真・東方夜伽話

えにし特別編1 半ば旅程の復縁

2017/10/04 19:59:16
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えにし特別編1 半ば旅程の復縁

Romy

なかば りょていの ふくえん。……もしもあの人の到着が一日遅れたら、という仮定で。

※えにしのビジュアルはこちらを。

「明日に間に合わないとはどういうこと?」
「急な申し付けにつき……」
 目に突き刺さるディスプレイの光が煌々と踊る監視部屋。寝間着姿のえにしが腕組みをして黒い靄に詰問している。
「何故一度解放したの。捕らえたのならばそのまま眠らせておけばよいものを」
「眠らせておくにもあまり長くは難しいのです」
 その目はここを統べる者の、冷たく読み難いそれだ。答えを間違えれば次は憤怒に細まるだろう。
「時間を止めれば良いでしょう」
「時間の拘束はここの維持に支障をきたします」
 その答えを聞いてえにしは毒気を抜かれたらしい。眉間の険しさを収め、キャスターのついた椅子をひとつ引き出し、体を投げ出すように座った。
「明後日は?」
 惰性で転動するのも気にせず、えにしが天井を仰いでいる。
「……夕刻には」
「遅い。昼までには用意なさい」
 要求に一拍遅れて靄が返事をする。そして空間に溶けていく。
「明日一日、空いてしまうか……」
 魔理沙と通じてからまだ一日。えにしたちは思わぬ足踏みをすることとなった。


 *

 ベッドに横たわると何度だって記憶が蘇ってくる。女の人を知った。重なり、一体となり、ぶつけた。早鐘打つ。耳元で鳴っているみたい。私はひとつ新しいことを知るたびこれだ。キスのあとも、口でしてもらったあとも。異性を思い出しては恥じらいや満更でない気持ちに沸き返る。
 普通でいようとして、逆に普通にできない。食事のときにえにしをじろじろと見てしまった。目で追わずにいられなかった。目が合ったらやわらかく首を傾げられたりして、こっちの奇妙な緊張なんて筒抜けの丸分かりだった。話そうにも考えがまとまらなくて、結局私は逃げるように自室でひとり回想に耽るばかり。
 その途中、えにしがあいつに頬を打たれたことも思い返す。それ以上のことはなかったといえ、あれは庇えたが精々。守れたの内には入らない。私。細い腕、色白の体、低くなる兆しすらない声。
 枕に突っ伏す。嬉しいことがあったのに、どうしてすぐ落ち込んでしまうのだろう。手にしたと思っても、指の間をすり抜けて無くしてしまう。
 一人になってしまったような気がして、私はえにしの顔が見たくなった。そばにいれば、ほのかに火照る気持ちも戻ってくるはずだ。体を起こし、服の皺を直す。
「まーりさちゃん」
 丁度扉に手をかけようとしたその時、えにしの方からこちらにやってきた。どうしたの、と聞かれて「そばに行きたくなって」と明かした。えにしは淡い笑みを見せると、ベッドに腰掛ける。私も続いた。肩が触れ合うように。
 見つめ合う、というわけではなく同じ時間、空気をただ共有する。こうしたかったこともあって私は静かにしていた。信じられないけど、この人と。見えない何かで繋がっているような気さえする。
 表情を窺うと、えにしがこちらを見ていた。まるで私がこうするのを待っていたみたいに。言葉もなく見つめられ続ける。
 何をすべきなのかすぐに解った。違ったらという気後れを押し込み、口付けた。上に向かって、背筋を伸ばすようにしてくちびるを届かせる。
「今日の調教、なんだけど」
 顔を離すとえにしが呟く。昨日のあれがゴールで、もうないと思っていた。部屋に来たとき何も言わなかったし。
「なんにも考えてないの」
 気恥ずかしそうにえにしが指先を弄んでいる。その目はひどく困った風だった。
「そうなんだ……」
 私の心臓を張り裂けさせんばかりだったあの内容は、実は全てえにしが考えていたのか。私はその事実の方に驚愕していた。いやでも、あいつが考えていたとしたらそれはそれで気色悪い。嬉しい事実として受け止める。
「えと、なに……?」
 ついでに今までのことを思い出してしまって固まっていると、またえにしが私を見ていることに気付く。
「ゲームしよっか」
 例の、ほくろ数えみたいな遊び?
「十回クイズって言うの。ピザって、十回言ってみて」
 かと思ったら、ずいぶん穏当だった。言われた通り指を折りながら十回唱えてみる。
「ここは?」
 言い終えたところでえにしが曲げた腕を突き出して訊ねてきた。
「ひ……、ひじ」
「ふふふ、魔理沙ちゃんひっかかりそうになったでしょ」
 ざ、と言わずに済んだけど、詰まった時点で負けなのだ。
「次。いっぱいって十回言ってみて」
「いっぱい、いっぱい……」
「いを『お』に変えて言ってみて」
 今のとは打って変わり、妙な要求をされる。
「おっぱい」
 言い終わって、少し顔が熱くなった。女の人にはっきり言う言葉じゃない。
「ブー。おっぱお、だよ」
「あっ……!」
 一本取られて感心するやら、恥ずかしいやら。えにしが無邪気に笑うと怒るに怒れない。
「じゃあ次ね。……すきって、十回言ってみて」
 三問目、今度は言い間違えるまいと覚悟しながら指を折る。
「目を見ながら」
「すき、すき……」
 けれど、これで一挙妖しくなった。瞳の奥深くを覗き込み、胸元までさすってくるえにしに、一回一回しっかりと言う。まばたきさえしにくい。
「すき……すき」
 十回言い終えてぶきっちょに息をついていると、「よく言えました」と不意打ちが待っていた。
「クイズじゃないの……!?」
「うん。魔理沙ちゃんに言わせたかっただけ」
 だめ? と聞かれてダメとは言えない。クイズをすることで消え去っていた恥じらいがこうしてまた舞い戻る。
「ドキドキ……してきた?」
 耳元でそう聞かれてしないわけがない。照れを伴うも嬉しい。その感情はぐるぐると私の中を巡る。出口がないから溜まりすぎて恥ずかしくなるのかもしれない。
 そういえばそうだ。悲しかったら涙を流して、腹立たしかったら怒鳴って当たり散らして、楽しかったら笑って。そうして表せる。嬉しかったり喜んだりしたときの気分はどこに出せばいいんだろう。
「ねえ、えにし」
 聞いてみていた。照れたりしない秘密がもしかしたらそこにあるのかもしれないと思って。
 えにしは目を閉じて少し考えると、間を置かず口を開く。
「嬉しくなったら……その気持ちを人に教えるの」
 嬉しい、と声に出す。明快だった。
「人に、教える」
 えにしの目はそれを促しているかのようだった。何が嬉しいかを伝えてと。
「え、えにしと……」
 自分の声を自分の耳で聞いた途端、燃え上がった。すごく難しいと直感する。その間にも期待の視線を感じて顔の熱がいや増していく。
「何が嬉しいのか、わたしに教えて……ね?」
 無理、と背を向けてしまった私を逃がしてくれるえにしじゃない。すっぽりと後ろから抱かれ、表情の自由さえままならない顔を覗き込もうとしてくる。
「こんなときの顔なんて、見ようとするなぁ……っ」
 でも、嬉しいから私は本気では拒まない。
「魔理沙ちゃんの照れてる顔、すごく可愛くて……すき」
 左胸に置かれた手に暴れるその内を知られ、今度は呼吸が上がってきた。まるで泣いているときのような息遣い。
 目を開けるとえにしは本当に目と鼻の先。キスの距離。視界にはえにし以外映らない。
 その雰囲気に私が気付くと、それからえにしがくちを重ねてくれた。恥じらわせるキス、落ち着かせるキス。この人はどうやって使い分けているんだろう。
「恥ずかしがってくれるのって、嬉しいの」
 いたずらな仕草はやめてえにしが口を開く。
「意識してくれてるってことだから」
 いまえにしが手を重ねる私の胸。その中にえにしがいること。それが確信できるのがきっと嬉しいのだ。
「私は、えにしが構ってくれるのが嬉しい」
 それは私に興味を持ってくれているって分かるから。独りがいいと言うくせに誰にも声をかけられないと悲しい、矛盾した一匹狼。
「私が踏み込んでも、避けたり逃げたりしないでくれるのが……っ」
 そんな情けない自分を受け止めてもらえることが、何より嬉しいんだ。
「ようやく、教えてくれたね」
 息をついたえにしが私の頬に触れる。遅ればせながら体どうし凄く近いと意識する。そのまま、お互い止まってしまう。
 そこにキスの先、その入り口が見えた気がした。もう一度踏み越えてみたい。
 えにしの手を取る。頬から引き離し、口元に導く。感じる手の甲は夢中になるほどなめらか。両手で取って頬をすり寄せ、湧き出る好意に感じ入る。
 振り向いた。えにしに埋まるように抱きつく。
「いま……、私の頭の中、えにしでいっぱい……っ」
 言葉にすると過剰だったり、足りなかったり、ずれたり、ぼやけたりする。それでも伝えたい。
「わたしもね、魔理沙ちゃんを大切にしたいって気持ちでいっぱい」
 確かめ合う。重ねたくちびるを通して。溶かしていく舌を通じて。体に触れる手を使って。
「ここでする……? それとも、あっちでする……?」
 吐き合う息がぶつかる距離で、えにしが訊ねてきた。私は「あっち……」と返す。部屋を移す億劫さより落ち着いた場所で気兼ねなく、という気持ちが大きかった。
 ほんの十数秒の移動の間に熱がいくらか逃げたけど、扉を閉めて並んで座ればまた改めて恥じらい直してしまう。寄り添うえにしがこちらに体重を預けてくる。いつもより熱い。気のせいじゃない。
「何もしないの……?」
 ふくらみを押し当てながら縋るような目でえにしが訴えてくる。
 そう言われ、こわばる体に言うことをきかせる。首筋に鼻を埋めて、服の上から胸に触れる。
「この部屋でいつも寝てるはずなんだけど……魔理沙ちゃんと一緒だとだめ」
 下着の感触を避け、腋を撫でているとえにしが話し出した。時折息を漏らす。感じる場所、やり方が分かってきている。
 身をかがめたえにしの顔が自分と同じ高さに来る。辛そうに目を閉じたままだから、キスがくちびるを上手く捉えられてない。
「いま、とってもえっちな気分なの……」
 言葉にするって、そういうこと? 息が詰まる。脳に行く血流さえ詰まったんじゃないか。私の時間が少し止まった。
 返事する余裕なんてどこにもない。けれどもそんな中で、今のえにしがとても繊細で簡単に壊れてしまいそうに思えた。
「魔理沙ちゃんも……なのね」
 膨張して下着の中で主張するそれをえにしが見つけた。血に代わって多幸感が脳に殺到する。やらしい気持ちの時にしてもらうのって、嬉しくて嬉しくて。はしたなくて口には出来ないけど、幸せなんだ。
「私も、くらくらするくらい、いまえにしのこと すきで」
 文法怪しく言葉を紡ぎ、えにしがきっと自分と同じであることを信じて、手を伸ばした。スカートの中、触れる太ももの湿った体温。その根本はそれよりもっと熱を帯びていた。
 考えが獣以下になりさがっている。猛烈にそこを知りたい。顔を埋めたい。味や匂いに酔い痴れたい。それを押し込むのには数秒以上の沈黙が必要だった。自分が自分が、じゃダメだ。この人のために、じゃないと意味がない。
 一度横になってもらって、添い伏した。口付けながら、ブラウスのボタンを外してく。くちゅくちゅという水音と、吐息に混じる「んっ……」という声がする。これからすることは考えないようにして、火照るえにしの体を部屋の空気にさらしていった。
 今日は淡いピンクの下着。ホックを外す前に「かわいい」って伝えたけど不自然で社交辞令みたいになってしまった。
 えにしの視線。次は何をするのか窺うような目だった。期待されている気がする。といっても大したことが出来る気もなく、ひとまず自分も脱いだ。それから、むき出しの肌どうしを重ねる。そうするだけでびりびりと頭の中が痺れてく。
 離れられなさそうだったけど、えにしに奉仕しなくちゃ。髪をかき分けてほくろのある耳に息を吹き込む。くすぐったいのかもぞつくえにしを抑え込んで、舐めたり、口に含んだり。自分がされた時のことを忘れられない。私もまたして欲しいことをえにしにしてあげる。
 肩口、鎖骨。目にしたものをくちで撫でながら進む。おっぱいの膨らみに顔を埋めて、しゃくるように頬を寄せた。夢中だとか、好ましいだとか、とにかく好きだってことを伝える。
 薄く色づく先っぽをくちにして、舌先でくすぐった。これも、されて気持ちよかった。やわらかかったのが硬さをまして、育っていくみたい。私のあれと少し似てる。反応してくれるのが嬉しかった。えにしの吐息も大きくなった気がする。
 か弱そうなお腹をすべり、遂に興奮の源に到る。毛のしゃりしゃりした感触と、傷つきやすそうな危ういやわさ。肩幅に開いてもらった脚の間に入り、ようやくそこに口付けることが出来た。
 いきなりじゃ素っ気ない。周りから少しずつ、渦を描くように小さくしてく。かすか残るおしっこのにおいと味、奥からの分泌のしょっぱさ。くぐもった声。私自身も感じ入る。
 たっぷり引き伸ばし、それから一番敏感な所を口に含んであげる。えにしが目を閉じていてもわかるくらい震えてる。さっきおっぱいにしてあげたみたいに、舐めあげたり、転がしたり。
 手は、両手ともえにしと繋ぐために使った。震えや握る力でえにしの気持ちを知ろうとする。つばのにおいとぬらつきに塗れ、口の周りが濡れても気にしない。これが私の奉仕。
「魔理沙ちゃんはね、優しすぎるの」
 顔を上げると、えにしも一緒に顔を上げた。開いていた脚を閉じるようにして座り直し、私の口元を拭う。
「刺激が足りない?」
「そうじゃないの」
 ぺたりとくっつく。また胸同士を重ねる。
「いまの気持ち……魔理沙ちゃんに伝えるの、ちょっと難しい……」
「そ、そっかぁ……」
 取られた手がえにしの左胸に置かれた。伝えたいのに、伝えられない。そのもどかしさにえにしの表情が悔しそうなものに変わっている。
「これで、……うーん」
 鼓動を聞くように耳を当てる。肌が触れる場所を増やして、少しでも感じ取れたら。
「魔理沙ちゃん、わかる……っ?」
 えにしがおずおずと私の頭に手を回す。私は目を閉じた。わかった、なんて安易に言えない。だったら、静かに受け止めるのが一番いい。
 目が合う。合ったあと、頬ずりする。むにむにとおっぱいを触っていると、忘れていた交わりたいという期待がまた呼び起こされてきた。
「今度はわたしがしてあげるね」
 楽にして、と促されて体を晒す。えにしは私のを口にするのに何の躊躇も見せなかった。
「ふ、わー……あ」
 迎え入れられ、まずは包まれた。濡れる感触のあとに体温が流れ込んでくる。先日の繋がる感覚が呼び覚まされる。自分のものがえにしの唾液で濡れていってしまうのも好きだけど、硬さを増すほど気が急いてしまう。
「ゴム、つけてあげる」
 そう言われて、えにしが例の避妊の道具を持ち出して、手早く私のものに嵌めた。一度私の顔を見て、微笑む。成り行きじゃなく一度同意を挟んだみたいで、私にはそれがとてもいやらしく思えた。被せるえにしも繋がることに思いを馳せたってことだから。
「こっち」
 枕を引き寄せ仰向けに寝転んだえにしのもとへ向かった。上に来ると、恥じらいを含んだ笑みを見せる。それはそうか、私も正視できないほどすごい格好だから。迎えて受け入れる脚の開き方。
 入り口を探している間も、ずっとえにしは私のことを見ていた。それで慣れていないこともあって上手く入れられない。
「ここだよ、そう……。からだ、すすめて……ね?」
 私が焦り始めた頃、えにしがその手でつまんで宛てがってくれた。そういう些細な仕草にさえ感激を募らせるぐらい、もう私は没頭してた。強く目をつむる。好きだって心のなかで叫びながら、にゅむにゅむと潜り込んでく。
「はい……ったぁ」
 ぬらつく感覚はないけど、遅れて体温に包まれるのが異質で力が抜けた。
「魔理沙ちゃん」
 震える肘で体を支えていると、声をかけられる。目が細まり、口元が形を変えるのが見えた。
「しちゃってるね」
「言うなってぇ……!」
 こういうのに弱いの、知ってるくせに。
「恋人えっち」
 私にはえにしの心が掴み切れないのに、どうしてこうもえにしは私の心を掴んで離さないんだろう。
「ゆっくりね。いっぱい、しよ」
 自然に顔が埋まるのは胸元の辺り。上から聞こえる声に促されるまま、お尻を波打たせて重なるかたちどうしを擦り合わせていく。いやらしく、バカみたいな動き。いま頭の中は好意の言葉しかなくて、そんなこと気にもできないけど。
「かわい……。すきって、言ってみて」
「う、うう、う」
 突っ掛かって上手く出てかない。はぁふぅと空気の塊しか出ていかない。じわあっと涙が溜まってきて、えにしは私の顔に手を伸ばしてくれた。
「気持ちいい?」
「ひもひ、いひ……」
 親指を口に突っ込みながら、頬に手を添える。そんな意地悪でも嬉しくて、よだれがひとしずく。
「好きよ。情けない魔理沙ちゃんも、だーいすき……」
 そうして、かき抱かれる。ふぬけの私はえにしの腕の中、ようやく言えそうだった。
「んん、んああ……、う、す、……き、えにしすき、すきぃいい……」
 言葉になって出ていくと、より硬くなった。えにしの中をさらにえぐる。
 よく言えたね、声はしないけど、そう言われた気がする。髪をすく手が、そう言ってる。
 愛おしいって、そういう余裕のある感情じゃない。募らせる、慕う。押して引くたび押し寄せる幸せ。それが途切れないよう動き続ける。
「いいんだよ。いっぱい気持ちよくなって」
 私、けっきょく自分のことばかり。そんな自己嫌悪が視線に現れたのかえにしがそっと囁いてくれた。
 ツン、と来て洟をすする。もう自分を止めなかった。
「わたしっ……わたし、う、うっ」
 その次の言葉は、しかし出てこない。もう、ぶちまけ始めてしまっていたから。
 射精、射精。ゴムのサックを隔て、えにしに伝える撃ち出しの震え。体の兆候は心にも及ぶ。求める気持ちも胸を突き破るみたい。欲しくて欲しくて、どうとできるわけでもなし、しゃにむに体を抱く。これが私の幼く垢抜けない絶頂の顛末。
「魔理沙ちゃん」
 余韻は走り去っていくように短い。えにしに体を預けて息をついていると、えにしに呼びかけられた。
「いっちゃった?」
「うん……」
 まだ繋がっているのに、えにしはいつもどおりのえにし。私といえば照れて落ち着かない。
「ゴム、外してあげるね」
 ひとつになっていた体が離れてく。繋がりが解かれると、酷く不完全になったみたいで早くも寂しくなった。
「すっごーい……。ほら、見て見て」
 私の気持ちはともかく、興奮の結果は目で見える形になっていた。サックの先っぽが見事に私のを受け止め、白い液溜まりを作っていた。
「これ、魔理沙ちゃんが出してくれたんだもんね」
 手に持ったそれと私の顔をえにしが交互に見てる。投げかけられる視線は好奇のそれの中に労をねぎらうような温かみもあった。好意的で、褒められてるみたいで私は恥じらいに曖昧な返事しかできない。
「気持ちよかった?」
 下を向く私のそばに、えにしがまたふわりと寄り添ってきていた。一線を越えようとも、急に顔を寄せられるとやっぱり私は弱い。
 口がきけないのを非礼と取るえにしじゃなかった。やわらかく笑い、「わたしも……ね?」と恥じらいを混ぜる。
「そんな、そこまでしなくてもっ」
「わたしが……やりたいの」
 私のためらいを制し、まだ上を向き続けている性をえにしが清めてくれた。何だか泣ける。再びぬくもりが戻ってきたから、優しい心が舌の動きを通してわかる気がするから。
「ありがとうっ……、わた、私っ」
 えにしと寝転びながら、私は繋がっている時に言えなかったことをようやく言葉にした。でも不思議と、声にするとそれはそれで物足りなくて、心配になる。
「いいの。これから上手くなってこ? キスみたいに」
 私ばっかり気持ちよくなって、と滲ませると、えにしはそんなことを言う。
「わたし、本番で魔理沙ちゃんにイかされちゃうんだね」
 それはえにし自身にも関係あるということみたい。恥ずかしそうに瞳が揺れた。
 私はと言うと、これからもこういうことを出来ると思って落ち着かなくなってしまった。
「いま考えた……? 魔理沙ちゃん、えっち」
 こういうふうにいたずらにからかわれると、期待しちゃうのかな。立ち上がって、繋がりたいって思い始めてくる。
「したいんだもん。……えにしとすると、しあわせで。また、しあわせになりたくて……っ」
 えにしにも、しあわせになってほしくて。そう言うと、えにしが「ばか」って言って、キスをしてきた。

 *

「解ってる。不満だと言いたいんでしょう」
 監視室。傍に控えた靄が何も言わない。表情も何もない不定形な姿だが、放つ気配がそう感じさせるのだ。
「前々から察してはいた。この身体はあの子に反応している……肉体に宿った記憶が、ね」
「ゆえに我を忘れるのもやむを得ないと?」
「一度試してみる?」
 靄が踊る。頭の高さまで浮き上がり、白く変わった。形作られるヒト型のシルエット。また再び不定形となり、目を閉じたえにしの頭部に纏わる。
「……これは」
 靄が消え、再びえにしが、乗り移った靄が目を開ける。

――思い浮かべてご覧なさいな

 靄が声を聞く。一時的に外に出たえにしからの念。まだ何も考えていないのに察せていた靄が、注意深く心に魔理沙を思い描いていく。
 豊かな金髪、大きな瞳、照れ隠しの表情。解しがたい衝動が走り、靄はたまらず飛び出していた。
「一体何百年ぶり? ときめくのは」
「お戯れを……っ」
 戻ってきたえにしが笑っている。靄は小さくなって、濃さを失わないようにしているかのようだった。
「したんでしょうねえ、手すさび。あの子を思って、何度となく」
 いじらしいことじゃない、と開いた右手を眺めながらえにしが目を細める。
「如何にして自身をお守りになっているのです。こんな身体にあって霧雨魔理沙と接触していたら、本当に菫自身に変わっていってしまいます」
「危険を感じたら、起こしているわ」
 床を蹴って椅子を回し、えにしが靄に背を向ける。
「間借りのこの肉体も、そうは持たない。これ以上遅れは許されない……」
 呼吸に合わせ上下する胸に手を当て、えにしが語りかけるとなしに呟いた。


おわり
コメント




1.性欲を持て余す程度の能力削除
えにしと魔理沙のイチャラブすっごくイイ。
もしかしたら、この物語の結末はいくつかのifがあったのかもしれない...
みたいな想像をしてしまいました。