真・東方夜伽話

どろっぷ

2019/07/19 11:20:47
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どろっぷ

七星

企画『こまえーきの閻魔賽日』に寄せて。

世間は盆の時期。それはつまり、楽園の死者裁判を一手に引き受ける是非曲直庁の、いわゆる定休日を意味する。
「毎年、何をしていいかわからなくて。考えているうちに休みが終わります。仕事が始まると、ほっとしますね。自分の居場所に戻ってきたという感じがして」
今度の休み、なにします? と、部下に聞かれた四季映姫・ヤマザナドゥは、暮れと去年の休みを振り返ってそう言った。
典型的な仕事中毒。尋ねた部下が、嗚呼、残念な上司、という気持ちを隠さず顔に浮かべるので、映姫の顔も渋くなる。
じと、と睨まれた彼女は、次の瞬間には何かを思いついて、ぽん、と両手を打ち合わせた。
「じゃあ、今年は、あたいが映姫様の休みを楽しいものにして差し上げますよ。差し当たっては、花火、なんてどうです?」
「花火?」
小野塚小町は、腰に拳を当てて身を乗り出してきた。艶やかな唇に、悪ガキめいたにっかりを浮かべて。
「里の夏祭りでは、締めに花火が上がるんですよ。一緒に見に行きましょうよ。浴衣でおめかしして、夜市を冷やかして。楽しいですよ」
小町がこういう顔をするときは、遊びの件であれ仕事の件であれ、まず間違いがない。
浴衣で花火を見に行く、という定番の遊びも、そういえば映姫は未経験なのだった。
「私、浴衣を持ってないんですが」
「じゃあそれも揃えに行きましょう!」
お昼前に待ち合わせて、浴衣を選んで、夜まで遊ぶ。あっという間に最初の一日の予定が埋まった。
楽しいかどうかわからないし、自分がそれをやりたいかどうかはもっとわからない。
でも。少しくらいは、付き合ってもいいか。小町のサボり先の把握にも繋がりそうだ、と、若干の仕事がらみの思惑もあり。

こうして、楽園の閻魔と死神の二人組の、夏休みが始まった。



冷たい饂飩を並んで啜り、返す刀で飛び込んだ庶民的な呉服屋で、小町は仕立ての浴衣を次々引っ張り出しては棒立ちの映姫の背に当てていった。
「さーて、どういう感じにしましょうかねー。案外と華やかなお色も似合いそうですが」
「派手すぎるのは、落ち着かないわね」
「そうですか? 可愛いですけどね」
淡い桃色に鮮やかな花が描かれた一着を、名残惜しそうに押し戻す。
小町があれこれ選んでくれるものは、確かに映姫の魅力をよく引き出してくれた。
色の白さ。髪の艶。手足のしなやかさまで。
そんな体験をするのは初めてで、まだ夜にもなってないのに、胸が痛いほどときめく。
もちろん、耳元で、可愛いですね、なんて言われるのも、初めて。
「普段の服に寄せますか。紺色とか、深緑とか。それで柄が凝っているものにして、帯と髪飾りで明るめにして……」
そうして映姫の身に、群青色と菫色の濃淡が入り混じった桔梗柄が合わせられる。
「あ、可愛い。これ、いいんじゃないですか?」
「似合う……かしら?」
「素敵ですよ。すっごく」
対面した鏡の中で、小町が肩越しに微笑んでいる。距離の近さに、また胸が高鳴った。
「……こ、これにするわ」
「はーい。それじゃ次は帯と、うーん、少し小物で遊んでみましょうか」
「小物、ね」
「半襟は野暮だけど、そうだ。帯留めなんか、いかがですか? 帯留めは普段もブロウチとして使えますから。ね?」
「……任せるわ……」
それにしてもお洒落は大変だ。浴衣を選ぶのもままならないのに、小物まで決めないといけないのだから。
映姫は既にお疲れである。もう一生分の布地を見た気さえする。
ブロウチなんて、あっても使うことはきっとないだろう。けれど。
「そしたら、こちらは、僭越ながら、映姫様の夏休み記念にあたいから」
なんて、長身の小町が屈みこんで映姫を見上げながら、差し出す。映姫にとっては少し甘い色味の、トンボ玉だった。
胸の中に、じわっと熱いものが湧き上がってくる。
「……あなたは本当に、休みを楽しむ名人なのね」
そう言うと、珍しい角度の小町の笑顔が、少しだけ困った。
「ここまでされたら、私も花火が楽しみになってきたわ。そういう意味よ」
困られるのは困るから、柔らかく言い直す。
笑顔を添えたつもりだったが、意外にも小町の顔に笑顔が戻ることはなかった。
「そりゃ、よござんした」
ほんのり耳を赤らめて、そっぽを向いてしまったのだ。
「……?」
何か、いけなかったかしら。
深く頓着する前に、旦那がやってきて映姫の丈の襦袢などを一揃い持ってきたので、二人きりの話はここで途切れた。


映姫は、件の浴衣に辛子色の帯を重ね文庫で結う。
下駄の鼻緒も同じ辛子色で、桃金色の帯留めは、胸の真ん中に付ける。
小町もちゃっかり浴衣を新調していて、(いつの間に選んだのやら)赤紫色の生地に朝顔が白抜きされていた。
銀色の帯は変わり蝶結び、下駄は紺色の鼻緒で、凛と決める。
小町が持ってきていた化粧道具で、うっすらと白粉をはたき、紅を指すと、いよいよ祭りの雰囲気が出てきた。
「うわー、映姫様似合う! 可愛い!」
「小町、さっきから可愛いばっかり言ってるけど、仮にも私は貴方の上司で……」
「お休みの時は、そういうのナシですよ! それより、あたいにも何か言うことないですか?」
「…………」
流石に、言外のあれこれが読みやすい。
「小町、あなたも似合ってますよ」
「!」
てへへー、と両手を頬に当てたところに、追撃した。
「可愛いわ」
「へぁっ!?」
目を丸くして固まった、その顔がみるみる赤くなる。
「言われる側の気持ち、わかった?」
とのぞき込むと、珍しく先に歩き出し、背を向けた。
「そういうの、ずるい」
ずるいのはどっちだ、と言いたいところだが、そろそろ夕焼けも暮れなずんできた。
町の先の通りには明かりが灯され、何かを焼くいい匂いが漂ってくる。
「行きましょ、小町。本番はこれからでしょ?」
「そう、ですね。行きましょうか。……人が多いから、はぐれないように、しなきゃ」
「そうね、離れちゃったら、もう会えないかも」
映姫は、隙だらけの左手を、そっと引いた。
「人込みには慣れてませんので、小町、そこのところよろしくお願いしますよ」
「承り、ました」
熱い手が、握り返してくる。
相変わらず表情を見せたがらないけど、今日のところはこれくらいで勘弁してあげよう、と、映姫はそっとほくそ笑んだ。



里の夏祭りには、幻想郷のすみずみから多くの人が詰め掛けていた。
もちろん人間だけでなく、人ならぬものも多くいる。
純粋に祭りを楽しんでいる魔理沙や幽々子のようなものもいれば、ヤツメウナギの屋台で忙し気に働くミスティアや、子どもたちやその親に挨拶されてお茶も飲めない慧音のように、里の暮らしに溶け込んだものたち。
祭りの熱気と宵闇に紛れて、普段は人里に姿を見せないものたちも、祭りの空気を楽しんでいる。
(レミリア達はそれでもなんとなく目立っているけれど)
自分たちもその一味だと、ぼんやり思う。
なんといっても閻魔と死神だ。日頃から説教に辻立ちしているので里の文化には馴染んでいたつもりだったが、ざわめきの中に上手に身を委ねることができなくて、映姫はそわそわしていた。
「いやぁ、結構みんな来てるもんですね」
「人里のお祭りって、そんなにみんなが楽しめるものなの?」
どうでしょうねぇ、と、小町は鼈甲飴に噛り付く。
「幻想郷って、刺激が少ないですから。きっと、みんな何か口実があればいいんですよ。あたいたちだってそうでしょ?」
否定はできなかった。浴衣で連れ立って歩いている姿は、どう見ても浮足立っている。
「映姫様。何か食べますか?」
「こんなにいっぱい屋台があるのに、選べないわ」
「そうですか? あたいそろそろしょっぱいものが食べたくなってきましたよ」
そんな甘いものを食べているからでしょ、と、映姫が鼈甲飴を睨むと、何を思ったか、小町はハイと飴の串を差し出してきた。
「……んむ」
映姫は素直に口を寄せて、飴を啄んだ。ほろ苦くてこくのある甘味に、脳が焼ける。
痺れるような甘さを堪能していると、小町が困ったように声をかけてきた。
「えっとまぁ、食べますかってつもりではありましたけど……流石に串ごとお持ちになるかなと思って……」
「むぐっ」
慌てて飴から顔をもぎ離した。
「それならそうと早く言ってください!」
「えっ今これあたいが叱られる場面ですか?」
「……叱ったつもりじゃ、ないけど……私も、早合点、でした……」
急に恥ずかしくなる。小町があまりに至れり尽くせりで、それにもう慣れてしまっていた。
だけどよく考えたら、小町が口を付けたものを食べて、しかも差し出させておいて、――流石に甘えすぎた。
「――しょっぱいもの買って、少し離れたところに行きましょうか。花火がよく見えるとこ、教えてもらってるんで」
小町が改めて、手をぎゅっと握る。熱が籠って、そのまま接着して繋がり続けられる気さえする。
「は、はい」
繋いだ手はそのまま、来たときよりも半歩近づき、小町へ寄り添った。
「全部、お任せします」



祭りの通りを一往復して、割れ煎餅をひと包み手に入れることで落ち着いた。
その間に、幽香に「あら、デート?」と冷やかされ。
アリスに「案外堂々としてるのね」と訳知り顔で頷かれ。
鈴仙には「強壮剤いかがですか?」と小瓶を売りつけられそうになった。
「何か誤解を招いているようですね。全員黒。有罪だわ」
映姫は膨れたが、小町の目じりはヤニ下がっていた。
「致し方ありませんよ。こんな格好で手を繋いで歩いてたら、そりゃ逢引にも見えますて」
「逢引ねぇ。おかしなこと。別に、ただの上司と部下なのに」
声をかけてくる有象無象を笑顔でいなしていた小町の、顔が曇る。
「そうですよねー。ただの上司と部下ですよねー」
その瞬間、小町の手の温度が、下がった。気がした。いや、やっぱり冷えた。握る力も緩んだ。
映姫が小町の異変に気付いたことに、小町も気付いた。
「あっ、あのね、こまち」
と、映姫が言葉を継ごうとしたときだった。
「花火が上がるぞーー!!」
大きな声が響き、辺りが一斉に色めき立った。人の流れが変わり、声の方へ流れ出す。
通りは一気に激流となり、拍子で繋いだ手が離れた。
「きゃッ!」「映姫!」
流される。どうしようもない。密度の高い人込みがほぼ初めてな上に、辺りは暗い。揉まれながら、先へ進まされる。抗えない。

「花火はどこから!?」「先の広場に観覧席があるって」「こっちは通らないで!」「ちょっと今アタシの足踏んだでしょ!」「花火楽しみー」「早く早く」「近道通って行こ」「おかあちゃーん!」「ヤダー髪飾り落としたー」「あっ待ってお酒だけ買わせて」「しょうがないねぇ」「太郎はどこ?」「おい、お前さん来てたのか」「上がっちゃうよ! 見逃しちゃうよ!」「うわあぁあぁあん!」「子どもがいるんです、押さないで」

ざわめきが洪水のように押し寄せてくる。頭が痛くなる。目が回る。
「いや。怖い」思わず呟いた。「……小町!」
無意識に流れの外側へ向かう。辻の脇に入ってようやく人の流れから逃れることができた。
「……」
小町とはぐれてしまった。早く合流したいのに、すれ違うのが怖くて動けない。
「小町、小町どこ?」
人の波に呼びかけるが、果たして聞こえているかどうか。
「小町、小町! 私はここです! 小町!」
誰も自分を振り返らない。誰も自分の声を聞かない。花火見たさに、皆が我先にと流れていく。
ぞっとするような光景だった。
「小町ー!」
不安はひたひたと、映姫の足首までを濡らしてくる。
このまま黒い波に浚われてしまえば、子どもみたいに泣いてしまうかもしれない。
私を見つけて。もう手を離さないで。こんな混乱の中、ひとりにしないで。
小町がいなければ、映姫は何もできない。
浴衣を選ぶことも、おやつを買うことも。花火を見る場所だって知らない。
仕事場を離れ、ただの少女になった映姫は、初めての夏休みの楽しみ方さえわからない。
「小町! 小野塚小町!」
職場では、部下。だけど、夏休みの、先輩。頼りがいがあって、優しくて、お茶目で、……
「小町っ!」
広くて狭いこの世界で、たった一人の、ひと。
ああ、私は存外、小野塚小町のことが好きだったのだ。
「小町!!」
体の中に溢れる気持ちは、この人の流れにも似ていた。
楽しげなのに恐ろしく、任せてしまいたいのに抗いたくて、胸を内側から容易く食い破る。
「こまちーーっ!!!!」
潰されそうになって叫んだ、刹那、
「映姫!!」
紅い風が、背後から映姫を攫った。包み込まれるように抱かれながら、飛ぶように移動する。
それが、小町の能力だと気付くのに、少しかかった。


時間としては、ほんの数秒。違和感が治まり、地に足が着いた。
「こ……小町?」
「よかった、動かないで、くれて。いい判断でした。おかげで、見つかった。……っはー……」
小町の肩が上下する。かなり焦って探してくれたようだった。
「小町。どうやって、私を」
体を抱き締めていた腕が緩み、胸元のトンボ玉をつついた。
「念のため、持たせておいて、よかったです。動くと、探しにくいけど、一か所に、いたから、これを目安にして、来ました」
桃金色のトンボ玉が、淡く輝く。
「……会えてよかった、小町」
小町の手ごと包み込んで、囁いた。
「怖かったわ」
「すみませんでした。手、離しちまって」
「あんな人込み、無理でしょう。手を繋いだくらいじゃ」
「でも」
映姫は体をよじり、小町の肩に額を預けた。
「抱っこでもしてない限り、ね」
小町の腕の中は温かく、張りのある浴衣は心地よかった。体の力が抜けていく。
少しだけ、気を緩めていたくて、映姫は小町の腕の中に体重を預け切った。
「ごめんなさい、しばらく、このまま」
「あい」
先ほどまでの喧騒が嘘のように静かで、暗かった。濃い森の匂いがする。
不意に、光が瞬き、追ってドンと太鼓のような音がした。
「……花火?」
「ここからだと、周りが暗くて見やすいんです。少しばかり遠いですけど、人もいなくて」
人里の南西にある小さな里山の、鼻の部分。平地に向かって少し突き出した、高台に、今二人はいるのだった。
花火は目線よりも僅かに下。黄色、橙、緑に赤、様々な光の花が、どん、どん、と夏の空を彩る。
「う、わぁ……」
弾幕と違って、花火の光は儚い。煙が軌跡を残すのも、ほんのひと時。だが、本当に美しい花火は、煙まで綺麗だ。
「花火って、こんな――すごいわ」
「ふふ。映姫様、子どもみたいですねぇ」
あら、と、映姫は小町の顔を見上げた。
「……ねぇ小町。さっき、私の名前、呼び捨てで呼んだでしょう?」
「ッ、っ……えーっと、それはですね、なんというか、勢いっていうか、焦ってて、つい。悪気はなくて、あの、だから……あ、ほら花火、すごいですよ、見てみて、ほら、ねっ」
言葉もしどろもどろだが、心臓も急に暴れん坊になった。
密着していると面白いように小町の動揺が伝わる。それがなんだか、嬉しかった。
小町を困らせるのも困るので、素直に花火に向き直る。
「夏休みの間は、いいわ、それで」
「あのー、それは、夏休みの間だけですか」
「と言うと?」
花火は、徐々に大きく、華やかさを増してくる。爆音の感覚も狭まってきた。――もうすぐ、終わる。
「こうやって、抱き合いながら、花火見て。名前は呼び捨てで。祭りの間中、手を繋いでて」
小町の声が低くなった。

「もう、ただの上司と部下に、戻れません。夏休みが終わっても、たぶん、ずっと」

みっつ、よっつ、と、光が立て続けに咲く。
今までで一番大きな花火が、空を埋めるほどに弾けて、轟く。こんなに遠くても体に響く。
花火が終わると、祭り会場から拍手が起こり、やがて静まった。

「小町。夏休みは、まだ、始まったばかりでしょう?」

映姫から、背伸びした。腕が自然と首の後ろに回る。映姫の肩を抱いていた小町が、腕の位置を少し下げ、顔が、近づく。
鼻先が掠めあう。吐息が混ざる。
どちらから重ねたのか、はっきりしない。唇の端は、ほろ苦く、甘かった。口づけが、終わらない。止まれない。
絡めたまま、小町の手が映姫の体の輪郭を辿りだす。首筋も、肩も背中も、それから……
「ん、やぁ、小町」
辛子色の帯が解かれた。解放感と心細さに映姫が呻く。
「だめ。我慢、できない」
薄い胸元。腰の、外側、内側、鳩尾を経て、また、胸へ。
買ったばかりの襦袢の中は、未熟なかたちのまま熱い。
「ぅふ……はぅ、あぁ」
布地の上から、指の腹で擦られた。たまらず仰け反るが、唇が離れることはなかった。
「んっ、んん、ぅんっ……ッ」
痺れとも違う、初めての感覚だった。少しだけ怖くて、嫌じゃなくて。
「ぜんぶ、ほしい」
「んんっっ、ふぁ、ぅやぁ」
「イヤ?」
映姫は答えるどころじゃないのに、小町は意地悪にも、答えを促すように触れる手をますます激しく蠢かせる。
手の中に、硬さを増す尖りと、しっとりと汗ばむ肌を感じると、それが答えですよね、と、小町は嬉しそうに笑った。
唇を離すと、映姫の体重を自分の方に凭せ掛け、片腕で崩れないよう支える。
髪や耳を啄みながら尚も胸をまさぐると、甘ったるい喘ぎ声がとろりと零れてきた。
「ふぁあ、あんっ、やあ、こま、ち、だめ」
「だめ? これ、イヤですか?」
人差し指と中指を揃えて添えて、子猫が毛布を揉むように、膨らみと尖りの境目をなぞる。
「んやぁあんっ……!」
映姫は小町にしがみつき、必死で堪えていた。快感に流れて溺れないように。そんなこと、できるわけがないと、知らないまま。
「こまち、こまち、ふぁ、あ、ぁ、あっ、あっっ、あ!」
体重をほとんど預けても、膝が震えて崩れそうになる。目が回り、息が上がった。もう、力がほとんど入らない。
「だめ、も、もぉ、はぁ、ぅあ、あ、こまち、おね、が、ぃ」
「……あい」
焼けつくような悦楽を胸に残したまま、小町の手が、腿を回り込んだ。
滴るほどに潤ったそこに、そっと指を添え、優しく揺らす。
「あっ、きゃ、あ、ンン、あん、あっ、あ、ああ、あ、あぁっ、ぃ、ふ、ふぁあぁ、あ、あっ! あぁぅ、ん! く、ぅ、あ……ああぁ、あ、あ……ああぁ、あ、やぅ、やあぁ、あ! んあぁ!」
「――すきです、映姫」
「な、なんで、いま、いうの、ばか、あぁ、あああ、ふぁああ、ああぁぁあ、やぁあぁあん、いっ、ぃいっ、あ、あぁ、あァア!」
「すきです」
「こまち、こま、こまち、ばかぁ、ああぁああああぁ、ああああっ! ああ、あぁ……ぁううぅ、う、んぅううっ、くっ、くぁあ、あふ、ぅんぅっ、あ、や、くる、なに、あ、アッ、あッッ! ああぁあ、あ、あ、あぁ――ァ……あっ……ん…ぅ……ンぅ……ふぅ……」
指に絡みつく粘膜も愛液も、灼けるほど熱かった。
逸る気持ちを抑えて、小町は律動をゆっくりと刻む。
映姫の体が震え、張り、一際高い悲鳴と共に震えて、……わななきながら、治まる。

「……可愛かった」
「こまちの、ばか」
「可愛い」
「ばかぁ……」
へたりこむ映姫と一緒に、小町も沈んだ。震える体を抱き締めて、草の上に転がる。
「映姫、明日は、何をしましょうか?」
「あ……あした?」
「だって、夏休みは、まだ、これからですよ?」
映姫は息を整えながら、少しだけ考えてみた。疲れと恥ずかしさに邪魔されながら、何とか、絞り出す。
「明日は……温泉……行きたい……」
疲れを取らなきゃ、という一言だけが、やや恨みがましい声音。
小町は、にっかりと微笑みながら、お任せください、と映姫の耳元で囁いた。
<後日談>

「割れ煎餅落としました!」
「そんなに食べたかったの?」


久しぶりの投稿です。
楽しんでいただければ幸いです。
七星
コメント




1.性欲を持て余す程度の能力削除
七星先生のこまえーきだ……! いとおしいいとおしいありがとうございます
2.昭奈削除
鼈甲飴に食いつく映姫が可愛過ぎます
素敵なこまえーきでした
3.名前がない程度の能力削除
映姫様の可愛さがこれでもかって強さで出ていて、小町の照れに共感を覚えました。
最高のこまえーきご馳走さまです