真・東方夜伽話

八千慧さんに責められたり責め返したりする話

2020/02/21 21:40:19
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八千慧さんに責められたり責め返したりする話

注意点
・二次設定、独自設定、独自解釈等があります。
・オリキャラ(名無し男)との絡みになります。また、男はそれなりに喋ります。
・八千慧の甲羅についてかなり独特な解釈があります。
・夜伽パートは1番のみです。後の2番と3番は夜伽要素のないパートになっています。

1.
 行けたら行く、という意味合いのことを言われた時にどう受け取るか、それは人によってそれぞれだろう。ポジティブに受け取る人も居れば、ネガティブに受け取る人もいる。また、その相手がどういう人物で、自分とどういう関係なのか、というのも重要だ。
「まあ、仕方ないよなぁ……」
 日が跨いだと言うには少々早いが、誰かが尋ねてくるにはもうとっくに遅い時刻。寝室の明かりを消し、真っ暗の天井をぼんやりと眺めながら一人呟く。今、まさにその『行けたら行く』が実らなかった事実を噛み締めながら、眠りに就くところだった。
 昨日、自分と恋仲の女性から届いた、一通の手紙。そこには、明日は予定が空きそうだからお邪魔する、といった旨の内容が書かれていた。だが、実際には彼女は姿を現さないまま、手紙に書かれた明日、つまり今日が終わろうとしていた。
 勿論、彼女にも事情があるのは分かる。彼女の立場上まとまった時間を作ること自体が難しいし、何とか作ったが急用が出来てしまったなんてのも珍しくないと、一緒に過ごす日々での経験則から理解している。仕方ない。
 でもやっぱり、僅かな不満はある。頭では分かっているし納得もしているが、どうしても拭い切れないわだかまりはあった。
 ふう、と一つ溜め息を吐いて、目蓋をそっと閉じる。次に彼女に会えるのは、いつになるだろうか。

 翌朝。窓から差し込む陽光と、近所の家の鶏のけたたましい鳴き声で目が覚める。いつもより早めに床に就いたせいか、もう少し微睡んでいたい、という欲が顔を出す前に自然と瞼が開く。
「……いぃいっ!?」
 刹那、視界に飛び込んできた光景に素っ頓狂な声を上げ、思わず後退った。
 居る。隣に誰か、いや、よく見知った人物が。
 金色の短髪に一対の角。落ち着いた風格の、しかし時折垣間見える可愛らしさが隠し切れていない、端麗な顔。肩口から覗く緑がかった鱗は、強靭な鎧を連想させる。それらに加え、ここからは見えないがきっと布団の中には、硬い鱗に覆われた竜の尻尾が控えているのだろう。
「……ふあ、朝から大きな声ですね……」
 そこに居たのは、昨日来ると言ったが会えずじまいだった女性であり、畜生界に存在する組織『鬼傑組』の組長、吉弔八千慧その人だった。
「や、や、八千慧、さん?」
「……はい、おはようございます」
 恋人との突然の邂逅にあたふたする自分とは違い、彼女は平然と朝の挨拶をすると体を起こして「んー」っと伸びをしてから布団の上に座り直し、顔を少しだけ傾げて微笑みを浮かべる。まるで、昨夜をともにした後のように、ごく当たり前に。
「なっ、何でっ……!?」
 方や自分は、それ以上言葉が続かなかった。しかし、この一言でも何を尋ねたいかなんてのは伝わったようで、彼女は笑顔を崩さないまま、口を開く。
「きちんと書いたはずですよ。昨日、貴方の家にお邪魔させてもらうと。遅くなってしまいましたが、そこは大目に見て下さい」
「お、遅くって……」
「私が尋ねた時はまだ日付は変わっていませんでしたよ? でも、○○さんはすっかりお休みになっていて、起こすのも悪いかと思い、それならば、とこっそり」
 つまり、八千慧は自分が寝ている間に家に忍び込んだ上、布団にまで潜り込んで一晩過ごしたということらしい。
 確かに訪ねるとは書いてあったし、合鍵も渡してあるので深夜だろうと入ることは難しくないし、夜は妖怪の時間で危険だ、なんてのも彼女クラスの者であればむしろ彼女に遭遇してしまう妖怪に対して言うべき言葉だろう。
 だから、有り得ない話ではないし、ある意味律儀に約束を果たしたとも言える。だが、これまた頭では分かっているし納得もしているが、拭い切れない様々な感情に戸惑ってしまう。
「しかし、そんなに驚かれるとは思いませんでした。鬼傑組の得意な戦法は搦手だと忘れてしまいましたか?」
 一方、八千慧はしたり顔で言いながら、呆気に取られるこちらの反応を面白がっているようだった。……まあ、彼女が楽しそうだしそれはそれでいいか、と自分も乾いた苦笑を漏らしながら緩く座り直す。
 その時、八千慧の姿、もっと言えば服装を見てあることに気付く。こんな服、着てたことあったっけ、と。
 ゆったりとした薄い水色のワンピースで、見た目自体は全体的に殆ど無地に近いシンプルなもの。だが、裾にはワンポイント程度に白い花の刺繍があり、胸元近くには小さな赤いリボンがいくつかあしらわれておりと、控え目ながら可愛らしい印象を与えてくれる。
 そんな見慣れない服装な上、着古しのような感じもしない。もしかしてこれは。
「八千慧さん、もしかしてその服、下ろし立て?」
「あ、分かりますか? 実はそうなんですよ」
「やっぱり。うん、可愛いし、よく似合ってるよ」
「ふふ、ありがとうございます」
 八千慧は会釈程度に頭を下げて顔を綻ばせる。寝起きの回らない頭でそんな可憐な笑顔を見ながら、可愛い服を着て可愛く笑う八千慧は可愛いなあ、なんてぼんやりと考えていたが、またあることに気付き一瞬頬が引き攣ってしまった。
 なんと、そのワンピースの首元、いや、もはや胸元が、普段よく来ている服装以上にざっくりと開いている。よくよく見てみればボタンで留められるようになっていたが今は全てが開いており、下手をすれば隠すべき部分までもが見えてしまいそうで、つい視線をやや斜め上に反らしてしまう。
「……急に黙りこくって、どうかしましたか?」
「え? あー、いや、甲羅、出してないんだなーって……」
 視線は余所へ投げたまま、彼女の姿を思い出しながらそれらしい言葉を振り絞る。
 八千慧は普段、亀のように背中に甲羅を背負っている。一応、背負っているのではなく背中の鱗に妖力を込めると肩から背負うような形態の立派な甲羅になるのだが、今はそうはなっていなかった。
「貴方と朝を迎えるときはほぼこうですから、見慣れたものでしょう? ほら、バレバレの誤魔化しは要りませんから」
 だが、そんな苦し紛れの台詞は完全に見透かされていた。そもそも、彼女は自分と二人きりの空間に居る時は甲羅を出している時の方が少ない。あれは外敵から身を守るためのものなので、多少は妖怪もいるとはいえ畜生界に比べれば遥かに平和な人里、かつ、自分以外に誰もいない自宅では、羽休めならぬ甲羅休めをしているなんて以前から知っているじゃないか。我ながら、慌てすぎにもほどがある。
 しかし、だからと言って「新しい服をついエロい目で見てた」とは言えない。それに、ボタンを閉めていないのではなく、本人が閉め忘れていると気付いていない可能性もあるので、尚更指摘しにくい。言おうものなら、意識していると丸わかりじゃないか。
 そうして答えあぐねていると、八千慧は四つん這いになってこちらに近付いてくる。今まで座っていた彼女が急に動いたのでつられてそちらに目で追ってしまい、またもやついつい胸元を見てしまうが、次は視線を逸らすどころか釘付けになってしまう。
 何故なら、丸見えだったからだ。這う姿勢のせいで垂れ下がったワンピースと八千慧自身の体の隙間から覗く、緩やかな膨らみとぷくっと尖った桃色の突起が。
 彼女の裸どころか交わった経験すらあるとはいえ、今のような“そういう時”じゃない時に見えてしまうとやはりどきりと心臓が跳ねてしまう。そのまま思わず凝視してしまっていたが、無防備な姿を卑しく覗いていることへの罪悪感が顔を出し、慌ててさっきよりも大げさに目を逸らす。
「それで、何故黙っていたんですか?」
 しかし八千慧は構わず距離を徐々に詰めて来て、気付けばもう目の前に居た。たじろいで後ろに手を付いて体を引くと、彼女はぺたりと自分の前で体を伏せた。
「っ」
 その動きに思わず身構える。頭に生えた立派な角で腹を突かれるという折檻でも受けるのかと思ったからだ。しかし、実際はそうじゃなかった。体に流れるのは、くすぐったいような気持ちいいような不思議な感覚。だが、その正体に気付くのに時間は掛からなかった。
 なんと、体を伏せた彼女が、眼前の股間に手を這わせていたのだ。
「えっ、ちょっ、や、八千慧さん!?」
「おやおや、まだ早朝だというのに、ここは随分元気ですね。一応約束の時間内に来ていたとはいえほぼ丸一日待たせてしまったのは事実ですし、そのお詫びとして鎮めてあげますね」
 まるで用意していた台詞を読み上げるかの如く滑らかに言いながら、彼女は相も変わらず服越しに股間を緩やかに撫で続ける。
「い、いや、これは朝立ちだから! 放っておけば収まるから!」
 連続する想定外の出来事に声を張り上げて訴える。正直、この勃起が朝立ちなのか、八千慧のあられもない姿に興奮したからか自分でも分からないが、そう言えない以上こう言うしかない。
 だが、そんな口答えは組長のお気に召さなかったようで、上目使いでこちらを覗くと、不満げに目を細めた。
「つまり、何てことはない生理現象であると……。では先程、私の胸を熱心に見ていたのは私の気のせいですか? それとも、このような魅力がひどく乏しい胸では興奮しないし、見ていたなんてのも自意識過剰だと、そう言いたいのですか?」
 自分が一人でただただあたふたしていたことなんて、とっくに彼女にはお見通しだった。だが、自分のそんな狼藉がバレていた、という事実を気にするより、まずはそこから派生した見解を否定しなければいけない。誰よりも、八千慧のために。
「そ、そうじゃなくて……! その、はっきり見てたし、いつも夢中になってしまうくらい魅力的だから! だから、卑下しなくても……」
「……そうですか。それなら……」
 伏せる八千慧の肩を両手で掴んでの必死の弁明に、彼女はこちらを上目遣いで見上げて硬い表情を解いて股間から手を離す。よかった、苦しい言い訳やおべっかではなく本心だと伝わったようだ、とホッと胸を撫で下ろす。
「ならば、不用意に見せてしまってこんな風にした“けじめ”をつけないといけませんね」
 が、そう続けると八千慧はこちらの寝巻のズボンに手を掛け、下着ごとずるりと引き下ろし、朝立ちと服越しの緩い愛撫で硬度を維持していた陰茎が勢いよく飛び出す。それに僅かに遅れて、これはさっきの問答にそこまでの意味はなくて、何を言っても駄目なやつだったんだな、とようやく理解した。
「……もう、好きにして下さい」
「はい、では好きにしますね」
 自分の降参宣言に八千慧は妖しくも可憐に笑うと、肉棒の根本に右手の人差し指を乗せ、ゆっくりと上方向に這わせ始める。根本からカリ、亀頭、鈴口まで辿ると、指先でくりくりと先端を弄る。
 まだまだ弱い刺激ながら、起き抜けの体はすぐさま過敏な反応を返す。背筋には微弱ではあるが甘い快感が走り、鈴口からは先走り汁が早くも漏れ出して白く細い指を汚しては、にちにちと粘っこい音を響かせ始める。
「あまり乗り気ではなさそうだったのに、ここはとても正直ですね」
「……八千慧さんの指が、気持ちいいからですよ」
「あら、正直なのは美徳ですよ。では、もう少しだけ激しくしましょうか」
 もはや抗いはせずに官能を伝えると、彼女は指をそっと離して次の段階へ進むと言う。指と鈴口を繋ぐ細い銀糸を見ながら、『もう少し、というと次は指だけじゃなくて手を使っての手扱きか、いや、八千慧の性格を考えると指を二本に増やすだけでまだまだ焦らしてくるかも』なんて考えていると、彼女は頭を少し傾けつつ下へと下げる。
「くっ、うっ!?」
 瞬間、分身が生温かい空間に呑み込まれる。先程まで指に弄られていた鈴口にはぬるりとした粘液を湛えたざらついたものが触れ、肉幹にはぷるりと潤いのある柔らかいものに咥えられる。
 続けて頭が下へ降りていくと、それらの感触も合わせて下へ滑っていく。亀頭の先端から裏筋にかけてを粘膜がぞりぞりと擦り、緩く柔らかな輪の拘束が根本まで達する。
 そう、八千慧は陰茎を一口に咥え込み、頭を上下させて扱き始めたのだ。
「や、八千慧さんっ、もう少し、って……!」
 手淫どころか、舌で軽く舐めたりなんかすらすっ飛ばしての口淫。焦らしとは真逆の行為に思わず抗議するが、彼女はそんなのはお構いなしにフェラチオを続ける。
 男根の先端が喉奥まで達してしまいそうなほどに深いストロークで肉幹を扱き、亀頭を口内粘膜で愛撫する。まるで一秒でも早く射精に導こうとするかのような激しい口淫に早くも陰嚢から精が昇ってくるが、八千慧は口を離して奉仕を止めてしまう。
「ん、く、じゅぷっ……。言いましたよ。少し激しくすると」
「っ……、た、確かに言いましたけど、少しじゃないような……」
「奇襲も立派な搦手ですよ。まあ、これはあくまで下準備ですので、この辺りにしておきましょうか」
 八千慧は口元に垂れた涎を拭いながら体を起こしてこちらの方に近寄ると、そのまま隣り合う形で身を寄せる。
「下準備って、もしかして……」
「はい。“あれ”ですよ。嫌ですか?」
「い、いえ、ただ、あれを朝からはなかなか……」
 あれは、起き抜けの体には少しきつい、と言外に訴えると八千慧は耳元に口を寄せて、そっと、甘く囁く。
「大丈夫、何も不安に思う必要はありません。いつもどおり私に委ねてくれるだけで、貴方は気持ちよくなれるんですよ」
 熱い吐息に耳をくすぐられ、ぞくぞくとした感覚が脳髄を支配して思考力を奪う。同時に、お預けをくらい、切なげにびくびくと跳ねていた唾液塗れの分身を彼女は柔く握ると、指を波打たせて緩く揉み始める。
「っ……!」
「ふふ、ほんの少し触れただけでもう跳ねてしまっていますよ? なのに、気分ではありませんか?」
 非常に物足りない刺激の筈なのに肉棒は大きく脈打ち、自分の手よりも一回り小さい八千慧の手の中で暴れてしまう。それを揶揄する言葉が耳を通して脳内を駆け巡ると、さっきまであったはずの抵抗の意思が徐々に削がれていくのが自分でも分かる。
「もう一度、聞きますよ? 今日は、止めておきますか? それとも、私に、任せてくれますか?」
 八千慧の囁く一言一言が精神を溶かして更に奥の深いところまで潜り込み、固く保っていたはずの反発心を砕き、削り、吹き飛ばしてしまう。
 こんな風に反逆する気概を削いでしまうのは八千慧の能力によるもの――と本人は言う――なのだが、個人的にはそうするように仕向ける行為や、状況の作り方も大きいと思っている。予め性感を急速に高めておいて、次はこんな風に妖しくも優しく囁かれては、毅然と断れるわけなんて無い。
「…………お願い、します……」
「はい。では、早速始めますが、分かっていますね? 私がいいと言うまで、射精しては駄目ですよ?」
「……頑張ります」
 八千慧とするかしないかを僅かに問答していたのは、この“射精を我慢する”という行為。ただこれだけなら、そこまで臆するようなものではないのだけれど。
「貴方の頑張りに期待していますよ」
 彼女は目を細めて嬉しそうに言うと、唾液に塗れた肉棒を今までよりも強く――但し、まだまだ弱いと言えるくらいだ――握り直し、上下に動かし始める。
 緩い締め付け故に、その手淫は扱くというより潤滑油の纏った肉幹の上を滑るよう。だが、八千慧の滑らかな五指に包まれての柔い手淫は甘い痺れを断続的にもたらし、早くも我慢汁が溢れ出す。
「あら、もうこんなに溢れて……」
 八千慧は透明の珠を作る鈴口を人差し指の先でぐりぐりとほじり、指先に付いたそれらを亀頭全体に塗り付けるようにこすりつける。
 敏感な先端部を弄られ無意識に身を捩ると、彼女は手を休めないまま再び耳元で囁く。
「まさか、もう射精しそう、なんて言いませんよね?」
「……まだまだいけますよ。これくらい、余裕です」
 本当は少し危なかったが強がった返事をする。好きにされているのは分かっていても、ちっぽけな意地を張りたかった。
「そうですか、余裕ですか……。では、もっと気持ちよくしてあげますね」
 すると、八千慧は最後の文句を繰り返しながら妖しく笑う。余計な一言を追加してしまったかもしれない、なんて早くも慄いていると、彼女は空いていた左手の手の平を少し丸めて口元に持って行き、そこへ唾液をとろりと垂らす。
 手淫のための潤滑油を増やそうとしているんだろう、でも、それならわざわざ手の平に出さずとも扱いている手へ直接すればいいのに、なんて思いつつも黙って見ていると、予想どおり八千慧は唾液を蓄えた左手を肉棒の元へ向かわせる。
 だが、そこからは自分の予想と違っていた。彼女はその左手を亀頭の上に被せたのだ。それにより、ぬちゃ、と出したての生暖かい粘液が亀頭に絡みつき、次の瞬間には覆った手の平で亀頭をすりすりと磨き始めていた。
「う、くぅっ!」
「おや、いい声が出ましたね」
 八千慧はにやにやと意地悪に笑いながら言うが、それとは反してとても優しい手つきで敏感な亀頭を責め立てる。
 肉幹を柔く扱く右手は勿論止めないまま、ふわりと柔らかく包み込む手の平にべとべとにぬめる亀頭を慈しむように撫でさすられ、背筋を流れるぞくぞくとした快感と震えが止まらない。
 やがて亀頭への責めには手の平だけでなく指先も加わり、白くたおやかな五指をカリ裏に添えて摘まむように掴んではくるくると指先を回して滑らせたり、カリ首に沿ってなぞられたりと先端を執拗に責められる。
「っ、くっ、うっ……」
 両の手を使った休みない手淫に、思わず嗚咽が漏れる。
 もう、無理だ、射精してしまおう、殆ど我慢出来なかったが、こんなの出来る訳がない。そんな弱音に心が傾きかけたその瞬間。
「おっと、危ない危ない。もう少しで射精してしまうところでしたね」
 それをいち早く察した八千慧が分身からぱっと手を離してしまう。あと、もう一押し、ほんの少しだったのに、射精に至る前に全身から甘い刺激が消え失せていく。
 目の前に見えていた絶頂への梯子を外された陰茎はびくん、びくんと跳ねて不満を示し、自分も八千慧に恨めし気な視線を送る。
「駄目ですよ、そんな目で見ても。約束、しましたよね?」
 だが、彼女は一切取り合ってくれず、帰ってくるのは有無を言わさない台詞。しかし、八千慧の提案に了解を返したのは他ならぬ自分のため、何も言い返せない。
「……はい、約束、しました……」
「あらあら、そんなに残念そうにしないで下さい」
 視線を斜め下に下げての返答に八千慧は困ったように笑うが、すぐに笑顔を収めるとますますこちらに身を寄せて耳元に口を近付ける。
「ここからは、私も手伝ってあげますから」
 そして囁かれた台詞に思わず身震いしたのは、甘い吐息が耳にかかったからだけではない。
 彼女の言った、手伝う、という言葉が持つ意味を知っているからだ。
「さて、それでは続きをしましょうか」
 八千慧はすっと顔を離して再び陰茎に目をやると、右手は先ほどよりもしっかりと肉棒を握って扱き、左手は唾液と我慢汁に濡れた亀頭を包んでにちゃにちゃと撫で始める。
 それにより、限界間近で寸止めされて燻っていた興奮にすぐさま火が灯り、男根はどくどくと脈を打つ。それこそ、今すぐにでも射精しかねない。
「もう少し、我慢して下さいね」
 しかし、彼女に囁かれ、何とか射精欲を抑え込む。とはいえ、扱く手は一切緩んでいないのですぐにまた限界が訪れて打ち震える。
「○○さんなら、まだ頑張れますよ」
 だが、もう一度繰り返される声援に押され、歯を食い縛ってでも射精を堪える。
 そう、八千慧の、私も手伝う、とは言葉による励まし。言ってしまえば気休めでしかない、ただこれだけなのだ。だけど、八千慧の力によってそれは『励まし』を越え、『そうしなければならないこと』に変わっており、もはや手伝いどころか強制されていると言っても過言ではない。
「あともう少しですから、それまでの辛抱ですよ」
 八千慧はそう言うと最後の追い込みと言わんばかりに亀頭を撫でていた左手を陰嚢に添えると、精液の生産ないし排出を促すように、手の平全体で柔くふわふわと揉む。一方右手は陰茎の根元からカリ首までを休みなく上下に扱いて、昇り始めた子種を出口へと導く。
 彼女が行う手淫は射精を促す手つきそのもの。しかし、それでもまだ射精の許可が下りていない以上それは許されず、精神力をがりがりと削って耐え続ける。
 歯は食い縛っているつもりでも無意識に震えてがちがちと鳴り、額にはじっとりと汗が浮く。口と鼻からは荒い息が絶えず溢れ、我ながら盛りのついた獣のようだ。
「もうそろそろ限界みたいですね。分かりました、では、次に私がここに触れたら、射精してもいいですよ」
 そんな哀れな様を見かねたのか、元々潮時が近いと考えていたのかは分からないが、八千慧は言いながら指先を亀頭の先端に宛がうと、鈴口から外側へ向けて亀頭をくるくると円を描きながらなぞる。
 次に亀頭に触れたら、射精してもいい。ただそれだけを考えながら彼女の一挙手一投足に集中していると、左手が伸びてきて、再び陰嚢に添えられた。
 もしや、ここからまた焦らされるのか、いや、今までの経験上八千慧の見立ては毎回抜群なので、無理な先延ばしはしないはずだ、と思考が揺れながらも空いている右手を凝視していると、不意に目の前を八千慧の頭が横切った。
「はむっ」
 刹那、カリ首辺りを少し湿り気を纏った柔くぷるんとした物に挟まれる。同時に亀頭全体が生暖かい空間に包まれ、先端から裏筋にかけて、ぬめるざらついた物に振れる。
 この感触は、さっき味わった……。
「ぐっ、あ、あぁあっ!」
 だが、その答えに辿り着くよりも、長く耐えていた行為への許可が下りたことによる射精の方が先だった。
 今まで抑えつけた分を取り返すくらい強烈な快感が全身を駆け巡り、勢いに任せて白濁を放出する。だが、それらは虚空に向かって吐き出されているわけではなかった。
「ん、く、ふぅ、っ……」
 射精を続ける陰茎の前にあるのは、股間に顔を埋めて静かに荒い息を漏らす八千慧の姿。そう、先ほど亀頭を包んだ感触は、射精我慢をする直前に味わった唇の感触と同じものであり、彼女は今もなお排出され続けている大量の精液を、自身の口内で受け止めてくれているのだ。
 更には、予めその下へ向かわせていた左手で陰嚢を優しく包んで撫でており、それがまた興奮を煽って排出を促す。それはもはや堰が切られた堤のようにもはや流れに抗う術はなく、何度も何度も八千慧の口腔を無遠慮に犯し続ける。
 しかし、永遠に続くかと思われた射精もやがて終わると、八千慧はこちらを上目遣いに見上げて、白濁が零れない程度に口元を僅かに綻ばせる。
 そして、最後の仕上げと言わんばかりに鈴口をちゅうちゅうと吸って尿道に残った分も余さず口内に含むと、丁寧に口を抜き取って体を起こし、口元を手で隠して咀嚼し始める。
「ん、んむ、ぅ……」
 顎が何度か動いた後、喉がこくん、こくんと小さく跳ねて精液を嚥下し、また顎が動いて、と一連の動作を繰り返し、それらが止むと、八千慧は小さく色っぽい息を吐いた。
「はぁっ……。沢山我慢した朝一番の精液、とっても濃くて、ぷるぷるで、美味しかったですよ」
 八千慧はうっとりとした声色で言いながら妖しく笑う。射精後の疲れもあるがそれ以上にその笑顔とほんのりと潤んだ瞳に魅入られて目を離せないでいると、彼女はこちらの後頭部に手を回して、胸に向かって抱き寄せて頭をよしよしと撫で始める。
「○○さん、よく我慢しましたね。惚れ直しましたよ」
 まるで転んだ幼子が泣かずに立ち上がったのを褒めるような、優しい言葉と心地良い抱擁。顔を包む、控えめながら確かに柔らかい胸の感触と甘い匂い。
 射精我慢を終えた後恒例の、この時間。これも断れない理由の一つだった。身も心も完全に八千慧の手のひらの上で転がされていると、あまりにもあからさまな飴と鞭だと分かっていても、このとてつもない幸福感にすっかり病み付きだった。
 体を動かすことも、思考することすら放棄して、八千慧の暖かさと未だに降り切らない絶頂の余韻に浸り続ける。このままこうしていれば、一分もしないうちに眠ってしまうかも知れないが、それでもいいかもしれない。
「……○○さーん、聞こえてますかー?」
 だが、自分を呼ぶ八千慧の声が耳に届き、慌てて意識を入れ直す。
「あっ、ご、ごめん、何?」
「やっぱり聞こえてませんでしたね。改めて聞きますが、もう少し続けますか?」
「……あー、じゃあ、もうちょっと……」
 何を続けるのか、と一瞬考えたが、今この至福の時間を指しているのだろうと思い、逡巡した後、延長を申し入れる。
「分かりました。では……」
 八千慧の返答はありがたいことに笑顔での了承。しかし、言葉とは裏腹に彼女は一歩身を引くと、何故かワンピースを自ら腰のやや下まで捲ると中に指を滑らせて、ショーツをするりと脱ぎ去ってしまう。
「や、八千慧さん? 何を……」
 そんな予想外の行動の意図を尋ねるが、八千慧は何も言わないまま、ぐっとこちらに体重を掛けて寄りかかって来た。急な出来事に抗う間もなく押し倒され、馬乗りにされてしまう。
「何って、もう少し続けると言いましたよね。なので、次はこちらかと」
 八千慧は言いながら、ワンピースの裾を摘まんでゆっくりと上へ引っ張っていく。膝、太股、と彼女の体が徐々に姿を現し、とうとう覆い隠すものを脱いだばかりの割れ目までもが露わになる。
「えっ、あっ、ええっ……?」
「……おや? これはどうやら先の会話に祖語がありましたかね。私が尋ねたのは、まだ溜まっているなら続けますよ、という意味だったのですが……。鎮めると言ったのは私ですからね」
 だから、下着を脱いで所謂本番の準備をしていた、ということらしい。
「あ、いや、こっちはさっきまでの、その、撫でるやつかなって」
「あら、やはり食い違いが……。まあ、そちらは後でしてあげますから、今はこちらをどうですか?」
 八千慧は片手で裾を抑えたまま、もう片方の手でこちらのだらんと投げ出された右手を掴むと、躊躇いなく秘部へ持って行く。指先に触れる、柔らかくて、温かくて、ぬるついた感触。それはついさっきまで揺蕩っていた睡魔を吹き飛ばすのに十分な代物だった。
 だが、それと同時に思考力も多少戻ったお蔭で、先の会話の違和感に気付く。
「……ちょっと待って、八千慧さん。さっきの食い違いについて、少し聞きたいんだけど……」
「何でしょうか?」
「続けますか、って聞かれて、深く考えずに生返事気味に返しちゃったのは、八千慧さんが、もう一度言う、って言ったからなんだよね。ああ、ぼけーっとしてたせいで聞いてなかったみたいだから早く返事しないと、ってさ」
「律儀ですねえ。私はそんなことで目くじら立てませんよ」
「……でも、そもそもあれが一回目だったんじゃないの? わざと小さな声で話し掛けて、いかにも何度も話し掛けてたけど聞こえてなかったみたいにして、俺が少しでも慌てるようにした、なんて……」
 そこまで言って、こちらを見る八千慧と視線を合わす。しばしお互いに真っ直ぐ見合っていると、彼女はそれはそれは柔らかく、穏やかな笑顔を浮かべた。
「ふふっ、もうこの手は通用しないかも知れませんね」
 やっぱり、と、完全に嵌められたなあ、という二つの感想が同時に込み上げ、苦笑いしか出来ない。
「まあ、いいではありませんか。○○さんは寝転んだまま、楽にしていてくれれば構いませんので。それに、なでなでもちゃんと後でしてあげますよ」
 そんな自分に対し八千慧は悪びれた様子もなく言うと、馬乗りのままこちらの顔に向けてにじり寄って来て、胸の上に体を構える。
「ですが、準備だけは手を貸してくれるとありがたいのですが」
 そして、秘裂がよく見えるよう、触れやすいように腰を持ち上げる。手を貸して欲しいとは、挿入出来る程度でいいから濡らして欲しい、という意味だろう。これは流石に合っているはずだ。
「ん、分かった。じゃあ、口でするから、もうちょっとこっちに来て貰えると……」
「あれ、意外と乗り気ですね。どうも○○さんの方は最初から気分でなかったようですし、今のこともあって正直渋るかと思っていたのですが」
 八千慧の発言は一見、いざ本番を前にして気を逸らせていることを煽っているかのようにも聞こえる。しかし、そうじゃなくて純粋に疑問に思っての言葉なのは、彼女の少し驚いた、きょとんとした表情が物語っていた。
「あ、食い違ったね。元々、俺だってしたくない訳じゃないんだよ。八千慧さんにされるのもするのも好きだから。ただ、朝から、特にさっきみたいなのすると毎回ぼーっとしちゃって、言われるままついつい甘えちゃうから控えようとしてるだけで」
「私はむしろ、そんな○○さんをもっと見たいんですけどねえ。なんならもっとずるずるに甘え切ってもいいんですよ?」
「八千慧さんが言うと何だか後が怖いなあ、それ」
「ふふっ、相手が○○さんなら、悪いようにはしませんよ?」
 冗談を言い合っている間に手探りで探した枕を後頭部に敷いて、口奉仕がしやすいように場を整える。それを受けて、くすくすと笑っていた八千慧も割れ目をこちらの体に寄せる。
「八千慧さん、もうちょっと腰、下ろせる?」
「構いませんが、そうすると殆ど顔に跨る形になりますが」
「うん、それでもいいから」
 八千慧は逡巡した後、そこから再びゆっくりと腰を下ろす。そうしてもっと近付いてもらい、程よい高さで右手を鼠径部に添えると、彼女は言わずとも察してそこで止まってくれた。
 左手も右手に倣って反対の鼠径部を押さえ、両方の親指をその間に位置する大陰唇に添えて、左右に割り開く。
「……ん、っ……」
 初めて受け手に回った八千慧は微かな吐息を漏らして、自らの性器を露出させられる羞恥に僅かに頬を赤らめる。軽口を叩き合っていた時の弛緩した空気はもう無く、視界の端では彼女の竜の尻尾の先が緩く揺らめいた。
 拳一個分も離れていない至近距離で覗く陰唇は美しい桃色がよく見え、元来の、というには多く見える潤いがてらてらとぬめり、輝いていた。ずっと責める立場だったとはいえ、八千慧の方にも多少の高揚はあったのかも知れない。
 それと同時に、性器特有のつんとした牝の香りが鼻孔をくすぐる。だが、それも興奮材料に過ぎず、逸る気持ちを抑えずに目の前の秘裂に舌を伸ばす。
「あっ、はぁんっ……」
 互いの粘膜同士が触れ合った瞬間、八千慧は再び甘い声を上げ、こちらには苦味と甘味が入り混じったような不思議な味をもたらす。それら二つを感じる五感は聴覚と味覚と異なっていても、もっと聞きたい、味わいたいと思う欲望に違いはない。
 その昂ぶりに任せて陰唇への舌愛撫を繰り返し、時には小陰唇、陰核へも奉仕をして八千慧の口から零れ落ちる小さくも高い音色と、とろとろと湧き出てくる蜜を貪り続ける。
「はっ、んっ、くぅんっ……。しかし、○○さんは、舐めるのが好きなんですか? ほぼ毎回、してくれている、ような、気がしますけれど」
 自らの性器を這う舌の感触に身を小さく揺らし、声を途切れさせながらの問いに、一旦口を止めてその顔を見上げる。
「……好きだし、八千慧さんもされるの好きだと思ってたけど、あんまり?
「いえ、私もして貰うの好きですよ。私のために熱心な○○さんの姿を見るのが好きですし、とても気持ちいいですからね」
「相変わらず口が上手いね。でも、俺も八千慧さんが感じてくれてる姿、凄く好きだよ」
「あらあら、それでお返しのつもりですか?」
 八千慧は口角を少し持ち上げて不遜に笑う。しかし、普段見せるこの笑顔はいかにも裏がありそうな表情なのに、今は赤らんだ頬の緩みを抑えきれていないのが可愛らしい。
「そんな意図はないよ。そういえば、八千慧さんのここ舐めてると、自分でも不思議なくらい興奮するし体が疼くしで、ついつい続けちゃうっていうのもあるかも。いや、立派な前戯なんだから興奮するのは当たり前といえば当たり前なんだけど」
 それこそ、奥から滾々と湧き出ている淫蜜に媚薬でも混じっているのではと思うくらいに気分は高揚し、止め時を見失いそうになったことも少なくない。
「ふふっ、きっと私達の相性がいいんですよ。素直に喜んでおきましょう」
 そう嬉しそうに言う彼女は、理由なんてそれでいいかと思えるくらい可愛らしい。
 ともかく、八千慧の陰唇へ奉仕しているだけで彼女を求める欲望が加速度的にどんどん膨らんでいるのは紛れもない事実だ。そして、その矛先は見上げる姿勢になった時から気になっていた、もう一つの性感帯へ向かっていた。
「八千慧さん、ちょっと失礼」
「え? 何か――」
 一応声掛けをして、だがその返事は待たずに行動を起こす。
 ワンピースの裾を捲る八千慧を下から見上げる体勢だからこそよく見える、素肌とワンピースの隙間。そこに、右手を突っ込んだのだ。
 その瞬間、彼女の目が見開き、尻尾が大きく上に振りかぶったが、右手が触れた箇所がどこか気付くと、それを収めて呆れた顔を見せる。
「急に何かと思えば……。思わずこれを叩き付けそうになりましたよ」
「……奇襲、もとい、搦手のつもりです、けど……」
 尻尾を撫でながらの言葉に少々身震いしながらも答えると、八千慧はあからさまに大きな溜め息をついて、頭を押さえてやれやれと左右に振る。
「あのですね、奇襲だからと言って突然やればいいというものではないんですよ。下準備をして、状況を作って、タイミングを計って……と、これ以上は長くなるので止めておきますが、こんなのは搦手と認めません。そもそも、私の胸なんて触ったって何も楽しくないでしょう」
 そう、右手が今撫で回しているのは、八千慧の控え目な膨らみだ。
「いや、柔らかいし、気持ちいいよ。それに、何よりも八千慧さんのっていうのが大事だから」
 怒る、というよりは理解出来ないという様子で呆れる彼女に反論しながら、ワンピースの胸元に手の形が浮かぶほどにまさぐってむにむにと揉む。
 確かに彼女の胸は小さい方ではあるが、しっかりと指は沈むし柔らかいしと、十二分に楽しい。一方、八千慧はこれの何が面白いんだと言わんばかりの冷めた顔を崩さない。
 しかし、ぷくんと膨らんだ小さな突起に指が触れると僅かに口元を歪ませ、それを親指と人差し指の二本できゅっと摘まむと小さく体を揺らした。
「んっ……!」
「それに、八千慧さんも嫌いじゃないでしょ?」
「……ご自由にどうぞ、もう」
 すると八千慧はぷいとそっぽを向いてしまう。短めの金糸の合間から覗いた、赤く染まった耳に愛しさを感じながら、中断していた陰唇への愛撫を再開する。
 右手は乳房を自由に撫で回しているので左手しか使えないが、最初こそ殆ど閉じていた一対の花弁はかなり綻び、ひくつく膣穴も覗けるくらいなので大丈夫だろう。むしろ、これなら左手も先のように開かせるのに使うのではなく、奉仕に加勢させた方がいいかも知れない。
 なので、今回は口を少し上へ、クリトリスの方へ持って行き、そちらに重点的に舌を這わす。
「あっ、ん、クリ、気持ちいいですよ……」
 弱い刺激でも十分に快感を生む箇所であるが故、これだけでも八千慧は甘い声を漏らすが、当然これだけでは終わらない。
 控えさせていた左手の人差し指も陰唇へと伸ばし、唾液と愛液に濡れた膣口をすりすりと撫でる。そうして、指に潤滑油を纏わせながら入り口を解してから、指をゆっくりと沈ませる。
 狭い入り口は挿入した瞬間こそきゅっと窄まり侵入を拒んだが、すぐに受け入れようと口を開けて呑み込んでいく。熱い粘液を蓄えた膣内を緩慢に進み、中ほどまで沈ませたところで軽く上下に揺らしてみる。すると、ぬちゅ、ぐちゅ、とこもった水音が鳴り響き、自分の耳にまでしっかりと聞こえてきた。
 これは相当溜まっているのでは、そんな考えが思い付くと居ても立っても居られず、指の腹で膣壁を弱く引っ掻きながら少しずつ入り口へと戻っていく。そして、指を抜く直前に一旦クリトリスへの舌愛撫を止めて肉穴の方をしっかりと目で捉えてから、改めて指を引き抜いた。
 その瞬間、指の形どおりに開いた膣穴から中に溜まっていた淫蜜が大量に溢れ出す。それはさっきまで夢中になっていた物よりももっと粘度が高く、見るからにたっぷりとした質感があった。
「ひぁっ! きゅ、急に、そんなにっ……!」
 気付いた時には甘露を零す穴に口を付け、じゅるっ、じゅぷっ、と音を立ててむしゃぶりついていた。もはや自分には八千慧の蜜は極上の媚薬――それも中毒性も極上の――にしか思えず、一滴でも多く嚥下しようと呷り、飲み下していく。
 そんな激しい口淫は八千慧にも興奮を与えているのか、胸を弄る手を伝い、心音が高鳴っているのがよく分かる。その音は愛蜜の熱さに浮かされていた脳に、ある名案を授けた。
 そうだ、ここももっと気持ちよくさせてあげれば、まだまだ湧き出てくるはず。ならば善は急げと、下に集中していた分、幾らか疎かになっていた右手へも意識を入れる。
 胸を撫で回していた右手を広げ、親指から人差し指のラインで下から乳房を掬うように持ち上げて、柔肉をふにふにと揉み解す。勿論、中央の突起への責めも忘れずにぷくりと硬く膨張した乳首を指でつついて腹で転がし、きゅっと摘んでは指先で扱いてやる。
 そうして十分に弄ったら次はもう片方、次はまた戻ってと、両方を満遍なく愛撫し、八千慧の乳房を堪能しつつ官能を与えていく。
「あ、んっ、胸も、そんなにしちゃ……」
 すると案の定、下の口からは再び露がとろりとろりと溢れてくる。それらを一雫も逃がさずに舌でしっかりと掬い、飲み下す。果てには舌を媚肉の中にまで捻じ込み、ひだに溜まったものまでも舐め取っていく。
「あ、くっ、○○さん、もう、もうそろそろ、んっ、止めても……」
 八千慧は止めてもいいと言っているが、自分はまだ足りない、もっと欲しい。その気持ちはどんどん大きくなっていき、それを満たすために乳首を爪先で非常に弱く掻いて刺激し、陰核を指先で圧したり、口付けを何度も落として絶え間なく性感を与え、彼女の体がもたらす甘い甘い媚薬が枯れてしまわないように努め続ける。
「で、ですから、もういいと……」
 八千慧が何か言っているが、何を言われようと止める気はないし、この舌愛撫を始める前にも何か言っていた気がするがもう忘れてしまった。今の自分の中にあるのは、ずっとこのまま八千慧を味わっていたい、その一心だった。
「……あれ?」
 しかし、不意に胸を撫でていたはずの手からも、陰唇へ奉仕していた舌からも、八千慧の感触が消えてしまう。一瞬思考が止まり、間抜けな声が出たが、なんてことは無かった。膝立ちの姿勢だった彼女が立ち上がったせいで、手はするりと抜けて、舌はそのまま離れてしまっただけだった。
「八千慧さん、どうしたの? 俺、まだ続けるつもりだけど」
 だから、また体を預けて欲しい。させて欲しいと訴えるが、八千慧は何も言わずこちらを見下ろしている。その表情は喜怒哀楽のどれにも当たらない、至って真面目な顔だった。
「八千慧さん?」
 もう一度声を掛けると、八千慧は再びこちらの体の上に腰を下ろして馬乗りになる。しかし、先程までとは違い、腰を下ろした場所は顔の上ではなく腰辺りだ。
 そして、こちらの頭の横に両手をついて四つん這いになって真正面に構えると、声は小さく、しかしはっきりと囁いた。
「もう、しなくても、大丈夫、ですよ」
 八千慧の一言一言が、耳を通して脳までしっかりと届く。……そうだ、思い出した、これを始める前に彼女が言っていたのは。
「あ、ああ、そうそう、濡らすだけでよかったんだったね。ごめん、ちょっとやりすぎた」
 最初はそのつもりだったのに、いつの間にかかなり夢中になってしまっていたことを謝罪すると、八千慧は表情を和らげる。
「いえ、謝るほどではありませんよ。それに、私も失念していました。そういえば、私と〇〇さんは相性が抜群でしたね。色々と」
「色々?」
「はい、色々」
 八千慧はそれ以上は何も言わずにこちらの頬を一撫でする。結局、何が色々なのかは分からないし聞いても教えてくれないのだろうけど、まあ、相性がいいのであれば越したことはないか。
 一人納得する自分を余所に彼女は体を起こして再度馬乗りの体勢になると、更に体を後ろに下げて、股間の前に座り直す。八千慧を追って自分の目でもそちらを見ると、気付かないうちに陰茎は完全に勃起していた。
「それにしても、これ、凄いですね。ほら、こんなにがちがちですよ」
 八千慧は反り返って我慢汁を垂らす肉棒を横から指で少しだけ押して、ぱっと離す。すると、男根はバネのように弾みながら真ん中に戻り、また天井を指してそそり立ち脈打つ。多少時間を掛けたとはいえ、あれだけ体力を使う射精を行い、あれだけ脱力し切っていたのに、自分でも驚くくらい完全に復活していた。
「……八千慧さん、その……」
「分かっていますよ、こんなに早くしろ早くしろってびくびくしているんですから。ちゃんと最初に言った通り、しっかりと鎮めてあげますからね」
 八千慧は陰茎で遊ぶのを中断するとしっかりと掴んで固定し、その上に体を構えて亀頭の先端と膣穴の入り口をちゅっとキスさせる。
 僅かに触れ合う肉棒から伝わる、彼女の秘部の柔らかさと熱さ。たったそれだけで背筋はぞくりと震えてしまい、それが八千慧にも伝わったのかふふっと笑いを漏らす。
「行きますよ?」
 そして、一言だけそう言うとゆっくりと腰を下ろし、陰茎を自ら呑み込んでいく。
「はっ、あ、あぁんっ……」
「っ、く、うっ……」
 固い角や甲羅、それと普段の態度から一見強固で揺らがないイメージを与える八千慧だが、その女性部分、膣内はとてもふわふわで柔らかく、中を押し広げて侵入していく陰茎を優しく抱擁してくれる。
 そんな手厚い歓迎を受けながら肉棒は膣道を突き進み、程なくしてこつんと行き止まりにぶつかる。蜜壺の最奥を叩かれた感触に、八千慧はぶるりと体を震わせ、膣肉もきゅっと一瞬締め付けを強くした。
「ふぅっ……。〇〇さんがしすぎるくらい熱心にしてくれたので中は乾いてしまったのではと少々不安でしたが、問題はなさそうですね。さて、それでは早速動きますよ」
 八千慧は先の舌愛撫の件を笑いながら揶揄しつつこちらの胸に軽く手をついて支えにすると、緩慢に体を揺らし始める。
「あ、うぁ、くぅ……」
 大量の粘液を伴った肉ひだが、亀頭やカリ首、肉幹を包みながらも上下にこすられるのは気持ちいいが、扱く動作としては非常に物足りない速度での動き。しかし、実際は遅いからこそ男根に纏わりつく膣内の肉粒やひだの一つ一つの感触まで叩き込もうとしているかのような、じっくりと粘っこい快感を与えてくる。
 こんなのはまだ慣らし、言わば助走だと分かっているがそれでも腰は戦慄き、情けない声が溢れてしまう。
「おや、どうも○○さんは待ち切れないようですし、少し早いですがペースを上げましょうか」
 方や八千慧はこちらの反応を見て余裕たっぷりに言うと、一旦腰を止めて体を前に倒し、布団に肘をついた四つん這いになってこちらに覆い被さる。
「さあ、○○さんが気持ちよくなっている顔をもっと近くで、もっと見せて下さいね?」
 眼前に映る八千慧の笑顔は、先のにこやかなものからがらりと変わり、嗜虐的で妖艶なもの。彼女の鬼傑組組長という面しか知らなければ思わず竦み上がる笑顔なのだろうが、自分はと言えば、何故かは分からないけど今日は凄く張り切っているなあ、くらいにしか思っていなかった。
「くっ、うあぁっ……!」
 だが、そんな暢気な考えはすぐさま快楽で塗り潰されてしまう。体勢を整えた八千慧が再び腰を跳ねさせ始め、深く差し込んだままだった陰茎への責めが再開されたからだ。
 それも、さっきまでのようなゆったりとしたものじゃない。腰の上下に合わせて、結合部から互いの体がぶつかって弾けるような小気味よい音が響いてくるほどの、激しい腰使いで、だ。
「はあっ、そうです、その顔ですっ。もっと、んっ、もっとしてあげますっ」
 先程じっくりと体に叩き込まれた媚肉の無数の粒々や肉ひだで分身を扱くような責め立てに、早速八千慧の望む表情を晒し、それを至近距離で見られてしまう。
 しかし、それが叶えられるのは彼女だけではない。自分の視界にも、等しい距離感で彼女の顔が見えている。
 その表情は、責め立てているのは私だという自負からか大きく崩れこそしていない。しかし、頬は紅潮し、瞳は潤んでと、自らの行為で生まれている快感にしっかりと感じ入っている事実までは隠し切れていなかった。
 自分が八千慧から与えられる快楽に身を震わせているように、八千慧も肉棒との摩擦で得る法悦を貪っている。そんな煽情的な彼女の姿に魅せられて分身が一段と脈打ち、絶頂の影が早くも顔を覗かせる。
「んっ、○○さんの、びくってしましたね。もう射精してしまいそうなのですか?」
 八千慧はそれをすぐさま見抜くと、腰を止めないまま顔を一層こちらに寄せ、耳元でそっと囁く。
「それなら、膣の一番奥の、私の子宮へびゅーって射精しましょうね」
 子供、それも十どころかその半分ほどの幼い子をまとめる保母のような優しい声に反し、その内容は膣内射精をせがむ淫らなもの。
「なんなら、私を孕ませてみますか? 私は構いませんよ?」
 そして、八千慧がウィスパーボイスで更に続けた言葉につられ、脳裏にある光景が浮かび上がる。
 それは、今のような引き締まったお腹ではなく、大きく膨らんだお腹を愛おしそうに撫でる、八千慧の姿。
「あ、またびくびくって……。孕んだ私でも想像して、興奮してしまいましたか?」
 彼女の言葉どおりに思考まで誘導され、あまつさえ陰茎が正直に反応を返すさままでを本人の口から教えられてしまう。
 身も心も、彼女の手の平の上で転がされている。そう分かっていても抗えない、というよりも抗う気がないので、そうなるのは当然と言えた。
「でも、いいのですよ、叶えてしまっても。私の子宮も、貴方の精液をとっても欲しがっているんですから。貴方との赤ちゃんが欲しい、欲しい、って、ね?」
 牡の本懐でもあり、究極の独占欲の現れとも言える想い人を孕ませるという行為。それを受け入れる旨を八千慧は言うと、上下運動させていた腰の動かし方を変え、最奥の子宮口で亀頭を食むかのように何度も押し付けて腰をぐりぐりと捻ってくる。
 まるで本当に子宮が精液を望んでいるかのような動きに煽られ、陰茎も膣内射精を望んでびくびくと震えだす。
 しかし、だからと言ってこのまま射精しては男としての沽券に関わる。そんなのもう無いですよ、なんて彼女は言うかも知れないが、それでも意地で射精を抑え込み、一矢報いてやろうとこちらからも腰を突き上げてやろうと腰に力を込める。
「ああ、そう言えば、○○さんはもっとなでなでして欲しかったんですよね」
 だが、突き上げる直前、八千慧の手が頭に伸びてきたかと思えば、後頭部に手をそっと添えて、優しく抱き留められた。
「いっぱい頑張りましたもんね。もっと褒めて欲しかったんですよね」
 それと同時にもたらされる、慈悲に満ちたなでなでと、偉い偉いと幼子をあやすような言葉。それらは確かにあの時望んでいた行為ではあったが、今この瞬間、射精を我慢している時に掛けられる言葉と行為としては、ひたすらに狡かった。
 柔らかな手つきに反して肉棒は荒々しく責め立てられ、相反する二つの刺激に思考はぐちゃぐちゃ。同時に脳内にフラッシュバックする、抑え込んだ精を開放する時の快感と、その後に待っている至福の時間。
 もはや、ついさっきまであったはずの意気込みは跡形もなく吹き飛んでしまい、残った一つの切望に、精神も肉体も呆気なく陥落した。
「っ! ぐ、う、あぁぅっ……」
「あっ! ん、んっ……、〇〇さん、もっと顔、見せて下さい……」
 八千慧は勢いよく吐き出される精液に子宮を叩かれた瞬間僅かにびくっと身震いしたが、すぐにこちらの頬に手を添えると、こちらを真正面に見据えて目を離さない。
 八千慧の赤い瞳にじっと射抜かれながら、陰茎の脈動に合わせて白濁を子宮内に注ぎ続ける。あれだけ抑えようと必死だったのに、一度気を許してしまえばもう射精を止めるだなんて出来ない。それも、彼女も腰を左右に小さく捻り、揺すりと、精を繰り返し絞ってくるのだから尚更だ。
 そうなれば自分に出来ることは、余計なことを考えずにただただ八千慧の胎内に精液を送り込むことだけだった。
「ふふっ、どくどくって、沢山出てますよ。……あ、終わりましたね。種付け、気持ちよかったですか? ……なんて、聞くまでもありませんね。とっても気持ち良さそうでしたもんね」
 そして、射精を終えると八千慧はそう言ってにこりと笑い掛け、頬を優しく撫でる。
「でも、二回目なのにあっという間に射精してしまうのは頂けませんよ。次はもう少し、頑張りましょうね」
 最後に鼻先をつんとつつき、悠々と体を起こす八千慧。
 朝っぱらから始まった情事、加えて二度目の射精という疲れに軽く放心しながら、押し倒された体勢のまま、体を起こしもせずにぼんやりと彼女の姿を眺める。
 八千慧は見るからにご機嫌で、背中の後ろに覗く竜の尻尾も緩慢にだが大きくわさりわさりと大袈裟に揺れていた。一見しただけでは手持無沙汰ならぬ尻尾無沙汰にしか映らないくらい、ゆったりと落ち着いた動きだが、自分には分かる。どうやら今の八千慧はかなりいい気分らしく、よっぽど自分主導で二度も射精させたのが嬉しいのだろうか。
 何はともあれ、八千慧が嬉しいのであれば自分も嬉しい。自分でも、こんなことでも、畜生界で心安まる時が少ない八千慧の、日々の活力になるのならば。
「それにしても、依然固いままなのは入れっぱなしだからですかね。まあ、何にせよ、まだ朝ですし取り敢えずこの辺りで……」
 しかし、だからと言って、男としてこれでは終われない。
 陰茎から自身の身体を引き抜こうと腰を上げ掛けた八千慧の、鼠蹊部近くの脚をぐっと掴む。
 急に動きを遮られた彼女はその瞬間、小さく「え」と漏らし、一瞬の隙を作る。それを見計らい、腕、肩と流れるように引っ張り込む。
「な、なんですか?」
 右手で肩を、左手で腰をしっかりと抑えられ、再び眼前に来た八千慧の顔はさっきまでの余裕綽々としたものではなく、珍しく狼狽した、少し幼く見える表情。
 それは、する側からされる側に変わった証でもあった。
「八千慧さん……」
「だから、どうし……」
「鎮めるって言いましたよね。俺はまだ、満足してませんからっ……!」
 彼女の返答を待たず、言い切ると同時に最奥から肉棒を一気に引き、もう一度腰を押し込んだ。
「ひあぁぁっ! あっ、はあっ、あぁっ!」
 八千慧は驚きの色が強い嬌声を上げるが、構わずに何度も突き上げ続ける。振り絞った気力だけを込めた、テクニックも何もないピストンながらどちらが主導権を握っているかを教えるには十分だったらしく、彼女は突き込みに合わせて喘ぐことしか出来ていない。
「まっ、待って、くぅんっ! す、少しでっ、いいです、あぁっ、からぁっ!」
 しかし、それでも八千慧は何とか言葉を紡ぐと、待って欲しいと懇願する。
 だが、はい分かりましたと止める気なんてこちらにはさらさら無かった。もし言う通りにして彼女の言葉に耳を傾けたら、またいい様にされてしまうのは想像に難くない。
「んっ、んむっ……」
 なので、すぐにその口を唇で塞いでやる。おまけに舌を彼女の口内に侵入させ、一言すら喋らせないよう、意味のある言葉を出させないように蹂躙する。
「ふっ、んんっ、ん、ちゅっ、ちゅぷっ……」
 強引なディープキスに八千慧は最初こそ抵抗していたが次第にその力は弱くなり、やがて向こうからも舌を絡ませるようになっていく。どうやら押し退けるのは無理だと悟り、諦めたようだった。
 同時に、強張っていた体の力も抜けてきて、よりこちらに体重を預け始める。それなら、こちらももう力押しの強引な手法は抑えようと速度を緩めた抽送に切り替えて抱き締める強さも余裕を持たせると、彼女はもっと深くこちらに身を寄せてきた。
 もう、八千慧に抵抗の意思は無い。それが分かったところで、肩に回していた右手を離して彼女の頭の方へと滑らせて、吉弔八千慧を象徴すると言っても過言ではない――そして、とても愛らしいチャームポイントでもある――角の先端に触れる。
「あっ、やっ……、くぅんっ……」
 触れた瞬間、八千慧はぴくっと身震いしたが、先端から下に向けてゆっくりと優しく撫でていく。
 普段ならばこんな風に角に触ろうとすると手を軽く払われたり、払うまでは行かずともするりと逃げてしまうが、今はなすがまま、まるで子犬や子猫のような鼻にかかった声を静かに漏らして受け入れていた。
 見た目以上に滑らかな角をそっとなぞり、枝分かれした箇所に差し掛かれば股の部分を指先ですりすりと撫で、更に根本に向かう。
 程なくして根本に辿り着けば、さらりとした髪の柔らかさを味わいながら、しっかりとした質感の角の生え際を緩くさする。
 八千慧にとって角は爪や髪と同じく、触られれば他の箇所の感覚器や神経で分かるが角自体にそれらはない。とはいえ、機嫌がいい時に少しだけだが、こうして撫でるといつもとても気持ち良さそうにする。それなのに、何故あまり触らせてくれないのかは教えてくれないが。
「はぁっ、んっ、ふうぅっ……」
 だが、こういう営みの最中も気持ちよく思っているのは間違いなさそうだ。行為の最中に撫でるなんてことはした試し、というより出来た試しすらないので初挑戦だが、指が角をさする度に膣肉もきゅっ、きゅっと可愛らしく締め付けてくる。
 片方の角を存分に愛でたら、勿論もう片方にも手を伸ばす。位置の関係上、さっきよりも幾らか撫で辛いがそれでもくまなく愛撫して、今のうちに十分に堪能しておく。
 そうして一頻り楽しんだ後、次は背中、甲羅に変化させる前の鱗に手を伸ばす。
「あぁっ、やっ、そ、そこはぁ……」
 背中に規則的に並んだ硬い鱗を、生えている向きに沿って下へ下へと撫でて行き、程々でまた上に手を少し戻して撫で直してと繰り返し、徐々に腰の方へと手を向わせていく。
 そして腰に辿り着いたら、次は鱗に加え更にごつごつとした竜の尻尾へと手を移し、手が届くところまでではあるがこちらも同じように撫で回していく。
 鱗は角と感覚は同じだが殆ど背中と変わらないため、尻尾はそれらと違いそもそも神経が通っているためか、角を撫でていた時と同じかそれ以上に八千慧は身を震わせ、膣も差し込まれた肉棒をより締め付けてくる。
「やぁ……、駄目ぇ、駄目です、背中や尻尾は、指、怪我しますからぁ……」
 だが、当の八千慧は蕩けた声であったがこちらを気遣い、制止を嘆願する。確かに、角はともかく背中の鱗や尻尾は触り方を間違えれば指を切ってしまう可能性はある。なので、普段は角以上に滅多に触らせてくれない。
 そんな有難い忠告ではあったが、今回ばかりはそれを無視し、彼女の体の中でも特徴的な、もはや可愛らしいと思うそれらをひたすらに優しく、実際はとても硬いのにまるでこうしないと壊れてしまいそうな割れ物を扱うように丁重に愛していく。
「ひぁ、あぁん……、はぁあっ、ひゃぁっ……」
 それを二回も往復する頃には、八千慧の顔にはいつもの常に落ち着きのある表情は欠片も面影もなく、ふやけ切った表情でふやけ切った声を上げていた。
「八千慧さん、気持ちいい?」
「ふぇっ? ん、ん~っ……」
 正直、そんなのは分かり切っているが八千慧本人の口から聞きたくてそう尋ねると、彼女は目をぎゅっと瞑って唸り、こちらの肩に顔を突っ伏して黙ってしまう。
 八千慧としてはどうしても答えたくないのだろうが、これでは答えているのと変わらない。
「……言いたくない? なら、体に聞こうかな」
「っ?! ~っ!」
 しかし、あえてとぼけて少しピストン運動を強め、ちゅうちゅうと休みなく熱心に陰茎を食んでいるふわふわの膣内を掻き回す。顔を肩に押し付けて、塞いだ口から声にならない絶叫をあげる八千慧とは対照的に、肉棒に熱心に奉仕する快楽に素直な蜜壺を捏ねながら、本音を言おうとしない彼女の頭をよしよしと撫でる。
「いっ、あ、あぁぁっ……」
 程なくして、八千慧は抱き締められながらもびく、びくっと全身を跳ね上げて、弱々しい鳴き声を漏らす。それに合わせて肉壁も一際強く締まり、急に狭くなったかのような錯覚を与えた。
「あ、八千慧さん、イッたね。気持ちいいって教えてくれてありがとう」
 顔を肩口に埋めたままの八千慧の背中をぽんぽん叩く。少しだけ、意趣返しも込めた言葉に返事はないが、絶頂の余韻に未だ体を痙攣させ息も切らせている彼女にはしたくても出来なかったのかも知れない。
「でも、俺の方はまだだから、もう少し続けるよ」
「ひゃあぁっ!」
 だが、だからと言って小休止を入れたりはせず、すぐに再び腰を突き上げて、快楽の頂点からまだ降り切っていない八千慧を再び高みへ押し上げる。もしも、普段の情事ならばこういう時は八千慧が落ち着くまでは待つが、今はその時間すら与えない。
「はぁんっ、あっ、あぁっ、はぁっ……」
 押し込んで最奥のポルチオをこつんと叩く度、腰を引いてより締め付けの増したひだをカリ首で荒く擦る度、八千慧は力無く啼きながら全身をがくがくと震わせる。
 しかし、それでも彼女の体は健気に反応を返してくれる。結合部では大量に分泌された愛液がじゅぷっ、じゅぷっと重い水音を奏で、とろけた柔肉は必至に吸い付いて、肉幹から離れようとしない。
「っ……! 八千慧さん、そろそろ出すよ。もう一度、八千慧さんの子宮を、俺のでいっぱいにするから」
 陰嚢から子種がまた迫り上がって来たのを感じ、八千慧の耳元でもうすぐだと、再び膣内射精をすると囁く。
 すると、八千慧の膣はきゅうと締まり、彼女自身もぎゅっと身を縮こまらせる。
 それは、逃げられないように押さえ込まれたうえ、拒否権のない強引な種付けをされることへの恐怖の現れなのか、子を宿す場所へ熱い子種を注がれるのを少しでも早く味わおうと締め付けたのか、これだけでは判別がつかない。
「あぁっ、はぁん、○○さんっ、○○さぁんっ……!」
 しかし、頑なに声を発そうとしなかった八千慧の、甘ったるい猫撫で声で名前を呼びながらしがみ付いてくる姿がそれがどちらなのかを教えてくれていた。
「八千慧さん、もう出しますっ! だから、八千慧さんもっ!」
「はいっ、私、私も、イッ、イクッ……!」
 もう一度、彼女に呼び掛けながらスパートをかけて、自分だけでなく、二人で絶頂へ登り詰めていく。そして、最後に彼女の体を強く抱き締め、腰を最奥に向けて押し込んだ。
「ぐっ、う……、あぁっ……」
「ふあぁっ、あぁっ、ひあぁぁっ……」
 その瞬間、二人して声を張り上げ、共に迎えた絶頂に身を委ねる。根本まで陰茎をしっかりと咥え込ませ、子宮口へ鈴口を押し当てた状態での射精は必然、目の前の子宮へ向けて精液を注ぎ、八千慧も膣内を収縮させて分身を一段と絞り、自らの胎内への種付けを手伝う。それは先の、孕ませてもいい、という言葉を自ら叶えるためのようだった。
 そんな淫肉の蠢きにねだられるまま、どく、どくと陰嚢から追加の精液を送り込む。その度に彼女は小さく体を震わせて、熱のこもった吐息を漏らす。
 流石に三度目の射精となると勢いは控えめだが、量は今までにも負けていないと我ながら思う。もはや作られた傍から吐き出しいるのではというほど注ぎ続け、八千慧の子宮もそれらを全て受け入れてくれる。
「はっ、はあっ……、○○さんっ……」
 長く続いた射精が終わると、荒い息を吐いていた八千慧はこちらに熱っぽい視線を向ける。何かを求めるような、蕩けた瞳で。
「……んっ、ん、くちゅっ、んうっ、ちゅぷっ……」
 なので八千慧の唇に自身の唇を重ねる。すると、すぐに彼女の方から舌を絡めてきて、頭をよしよしと撫でられる。どうやら今回の返答は、組長のお気に召したようだ。
 そうして一頻り上でも繋がり合った後、八千慧はゆっくりと顔を離すと、柔らかく笑う。
「……もう、本当に孕ませる気ですか、貴方は……」
 呆れたような口調、だけど明らかに満ち足りた声色で八千慧は言う。
 そんな彼女の背に左手を、後頭部に右手を回して抱き寄せると、向こうからも肩口に頭を預けてくる。
 それはまるでもっと抱きしめてほしいと言っているように思え、深くぎゅっと抱き寄せると、同じように抱擁が返ってくる。
 口には何も出していなかったけれど、これには逆らえない、なんて考えながら、お互いに言葉もないまま深く抱き締め合っていた。



2.
「あー、まだ怠いなぁ……」
「朝から張り切り過ぎるからですよ、もう」
 寝起き早々に始まった睦み合いからしばらく経ったが、八千慧も自分も二人して布団から出ないまま、二人寝転んでだらだらと過ごしていた。
 本来ならとっくに朝食も済ましている時刻なのでいい加減お腹も空いてきたのだが、起き上がる気力が未だに湧いてこない。
「……そもそも事の発端は八千慧さんじゃ……」
「確かにそうですね。しかし、今現在お疲れの原因は、○○さんからした最後の一回のせいでは?」
 僅かに糾弾を込めた物言いは、事実という最強の証明であっさりと払われてぐうの音も出ない。八千慧自身も傍らに居るとはいえ、それは疲れが原因ではなく、自分が布団から出ようとしないから一緒に居るだけなのだ。
 やはり、舌で八千慧に敵う訳がない。それを改めて思い知られたところで、ふと思ったことを聞いてみる。
「そういえば、折角の新しい服のお披露目なのに、あんなやり方で良かったの? 普通に、新しい服を買ってみたのですがどうですか、でも良かったんじゃ」
「だって、それだと○○さんは絶対に褒めるでしょう? 本心じゃなくても。突発的状況こそ、本心が出るんです。そして、私が知りたいのは本心なので」
 ……まあ、彼女の言い分も分かるが、それは。
「八千慧さん……」
「ああ、勘違いしないで下さいね。〇〇さんを、ご機嫌取りに見え見えのくだらないおべっかを使う奴らと同じだなんて思っていませんし、疑う訳でもないのです。搦手で相手を弄したくなる性分なんですよ。例えそれが恋人でも、ね」
「……あ、うん、そっか」
 だが、不満を訴える前に八千慧に先回りして答えられてしまった。相変わらず、こちらの考えはお見通しのようだ。
「我ながら、可愛げの欠片もない、面……」
「いや、全然。面倒だなんて思わないよ」
 だが、次に先回りをしたのは自分の方だった。すると八千慧は一瞬目を見開いたが、すぐに柔らかな笑顔を見せた。
「……ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです」
「お礼を言われるようなことじゃないよ。それに、だからこそ最後みたいな甘えてくれる八千慧さんがもう可愛くて可愛……」
 しかし、更に続けた言葉はまたもや余計だったようで、言い切る前に脇腹に拳が飛んできた。
「うっ」
「……忘れる。分かりましたか?」
「いや、でもさ、流石にあそこまでは行かなくても、八千慧さんも角とか触られるの嫌いじゃないなら、普段からもっと……うぐっ」
 二発目の拳の力はさっきよりも強く、寝ながらにして体が仰け反ってしまった。
「八千慧さん、直接的に力を振るうやり方は苦手って……」
「……いいですか、人間に鬼傑組組長が角や尻尾を撫でられる姿なんて、他人には見せられないでしょう?」
「見せる気なんてないし、自分達二人しかいない時くらい、いいと思うけどなあ。それに、甲羅を仕舞ってる理由を聞いた時、貴方と二人きりの時は身を守らずに居れるからって言ってたよね。それって、自分と二人きりの時は組長であること以上に、一人の吉弔八千慧として居ることを選んでくれてるってことじゃないの?」
 いつだったか、自宅で過ごす時は甲羅を出していない理由を尋ねたら、八千慧自らそう教えてくれたのだ。自分の過去の発言での反論に、流石の八千慧も「む」と一旦は押し黙る。  
「分かった。じゃあ、角や尻尾を触られるのが嫌なら、嫌って言って欲しい。俺も八千慧の嫌なことはしたくないから、もう二度と触らない。でも、そこまで言うなら少しくらいはいいかな、ってちょっとでも思うなら……」
 八千慧にこれからどうしていくかを決める提案をしてから、了承のサインをどうしようか少し逡巡する。
「……この手を握って欲しい」
 最終的にはサインは握手に落ち着き、彼女に向かって右手を差し出す。彼女はその手をじっと見つめた後、ふむ、と顎に手を当てる。
 八千慧にはとっくに分かっているのだろう。先の自分の発言に込められた思惑が。
 まず、嫌なら二度としないという取り決め。この――普段から嫌がっているならともかく――二者択一で下すには行き過ぎとも言える処断は「そこまでしなくても……」と思ってもらいやすくする狙いがある。
 それに、そこまでしたいならと思ってくれるなら、とわざわざ言ったのには、そっくりそのまま了承する口実にしてもらうためだ。貴方がそこまで言うなら仕方無く受け入れてあげますよ、という口実として。これなら、恋人同士とはいえ借りだって作れる。
 それらを八千慧が分かっていないはずがない。だからこそ、きっと彼女は渋々にせよ喜んでにせよ、承諾するはずだ。
 そう思いながらも緊張しつつ、答えを待つ。お互いに見つめ合って十秒ほど経った頃、八千慧は手をそっと伸ばし、差し出した手をぎゅっと握る。
「……いいですよ。但し、条件がいくつかあります。二人きりの時だけ。止めてと言ったら止める。他人に話さない。取り敢えずこれらを全て守れるなら、構いませんよ」
「……ありがとう。仕方なくでも受けてくれて」
 内心大きな溜め息を吐きながら、微笑む八千慧の手をこちらも握り返し、お礼を言う。しかし、彼女は「いえ」と首を横に振ると、握り合った二人の手をもう片方の手で包む。
「純粋に、私が好きなんですよ」
「……え?」
「貴方の暖かい手に、私の体を優しく愛されるのが。仕方なくなんかじゃありません」
「え、あ、そ、そっか……」
 そして続けられた、たおやかな微笑みでの清々しい直球の言葉に思わず顔が熱くなって、どぎまぎしてしまう。
 すると、そんな狼狽するさまを見た八千慧はぷっと息を吹き出した。
「〇〇さんに、あれこれ考えて策を弄するのは似合いませんよ。まあ、努力賞として先の言葉はそのまま差し上げますから、気が向いた時にでも愛してくださいな」
 八千慧は一頻り笑った後、握ったこちらの手を自らの頭にそっと乗せると手の平が角に触れるように滑らせ、余裕たっぷりににこりと笑う。
 やっぱり、彼女には敵わない。そんなことを再確認した朝だった。



3.
 日中はとても賑やかな人里の大通りも、日を跨ぐような時刻になれば出歩く者は殆どいない。居たとしても大抵は酷く酔っ払った人間とそれを介抱する人間、もしくは人間以外の何者かだ。そう、私のような。
「……お邪魔します」
 静かに抑えた声で言いながら、合鍵で開けた彼の家の戸の敷居を跨ぐ。そして、きちんと戸締りをし直してから音を立てないように注意しつつ靴を脱ぐ。人の家に土足で侵入などという蛮行は当然しない。
 玄関から数歩踏み出して家の中を覗くが、見える範囲は全て真っ暗で、明かりらしい物は一つも灯っていない。彼は既に床に就いているのだろう。
 それ自体は好都合なのだが、流石にこれは暗い。いくらここに来るまでの夜の闇で多少目が慣れているとはいえ、自分が人ならざる者だからとはいえ、家具の輪郭程度しか判別出来ないのは色々とままならない。明かりが必要だ。
 私は手荷物の袋を携えた手とは反対の手を緩く握って口元に持っていき、軽く炎を吹く。そして、手の平に向かって吹かれた炎を掠め取り、蝋燭を灯したような小さな炎を手中に収める。最後にその炎を私の少し先の中空に浮かばせるように制御して、即席の松明を作っておく。
 最低限の視界を確保したところで、まずは彼が本当に眠っているか否かを確認するため寝室に向かう。体をほんの少しだけ浮かせて足音を立てないように寝室の前へ向かい、戸の前に立って意識を集中させる。……どうやら眠っているようだ。これくらいなら気配で分かる。
 良かった、これなら眠るまで待つ必要も無さそうだ。ならば次はと、誰もいない居間へと向かう。
 居間はいつも通り綺麗に片付いていて、卓袱台の上にも何も置かれていない。私はそんな卓袱台の上にここまで持ってきた袋を置いて、中身を取り出す。
 彼の家に持ち込み、こうして闇に隠れて取り出した物。それは、人里の仕立て屋に頼んで作ってもらった、いわゆるオーダーメイドのワンピースだ。勿論、発注の際には身分を隠し、こんな物を頼んだなんてことは鬼傑組の組員のみならず畜生界の全ての存在、そして彼にも秘密で、だ。
 その服を持ち上げ、表、裏と順番に眺める。作成中にも時折顔を出していたこともあり、注文通りの出来栄えだ。しかし、一番大事なことをこれから確かめなければならない。
 私は今着ている服を脱いで、そのワンピースに着替える。……取り敢えず、着心地はいい。サイズはぴったりだし、尻尾の邪魔にもならない。
 次に見栄えを見るべく、全身鏡……は彼の家には無いので、身嗜みを軽くチェックするための手の平大くらいの鏡を棚から持ってきて、色々な角度から眺めてみる。
 ……いい感じだ、悪くない。唯一気になるところと言えば、もう少し胸が大きければ谷間が覗いたりしてもっと蠱惑的だったかな、と思う。
 なんてそんなことを考えた後、『以前の私ならこんな悩みは思いつきもしなかったのに』となんだか可笑しくなった。それに何より、この恰好を見せたい唯一の存在である彼は、そんなことは些細なことだと全く気にしないだろうから、私もそれに甘えさせて貰おう。
 新しいワンピースの確認を終えたところで、元々来ていた服を軽く畳んで袋に入れて部屋の隅に置いておき、ワンピース姿のまま寝室へ再度向かう。そして、炎を更に絞ってギリギリまで小さくしてから、戸をそっと開けて中央に敷かれた一つの布団に近づく。
 そこに寝ていた人物は、やはり彼だった。規則正しい寝息としっかりと閉じられた瞼が、確かな睡眠を物語っている。
 そのことを改めて確認し、彼の眠っている布団を少しだけ捲ってそっと中へ潜り込む。竜の尾を携えた図体だろうと、畜生界で生き抜いてきた私にかかれば彼を起こさないまま侵入するのなんてお手の物だ。
 まんまと添い寝に成功した後は、彼の体温で暖められた布団の心地良さを味わいながら、眠る彼の顔をぼんやりと眺める。
 特別な力なんて無い弱々しい人間なのに、私に対しては恐れないどころか一途で真摯な気持ちをぶつけてくる。今でこそこんな無防備な寝顔を晒しているけれど、時々見せる真面目な顔は意外と凛々しかったりする。そんな頼りないような頼りになるようなところが、愛おしくてたまらない。
 もしも私が脳まで筋肉で出来ているような獰猛で盛った畜生であれば、とっくに彼を襲っていたことだろう。勿論私はそんなことはしない。精々、柔らかそうな頬を指先で軽くつつくだけだ。
「んぁ……」
 彼は頬への奇襲に間の抜けた声を上げる。それが面白くてつん、つんと何度かつつくと、小さく唸り声をあげて頬をぽりぽりと掻いたので、この辺りで止めておこうか。
 さて、自分もそろそろ眠ろう。頭上で星のように微かに煌めいていた炎に手を伸ばし、人差し指と親指でぎゅっと摘まんで押し潰す。瞬間、寝室は再び真っ暗な闇夜に戻り、彼の顔も殆ど見えなくなってしまった。
 そんな暗闇の中で、私は彼の温かい体にもう少し寄り添って、瞼をそっと閉じる。明日の朝、私の姿を見た彼がどんな顔をするのか。きっととても驚くだろうな。今から楽しみだ。そして、私の姿を見て褒めてくれたら嬉しいけれど、なんてことを考えながら、眠りに就いた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
コメント




1.性欲を持て余す程度の能力削除
やった!八千慧さんのネチョだ!
ありがたやありがたや
2.性欲を持て余す程度の能力削除
甘くて最高や…。