真・東方夜伽話

カラッポの女の子

2020/10/07 07:15:15
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カラッポの女の子

し~

古明地こいしと名乗ったその女の子は、心をざわつかせる空気をまとっていた。
そんな彼女は人懐っこく笑いながら「一緒に遊ぼう」と誘いかけてくる。
違和感を抱きながらも、ぼくはその可愛い女の子の招きに応じていってしまうのだった……

頭の中でぼんやりと話が思い浮かんだのでそれを形にしてみました。
異質な雰囲気をまとった無邪気で蠱惑的な美少女。そんな彼女に心を侵食されていく様を楽しんでもらえたら幸いです。

「あれ? あなタ、こいしのこトが見えルの?」

 人のまばらな公園でぼくに声をかけてきたのは、どこか不思議な女の子だった。
 里ではあまり見かけない、袖口やスカートの裾がヒラヒラとした服。自分自身のことを「こいし」と言う呼びかた。両脚から身体へ巻き付くように伸びる紫色の管と、それに繋がった目玉のような球体。一見しただけならぼくと同い年くらいな女の子なのに、そのいでたちは独特という言葉ではすまないような姿をしているのだ。
 けれど、違和感を覚えさせるのはそれだけじゃない。この子を見ているとぼくの中でザリザリと雑音が走り、頭の芯が痛みを訴えてくるのだ。

「うぅっ…… き、キミは……」
「古明地こいしダよっ よろシくねー!」

 ちょこんと身を屈めるようにしてぼくの目を覗き込んでくるこいしちゃん。でもなぜだかその姿はどこかおぼろげで、気を逸らしたらかき消えてしまいそうだ。
 ぼくは夢か幻かを見ているんだろうか。そんなわけがないだろうと思いつつ、チリチリとした頭痛に眉をひそめながら目を合わせていく。その瞬間に立ちくらみのような感覚が押し寄せ、気が遠のきかけていったけれど…… そんな感覚も一瞬のうちに消え去って、目の前の女の子もハッキリと姿を見ることができるようになっていた。

「どウしたノ? なんダかぼ~っトしてルけど」
「え…… な、なんでも、ないよ」

 今までの頭痛やめまいがウソのように鎮まっている。他人のメガネをかけさせられていたように霞んでいた視界も、すっかり普段通りに戻っている。
 そんなクリアな意識で見るこいしちゃんは、見れば見るほど可愛い顔立ちをしていた。
 人懐っこそうなくりっとした大きな目。丸く柔らかそうな頬と、チョコンと上を向いた綺麗な鼻筋。きゅっと両端の上がった唇はぷっくりとしていて、濡れたような薄ピンク色をしている。
 ふわふわとした柔らかそうな薄緑の髪。浅くかぶった大きな帽子。手が隠れるくらいに長い袖の服に、花の刺繍が入った緑色の短いスカート。服の色のせいなのか、その姿は黄色い花が咲いているかのようだった。

「そっか、それナらよかった♪
 ねえ、一緒に遊ぼウよ。こいし退屈しテたんだー」
「………」

 鳥がはばたくように両腕をパタパタとさせるこいしちゃん。弾むような足取りでヒラヒラと楽しげに周りをまわる女の子からは、バラのように甘く柔らかい匂いがあふれてくる。
 その香りに、思わずぼくは胸をドキドキと高鳴らせてしまっていた。たったさっきだって、この可愛い子から見つめられて心が揺れてしまっているのだ。さっきの違和感のことなんてすっかり忘れてしまい、ぼくは言われるままに誘いを受け入れてしまっていた。

「やっタぁ♪ じゃあコっちきて!」

 なにをして遊ぶつもりなんだろう。どこへ行くつもりなんだろう。そんな疑問がよぎっていくけれど、正直そんなことどうでもいいものでしかない。
肩口までの髪を揺らして歩くこいしちゃんに従って、ぼくはこっそりと深呼吸をしながら後をついていくのだった。膝丈上まである黒い靴下と短いスカートの間では、柔らかそうな肌色が眩しく弾んでいた。
 そして、連れてこられたのは公園の片隅。人の手で作られた木陰や茂みのせいで周りは暗く、人の目からも隠れてしまうような場所だ。
 つまり、こいしちゃんとふたりきりという状況…… 出会ったばかりの可愛い女の子とこんなことになってしまい、ぼくの心はなにやら期待のようなものを覚えてしまっていた。

「あの、なにして遊ぶの……?」

 変に意識してしまっているせいなんだろうか。こいしちゃんとの距離が心なしか近いような気がしてしまう。そんな動揺を抱えながら、考えの読めない女の子へおずおずと問いかけてみる。

「んーっトね、にらめっこ!
 こいしね、人に見てモらうの好きナんだ♪」
「にらめっこ……? ま、まぁいいけど……」

 そこへ返ってきたのは、やっぱり不思議な答えだった。
 だってそうじゃないか。にらめっこだなんて、小さい子どもがやるような遊びだ。それに「人に見てもらうのが好き」というのも意味が解らない。これじゃまるで、いつも誰かから見てもらうのが特別なことみたいじゃないか。
 とはいえ断る理由なんてどこにもない。おかしな子だなと思いながら、ニコニコと笑うこいしちゃんに頷きを返していく。
 
「えへへー 負けなイかラねー?
 どっちカが先に目を逸らスまでの勝負っ よーい、スたート♪」
「えっ、笑うかどうかじゃないの? ちょ、待っ……」

 けれど、そのルールはぼくの知っているのとは違うものだった。突然の不意打ちに動転するぼくの目を、こいしちゃんは無邪気な視線を真っ直ぐに注ぎ込んできたのだ。

「じーーーーーー……っ」
「いや、あの…… そんなに見つめられたら……」
「だっテ目を逸らしタら負けちゃうモん」
「そ……そう、だけ……ど」

 不思議な子だと思ったのは、やっぱり正しかったんだろうか。それとも、ぼくが勝手に変な意識を抱いてしまっているだけなんだろうか。
 異性とふたりきり。しかもじっと見つめ合う。そうしたことなんて何でもないことのように、こいしちゃんはぼくの目を覗き込んできている。ついつい視線を逸らしたくなってしまうけれど、今はにらめっこの最中だ。それを思い出し、注ぎ込まれる眼差しを受け止める。

「むむぅ…… すグ勝てソうな気がしたノに、手強い」
「う、うぅ……っ」

 宝石のような緑色の瞳の中にぼくの顔が映り込んでいるのが見えた。それが解るくらいに、こいしちゃんはすぐそばまで迫り寄ってきていた。
 白くてすべすべした、たまごのような頬が不満そうに膨らんでいる。そのせいで僅かに突き出された唇に、思わず喉がゴクリと音を立てていく。
 もう心はすっかり緊張に張り詰めてしまっている。ここで普通のにらめっこルールに戻されて変顔をされたら、きっとあっという間に負けてしまうことだろう。
 でも、そうして笑わされたほうがずっとよかったのかもしれない。だってそうして決着すれば、こんな不自然な見つめ合いから解放されることになるんだから……

「だケど、こいしはにらめっこ得意なんダからね?
 今まデ負けたコとなんてないんだかラ」

 そもそもからして、どうしてぼくはこんな勝負に付き合っているんだろう。照れくさくて、恥ずかしくて、胸がソワソワしてドキドキして苦しいハズなのに。さっさと負けてしまえば楽になれるハズなのに。
 それなのに、なぜかそうすることができないのだ。まるで視線が絡めとられたみたいで、目を逸らすことができなくなっているのだ。
 心がザワつく。頭に雑音がよぎる。首筋に寒気が疾る。このまま目を合わせていてはダメだと、誰かの声が聞こえた気がする。

「ふふっ……♡」

 そんなときに、目の前の女の子がクスっと笑みをこぼした。イタズラっぽく両端の上がる唇は、ヌラヌラと妖しく濡れ光っていた。

「うくっ……」

 おかしな声がこぼれる。その表情があまりにも色っぽくて、心が跳ねてしまったのだ。

「いイよぉ……♡ こいしも本気だシちゃうから……♡」
「待っ…… 許して…… これ以上は、もう……っ」

 こいしちゃんがさらに距離を縮めてくる。顔だけじゃなく、身体ごとすべてをにじり寄せてくる。
 にらめっこを続けているうちに、いつの間にかすぐそこまで来ていたんだろうか。詰められた距離はただ一歩だけのハズなのに、ぼくたちは身体をすっかり密着させるような形になっている。
 膝頭に、サラリとした靴下の感触があった。服と服が触れているだけなのに、上体には柔らかい体温が伝わってくるようだった。
 額に当たった帽子がずり上がる。サラサラな髪が鼻先をくすぐり、吐息が口元に吹きかかる。きゅうっと甘酸っぱくなる胸の奥。ズクズクとムズ痒くなる腰の奥。みるみるうちにアソコが熱を持ち始め、なにかが首をもたげていくのがわかる。

「だーめ♡ 手加減なンてしてアげないよ♡」

 すりゅ……っ♡

「……っっ!!」

 服の下で腫れ上がったものが、スカートに撫でられた気がした。それだけで全身に甘い電気が疾り、思わず腰が抜けてしまいそうになった。
 それをどうにか踏みとどまったけれど、たぶんそのままへたり込んだほうがよかった気がする。そうすれば自然と距離をとることができたのだから。視線を逸らすこともできたかもしれないのだから。

「ほらホら、いツまで頑張るのー?
 このまマ痩せ我慢しテたら、こいしとキスすルことになっチゃうよぉ?」
「き、キス…… そ、それは……っ」

 ピンク色の唇が突き出される。顎が上がり、それこそ本当に口づけをしてしまいそうになる。
 きっとこいしちゃんはキスを特別なものとして考えていないのかもしれないけれど、ぼくからしたらそうはいかない。それは好きな人同士で交わすこと。アソビ感覚でしていいような、そんな軽いものじゃないハズなのだ。
 でも、だけど……

「キス…… お、女の子と、キス……うぅっ」
「こいしはイいよー? あなたと、キスしちゃっテも……♡」

 本人が構わないって言うなら、してしまってもいいのかもしれない。こんなに可愛い子とキスできるなんて、それはとても幸せなことなのかもしれない。
 心臓がバクバクと激しく打ち付けている。唇を重ねてしまいたいという思いと、そんなことしていいわけがないという迷いが、ぼくの中で激しくぶつかり合っている。
 身体が熱い。アソコはもうガチガチだ。薄ピンク色の柔らかそうな唇の感触を想像して、それを実際に味わうことへの期待が膨らみ上がっているのだ。

「こいしの唇、ふわふワで気持ちいイんだよぉ……♡」

 誘いかけるように、こしいちゃんが舌なめずりをした。ぼくの顔と心が、それに吸い寄せられていった。
 あと少し。あともう少し……
 その距離は指数本分くらいしかないのに、とても長く思えてしまう。余計なためらいなんて抱かなければすぐに触れられるハズなのに…… 邪魔な理性がぼくを引き止めて、身体を自由にさせてくれないのだ。

「にらめっこしナがらぁ…… ちゅって♡」

 両腕が首に絡みついてくる。さらに身体が密着し、胸の上で柔らかいものがふにゅりと潰れる。
 周りを包む甘い匂い。身体を抱き締める心地いい体温。下半身で熱くなっているものが、女の子の身体に圧迫されていく。

「あ、あ……あぁぁぁ……っ」

 こうまでされたら、理性も邪魔なんてできるわけがない。ぼくは最後の距離を詰めようと、深く息を吸い込んでいくのだった。
 ところが……

「でモ、いいのカなぁ? こいしとキスなんテしちゃっテも♡」
「え……」

 唇の先がわずかに触れたかというところで、妖しく細めた目がそんな囁きをこぼしていった。その言葉は、心に寒気を覚えさせるような薄気味悪さをいっぱいににじませていた。

「あなたも感じてルでしょ? こいしのコと、なんか変ダって」

 する……♡ すりゅ……♡

 その感触を味合わせるように、ぼくを誘惑するように身体をこすりつけてくる女の子。意味を含んだ言葉をつむぐたびに、唇と唇がかすかに触れていく。
 だけど、なにかがおかしい。さっき感じたように頭がクラクラして、ザラザラと雑音がして、胸がざわついて仕方がないのだ。

「それハね、こいしの心がカラッポだかラ。こいしは、カラッポの女の子なノ。
 そんな子とキスなんてしタら……心を交わしたリしたら…… どうなっチゃうと思う?」
「う、あ……あぁぁぁ……」

 そのうすら寒い感覚は気のせいなんかじゃなかった。目の前にいる可愛い女の子は、関わってはいけない恐ろしい存在だったのだ。
 だけどもう遅い。心は、身体は、すっかりその気になっている。可愛い女の子とキスすることを期待してしまっている。妖しい気持ちを抱いて熱くなってしまっている。
 今さらこの子を振り払うことなんてできなくなっているのだ。

「デもぉ…… あなたはそれデいいみたいだね♡」

 しゅる……するるるる……っ

 紫色の管が絡みついてくる。それは身体ばかりか心も甘く縛り付けていく。

「ね……こいしと、キスしよ……♡」

 そして、まるでなにかを食べようとするときのように口が小さく開いていったかと思うと。ぼくの唇は、マシュマロみたいに柔らかなもので覆い塞がれていってしまったのだった。

「んむっ……!? ふ、むぅぅぅ……っ!!」
「力抜いて…… お口開ケて……♡」

 ちゅ……♡ ちゅむっ、ちゅぅぅ……っ♡♡

 唇の間で角砂糖がとけていくみたいだった。甘いものがふわりととけていくような、心がくすぐったくなる感覚。それが、初めて味わうキスの感触だった。
 鳥がついばむように唇が吸われる。薄ピンク色をした魔性の粘膜が、何度も何度もぼくに吸いついてくる。
 心がふやけていくようだった。脳がとろけていくようだった。
 頭を両手で抱え込みながらキスの雨を降らせてくるカラッポの女の子。その口づけはとても熱っぽくて、ぼくの心にまで甘い火を灯らせてくる。

「舌、出シて♡ オトナのキス、しテあげる♡♡」

 にゅりゅっ♡ ぢゅるっ、ぢゅりゅりゅりゅりゅうぅぅぅぅぅぅ♡♡

 言葉は、身体を操る糸のようだった。ぼくはなにも考えることもできなくなり、女の子から言われるままに従うようになっている。
 差し出す舌は、ぱくりと咥え込まれて啜りあげられていた。ぼくの腰には、ふわふわした温かいものがすりつけられていた。強く抱き着いている女の子が、脚を上げてふとももを押し付けてきているのだ。
 きっとそこでは、膝丈上までの黒い靴下に包まれた白い脚が揺れているんだろう。スカートの中から覗くふわふわな肌が、むにゅむにゅとぼくにすりつけられているんだろう。
 その空想と、たしかに味合わされる感触に、アソコはもう爆発寸前になっていた。芯から熱くなったソレはビクビクと跳ね暴れていて、ヌルヌルしたものをこぼしつづけていた。

「ぬりゅ……♡ くちょ……♡ ちゅっ、ぢゅるるるるぅぅぅぅっっ♡♡
 ねぇ、わカる? あなたとこいしの唾が、お口の中でトロトロに混ざり合っチゃってる♡」

 ぼくの中に入り込んできた舌が、口の中で好き放題に暴れている。クチョクチョといやらしい音をたてながら、熱くヌルついた侵入者がぼくに深く絡みついてくる。
 まるで頭の中をかき混ぜられているみたいだった。ヨダレと一緒に脳が吸い取られていくみたいだった。

「んむっ、んぐぅぅっ! むぐ、ふぐむぅぅぅぅぅっっ!!」

 そして、巻き付かれた舌がじゅるじゅると強く啜り上げられていったか瞬間に。

 どくんっ! びゅるるるるるるるぅぅぅぅぅぅぅ……っっ!!

 腰の奥に重たい疼きが疾り、ぼくは下帯の中で熱いものを噴き出していってしまったのだった。

「ふふっ……♡」

 征服感をにじませた含み笑いが聞こえる。そんな中で、ぼくの意識が渦を巻きながらなにかに吸い取られていく。
 その渦の中心は、宝石のような緑色の瞳。うすら寒くなるくらいに空虚な瞳。
 そんな目をした女の子に強く強く抱き締められながら…… ぼくの身体は糸の切れた操り人形のように、クタリと力をなくしてへたり込んでいったのだった。

「あー、目逸らシたー♡ こいしの勝ちー♡」

 空っぽになってしまった頭の中で、嬉しそうにはしゃぐ声が反響している。ぼんやりと空を見上げる目の端で、ぱたぱたと両腕をはためかせる姿が映る。
 その一方で、ぼくは指先ひとつすら動かすことができないでいる。なにかを思うことができなくて、なにも考えることができなくて、身体を動かすことができなくなっているのだ。

「ねエねえ、もう一回にらめっコしよ♡
 あなたもこいしもカラッポ同士♡ あなたとこいしはお友達♡
 だカら、いっパいいっぱイ遊ぼウね♡♡」

 顔が両手で包み込まれる。虚空を見つめるぼくの前で、女の子の顔が大写しになる。
 にっこりと心の底からの笑顔を見せるカラッポの女の子。その温かい腕に抱かれながら、生きる人形となったぼくはだらしなく口を緩めていくのだった。
 花のような匂いがする。それが頭の中で白い靄になっていく。
 ぼくの意識は、甘い香りの霞にゆっくりと包み込まれていくのだった……
コメント




1.性欲を持て余す程度の能力削除
グイグイ引き込まれるお話でした
キスしよ宣言や「あなたもこいしもカラッポ同士 あなたとこいしはお友達」みたく、彼女をより強く意識した時だけ台詞が正常になっていて侵食されきってる感がすごく好き。