真・東方夜伽話

袿姫さんとお風呂で愛し合う話

2020/10/30 20:28:50
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袿姫さんとお風呂で愛し合う話

注意点
・二次設定、独自設定、独自解釈等があります。
・オリキャラ(名無し男)との絡みになります。また、男には台詞があります。
・夜伽パートは2番のみです。1番と3番は夜伽要素のないパートになっています。

1.
 畜生界に存在する建物、霊長園。一見古墳のように見える謎の建物だが、実は内部には人が住める居住スペースが存在する。但し、それは霊長園の全てが、ではなく半分、はたまた数分の一だろうが、自分も詳しくは知らない。
 しかし、居間、台所、寝室、浴室等々必要な物は全て収まっているし、工房、制作品置き場、資材置き場なんてのもある。
「出来たー!」
 その中の一つ、先に挙げた大きな工房の戸の前に立ち、引き戸を開けようと引き手に指を掛けた瞬間に中から聞こえたのは、工房の主である造形神の大きな歓声だった。
「袿姫さん、入りますよ」
 突然の声に驚いて止まってしまった手に再び力を入れて、戸を開けて中に入る。返事は待たなかった。先の大声の内容から察するに、もう自分が気を遣う必要はないだろう、と。
 案の定、工房の壁際に配置された、小物を作る際に使う机の上には、ここ数日身を入れていた制作物の完成品――手の平大の鏡と、それを嵌める枠のようだ――が置かれていた。そして、こちらも案の定、その机に袿姫が力尽きたように突っ伏してこちらとは反対側を向いていた。
「袿姫さん」
 改めて声を掛けると、ようやくこちらに気付いた彼女はのそりと顔をこちらに振り向かせて、手をひらひらと振る。
「……○○、どうしたの?」
「お風呂が沸きましたので、先にどうですか?」
「……ん、そう……」
 袿姫ははいともいいえとも言わず、ぼんやりと呟くと、ふー、っと息を吐く。先の声から察するに、完成したのはついさっきだろうから、もう少しその余韻に浸りたいのかも知れない。そう思い、返答を待つ間にまだ言っていなかったある言葉を言う。
「袿姫さん、完成おめでとう。それと、お疲れ様」
 すると、彼女は突っ伏していた体を起き上がらせて椅子の背もたれに思い切り背中を預けると、んー、っと伸びをする。
「ありがとう。すぐに出来上がると思ってたんだけど、いつもみたいについつい熱が入って、結局思ったより時間掛かっちゃった」
 袿姫は疲れの見える、だがそれ以上に達成感に満ちた晴れやかな笑顔を浮かべる。彼女が手の込んだ物を仕上げた時に見せる、この笑顔。頬や髪には泥や埃が多少付着してしまっているが、とても綺麗に輝いていて美しくて、いつも見惚れてしまう。
「……それとお風呂だけど、悪いけど私ちょっと眠くなっちゃったから、あそこの布団持ってきてその辺りに敷いて欲しいなーって……」
 しかし、残念ながらその優美な笑顔を早くも欠伸で崩すと、工房の片隅に位置する仮眠用スペースの布団を指差す。どうやら、そこに行って布団を敷くのも面倒だから、床で寝るつもりらしい。
 袿姫は日々の制作作業で疲れているので、風呂くらいは長くゆっくり浸かれるように調整したので、それが冷めてしまう前に入って欲しかったが、それほど眠いならしかたない。元々、制作が終わっていなかったなら、碌に入らないこともままあるのだ。それと同じだと思えばいい。それに、照明なんかの設備も整った霊長園の中では分かりにくいが、時刻も就寝には頃合いの時間だし、このまま寝かせてあげよう。
 ……とは、残念かつ心苦しくも出来なかった。
「駄目です。その前にお風呂に入って、ちゃんと寝室の布団でしっかり寝ましょう」
 首を横に振って袿姫の頼みを払い除けると、彼女はしばしの沈黙の後、優しく穏やかな微笑みを浮かべた。
「私、〇〇のこと、好きよ。愛してるわ」
「……ありがとうございます。俺も、袿姫さんを愛してますよ」
 突然の愛の言葉に一瞬言葉を詰まらせながらも、自分も心は一緒だと返す。
「だから」
「駄目です。制作中は生活の乱れもしかたありませんが、一段落したら無理矢理にでもきちんとさせるようにと磨弓さんに言付かっておりますので」
 だが、その愛の言葉が何を意図してのものかは大体分かるので、自分から先手を打って執事よろしく一礼する。すると、彼女の笑顔は分かりやすく曇り、恨めしげにこちらを見る。
 現在、袿姫の従者かつ埴輪兵長でもある磨弓さんは霊長園にはおらず、地上の恋人のところへ暫く泊まりに行っている。なので、その間の袿姫の身の回りの世話は自分が任されていた。
 とはいえ、身の回りの世話とは言っても袿姫は自分のことは自分でするので、それこそお姫様の如く何から何まで面倒を見る必要はない。そもそも、掃除や洗濯は埴輪達がしてくれるし、料理なんかは袿姫自身が磨弓さんと一緒に台所に立つ時もある。
 けれど、ここ数日みたいに何か大事なものを作る際に作動する、造形スイッチと言うべき物が入ると様々なことが蔑ろになってしまうので、その際はしっかりと見守らなくてはならないのだ。
 現に、袿姫は二日前の昼過ぎに磨弓さんが出掛けてから制作に入り、それから今まで、食事は自分が持ってくるまで忘れ、睡眠も言わないと眠らない、風呂は促しに促して汗を流す程度のシャワーのみ。それも、五分入っていたかすら怪しい。汗や汚れを流して着替えているだけマシと言えばマシだが、制作作業での汚れを考えると雑としか言えない。
 もっとも、そんな風にいい加減になってしまうのは袿姫自身も自覚している。自覚しているからこそ、基本的には従ってくれるが、当然全て『はいはい分かりました』となるわけではない。こんなのは日常茶飯事だ。
 それからしばし、彼女の不満顔と紫色の瞳にむーっと睨まれていたが、いくら視線を送っても無駄だと判断したのか、ぷいとそっぽを向いて改めて机に突っ伏してしまう。
「いいもの。私は勝手に寝ちゃうから」
「なら、俺は勝手に連れて行きます」
 売り言葉には買い言葉。但し、言葉だけでなく、突っ伏すという行為も売る袿姫に対抗し、自分も彼女を椅子から立たせてエプロンの紐と金具を解く行為を持って買う。
「きゃー、襲われるー」
 それに対し袿姫は全く悲壮感のない悲鳴を上げ、なすがままになる。寝るにせよ風呂に行くにせよ、エプロンや道具類、勾玉の首飾りは邪魔なのでここは無抵抗なのだろう。
 そうして大した抵抗も無くそれらを脱がせ、エプロンと一緒にまとめて椅子に掛けておく。
「ふふ、ありがとう。脱がせてくれて。じゃ、おやす……」
 案の定、黄色いワンピース姿になった袿姫はにやりと笑うと、立ち上がった流れそのままに片隅の布団に直接向かおうとする。
「袿姫さん、少しなら寝ててもいいから大人しくしてて下さいね」
 でも、こちらもそうなるのが分かっていればいくらでも手はあり、言いながら袿姫の腰に手を回して、ぐいと抱き寄せる。
「えっ? ……ひゃあっ!」
 そして、袿姫をお姫様抱っこで抱き上げた。
「では、行きますよ」
 袿姫は余程驚いたのか、黙ったままこちらを見上げて目をぱちくりさせるが、暴れたり降りようとしたりはせず、ふいと横を向いてしまう。
 そんな彼女を抱えながら、開けっ放しの戸から浴室へと向かって歩き出した。

 浴室へ向かうまでの道すがら、もっと口々に眠い寝たいこのまま寝室に連れてってなどと言われると思っていたものの、意外にも袿姫は本当にとても大人しくしてくれていた。もっとも、それは道のり三割辺りで頭をかくんと揺らして軽く寝てしまっていたからだが。
「袿姫さん、着きましたよ」
「……ん、んぅ……」
 浴室前の脱衣所に着いたところで、袿姫に呼び掛ける。因みに、脱衣所に入る引き戸は行儀が悪いが脚で開けた。
 名前を呼ばれ、袿姫は浅い眠りからぼんやりと目を覚ますと目元をこすってまた欠伸をする。その後、彼女の体を倒れたりしないようにしっかりと支えつつもそっと下ろす。
「では、俺はまた工房に行きますので……」
 そして、そう言い残してこの場を跡にしようと袿姫に背を向ける。あのまま放置してきた工房の片付けをしないといけないし、居住スペースだけでも十分に広い霊長園の工房から浴室まで彼女を一度も下ろさずに運び終えて、慣れないことに若干震える腕を見せるのは恰好悪い。
 それに、袿姫は相変わらず眠そうにしているが、流石にここまで来て寝てしまうなんてないだろうと思ったからだ。
 ところが、袿姫は去ろうとするこちらの袖をぎゅっと掴む。その力はあまり強くないが、流石に理由も聞かずに振り払ったりはせず、そちらを振り向く。
「……まだ、駄目。服、さっきみたいに脱がせて……」
 すると、瞳をとろんとさせた、いかにも夢うつつの袿姫はそう呟いた。
「……はいはい、少し待って下さいね」
 どうやら、服を脱ぐのも面倒なくらい眠いらしい。それくらい自分でして下さいと突っぱねることも出来るとはいえ、寝たい彼女を強引に連れて来た手前それは酷な返しだ。まあ、服を脱いでいけば肌寒さで目が覚めるだろうと判断し、しかたないか、と袿姫の方を向き直す。
 まずは頭巾の紐を解いて、するりと脱がす。多少土埃が付いてしまっているものの、美しい青い長髪がふわりと揺れて、僅かに雲の浮いた空を思わせる。
 続けて、手足に巻いた紐も解く。本人曰くこれはやる気を出すための、言わば鉢巻のようなものらしい。
「袿姫さん、手を上げて下さい」
「ん……」
 最後に一枚残った、エプロンを着用していたとはいえ幾らか汚れの付いたワンピースを脱がせる。
 すると、全体的に可愛らしい花柄があしらわれた薄い桃色のブラと、それに包まれた豊満な胸が現れる。更に、くびれがありつつも程よく丸みもある抱き心地の良い腰回り、ブラと装飾や色合いを合わせたショーツ、滑らかな白い脚と続く。
 袿姫は未だにうとうとしていて色香というものは正直かなり薄いが、見目麗しいスタイルを惜しげなく晒す恋人の下着姿に、静かに一つ息を呑む。
 袿姫を抱き上げた状態の至近距離でここまで運び、服も下着を残して脱がせたところで改めて思うが、ここ数日碌に入浴していないのに、今日だって幾らか汗をかいているだろうに、嫌な匂いなんて全くしない。それどころか、普段はふわりと香る程度の袿姫の匂いをいつも以上に濃く感じて、心臓がどくんと跳ねる。
 それを意識してしまうと、内に秘めていた欲望がどんどん膨らんでいく。磨弓さんが霊長園を空けてから早々に先の制作に入ったので、懇ろどころか多少のスキンシップすらお預けだったし、制作中に気を散らせては悪いと用事が無ければ出来る限り顔を出さずにいたのだから。
 しかし、今はそういうことのために脱がせているのではない。彼女を風呂に入れるために脱がせているのだ。それに、ワンピースを最後と形容したように、これ以上自分が脱がせるつもりはない。何より、もしそうなったら自分を抑えられる自信も無い。
 なので、衣服を脱がすのはこれで切り上げて、ここを去る前にもう一度声を掛けようとした瞬間、袿姫は体をぶるりと震わせるとそれなりに開いた目でこちらを見る。
 どうやら先の思惑どおり肌寒さに目が覚めたらしい、と一息ついたのも束の間、袿姫は次に自らの姿を見て、続けてこちらの腕にかかったワンピースを見ると、自らの体をぎゅっと抱き締めて身を隠そうとする。
「え、ど、どうして私、脱がされてるの? も、もしかして、私、これから犯されようとしてる?」
「……違いますよ。風呂に入るために脱がせろと、袿姫さんが言ったんじゃないですか」
 寝惚けているのか本気なのか分からない反応に半ば呆れつつもそう返すと、彼女はしばし固まった後、頬を赤らめて苦笑いする。どうやら、本当に勘違いしていたらしい。
「……そ、そうだったわね。ごめんなさい」
「とにかく、服は脱がせましたし、袿姫さんも目が覚めたようなので、俺はこれで……」
 何はともあれ、記憶も眠気も心配なさそうなので、不意に昂ってしまった気持ちを工房の掃除で抑え鎮めるべく、持った衣服を洗濯籠に入れてさっさとこの場を離れようとする。
「待って」
「……まだ何かありましたか?」
 だが、またもや袖を掴まれて引き止められてしまったので振り向くと、袿姫は頬に赤さを残した上目遣いでこちらを覗く。
「お風呂、一緒に入りましょう?」



2.
 霊長園に住む、もしくは定期的に訪れる者の中で、風呂に入る者は片手の指すら折り切らない人数しかいない。しかしながら、ここに備えられた浴室は広く、実行した試しはないがその全員が一度に入ろうともまだまだ余裕があるだろう。
 そんな風呂場にある浴槽もそれに見合った大きさであり、自分と袿姫がそれぞれ大いにのびのび出来るくらいの面積がある。にも関わらず、体を洗い終わって湯船に浸かる自分達は横並びに隣り合っており、その広い空間を贅沢に余らせていた。
「でも、どうして今日は一緒に、なんて?」
「どうして、って……。今までだって何度か一緒に入っているのに、誘うのはそんなにおかしいかしら?」
 こちらの質問に、湯浴みですっかり目を覚ました袿姫は、湯の温かさにほんのりと上気した顔で、何が不思議なんだと言いたげに首を傾げさせる。確かに彼女の言う通りなのだが、今までに一緒に入った時というのは、自分も彼女の手伝いをして二人して汚れてしまった時のような、二人ともが入る事情がある時が殆どだ。今日のような、むしろ自分はこれから汚れるであろう時は記憶にない。
 とはいえ、それも『殆ど』であり『絶対』ではないので、今日は一緒の気分だっただけで、特に他意はなかったのかも知れない。それか、湯船で一人寝てしまうのを防ぐためだったのかも。
 そんなことを考えながら、溢れこそしていないが予定よりも水嵩の高い、半身浴に向いた温度の湯船の温かさに浸る。何だかんだいっても、やっぱり風呂は気持ちいいものだ。
 すると、少しの間を開けて、袿姫は「だって」と呟いた。
「この二日間と半日、〇〇と碌に話もしていなかったから、少しくらい、一緒に居たくて……。抱っこされた時はびっくりしたけど、ちょ、ちょっとドキドキもしたし、せっかくなら少しでも話そうと思ったけど、途中で寝ちゃったし……」
 袿姫は内に秘めていた真意を話すと、はあ、と溜息をつく。お姫様抱っこをした際に随分大人しかったのは、そういうわけだったらしい。
「作るのに夢中になると、それしか見えなくなっちゃうのは悪い癖ね。それでいつも、磨弓や貴方を振り回しちゃう。もう少し、色々と気に掛けれればいいんだけど……」
 そして、袿姫はこちらの肩に頭を預ける。彼女の些細な動きにも湯船の水面には波紋が起こり、小さな水音もぱちゃりと鳴る。
 肩に掛かる、袿姫の体温を感じながら、自分も言葉を返す。
「……失礼ですが、ちょっと驚きました。袿姫さん、そういうの気にするんですね」
「するわよ、私だって。そもそも全く何も気にしないなら、今頃私は布団の中だもの」
 正直な感想に袿姫は拗ねた風に言うと、顔を少し湯船に沈ませてぶくぶくと泡を吹く。茶目っ気がありながらも基本的には余裕ある振る舞いをする袿姫の、時折見せる子供っぽい所作は何とも可愛らしい。
 でも、このまま放っておくと本格的に落ち込んでしまいそうだし、先とは違うもう一つの本心を伝えるべく、彼女の背中から向こうの肩に手を回してこちらに抱き寄せる。
「袿姫さんはそう言いますけど、俺はそこまで気にしてませんよ。確かに、もっと話したり食事したりとかしたいとは思いますが、夢中で頑張る、真剣な袿姫さんの姿も好きですから」
 制作の合間に少し話す時の楽しそうな顔、用事が終わり工房を跡にする際に見えるひたむきな眼差し、今日も見せてくれた完成に喜ぶ笑顔など、どれもとても素敵で大好きな姿だ。
 悪い癖と本人は言ったが、それ以上にいいところでもあると自分は思う。そう伝えると袿姫は沈ませていた顔を持ち上げて、更にこちらに寄りかかってくる。
「……ありがとう」
 その声色はとても落ち着いていて、でも満ち足りて嬉しそうにも聞こえるのは、自分の驕りだろうか。
 とにかく、自分の気持ちが伝わってくれてよかった。と思った矢先、もう一個言っておくべきことがあるのを思い出し、「ああ、でも」と言葉を続ける。
「食事や睡眠は勿論ですが、お風呂も長くとは言わないので、せめてもう少しきちんと入りましょう。袿姫さん、美人だし肌も髪も凄く綺麗なのに、勿体ないです」
 言いながら、さっきまでより幾分近付いた袿姫の横顔を見遣る。頭に巻いたタオルから少しはみ出てしまって額に張り付いた髪に気付きそっと払うと、袿姫の顔が徐々に赤くなっていく。
「あれ? 久しぶりの湯船でのぼせてしまいましたか?」
 制作が終わっているにせよ終わっていないにせよ疲れが溜まっていると思い、長くゆっくり入れるように温度は少し控えめにしていたのだが、これでもまだ熱かっただろうか。
「そうじゃなくて……。貴方が、そういうことを恥ずかしげもなく、さらっと言うから……」
 袿姫はもじもじしながら言うと、少しだけ顔を逸らす。どうやら、急に褒められて照れていただけらしい。
 いつも多少の誉め言葉は余裕綽々で受け止めるので、こんな反応をするとは思っていなかったが、照れてたじろぐ袿姫の姿はなかなか珍しい。そう思うと、普段は自分がからかわれがちな分、そのお返しにもっと踏み込んでみたくなる。
「このくらい、いつも言ってるのと大差ないじゃないですか。袿姫さんを愛してますよ、大好きですよって言うのと」
「いきなりが駄目なの。前もって、そういう雰囲気なら……」
「袿姫さんだって工房で俺に、急に愛してるなんて言ったのに」
「私から言うのはいいの。今日は振るわなかったけど、慌てたりびっくりしてる○○は可愛いし……」
「今みたいな、押しに弱い袿姫さんもとても可愛いですよ」
 工房での袿姫に倣い愛を囁くのもいいが、先の綺麗だという文句から繋げるべく袿姫の可愛さを褒めると、また彼女は頬を赤くして俯く。
 これはもしや会話の主導権を握れているのでは、と滅多にないことに我ながら驚いていると、袿姫は一度深呼吸をして、赤さの残る顔をこちらに向けた。
「……でも、私は押し返すのも得意なのよ?」
 押されっぱなしは性に合わないとでも言いたげに、強気な笑みを見せる袿姫。
 さてどう来るのか。そう思っていると彼女はぐいと急に身を寄せてくる。
「ん……」
 瞬間、目の前には袿姫の顔があり、唇には柔らかな感触。
 思わぬ不意打ちに体も思考も固まってしまっていると、仕掛けた袿姫はしっかりと唇を重ねてからわざとらしくゆっくりと離し、勝ち誇った笑顔を見せて自らの唇をぺろりと舌でなぞった。
「言葉を尽くすのもいいけれど、行動も大事よ?」
「……こんな、直接的なのは有りなんですか?」
「あら、誰が駄目だなんて言ったの?」
 いけしゃあしゃあと袿姫は言うと、また顔をずいと寄せてくる。それに対しつい身構えるがそういう意図では無かったらしく、再度のキスはされなかった。
「方法はともかく、返された貴方はこのままでいいの? 弱い人間らしく、されっぱなしのまま?」
 目と鼻の先でそう続ける袿姫の瞳は笑っているが、それは言葉どおりに嘲っているのではなく、単純にこの応酬を楽しんでいるようだ。
「まあ、〇〇だって人間だし、それもしかたがないわね。それともっ……」
 それなら乗ってやろうと、あからさまな挑発の最中に彼女の唇を無理矢理奪い、割り込む。更に、タオル越しの彼女の後頭部に手を添えて、振り払おうとしなければ逃げられない程度に押さえ込む。
 しかし、袿姫は一切抵抗なく受け入れ、彼女からされた時よりも長く唇を重ねてそっと離すと、少し熱のこもった息を吐いた。
「……次は私ねっ……」
 そして、大した間も置かずに袿姫は自分がさっきしたように、こちらの頭に手を回してキスし返される。
 それから互いに変わりばんこに口付けし合い、押して押されてを繰り返す。
「んっ、ちゅっ、はぁっ……。んむっ、ちゅっ、んんっ……」
 最初は重ねるだけだったキスは、次第に舌を絡ませるものへと変化していく。触れ合う唇からは、二人の身動きに合わせて鳴るお湯が跳ねる音よりも、ずっと淫らな水音が響く。
 もはや、どちらが押している番か分からないくらいにキスを繰り返した頃、どちらからともなくその意地の張り合いは終わる。残るのは、すっかり熱の入った裸の男女二人と、少しだけ荒れた呼吸音だけだった。
 自分は一つ深呼吸をして、浸かるお湯よりもずっと火照った頭を少し冷ましてから、口を開く。
「……袿姫さん。あの、お疲れでしょうし、とても眠そうにしていたのは承知ですけれど、その、よければ、しませんか?」
 内心、どういう答えが返って来るかは分かっていた。だけど、風呂に来る前の彼女の様子が様子だったのでなし崩しでは行為に及ばずに尋ねると、袿姫は口角を緩く持ち上げる。
「あら、あんなに好き放題して窯に火を入れたのに、何もしないなんてそっちの方が酷いわ。このまま大人しく眠れると思う?」
 袿姫はそこまで言うと浴槽の中で少し姿勢を変えて、ぱしゃっ、とお湯を波打たせながら上半身を湯船から浮かばせる。袿姫の白い体に浮いた水滴は照明の光に照らされてきらきらと輝き、その肢体の中でも特に目を惹く豊かな乳房に魅せられるのも束の間、彼女はこちらの後頭部に手を回して、胸に向かってぎゅっと抱き寄せた。
「だから、このままお風呂でしちゃっても、しかたないわよね」
 小さな水滴を滴らせた深い谷間はぷるんと弾んで顔を受け止めると、柔肉を撓ませながらふわりと包み込む。触覚から伝わって来る感触は勿論、お湯でほどよく暖まっているのもあって、抱き締められているだけとは思えないくらい心地良い。
 それを味わった瞬間、脱衣所の一件からずっと堪えていた悶々とした昂る欲望に歯止めが効かなくなって、右手で袿姫の豊乳を柔く鷲掴み、口では少し薄めの桃色に囲われた突起をぱくんと咥え込む。
「あっ、んっ……」
 広げた五指に触れる袿姫の大きな乳房はとても柔らかく、指の隙間から滑らかな乳肉がたわんで溢れながら、手に吸い付いて重くのし掛かってくる。
 口の方も、乳首に舌を這わせてはちゅっ、ちゅっと短い口付けを繰り返して、咥えた蕾を育てるように刺激を与えていく。
「はぁっ、ん……。ふふっ、相変わらずおっぱいが好きね。でも、人間はそういうものだものね。生まれ落ちてきた時からずっとここに夢中で、可愛いわー」
 誘いに乗る言葉を聞いた途端に始めた胸への愛撫にも、袿姫は余裕たっぷりの笑顔で受け止め、抱き寄せていた頭を優しく撫でる。
 その包容力に蕩けてしまいそうな感覚に陥りつつも、手も口も一切緩めずに豊乳を味わい続け、自身の興奮と乳房の性感を高めていく。
「あぁ、んっ……、あっ、はぁあっ……」
 やがて、溢れる嬌声に艶っぽさが増し始め、咥えた乳首もぷくんと突き出るサイズにまで勃起し、這い回る舌に確かな引っ掛かりを与えるほどになる。
 乳肉を揉みしだいていた右手の方でも、直接的に弄っていない分やや固くなり始めた程度の乳突起に指先を伸ばし、重点的につついたり捏ねたりして弄ぶ。すると、咥えていた方につられてか、あっという間にこちらも固く尖っていく。
 両方の肉粒が十分に大きくなった後は、口では原初の欲求に任せて赤ん坊のようにちゅうちゅうと吸い、手では湧き出てやまない肉欲を満たすべく、固い乳首を指先で捏ねたり柔乳を揉みしだいたりと好き勝手に弄ぶ。
「あんっ、あっ、はあぁっ……。ずっとおっぱいに夢中なんだから、もう。よしよし……」
 袿姫はこちらの頭を撫でながら、授乳をする母を思わせる慈しみに満ちた声で囁く。彼女の包み込むような母性に浸りながら、しばし思うままに大きく実った双乳に甘えていたが、程々で切り上げて口も手も離して袿姫の顔を見上げる。
「んっ……。あら、もうお腹いっぱい? もっと甘えててもよかったのに」
「……袿姫さん……!」
 少し残念そうに言う彼女の名前を、一度だけ呼ぶ。袿姫の言う通りだらだらと甘えていたいのはやまやまだったが、それ以上にもう限界だった。
「ふふ、分かってるわ」
 袿姫は優しく微笑むとお湯に浸かったままのこちらの下半身、股間に手を伸ばして陰茎をしなやかな指でふわっと包み込む。
「っ! うぁっ……」
「あらあら、もうこんなに固くして……。キスとおっぱいだけでそんなに興奮しちゃったの?」
 既に勃起しきった肉棒をすりすりと撫でながら、袿姫はにやにやしながら挑発的に言う。だが、自分は引かず、むしろ彼女の紫色の瞳を真っ直ぐに捉える。
「袿姫さんを脱がせてた時からずっと、興奮してますよ。袿姫さんが俺と話していないと気にして溜め込んでいたのと同じで、俺だって袿姫さんと一緒に居たかったし、その……、色々と溜まってたんですから……!」
 最後は少し強めに言うと、袿姫は一瞬きょとんとした後、くすくすと嬉しそうに笑って分身を優しく撫でる。
「そうみたいね。お湯よりもずっと熱いし、凄くびくびくしてるもの。ここも、たっぷり詰まっていそうだし」
 袿姫は怒張を撫でていた手を下へと滑らせ、陰嚢を下から持ち上げて手の平でふわふわと揺らす。水越しではあるが彼女の手先がくすぐるように陰嚢を刺激し、その中の精子までも弄られているような感覚が走る。
「っ、袿姫さん、そんなにしたらっ……!」
 陰嚢から伝わる、ぞくぞくと背筋に重く響く快感。それは、三日弱の間一切の射精をしていない体にはきつい快感だった。
「大丈夫大丈夫。せっかくならお風呂の中にじゃなくて、もっと別の場所に出したいわよね?」
 袿姫は陰茎からするりと手を離して立ち上がると、湯船から上がって洗い場のマットに膝をついて座り、手招きをする。
「ほら、ここに座って。勿論、私の方を向いて、よ? 貴方の大好きなおっぱいで、してあげるから」
 自らの豊満な乳房をたぷんと持ち上げての袿姫の言葉に、無意識にごくりと生唾を呑み込んでしまう。その提案を断る選択肢などあるはずもなく、彼女に促されるまま自分も湯船から上がり、指示された通りに浴槽の縁に腰掛けて脚を左右に大きく広げる。
 曝け出すように袿姫の眼前に突き出した分身は、未だ記憶と体に残る彼女の手の感触の余韻にびくびくと跳ね、次なる刺激を求めていた。
 袿姫はそんな肉棒の前に改めて身を寄せると、持ち上げていた柔乳で陰茎を緩く挟みながらこちらの体の上にたぷんと乗せる。
「うぁっ……!」
 胸で、と持ち掛けられてからたった数秒ながら待ち望んでいた、袿姫の豊乳のすべすべとした感触とそのボリュームをこれでもかと伝える重量感、そしてその柔らかさと暖かさに思わず声が漏れてしまう。
「こらこら、まだ早いわよ。準備だってまだなんだから」
 袿姫は震える亀頭をちょんちょんと指先でつつきながら呆れた風に言うと、口を閉じてもごもごとさせた後、とろりと唾液を谷間へと垂らす。
 陰茎を滴らせていたお湯とは違う、彼女の体温で温かいぬめる唾液が谷間に落とされ、それを袿姫はたぷたぷと乳肉を軽く揺らして全体に塗し捏ねる。これだけでもかなり気持ちいいが、これからもっと気持ちよくしてもらえるのだと思うと、心臓の鼓動の高鳴りが治まらなかった。
「これでよし、と。さて、これ以上待たせるのも可哀想だし、早速始めるわよ?」
「っ……!」
 袿姫は言い切ると同時に、怒張を両乳房でぎゅっと強く挟み込む。肉棒に乳房が触れていた時から感じていた柔らかさと熱が一段と増して、それだけで息が一瞬止まってしまう。
「ふふ、今回くらいの声なら及第点だけど、今からその調子でどこまで耐えられるのかしら。長ーく楽しめるように、まずはゆっくりとしてあげるから、頑張ってね?」
 口調は優しくも、口の端に隠し切れない意地悪な笑みを見せながら袿姫は言うと、根本をしっかりと左右から圧して上下に扱き始める。
 しかし、それは扱くと呼ぶにはかなり緩慢で、上下の片道にたっぷり三秒は使ってのパイズリだった。ゆっくりと、という言葉どおりのあまりにも遅い乳奉仕は非常にじれったく、こちらから突き上げたくなる欲求に駆られてしまう。
 けれど、これを以前された時の脳裏に焼き付いた記憶に従ってその欲望を堪え、少しでも早く先の段階に進むため、ぬるぬるの乳肉がみっちりと絡み付いて分身をじっくりと撫でていく感覚に意識を集中させる。
「あら、今日は大人しいわね。前は私が言わないと大人しくしてくれなかったのに」
「だって、あんなの、忘れられませんよ」
 早くも息を切らせながらもそう返すと、袿姫はくすくすと笑う。何せ、以前これをされた際は完全に骨抜きにされてしまい、軽く腰が抜けてしまったほどだったのだから。
「そんなに早く気持ちよくなりたいの? じゃあ、貴方の記憶に私のおっぱいの気持ちよさを、もっと深く刻んであげるわね」
 袿姫が言いながら見せた可憐な笑顔は、とても美しくも恐ろしいほどに妖艶で、思わず背筋がぞくりと粟立ってしまう。
 その間も彼女の乳房は一切速度を変えずに分身を撫で続けており、次第に微弱な刺激のはずなのに体が無意識に震えてしまうほどの快感に膨らんでいく。つまりそれは、陰茎の感覚が徐々に鋭敏になってきている、ということだ。
「そろそろ、おっぱいがおちんちんを擦る感触しか考えられなくなってきたんじゃない?」
 袿姫はこちらにそう質問しながら、瞳を上目遣いに覗く。彼女の抜群の見立てと、巡る快感につい息を詰まらせてしまうと、彼女は返事も何もしていないのに頬を緩める。
「そうみたいだし、それならここからが本番ね」
 袿姫は先の一瞬でこちらの心の動向を看破したらしく、一旦動くのを止めると乳房の前で腕を組んで左右からぎゅうと圧迫する。
「くうっ……!」
 パイズリを開始した時ですら相当だったのに、感覚が敏感になった今それを繰り返され、その快感の重さに腰が砕けそうになり、肉棒もどくんと大きく跳ねてしまう。
 だが、その脈動すらも強く挟まれて抑え込まれ、組んだ腕を軽く揺らして乳肉をたぷんたぷんと弾ませて分身を刺激する。
「あらあら、まだ少ししかしていないのに、こんなに我慢汁漏らしちゃうくらい気持ちいいの?」
 透明な液をだらだらと漏らす鈴口を袿姫は指先でぐりぐりと弄り、亀頭に出し立ての潤滑油を塗り広げる。亀頭を滑る指の感触がくすぐったくも気持ちよくて腰が揺れると、彼女はまた豊乳の圧迫を強くして抑え込む。
「うぁっ、袿姫さんっ……!」
 陰嚢から精液が昇ってくるような感覚が走り、慌てて彼女の名前を呼ぶ。しかし、自分以上にこちらの限界を早く察していた彼女はそれより一歩早く両手を離して、柔乳での拘束を解く。
「危ない危ない……。まだ、もう少し我慢ね」
 両手を離したとはいえ、未だ陰茎や腰には乳房が触れていて柔らかさは伝わってくる。けれども、ついさっきまで味わっていた包まれる温かさも感触もなくなり、急速に熱が引いてしまう。
 男として、早すぎる射精を避けられたのはありがたいが、同時に絶頂を味わえなかった不満に、呆然と袿姫の方を見てしまう。
「そんな物欲しそうな顔しないの。貴方だって、すぐに終わっちゃうのは嫌でしょ? 次はちゃんと射精させてあげるから、ね?」
 彼女は優しく微笑むと分身に手を添えて双乳の谷間に向かって押し当てて、よしよしと撫でる。次はちゃんと、という言葉と肉棒を包む手と乳肉の感触に先の不満はもう吹き飛んで、男根も期待にびくんと跳ね上がる。
「ふふっ、ここはとっても素直でいい子いい子。じゃあ、また始めるわよ?」
 袿姫は欲望に忠実な陰茎を再度撫でた後、更に自身の胸の方に向かって倒す。
「〇〇はこうやって、カリの辺りを強めにぎゅーってされるのが好きなのよね」
 そして、亀頭を豊満な乳肉ですっぽりと包み込むと、横から乳房で強く圧迫し、ぬめるすべすべの乳肌をカリに纏わり付かせる。
「それに、乳首でこりこりってされるのも好き」
 彼女は続けて言うと挟むのを一旦止めて肉棒を掴み、亀頭を乳房の中央で固く尖る乳首に押し当てるとぐりぐりと捏ねるように動かして、乳肉の柔らかさと乳頭の弾力のある固さを陰茎に叩き込む。
「後、こうやって根本から絞り上げるのとかもね」
 次は豊乳で挟み直して上下させるだけと、動き自体は至ってシンプルだ。だが、柔乳で分身の根本を強く圧迫したまま上に扱き、先端まで辿り着けば拘束を緩めてすぐに根本まで戻って再度強く扱き上げてと、その手つきはまさに絞り上げるものだった。
「くうっ……、け、袿姫さんっ、うっ、ぐぁっ……!」
 どうされるのが好きか、好みを知り尽くした乳奉仕の連続に、情けない声を上げて腰をがくがくと揺らすことしか出来ない。
 そんな様を袿姫は全く嘲りもせず、こちらを見てにこにこと笑う。
「パイズリって二人とも得よね。〇〇はおっぱいでされるのが大好き、私はおっぱいでされるのに夢中な、可愛い○○が見れて大好きだもの」
 嗜虐的な、しかし同時に庇護対象を愛でるような瞳で袿姫はこちらを見上げる。
「そろそろ出したいんでしょう? ほら、おっぱいの中に、思う存分出しなさい」
 そして、こちらの欲望を察すると乳肉を分身の上から覆いかぶせ、腕も使ってしっかりと包み込むと、緩く上下に揺らしてきめ細かな乳肌をにゅるにゅると絡ませる。
 陰茎が根本から先端まで、余すところなく袿姫の温かい柔肉に優しく抱擁されながらも荒く蹂躙され、一切の抵抗の余地なく絶頂を迎えてしまう。
「ぐっ、ああぁっ!」
 風呂場にくぐもった声を響かせて、乳肉の深い谷間の中で溜めに溜めた欲望を思い切り解放する。
「んっ、出てる出てる……」
 弱点を次々と責められるパイズリ、加えて数日ぶりの射精とくれば吐精は簡単には治まってくれず、腰が抜けてしまうのではと思うくらい長く続く。それを袿姫は乳房で包んだまま、湯船に浸かったばかりの清められた体を欲望の塊で汚す行為を、一身に受け止める。
「……ん、出し終わったみたいね。それじゃ、一旦抜くわよ」
 やがて射精が終わると、袿姫は腕で谷間を左右から抑えたまま、体ごと動かして分身をずるんと引き抜く。
 未だに絶頂の余韻にびくびくと跳ねる、一切覆うものの無くなった陰茎は二人の潤滑油の残滓に濡れ光っており、あれだけ長く射精したにも関わらず、精液は殆ど残っていない。ならば、どこにあるのかなんていうのは、一つしかない。
「沢山出したわねー。おっぱいの中、貴方ので温かいわ。ほら……」
 袿姫は乳房を抑えていた手をその下に添えて乳肉を持ち上げると、谷間を開いてその中を露わにする。そこには濃い白濁をしたぷるぷるの精液がべったりとこびり付き、粘ついた糸を引いて左右の乳房を繋いでいた。
 その淫靡な光景を、絶頂の余韻に浸る荒い呼吸を繰り返しながら見ていると、袿姫はどろりと垂れ始めていた精液を手の平で掬い、それらを乳肌へ塗り広げていく。
「ふふっ、私は造形だけじゃなくて、模様を描くのだって得意なのよ。ほら、こうすると……、どう? 素晴らしい芸術だと思わない?」
 自らの胸を汚していた精液で乳房全体を余すところなくペイントすると、袿姫は楽しそうに笑う。彼女の大きな乳房から桃色の乳輪やぴんと勃った乳首までもが、所々濃淡を変えながら白濁をべっとりと纏って、さながらマーキングされたかのようなその姿。そして、そんな風に染められて喜ぶ袿姫の姿は、無邪気な笑顔なのに非常に官能的だった。
「貴方はこういうの好きでしょ? 一介の人間が自分の子種で、神様の体をこんなにべとべとどろどろにして、俺のものだ、って」
 袿姫の狙いどおりに独占欲を煽られ、更にはそれを挑発的な笑顔で指摘され、何も言い返せない。もっとも、当の袿姫に嫌味な様子はなく、情欲を煽ること自体を楽しんでいるようだった。
「後は、この余ったのを……」
 袿姫は絵筆代わりにしていた手に少量ながら残った白濁を指先に集めると、それを口へと運ぶ。
「ちゅ、くちゅっ、ん……」
 彼女は見せ付けるかの如く舌を絡ませてそれを舐め取ると、指の中ほどまでを咥え込んで水音を鳴らしてしゃぶり、ぬるりと引き抜くと熱っぽい吐息を漏らす。
「はぁっ……、美味し……」
 射精を終えてからずっと、精液を愉しむ袿姫の一挙手一投足から目を離せない。しかし、袿姫に鼻先を不意にちょんとつつかれ、視線がその指先を追う。
「○○、精子、洗い流してくれる?」
 その指は自身の胸を示し、袿姫はにこりと笑う。そこでようやく、意識が自分の方へ戻ってくる。そのころには、彼女の胸元を染めていた精液は殆どが垂れ落ちようとしていた。
「……それでは、流しますよ」
 緩慢な手つきながら傍らの手桶に湯船のお湯を掬い、ぬるま湯より少し高い程度だがお湯はお湯なので念のために声を掛けてから、袿姫の体へそっと掛ける。一度では全て落ちたか分からないので、もう一度繰り返す。
「ありがとう。少しの間だけだったけど、貴方色の私は楽しんでもらえたみたいね」
 精液を洗い流し、代わりに幾らかの水滴を纏う袿姫は先の、白く染まった彼女に目を奪われていた自分の姿を思い出してかくすくすと笑う。
 自分との数日ぶりの情交を思うままに楽しむ、袿姫の笑顔。それは見ているだけでも自分もつられて笑ってしまいそうなくらい可愛らしいし、楽しんでくれている、ということ自体も嬉しく思う。
 けれど、同時に少しばかり腑に落ちない感情も湧き上がってきていた。何せ、そもそも情交に誘ったのは自分の方だったし、その前の会話だってこちらにやや分があったはずだ。なのに、ここまでずっと袿姫にペースを握られっぱなしでは少々情けない。愛する神様に、人間の意地も見せなければ。
「袿姫さん、この次は俺の番ですよね?」
 その思いを胸に体に力を込め、出来る限り強気に宣言すると、相変わらず余裕たっぷりに袿姫は頷く。
「ええ、構わないわよ」
「じゃあ、次は袿姫さんが俺と同じようにここに座って下さい。そっくりそのまま交代です」
 だが、そう続けると袿姫は責めている時には見せなかった顔を見せ、「え」と驚く。わざとらしく付け足した、そっくりそのまま交代という文言も、効果があったようだ。
「そ、それって、もしかして……」
「ほら、ここに座って、こうやって……」
 動揺する袿姫を余所に自分は彼女を立ち上がらせて、やや強引に先の自分と同じように座らせる。
 そして、自分も先の袿姫に倣い、彼女の股座の前に膝をついて腰を下ろす。しかし、さっきの自分と違い、彼女は頑なに脚を閉じたまま開こうとしなかった。
「ほら、袿姫さんもさっきの俺みたいに脚開いて下さい」
「ほ、本当にするの?」
「今更何を言ってるんですか。構わないって言ったのに」
「だって、この姿勢ってことは……」
「もう俺の手で開かせますよー」
 もじもじと擦り合い渋る膝を掴んで、左右に大きく開かせる。たとえ神様と言えど、この状況で男の手に掛かれば碌な抵抗は出来ず、ほぼ無抵抗に股間を晒す。
 眼前に現れる、赤く色付いた花びらと濡れた陰毛が張り付いた秘部。その中心の割れ目は大股を開く鼠蹊部に引っ張られて少し綻んでおり、僅かながらその奥の穴までもが覗いていた。
 そんな陰唇に迷いなく両方の手をそれぞれ添えて、こちらも左右に割り開かせる。
「あっ……」
「相変わらず、凄く綺麗ですね。袿姫さんのここ」
 引っ張られた陰唇はぬちゃあ、と粘膜の音を携えて大きく開かれ、その全貌を露わにする。
 お湯のそれとは明らかに違う液体も付着した、ぬめって濡れ光る膣前庭と小さな尿道、ぱくぱくと物欲しそうに忙しなく口を開閉させる膣穴と、そのどれもが鮮やかな濃い朱色に染まっているのは、風呂で血行が良くなったからだけではないのは一目瞭然だ。
「袿姫さん、分かっているとは思いますが、口でしますけどいいですか?」
「えっ、あ、や、それは……」
 同一の体勢にさせた時点で何をするかなんて分かっていただろうが、改めて袿姫に尋ねると、袿姫は何とも歯切れ悪くあわあわとする。
「袿姫さん、どうしたんですか? ずっと真っ赤で、そんなに慌てて」
「あ、貴方だって分かってるでしょ? だって、二日も、碌にお風呂に入ってなかったのに……」
 袿姫は真っ赤な顔のまま、彼女の言う通り内心分かっていた理由を恥ずかしそうに答える。それはあれだけ渋っていた理由の答えでもあり、それも自ら言う彼女は予想以上に照れていてとても可愛らしい。
「普段から綺麗にしてないとは言わないけど、その……」
「でも今日はちゃんと入りましたし、もっと言えば綺麗になったばかりじゃないですか」
「そ、そうだけど……、ひゃっ……!」
 顔をぐっと近付けると袿姫は小さな悲鳴を上げるが、それにも構わず秘部の香りをくんくんと嗅ぐ。
「大丈夫ですよ。洗ったばかりで匂いも殆どしませんし。それに、袿姫さんの匂い、俺は好きですよ」
 少しつんとする、牡の情欲を煽る淫らな牝の匂い。それはたとえ神様だろうと何も変わらず、男根がどくんと脈打った。
「でっ、でも、つまり、少しは、その……」
「いやいや、洗えば全く何も匂いがしないなんて、ここじゃなくてもそうそう無いですよ。しかたないですって」
「……た、確かにそれはそうかもだけど……」
 袿姫の言い分に一つずつ反論していくと、彼女は納得するような、でもやっぱり納得し切れないような、小さな唸り声を漏らす。
 先程散々責められた後だからかいつも以上に嗜虐心をそそる、もじもじとする弱々しい袿姫の姿。それが可愛くて、愛おしくて、もう、我慢出来ない。
「何も気になりませんし、それに、教えてあげますよ。俺という一介の人間が、埴安神袿姫という神様をどれだけ愛していて、こうして奉仕出来ることをどれだけ嬉しく思うかって」
 一度陰唇から顔を離して照れる袿姫をしっかりと見やり言った後、再び股間へと近付けて、所々に水滴の付いた割れ目をまずは下から上まで大きく舐め上げる。
「あっ、やあぁっ……」
 パイズリのために上がったとはいえ、その直前までは湯船に入っていたこともあって、陰唇はお湯の無味が大部分を占めていた。だが、その中にほんのりと袿姫の蜜の味がして、ずくりと股間が疼く。
「だ、めっ……、あぁっ!」
 クンニから逃れようと、彼女はこちらの頭に手を添えて後ろに引かせようとするが、ちゅっと陰核にキスしてやるとその力はあっという間に抜けてしまい、それは叶わない。
 そのままクリトリスを舌で舐めつつ、陰唇を開く手の指先で膣穴の入口を緩くなぞる。
 それらの刺激に膣口はまたひくひくと蠢き、奥からとろみのある淫液をこぷりと零れさせて指を濡らす。
 そこで一旦秘芽を舌で責めるのを止め、溢れた蜜を掬い取りながら膣穴ごと舐めてやる。
「やあっ、あぁんっ!」
 すると、さっきよりもずっと濃い淫汁の味がして体中がかあっと熱くなり、もっとそれを求めて膣内に舌をねじ込んで穿り、中で溜まっていた分までもを引き摺り出す。
 止めどなく高まる興奮と、呼吸を忘れるほどに口奉仕に夢中なせいでつい鼻息が荒くなるが、その息がクリトリスに当たるのも気持ちいいのか、下品な音が鳴るほどに啜っても袿姫の蜜は枯れることなく溢れてくる。
「んっ、あぁっ、だめっ、そんなにしちゃ、だめぇっ……!」
 彼女は駄目だと言いながら諦めずにこちらの頭に手を添えるが、やはり力はこもっていない。むしろ、浴槽の淵に座りながらもかくかくと跳ねる腰から頭が離れないように抑えているとしか思えないくらい、逃れる意思が感じられなかった。
「はぁんっ、やっ、イッ、イクッ、あっ、ああぁぁっ!」
 やがて、袿姫は一際大きな声を張り上げるとともに全身をびくんと跳ねさせる。
 彼女がこの二日弱の間、一人で自らを慰めていたかは知らないが、もしも自分と同じならば袿姫も自分と変わらないくらい溜まっていたのかも知れない。そう思わせるほどに膣穴からは白く濁った粘っこい淫液が、男の精液のようにどろりどろりと止めどなく零れ落ちていく。それは絶頂の余韻に両脚がだらしなくかくつく度に溢れ出し、元々濡れそぼっていた秘所を、おもらしでもしてしまったかの如くびしょびしょに濡らしていく。
「あっ……、はぁ……あ……」
 クンニによる絶頂がようやく落ち着きを見せ始めた頃、袿姫のぼんやりと虚空を仰いでいた瞳にも活力が戻り、真っ赤に染めた顔と端に涙を浮かばた瞳でこちらを見る。
「どうでしたか、埴安神様。気持ちよくなって頂けましたか?」
 本来ならば畏怖するような、神様という存在をこれほどに快楽に蕩けさせた事実に達成感を覚えながら、口奉仕前の自身の発言を踏まえて恭しく言う。
 それを受けて、袿姫はぱちぱちと二、三回瞬きしながら目を泳がせた後、こちらを恨ましそうにじっと見る。
「……ちょっと強引だったけど気持ちよかったし、貴方が私のために尽くしてくれたのは嬉しいけど……」
 どちらかと言えば賛の言葉を言いながらも、口を尖らせる袿姫。先の痴態への羞恥とそんな姿を晒してしまっていることへの照れや不満かと思ったが、違う。彼女の口振りや表情には、それ以上に寂しさが見て取れた。
「そんな呼び方は、嫌。いつもみたいに、名前で呼んで」
 そして、袿姫はこちらに向かって、両手を広げた。
「……はい、袿姫さん」
 袿姫の名前を呼んで、片膝立ちのまま自分が彼女の元に出向いて抱き締めると、袿姫からも抱き締め返され、こちらに擦り寄って甘えてくる。
 神様でありながら、いや、だからこそか人間そのものを愛す造形神。けれども、こんな風に愛されることを強く求めるのは自分だけに向けられた感情だと知っているから、それがひたすらに愛おしい。
 胸中に溢れる、袿姫への情愛。だが、同時に情欲も大きく猛り、既に限界を迎えていた。
「……袿姫さん、俺、もう早くしたくてたまりません」
 彼女を抱き締めたまま、耳元で囁く。すると、袿姫は少し間を置いてからするりと抱き着いて手を解いて、向かい合うと小さく笑う。その顔には、もう先の寂しさは残っていなかった。
「……ええ。しましょうか。〇〇、ちょっと……」
 そして、袿姫は自分に一歩引くように手で示すと立ち上がり、後ろを向いて先程まで座っていた浴槽の淵に手をつくと、こちらに肉感的なお尻をくいっと向ける。
「……ほら、早く入れて……」
 当初はそういうつもりではなかったので何の用意もない浴室だが、出来る体位はいくつか思い付く。彼女はともかく、自分の方は床に座ろうと寝転がされようと構わない。
 しかし、袿姫はそれらを行うための体勢の移行に掛かるであろう僅かな時間すら惜しいのか、二人の位置関係は一切変わらず、自分が立ち上がるだけで済む体位を持ち掛けてくる。
 そんな、早く交わりたい気持ちを一切隠さない提案は、自分が早くと望んだからか、彼女も同じだからか。もっとも、どちらにせよ望むところと、突き出された臀部を早速真ん中から左右に割り開き気味に掴み、ガチガチに勃起し我慢汁を垂れ流す陰茎を、ぱくぱくと開閉する濡れそぼった膣穴へ触れ合わさせる。
「ぁ、○○の、熱い……」
「袿姫さんも、同じくらい熱いですよ」
 浴室の温度に浮かされたから、なんて理由だけでは説明出来ないくらいに膣穴は熱く蕩け、触れた亀頭に吸い付いてくる。
「あっ、あぁっ……」
 腰を少し押し込んで、狭くも柔らかい入口を亀頭で割り開かせる。ぬるりと抵抗なく埋没する先端に袿姫は小さく震えるが、それが落ち着くのも待たずに、躊躇なくこちらの腰と袿姫の桃尻が密着するまで一息に貫く。
「あああぁっ! い、一気に奥までっ……」
 重いどろどろの粘液を大量に蓄えていた膣穴は、こじ開けるような挿入もしっかり受け入れて、一切の抵抗も阻害もなく最奥まで案内する。
 いきなり一番奥まで突き入れられながらも膣壁は分身を柔らかく包み込み、亀頭にもひだを吸い付かせて膣道をきゅっと狭く窄まらせる。
 ようやく味わえた袿姫の膣内の感触に腰がぶるりと震え、早くも満足感が込み上がる。同時に、もっとこれを味わいたいという欲望も湧き上がり、すぐに腰を引いてピストン運動を開始する。
「あっ、あんっ! あぁっ、はぁんっ!」
 そこかしこに柔らかな肉ひだを備えた袿姫の膣内は、突き込む度に怒張が蕩けそうになるほどにそれらを絡み付かせ、奥に進むにつれて入り口の収縮を強くして逃がさないようにとしゃぶりつく。
 それを振り切って腰を引けば、強く締まった分カリが膣壁をより反り上げていき、それが袿姫は気持ちいいのか全身をびくびくと震わせる。
「あぁあっ! ひあぁっ! 中っ、いいのぉっ……!」
 袿姫の嬌声の大きさと膣内の脈動から察するに、恐らくもう既に彼女は相当な快感に浸り、顔を深く蕩けさせているのだろう。後背位という体位の都合上、感じ入る顔が見れないのは非常に惜しい。
 だが、腰を突き上げる度に派手に揺れる大きな乳房や、時折ひくひくと蠢く窄まった菊穴は後ろからだからこそ丸見えで、特に菊口のひくつきは、まるでこっちもして欲しいと誘っているかのよう。
 とはいえ、流石にその穴を弄るのは憚られる。実行しても今この瞬間こそ咎められるくらいで済むだろうが、終わった後が少し怖いし本気で嫌がられては流石に悪い。
 なのでその代わりに、軽く掴む程度にしていた臀部をぐっと鷲掴みにする。これぐらいなら、恐らく大丈夫だろう。
 袿姫のむっちりとした丸いお尻は柔らかくもハリがあり、乳房とはまた違った揉み応えがある。それにすべすべで触り心地も抜群で、そんな桃尻を撫で回してはむにむにと揉む。
「あっ、それ、結構いいかもっ……、はぁんっ、お尻、なでなでされるの、好きっ……」
 袿姫は浴槽についた手の下からこちらを振り向いて、臀部を愛される悦びを嬌声混じりに口にし、浴室に艶やかな声を響かせる。
 腰を尻肉に叩き付けるような大きな動きで激しく出し入れし続け、弾けるような小気味いい音と粘液を掻き回す湿った音を耳で、はしたなくゆさゆさと弾む乳房と染み一つない美尻を目で楽しむ。
「あぁっ、いいっ、いいのっ! あんっ、気持ちいいっ! はぁっ、あぁああっ……!」
 一方、袿姫は口々に自身を巡る快感を、それ以外には何も言えなくなってしまったように、それこそ獣のようにただ啼き叫ぶ。
 もっとも、それは自分も大差なく、今の自分の頭の中にあるのは彼女の肢体からひたすらに快楽や色香を貪りたいという、獣以上に欲望に染まった思いだけ。その肉欲に任せてぬるぬるの膣肉を屹立でこすりながら抜き差しを繰り返し、巡る性感に強く窄まる膣奥を割り開いては奥に溜まった蜜でとろとろにふやけた柔肉で陰茎を扱く。
「はぁっん! 奥っ、いいっ! もっと、あぁっ! もっとぐちゃぐちゃにしてぇっ!」
 袿姫は絶叫気味に更なる責めをねだるが、こちらはもとよりそのつもりだった。
 桃尻を強く鷲掴みにして、根本までしっかりと飲み込んでいるのにも関わらずより腰を突き込んで、円を描くように動かして穿ってやる。
「ひっ! あぁぁっ! あっ、ああぁぁ~……っ!」
 膣の最奥の媚肉をカリ首で捏ね回され、そこから生まれる快感に袿姫は身悶えして大きな啼き声を上げる。同時に膣全体が強烈に締まり、膣壁も肉棒を離さないと言わんばかりに纏わり付いてくる。
「くっ……! 袿姫さん、出ますっ!」
「出し、てぇっ! 全部、私の中にっ、頂戴っ……!」
 袿姫に限界だと伝えると、彼女は声を振り絞って膣内射精をせがむ。自らの胎内へ種付けを望む彼女の言葉に興奮は最高潮に達し、これが最後と言わずとも分かるように奥を捏ねていた亀頭を最奥の子宮口へ強く押し当てて、突き上げた。
「ぐっ……!」
「イッ、イクッ! はあっ、あっ、ああぁぁ~~っ!」
 その瞬間、陰茎の温度が一気に増したかのような錯覚を覚え、頭が白黒するほどの強烈な快楽が全身を駆け巡る。それと同時に袿姫は大きく声を張り上げて全身を跳ねさせて、二人してともに絶頂を迎えた。
 本能的にか、射精の直前に袿姫に腰を押し込んで前屈みになりながら覆い被さり、目の前の牝を逃がさないようにしながら少しでも奥で射精を行い、子宮へ子種を注いでいく。
 絶頂を迎えて言うことを聞かない体を、体格で勝てない相手に押さえられて行われる、容赦ない荒々しい種付け。しかし、それは彼女自身も望んでいたものであり、一層膣を強く締め付けて陰茎を絞り上げて更なる精液の排出を促し、自分も求められるまま袿姫から少しも離れずに自らの遺伝子を追加する。
 既に一度射精しているとはいえ到底発散し切れていない、三日弱溜め込んだ精液と袿姫へのあらゆる欲望を乗せた射精は長く続くが、それもやがて落ち着くと、射精後特有の気怠さが全身をどっと襲う。
 様々な欲望が満たされた余韻に浸りながら、分身を抜かないそのままの体勢で――流石に体重は掛けないが――荒く呼吸をしていると、同じく荒い息を吐く袿姫が、横を向くようにしてこちらに振り向く。
「後ろからはあまりしたことが無かったけれど、この、いかにも交尾って感じは、なかなか悪くないわね」
 そして、額に汗を浮かばせた、未だ冷めない興奮に紅潮しながらも満ち足りた顔を向けると、それをにこりと綻ばせる。
「袿姫さん……」
 その笑顔に、こちらからも顔を回して向かい合い、軽くキスをする。すると、彼女からもまた口付けが返ってきて、また、意地の張り合いが始まる。
 たかが三日弱、されど三日弱の間に募った二人分の寂寥が埋まるまで、互いにだらだらと、口付けを繰り返し合っていた。



3.
 浴室で二人交わりあった後、汗でじっとりと濡れた体や互いの性液を流すために自分達は改めて体を流して風呂に入り、――流石にもう一回戦はしなかった――、入った時と同じく二人揃って浴室を跡にした。幸い、お風呂の温度がそこまで高くなかったからか、のぼせたりはせずに済んだ。
「私は髪が乾いたらもう寝るけれど、貴方は?」
 脱衣所にて長い髪をタオルで拭きながら、袿姫はこの後の予定を尋ねてくる。長く艶やかな髪をタオルで撫でるように水気を取る袿姫の姿は、とても色っぽい。
「入る前に言った通り、俺は工房の片付けに行くつもりです」
 方や自分は、二人分の洗濯物が入った籠を持ち上げてそう返す。ここに袿姫を入浴のために連れて来て、流れで自分も入ってしまっていたが、本当は彼女が入浴している間に済ませておくつもりだったのだ。今すぐやらないといけないことではないものの、済ましておくに越したことはない。
「後、この籠も埴輪のところに持って行かないと。まあ、こっちはすぐ終わりますが」
「そっちはともかく、せっかくのお風呂上りなのに片付けなんてまた汚れるわよ?」
 髪を拭き終わった袿姫はタオルをその籠に入れながら、本当にそのつもりかと尋ねてくる。
「だから俺だけでやるんですよ。なので袿姫さんはゆっくり寝ていて……」
 なので再度意思を伝えようとすると、その途中で袿姫はこちらの口に人差し指を当てて、続く言葉を遮ってしまう。
「しなくていいって言ってるの。それよりも今は、一緒に寝ましょう?」
 風呂を一緒にと提案した袿姫は、次は就寝も一緒にと提案すると更に言葉を続ける。
「片付けは起きてから二人でやればすぐに終わるでしょ? 孤独に寂しく一人でするよりも、ずっといいと思うわ」
 そして、そこまで言うとようやく人差し指を離す。だが、自分がその誘いに対し何かを言う前に、最後にもう一言だけ、付け足した。
「だから一緒に、ね?」
 ふわりと綻ぶような笑顔を見せての、袿姫のこの言葉。神様らしい威厳を感じさせる顔でも、渾身の一作を作り終えた創作者の顔でもない。恋人として、甘える顔での一言。
「分かりました。俺も一緒に寝ますかね」
 しかたない。すっかりうつってしまった袿姫の口癖を心内で唱えながら。しかし、優柔不断に迷うことはなく、返事をした。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
私事ですが、Twitter始めました。@nagira_yanagi
コメント




1.性欲を持て余す程度の能力削除
袿姫様が改めて誘いかける時の窯に火を入れたって台詞や男性側がいろいろ相手を気にかけている心情表現が好き
徐々に素が出ながらお互いにイチャつく様はとても心が満たされました。