真・東方夜伽話

葦原美男記

2018/10/16 23:16:44
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葦原美男記

ぱ。

東方官能小説合同「猥ザップ」(http://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ186242.html)寄稿作品です。
興味をお持ちいただけましたら是非合同誌のほうも手に取ってくださいませ(DL販売中です!)
あとがき欄にリンクがあります。

 『葦原美男記』

「あ、あ、ぅあッああはぁああっ……♥」
 みち、くぷ、ぷ、ちぷぷ。細かな泡の弾けるような音が、彼女の大きな耳には殊更ねっとり感じられる。込み上げる快美感に忽ち膝は内へ折れ、因幡てゐは赤錆びた金属の構築物にしがみ付いて震える。
「ふふ、こんな濡れ方する子、見たことないわよ」
「は、ひ、だっ、て、ぇ♥」
「だって? だって、何? だって、気持ちいいんだもん、って?」
「ひ、ひもちひぃぃ、お、おっ、ぉほぅぅふひゅぅ♥」
 身体を支えるのに精一杯で、カチカチ鳴る歯にも、内臓から搾り出されるような奇妙な声にも、ガクガク震える脚にも、注意を払っている余裕など無かった。
「小さいくせして助平な体ねえ。動かなくたってぬるぬる絡み付いてくるし、あんたこれ、気持ちよすぎて莫迦になってるでしょう」
「ひぃっ、お、お、おぉっうぁ、ぁ、あ、あー、あー、あーーー♥」
 銜え込んだ肉の楔は孔と不釣り合いに太く大きく、僅かに前後するだけでもぐぷぷ、ぴちち、粘膜の擦れる間に空気の出入りする淫猥な水音を奏でる。唇を歪め、鼻の下を伸ばし切って、眼球が裏返るほど、ぎょろり、上へ流れた視線と飛びかけの意識。
「ほらぁ、私だって気持ちよくなるんだからね。動くわよ」
「あー、あ、あー、あめぇ、あぁめえぇ♥ いきゅ、いぎゅうの、うごくのあめぇえ♥」
「何言ってんだか」ぢゅ、ぐぢゅ、ぱつ、ぷちゅ。
「お、おぁぅ、お、ご、きゅふぅぅ♥」
 ごり、ごり、頭蓋の内側まで削られるような、閃光にも似た法悦。彼女の膣を摩擦している陰茎は本来、何の変哲も無い、男子ならば誰しもに備わっている持ち物。現在の持ち主は男子とは言えないが、物自体にはなんの特別もない。
「ふふ、幸せ? ねえ、何年待ったのかしら」
「ひ、ふへえぇ、わかんにゃい、わかんにゃいのおぉ、わかんないもぉん♥」
「そっか、わかんないか。そりゃ気持ちいいでしょうね」腰をがっちりと固定し、腰全体で叩き付ける動き。あるいは、上半身を被せ、浅い結合で腰をくねらせる動き。そのいずれも彼女の小さな体には収まり切らぬ途轍もない快楽を生むのだ。
「ぁー、あは、っふあー、っはは、ふふ、うふふ、ふやぁ……♪」
 余りの快感と多幸感に脳が灼かれたか、だらしない笑い声交じりの喘ぎを漏らす。彼女を満たしている幸福の正体は、恋の成就。何千年にも及ぶ憧憬、届く筈もなかった片想いへ与えられた突然の報い。己の全てを捧げても到底及ばないまでの崇拝、思慕、恭順。
「ほら、また、イっちゃいなさいな」
「はひぃ♥ いっ、いぐ、イっ、ふあ、あ、あぁあー、あー、えへ、えへえ、おほぅ」
「ふふ、可愛いわよ……ほら、いっぱい、あげる、からぁ♥」
 ぱつっ、ぱつっ、ぱつっ、切羽詰まったリズムで肉のぶつかる音。水の弾ける音。箍の外れた発情兎の鳴き声。淫らな響きは森の静謐を引き裂き、なお吸い込まれるよう。
「あ、あッ、イ、っぐ、ほ、ぉ、おお、なむち、さ、ま、ぁあっ、あはぁあああ♥」

 ――。

「何か落ちてないかなぁ」
 ぱき。小枝が踏まれて音を立てる。魔法使いとは一般に考えられているよりもアウトドア志向であるもので、普通の魔法使いを自称する霧雨魔理沙も例外ではない。木立によって適当な光量に調整された初夏の日差しは、黒い帽子を苛烈に焼くということもない。森歩きにあたっては虫除けの魔法も併用されている。昼の森林をぶらつく黒帽子の魔法使いという古典的で現実感を欠く絵面は、見た目ほど酔狂というわけでもない。
「おっ」枝や幹のねじれた背の低い木立の多い魔法の森。魔理沙の目に留まったのは、その魔法の森においては一際目立つ、垂直に聳える大樹である。
「何だこりゃあ……っと、ああ。なるほどな」その大木は太い蔦を縒り合わせて作ったような不可思議な外見をしており、よく見ると隙間もあるのだ。そして根本付近には小さな、塗装もされていない鳥居。魔理沙には心当たりがあった。
「またしても帚木伝説かと思ったら。あの電波塔、ここまで木に飲み込まれたのか。……妖精の神社とか言ってたが」
 ご利益は、遠くの仲間と会話ができるようになるとか何とか。妖精なりに祀り続けていたということだろうか。近寄って触れると、僅かに露出した金属部分は錆びて腐食しつつあり、巻き付き飲み込む樹木は硬く力強く、生命の息吹を感じさせる。
「おもしろいもんだ。早いのは妖木の成長か、それとも時の流れか」
「あれ、魔理沙さん」「お?」声のした方を見てみれば、この電波塔を祀った張本人の一味である、白帽子の妖精であった。ルナチャイルドと言う彼女の名を魔理沙自身は覚えていないが、臆病な妖精でありながら妙に自分に懐いていることを記憶はしている。
「ルナどこー?」「あ、魔理沙さん。これはどうも」「魔理沙さんはどうしてここに?」
 仲間も集まって三人が揃っても、怯えたり逃げ出したりする様子はない。舐められているようでもあるが、少なくとも魔理沙はそのことに悪い気はしていなかった。
「ん、ああ。探し物かな」
「探し物?」「何を探してるんです?」「生き物だったら私が見つけられるかも?」
「なあに、何てことはないさ。私が喜ぶものが落ちてないかと」
「はあ」「もしくは、私以外が困るものが落ちてないかと」
「なるほど」「わかります」
 腕を組み、うんうん頷く妖精3人と魔法使い1人。 
「それより、お前たちを『こっち』で見かけるのは珍しいな」
「そうですね、引っ越したもんで。でもここは特別なんです」
「へへ、ここは私達の神社ですからね」「定期的にお参りするようにしてるのよねー」
「そうか。……なんだ、お前たちの方が霊夢よりよほど神社を大事にしているじゃないか」
 わっはっはっは、と乾いた笑い声が森に響き、鳥が二羽ばかり飛び立っていった。
 ……そういえばこの神社、ご利益は何だったか。

 ――。

「なあ。そういえばなんだけどさ」
「んー?」ぴしゃっ。と水飛沫の弾ける音。柄杓を持って振り向かぬまま生返事をする霊夢。縁側から土埃が入らぬよう、そして夕に心地よく涼めるよう、桶に汲んだ水を撒いているのだ。そしてそれを手伝うわけでもなく、構うわけでもなく話しかける魔理沙。いつもの博麗神社である。
「だいぶ前になるが、境内にあるミズナラの大木に雷が落ちたじゃないか」
「あー、あれね。あの木なら今は」「わかってる、妖精が住み着いたんだろう」
 ぴしゃっ。ちゃぷん。
「そうね。それじゃなかったら何なのかしら」
「あの木がああも一気に成長したのって、結局何だったんだ? 紫のやつは外の世界の木だって言っていたが」ぴたり、と打ち水の手を止め、んー、と考え込む様子。これは霊夢自身がよくわかっていないときの仕草であることを魔理沙は知っている。そして、その後の言葉は霊夢の勘によるもので、それは大抵信用できるのだということも。
「あいつに言われた通りだとすれば、私が祀った神様が、消えてしまったせい。正確には成長したのではなく、外の世界の木と入れ替わった……んん? 重なったのかな」
「何だか漠然としているな」「もともと、信仰ってそういうものなのよ。こういうご利益があるって皆が信じれば、本当にそういう力を持つようになる。漠然とした期待が信仰になって、漠然とした力を持つのが神様ってことかしら」
「なるほど。そうすると、もしあのままちゃんと信仰されていたらどうなっていたんだ?」
「さあ。力のある神様になって、ご利益が生まれるんじゃないの。解らないけど」
 ちゃぷ、ぱしゃっ。ちゃぷ。ことん。面倒になったらしく、霊夢は桶を置いて縁側へ戻ってきてしまった。
「やれやれ。毎度ながら、巫女がこんなんで本当に大丈夫なのか」
「失敬ねえ。私がやってるんだから大丈夫に決まってるでしょ。……ところで、どうして木の話なんか聞くのかしら。また変な魔法でも始めるつもり?」そう言って、霊夢は菓子盆から煎餅を取り、食べ始める。思い出したように魔理沙もそれに倣う。
「そうだな、木の話というか、信仰の話だったんだが。幻想郷にもずいぶん宗教家が増えたし、お前たちの力の秘密を探っておくのもいいかもしれんと思ってな」
「ああ。あんたの好きな都市伝説も、一種の信仰が生んだ力かもしれないわね」
「なるほどな、それは惜しいことをした。オカルトボールは信仰アイテムだったのか」
「でも、そんなのは長続きしないわ。流行りが作る大勢よりの信仰は確かに大したものだけど、古来より畏怖と信心を集めた神様の力には本質的に及ばない」
「それは、山の神様連中のことか?」
「そうだけど、そうじゃないわ。この国を古くから守り、時には脅かしてきた神様たちよ」
 よ、と下駄を置いて室内へ上がる。いよいよ仕事は終いにし、湯飲みと急須を取りに行くのである。「……そうか。そういえば、お前にはそんな芸もあったか」
「まあね。普段は私自身の力にしか頼らないけど」
「面倒くさいから、だな」
「畏れ多いから、よ」
 縁側へ戻ると、魔理沙にも茶を出し直し、いかにも億劫そうに座ってしまう。
「うーん、これは私も信仰魔法を開発するしかなさそうだ」「何よそれ」
「星の神様なんか居なかったかな。居そうなものだが」
「んー、天津甕星(あまつみかほし)とか」
「げっ、そいつは覚えがあるぜ。悪いがノーサンキューだ」
「そういえば、月に行ったときあいつにしてやられたんだったわね。あんたには鰯の頭スパークくらいが似合っているんじゃないかしら」
「ヒイラギの葉は使うが生臭いのはちょっとなあ」
「そもそも神様の力を借りてどうしようって言うのよ」
「強力な奴隷を使役するのは魔法使いの本分だからな」ふふん、と胸を張る魔理沙に対して霊夢の視線は冷たい。「呆れた。存分に祟られなさい」
「星がダメなら、恋愛の神様とかどうだ。恋の魔法使いたる私に相応しくないか」
「……何、意中の人でもいるの? 魔理沙から恋って連想は不可能だと思うんだけど」
「お前の言葉は本当に私を傷つけてくれるな」
「縁結びの神様なら何柱か知っているけど、有名なのはダイコク様じゃないかしら」
「ほう、そいつはどんな奴だ?」食いつく魔理沙。対照的に、ゆっくりと落ち着いて説明を始める霊夢。子供に昔話を読み聞かせるように。
「大国主命(おおくにぬしのみこと)。名前くらいは聞いたことがあるんじゃないかしら。大変な美男子として知られる、国津神の大物よ。大物といえば、彼の分身も大物主(おおものぬし)といったわね」「そいつがどうして恋愛の神様になるんだ?」
「縁結びって言えば聞こえはいいけど、要するに結婚と子作りだからね。彼は何柱もの女神との間に、何柱もの子をもうけたわ。その数、なんと百八十一」
「ただのクソ野郎じゃないか」ため息をついて肩を落とす。
「ただの? いいえ、只者じゃないわよ。そんなことをすれば当然男神たちの恨み、妬みを買うわ。それで何度も命を狙われ、何度も殺されかけたり殺されたりしている。そのたびに、彼に惚れこんだ女神が彼を助けているのよ。親族に背いてまで」
「いや死んでるじゃないか。凄いな、オリオンみたいな奴だ」
「死んだとき助けてくれたのは母神様ね。ところでオリオン? それは何者かしら」
「オリオン、またはオライオン。外国の神様……みたいなもんだな。たいそう強い狩人だったんだが、乱暴者で女好き。やっぱり女神を食いたい放題食い散らかしては、よく恨みを買っていたという奴だよ。星の魔法を研究するとよく世話になる名前なんだがな」
「へー、どこにでもそういう神様って居るのねえ。でも、ダイコク様は別に腕っぷしは強くない筈よ」
「? そんなんで恨みばかり買って、どうやって生き残るんだ?」
「だから言ったじゃない。彼に一目惚れした女が世話を焼いて助けてくれるの」
「……やれやれ、ヒモの親玉じゃないか」
「薬作りが得意だったり、政治が上手かったり、武勇よりはどちらかというと知的なイメージね。天津神に国を奪われそうになっても戦わないもの」
「そいつ、結局女が好きなだけじゃないのか?」
「さあ。大きな宮殿と豪華な食事は要求したそうだから、富と女ってことかも」
「やっぱりただのクソ野郎じゃないか」額に手をやり片目を瞑り、二回目となるため息。
「どうかしらね。本人に聞いてみようか?」
「あん? ああ、そうか。修行もなしでそんな急に大丈夫なのか?」
「他の神様なら知らないけど、ダイコク様ならね」立ち上がり、裾を払って襟を正す。
「どうしてだ?」「だって、興味あるでしょ。神様界きっての美男子よ?」
「……そりゃまあ、なあ。要するに、練習したことがあるんだな」 霊夢の意外な台詞に、若干困惑した魔理沙だったが、湯呑みを置くと霊夢に続いて立ち上がる。
「そういうことだから、遅くなる前に始めましょう。ちょうど退屈していたんだし」

 ――。

「……」薄暮の空に、篝火の明かりがゆらゆら上る。霊夢の紡ぐ祝詞が涼風に流れ、静寂はなお深く思われる。虫の声さえ静まったように思え、魔理沙は黙して儀式の行く末を見守っていた。
 ――やっぱり、霊夢は博麗神社の巫女なんだな。
 何とはなしにそんな心持ちに至る。それ位に、ゆらめく炎に照らされる霊夢の真剣な面持ちや、静謐に謡われる響きの美しさは、神秘を帯びて見え聞こえるのだった。
「……ふう」 額に汗を散らし、霊夢は漸く顔を上げた。
「お」「終わったわ。もう、私の中に降りてる」
 そう言って、凝り固まった体を解すように立ち、伸びをする。
「そうか。どうしたらいいんだ?」
「まず片付けましょう。篝火を消して、もう遅いし……そうね、泊まっていきなさい」
「えっ」どきり、とした。儀式が終わっても別段変わった様子のなかった霊夢だが、その声がなんだか急に、まるで違うもののように聞こえたのだ。
「……泊まっていくでしょ、魔理沙」「あ、ああ」

 一通りの片付けをほぼ無言で終えた頃には、ちょうど日も落ちようとしており、二人連れだって室内へ入り戸も閉めた。すっかり薄暗くなっており、簡素な夕食を済ませるころには行灯を点ける必要があった。
「それで、結局どんな感じなんだ? ダイコク様とやらはまだ居るのか?」
「うん。住吉さんのときだって、何日も降ろしたままだったでしょう」くぴ、と食後の酒を飲む霊夢。その口元を注視する魔理沙。どこか、雰囲気がおかしい。
「そういえば、そうか。それで、その美男子さんは何て言ってる?」
「ん……聞きたい?」
「何だよそれ。もともとそういう話だったろう」
「ふふ。じゃあ魔理沙、こっちに来て注いでよ」
 向かい合って座っていたところ、右にずれて座りなおす。
「はあ? 私に酌をしろって言うのかよ。それがダイコク様とやらの言い分か?」
「駄目?」「……えっ、うう、うー」 霊夢に見つめ返され、視線が泳ぐ。
「大国主命がね、『こんな美人と呑めるなんて、俺は幸せ者だ』ってさ」
「んなっ、な、……う、うううー、やめろよそういうの、恥ずかしいよ」
「なんで? 彼、こんな綺麗な髪見たことないって、喜んでるみたいよ」
「そ、そりゃこの国の神様ならそうだろうけどなあ。そういうの本当に」
「魔理沙、おいで」
「……わかったよ。わかったから、もう苛めるなよ」
 耳まで真っ赤にして席を立ち、ぎくしゃくした足取りで霊夢の隣、ちゃぶ台からはみ出すくらい離れた位置に座り直す。「はい、魔理沙も呑みなよ」
 その間に霊夢は酒を注ぎ、すぐ隣に置いてやる。魔理沙の座った位置からは届かない。
「あ、ああ……うぁ」
 伸ばした手を掴まれて、咄嗟に顔を上げると、霊夢と目が合う。
「魔理沙、こっちに来なさい」「……うん」
「もっと。せっかく一緒にいるのよ?」
「な、なんでだよ……」
「大国主命がね、魔理沙のこと気に入ったんだってさ。だから、来なさいよ」
 霊夢の言っていることは滅茶苦茶だが、魔理沙には何故だか逆らい難いものであるように感じた。そう。霧雨魔理沙は既に呑まれているのだ。大国主命の神性、古来より信仰される、女神を篭絡する魔性の魅力に。
「……いい子ね」「ひゃん」近くに座ったとたん、肩を抱き寄せられる。何の抵抗もできず身体が密着する。体格や腕力に差はない筈なのに、力なく崩れ、大きな腕に抱かれているような感覚。そして遅れて自覚する、胸の奥に沸き立つ高揚感。
「ねえ、注いでくれる?」
「うん……」ぽう、と夢心地で、ちらちらと霊夢の顔を見ながら、覚束ない手つきで酒を注ぐ。そうしているうちに、少し零してしまう。「あっ、ご、ごめん……っ、え」
 慌てて手で拭うと、その手を掴まれる。霊夢はそのまま、魔理沙の手を口元へ持って行き。「ん、あむ、ちゅ」
「ひっ、ちょっ、駄目、駄目だって」
「んんぅ、なんで? もったいない。魔理沙、美味しいね」
「だからぁ、そういうの、やめ、ろよぉ」
「ふふふふ、ごめんごめん。それじゃ、頂くわね……ん」
 なみなみと注がれた酒を零さぬよう注意しながら、そっと口をつける。魔理沙はそれをじっと見ている。「……美味しい?」
「うん、美味しいよ……魔理沙のお酒」
「えへ、そうかあ」
「ほら、呑んでごらん」魔理沙のために注いだ分ではなく、自分が口をつけた猪口を魔理沙の口元へ運ぶ。ちゅる、と小さく液体を啜る音がした。
「美味しい……」「どれどれ。……くぴ。うん、一層美味しくなったわ」
「ん?」「魔理沙が可愛いからよ」
「うううー……」
 魔理沙をからかいながら、霊夢は不可思議な昂揚感を覚えていた。自分の中に神が宿っている感覚には既に慣れた。その人格を分身として受け容れることも問題ない。ただ、格別に色を好む男神を宿すことには慣れていない。ましてや希代の好色神、大国主命など。
「ねえ、魔理沙。お酒もいいんだけどさ」
「え? な、なんだ……」「んちゅ」「! ひゅあ、ん」ちゅぷ、くぷ、ぢゅる、にゅく。ぬめる舌が、少女の唇を割り、強めの酒によって甘く痺れる口腔をねぶる。ぴち、ぷ、くぷぷ、ちゅる、ちゅば。魔理沙の両手が咎めるように霊夢の肩を抱き、強張り、やがて脱力する。何をされているか理解して止めようとするが、流し込まれる寒気のような快感に慄き、そして直ぐに屈したのだ。ほの昏い室内に粘つく水音が響き続ける。霊夢の舌遣いは巧みであり、女を蕩かすために洗練された的確なものである。唇、舌、少女のそれら甘美な粘膜を通じて、女鳴かせの神力を注ぎ込むかのような。
「ん、ぷ。魔理沙……色っぽいわよ」
「や、だ、ぁ」目を伏せて、力の入らない腕で霊夢の体を押し退けようともがく。霊夢の手は魔理沙の背に回り、背筋、腰、そして尻まで妖しく撫で回す。背筋を蕩かし、女を骨抜きにする快楽がこみ上げてきて、魔理沙は逆に冷静さをいくらか取り戻す。おかしい。何もかもがおかしい。
「やめろ……やめろよ、こんなの」
「どうして? こんなに、ふふ、こんなに綺麗なのに」
「嬉しくない……ぜ」そうして話している間にも、悪戯な手は魔理沙の服を脱がそうと動いている。しかし、霊夢は――おそらくは大国主命も――魔理沙の纏う洋装の脱がせ方を心得ておらず、帯を引いたり裾をめくったりするのみで、思うように事は進まない。
「魔理沙」「っ、なん、だよ」「脱ぎなさい、自分で」
「あ……」命令する声の響きは、あまりにも官能的で、魔理沙の女としての心の、最も弱く甘く心地よい部分を狂おしく撫で擽るようで、逆らい難い魅力を帯びていた。流されていることに無自覚であれば、一も二もなく従い、好色な神に裸身を晒し、捧げてしまっていたことだろう。
「……お断り、だ」「あら」
 当てが外れたというように、霊夢はきょとんとする。『自分』がこうして命じて屈さない女などいるものか。いるのだ。この世はなんと面白いことか。
「……ねえ、魔理沙。これ」霊夢の手が魔理沙の手を取り、霊夢自身の腹部、その更に下へと誘導する。「あ? ……うぇ、なんだよこれ……」
「ふふ、何でしょうね」そこには、みっしりと硬く、先端に丸みを帯びた大きな突起があった。そう、まるで男性のその部分を触れているかのような。霊夢自身は初めから分かっている、それは男性の持つ陽の気の具現、即ち男根そのものである。大国主命の神性がもたらした、いかなる女神をも虜とし、泣き狂わせ、自身の味方に引き入れてきた、曰く付きの業物である。「ねえ、魔理沙。わかるでしょう」
「わからん」ぐ、と押し倒す。畳の上に細い金色の髪が舞う。美しい。大国主命の歯の浮くような世辞でなくとも、そのように口走りそうな、危うい美が広がり落ちる。
「わからんってば」「いいわ」「だから、わからん」
「私も彼も、もう我慢できないんだもん」
「おいおい、レイプ……強姦なんて、感心しない、な」軽口を叩きつつも、語尾が震える。魔理沙は理解している。恐らくは逃げられない、逆らえない。自分はここで犯される。そして恐らくは――。
「あら、安心しなさい。……何分かもすれば、和姦になってるわよ」
 ――恐らくは、変えられてしまうのだ。

「ひん」霊夢に圧し掛かられたまま、片手で乳房をこね回され、鼻をすするような、喉をしゃくるような、か細い声が響く。魔理沙を支配している感情は最早諦観の類である。だって、霊夢の掌は、気持ちいいのだ。異常に。
「『小娘と思っていたら、一丁前に女の顔をするじゃないか』ってさ」
「く、ぅ……やめようぜ、そういうの」
「やぁよ。魔理沙としたいの」ちゅぱ、と小さく舌舐め擦りをする。月光を帯びた霊夢の顔は妖艶で、そこらの雄であれば心乱れずには居られまい、と思われた。しかし魔理沙にとっては別の……本能を鷲掴みにして従わせるような、乱暴で、魅力的で、どのように気を持とうが決して逆らえない、番いとなるべき雄の顔に見えるのである。彼女の内の女の心が、股を開いて身を任せろ、番え、交われ、この『雄』の種を宿せ、産み増やせ、所有されろと訴え続けるのだ。
「ねえ魔理沙、私のこれ……立派でしょ、格好良くないかしら」
 すっ、と着衣の裾を持ち上げる。片方の手で下着を少し下ろすだけで、霊夢の健康的ながらも年相応の少女らしい身体に不似合いな逸物が露になる。布越しに触れて存在に気付いては居たものの、実際に見せられては魔理沙も面食らう。それどころか、他の男の持ち物でさえもまともに拝んだことなどないのだ。
「あっ、あ、やめろよ、何てもの、見せ……、っ」ごく、と唾液を大きく嚥下する音。見ている。目が離せなくなっているのだ。巫女の股間に聳える神のシンボル。大国主命の分身。ぴくりと脈打つ肉の槍から目が離せないのだ。不幸なことに、霧雨魔理沙は女であった。魔理沙は心底それを――抗えない己の本能を呪った。
「魔理沙」「ふぁ!? は、はい」
「……ぷっ。『はい』だって。初めて聞くわよ、そんな可愛い返事」
「う、ううー……」
 目に涙を浮かべ、それでもちらちらと、霊夢の顔と股間を交互に盗み見る。気になって仕方がないのだ。自分がおかしくなっていることに魔理沙自身気が付いているが、それをどうすることもできない。「舐めなさい」
「はい……」だから、当たり前のように命令され、当たり前のように従うしかないのだ。

 ちゅぷ、ちゅぷと控えめな音。時折、頬を隠す髪を肩へ掻き上げつつ、不慣れな奉仕を続ける。その様子を、初めこそ満足げに見ていた霊夢であったが。
「あんたねえ。もうちょっと上手くやれないもんなの? 行灯を舐める化け猫の真似?」
「ご、ごめん……なさい」
「いいのよ、頑張って」頭にぽんと手を置いてやり、撫でる。
「あ……うん、うん」少し撫でるだけで、むずがるように身を捩り、鼻に掛かった息を漏らす。あむ、と口に銜え込み、唾液を塗しながら唇を窄めて口腔へ迎え入れる。
「ん、そう、上手」
 褒められたと実感した途端、妖しい悦びが胸を満たす。ぐぷ、ぐぷ、別人のように積極的に、たっぷりと潤滑を与えたペニスに奉仕する。唇、舌、口内粘膜の至る所で切なげに吸い付き、縋りつくような口淫。
「あ、っん、ほんと……やれ、ば、できる、じゃない」
 魔理沙の瞳は開いているが、霊夢の腹や腰しか見えない筈であり、そもそも見ていない。情の籠った愛撫を施すのに集中するあまり、視覚は意識に入っていないのだ。一心不乱に頭ごと上下に振り、舌を押し当てて味わい、頭を撫でられて悦ぶだけである。ぐぷう、ぐぶ、などと下品な音も上がるが、それさえも気に留めていない。
「……、く、もういいわ、もういい、やめて」
「んあ、あぁ、う……うー」
 押し退けられ、不満そうに顔を上げる魔理沙。その唇はまだぽっかり同じ形に開いたままで、舌の側面がてろりとぬめ光るのが見えた。
「魔理沙、好き」
「うあ……嘘、だろ?」一瞬で意識を引き戻された魔理沙の問いに、霊夢は答えず、無言で魔理沙の下半身を覆う下着、大きめのドロワーズへ手を掛けた。
「脱がすわよ」
「あ、うん……」行儀よく膝を揃え、脱がしやすいように協力する。一方霊夢は、脱がせつつ、魔理沙の尻の下に座布団を畳んで挟んでやる。畳の上で仰向けにさせるのは痛かろうと考えてのことなのか、それとも大国主命にとっては無意識の行動に等しいのか。
「ひゃっ!? お、おい、ちょっと」
 脱がせ終わるなりそのまま、違和感のない動作で、魔理沙の両膝を大きく左右へ開いてしまう。太腿同士がべっとりと張り付いていたのは、汗だけのせいではないだろう。秘めておくべき部分が夜風に晒され、魔理沙はまた少しだけ冷静さを取り戻したようだった。
「可愛い。……だから、するわね」
「うう、ずるいぞ、そういうの……」魔理沙の膝の下に自分の膝を入れ、密着させていく。どこか粗野な仕草で、自分の位置が定まると魔理沙の腰を持ち上げ、引き寄せ、ぬめる光沢を帯びた先端を押し当てる。
「寒いでしょう」「……大丈夫、だ、ぜ」
「私に抱かれていれば、そんな思いしなくて良くなるから」手を添え、上下にくち、くにゅ、ぬるり。魔理沙は、ひ、と喉で声を噛み殺し、上着の襟を口元へ引き寄せる。ぬち、くち、魔理沙の分泌した液体を塗るつもりなのか、それとも単に焦らしているのか、腰と手を器用に使って、亀頭でぬるぬると擦る。
「あら? 初めてじゃないのね」
「な、なんで……う、うう、ぁ、ん」霊夢に指摘されて声を上げるが、ぬるぬると敏感な突起や綻んだ入口を撫で回されるうち、また黙り込む。
「さあ。大国主命が言うのよ、『このおめこは良く使い込んであるな』って」
「なっ、そ、そんなんじゃないぜ!? 魔術の素材で破瓜の血を使うことがあるんだ」
「ふーん?」慌てて弁解する魔理沙だが、霊夢はそもそもそんなことに興味はなく、いよいよ腰を進めようとする。
「ま、痛くもないのであれば、良かったじゃない」
「うあ、っ、あ、あ、あっ、あっ、ひ……っ! ふ、あ」
 挿入を半ばで止めると、霊夢の指が結合部を這い……色の薄い茂みの中から、魔理沙の一番秘めておきたかった部分を探り当てる。
「大国主命が言うにはね。ここで良く鳴く娘は淫乱の気がある、一人上手の女だって」
「……~~~っ、ち、違うっぁ、あっぐ、んん、んんぅっ」くにくにと親指の腹でクリトリスを捏ねつつ、再び腰を浮かせる。ず、と腰を進めると、霊夢にもはっきり解った。潤滑が増している。簡単に入っていく。魔理沙はめちゃくちゃ感じているのだ。
「ふーん、やっぱりね……と、入ったわ、すご、気持ちいい……♥」
「ちが、違う、っあ、あ、あ……ぅ、あ、な、なに、なにこれ、え、ひっ」ぴち、と最奥に触れられた感触の後、全身を羽毛で撫でるようなくすぐったい、むずむず、ぞわぞわした感覚が、一斉に昇ってくる。足の裏から、ふくらはぎ、太腿、腰から背中、背中、背中、背中、首。脳へ到達するなり堪えきれずわなわな震え、ただ雄へ縋りつく。
「な、なに、なになになにこれ、だめ、だめだめ、あ、あ、あ、あ、あああ、あ♥」
「ここ? へえ、奥が好きな娘は見込みがあるそうよ。こうして、ぐり、ぐり」
「だめ、だめぇ、れいむ、これあめ、らぁあめ、あ、あ、あ、……あ」
 霊夢の言うところのぐりぐりを続けていると、魔理沙の腕に一際強い力が籠り、引っ掻くような、痙攣めいた動きの後、ぐったりと滑り落ちた。顔を見ても目は合わず、どこか虚空をぼんやり見つめ、口は半開きのままで、時折びくんと跳ねるのみ。
「ぁ、あはぁ……えへ、へ、れいむ、だぁめ、だ、ぜ」
「あらあら。簡単に気をやってしまうのね……それもこんなに善さそうにして」
 よいしょ、と腰の位置を正すと、「おふぅ」などと息とも声ともつかぬものを漏らし、魔理沙の体はまた跳ねた。霊夢としては、入れたばかりのつもりだったのだが。
「ねえ魔理沙、これ好き?」「ふぇ、あ~……すき、すきぃ」
 はあ、とため息を吐いて顔を上げる。霊夢自身の中に宿る神と何やら言葉を交わしているのだ。視線は斜め上へ向け、ふむ、ふむと頷いている。
「そうね。魔理沙、起きなさい……畳だもの、背中を痛めるわよ」
「えうう、やだ、やぁだあ、もっと、もぉっとぉ、これぇ♥」
「……やれやれ、完全にやられているわね。よいしょ……っと」
 膝を揺すって、深い結合のまま互いの足を背へ回し、肩と背中を抱いて、腰ごとゆっくり起こしてやる。崩れるように霊夢へしな垂れかかる魔理沙。
「あ、あ、ぉ……あ~~……きもちいぃ……♥」一連の動作で弱い部分をまた抉られ、口をぱくぱくさせながら絶頂していた。向かい合って抱き合う形となる。履いたままの魔理沙のスカートが、霊夢の下半身を覆い、交わったままの部分は外からは見えない。
「ほら、魔理沙ってば。ほら、っ!」
「ひぎ、お、お、お、おぉ、ぉふぅ♥ あ、あー、あー、れいむ、霊夢ぅ、あ、ぉおぅ♥」
 腕を掴んでずん、と腰を突き上げると、魔理沙は息を吹き返す。霊夢にしがみ付き、背筋を反らしてくねくねと踊る。ぐりぐりと、結合している部分が悩ましく捻られる。
「ん、そう、そうよ。上手……ほら、もっと。跳ねなさい」
「あぁ、おふぅ、こう? こうかなあ、んあ、あ、これだめ、だめ、だめ」
 霊夢が揺するのに合わせ、蛙のように踏ん張った脚で腰を浮かせる。脚に無理が掛かるのと、湧き上がる快感で姿勢を保てないのとで、直ぐに落ちてくる。そのたびにじゅぷじゅぷと乱暴に、とめどなく快楽を生む摩擦が生じる。頭ごと抱きしめるようにして体重を預け、魅入られたように腰をかくかく振り立てる姿は、普段の彼女からは想像もできないほどに淫らで、また美しかった。
「そう、上手。ほら、ほら、もっとよ。あ、気持ちいいわ……それ、それ続けて」
「あ、あ、あっ♥ これ、きもち、きもちぃの、すき、すきすきぃ、ぅ、ぉあぁ♥」
 じゅぷ、じゅぷ、ぱつ、ぷちゅ、ぷちゅ。だんだん動きは大きくなり、姿勢を保てなくなった霊夢は、上半身を後ろへ倒した。魔理沙が霊夢に跨り、覆い被さり、天を向いた男根を思うままに味わっている格好である。
「んぅ、ん~~~~、あ、あ、あはぁあ♥」
 ぺろ、ぺろ、霊夢の頬を舐めながら、腰をぐねぐね揺さぶり、思うような刺激が得られないとぐずったように身を捩り、善い処に当たると破顔し甘く泣く。夢中である。
「魔理沙、んっ、あんたの中……すっごい、エッチな形……♥」
「そ、そう? あ、あぁ~、こんなの、無理、好き、好き、すきになるっ♥」
 背筋を這うゾクゾクは魔理沙を片時も解放せず、甘美な陶酔によって脳を冒し続ける。普通、オーガズムとは性交の快楽の極みで得られるものだ。しかし、完全に箍が外れている魔理沙は、秒刻みでその波に晒され続けている。今もまた。冷めやらぬうちにまた、大きくびくり、ひく、ひく、ぴくん。無様に身体ごと霊夢にへばりついたまま、にゅぽ、ぐちぃ、ちゅぽ、粘つく音を立てて腰をくねらせる。今の魔理沙には緩慢な動きしかできないが、その緩慢な動きだけで女は十分に壊れることができる。
「あぁあ、あはぁあ、すき~、すき、うふふ、すきぃ♥」
 魔理沙を満たしているのは屈従の喜び。偉大な雄に愛される幸福は、雌に発情をもたらし、麻薬そのものの恍惚を与える。疲労の一つも感じることはなく、激しい交わりも必要とせず、覚めない恋に酔い続ける。放っておけば、日が暮れようともこのままぐねぐねと、腰を振っては法悦に蕩け続けているのだろう。月か花のように優雅に、海鼠か蛞蝓のように悍ましく、そして妖しく。
「あー……これダメね、腰が溶けそう……あんたの動き、助平すぎ、なのよ。ほら、それ、ぬちゅ、ぬちゅって、腰、どうなってるのよぉ……♥」
「わかんない、わかんないもん……すき、すきなの、きもちいいのぉ♥」
 一人の少女が永遠を望んだとしても叶わない。魔理沙の膣内は痙攣交じりの断続的な収縮を見せており、歓びに震える女肉の精緻な仕組みを正しく現している。佳き男に抱かれたなら、女は等しくこのような反応を見せる。肉体的刺激のみによらず、優秀な雄を求める心によって感じ、乱れるのだ。女心は恋に狂い盛り乱れ、女体は充血した子宮の向きを正し、種を受け入れる用意をする。身も心も一つの目的へ向かい始める。
「あっ♥ だめ、魔理沙、腰浮かすのなし、それ、だめだから、だめっ」
「しらない、きもちぃ、きもちいい、霊夢、霊夢、れいむぅ、これすき、すきっ♥」
 用意ができれば、あとは求めるものを得るだけである。霊夢の声から余裕が消え、腰の動きを押し留めようと手を添える。
「あっ、だから、これ、カタチ、やば、あ、あ、あっ♥」膣の中ほどが雁首を締め上げ、上下に動かれると、中でぬぽんぬぽんと引っかかるのだ。その引き締めの奥では、丸い空間が待ち受ける。この窄めた唇のような吸い付きが引っ掛かりを生むのだ。亀頭の上側に当たり擦れる突起は、普段では有り得ないほどぽってりせり出した子宮口。男女の弱点同士を誇示し合っては擦り合う、神の代から伝わる最も愚かで甘美な行為。
「やめ、やめなさいっ、あっ、ああっ♥ こんなの、出ちゃう、でしょ、っぅ、あ、あ、あ、ああ、あ」
「あって、らあって、これ、ひもちひ、ひ、お、おおぉお、おふ、ぉああああああっ♥」
 心身共に満たされた女の肉体は、その様にしてくれた男の子種を、何としても受け取ろうとするのであろうか。好色で知られる彼の神は、そのように出来上がった女体が、どれほど手厚く雄を持て成すか知っている。女を悦ばせ従えることで、恋に溺れた女を貪るのだ。いずれもが幸福を得られる、極めて合理的な愉しみ。優れた雄にのみ許された悦楽。
「うあ、あー、もう、だめ、ほらっ、これでしょう、こう、されたいんでしょ!」
「んああっ、あー、あ~~~~♥ っぉふ、お、おぉ、っひゅ、んひぃ♥」
 ぐん、と大殿筋を引き締め腰を突き上げ、魔理沙の身体を上下に揺さ振る。首がかくんかくん前後に振れ、美しい金髪がふわふわ舞う。やんちゃな子供が振り回したために壊れた西洋人形を思わせる光景は、数寄者たる神の目をも大いに楽しませた。かくん、かくん。霊夢自身も激しい摩擦に追い詰められ、汗を散らし快美の呻きを噛み殺す。
「あぉ、ぉ、ぉふ、あー、あーーー、っお、おぉ、っふひあ♥」
「ん、くぅっ、も、っ……だめ、だめ、イ、く、イく、イくイく、うあ、うああああ、出る、出るっ出る出る出るぅあああああぁぁあああ♥」
「あああ、あ、ああーーー、おあぁあ、おふ、えひ、ひゅ、くひゅぅ……♥」
 背を掻き抱いて、どちらからともなく密着。二人同じように震え、長く長く甘い息を吐く。互いの呆けた顔が判らぬよう、月は朧に翳るのだった。

 ――。

「従って――古事記、日本書紀、共に天皇の威光を高揚するための創作が多分に含まれていると考えられる」
「ぁ、ふ。んー……」
 欠伸を噛み殺し、ぼやける視界のピントを必死に板書に合わせる。余計に色の多い蛍光ペンで教科書にラインを引き、宇佐見董子は授業へ集中しようと試みる。テスト前なのだから、幻想郷へ遊びに行くのもしばらくは無しだ……そう決めているので、寝こける訳にはいかない。董子は学業成績では上位に居るものの、日本史に関してはあまり得意ではない。どうにも意欲が湧かないのだ。
「そうだな……宇佐見、先週は何を学習したか覚えてるか?」
「ふぇ? あ、はい、ええーっと」
 老教師の声にはっと顔を上げる。当てられたようだと理解するのはそれからだった。失敗した、寝たふりをしておけば諦めてもらえたものを。隣の女子をちらりと見るが、目を合わそうとしない。それどころか、ノートを取るふりをして自分のノートを隠している。ペンの色数が董子より大分多いということしかわからない。いつものことである。董子は高校では煙たがられており、積極的に関わろうとする人間は居ない。共学であれば、下心丸出しの男が何人か有ったかもしれないが。
「何でしたっけ……何かの作り話ですよね」
「……もういい」「すみません」
 そうして黙殺され、授業は淡々と進んでゆく。仕方がないのだ。オカルトに興味があるのは確かだが、昔の創作神話など今時流行るものではない。古臭く、時代に合っておらず、覚えにくく、盛り上がりにも欠ける。誰も好んで語らないオカルトは広まらない。広まらなければ、何の力も持ち得ないのだから。
 もっと目新しくて、ゾクゾクする電波が飛び込んでこないものか。
 テストのことなどそっちのけで、董子は空想への船出を開始した。

 こくり、こくり。

 ――。

 魔法の森は昼を過ぎ、日差しは木陰で丁度良い。昼夜の別なく静まり返っている森では、枝葉の風に擦れる音と、濡れた肉のぶつかり合う音の他に聞こえるものはない。
「おグっ、おふ、ぉ、ぉ、おおおおおおふひィ、あ、あはあ、あはぁあ♥」
「ふふ、そう、そんなに良いの。交尾のことばっかり考えていたんでしょう、何千年も。ほら、もっと鳴けばいいわ」ぢゅぶ、ぢゅぽ、じゅっ、ぱちゅ、にゅぶ。相当激しく動いているようだが、牝兎――幸運の素兎こと、因幡てゐがその身を預ける鉄柱は、軋む音の一つも立てていない。

「やれやれ」状況は複雑であった。魔理沙が霊夢の――より正確には霊夢に宿る大国主命の魅惑に屈し、性の僕となってから一晩。彼の神は旧知の者に会いたいと言い出した。かつて、神話の古き昔の時代に助けた女が生きていることを、霊夢から知ったのだと。数千年の時を経て、逢瀬を果たしたいのだ、と。
「……要するに、大昔にキープした女を食いに来たんじゃないか」
 魔理沙は、電波塔を挟んで霊夢たちの反対側に居る。こそこそと覗いて見るまでもなく、淫音も嬌声も丸聞こえである。
 この状況を用意させられたのは魔理沙である。竹林に出向いて逢っていたのでは、永遠亭の天津神くずれに見咎められる危険が大きい。適当なことを言って呼び付けるよう命令されたのだ。そう、命令である。
 とはいえ、首尾はごく容易いものだった。ダイコク様の名前を出すと半信半疑ながらもえらい食い付きようで、自分からのこのこと付いてきたのだ。霊夢の姿を見るなりそこに宿る神性を悟り、一度も見せたことのない顔で這い蹲って媚び始めたのだ。
「あぉ、ぉ、あ、っひ、大穴牟遅様、ァ、っひ、んはあァ♥」
 忌々しい。本当ならあの位置にいたのは自分の筈だったのに。あの気持ちいい行為にまた溺れることができたのに。でも。ちゃんと言いつけ通りにしたから。大丈夫。後でまたしてもらえる。
「……私はもう、駄目だな」もうあの兎と同じである。どんな無体な扱いをされようが、彼の寵愛のためなら何だってするのだろう。他の女と逢う手引きだってしてしまうのだから。千年でも万年でも待つのだろう。忘れられはしないのだから。あの神はそういう神だ。どんな女でも虜にし、性愛で従わせ、決して逆らわせることはないのだ。永き信仰に支えられた神徳によって。
「ふふ、あんた可愛かったのね。ほら、ほらぁ、そろそろ出すわよ……」
「えへへへぇ、ください、くださいな、大穴牟遅様の子種、ずっと欲し、っ、ふあ、あ」
 莫迦だ。あの兎も、自分も。きっと彼の前では、全ての女が莫迦になるんだ。
「ん、あ、あ、ああ……気っ持ちいぃ……ぞくぞくして、これ、出る、イくわよ、ほら、ほら、受け取りなさい……っ♥」
「っふひい、ッひ、ひ、ひふぃ、あっ、ぅあ、っふ……ッ~~~~~♥」
 忌々しい。がん、と鉄柱を拳で叩くが、交尾に夢中の二人は気付きもしない。この後は魔理沙もあれに加わって犯されるのだろう。いや、それさえも魔理沙の思い描く都合のいい未来でしかなく、混ぜて貰えなくて懇願することになるのかもしれない。いずれにせよ、我慢できる気は、全くしなかった。状況の異様さも、自分が変わってしまったことも十全に理解しているのに、彼があまりに愛しくて、抵抗する方法がない。
「……助けてくれよ」
 ざく、と足元の落ち葉を蹴り飛ばすと、小さな鳥居が出てきた。今の魔理沙を苦しめているのは、まさにその神であるというのに。
「この際、神様でも妖精でも何でもいい。何なら橋姫が来たって構うまい」
 ――助けてくれ。何とかしてくれ。それができなきゃ、気持ちよくしてくれ。
 ……そういえばこの神社、ご利益は何だったか。

 ――。

 ざく、と足元の落ち葉を蹴り飛ばす。悪趣味な長マントに、森林に不釣り合いなローファー。チェックのスカートに、ベスト、ブラウス。
「うっ、わ、何これ」
「あら、また来たの? 見ての通り、取り込み中なんだけど」
「あっ♥ 霊夢、だめ、だぜ……今は、私の番、だから、あ、あ、あ♥」
 屋外で着衣を肌蹴たまま、体を重ねる巫女と魔法使い。ぐちゅ、ぶちゅ、音がするところを見れば何やら見慣れない器官が付いている。その傍らで呆然と座りこけ、指で股を弄り恍惚のため息を漏らす妖怪兎。あまりに異様すぎて、二人が博麗霊夢と霧雨魔理沙であることを、董子はしばらく理解できなかった。
「何やってるの……霊夢さん」
「何って、まぐわっているのよ。あんたも参加する? 大国主命ったら、あんたにも興味があるようよ」
「オオクニヌシ……何それ」割と最近聞いたような名前であった。そして実際に聞いていたが、興味を持っていない董子はそれを覚えてはいなかった。
「いいから……ほら、こっちへ来なさいよ。最高に、気持ちよくしてあげるから」
 霊夢の声が妖しい響きを帯びる。
「……何ですか、それ」
「そうよ、あんたも、ん、大穴牟遅様の女になればいいのよ、あ、はふぅ……ねえ魔理沙、あんたもそう思うでしょうよ」
「やだぁ、私の番だって言ってるだろぉ……ずっとてゐばかりして、ずるいぜ……♥」
「はいはい、ほら、してあげるわよ」
「あ、あぁあ、これ、これぇ……すき、すき、すきすき、これ好き……♥」

「いやあの、皆さん纏めて気持ち悪いんですが」
 この場において、董子一人だけが冷静である。これはおかしなことだった。大国主命を前にして冷静でいられる女など、いる筈がないのだから。女神でさえ愛欲に狂うのというのに、こんな小娘が耐えられる筈はないのだ。
「何よあんた。実は男だとか、ないでしょうね」
「好きこのんでこんな格好する男はいないわよ。全く、授業中に変な電波が来たと思ったら、何なのよ。タスケテって言うから、こんなに準備して来たってのに!!」
 董子のマントがばさりと翻り、ばらばらと何かが落ちる。彼女の得意とするESPカードである。落下の軌道が不自然に曲がり、加速しながら不規則に霊夢へ殺到する。
「うるさいわ、混ざらないなら見てなさいよ。もう、あんたにはしてやらないから」
 カードは霊夢へ届くことはなく、空間のある一点でバチバチと爆ぜ、無力にひらひらと落下した。結界、それも恐らくは非常に高度な。注意して見れば、そこかしこに札が配置され、霊夢たち3人を覆って歪な方形を描いている。
「当たり前でしょ。根の国を平定せし国津神の力、あんたの世界とこっちを分ける大結界と同じ力よ。奪いたければ天照大神でも連れてくることね」

 ――。

「いやー。どうなることかと思ったわ」
「お前が言うな、だな」全身ぐちょぐちょの霊夢、魔理沙。擦り傷だらけである。
「ちょっと手荒だったのは謝るけど、本当に何だったのよ」
 念力で二人を助け出し、一息ついて董子はぼやく。

 ――結局、董子自身の能力で霊夢の結界を突破することはできなかった。
 大結界と同じ概念の結界を、生物や念動力は通過できないのである。

「本当、手荒にもほどがあるわよ。怪我するじゃない」
「退治される側だから仕方ない」
 そんな結界を突破するために、董子は巨大で重たい人工物による物理攻撃を思いついた。
 念力で思い切り引っ張り、叩き付ければ、その物質は結界に阻まれない筈である。
「私が居たから『運よく』無傷で済んだのよ? もう少し感謝してほしいもんね」
「まあ無事なのが信じられないよな」
「だから、謝るってば」
 ――巨大な人工物。妖精の神社であった電波塔を、倒したのだ。

「まあ、怪我もないし良いわ」
「霊夢が暴走したせいだからな、強くは言えまいよ」
「……私はあのままが良かったんだけど。人間どもよりずっと幸せだったし」
「本当に、あれは何だったの?」
 三人とも、すっかり元に戻ったようだった。董子が話に付いて行けていないのは変わっていないが。
「何だったと言われてもねえ。わたしゃ美味しい思いをしただけだから」
「不信心者は得をする、って話かしら」
 袴の裾を直す霊夢。
「信じる者は救われる、だぜ」
 倒れた電波塔を撫でる魔理沙。
「全くわからないわ」

おわり
「大国主命なんてどうかしら? 美男子だって言うし」って君が言ったから10月16日はふたなり記念日。

東方官能小説合同「猥ザップ」(http://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ186242.html)寄稿作品です。

宣伝がてら公開させていただく運びとなりました。
主催が「あの」喚く狂人氏ということで、それはもう濃密な一冊となっております。
興味をお持ちいただけましたら是非合同誌のほうも手に取ってくださいませ(DL販売中です!)
ぱ。
コメント




1.性欲を持て余す程度の能力削除
最初は何とか保とうとしていた魔理沙がやがてグズグズになっていくのを自覚しながらも抵抗しようとすら思えないまま堕ちるのが実にエロいです。堕ちた後の「すき」連呼がめちゃくちゃツボでした。
神話の相手に最初からメロメロに堕ちてて媚び全開で喘ぎまくるてゐちゃんも、飄々としたてゐのイメージとのギャップで大変エッチでした。たまりません。

最後はなんだかあっさり解決しちゃうのも好きですw