  
  
  メディは飛んでる間ずっと後悔していた。自分の思慮の無さを恨んだ。どうして雛を傷つけてしまったんだろうか。せっかく仲間に、友達になれると
 思ってたのに。自分と似た境遇の存在に出会えたのに。
  こんなモヤモヤした気分の時は毒を撒いてそこらの小鳥だの兎だのを気絶させてすっきりするのだが、今日はそんな気にもなれずメディは真っ直ぐ
 無名の丘に戻っていた。鈴蘭たちがメディを出迎える。メディはその鈴蘭の海の中に降り立ち、しゃがみ込んでぽつりぽつりと喋り出した。


 「スーさん……私、雛と友達になれなかったよ。頑張ったんだけどなあ。雛きっと私のこと嫌いになったと思うんだ。うん……、だから……もう会って
 くれないよ……。またスーさんと私だけになっちゃった。いいんだ、私はスーさんがいるからいいんだ。そう、これでいいんだよ……」


  自分に言い聞かせるように何度も何度も同じことを呟くメディ。頭の片隅でずっと考えていた。自分はもう雛と会えないと。いつの間にか空は夕闇に
 染まっていた。





















  メディは自分の身体に伝わる振動に気づいた。それは規則的にメディの身体を震わせる。一体自分はどうなっているのか。確かめようとしたが身体が
 動かない。首が回らず指先がぴくりとも動かせないのだ。状況が分からずにいると不意に身体が宙に浮く。そのままどさりと地面に落とされ、メディは
 仰向けの状態になる。
  すると視界の端に紫色の花が姿を現した。よく知っている花だ、鈴蘭の花。ここは自分が暮らす鈴蘭畑だとメディは直感する。相変わらず身体は全く
 動かない。まるで身体が錆びついてしまったようだ。動け動けと何度も思うが、その念が通じることはない。その時メディははっと気付いた。自分を
 一つの人影が見降ろしてることを。
 

  あれ、この人見たことがあるような気がする。でも誰だっけ……、思い出せない……。


  メディが必死に記憶を探っていると、その人影はメディに背を向け立ち去ろうとする。突然メディの心の中に焦燥感が湧いてきた。


  待って。行かないで。私を置いてかないで。私はあなたがいないと何もできないのに……。


  メディは声を張り上げて叫んだ。だが耳に自分の声が聞こえてこない。そうこうしてるうちにメディの傍から気配が消えた。
  そよ風が吹いて鈴蘭がなびく。しばらくすると空にどんよりと灰色の厚い雲が立ち込める。やがてポツポツと雨が降り出した。雨は次第に勢いを
 強め、冷たい雫がメディの身体を容赦無く打ちつけていく。メディの身体はまだ微動だにしない。無抵抗のまま雨に打たれるしかなかった。



  誰か……。誰か来て……。私はここにいるから誰か……。





  雛……。助けて……。雛……、あい、たい……。























  メディはがばっと起き上がった。開いた口からは荒い息が漏れている。周りを見回すとそこは普段と変わらぬ静かな鈴蘭畑。
  空は曇天だったが雨は降らしていない。静かな昼盛り、雛と最後に会って一週間が経っていた。
  

  どうやら夢を見てたらしい。あまりにも生々しい夢。額にはいやな汗が湧いている。夢であったことに安心しほっと一息つく。だがほどなく言い知れ
 ぬ不安がメディを襲い始めた。立ち上がってもう一度辺りを見回すが、ただ鈴蘭が広がっているだけ。何だか無性に怖くなってきた。自分以外にこの
 世界には誰も存在してないんじゃないか。自分以外の 人は、みんな私を置いてどっかへ行ってしまったんじゃないか。そんな錯覚を覚えるほどの強い
 孤独感がメディを支配する。あの夢の光景が自然と思いだされる。自分を鈴蘭畑に置いてどこかへ行ってしまったあの人影。そして誰からも気づかれる
 ことなく放置され続けた自分。
  メディの小さな心は恐怖に押しつぶされそうだった。誰かに会いたい。自分という存在がいることを誰かに認めてほしい。


 「雛……」


  無意識の内にその名を口にしていた。
 
  雛。自分に優しく接してくれた雛。くだらない話でも耳を傾けてくれる雛。いつも別れる時に自分を抱き締めてくれた。雛にとっては単なる厄祓い
 だったかもしれないが、あの時の温もりがとても心地良かった。すごく嬉しかった。だって他の奴らは毒を操る自分を怖がるか、厄介者扱いするかな
 のに。あんな風に自分を抱き締めてくれたのは雛だけだから。




  雛に会いたい。心の底からそう思った。今すぐ雛の所へ行きたい。でも自分は雛にひどいことを言ってしまった。人間を大切に想う雛の前で人間を
 貶してしまった。雛はどんなに傷ついただろう。今更会って何を言えばいいのか。でも会いたい。止められないこの気持ち。



 「スーさん! 私ちょっと出かけてくるよ!」


  そう言ってメディは今にも雨が降りそうな灰色の空へと飛び立った。

 



 
 
 

  

  灰色の空からは今にも雨粒が落ちてきそうだった。メディは妖怪の山の麓にある樹海を目指して自分が出来る限りの全速力で飛んでいた。遠くには
 妖怪の山が天に向かってそびえている。
  あの下に雛がいる。とにかくこないだのことを謝らなきゃ。そう思っていると鼻先に冷たさを感じた。見上げるとポツポツと雨が降り出して来た。
 雨はどんどんその勢いを増していく。さっきの夢の光景が脳裏に浮かび、また不安に駆られるメディ。
  怖がってる場合じゃない、雛に会いに行かなきゃ。そう自分に言い聞かせて樹海を目指す。激しい雨がメディを叩き落とそうとしているかのように
 小さな身体を打ち付けていく。顔に雨が当たってるせいで目が開けられない。しかしメディは歯を食いしばり、うっすらと目を開けて目印になる妖怪の
 山を目指した。













  大きな木の下で雛は雨を凌いでいた。ざあーっという音と、雨粒が葉っぱに当たって起こすぱしっぱしっという音が辺り一帯に響いていた。川も増水
 しておりいつもの穏やかな流れとは打って変わって、水飛沫を上げてうねっていた。
 

 「あの子今日も来ないのかな……」


  雛が呟く。あの日からこうして毎日川のほとりでメディが来るのを待っていた。朝早くから日が暮れるまで毎日。自分がいかに彼女が来てくれる
 ことを期待していたかを、雛は待っている間に痛感していた。厄を恐れずに近づいて来てくれるなんて。
  でもこれでいいのかもしれない。自分に近づいた者は不幸になってしまうから。彼女と別れる際に厄を集めているがまったく影響が出ないとは限ら
 ない。長い時間一緒にいれば厄の影響を受けてしまうかもしれない。あの純粋な子が自分のせいで不幸になるなんて想像しただけで耐えられない。
 だったら私は一人でいい。誰かを傷つけてしまうぐらいなら一人でかまわない――――。


 「……私何やってるんだろ。自分で来るなって言ったのに待ってるなんて」


  自嘲気味に独り言を言ったその時。









 「雛……」










  雨音に混じり聞き覚えのある声が雛の耳に入ってきた。ずっと聞きたかったその声。驚いて横を向くとそこに待ち人が雨の中立っていた。
 全身ぐっしょりと濡れ、髪からぽたぽた雫が垂れている。


 「メディ!? あなたそんな恰好でどうして……」


  雛の言葉が言い終わる前にメディの顔が歪んでいく。透き通る瞳からは雨粒ではない雫が零れ落ちた。雛の姿を見てメディの中で溜まっていたものが
 一気に弾けた。気がつけばメディは駈け出して雛に抱き付いていた。


 「うあ……雛……、ぐすっ、ひなぁぁ……」

 
  やがて迷子になった子供が親を見つけた時のようにメディは泣き始めた。メディの様子が尋常ならざることを察した雛は、メディの背中をさすって
 あげる。


 「大丈夫よメディ……私はここにいるから……」
 「うう……雛……会いたかったよぉ、雛……」
 「私も……会いたかったわ……メディ」


  会わない方がいいと思ってたのに。メディに再び出会えて心底安心している自分がいる。雛は悟った。私はメディのことが好きなんだ、もうメディに
 会わずにいるなんて出来ない――――。
  しばらくするとメディも落ち着いてきて、だんだん泣き声が小さくなっていった。メディの身体がだいぶ冷え切っているのに気づいた雛はメディに
 静かに語りかける。


 「もうびしょ濡れじゃないの、風邪引くわよ」
 「ごめん……どうしても雛に会いたくて……」
 「謝らなくてもいいのよ。……さて、とりあえずそのままでいるわけにはいかないわね。休める場所を知ってるからそこに行きましょうか」


  メディは涙を拭いながら頷く。濡れた手で拭ったので相変わらずメディの顔の表面には雫が光っていた。雛はメディの手を引いて、木陰に沿って
 その場から移動した。

















  樹海の中にぽっかり開けた広場があり、そこに小さな小屋が建っていた。錆びついたドアノブを廻し、雛とメディは中へと入っていく。小屋の中には
 明かりが無く、樹海の中以上に薄暗い。小さな窓が一つあって雨に濡れた木々がその向こうに見えた。雛がドアを閉めようとするとギイーッといやな音
 が響く。


 「待ってて。今タオルを持って来るからね」


  雛はそう言って部屋の片隅にあるタンスの一番下の引き出しを開ける。出てきたのは色褪せたタオル。雛にタオルを手渡されてメディは濡れた頭を
 わしゃわしゃ拭く。
  メディが周りを見回すと部屋の中央に小さな木の机と椅子が置いてあり、窓のある壁側にはベットが一つ、今自分が使っているタオルと同じように
 色褪せたシーツと毛布が乗っている。他にはさっきタオルが出てきたタンスと食器棚。食器棚には欠けたりひびが入っている皿やコップが並んでいる。
 この家にあるのは生活最低限の物だけで、実に寒々としている。そうこうしてると雛がどこからか蝋燭とマッチを持ってきて机に乗せる。そしてマッチ
 に火を点けるとそれを蝋燭へ移す。暗かった部屋に仄かな明かりが灯り、メディは少し心が安らいだ。


 「ここって雛の家なの?」
 「違うわ、ずっと前からここにあったの。誰かが住んでいたんでしょうけど、私が見つけた時には誰もいなかったわ。中は埃まみれで蜘蛛の巣が張って
 たりして、かなり長い間放置されてたみたい。それから雨風や寒さを凌ぐのに使ってるの」


  持ち主がいない家。まるで自分たちみたいだ。もしこの家に心があるのなら、ずっとここに放置されてどんなことを思うのだろうか。やっぱり私の
 ように自分を捨てた持ち主を恨むのだろうか、メディがそうぼんやりと考えていると。


 「服を脱いで」
 「へ?」
 「濡れた服を着てて気持ちが悪いでしょ。ほら、乾かすから脱いで」


  確かにこのずぶ濡れの服とは早くおさらばしたい。しかしこうも開けっ広げに脱いでと言われると躊躇してしまう。雛とは女同士だが、裸を見られる
 のは何だか恥ずかしかった。でも意地を張ってもしょうがないので言う通り服を脱ぎ出す。ドロワーズだけ身に纏ったメディは片手で胸を隠しながら、
 もう一方の手で服を渡す。本当はドロワも濡れてるが、さすがにこれまで脱ぐのはどうかと思い我慢した。
  この姿だと落ち着かないのでベットの上のくすんだ毛布を身体に被って、ベットに腰掛ける。雛も続いてメディの横に腰掛けてきた。二人とも何も
 話さず、ただ静かな時間が流れる。外からは降りしきる雨の音。机の上の蝋燭の炎が揺らぐと壁に映る二人の影も揺らぐ。沈黙を破り先に口を開いたの
 はメディだった。


 「あの……こないだはごめんなさい、ひどいこと言って……」
 「いいのよ。気にしてないわ」


  毛布の温かさを感じながらメディはゆっくりと次の言葉を紡ぐ。


 「あのね、私……、夢を見たの……」
 「夢?」
 「うん、昔……私が捨てられた時の夢」

 
  忌まわしい記憶が湧き上がってくるがメディは途切れ途切れながらも話を続ける。雛は何も言わずにメディの言葉を聞いていた。


 「スーさんの中に捨てられて……私の持ち主が私を置いてどこかへ行こうとするの……。私は……追いかけたいんだけど身体が動かなくて……、それで
 その人は見えなくなって……。ずっと待ってたけど誰も来てくれなくて。それで、それで……」


  恐怖と悔しさが込み上げてメディの視界が滲んでいく。メディが言葉を詰まらせると雛がそっとメディの頭を優しく撫でてくれた。その雛の優しさが
 何より暖かかった。


 「そう……それは怖かったわね。寂しかったでしょうね……。でももう大丈夫よ、私がここにいるから……」


  そして厄祓いの時のように抱き締めてくれる。メディがずっと恋しかった瞬間だ。だがメディの中には安心すると同時に、ある疑問が浮かんでいた。
 メディは雛の目を見て呟く。


 「ねえ……雛は寂しくないの? 一人で樹海の中にいて寂しくなかった……?」


  メディの問い掛けに雛は一瞬目を見開き、メディから視線を逸らす。言いあぐねているようだったがやがて口を開いた。


 「寂しいと感じたことは……数えきれないくらいあったわ」


  雛はそう言って悲しい目をしながらメディのことを見つめる。メディも雛を見つめ返した。


 「……やっぱり雛も寂しいと感じるのね」
 「うん……。でも今までは寂しくても平気だった。これが自分に与えられた役目なんだって、そう言い聞かせてた。だけど……あなたに出会ってからは
 変わってしまった。メディと過ごしているとすごく楽しくて……、その分メディと別れた後の時間がどうしようもなく寂しかった。今までは我慢できた
 のに。メディが来なくなってからの一週間はずっとメディのことで頭が一杯だった。逢いたくて逢いたくて……、胸が締め付けられるようで……。
 すごく……すごくつらかったのよ」


  雛の目がだんだん潤んでいく。雛が初めて弱さを見せた瞬間だった。


 「だから……今日メディが来てくれて本当に嬉しかったのよ。今日だけじゃない、初めて会った時のこと覚えてる?」
 「うん……覚えてるよ。変な奴がいるなあって思った」
 「変な奴とはあんまりね……まあそれは置いといて。あの時メディは別れ際に『またね』って言ってくれたでしょ? それがすごく嬉しかったの……。
 その言葉通りにメディはまた来てくれた。何回も何回も……。私は厄が移るから来てはいけないって言ってたけど、本当は来て欲しかった。メディの
 おかけで私は人と一緒にいることが素晴らしいことに気づかされたのよ」
 「雛……」
 「私は……メディにずっとそばにいて欲しい。それが偽りの無い気持ち」


  言い終わると雛はぎゅっとメディを強く抱き締める。メディもそれに応えて雛を抱き締めた。雛が自分を必要としてくれている。それがこんなに
 嬉しいことだなんて。だから自分も伝えなきゃ。私も雛が必要だって。メディは瞳に強い意志を宿して雛に話す。


 「ありがとう雛……。雛がそう言ってくれて私……すごく嬉しい。最初は人形解放の仲間を作りたくて雛に会ってたけど……今じゃそんなこと関係なし
 に雛と一緒にいたい。私も雛のおかげで一緒にいる嬉しさと一人の寂しさを知ったから。だから私ね、もう雛に寂しい思いさせないよ。私が雛の
 スーさんになってあげる」
 「スーさんになるって……どういうこと?」
 「スーさんはいつも私のそばにいてくれた。一人ぼっちの私を優しく包んでくれたの。だから私も雛のこと包んであげられるようになる。雛が寂しい時
 は慰めてあげるから……。ほんとは私がたんに雛と一緒にいたいだけなんだけど」
 「メディ……」


  二人は静かに見つめ合う。そして互いの気持ちを伝えあった。


 「好きよ、雛」
 「私も……好きよ、メディ」


  二人の顔が近付いていき、おでこがこつんと当たった。互いの熱い吐息が鼻先に掛かる。そして二人とも目を瞑り口づけを交わした。触れるだけの
 軽いキス。柔らかい唇の感触を共有する。重なり合っていた時間はほんの僅かだが、二人にとっては永遠のように感じられた。やがてどちらからともな
 く唇を離す。


 「ふぅ……」
 「ふあっ……雛、私何か変な気分……。頭がぽーっとして、身体がふわふわして……」
 「嫌だった?」
 「そんなわけないじゃない……大好きよ、雛……」


  メディが首を伸ばしてもう一度キスをする。顔を離すと雛の頬はほのかに赤く染まっていた。自分の顔もこうなってることは容易に想像できた。


 「ねえ……メディ……」
 「何……?」


  雛が今まで聞いたことがない甘く艶っぽい声を出す。

 
 「身体冷えちゃってるでしょう……温めてあげようか……」
 「……うん、温めて」


  メディは羽織っていた毛布を取って素肌を晒した。

 










 



    
  
 「きれいな身体してるのね、メディって……」
 「そ、そんなに見られると恥ずかしいわ……」
 「そうね。じゃあ私の身体も見てくれる?」


  雛は胸元を開けて乳房を露出させた。メディよりもかなり大きくたわわに実っている。


 「雛の胸大きいのね……。私はぺったんこなのに……」

 
  自分の少し膨らみがある程度の胸を見てちょっと落ち込むメディだったが、雛が催促してるかのような目で見つめてくるので、雛の胸に目を移し
 ゆっくりと手を近づけた。指先に柔らかい感触が伝わる。そして掌で優しく愛撫をする。乳首が硬く勃っており、掌で刺激すると雛の身体がびくんと
 震える。


 「ん……ふう……!」
 「大丈夫? 痛かった?」
 「大丈夫……痛いんじゃないの。……その調子で続けて」


  雛の火照った顔をして荒い呼吸をしてるのを見るとメディも興奮してきた。次第にその手の動きが激しいものへと変わっていく。撫でるようにしてた
 のが揉みほぐすような動きになる。力を入れて揉むと指の間から乳肉がはみ出す。それに加え、尖った乳首を摘まんですり潰すように弄ぶ。


 「んあっ!! はあ、あ、いいわメディ……くぅ!」
 「はあっ、はあ……雛……」


  メディは口を雛の胸に近づけた。そして舌を這わせて乳首を舐め始める。雛が一段と大きな嬌声を上げる。転がすように舌で快感を与え続ける。
 メディが一旦口を離すと唾液の糸で自身の舌と雛の乳首が繋がる。メディは再び口を近づけると、今度は乳首を口に含み吸い始めた。

 
 「あああ!? メ……ディ……、それはダ、メ……ああっ!!」 

 
  雛の喘ぎ声を耳にしながら母乳を飲むように吸い立てるメディ。開いたもう一つの乳首は指で摘まんだり引っ張ったり、指の腹で押し潰したりして
 いる。雛はだらしなく口を開けて涎をこぼし、それがメディの金髪に掛かる。


 「うああ、メディ、わたしぃ……ああっ、ああああ!!」


  雛の身体がびくんびくんと震えて絶頂を迎える。メディが口を離すと、雛は肩でぜいぜいと息をしていた。


 「私うまくできたかしら……?」
 「ええ、すごく上手だった……。でもびっくりしたわ。メディったらすごい勢いで吸ってくるんだもの……」
 「そういえばおっぱい出てこなかったね」
 「出るわけないでしょ! まったくもう……ふふっ」


  雛が笑うとメディも何だか可笑しくなって一緒に笑う。しかし笑ってる途中で下腹部に違和感を覚えた。


 「ん……何か変な感じ……」

 
  ドロワ越しに股を弄るメディ。弄れば弄るほどあそこが疼いていく。


 「メディ。そこがむずむずするんでしょ?」
 「う、うん……」
 「私も……だいぶ濡れてきちゃった。今からすっきりしましょうね……」


  そう言って着ている服を脱ぎ出して一糸纏わぬ姿になる。雛の裸体は本当に美しくてメディは思わず見とれてしまった。身体の下の方に目をやると、
 雛の花弁からは汁がこぼれてシーツに沁みを作っていた。


 「メディのせいでこうなっちゃった……ふふっ」


  雛はだらしなくなった自分の秘所を細い指で弄りながらメディに近づき、そしてベットに押し倒した。雛が覆い被さると、メディの胸に雛のたわむ胸
 が密着して柔らかな感触と温かさを感じる。


 「雛……」
 「メディ……愛してる……」


  雛の顔が近付いてきてメディは目を閉じる。さっきと打って変わって濃厚な激しい口づけ。雛の舌が口の中に侵入してきて歯の裏側をなぞる。メディ
 も負けじと雛の口内に舌を滑り込ませ、溢れて来る雛の唾液を飲み干す。互いに背中に腕を廻して強く抱き締め合い求め合う。繋がった口からはいやら
 しい水音と熱い吐息が漏れ、混ざり合った二人の唾液が二人の胸の間に溜まっていく。


 「ぷはぁ……」


  口を離して大きく息をする。すると雛がメディの首すじに舌を這わせながら、メディのドロワを脱がしていく。


 「あ……雛……」


  メディは雛の手の動きに合わせて足を動かし、ドロワが脱げ易くする。そしてメディのドロワが完全に脱がされて、愛液がこぼれる秘部が露わに
 なる。雛は首すじからメディの濡れそぼったそこへと顔を移動させる。雛に恥ずかしい部分を見られていると思うと堪らなくなって、メディは顔を手で
 覆い隠す。


 「メディのここすごい……。メディも興奮してるのね」
 「いやぁ……そんなこと言わないでよお……」


  雛は双丘をゆっくりと愛撫し始める。メディにとってはそれだけで身体に電流が走ったような激しい刺激が与えられる。雛の指は次第に割れ目の
 部分をなぞるように動く。メディの入り口からは愛液が止め処なく溢れて、雛の白い指にねっとりと絡み付く。雛は指に付着した汁を舐め取るとメディ
 の充血したクリトリスを摘まんで擦り出した。


 「あひぃ!?」


  メディの身体が大きく跳ね上がる。


 「さっきのお返しよ。どう、気持ちいい?」
 「うああ! きもち、いいよぉ!! あん、やあっ……ふああっ!!」


  メディはシーツを掴んで押し寄せる快感に耐えていた。目の前が真っ白になっていく。雛はメディのクリトリスを舌の先端で刺激する。ざらつく舌の
 感触にメディの中で何かが決壊しようとしていた。


 「もうダメええぇっ!! 何か来ちゃう、ああ、んああああ!!」


  メディが叫んだ瞬間、メディの秘部から愛液が潮を吹いた。プシュ、プシュ、と断続的に噴き出す分泌液が雛の顔や前側に結んだ髪に掛かる。メディ
 は言うことを聞かなくなった自分の下半身を呆然としながら眺めていた。


 「あ……おもらししてる……。雛の前でおもらししちゃってるよお……」


  消え入りそうな声で嘆くメディに雛は優しく言った。


 「これはおもらしじゃないのよ、メディ。すっごく気持ちが良くなったっていう合図みたいなものね」
 「ほんと……?」
 「ほんとよ。メディ……まだエッチなこと出来そう?」
 「え……。……うん、もう少しなら頑張れそう。びっくりしたけど雛とこういうことするの嫌いじゃないから」


  メディはそう言って頬笑みを見せる。雛はメディにまだ余裕があることに安心して、顔に掛かった粘着質の汁を拭いながらメディに近づいていく。


 「じゃあ今度は二人一緒に気持ち良くなりましょうね」
 「うん。二人で……」


  雛は身体を反転させて所謂シックスナインの体勢になってメディの上に覆い被さる。
  メディの眼前に雛の陰部ときゅっとすぼまった菊穴が現れる。雛のそこからは愛液が垂れ落ちてメディの顔に掛かっていく。割れ目はひくついて
 おり、隙間から赤い膣壁が蠢いているのが見えた。メディは雛の股に顔をうずめて舌を膣内へ侵入させていく。最初は狭かった膣内だが、舌を出し入れ
 していくうちにほぐれてきて、メディの舌はどんどん雛の奥へと進んでいけるようになった。雛もメディ同様舌で左右の壁をほぐしていき、うねる
 膣壁を舌で舐め上げる。雛の花弁からは大量の愛液が出てメディの口の中へ流れ込んでいく。メディはそれを喉を鳴らして飲み干していく。
 

 「はあ、メディ、私すごく気持ちいいよ。メディと愛し合えて嬉しい……。ねえ、メディはどう? 気持ちいい?」

 
  メディは口が塞がっているので、膣壁を一回大きく舌で抉って答えにした。雛も理解して再びメディの秘所へむしゃぶりつく。
 二人の少女が大きく股を開き互いの性器を求め合っている光景は淫靡以外の何ものでもなかった。静かな室内に淫らな水音が響き渡る。やがて雛はさら
 なる快感を求め腰を動かし始めた。メディもより奥まで舌が届くように膣を雛の顔に擦り付けるように腰を動かす。やがて二人に限界がやってきた。

 

 
  雛……、雛……!


 
  
  メディ……、メディ……!




  そしてその時が来た。二人同時に絶頂を迎える。


 「んぶぅ!んんっ、ふぅ、んむうう!!」
 「んうむっ……んん、ああっ、ふあああ!!」


  二人の身体がびくびくと痙攣し、やがて動きが止まった。雛は荒い息をしながらメディの上から退いて、身体を反転させメディと同じ向きで
 横たわる。そして胸を上気させているメディにそっと口づけした。メディも雛の首の後ろに手を廻す。口の周りは互いの精液でべとべとだがそんなこと
 はかまわなかった。












  二人はしばらく何も喋らずに抱き合っていたが、呼吸が整うとメディの方から口を開いた。


 「雛……」
 「なあに……?」
 「私この前は本当に悪いことを言ったと思う。雛が人間を守っているのはすごく偉いことだとも思う。……でも私まだ雛みたいに人間を守りたいとは
 思えないの。まだ人間を恨む気持ちが捨てられないの……。私はダメな奴よね……」


  メディは自嘲気味に呟くと、雛は穏やかな笑みを浮かべてメディの髪を撫でながら言った。  


 「いいのよ、人間に捨てられたんだから恨むのは当たり前よ。でも……確かに人間には悪い面もあるけどいい面もあるのよ。だから少しづつでもいい
 から……人間を受け入れてくれたら私は嬉しいな」
 「うん、分かった……。今すぐは無理かも知れないけど、私なりに人間のことやこの世界のこと勉強して……いつか人間が好きだって言えるように
 頑張ってみる。だから雛も約束してね」
 「何を?」
 「もう自分に近づいたら不幸になるなんて言わないで。私は私だけじゃなく雛にも幸せになってほしいから……。だから私の傍にいて。寂しい時は
 頼って来て。泣きたい時は涙拭いてあげるから思い切り泣いて。私は厄なんて怖くない。だって不幸になってもその分雛が幸せにしてくれるんだもの。
 私も雛に幸せのお返ししたいから……近づく人を拒まないで」
  

  メディははっきりとそう言った。それを聞いて雛の目から涙が一筋、また一筋と、頬を伝っていく。だって自分に傍にいて欲しいなんて初めて言われ
 たから。

 
 「約束よ。はい、指きり!」

 
  メディが小指を立てて雛の顔の前に出す。雛も同じように小指を出して指きりをする。


 「うん……約束するよ……。ありがとうメディ……、私……厄が吹っ飛ぶくらいあなたを幸せにするから……!」


  雛は今までメディが見た中で一番の笑顔で答えた。メディも飛び切りの笑顔で返す。
  雨はいつの間にか上がっており、窓から差し込む明るい日差しが二人を包んでいた。

















  二人が小屋から出ると空は茜色に染まっていた。周りの草木の表面には透き通る水の雫が光っている。
  

 「地面がぬかるんでるから気を付けて」
 「分かってるって、子供じゃないんだから」


  メディの服はまだ生乾きで湿っていたが、今のメディにはどうでもいいことだった。

 
 「じゃあ……厄を集めるから、ってわわっ!?」


  雛の胸に勢いよく飛び込むメディ。雛は一瞬よろけたがすぐにメディをしっかりと抱き締める。


 「もう……こんなに甘えんぼのくせに何が子供じゃないんだから、よ」
 「今は子供でいいのよ!」


  夕焼けの下、メディは雛の温もりを肌で感じていた。メディが一番好きな瞬間だ。


 「いつも雛ばっかだから……今度は私が雛の厄を取ってあげる」
 「え……? あ……」


  メディは雛の身体を強く抱き締める。雛が痛いったら、と言ってもお構いなしだ。雛もメディをぎゅっと強く、強く強く抱き締めた。やがて二人は
 名残惜しそうに身体を離す。
  本当は四六時中一緒にいたいが、さすがにそれだと厄がメディの身体にどう作用するか分からない。反対にメディの毒が雛に影響するかもしれない。
 二人がこれから長い間一緒にいるとどうなるかはまだ未知の世界だった。
  でも二人とも心の中で同じ想いを秘めていた。いつか二人で暮らせるようになるんだ――――と。
  
 







 「気を付けてね。もう暗くなるから」

 
  メディは軽く頷くと雛に背中を見せて帰ろうとする。しかしメディはぴたっと立ち止まって振り返りこう言った。


 「またね雛。また来るから」

    
  雛も言い返す。

 
 「うん、またおいで。いつでも待ってるから」


  雛が大きく手を振るとメディも空に浮かびながら手を振り返す。やがてメディの姿は赤い空に消えていった。






 「待ってるからね……」


  雛はもう寂しくなかった。自分に会いに来てくれる人がいる。自分は一人じゃないんだと分かったから。




 






  鈴蘭が咲き乱れる丘に帰ってきたメディは空を見上げる。空はすっかり暗くなり綺麗な月が浮かんでいる。今日はちょうど満月だった。メディは鈴蘭
 の中に座って月を眺める。きっとあの人も今同じ月を見ているんだろう。そう思うとメディの心は満ち足りていく。月の淡い光がメディの白い肌を照ら
 していた。 
 
  
  
 







  この日メディは一つ賢くなった。生きていく上で大切なことを知ったのだ。

















  一人では手に入らない温もりがあることを――――。
 

 
 今回は人形繋がりということで雛メディです。二人はけっこう似た境遇だと思います。
 孤独な二人が寄り添いあう話が書きたかったのですが、いかがだったでしょうか?
 誤字脱字などご指摘ありましたら遠慮無くお願いします。
ばっきゅう
コメント




1.名前が無い程度の能力削除
これは良い人形カップル。
すっきりとした甘さのいい話でした。
二人共幸せになって欲しいですね。
2.名前が無い程度の能力削除
感動した…! 
あれ、目から汗が…
3.名前が無い程度の能力削除
ここでメディスン物初めて読んだよ・・・
後味の良い作品でした。
4.アメ削除
泣けた。
ありがとう。と何回言っても足りないくらいです。
5.メイ削除
ばきゅうさん誤字を見つけたので、報告しておくね。
メディの”おかけ”で私は人と一緒にいることが素晴らしいことに気づかされたのよ」
”おかけ”じゃなくて”おかげ”だと思う。