真・東方夜伽話

秋の夜長に

2020/11/11 01:34:57
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秋の夜長に

ふきのとう
「‥‥」
「しないのかい」
「‥‥あっ、えっと、あの」

 布団の上であぐらをかいた霖之助。その正面にしゃがんだ影狼は、ゆっくり横に目をそらして頬を掻く。目の前には霖之助の股間。着衣に覆われたそこは、男の象徴を感じさせるような膨らみなども隠されており、見た目はごくごく大人しい。しかし、影狼には感じるのだ。その奥から漂う、あれのにおいが。
 はっきり言って臭いのに、なんでか嗅ぎたくなるすごく意地悪な男のにおい。
 ―――そんなふうに感じちゃうのは、もうなんだかんだ言って相手を好いてるってことよ、OKってことなのよ―――とはいつぞや聞いた酔っぱらった友人のウサギ殿の台詞。まさかそんな。でも、そうなんだろうか。
 こんな微かに匂ってくるだけでもどきどきするのに、直接嗅いでしまったらどうなっちゃうんだろ。色本の女の子みたいに乱れてしまうのかな。そんな光景を想像して、一人で勝手に恥ずかしくなる。だから手が出せない。
 
「‥‥えっと」
「‥‥」

 何もいわずにじっと霖之助が見つめてくる。ちらちらと横目でその顔をみる。いつものポーカーフェイス。しかしかすかに、いつもより息が荒い。そんな彼の様子に、今、彼と夜伽をしているということを改めて認識させられる。そしてますます恥ずかしくなる。
―――恥ずかしいとか言いながら、自分のあそこなんか、とっくに霖之助に舐めしゃぶられて、べちょべちょのじんじんなのだ。いつものドレスの内側で、さんざ辱められてぐっちょりひくついている自分の女陰。それを意識してしまって、ますます顔が赤くなる。なので。

「じ、じ、じゃあ、今日はこれでおしまい。じゃ、じゃあ、おやすみぃ」
「だめ」
「むう!」

 ためしに言ってみたら、顔を股間に押しつけられた。いつもの彼と違うちょっと乱暴な仕草。そして微かだったにおいが急に強くなり、胸がとたんに早鐘を打ち出す。

「尻尾が揺れてるよ」
「!」

間髪入れずに追撃の一言が影狼の羞恥心を煽る。イヤとも言えずに、この状況を受け入れている自分のやらしい様子を突きつけられる。

「脱がして」
「‥‥わう」

問答無用。短く続ける霖之助の言葉に、魔法にかけられたように従ってしまう。両手が
彼の腰に伸び、彼の履き物を脱がしにかかる。においが一段と強くなった気がした。まだ、帯ひもをほどいただけなのに。思わず、つばを飲み込む。布の向こうを、凝視する。

「ほら、手が止まってる」
「せっかち」

その一言が、影狼の精一杯の抵抗だった。




 
*********




「相変わらず客こないわねぇ、ここ」
「やかましい」

 ボードゲームの盤を畳みながら偏屈店主をからかってみた秋の日の夕方。日長一日待ってみたものの、今日にかぎって対戦相手どころかお客すら来なかった。特ににぎやかに会話をするまでもなく、本を読んで駒をいじっていたら日が暮れたのだ。もう、天狗も来るまい。もう暗くなってしまった魔法の森を見ながら、帰り支度をしていたら、何の気まぐれか、晩御飯を食べていくかいと誘われた。いつもの拍子で飄々と。山の巫女さんからお裾分けをもらえたといって猪肉の包みを見せながら。
 気がついたらお泊まりコースだった。

「美味しい。料理じょうずよね。ねえ、いつもここでさみしく一人鍋してるの?」
「寂しいは余計だな」

 店の奥、炎のない不思議なランプの白い明かりで照らす夕食。土鍋で煮込んだ味噌仕立ての白菜と猪はとてもいい匂い。女子とは言え、もとが狼であるからして、お肉は大好き。はふりはふりと熱い息を吐き出しながらお肉を頬張る。

「美味しそうに食べるね」
「私狼だもん。肉食だもん」
「奢った甲斐があったよ。一人じゃ、食べきれないからね」
「味噌に漬けておけばいいのに」
「遠慮なく美味しそうに食べてくれるお客さんがいることだし、折角のとれたて肉だ。新鮮な内に味わいたいじゃないか。一人で食べるより、その方が楽しい」

 誉めてもらったようなそうでもないような曖昧な一言であったが、影狼はありがたく受け止めておくことにした。

「じゃ、その寂しがり屋さんのために楽しくたべましょ。お酒ちょうだい」
「遠慮なしかい」
「さっき奢るって言ったでしょ。だったらお言葉に甘えるもんね」

 そういって影狼がつきだしたお猪口に、霖之助が苦笑しながら酒を注ぐ。後から考えれば、そこで少し調子に乗ってしまったのがよくなかったのかもしれないが、結果論であろう。とにかく楽しくとりとめなく、二人の小宴は続いた。

「ふわあ‥ああ、おいしかったー」

 腹もくちて、ほんのりちょうどよく酒にも酔い、影狼は霖之助の向かいで、にへらと機嫌よく笑っていた。少しだけ中身の入ったお猪口を持って。霖之助も後ろの書棚に背中を預けて、お酒を舐めながら影狼を見ていた。

「よく食べたもんだ。食べさせた甲斐があったよ」
「ごちそうさまでした。ああ、あっつい」

 お酒と鍋料理のおかげで、部屋の温度が幾分上がっていた。じっとり汗ばむ体。影狼は食べる前に胸元のブローチをとってストールをはずしている。それでも暑かったので、襟を引っ張ってぱたぱたと風を胸元に送り込んでいた。
 
「ちょっと、はしたないんじゃないか」

苦笑混じりの声。酒のせいなのだろうか。いつもだったらちょっと冷たさを感じるくらいの冷静さで「はしたないよ」の六文字で済ますのだろうけども、今日は違った。そのわずかな仕草の違いに、なぜだか嬉しくなってしまった影狼は、ここでアクセルを踏み込んでしまった。

「あれ、店主さんもエロいこと考えるのね」
「いや、別にそういう訳じゃない」
「うふふ。あちあちー」
「こら。胸元が見えるよ」
「みせてんの」
「っぐ」

 その五文字に、霖之助がムセる。影狼はしたり顔で、さらにアクセルを踏んだ。

「あらあらぁ、霖之助さんもなかなか‥‥」
「からかわないでくれよ」
「しっかりムッツリスケベねぇ。お店にくる女の子もそんな感じで見てるのかしらぁ」
「見てないよ。ああいう子達とは歳が離れすぎてる。人間は特に」
「あら」

 割とキッパリした返答だった。彼は見た目こそ若いがこれでも半妖、かなりの年月を、博霊結界成立前から重ねて生きてきているのだ。普段の落ち着いた言動もそれに見合うものであろう。そんな彼が珍しくドギマギする様子が楽しくて、いひひ、と犬歯を見せて笑う影狼。霖之助はまた少し顔を赤くして、うつむき加減。部屋の明かりに眼鏡が反射して瞳が見えないが、きっと頼りなげにキョロキョロしているのだろう。勝手にその様子を決めつけて想像して、影狼はさらに調子に乗って、胸元を下げて―――

「うふふ。じゃあ、私のことはどう?ソソられる?」
「ああ」
「へ」

 迷いなき返答に時が止まる。そのあとの光景はスローモーション。ゆっくり顔を上げた霖之助の瞳は、キョロキョロうろついてなんかいなかった。ちょっと怒ったかのようにビタッと影狼をまっすぐ見つめていて。そして体を起こし、立ち上がる。

「あ、えっと、あの」

 普段の彼からは想像できないような、威圧感。彼の体で明かりが遮られ、影狼に影を落とす。

「こ、香霖堂、さん‥‥?」

 哀れ、アクセルを踏みすぎた影狼は、止まりきれずに崖から転がり落ちてしまった。
 

*********


「あ、あの」
「‥‥」

 鍋の火をきっちり止めて。居間の隣にある薄暗い寝室に、戸惑う影狼は肩を抱かれて連れ込まれた。

「あの、霖之助さ‥‥ぁあんっ!?」

 肩から脇に回された右手が、不躾に影狼の乳首を服越しに探りあげて摘む。膝の力が抜けて、影狼は霖之助に深く体重を預ける格好になる。逃げられなくなってしまった影狼をもて遊ぶ右手。左腕は影狼を逃がすまいと力強く押さえてくる。

「君が悪いよ」
「ああ、ち、ちょっと、あひひ」
「‥‥」
「あ、あは、りっ、りんの‥‥あうんっ」

 問答無用で乳首を責め立ててくる霖之助。くすぐったい様子を見せて笑ってごまかそうとした影狼だったが、服の上からぞわぞわ乳首を削られて、思わず鳴き声をあげてしまう。
 
「ちょ、あ、や、あぐぐ」
「‥‥」

 膝ががくがくして体勢が崩れた瞬間。霖之助の左手が影狼の股間に伸び、一体どこで覚えた手管なのか、陰核を正確に服の上から押しつぶした。

「ひぃんっ!」

 衝撃に完全に足の力が抜け、布団にしりもちをつく影狼。それを優しく抱き抱えるように、しかし離すまいといやらしく、背中に密着したまま霖之助も座る。右手と左手は影狼を責め立て続けているのが冷静で憎たらしい。

「ちょ‥っ‥どうしたの、なんか、今日、おかしっ、あう」
「僕だってたまには肉が食べたいときがあるんだ」
「あ、な、なに、それ」
「イヤならここでやめるよ」

 ぴたりと手が止まる。こめかみを汗が伝うのがわかる。熱い温泉に浸かったときみたいに、胸がドキドキしてぼうっとする。呼吸と思考を整えようとする影狼。しかし体は―――狼の本能は―――彼の腕の中から飛び出してくれなかった。

「‥‥いいんだね」
「あ」

 暫しの無言を肯定として。布団の上に、仰向けに影狼は転がされた。背中にさっぱりとした布団の生地の感触。いつの間にか服の背中が緩められて、襟ごとずり下げられ胸がはだけられていた。

「あひいいいっ」

 無言で乳首に吸い付かれ、素っ頓狂な悲鳴を上げてしまう。押しのける暇もあらばこそ、ワンテンポ思考が遅れ続けている影狼の乳首はいとも容易く霖之助の餌食になった。ぬるぬるした舌が、木イチゴみたいな膨らみをあらぬ方向に舐り続ける。それだけでも後頭部がしびれて大変なのに、捕食者はのし掛かって体重で影狼を押さえつけると、空いた手でもう一つの木イチゴをさわさわ撫でさすってくる。体に走るしびれが強くなり、力が抜ける。声が勝手に口からあふれる。

「あ、いや、ああ、あう」
「‥‥」
「―――は」

ふと、目を開けると愛撫が止まっていた。乳首を責め立てていた舌が、糸を引いて膨らみから離れる。ガバリと開いた三角形の口、長い舌。荒い息。体に感じる体の重み。さらに増した彼の威圧感に、思わず影狼の耳が伏せる。

「‥‥く、熊みたい」

 そして煽ってしまう。

「そうかい」
「むぐっー!」

 いきなり唇を奪われる。あのねらねらした舌がねじ込まれて、さっき胸を責めていたときと同じ動きで暴れ回る。伸びた片手が衣服の裾をまくり上げ、下着の中の茂みに侵入してきた。叫び声はすべて彼の口に吸い込まれてしまう。逃げられず、悲鳴すら上げさせてもらえずになぶられる。突然、指が女陰を深く撫でてきた。くちっ、と粘っこい水音。
  
「濡れてるね」
「――――――!!!」

 一瞬口を離したかと思えば、何をか言わんや、この男は。影狼が何か言いかけるまえに、間髪入れずまた舌が突き込まれる。こちらは口をふさがれているというのに、銀髪の熊はやりたい放題だ。しかも冷静なような抑えた口調が余計に余計に腹立たしい。抵抗の意志が生まれかけるが、散々弄くられた体はもう力が入らない。震える腕を彼の二の腕に這わせるのみ。次に口が離されたとき、影狼は水から上がった魚のようにぱくぱくと荒い息を吐くことしかできなかった。

「ワカメ、とはよく言ったものだね」
「‥‥あ」
「きれいだ」

 いつの間にか上体を起こした変態が、むき出しになった影狼の股間を撫でながら何か言っている。下着の紐はいつの間にか解かれていた。濡れた陰毛をみて、きれいだとか、なんなのだ、この男は。大体、夜伽で下着を脱がすならそれなりの作法があるでしょっ、とか現実逃避気味な苛立ちに、影狼はしびれる頭でなんとかしかめ面をして見せたが、それも彼を煽っただけだった。やおら、彼が股の間に入り込む。

「えっ、い、やあああっ!」
「逃げない」

 いきなり股を広げられたかと思った時には、あの憎き舌が股間の茂みをかき分けていた。襞を直接舐めあげられて、強烈な刺激に思わず腰が浮く。しかし腹の上に回された両腕が、それを許さなかった。半妖のくせに、どこからそんな力がでてくるのか。実際はヤられ続けて力が入らないだけであるのだが、影狼にそれを認識できる余裕はなかった。

「あ、ああああ!や、あっ」

 むしゃぶりつく彼の鼻息が聞こえる気がする。やらしい水音と嬌声だけが部屋に響いている。影狼は執拗に股間を襲うぬらぬらの刺激に、自分の嬌声が頭の中で反響するのを、ゆで上がった脳味噌で聞き続けるだけだった。さっき乳首を舐り、口中で暴れ回っていたやらしい舌が、影狼の陰核を容赦なく舐っている。影狼から直接その光景は見えないが、最初に乳首を舐められていたところを見てしまったので、その様子を元にリアルに想像してしまう。

「あ、や、ああ、あ、あ」

 頭を振って、舌をだらりと垂らして大口をあけて。なんとか声をこらえようと唇を噛んでみても、数秒後にはまた声があふれ出す有様。そのうち奴の両手が胸を押さえて、乳首を再び襲い始めた。股間と胸の三点責め。まるで春画の蛸に襲われている女の子のような。頭の中が爆発しそうになる。そして思わず口走る。

「や、やああ、あ、きもち、い」
「―――っふ」
「っ!」

 声ではなかった。鼻息だった。しかし、してやったりと言わんばかりのソレに、腹立たしいやら恥ずかしいやら、影狼の頬がますますゆで上がる。そしてそれは最後のとどめの合図だった。

「あ、ああ、ああああああ!」

 舌先の愛撫が一段と勢いを増した。影狼の腰が小刻みにけいれんし出す。念入りに施された愛撫ですでに下拵えは済んでいた。全身にあふれる刺激と羞恥心は、一気に影狼を押し上げて―――

「ぅぅう゛あああああああっ!」

 茹で上がった頭は「イク」なんて艶やかな台詞すら吐き出せず。替わりに飛び出したのは獣じみた叫び声。閉じた瞼の裏が真っ白に染まったよう。体中が震え、腰が持ち上がる。頭の中は無音。うねり上がった腰と一緒に跳んだ意識が、長い滞空時間の末に、着地しようと降りてきて―――

「もっとだ」
「―――!?」

 無慈悲な追撃。敏感になった体に、痛みすら覚えるような再びの刺激。腰はびくびく跳ねるのに、ぬらぬらの舌はきっちり追尾してくる。頭の中がまた白くなる。
 
「あ、ああああ!」

 続けて2回。どれだけの時間跳んでいただろうか。視界に色が戻ってきたとき、彼の顔が間近にあった。

「きれいだよ」
「がうっ!」

 余裕の一言をカマす愛液まみれの顔面に向かって、気が付いたら頭突きをかましていた。

 

*********


「眼鏡が壊れるかと思ったよ」
「うっさい」

 隣の居間に出しっぱなしだった、冷めた湯飲みのお茶を飲み干して。まだふらつく体を霖之助に預けたまま、影狼はぶーたれる。
 乱れた赤白のワンピース。胸は相変わらずむき出しのままゆるゆると揉まれ続けていた。ときおり指が先端をかすめ、影狼の肩が跳ねる。その虐待を相変わらずのすまし顔で続ける銀髪眼鏡。この指のせいで体の火照りが収まらない。今は触られていないはずの股間が、胸に触られる度に、ぎゅうと締まって涎を垂らしているような気がして、また影狼の顔が赤くなる。

「さて。体は動くようになったかな」
「だ、だめですー。わたし、もううごけませんー‥あうっ」

 おちゃらけて霖之助のいたぶりをごまかそうとする影狼だったがあっけなくあえぎ声を上げさせられてしまう。こいつが何をさせようとしているかぐらい解る。さっきから、”それ”の匂いが強くなってきている。

「動けないなら勝手にさせてもらうよ。でも悔しくないのかい。まあ、ヤられ放題でいいというのなら遠慮なくこちらから」
「ぐ」

 なんでここで饒舌になるのか。はふはふ荒っぽい呼吸に引きずられて口数が多くなっているんだろう。男が発情している様をあからさまに見せられて思わず逃げたくなるのだが、体を少しでもよじろうものなら乳首をはじかれて体の力を抜かれてしまう。まるで首輪をつけられたよう。
 そして、実際この男の言うとおりで。さっきから好き勝手ヤられて、腹立ちも感じていた影狼である。このまま無抵抗で最後までされるのはイヤだった。‥‥結局は彼の思い通りになろうとしているのも、なんとなくイヤではあったが。

「ふん」

 片手を銀色熊の股間の上に置く。ソレをさわりと撫でると、ようやく観念したか、と言わんばかりに乳首から手が離れた。ムカつく。

「‥‥いざとなったら天狗に正体ばらしてやるわ。道具屋の主人はスケベで変態だって」
「そりゃ、勘弁だな」

 影狼は、牙を見せて唸りながら、あぐらを書いた霖之助の正面に座り、体を前に傾ける。影狼の服はもう腰まで落ちて、かろうじて腰回りを覆うのみだった。自分の胸のむこうから匂いが漂ってくる。未だ衣服に覆われたソレの、やらしい匂いが。ふと、腰を浮かせた瞬間に、自分の濡れた股間から滴が垂れたのが解った。

「んっぅ」

 思わず声がでる。屈服させられた自分の体をイヤというほど感じさせられて身震いしてしまう。さらにそれを意識するとますます中から何かあふれてくる気がして、体が固まってしまう。

「‥‥」
「しないのかい」
「‥‥あっ、えっと、あの」
「‥‥」
「じ、じ、じゃあ、今日はこれでおしまい。じゃ、じゃあ、おやすみぃ」
「だめ」
「むう!」

 逃げることなど叶わず、鼻先が匂いの元に押しつけられる。

「尻尾が揺れてるよ」

 小憎たらしい一言。もう、それから顔を離せない。

「脱がして」
「‥‥わう」
「ほら、手が止まってる」
「せっかち」

 ずるりと下げた着物の向こう、下着に包まれたソレがある。すこし、下着の先端が、中から染み出した液体でぬらりと光っていた。

「濡れてる」
「君があえぐ様子が楽しくてね」
「う゛ーっ!」
「失礼。エロかったから」
「変態変態変態」

 威嚇する影狼の頭にぽん、と手が置かれる。耳をさわさわ撫でられて、くう、と喉奥から子犬みたいな声が漏れてしまった。
 
「よしよし」
「犬じゃないわよ、わたしは」
「そうかい」
「そうよ」

 あくまでも優しく。しかし、少しずつ下着へと頭を持って行こうと圧してくる手の動きに、影狼は従ってしまう。流されてるのかなぁ、と現実逃避気味に遠い目をしていたら、いつの間にか鼻先にあのシミ。すん、と匂いをかぐ。思わず声がでた。

「クッさ」
「ひどいな」
「‥‥私のも臭かった?」
「臭くはなかったよ」
「ホントに?」
「エロい匂いだったよ」
「‥なによ、それ」

 あっけらかんと放たれるこっぱずかしい台詞。しばし上目遣いで変態を睨むと、影狼は染みを下着ごと、口に含む。霖之助の体が、微かに跳ねた。唇でやわやわと揉んでみる。もごもご唇がうごめく度に、彼の唇から深く息が吐き出される。―――そうか。気持ちいいんだ。
ぷはっ、と口を離したら、染みの範囲が広がっていた。

「横になって」
「押し倒してくれないのか」
「くそばか」

 牙を剥いて飛びかかり、奴を布団に押し倒す。そのまま着物の前をはだけ、霖之助の乳首を口に含む。あ、と小さなあえぎ声が聞こえた。まるでさっきの状況をひっくり返したようで。やり返してやれるのは清々するが、散々霖之助を変態となじった今となっては、まるで自分まで変態になった気がしてしまう、のだが。

「あなたも乳首弱いのね」
「っく」
「ぬふ」

 思わず笑みがこぼれる。影狼が舌を動かす度に、小刻みに跳ねる体。男らしいボリュームのある胸が、意外と締まった腹が、影狼が舌を動かす度にびくびく動く。それが影狼には楽しくてしょうがない。

「えい」
「ぐ」

 乳首を指で転がしてみる。これもさっきやられた事の仕返しだ。手入れされた赤い爪の先端でカリカリつま弾くたび、まるで楽器のように声が漏れる。ふと、霖之助の股間に目をやれば、下着はすっかり染みで覆われていた。

「‥‥」

 舌で乳首を舐りながら、そっと下着を横にずらす。抑える物がなくなって、赤黒い陰茎が、ぶわんと薄闇に立ち上がった。横目で見ていたそれは予想より、大きかった。

「わ」

 思わず顔をそちらに向ける。そそり立つそれは、まるで持ち主を体現したかのように、太くもなく細くもなく、しかし力強くごつごつと、入れ墨のように青黒い血管を纏い、キノコのように暗がりに匂いをまき散らす。鬼が持っている金棒というよりは、刀かなにかのように思える逸物だった。ほんの少しだけ皮をかぶっているが、先端はすっかり露出して、ねらねらと粘液を纏っていた。匂いがさらに強くなる。花に誘われる虫のように、影狼は顔をそれに近づけていった。

「エロい匂いね」
「だろう」
「臭いけどエロい」

 これもさっきと逆。霖之助の足の間に体を潜り込ませた影狼は、暫し陰茎を握ってもてあそぶ。

「ひどい見た目」
「一目で目的が分かるいい形だと思うよ」
「ひどい会話だわ」

じらしすぎて無理矢理くわえさせられる前に、その刀を口に含む。また小さなあえぎ声が聞こえた。

「むう」

 あの匂いが鼻を通り抜け、頭の奥がしびれた。ぬるりと舌を滑る潤滑剤は自分の涎か彼の粘液か。しばらく舌を動かしてそれを舐めとると、熱い本体が直に舌に触れる。這い回る血管の感触を確かめるように、ずるずると舌の腹で裏筋を擦りあげる。そうしてやれば「はふ」とぽってりとした溜息が聞こえて腰が跳ねる。唇でしごいてみたり、くびれの谷間に舌を這わせてみたり、それぞれ違った反応が返ってくる。さっきまで散々自分を辱めた相手にあえぎ声を上げさせるのはとても楽しかった。攻められている霖之助は優しく影狼の頭を撫でながらまたも冷静を装って声をかけてくる。

「そんなに美味しいかい」

 口を離して、霖之助の顔を見る影狼。吐き出す息はすっかり肉棒のにおいに染まっていて、口の周りは涎でべたべた。吐息に色がついているような錯覚を覚えながら、やらしいにおいの息を吹き付け、長い舌をだらりと垂らして。これもさっきの意趣返し。にや、と笑って見せた影狼に、霖之助もほんのり口角を上げた。

「どーかしらぁ」
「夢中で舐めてるように見え―――」
「うっさい」
「ふわっ!」
「黙って鳴きなさいよっ!」
「ぐっ!」

 今度は最後まで言わせない。肉の棒を鷲掴みにすると、その下にぶら下がった陰嚢を口に吸い込んでぞわぞわとしゃぶる。今度はこちらが黙らせる。

「あ、こらっ、ぐうっ!」

 暴れる腰を捕まえて、尻尾をばたばた振りながら、獲物の袋と竿をべろべろさわさわ責めまくる。少し苦しげなあえぎ声に変わった。内心ほくそ笑みながら、影狼は手を緩めずに責めを続ける。ひくつく玉袋を唾液でびしょぬれにして唇で揉む。今度は吐き出したぬるぬるの玉袋を指先でもてあそびながら、裏筋に口づけ。そして竿の先っちょを舐めながら根本を軽く押しつぶすようにとんとん刺激する。二の腕に触れる霖之助の太股に力が入った。体がこわばり、肉棒が一回り大きく膨らむ。

「く、あっ、待ってくれ、強いっ」

 聞くものか。震える声を無視して、手と口を動かす。彼の腰が跳ね始める。
――――ほら、だしちゃえ。

「ぐっ!」
「ぶふっ!」

 決壊は突然だった。腰が強く跳ねたかと思った瞬間、後頭部を押さえられ、のどの奥にドロドロをぶちまけられる。鼻に抜ける強烈な匂い。溢れるそれを口で受け止める。

「あ、ああ‥‥」
「むふ」

2、3度呻くと、腰はぐったりと布団に沈んでいった。影狼は口をすぼめながら肉棒を口から抜く。その様子を霖之助が見つめていた。快感と戸惑いがない交ぜになったような、気の抜けた顔。苦い。口の中が、エロい味で一杯だ。
 
「‥‥」 

 呆けた顔の霖之助。影狼はいたずらを思いつくと、口を閉じたままの顔を霖之助に近づけてゆく。にちゃ、と口を開いて、白濁が絡みつくねらねらの口の中を見せ―――

「ぶわぁー」
「おわっ!あ」

 飲み込まない。開いた口をそのまま霖之助の胸元に口づけて、べろべろと汗ばむ胸を真っ白な舌で嘗め回す。出した物を胸にぶちまけられた霖之助が慌てているが、影狼はお構いなしに舌と頬を使って、白濁をなすり付けていく。なま暖かい感触と脳髄が痺れる匂いに、霖之助が身悶える。ときどき乳首をついばむのも忘れずに。イった直後に責められて、力なく跳ねる体。これも、さっきされたこと―――

「あはぁ」

 すっかり霖之助の胸に白濁を塗りたくって復讐を遂げた影狼は、口の周りどころか頬までぬらつかせて嬉しそうに尻尾を振った。美味しかった猪鍋の残り香などあっさり押しのけて、今や居間と寝室はまるで栗の花をぶちまけられたような淫靡な匂いで一杯になっていた。

「‥‥きれいね」
「やってくれたな」

 起きあがった霖之助が体を入れ替えるように影狼を布団に引き倒す。きゃっ、と嬉しそうな悲鳴を上げてうつ伏せに転がされた影狼の尻が乱暴に持ち上げられた。女陰に、精液の匂いですっかり復活した肉の刀がねらいを定めている。それを感じ取った手負いの狼は、ダメもとで命乞いをしてみる。

「やさしく、してね?」
「無理だな」
「!」

 先端が触れることもなく、いきなりど真ん中を貫いて最奥を叩く逸物の容赦ない感触。

「ああ゛っ!」

 マゾ的な快感が影狼を鳴かす。打ち込まれたモノが、ビクビクと蠢く。衝撃ですっかり力が抜けてしまって、くずおれそうになる腰が、無理矢理持ち上げられていて。
 
「っひ、い、いきなりっ‥‥」
「動くよ」
「んま、まっ、あおんっ!」

 問答無用で肉の刀が影狼をエグり始める。まだ刺激に慣れていない膣を、無理矢理自分の形にこねくり回しながらゴリゴリと出入りする。一突きごとにあっ、あっ、と勝手に声が押し出される。ジワリと腰にしびれが広がっていく。思わず尻尾が暴れ回り、霖之助のめがねをはたき落とした。

「邪魔」
「ひぃん!」

 腹立たしそうな声と同時に尻尾が乱暴に捕まれ、背筋が震える。そのまま尻尾ごと、後ろから抱き抱えられる。霖之助の胸が、影狼の背中に密着する。塗りたくられた精液が、汗と混じって粘度を取り戻していた。接着剤のようにべちゃりと広がる感触に背中が粟立つ。ドカドカと後ろから突かれ、とめどなく声があふれ出す。

「出すぞ!」
「あ、いい、いいよ!だしてっ!」
「くあっ!」
「あうっん!」

 ひときわ強く打ち付けられた腰が、一番奥でさらにドンドンと暴れる。ジワリと何かが腹に染み込んでいくような気がする。叩きのめされた衝撃に、舌をつきだし、声なき叫びをあげながら背中をふるわせて。

「か、はっ」

 腰を上げて布団にはいつくばる。ずろっ、と余韻もなく逸物が引き抜かれる感触、そしてまたもや乱暴に影狼は転がされる。もはや力なく天井を見上げる彼女に、銀色の熊が勝ち誇ったように抱きついてきた。精液で粘つく胸を密着させ、唇に舌を突き入れる捕食者。その目を見つめたら、ギラリと瞳が輝いた。どんな顔をしていたのか、鏡もなく判りゃしないが、とにかく、「ソソられる」しおらしい目をしていたのだろう。
 太股にすり付けられた肉の刀が、出したばっかりなのにあっという間にむくむくと膨らんでゆく。影狼は観念して、再びの衝撃を受け止めるべく、そっと目を閉じ―――

「きれいだよ」
「むうう!?」

 ばかじゃないのと言おうとして、もう一度肉の刀で串刺しにされ。

「――――!」

 影狼の視界は、真っ白になった。その晩のまともな記憶は、そのクサい台詞までだった。


*********



「同意は得たつもりだったんだが」
「罪の意識なしと。やっぱり天狗に言いふらした方がいいかしらね」
「だからそれは勘弁してくれ」

 一晩あけて、秋晴れの高い空のもとに、洗濯された男女の衣服と敷き布団がやさしい太陽の光と風を浴びていた。店の前に出した揺り椅子に座る、浴衣姿の二人。影狼は後ろから抱き抱えられるようにして、霖之助の腕の中にすっぽり納まっていた。
 あのあともう何回か行為は続き、すっかり疲れ果て、二人の股間から溢れる体液もそのままに、抱き合って眠ってしまった二人である。朝起きて、先ずしたことは異臭ただよう部屋と自分たちの体をどうにかすることだった。

「まだ、匂うわね」
「そうかな。外の世界の洗剤も使ったんだけどな」
「染み着いたわよ、体に」

 実際のところ、人間相手であればわからない位までには匂いはどうにかできていたが、影狼には、はっきり感じられていた。まるでどんなに洗っても落ちない、淫靡なニオイを放つ見えない入れ墨を入れられたようで。

「落ちないわー。落ちないわぁ、このニオイ。ひどいめにあったわー」
「楽しんでただろうに」
「ちーがーいーまーすー。襲われましたおそわれましたー。‥‥ふん。肉を食べたいとか言ってたけど、いつもああやって獲物を待ってるのかしら」
「いつもじゃないよ」
「へえ」
「初めてさ」
「!?」
 
 狙われたのは、自分だけ?―――それは、つまり。

「そしてうまくいった」
「‥‥っ」
「思いがけずマーキングもできた」
「んがっ!」

 淡々と、しかしこらえきれない喜びを孕んでつぶやかれる勝利宣言。こっちはからかうのに失敗して大事故を起こしたと思っていたのに、そんなこと言われたら。
 後ろから影狼をやさしく抱きかかえる腕。その手の甲に自らの手のひらを重ね、ぎゅっと握る。
 ―――いちど抱かれたくらいで、チョロい雌犬だわ、私も。

「ねえ」
「もう一度風呂に入るかい」
「違う」

 手握って雰囲気まで出してるのに。わざとボケているのだろうか、この男は。

「責任、とんなさいよ」
「‥‥ああ」

 噛みしめるように、呟かれた返答。
 赤いもみじが綺麗に舞う、小春日和の午後のことだった。
 
影「そうやって生まれたのがあなたよ」
椛「親の生々しい馴れ初めなんて聞かせないでよ恥ずかしい!」

白髪+黒狼=白狼?



ナニがとははっきり言えませんが、大変ながらくお世話になりました。ありがとうございます。
そのうちここに投稿したいと思いながら早幾年。思いがけず幕引きの報を聞き、居ても立ってもいられなくなり。気がつけば人生初のエロSSが爆誕していました。
 新人会社員の頃、初めて出向いた長期出張先での休暇日、夕暮れの喫茶店でナポリタンをすすりながらガラケーで覗いた夜伽話は、今でもどうしてかわからないくらいハッキリ残る謎の思い出です。きっと、とんでもなく癒されたのだと思います。

本当に、今までお疲れ様でした。
 
https://www.pixiv.net/users/179008
ふきのとう
コメント




1.性欲を持て余す程度の能力削除
初の割には問題なく読めたし充分実用的だと思う。言うべきことはキッパリ言う霖之助がいい味出してるなと
いろんな意味でご馳走様でした
2.性欲を持て余す程度の能力削除
一旦始めたら割と強気な霖之助と軽口の応酬が良かったです。
最後に影霖ネチョに出会えて嬉しい。
3.性欲を持て余す程度の能力削除
夜伽で霖之助さんの話がまた読めるとは思いませんでした。とても良かったです。
4.性欲を持て余す程度の能力削除
鬼畜眼鏡な香霖、大変エロくて大好きです。
そして鬼畜眼鏡と見せかけて影狼ちゃんだけを見ていたラブラブエンドも非常にかわいくて大好きです。
ご馳走様でした!