真・東方夜伽話

胡蝶の夢

2017/01/05 10:21:34
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胡蝶の夢

つわ

我が想いの在り処は果たして何処か

※魔理沙が先天的に男です。霊夢と紫、魔理沙がかなり早い段階で顔見知りです。

1.

見飽きるほど繰り返し見た夢。桃の蕾がようやく解けかけた頃、
温みを包んだ大気が風となればやはり冷たい、そんな中。
石段を息せき切って駆け上がる。青あざになった頬が痛み、切れた歯肉から新しい血がにじんで、
口の中が錆臭さで満たされる。『里一の大店の一人息子に相応しい躾をしているだけ』
そう言っては何かにつけて殴られた。痛む頬に手をやれば、悔し涙がまた滲む。
幾らなんでも度を越している。子供心にいつも思った。そして今日。
もうどうにでもなれと、里を抜け出しただ当て所もなくかけていった先がこの神社だった。
……やがて、石段を登りきり、息を整え顔を上げると境内の風景が目の前に開ける。
みすぼらしい拝殿の賽銭箱の正面の石段に腰を下ろして、お茶をすすっていた。
自分と同じくらいの黒髪の巫女。そして、
千切れ雲ひとつの外は、ただ青く開けて、温かい日の光を地に齎している空。
そんな中で、雨粒がぽつぽつと石畳に落ちてきた。参道の中ほどに、忽然と立ち現れる人の形、
日傘が白い顔の半分ほどに影を投げ、ウェーブのかかった自分のものより少し薄い金の髪、
腰の辺りまで垂れ下がったあたりをいくつかの赤いリボンが飾っている。
頭頂に乗る白い帽子の前面には蝶結びの赤い紐、アメシスト色の瞳、
濃いピンクの唇。均整の取れた体の線を薄手の、やはり紫色のワンピースが緩やかに覆い隠す。
一目見て、こいつは人間ではないと悟り、一瞬身構えるも、直に思い直す。
妖怪に襲われることなど折込済み、逃げ戻ったところで自分に待つのは、息苦しいお屋敷のみ、
それならいっそ……。緊張を解いていつの間にか眼前に来ていた紫の女をじっと見上げる。
見れば見るほど、さらに引き込まれていくようなその顔の造形から、目を離すことができなかった。

「いい目をしている」

取って食らうために自分にその手を伸ばすかと思われたその相手は、
値踏みするみたいな目と反対にその唇を緩めて、

「それに、人間にしては中々の魔力を持っていますね……」

老成と若やぎを同時に感じさせる声であった。

「気に入りました。もしよろしければ」

そこで一旦言葉が区切られる。

「そこの霊夢とめあいませんか」

頬の痣にハンカチが添えられる。柔らかい絹の質感と、手の温もり、
そして、鮮烈さを柔らかさでくるんだ香りが鈍い痛みと、心のしこりを解きほぐしていく心地がした。
魔力?めあう?言ってることの意味は分からなくても、
その先にこの惨めな自分を変えてくれる何かがあるとはっきりわかった。
少なくとも自分に触れる手は、今まで触れた人間のそれよりも温かだった。
夢はいつもそこで途切れた。

Years Later

「それでまた、アリスのやつがな」

手を大きく振って、青年は隣の巫女に語りかける。
季節は丁度、如月の末、長い冬の寒さもようやく緩み始める頃、

「そう、それで研究はうまくいきそうなの?」

無骨な男物の湯呑みに伸びる手と、問いかけの声が交差した。

「いや、今んところ、五分五分ってところ」

一口、ずっと番茶をすすって

「白蛇の抜け殻に肺魚のうろこ、こうもりの糞から摘出した蚊の目玉」

並べ立てれる材料の数々に思わず霊夢は顔をしかめる。

「おいおい、そんな顔することはないだろ?貴重品なんだぞ」

こちらも一回り小さい湯飲みから一口番茶をすすり、
手のひらを顔の前でひらひらと振ってから、

「あー、いやごめん、つい、ね。小さいときから一緒にいて、綺麗な顔立ちで、
 細っこいから忘れがちになるけど、やっぱりあんたも男の子なんだなーって、
 そう思ってね」
「ふん……」

短い鼻息と一緒に湯呑みのお茶に顔を映す。耳が露出する程度、
襟足が隠れるか否かに切りそろえられた金の直毛、額は自然に流す。
その下にやや細い二重の目と、鼻、薄い唇の直横にすっと切れ上がった顎の線。
十代も半ばになろうというのに産毛の一つすら生えてはいない。
打たれるたび、目を潤ませて睨み返せば、女々しい顔をするなと反対側を打たれた。
やはり細い眉が寄って、眉間には深い皺。

「怒んないでよ」
「……すまん」

心配する昔なじみに簡潔に詫びた。家を飛び出し魔法の道を歩み、
多くの知己を得て、充実した毎日だ。そうは思っていても、
やはりそう簡単に割り切れるものでもなかった。

「私は、好きよ……」
「ありがと」

努めて声の調子を上げようとするが、うまく言ったかどうか。
変わらず頬に注ぐ霊夢の視線が少し居心地悪い。
掘り返されるように頬に湧くのは、かつての痛みと、柔らかい絹の感触。
そういえば、あの日もこんな天気だった。顔を上げると、千切れ雲が一つ飛んでいた。

「あいつは、まだ寝てんのかな?」
「あいつって?」

唐突に話題を変えられ、少し戸惑った様子で聞き返してくる。

「紫」

一言に言うと、霊夢はにたっと笑い。

「えー、魔理沙ってそんなにあいつが気になるの?」
「ばかっ!ちょっと昔を思い出したから話に出しただけだ」

自分で驚くほどうろたえてしまった。すると霊夢は、肩をぽんぽんと叩き、白い歯をこぼす口元に指をかざしながら。

「そんなこと言って、自分で気付いてた?あんたって事あるごとに紫の名前を出してるのに」
「知らん知らん」

大きくかぶりを振った。まるで女友達のような会話の間と調子だが、本来はもう子供とは呼べない男女。
それも……。やはりその先にあったのは紫の言葉。思考の隘路の先にどうしてもあの顔に行き当たってしまう。
霊夢によって改めて指摘されたことによって、つい意識してしまい、
振り払おうともがけばさらに鮮明になってしまう。
しかし、霊夢も霊夢である。如何に幼い頃の、しかも妖怪との口約束とはいえ、
立場上は許婚のはずだ。それが他の女を話題に出されて、
あからさまにうろたえる様を咎め立てるでもなく、茶化すように笑って流して。
軽んじられていると思った。男としての自分も、そして紫の言葉も。
不意打ちで、巫女のふっくらした頬に口付けを落とす。
林檎みたいに染まる頬、その場所に当てられる手。

「ちょっ、いきなり何よ」

瞬かれる目。

「俺の気持ちが分かったか」

戸惑いながらも、拒んでいる訳ではないのか、抗議の声は尻すぼみ。
その反応にほんの少し溜飲を下げながら、我ながら子供じみていると、
軽い自嘲の念が湧いた。

「じゃあな」

黒いベストの襟を軽く整え、箒を手に取りそそくさと境内を後にする。

「あ、ちょっと」

制止の声を聞かないふりで、鳥居をくぐりまたがった箒に魔力を流して、
浮力を得る。これ以上ここにいるとまた何を突っつかれるかわからなかったから、否、
突っつかれて何が出てくるか分からなかったから。心が乱れている。
こんな日は、さっさと寝るに限った。そんなことを考えながら森の木立の間を縫えば、
そこはもう住み慣れたねぐらであった。


2.
青地に黄色い星マークがプリントされた寝巻きに袖を通し、風呂上りの体を冷やさないよう布団に潜り込む。

「紫か……」

天井を見てつぶやいた後、資料や器具でごった返す研究机をじっと見つめる。
夜中まで資料とにらめっこをして、いつの間にか机に突っ伏して眠ってしまうことも度々だった。
目覚めると、そんな自分の肩にかけられていた一枚の毛布。実験で張り詰めた気分を解きほぐすように漂っていた、
甘さと鮮烈さを同時に感じさせるあの香り、ラベンダー、という花の香りだと後に聞いた。
紫の姿を偲ばせる風合いの小さな花だった。
そして、家の中ににゅっと現れてはおいていく小言の数々。食事は摂ったのか、
早く本を返せ。箒の留め金が緩んでいる。etc
時にうっとうしく聞き流しながら、それらはこの薄暗い家の暮らしに確かに張りと潤いをもたらしていた。
値踏みするかのように油断のなかったアメシストの光が、どこか柔らかく感じるようになっていた。
成程、霊夢がことあるごとに話に出す。というのも無理はない。傍から見れば母子のようなものだろう。
瞼が徐々に重くなってきた。ランプに送る魔力を断ち、部屋の光源を無くす。
それなら霊夢がまったく気にも留めないのも頷けた。
しかし、それをよしとしない自分が霊夢のあの態度に心をざわつかせていたのだ。
だから、霊夢に……。
短時間の内に何度も寝返りを打つ。布団の隙間から冷たい空気が流れくんでくる。
無理に体を上向け、瞼を強く閉じると、体がずしりと重くなってくる。
もうすぐ眠りが完全に自分を飲み込んでくれるだろう。


3.
いつもの夢、息を切って階段を駆け上がる。違う点があるとすれば、
一段を経るごとに子供の自分の背丈が徐々に伸び、十段目を過ぎる頃には、
もうすっかり今の背丈になっていた。白いカッターに黒いベストと赤ネクタイ。
そして同じく黒いズボンという。いつもの出で立ちになっていた。
いつもの夢ではまだはるか遠くに赤の石組みが、もう段の切れ目に顔をのぞかせていた。
長く伸びた足で、石段を二つ三つ飛ばしながら駆け上がると、呼吸はまだ緩やかであった。
開ける石畳。寂れた拝殿。しかし、この夢でいつも賽銭箱の前に腰を下ろしていた紅白巫女の姿はない。
人の気配というものがまるでない、廃墟を思わせる荒涼。青空は打って変わって朱に染まり、
山の稜線に黒く切り取られていた。吹きぬける風は妙に生暖かい。
不気味なと、魔理沙が身構え、懐の火炉を握り締めたと同時、
その緊張を解きほぐすように漂う淡い匂い、ラベンダーの花の芳香。

「紫」

その香りと関連の深い相手の名を虚空に呟けば、白い帽子を先頭に、地面からその姿をせり登らせた。
明るいとも、薄暗いともつかない赤い空の光源の下、白い顔に影を落とす日傘を傾げ、
瑞々しい唇がかすかに持ち上げられた。

「…………」

アメシストの光も細く絞られる。真顔で見つめ返す魔理沙。
傾けた日傘が手から滑り落ちた。
膝下までの薄いあやめ色のスカートと白い靴下、真っ赤な靴に覆われた足先が、
石畳を軽快に打ってこちらに近づき、四、五寸の隙間を残して、紫が間近に立つ。
いつも腰の少し上から見上げていた麗しい顔を今は頭半分低い位置に見下ろす。
母親の背を追い越した息子の心境か、それとも、久しく会わぬ昔なじみを見つめるそれか、
紫のまとう雰囲気には、そのどちらもが正解といえた。
ラベンダーの香りに混じって漂う女性特有の柔らかい体臭が、
鼻孔からしのんでは、奥のほうをくすぐった。
ひじの少し手前までの白い手袋に覆われた両手が、音もなく金縛りの魔理沙の両肩に置かれる。
足の爪先が伸ばされ、顔の距離はさらに接近。程なく唇を接点にゼロ。
綿菓子のような感触、淡い香り、早鐘を打つ心臓。
視線を下げれば、鎖骨の少し下にあるフリルをあしらった襟元を押し上げ、
前方へのなだらかな湾曲を形作る乳房が、ようやく厚みの出始めた胸板に密着していた。
脳髄がそれを理解すると、さらに脈が弾けて、分身に血が流れ込む。
舌の柔らかなざらつきが、薄めの唇をくるりとなぞって、顎の真ん中を伝い下りる。
いつの間にか腰の後ろに回していた手をぐっと引き寄せる。さらに近く、見つめる瞳は潤んでいた。

「紫……」

また名前をつぶやくのに合わせて目蓋は閉ざされ、白い手は目の細かい布の感触と一緒に、
頬を両側から押し包んで、唇の距離は再びゼロ。
強く押し当てられたことによってめくれた裏側の寒天に似た感触をしばし味わってから、
どちらからともなく差し出した舌先はすれ違って互いの奥へ。絡み合いながら隅々を探る動きに合わせて、
かき回されて泡立ち、口の端からこぼれ密着した二人の胸に染みていく唾の音、
頬を包んでいた手が、両肩に下りて軽く押される。魔理沙も腰にまわしていた手を緩め、
手のひらを腰骨に伝わせながら前方へ、その手は、くびれの下部に留まる。

「紫」

荒い息を抑え、また呼びかける。

「いいのですわ、これは夢、但し、限りなく現に近い」

言って、横顔をぴたりと胸に寄せてくる。

「好きなようになさって」
「…………」

無言で立ち尽くす魔理沙の右手を、その左手でそっと押し包んで、

「さあ早く」

促しと一緒に、体側を脚部へと伝わせる。

「ね」

濡れた唇で囁き、上目遣いに見つめてくる。肩に残されたほうの手が、
軽く握られた。生唾が喉に流れ込んだ。
その音を聞き、もう片方の手は自らのスカートを引き上げていく。
自然、右手は後を追い。膝上から腿の外側を伝い上がる。
細く締まりながらも適度に保たれた柔らかさ。
思い出すのは神社の境内。霊夢と二人、くたくたになるまで遊びまわって。、
足の片方ずつに各々の頭を乗せ、午睡をむさぼった記憶。
後頭部に残る、安息をもたらしたその感触を今は焦燥とともに手にたどる。

「心地よいですか?」

問いかけと頷き、手のひらは内側へ。紫の秘部を下着越しに捕らえた指先。
瞼を完全に閉じ、時折鼻からの息を乱しながら、伝えられる感触に身を委ねる紫。

「……っは」

紫は斜めに顔を伏せ、わずかに開いた口から白い歯と悩ましい吐息が同時にこぼれた。
気をよくして指の深度を下げ、動きの幅を広げる。

「……ぅん」

鼻腔をくぐる空気が、何かに引っかかった。さらに、つっと下から上に全体を撫で上げる。

「はっ」

合わされた白い歯が緩んで、さらに漏れる吐息。

「気持ちいい、ですわ」

甘みを帯び始めたそのつぶやきと一緒に、紫の手は両肩に伸び、下方向にぐっと力をこめる。
その力に逆らわず。膝立ちになる魔理沙、子供の頃の目線で見上げれば、
同じく見下ろすアメシストは酩酊に艶めいている。
肩から手が引かれ、自らのスカートの生地を軽く握りこんで、見せ付けるごとく引き上げる。
目の前で徐々にあらわになっていく、紫の膝、太腿。魔理沙ははっと息を飲む。
下腹と足の境目の線から30度ほど白い下着は、腰周りにバラの刺繍をあしらい、
そのすぐ下の半分透けた部分には、整えられた金の茂みが覗く。
さらに下、裏地を縫いつけた最も敏感な部位をカバーする部分には、既に液体がにじみだしていた。
飲み込んだ息を緩やかに吐きつつ、腰骨の下辺りに引っかかったひも状の部分に手をかけ、
するりと引きおろす。切りそろえられた茂みの下、赤褐色の口にはぬめりが纏わりつく、
見つめながら、膝の少し下で下着を止め、赤褐色の口の両側に親指をそれぞれ添えて、
力をこめて左右に開いた。紫がその身を一瞬ピクリと震わせる。
アケビに似た開口部、その中央付近にある一回り小さな、ピンク色の唇状の器官。
それは熱い吐息に触れては軽く震えた。口付け、舌先で軽く触れる。塩辛さと生臭さ、
ほんの少しの甘ったるさを含ませる味が感じ取れた。小さな口全体を下から上へ、

「っは」

漏らされる吐息は短く区切れる。さらに一度、もう一度。
スカートの裾から手が離れ、頭のてっぺんで支える形に。
小さな唇の上の方から下の方へ向かって、唇の裏の粘膜で軽くこする口付けを三度繰り返し、
親指にさらに力をこめて広げる。濡れて艶めく裂け目の中ほど開いた、縮こまっては広がるを繰り返す穴は、
呼吸する口を思わせた。舌の先を細めてそこに挿し入れ、上下左右に巡らせる。

「んっ、っ、はぁっ」

噛み締めとゆるみを交互に行う唇から溢れる息は甘くくもぐっていた。
奥のほうからじわりと染み出してきた粘っこいものを唾と一緒にこくりと飲み下す。
後頭部に白い手袋に覆われた手が伸びて、そこにぐっと押し付けながら、
くしゃくしゃと髪をかき分ける。また脳裏に浮かぶ光景。
膝枕でまどろんでいた時に、眠りを深めるように優しく、前髪を分けて額をなでた指先の感触が、
今はかきむしるように後頭部にうごめき、内なる熱を燃え立たせる火かき棒。
眠りに落ちる中で薄目ごしに見た柔和だった表情が今はどんな顔になっているものか、
それを見たくもあり、紫自身の味と、この手の感触を堪能していたくもあり。
一旦唇を浮かせ、裂け目の上のほうにある小豆大の芯を挟み、皮越しに舌先でつつく、

「うっ、はっ……上手、ね」

硬い爪が、手袋を隔ててうなじに宛がわれる。確かにこの自分が、八雲紫を乱れさせている。
自覚すると、ズボンの中で窮屈そうにしている分身がさらに怒張しずきずきと痛む。

「ねぇ、いつまでもそれでは、辛いでしょ」

言いつつ、指を立てたまま頬に滑った両手が前方に押される。
スカートがふわりと落ち、またその場所を覆い隠す。
また見上げる紫の顔は、全体がうっすらと桃に染まって、半開きのままつり上がる唇は掠れた息を漏らし、
細められた両目はとろんと潤んでいる。

「魔理沙をください」

囁きが体を引き上げ、再び頭半分高い位置から見下ろす。アメシストの光を上に向けたまま、
両手はズボンのチャックを引きおろして、男性器を引き出す。亀頭を露出した先端は、
既に先走りに塗れていた。白い歯を揃えて、満足げな笑みと一緒に膝に残った下着を引き下ろし、
右足を引き抜く。左足首に残された、丸まった白い布が、赤い靴に映える。
背中に両手を回してくる紫に応え、手を腰に沿え、もう片方は右膝裏を取り、そのまま小脇に抱える。
肘から先が背にぐっと絡んだ。紫は爪先を立てた左足を下ろし、魔理沙は若干落とした腰を戻す。
そうすることで入り口に触れていた分身が一度に根元まで、

「はぁっ」

瞳を閉じ、一回り大きく開いた赤い唇から息が押し出される。喉元に触れるそれは熱い。

「紫」

何度目になるか分からぬ呼びかけ。不安定な上半身を腰を支店に支える手と、
肉付きのいい尻に回された手で襞にこすりつける角度を調整。

「はっ、くっ、んっ、ふっ」

押し出される吐息は断続的に、

「く、口吸いを」

背中の手がまた後頭部に伸びて、扇情的にうなじを梳く。求められるままに口を覆って、
舌を差し入れれば。

「んっ、じゅっ、ぢゅる、んく」

暴れる舌。水音、唾を飲み下して鳴る喉。

「ぷはっ」

酸欠と局部からの刺激に苛まれ、息継ぎのごとき呼気が溢れる二つの口。

「素敵……」

水底のアメシストが胡乱に揺らめく。ともすれば女と間違われ、それが心のしこりになっていた自分が、
かくも激しく男として求められる充足感と喜びが魔理沙を完全に雄にする。
二本の腕を使い、紫の体をまた左足が爪先立ちになる高さまで持ち上げ、下ろす。

「あぁっ」

初めて漏れた紫の嬌声。腰を前後させると同時、ぐっと引き寄せる。

「はっ、んっ、あっ、あっ」

後頭部の手が、首の後ろで交差し、それぞれ反対側へ絡みつく。
きつく寄せられた眉根、律動にあわせてあられもない声を発する開きっぱなしの口。
とてつもなく近く、また遠かった八雲紫が、自分との交わりによって本気で感じている。
こちらもまた、腰に回した手を背に滑らせて、ウェーブのかかった後ろ髪を下からかき分け、
指先でうなじをくすぐる。

「うあああっ」

獣じみた声と一緒に腰から上が大きくのけぞり、膣内が俄に締め付けを強める。
射精感を抑えつつ、尻たぶの手にぐっと力をこめて逃げを打つ腰を捕まえ、
ペースを早めて抜き差しを繰り返す。二度、三度。

「ゆ、かり。紫っ」
「はっ、あっ……ぁっ」

切羽詰った呼びかけと裏返った叫びの重なり合い。
全身を激しく痙攣させ、波打つ紫の内部に限界を迎えて精を放つ。
下腹を中心に全身の力を吸い取られるごとき感覚と一緒に、迸りを注ぎこむ分身。

「       」

上気し、恍惚の息を漏らし続ける紫が何事かを発すると、下腹全体に張り付くような冷たさが広がっていく。


4.
「うわぁぁっ」

布団を荒々しくはねのけながら飛び起きる。
股間を中心に下腹までに広がる、冷たくべとついた感触と漂いだす栗の花めいた臭気。
その箇所を見れば、夢中に放たれた精が、星のプリントの寝巻きを汚していた。

「夢か……」

額にはり付く前髪をかき上げると、小さな花弁が2つ、3つ足の間に落ちた。

「なんて夢だったんだ……」

自分は誘われるままに、紫と。
その光景と感覚を思わず回顧しそうになった矢先、
昨日見た霊夢の毒気のないにやけ顔が脳裏に浮かび、あわてて頭を振る。

「さすがに、ノーカンで頼む」

ようやく落ち着きを取り戻し始めた呼吸の合間につぶやいて、
不快感と軽い自己嫌悪に押されて寝床から下りた。
洗面台でズボンと下着を流水に浸しつつぽつぽつと言葉を連ねる。

「霊夢とめあわないか?お前はそう言って、私を里から導き出したんだ」

床にへたり込んで続ける。

「感謝してる。里にいた頃には思いもつかなかったくらい充実した毎日さ」

その中で、巫女の花婿に恥じないよう自分なりに努めて来たつもりだった。
……肝心の相手の危機感のなさや、自覚の足りなさに少々空回り気味であるにしても、
でもそれは二人の気の置けなさの裏返しで、そこに何の不満もなくて。

「これじゃ婿候補失格だ……」

胸ポケットから、小さな花弁を引き出す。握り締めて、鼻先にかざせばありありと蘇る秘め事の記憶。
足の間の竿は固さを帯び、胸はずきずきと痛みながらも駆け足。
そんな自分を情けなく思いつつ、虚空をじっと見つめて、唇を少しだけゆがめて、

「でも、お前も後見人失格だな」

肉よりも心が重きを持つ妖怪。まして物事の境目を自在に動かせる紫ならば、
それが夢であろうがなかろうが関係なかろう。
冬眠がゆるむ季節の寝ぼけ半分に見た夢が偶々、自分の夢に同調した結果がアレだ。
二人にとっては、まぎれもなく夢であり、またまぎれもなく現実であった。
手の中のラベンダーの花弁はそれを雄弁に物語っていた。

「       」

目覚めの間際、紫が最後に言い放った言葉が、
これきりになさい、自信を持ちなさいといった類の諭しであれば、
自分は喜んでそれに従う決意をして、今こうして悶々とすることもなかったはずだ。
もやがかかっていて、詳しい内容までは思い出せないものの、
あれはまぎれもなく一人の女性としての言葉であった。
疑いもせず隣にいてくれる霊夢のことを思えば、胸はずきりと痛み、自分を情けなく思う反面。
紫もまた、自分と同じく悶々とした思いを抱えているかも知れないと思うと、
ほんの少しだけ、誇らしかった。
ある方の一枚絵にショックを受け、衝動的に筆を取った代物がこれ、
私なりには、結局「お家大事」の価値観にどこか縛られている魔理沙と、
子離れできない母親めいた紫の、いびつな母子相姦という感覚です。
つわ
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