真・東方夜伽話

小さな小さな淫将

2017/10/28 22:23:57
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小さな小さな淫将

喚く狂人
 もう八月も終わろうかという時期になるのだが、太陽は全く仕事をやめようとしない。こうも暑いと何もする気にならない。寺に顔を出してみても、なにか変わったことがあるわけでもない。このところのナズーリンは極めて非活動的だった。
 そんな彼女だが、今日は珍しく外に出ている。冷房設備もろくにない幻想郷では、家の中だろうと外だろうと暑さに変わりはない。なら、こうして川に行水でもしにきたほうがましというものだった。このあたりは雑木林に囲まれ人目につかないため、彼女のお気に入りの避暑地だった。けれども、今日は先客がいたらしい。
 遠くから様子を窺うに、人間のオス、少年だろう。二次性徴を迎える前くらいの年齢のようで、ここからでは体格から男女を区別するのが難しい。せいぜい額半ばあたりで切りそろえられた髪から推測がつくくらいだ。腰布を巻いただけの格好で、腰あたりまで水に浸かって涼んでいるようだった。まったく不用心なことだ。この一帯は人里に比較的近いものの、中ではない。妖怪に食われても文句はいえない。寺の連中であれば、声をかけて説教していることだろう。あれらは本当にお人よしだ。
 ナズーリンはそうしない。見ず知らずの人間ごとき、そこまで気にかける義理がない。ただし無視もしない。ちょうど退屈を持て余していたのだ。今日はアレで遊ぶとしよう。
 口の端に野蛮な笑みが浮かんでいることに気づく。頬を揉み解す。いけないいけない。これではまるで、今から襲い掛かろうとしているようだ。自分はそこらの低俗な連中とは違うのだ。もちろん鼠を舐めてかかるやつには容赦しないが、少なくとも彼に対して暴力による悲劇を起こそうなどとは考えていない。そんな短絡的な快感は、自分にとって快感たりえない。智将はわずかな努力で、より長く続く大きな楽しみを得るのだ。
 ともかく、彼で遊ぶことは、ナズーリンの中でもはや決定事項だった。となれば、準備が必要だ。といっても大がかりなものではない。身にまとうものが不要なだけだ。彼女は近くの岩場の陰で、あっさりと脱衣する。生まれたままの姿になった。
「やあ君、一人で楽しいかい? 私と遊ばないか」
 岩場から姿を現し、フレンドリーに話しかける。紳士的な態度だ。それこそ、そこらの野蛮な妖怪と己を分かつものだ。
 にこやかに挨拶されたのだから、当然彼もにこやかに挨拶を返すべきだ。気弱で大人しそうな、いかにも内向的な印象のある少年だが、それは言い訳にならない。
 ところが彼の浮かべた表情ときたら、到底にこやかとは呼べないもので、ひきつりきっていた。彼は踵を返し、すっ転ぶ。水が大きく跳ねた。
「妖怪だァ!」
 彼はそう言うが、こんなところで一人でいたら、出くわして当然なのだ。何を今さら、と肩をすくめる。
「ちょっと待ってくれないか。私は別に、君を取って食おうとは思っていないんだが」
 彼が走らなかったのは、その呼びかけのおかげではあるまい。すっ転んだ拍子に、腰が抜けたようだった。それでもどうにか離れようと手足をばたつかせてはいたが、水が無駄に跳ね回るだけだ。
「ち、近寄るな! 近づくと巫女が来るぞ!」
 寺子屋で教えているという決まり文句だった。こんな定型文でも、アホな妖怪相手には通じるらしい。怯え切った表情では、説得力というものがまるでなかったが。偶然ながら、上流側に立っておいてよかった。多分彼は漏らしている。
「もう一回言うが、私は別に君を取って食おうとしてるわけじゃないんだ。君と遊びたいだけさ」
 少年は疑わしげにこちらを見る。つとめてにこやかに語りかける。
「私は鼠の妖怪で、弱いからね。君でも勝てると思うから、食おうなんて夢のまた夢だ」
 大嘘だった。鼠を甘く見る者は死ぬ。もっとも、食うつもりがないことは真実だった。腹は満ちるだろうが、彼に求めている役割は食料ではない。
「本当に?」
「本当だとも」
 やはりこれくらいの年頃の人間はちょろいものだ。笑顔の裏にあるものを想像もしない。少年は恐る恐るながら、こちらへの警戒をときつつあるようだった。
「そうだ、名前を教えておこう。私の名前はナズーリンだ」
「なずりーん……?」
 舌ったらずだった。西洋風の響きに親しみがないのだろう。腰を抜かしたままの彼の手を取り立ち上がらせながら、鼠の姉ちゃんでいいさ、とフォローする。
「ごめんなさい、その、慧音先生が、里の外で妖怪を見たら逃げろって」
「分かるよ、とても正しい判断だ。妖怪には人間に害意をもつものも多いからね。先生の言いつけを守れるなんてえらいじゃないか。……もっとも、こんなところで一人で遊ぶなって言いつけは守れなかったようだが」
「うぐ」
「まあ、いいさ。先生には内緒にしておけば済むしね。それで、何をして遊ぶ? こうも暑いと、水浴びするだけでも楽しいものだけどね」
「ええと、その」
 少年はこちらから目をそらし、口ごもる。その、の後に続く言葉は聞かずとも分かる。その格好で? だろう。
 笑いがこみ上げそうになるのをこらえた。彼は今、目の前にある肉体に、性的なものを覚えている。親きょうだいを除けば見るのも初めてな裸体にだ。初めてなぶんインパクトも強かったろうし、それが彼から恐怖を取り除く理由にもなったろう。つまりスケベ心に恐怖が勝ったのだ。まったく現金なことだった。
 彼は欲情していた。もっとも、大人の男が窺わせるような下卑た欲望は感じない。年齢からくる性知識の薄さゆえだろう。目の前の裸に本能的に興奮してこそいるが、なぜかは分からないのだ。
 また彼は、自身が欲情していることを隠そうとしているようでもあった。これくらいの年齢にありがちだが、それをいけないこととして認識しているのだろう。なぜいけないのか知りもしないくせに。彼のような大人しい子ほど、そういう傾向が強い。
 内心、舌なめずりをする。心の中に自然に存在するものをそうやって抑えているような奴ほど、その戒めを解き放ってやったときの反動が強い。彼がどうなるか、期待ができた。
 同時にナズーリンは、自分の肉体がそうやって誰かを惑わせたことに、達成感のようなものを覚えていた。誰だって、美しい肉体にこそ興奮するに決まっている。つまり肉体に欲情されることは、美しさへの称賛に他ならない。よくわかっていない奴からだろうと、褒められて嬉しくないものはいるまい。
 それに、事実として、ナズーリンの身体は美しい。豊満ということは全くないが、丹念に形作られている。全体的に肉付きは薄めで、賢将を自称するだけあって、知能派らしいスレンダーな輪郭をしている。普段は衣服の下に押し隠されている、透けるような白い肌がその印象を助長する。
 胸はうっすらと膨らみながら、なだらかな丘を形作っている。やや上向き、先端にかけつんと尖っているような塩梅だ。丘の南端まで向かうと、肋骨の輪郭が肌越しに浮かぶ。
 腰は、くびれば折れそうというほどではないが、ほっそりとしている。彼女の体に対し賢将らしい華奢な印象を与える最大の要因だろう。
 下腹にはうっすらと毛が生え、またよく整えられていた。丁寧に整備された芝生という印象だ。それに守られる裂け目は、生娘のようにぴっちりと閉じ、一本の線を形づくっている。一方尻肉は薄めで、仙骨が浮かび上がるようなことこそないもののかなり小ぶりだ。安産型には程遠いが、きゅっと引き締まって上向いており、ある層に対しかなりの魅力をもつことは間違いない。
 太腿からふくらはぎにかけては体格相応に細いが、痩せすぎという不健康な印象はない。むしろダウザーとしてあちこち歩いていることで磨かれた、贅肉の付かない実用的な脚といった風情だった。
 総じて、グラマーとはいえず、また大人らしい体つきというわけでもない。二次性徴を迎え、少女から大人へと変わる途上にある肉体といったところだった。特定層に対してはたまらないだろうし、そうでない層に対しても、性的興奮を促すかはともかく美しいことに間違いはない。やがて失われてしまうという意味で、桜に見いだされるのと同種のものだった。
 そういう体に、彼は興奮しているのだった。ただしそれは、彼が「そういう層」の人間であることを意味しない。彼からすればナズーリンは同年代の女の子――少なくとも外見上は――なのだから。
 ともかく、顔を赤らめ目をそらそうとする彼に、声をかける。
「耳や尻尾が珍しいかい? 妖怪をこんなに近くで見かけることもないだろうからね、別に、近くで見てくれても構わないよ」
 素知らぬ顔というのは、今彼女が浮かべているものを指す。白々しさにかけて今の彼女の右に出る者はいなかった。
 もちろんナズーリンとて馬鹿ではない。彼が珍しがっているのが尻尾や耳でないのは、重々承知している。この場合、裸が見たいなら見てもいいと言うことこそ馬鹿なのだ。
 彼が性的なものを感じていることは間違いない。だが彼にとってそれは、いけないこと、恥ずかしいことなのだ。でなければ最初からもっと堂々と見ている。
 水を怖がっている者をいきなり大海原に突き落としたら、余計怖がるだけだろう。まず風呂なりで慣れさせて、少しずつ慣れさせていくべきだ。耳と尻尾は、風呂だ。そういう言い訳を用意して、チラチラとでもいいから裸体を見せる。抑えられた性への興味を刺激し、自分を縛っている禁忌を自ら踏み越えさせるのだ。
「え? あ、その」
「どうした? 妖獣の耳を間近で見ただなんて、なかなかの武勇伝になるぞ? なんなら友達にも自慢してやるといい。ああでも、寺子屋の先生に聞かれないようにな。あの先生のことだ、妖怪にそんなに近づいたとバレたら頭突きモノだろう。さ、遠慮はいらない」
 押し売るようにまくしたてる。勢いに流されるまま、少年は頷く。少々強引だが、今はそれでいい。そのうちに素直になるのだから。このように一歩一歩詰めていって、最終的に目的を達成するのが、自分のような賢い妖怪のやり口だ。
 やや腰を下げ、彼が見やすいようにする。駆け引きに長けた大人なら、耳を見るふりをしつつ気づかれずほかの部位も、ということもできるのだろう。もちろん彼にそのような経験値があろうはずもなく、目線がどこに向けられているかはバレバレだった。数秒間に一回は、目がちらりと別の方へ向けられている。
「尻尾はどうだ? これだけ大きな鼠の尻尾なんて、見たことないだろう?」
 振り返り、わずかに腰を突き出した。建前としては、その方が尻尾が見やすいからだ。実際そうすると、つんと上向く尻や、両脚の狭間にある楽園も突き出されることになる。
 彼はきっと子供がどのような行為を経て産まれるかすら知らないだろう。それでも目は彼女の裂け目に惹きつけられているようだった。
 そのようにしているうちに、彼の目があらぬ方向へ向けられる頻度が高くなり、時間も長くなっていく。耳や尻尾を見せてもらうという自己への言い訳を次第に忘れ、彼はより気になる部位を、まじまじと見つめ始める。
 少年の息は、段々と荒くなっている。性的興奮を覚えているのは明らかだ。彼の昂ぶりには、大人の男のそれとは違い、下卑たものがない。実に本能的だった。
 彼は腰をかがめ、ナズーリンのきゅっと引き締まるヒップを見つめている。いい具合に抵抗がなくなってきたようだし、気に入ったからサービスしてやろう。そんなことを考えながら、脚をわずかに開く。
 すると、少年はすぐさま、開かれた両太腿の間に自らの頭を挟み込み、無防備な肉貝を見上げ始める。もはや尻尾など頭の片隅にもないようだ。ちょろいものだと思いながら、熱い視線を注がれる秘裂の淵に、指先をひっかける。互い違いに力をかけて、自ら優しく割り開いた。
「わぁ……」
 噴き出しそうになった。満天の星空でも見たような声だったからだ。目の前の光景は、今の彼には朝一番の一面の銀世界よりも魅力的に見えただろう。肉色の粘膜は、ひくつくように蠢いていた。
「濡れてるのがわかるかい?」
 少年は頷く。漫然とした観察は、ナズーリンの言葉によって、より注意深いものになる。
「なぜ濡れてるか、わかるかな?」
「……おしっこ?」
 違うんだろうけど分からないと、声は語っていた。そういう罪のない答えが返ってくるのは分かっていた。そんな無垢な少年に毒を流し込むのだと考えると、悪い笑顔が浮かびそうになる。
「おしっこじゃない。私もさすがに漏らしたりはしないよ。女の子はね、興奮するとこうなるんだ」
「興奮」
「ああそうだ。私は興奮している。君と同じくらいにね」
「ぼ、僕と?」
 こちらが何を言っているのか、本気で測りかねているようだった。理解するための知識がないのだから当然だが。それに、自らが興奮していることも、自覚していないようだ。なら、理解・自覚できるようにしてやろう。歪んだ形にトリミングされた知識を与えて。
「だって、君のおちんちんは大きくなってるだろう? 私のここが濡れるのも、君のそこが大きくなるのも同じことさ。どちらも興奮するとそうなるんだ」
 彼は何も言わなかった。自分が感じているものを、どう表現していいかわからないようだった。表現するには、語彙も感情もあまりに未発達なのだ。
 だから手を出した。今後健やかに成長していくのだろう領域を踏みにじることは、彼をこの場で取って食うよりもよほど長く続く大きな楽しみをもたらしてくれる。
「わからないなら、おいおい教えてあげるさ。ところで、私のそこが気に入ったんじゃないか? なんなら、じかに触れても構わないよ」
 彼は躊躇った。今しがた教わった事実が、飲み込むにはあまりに奇妙に思えていたからだろう。けれども、最終的に誘いに乗ると、ナズーリンには分かる。女性器を間近で見たことで、彼の中でのそこへの興味は、とっくにタブーを上回っているのだ。
「遠慮はいらないよ」
 駄目押しに、腰を軽く突き出し、ゆるやかにくねらせる。多少なりと性知識があれば、それがセックスを誘う動きだと分かったろう。つまり彼には分からないのだが、それでも、そのいやらしさ――彼の興味を惹きつけるものは察せたらしい。まだ細い指は、光に引き寄せられる蛾のように、秘裂に向かっていく。
「ンッ……」
 やがて、指がナズーリンの粘膜に触れる。愛撫では断じてない。そんな行為の存在を、彼は知らない。ただ惹かれるまま指を伸ばし、単純に触れただけだ。それでも声が漏れた。少年の興奮を面白がっていたが、自分も存外昂っていたらしい。悪くない。そういう意味でも楽しませてくれればなお良しだ。
「あ、えっと、ごめんなさい、痛かった?」
「いいや、別に痛かったわけじゃない。続けてくれて構わないよ」
 口端がヒクついたが、幸い彼は気づかなかった。楽しみのため利用されておきながら、こちらを気遣うなど、お笑い種ではないか。
 許しを得て、彼は接触を再開した。といっても、入り口をぺとぺとと触れるばかりだ。なにせ、自分のペニスが膨らむ理由――自身が抱えた昂ぶりの正体も知らないのだ。愛撫の仕方など、知っていようはずもない。だからこちらが教えてやる。間違ってはいないが、決して正しいとも言い切れない知識を。
「中に、指を入れてごらん」
「え……? そんなことして大丈夫?」
「もちろん。大丈夫じゃないなら、こんなこと言わないさ。気にせずやってごらん」
 相手の発言に裏があると学ぶよりも前の年頃だ。疑いもせず、許されるままに振舞う。おっかなびっくりながら、細い指を秘密の裂け目に忍び込ませていく。
「あ……アッ」
 中を擦るように、指がくの字に曲げられる。感じさせるためではもちろんない。単に、触れるためにはそうする必要があっただけのことだ。それでも声があがる。
 少年は気づかわしげにこちらを見つめてくる。大丈夫と返すと、少年は行為を再開する。指は膣内を探索するように、ゆっくりと襞に触れて回る。
「くぅ、ン……はぁ」
 彼女は相変わらず、甘い声をこぼす。自然にあふれるそれを、より理性を蕩かすように加工して。そういう声が意味するところを理解できる層には効果てきめんだろうし、理解できない彼のような者にも効いたようだった。耳から流し込まれる甘い毒は、彼を的確にたらしこんでいく。気遣いもどこへやら、手つきは次第に激しくなっていく。
「はぁッ、ん、ふぅ」
 肉体は、たいして気持ちよくない。性感という概念を未獲得なので、技巧もないのだ。ただ、女が感じるにあたっては、相手の技巧のような物理的条件よりも、精神的条件の方がより重要になってくる。まして妖怪は肉体よりも精神を重視する生物、なおさらだ。
 そういう意味で、彼は良かった。性知識すらろくにない童貞の「初めて」を奪う愉悦が、彼女に快感を与えさせていた。
 今後彼に恋人でもできて、セックスでもしようかとなったとき、必ず自分と比べるのだ。何事においても、最初の経験はその後の比較対象となる。そのために、彼は今後二度と、性行為で満足を得ることはできない。
 襲い掛かって肉を食らうより、よほどゾクゾクする話ではないか。
「いいよ、君」
 熱に浮いた声で伝える。彼は喜色を浮かべた。遊び道具として、という枕詞が付くことを知らないゆえの、無邪気な表情だった。
「ハッ――あ、ふッ、んんッ」
「お、お姉ちゃん、それ、何の声なの?」
「ん? ……ああ、そうだね、これは、気持ちいいから出るんだよ」
「気持ちいい?」
「そうさ、女の子は誰だって、ここを触られると気持ちよくなるんだ」
 信じられないという驚愕とこいつは何を言っているんだという呆れを足して二で割ったような表情が返ってきた。
「でも、汚いのに?」
「そう思うかい?」
「だって、おしっこするところじゃん」
「そう思うかい? じゃあ、どうして君は、そんなところが気になったのかな?」
 少年は言葉に詰まる。今の彼では、答えに至ることができない。ならば、自分が導いてやろう。「正しい」答えへ。口端を歪めながら、ナズーリンは言う。
「君ぐらいの歳じゃ、知識としては知らないだろうね。だけど皆、そこが気持ちいいってことを無意識のうちに知ってるのさ。誰にも教わらなくても、呼吸したり歩いたりできるようにね。君がここに触れたいと思ったのも、それが理由だ」
 少年は何も言わなかった。告げられた真実を呑み込みかねているらしい。コウノトリが赤子を運んでくる世界観で暮らす者には、刺激が強すぎたか。いずれにせよ、信じさせてやるだけのことだ。
「わからないなら、身をもって教えてあげようじゃないか。下半身で気持ちよくなるっていうのが、どういうことなのか」
「うひゃあ!?」
 素っ頓狂な声があがる。ナズーリンはおもむろに少年に近づき、彼の腰布に手をかけた。彼はとっさに押さえたが、妖怪の腕力にかなうはずもない。布はあえなく解かれた。
 少年のそれは年齢相応に未熟で、勃起こそしていたものの、亀頭は半ば包皮に埋もれていた。その皮にしても、ほとんど色素も沈着しておらず、きれいな姿を保っている。女と交わるという、将来的には獲得すべき重要な役割を、未だ得ていない。
「こらこら」
 脚を閉じようとするので、股座に手を差し込んで防ぐ。もちろん抵抗はできたはずだが、彼はそうしなかった。恥ずかしがりながらも、期待しているのだ。己のソレが、女の秘部と同等のもの――触れられることで気持ちよくなる部位であることを、察しているのだ。
 手近な岩に腰かけるよう促す。彼は素直に従う。何も言われずとも、両脚を開いている。悪くない反応だ。やはり、期待している。
「うひゃ」
 引かれかける腰に、腕を回して妨げる。そんなところに唾液を垂らされるとは、思ってもみなかったのだろう。
「こういうところは敏感だからね。私のは汁が奥から出てくるけど、君のはそうじゃない。だからこうやって濡らしておいたほうがいい。痛くないほうがいいだろう?」
 説明しながら、ぴくぴくと震える串に指を絡めて、扱き始める。もっとも、扱くというよりただ触るだけに近かった。
「あッ、ん、ぁあ、ぅうッ」
 変声期ゆえ、あがる声は少女のようだった。彼の反応を確かめながら、唾液を追加する。慎重に、指を上下させる。
 大の男なら、こんなおままごとじみた行為では到底満足できまい。こちらも、手持ちの技術をフルに活用しただろう。しかし彼のような、肉体も精神も未熟な少年には、刺激が強すぎる。何事も徐々に慣らしていくのが肝要だ。
 指が動くたび、にちゃにちゃ音がする。彼の小棒は、ナズーリンの唾液にまみれていた。そろそろ頃合いかと、包皮に触れる。彼自身を包みこむ皮を、ゆっくりと剥がしていく。
「はっ、ひ、ぁッ、うぅっ」
 彼の腰が震える。痛みを感じる様子はない。葡萄の皮を剥くより慎重に行っていたし、唾液が潤滑油代わりになっている。
 包皮に包まれたデリケートな本体が次第に露わになってくる。自分ではほとんど剥いたことがないようだったが、恥垢が溜まっているということもなく、清潔だった。不潔なのは単純に好みではないので、これは助かる。
「ふッ、あぁ、うぅうっ」
「気持ちいいね?」
 少年はむずがるように顔を歪めていた。問いかけると、首を上下に振る。実際のところ、それが気持ちいいという感覚だという判断は、彼にはまだできない。こちらがそのように問いかけたことによって、正体不明の感覚は名前を得たのだ。
「それは良かった。だけどまだまだだよ。本当に気持ちいいのはこれからさ」
「ひゃあぁあ!?」
 悲鳴じみた声があがった。といっても、大したことはしていない。親指と人差し指で円を作って、彼の爪楊枝をゆっくり扱き始めただけだ。
 ほとんど力も込めていないし、動きも単純な上下動でしかない。けれども彼は、小さな体を跳ねさせながら、今まで味わったことのない感覚に翻弄されている。表情には驚愕が浮かんでいた。おしっこするための場所でしかなかったところでそのような感覚を覚えていることは、間違いなく驚くべきことだろう。
 彼が性的に感じていることに、ナズーリンは喜びを覚えていた。ただそれは、たとえば出した料理を客が笑顔で食べているときに料理人が覚えるものとは違う。より後ろめたいものだった。
 自分が彼にしている行為は、非常にちゃちだ。持てる技術のほんの一割も使わず、単に摩擦しているだけだ。将来彼が買った女なり恋人なりにしてもらうだろうことと比べれば、鼻くそのようなものでしかない。けれども、過去は美化される。特に今彼が経験しているような強烈な印象を伴う過去は、相応に美化される。美化された記憶上の快感には、実際に味わえるどのような快感もかなわない。
 体の奥から熱いものが滴るのを感じた。興奮するから濡れているのだと、彼には伝えた。間違ってはいないが、別にそれは快感によるものではない。そういった愉悦からくる恍惚が、彼女を濡れさせていた。
「くくッ……」
「お、姉ちゃん?」
「ん? 君が気持ちよくなっているのが、嬉しいだけさ」
「嬉し、い? んァっ」
「君は私が気持ちよくなってると知って、どうだった?」
「どうって」
 わかるまい。先ほどまで、気持ちいいという感覚すら理解できていなかったのだから。彼のそういう無知に対し、誤った啓蒙の光を当ててやることが、今のナズーリンにとって最高の楽しみだった。
「そうだな、もっと気持ちよくなってくれば、自然とわかるだろうさ」
「え――んむッ!」
 訊き返す声は形にならない。ナズーリンは己の唇で、半開きだった彼の唇を塞いでいた。もちろん、そのまま舌もいれる。引き剥がそうとする少年を、抱きすくめて逃がさない。
「んふッ、ちゅく、ンッ、れる、んぅ」
「んんッ!? ふ、くぅッ、んんぅ!」
 手淫とすら呼べないほど手を抜いていた行為と違って、今度は容赦しなかった。妖獣として生きているうちに身に着けた手管をこれでもかと発揮する。唾液を送り込み、舌先で口腔のあらゆるところをねぶり倒していく。
 少年はされるがままになり、喉の奥から可愛げな声を零すばかりだった。親愛の表明としての接吻ならともかく、このような貪り合うようなキスについて知っているはずもない。どのように振舞えばいいか知らずして、いったいどうして何かできたりするだろう。ただ体を震わせ、ナズーリンからの行為を受け止めるばかりだった。震えが、段々と激しく、短くなっていく。喉の奥であがる声が、切なさと不安を孕み始める。
 彼の変化の意味を、分からないナズーリンではなかった。絶頂が近いのだ。体の反応は、その兆候だ。だが彼は、今までオーガズムを迎えたことがない。あのように激しい感覚が、まったく事前知識のない状態で忍び寄ってきたとなれば、不安に思うのも当然のことだ。
 もっとも、止めてやるつもりはおろか、せめて安心させてやるつもりも、彼女にはない。それどころか、さらに激しく彼の口腔を犯し、さらには手淫も再開させる。
「んんッ、んーッ! く、ンぅ、ふぅうッ!」
 唾液を啜られ、反対に送られ、歯茎や口壁、舌の奥に至るまで舐めまわされ、さらには下半身も好きに弄繰り回されまですれば、大の男もあっという間に参ってしまうだろう。彼のような未熟者なら、なおさらだった。少年はあっという間に性感の頂に昇り、そしてオーガズムに至った。
「んんんん――ッ!」
 少年の爪先から太腿にかけてが、ぴんと伸び切る。先ほどまでナズーリンを振り払おうとしていたはずの両腕は、今は反対に、すがるように彼女の体を抱きしめていた。何かの病の発作のように、体は痙攣する。
 彼女は彼の鈴口に、己の掌を添えた。放たれる液体を受け止めようとしてのことだった。だが、結果的には、それはほとんど意味のないこととなった。
 射精は、射るの字を使うからには、精液がある程度の勢いをもって解き放たれることをいう。そういう考え方でいくと、彼のは射精とは到底言いがたい。尿道口からじわりと、うっすら白いと言えなくもない液体がにじみ出たばかりだった。滲精だとか、漏精だとか呼んだ方が適切だろう。
 少年は、今までに感じたことのないものを、処理しきれないでいるようだった。これが彼にとっての精通だったのだろう。
 人生に大きな傷跡を残すレベルで強烈な初めてを迎えられるだなんて、大層幸せなことじゃないか。
 誰も見ていなければ、きっと高笑いしていた。
「ぷはぁッ! は、あぁ、ッ、は、ひぁ、あぁッ――」
 彼があまりに暴れるので、危険だと判断し口を離す。これだけ情熱的なキスのあとには、睦み言の一つでも交わされてよさそうなものだが、当然そんなものは一つもない。全力で走った後のように、彼は肩で荒い呼吸をするばかりだった。
「ッはぁっ、あぁっ、はぁ、はぁ、あぁっ――」
 傍から見れば大したことのない絶頂だったが、それでも彼には大きな余韻を残している。呼吸はいくらか落ち着いてきたが、瞳は虚ろで、顔は完全に惚けきっていた。額に浮かぶのは、水滴ではなく汗だった。
「そら、気持ちいいってことが、ちょっとずつ分かり始めたんじゃないかな」
 少年は無言で頷いた。それから遅れて、ありがとう、というかすれた声が漏れた。
 ナズーリンは微笑みを返す。どういたしましての意味ではなく、つい笑ってしまいそうなのを隠すのに失敗したから、せめて邪悪な印象を与えないよう整えただけのことだった。
 今後の人生を台無しにされているのに、ありがとうもないものだ。妖怪には人間に害意のあるのも多いと出会ったときには伝えたし、自分がそれにあたらないとも、害意が必ず暴力で現れるとも一言として言っていないはずだが、彼は聞き流してしまったらしい。
「それは何より。だけど、聞いて驚かないようにね、今ので終わりじゃないんだ。もっとすごいことをしよう」
 まだ喉仏も浮かんでいない喉が鳴るのが分かった。その考えをぜひ聞かせてほしいと、表情は語っていた。
「今のでわかったと思うけど、君のソレは触られて気持ちがいい。私のここも、触られて気持ちがいい。そして片方は棒で、片方は穴だ。じゃあ――君のを、私のここに入れたら、お互いどれくらい気持ちがいいだろうね?」
 少年は息を呑んだ。とんでもないことを聞いたという風だ。しかし、表情に否定や嫌悪の色はない。息を呑んだのにしても、ショックというよりは、感嘆によるもののようだ。どれくらい気持ちがいいかというのを、実際に想像したらしかった。
「なんて、さも名案のように語ったけどね、実はこれはありふれた行為なんだ。セックスって呼ばれてるんだけどね。それで、どうだい? 私とセックス、してみるかい?」
 訊くまでもなく、彼の返答は分かっていた。彼はもはや性感の虜となっている。
 獲物が巣にかかったときの蜘蛛は、こういう気分なのだろう。まして、獲物が自分から食ってくれと頼んでくるのだから、こんなに面白いことはあるまい。
 手近な岩に背を預け、脚を開く。指先で、秘裂を割り開く。少年の視線は、とろとろと蜜を零す穴に向けられていた。
 瞳に浮かぶのは、先ほどまでの純真な興奮だけではない。挿入れたい、ねじ込みたいという暴力的な衝動が窺える。セックスという行為についての知識を得たからだ。
「さ、ここに挿入れるんだ、腰を落として――そう、そうやって……」
 体格が同じくらいなので、体面立位をするにあたって、腰を落とす必要もない。彼は己の小さなモノを指先で摘み、ナズーリンの狭穴に忍ばせようとする。唾液に濡れた棒は、つるつると滑ってうまく入らない。まして彼が急いているものだから、なおさらだった。
 じれったげに唸る彼を落ち着かせ、腰に手を回して丁寧に導く。そしてとうとう、彼のモノが、ナズーリンの魅惑の穴へと入り込んだ。
「あッ、あ、あぁぅ、ああっ」
 可愛げな亀頭が侵入し、竿部がずぶずぶと肉沼に沈んでいく。声をあげたのは彼女ではなく、少年のほうだった。変声期前のボーイソプラノで、快感を受け止めている。
 対するナズーリンは、満足げな、暖かな吐息を零していた。挿入といっても、みっちり入っている感じはしない。少年のモノはナズーリンの平坦な体格を考慮してなお小さい。
 肉体的な快感は小さかったが、代わりに精神的充足があった。吐息の正体はそれだった。正しい形で性欲について、男女の交わりについて学ぶ機会も与えず、童貞を奪ってやった。楽しくて仕方なかった。
「君、初めてなのに上手だね。さあ、次は動いてみようか。最初はゆっくりでいいよ」
「う、うん」
 お互いの腰が密着したところで、ナズーリンは少年の耳元に囁きかける。彼はいくらかくすぐったそうにしながら、言われた通り腰を動かし始める。
「アッ、あぁっ、は、ンッ、あぁッ」
 へっぴり腰、おっかなびっくりの抽送だ。腰が前後するたびに、少年から嬌声があがる。膣肉の温かさやうねりは、未経験な彼のペニスにはいささか過激だ。
「気持ちいいかい?」
 尋ねると、少年はぶんぶんと首を縦に振る。そして、気づかわしげに問い返してくる。
「お、姉ちゃん、は?」
 とびきりの笑みと、楽しいぞ、という返答を返す。質問に対し応答が対応していないが、少年に気にしている様子はなかった。そんな些事を気にしている余裕はないのだろうし、とにかく肯定的な返事を得られたことに満足しているようだった。
 実のところ、大して気持ちよくはない。へこへこと動くピストンは非常にぎこちなく、腰使いと呼べるようなものではない。入っている感じもあまりしないし、セックス単体を評価するなら、がっかりといったところだ。けれども、楽しいのに間違いはない。
 彼は今、とても気持ちがいいのだろう。初めての記憶は美化される。そして同種の経験との比較対象となる。このセックスは彼の中で超えることのできない壁となり、彼が今後経験する全ての快楽は陳腐化する。だから、彼は今後一生、性的満足を得られない。誰と愛し合おうが、誰を買おうがだ。自慰で性欲を発散することすらできまい。
 三大欲求の一つを奪い取る、取り返しもつかない呪いを、本人の知らぬうちに施した。自身にかけられた呪いに気づいたとき、彼はどのような表情を浮かべるだろう。これこそ、わずかな努力で得られる、より長く続く大きな楽しみだ。
「あぁ、ああ、お姉ちゃんッ」
 少年は彼なりに必死に、へこへこと腰を振りたくる。ぱちん、ぱちんと、下腹の肉同士がぶつかり合い、拍手に似た音をたてる。次第に、動きが速くなる。刺激に慣れ始めたというのもあるだろうが、理由はそれだけではあるまい。何かを堪えるような表情を見れば明らかだった。
「うぅ、あぁぁっ、くる、あれくる、またくるっ、わぁぁっ」
 来る、来ると喚きたてながらも、彼は腰を止めない。何が来るのかは尋ねるまでもない。先ほど経験しながら、しかしその正体については知らぬ生理現象――射精が近いのだ。
「うん、いいよ、おいで。受け止めてあげるから」
 彼の背中に腕を回し、抱き寄せる。彼の動きに合わせ自ら身体を揺さぶり、彼の快感を促していく。したことといえばそれくらいのものだった。コップの縁ぎりぎりまで快感を溜め込み、表面張力だけでもっているような状態だった彼へのとどめには、それで十分だ。
「あっ、あ、ぁぁんッ、あぁぁぁあああッ……!」
「あはッ……!」
 最初から最後まで少女のような嬌声を上げながら、彼は果てる。背を反らし、腰を一番前に突き出すような姿勢で、今後いかなる手段でも至ることのできない快感の頂に至る。
 彼の背中を抱きしめながら、吐息を零す。ペニスの脈動も、熱いものが膣内に注がれる感覚も、まったく感じない。最初から最後まで彼の独りよがり、実に半端で、肉体は全く満足していない。けれども、心はたいへん、後ろ暗い形で充足していた。
 彼はがくがくと体を震わせる。何かの病の発作のようですらあった。ひしと抱きすくめ、逃がさない。少なくとも、このオーガズムの間は。途中でモノが抜けてしまうようなことがあっては、この膣内射精の経験が彼の中で最高のものにならない。それでは呪いが呪いとして成立しない。最後まで手を抜かないからこそ、彼女は賢将と呼ばれるのだ。
「あく、は、あっ、あぅ、あ――はぁっ……」
 絶頂はそれほど長く続かなかった。それでも彼には大きすぎる衝撃だったらしく、緊張から解き放たれた肉体は脱力し、ぐったりともたれかかってきた。
 身体をよじる。絶頂を終えて萎びたものが、膣からちゅるんと情けなく引き抜かれる。まさに体力を使い果たしたようだった。
「よく頑張ったね、お疲れ様」
「おねえちゃん、あの、ありがとう」
 肩で呼吸しながら、彼は感謝の言葉を呟く。今日何度目かの笑顔で返事をする。
「君がよければ、また遊ぼう。今度はもっと、色々なことを教えてあげるよ」
 その言葉に、少年ははっとこちらを見る。瞳には期待がありありと浮かんでいた。
 じっくりと時間をかけ、まっとうに生きてゆけないほど歪んでもらおう。ありがとうと彼は言ったが、こっちが感謝したいくらいだった。彼が覚える刹那的なそれより、よほど良質な楽しみができたのだから。
久々にWeb公開用に作品を書いたのでこっちにも投げときます。

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喚く狂人
http://twitter.com/wamekukyouzin
コメント




1.性欲を持て余す程度の能力削除
ヒャアアア!喚くニキの新作だあっ、もう我慢できねえ射精るだぁ!(チョロロ…)
これぞおねショタッ!妖怪らしい歪んだ精神が満たされてゆくさまが最高に堪らない!ただの興味本位が性的欲求に飲み込まれてゆくショタの心や身体描写もドストライクでした
なんにも知らないこどもを肉欲に溺れさせるのってエロいですよね……遊ぶことに慣れたころに肛門責めさせてそうなど色々と想像が膨らんでしまう見事な完成度と終わり方でした、ありがとうございました