真・東方夜伽話

毒蟲まみれのにとり

2016/11/18 17:50:20
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毒蟲まみれのにとり

今野

紅魔館に呼び出された河城にとり。
彼女は捕まって毒蟲の実験台にされて……

※表現の関係で、横書き推奨※
※スマホ読みの人には申し訳ない※

◆にとりの呼ばれたわけ◆

「ようこそ河城にとりさま」
「そういうのいいから、手短かに」
「ではこちらへ」
 紅魔館の重々しい玄関扉がひらかれて、私は十六夜咲夜に招き入れられた。けれども、そのとき十六夜咲夜がみせた笑みといったら、なんとなく薄気味が悪かった。
 まあ、そんな気持ちになってしまうのも仕方ない。だって紅魔館の主といえば、なんだかよく分からない理由で私を呼びつけてきたんだから。前に私が売ってあげた河童製加湿器の煙が目に染みて痛いとか、そんなクレームだ。
 私が紅魔館の廊下を歩いている頃には、外はすっかり更けていた。けれど紅魔館の中は照明をチカチカに焚いて、妖精メイドがバタバタ走り回っている。その妖精メイドのひとりが、私を横切りざま、なぜか振り返ってきた。ニヤついた後、また走り出していく。本当に、何もかも、いやなところだ。
「こちらへ、お嬢様が待ちかねています」
 案内された部屋は、紅魔館の中心地からずいぶん離れていた。廊下の端っこだ。こんな部屋にレミリア・スカーレットが待っているものだろうか。私室なのか、客室なのか、きっと客室かな。
 さっさと終わらせてしまおう。どうせ、煙が目に染みるのも、加湿器に入れていけない液体を入れたからに違いない。吸血鬼だから動物の血を入れてしまったり。ありえる。そこらへんの注意説明をしなおして、あらためて、責任はすべて紅魔館側にあることを教えておこう。返金だけはさせないぞ。
 咲夜が部屋の扉を開けた。
 部屋にふみこんで、私は面食らった。
 部屋の中は、たくさんのガラクタと、それを覆い隠す白いシーツばかりだった。
 そのとき、ガクンっと、頭に衝撃が走る。
 あっ……?
 視界がぐるりと回転。急に体がしびれて、倒れていくのを止められない。それから、十六夜咲夜のほっそりした足が見えて……



◆ごあいさつの淫蟲実験◆

「イギィっ!?」
 い、痛い!
 なにこの痛みは……お、お尻が……熱い……
「起きた? ほらきちんと目を覚まして。じゃないと反応がわからないでしょ」
 聞いたことのある声だ。パチュリー・ノーレッジの声。けど顔を見ようとしても首が自由に動かせない、なんで? それどころか手足が動かせない。おかしい……どうなってんの?
 灰色の天井が見える。そこにパチュリーの顔が覆いかぶさってきた。いけすかない笑顔で私を見下ろしている。その間も、さっきからずっとお尻の一部が熱い。なにか、刺されたような痛みだ。
「な、なにしてんのっ」
「起きた? 体の調子はどう? 頭は痛む?」
 そういえば……お尻に気を取られて分からなかった。言われてはじめて、後頭部がジンジンと痛んでいるのを感じる。思い出してきた……紅魔館の部屋で急にぶっ倒れちゃって。そうだあれは、十六夜咲夜に殴り倒されたのか。
「なんだよっ、どうなってんのさ!」
「お尻はどう? さっき刺してみたんだけど」
「刺したっ、なにを!? ふざけるなよ。まず説明してよ」
「うるさいなあ」
 パチュリーが視界から消えると、私の寝かされている台がぎこちなく動き出した。その配慮のかけらもない振動が体をブルブル震わせて、腕や足にくいこんでいる何かも振動して。痛い。天井が回っている? ちがう私が回っているんだ。仰向けの体が垂直になっていく……
「あぁ……?」
 目の前に現れたものに面食らった。灰色の薄暗い部屋、テーブルや椅子、ガラス瓶や奇妙奇天烈な器具、所在なさげに立つパチュリー、そして……私か?
 あれは、私なんだろうか。自慢の水色の髪は私だし、ツインテールをくくっている赤いガラス玉は私のお気に入りだし、体はいつも姿見の前で見かける私だし。そんな私が、鉄製の無機質な台座に固定されている。
 ちょっと、待って……
「どうしたの? 急に黙って」
「……」
「自分が裸だって分かって、急に恥ずかしくなったの」
「……」
「けど、よく見ておきなさい。この鏡にうつっている、確かな自分の体を」
「なんでそんな……見ないと……だ、台座をおろしてくれ」
「革ベルトがしっかり食い込んでいるでしょ。首と、胸下と、両脚に、ぎゅうぎゅうと食いこんでいる。擦り切れているけど、あなたじゃ引きちぎれない。両腕は背中の後ろ、ひっかかれると困るからね」
「いちいち……言わなくてもわかるから……」
「両脚は作業しやすいように、閉じさせないからね。カエルみたいに広げてもらわないと。あなたの膣と肛門が分かりやすいように」
「もういいから!」
 鏡にうつるパチュリーの顔、にやついたムカつく顔。パチュリーが台座の下側にあるレバーを引くと、台座がまたぎこちなく動き出す。あわせて私の体も水平にもどっていく。私はありったけの力をこめて体を振り回そうとした……革製のベルトくらい、河童に引きちぎれないわけが……ところがパチュリーの言ったとおり、ベルトはびくともしない。肉に食いこんで痛いばっかり。
「なんだよこれ! 加湿器のせいか。レミリアはそんなに怒っているのか!」
「加湿器? ああ、咲夜はそういう誘い方をしたんだ。よくわかんないけど、たぶんその話ウソだから」
「はあ?」
「ねえ、お尻はどう? 痛いの? それとも」
「ふざけるなよ! なんなんだよ、わけわかんないんだよ!」
 下腹部にまた激痛が走った。
「アッ!? イッ……」
 鋭い針で刺された痛み。針が肉の深みまで侵入した異物感。激痛が引くと、かわりにじわじわと熱がこみあげてくる。
「なにをして……」
「今度は隠唇に刺してみたけど、どう?」
「どうもこうも。痛い。痛いんだよ」
「それだけ?」
「それに熱いよ。何を刺したっていうのさ……」
 また視界に現れ出るパチュリーの顔。彼女の右手が差し出される。白すぎる手のひらが、得体の知れない生き物をわしづかんでいた。甲虫の芋虫みたいな、卵色で、ブクブクと膨れ上がった気色悪さ。パチュリーの指の間で、肥え太った体を波打たせるエグさ。無数の脚で、空中をうぞうぞと引っ掻きまわす必死さ。顔には顎があって、尻には縫い針のような細さのちょっと歪曲した針が……まさか、さっきからコレに刺されていたってのいうのか。こんな、見たことも聞いたこともない芋虫に刺されて……
「気持ちよくないの?」
「気持ちいいわけないでしょ!」
「いちいち叫ばないで。ちょっと小悪魔、そこの持ってきて」
 視界に小悪魔が覆いかぶさる。まさかパチュリー以外に誰かいると思わなかった。小悪魔にもぶざまな姿を見られていたと思うと、死んでしまいたいくらい恥ずかしい。
 小悪魔は私の口に何かを近づけてきた。口をとじて押し付けられる硬質のものを必死に拒絶した。
 が、そのとき、肛門のあたりに強烈な痛みが走り抜ける。
「アギャ! んぶっ!?……ンウウウ!?」
 思わず叫んでしまった口にぐっと押しこまれる。金具が耳元でガチャガチャと鳴り響いたあと、カチッと嵌まる音がする。口を閉じようとすると、すっかり邪魔されて閉じられない。歯がガチガチと硬いものを噛むばかり。
「ンンフウウウウ! ンウ! ブア!」
「静かにしてなさい。よし小悪魔、そっちの蟲もつかって。あなたも手伝いなさい。新しい反応が出るまで刺しつづけちゃって」
 蟲? 反応? 本当に何をしているんだ? 何をするつもりなんだ?
 下腹部に新しい痛みが走る。
「ンブゥ!」
 せっかく引きかけていた肛門の痛みが、ぶりかえしてくる。しかもあのブクブクの芋虫に刺されたのだと、いやでも想像してしまう。なんとも言いようのない汚れた気分になってしまって。
「肛門はもう刺しましたっけ、パチュリー様」
「刺したから別のところいきなさい。へそ下の丹田とか全然やってないから」
「ンン! ウウウウ!」
「やっぱクリちゃんみたいな場所に刺すのが一番でしょ。はーい河童さん、お豆ムキムキですよー。チクッと」
「ファメ! ヴウウウ! ンギュ!? ンン――!」
「もっといろいろなところに刺しなさい。クリトリスに刺すなら、膣まわりの陰核体も狙い目だから」
「グッ! ヴッ!」
「ねえパチュリー様、河童さんのオマンコ濡れてきてますよ。淫毒が効いてるんじゃないですかね」
「単に防衛本能で濡れているだけだから。証拠に……」
「フンッ!? ンオッ! ブウウ!」
「ね、膣に刺してもまだ痛がってる。だからもっと刺し続けて」
 激痛につぐ激痛。ひとつ痛みが走ったと思えば、別の箇所から襲ってくる。痛みに重ねてほてりも広がってくる。下半身だけが異常に煮えたぎってくる。
「河城にとり、下半身に力を入れすぎね。膣と肛門がギュッギュッて収縮しているからすぐ分かる。あんまり力を込めすぎると、血液が下半身に集中して低血圧で目眩を起こすからね。楽にしなさい」
「ンンンン――! ヴァア! ヒネ! ヒネェ!」
「陰唇の近くにはクリトリスの神経が通っていて、陰核体と陰核脚というの。そこにも刺すからね、楽にして。まだギュッギュッてしてるわよ。聞き分けないわね」
「フウン!? ンッ……ブウ……」
 楽にできるわけがない。激痛と熱で、いやでも意識が下腹部から逃れられない。陰部やお尻に、不必要に神経をとがらせて。
 そうして、また激痛。刺される場所がだんだん広がっていく。股間に集中していたのが、へそ下や、太もものあたりにも、ブスブスと容赦ない。ときより思いもよらない痛みが走り抜けて体がのけぞる。革ベルトが叱りつけるように私の首を締め付ける。
 もう何度刺されたか分からない。
 あるときから、とても嫌な感じがしてきた。
 まさかと思った。けれど自分の感覚を確かめると間違いない。下腹部の奥底のほてりは、下半身を襲っている熱とはちがう、たまらぬ不安を呼び起こすほてり。オナニーのときにいつも感じているあのむず痒さ……
 いやだ。
 ありえない。
 絶頂への高まりがもうそこまで来ている。いつの間に感じていたのか、いつから感じていたのか、そんなこと考えたくもない。とにかくヤバい。抑えないと。人前で、こんな拷問じみたことでイッてしまうなんて、冗談じゃない……
 抑えて……たのむ……耐えて……
「待って小悪魔」
 パチュリーと小悪魔の動きがとまる。さっきまで続いていた激痛が、ほんのすこし落ち着く。
「ねえ河城にとり、お腹のうねり方が変わってきたんじゃないの?」
「…………」
「これは呼吸や、痛みに反応しているうねり方じゃない。何かを我慢している。誘うみたいな波打ち方しちゃって。もしかしてイキそうなの?」
「…………」
「いまさらお腹の動きをおさえてもダメ。分かった。イキそうなんだ。まったく。見逃してた。いつから感じてたのやら」
 そこで、クリトリスに何かの近づく気配。また刺される! いいさ。刺される痛みなら我慢してやる。我慢できる。きてみろ。
 ゴリッと、クリトリスが捻じ曲げられた。針の貫通する痛みではない、突き出る肉を引きちぎられそうなほど捻じ曲げられた。まったく予想もしていなかった別種の痛みが下腹部を貫いていく。
「ヴウウウ!?」
 痛みが離れない。なんで? クリトリスが左右に潰される。指でつままれている? いやもっと硬い。ペンチ、ちがう、あの芋虫だ、芋虫の顎だ、いま私のクリトリスに噛みついているんだ。
 ヤバい、痛い、動かすな、やめろ、耐えられなくなる、いやだ、くる、痛みに引きずられてくる、絶頂の気配がする、あの破裂する感じ、こみあげてくる、こないで、たのむ、耐えて、ダメ、こないで、ダメ、ヤバい、くるな、くるな、くるな……
「ンッ! ンフッ! ングゥ! クフュ、ンンッ……フウー……グウウウ……」
 体が勝手にはねる、声が漏れる、とめられない、しかも見られている、きっと見られている、パチュリーと小悪魔に、私の動きがなにもかも。波打つ腹も、ひくつく腰も、震える手足も。隠したくても隠せない、私のいちばん恥ずかしい有様を。
 絶頂がおわって、余韻のうずきが、痛みや熱と混ざり合っていく。そのけだるい気持ちよさ。絶頂する前からこんな気持ちだったような錯覚に陥って、情けないような、恥ずかしいような……
 クリトリスを襲っていた痛みはなくなった。かわりに、下腹部に手のひらが押し当てられる。ひやりとして、じんわりと余韻に呼びかけてくる。
「フッ……ファアンハ……」
「見事なイキっぷりだったじゃない。ということは、もうすっかり蟲の毒が効いてるってこと。最後にそれを確かめさせてね」
「ンンンン……」
 首をふろうとしても、もちろん振ることなどできない。
 パチュリーの手のひらが下腹部に体重をこめはじめた。そのままゆっくりと、けれど重たい圧迫感で、ぐりぐりと。まるで内臓を押しつぶしているみたいな。わけがわからなかった。
 しばらくすると、分かってしまった。パチュリーの手のひらが下腹部を圧迫するたび、絶頂の余韻がぶりかえしてくる。どういう理屈か、手のひらは絶妙に余韻の残っている位置を刺激する。性器に触られていないのに、触られているみたいに体が跳ねてしまう。気がつけば、またあの絶頂の訪れる不安が、すぐそこまでやってきていた。
「ンン……ヒャメオ……ヒャメオ……」
「ポルチオは妖怪でもめったにできない経験だからね。蟲の淫毒が効いている証拠」
「ンンンン……」
「ほら、またお腹が収縮してる。内側の筋肉も、内臓も、ぐにゃぐにゃ動いているのが分かる。見なさい小悪魔。この河童、ポルチオでイクみたい」
 いやだ、またイクなんて、パチュリーの手で。我慢しないと、けどできない、この圧迫をどうやって我慢すればいい。もういやだ、やめろ、本当に、やめろって。
 あっ、くる、またくる、怖い、手のひらひとつで、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ……
「グッ! グウウウ! フウウウ……ンンンン……!」
 恥も外聞もなく、体がエビのように跳ね回る。今度のは、最悪だった。来ると覚悟させられていたぶん、快感の細部まで分かってしまう。全身を一度に貫いたあと、大きな膨らみが体中を満たしていく。例えようのない幸福感に、一瞬は自分が何をされていたのかさえ忘れてしまう。
 気がつくと、体がずっとえび反りになっていた。パチュリーの手のひらはまだ下腹部を押さえたままだから、えび反りになっていれば、余韻に燃える下腹部を、パチュリーの手のひらに押し付けることができた。
 そんな浅ましい理由に自分で気づいて、恥ずかしくなって体を落ち着ける。だが、パチュリーは私のやっていたことに気づいたみたい。わざわざ私の固定された視界に、ニヤニヤとした顔を割り込ませてきたくらいだから。
「気持ちよかった?」
 顔をそらすことができれば……今の私にできるのは、目をつむることだけ。けれど目をつむって暗闇に逃げこむと、絶頂の快感がまざまざと思い出されて息苦しくなる。
「今日はこのくらいにしておきましょう。小悪魔、蟲しまっておいて。私は河城にとりの後片付けをしておくから」
 まさか、明日もこんなことをやるつもりなのか。ああでも、考えることができない。もう終わりだと分かった途端に、眠たくなってきた。閉じたままの目も開けることができない。



◆淫毒あそび◆

 目を覚ますと、顔のまわりに妖精メイドが集っていた。私の見える範囲で三人、部屋の奥から声が聞こえるから、もう二人はいる。
 この顔を見るのは何度目か。紅魔館に理不尽に捕らわれてから三日は経つ。パチュリー・ノーレッジや小悪魔、そして妖精メイドが、立ち代わりに私を弄びつづけた。
 体がダルい。全身、ゆるやかな筋肉痛をわずらったみたいに、重々しくひきつっている。下腹部は痛むし、奥では耐え難いあの……感覚が……尾を引いている。
 妖精メイドは見世物を見るみたいに、にたにたと目を細めた。私の目の前に手を差し出してきた。妖精メイドが手にしているものに、反射的に体がビクつく。
「ンンンンンン――っ!」
 拒絶のうなり声を上げる。しかし口にはめられた拘束具が声を誤魔化した。もう何度も大声を上げたせいで喉がピリピリ痛む。そうやって必死になればなるほど、妖精メイドたちはニヤケづらを交わして和気あいあいとするのだった。
 彼女たちが持っているのは何の変哲もない筆。けれど、私にとって地獄を呼ぶ筆。
 やがて視界から妖精メイドが遠ざかったことで、今日の勤めの始まりが分かった。四日目の悪夢だ。私は台座に固定されている体を動かそうとした。無駄だと分かっていても、やらなければ気がすまなかった。
 ヒタ、と陰唇に冷たい感触が張り付く。それが上から下へなぞっていく。繊細な感触が、背筋をゾクゾクっと震えさせた。ああ、いやだ……せっかく眠っている間に落ち着いていた感覚が、また呼び起こされる。くる、と思ったのもつかの間、快感のさざ波はすぐにハッキリとしはじめた。
「ほーら体がクネクネしはじめた」
「もっと腰突き出してみろって、気持ちよくなりたいんでしょ?」
 べつの筆が、肛門のまわりをくすぐりはじめる。くすぐったさの後ろから、ささやかな快楽が立ち上がってくる。だが絶頂の高ぶりまでたどり着くことはない。体の奥へひっこんでいって、くすぐったさと混ざり合ってしまう。そうなると、妖精の言うとおりについつい腰を突き出してしまう。
 冷たい革ベルトが邪魔をして、腰はほんの数センチしか浮き上がらない。妖精メイドたちの操る筆は、その数センチにさっと逃げ出して、うずきだけを残していく。
「この塗っているものって媚薬なんですか?」
「パチュリー様が実験している蟲の毒。淫毒だって」
「媚薬と何がちがうんだろ」
「媚薬は気持ちを高ぶらせるだけ。この淫毒は神経に直に影響して、気持ちよさをむさぼるように狂わせる」
 とつぜん、いままで聞こえてこなかった声が聞こえてきた。
 私の視界にパチュリーが顔をみせる。手にしていた筆を顔に近づけて、鼻にぐりぐりと押し付けてきた。予想もしていなかったので、もろに滴る淫毒を吸いこんでしまって、ツーンとする。それがすぎると、頭がぼうっとしてくる。
「ンブ……ブウ……ンンー」
「上半身に塗ってもらってないじゃない。これから塗ってあげましょうか」
「ンンンン――!」
 筆のふわふわとした感触が、胸のあたりに移ってきた。乳房の輪郭にそってぬらぬらが走りまわる。淫毒のひやっとしたねばりけが肌にまとわりつくや、そこから熱くなってくる。まるで淫毒が発火しているのではと錯覚するほど、熱く熱く……
「男の子みたいな胸ね。脂肪がないぶん、淫毒が神経に染みこみやすいはず」
「ブウ! ヴァバ! フィネ!」
「乳首がもうプリプリに勃起しちゃってるじゃない。けど乳首はお楽しみね。まだまだ乳房で味わいなさい」
「フウウウ!」
 パチュリーの言うとおり筆は乳房だけをいじめ続ける。かすかな膨らみの上を這い回り、乳輪にくると、その輪郭をそろそろと撫で回して、けれど乳首に近づくまえに遠のいていって。そのまま乳房からも離れると、だしぬけに腋や、へそのあたりまで舐め回してくる。不意打ちに体がくねる。
「そうやって動くたび、体中がじんじん疼いてるんじゃないの? 動くと敏感になった神経が擦り合わさって、体の内側から快感がやってくる」
「……」
「おとなしくなっちゃって、分かりやすい子。もっといやらしくうねってくれないと面白くないでしょ」
 パチュリーの筆が乳輪のあたりに押し付けられるように塗りたくられた。筆先に跳ねている枝毛がチクチク肌に刺さる。ささいな痛みなのに、電流のようにしびれる。胸奥にじんじんと育っていた絶頂感が、そのチクチクに爆発してしまいそうな気がして……けれど引いていく。そのもどかしさ。さらなる刺激がほしくなって胸が反ってしまう。筆が深く食い込むのは一瞬、さっと離れるいじわるさ。再び押し付けられて、枝毛に快感をさかなでされる。胸を反ると、やっぱり離れていく。
「さすが蟲の淫毒。塗って数分で乳房がビンタされたみたいに真っ赤っ赤。熱くってたまらないんでしょう」
「ウンー! ンンー!」
「そろそろ乳首にも塗ってほしい? 塗ってほしかったら体を反って、全力でおねだりしなさい」
 私は、パチュリーの言われるがままになるしかなかった。だって、さっきからイキたくて仕方がないのだ。今日は淫毒塗りが始まってからまだイケていない。特に胸を刺激されはじめてから、体がジュクジュクほてるばっかりで。けれど、乳首なら、乳首を刺激してくれたら、ひょっとすると……と浅ましく考えてしまう。
「フウンンー!」
 革ベルトのゆるすかぎり体をのけぞらせる。胸を突き出してパチュリーや妖精メイドがゆらす筆を追い求める。筆のサラサラチクチクが乳房のやわ肉に刺さると、たまらない。もっと力めば、筆の硬い柄がぐっと食いこんでくる。筋肉がぐにゃりとつぶされる感触の、するどい気持ちよさ。
 しかし、そうした小粒な快楽では、やっぱり絶頂にはみちびかれない。もどかしさが増していく。そのもどかしさを解消することばっかりに思考が追いやられて、自分でも何をしているのか分からなくなってくる。
 突然、乳首のさきっぽにひやりとした感触がやってきた。
「ンブウッ!?」
 淫毒の冷たいぬめり。筆の細やかな繊維が乳首を包みこむや、上下左右にこねくりまわされる。待ち望んでいた感触。
「フッ、フウッ! ンンウ!」
「河城にとり、お待ちかねの乳首、たっぷり味わってね。プリプリの勃起乳首も淫毒漬けにしてあげますからね」
 カチカチになった乳首の表面を、筆の繊維が這い回る。意識が乳首に集中していく。繊維の一本一本が表面を舐めあげていくのさえ感じ取れるほどだった。そのたびに淡い快感が、胸の奥へひろがって、やがて下腹部の熱と混ざって高まり合う。
「ンンンン――! フォッホオ! フォフィフヘヘ!」
「気持ちよさそう。じゃあこれはどう? 筆のさきっぽでつついてあげる。にとりの勃起乳首と筆の兜合わせ。えっちでしょ?」
「フウっ! ウウン! グウ!」
「乳首から乳輪にかけてまんべんなく塗りたくられるのもたまらないでしょう。けどにとりは、どっちかというと筆を押し付けるようにされるのが好きみたいね」
「ンブゥ! ンン!」
「ほら、絶頂が近づいている。お腹が収縮して波打ってる。体もこわばりはじめて、イク準備しちゃって」
 そう、本当に、もうそうだ。きてしまいそうだ。パチュリーの筆がさっきより力強く押し付けられると、乳首が押しつぶされる。そのまま陥没させてしまいそうなほど力をこめられると、気が狂いそうになる。
 あともう少し、もう少しなんだ……もう快感が近すぎて乳首のことしか考えられない。筆のゾリゾリ走り回ることしか頭にない。もっと乳首をこすり回して押しつぶしてほしい。
「ンッ……グウ……」
 くる、くる、もうすぐそこ、体の奥で育まれていた絶頂の気配が、皮の下をうごきまわっている。心臓がバクバク高鳴る。本当に、そこまできている、もうすぐ破裂する、爆発する、くる、くる、くる……
「ンン……っフ……っ~~~~~~~~!!」
 表皮を突き破って、全身をかけめぐる快楽の波。
 視界が白んで、頭の中にあったことが吹き飛ぶ。
 快楽はゆっくり引いていくが、乳首だけはまだまだ煮えたぎるように熱い。余韻を逃すまいとグツグツ燃えて、筆の感触をいっそう細やかに脳へ送りつける。そうして、私はすっかり馬鹿になっていたから、胸が勝手に反りつづける。あぁ……筆柄のゴリゴリが言葉にできないほど気持ちよい。
「だいぶ気持ちよさそうだったじゃない。みんな、せっかくだから今日一日ずっと河童さんの胸だけをいじめてあげなさい」
 妖精メイドたちの「はーい」という気の抜けた返事。数秒もしないうちに、彼女たちの筆がまた胸だけを這い回りはじめる。ふたたびぶりかえしてきた快楽の波に、私は怖くなってきた。



◆注入実験◆

 聞き覚えのない靴音が近づいてくる。朦朧とした意識を叱りつけるように、カツーンカツーン、高く鋭い響き。
 張り裂けるような痛みがお尻に走った。
「アギィ!?」
「まあ、ずいぶん汚い格好。こんなの見せられる私の身にもなってよ」
「お……おひり……」
 と声を漏らしたそのとき、再びお尻に弾ける痛み。皮が破けてしまったのではないかと錯覚するキレと、そのあとにやってくるのは待ち望んでいない快楽。
 視界が揺れる。体に妙な浮遊感がある。口の拘束具がなくなって自由に喋ることができるのはよいけれど……
「わたし、なに、どうなってるの」
「吊るしている。革で縛って天井から吊るしている。床が見えているでしょ? うつぶせでしょ? 足はカエルみたいに折りたたんでもらってね」
 この声と喋り方、やっと思い出した、十六夜咲夜だ。
 ひやりとした感触がお尻に触れてきた。咲夜の手だ。素手じゃない。
「あっやめろ……ぐっ……」
「あなたここ数日で自分のお尻を見た? 蟲刺されの跡がほんと汚い。腫れ物と青あざだらけ。それに塗りたくられた淫毒でドロドロ。ほんとうにみにくい尻」
「ふっ、んんっ、やめろぉ、もむなぁ……」
「素手で触れないから手袋がいる。手袋の感触もいいでしょう。筆に舐め回されるのとどっちが好き?」
「いっ、ぎっ、だめっ、アッ、あはぁ……ああっ」
「こんなに痛々しく腫れ上がっているのに、もみしだかれると気持ちいい? 神経がバカになっているのね。けど、これからもっとバカになってもらうから」
「やだっ、いやだっ、もうやだ、蟲も淫毒もいやだ! 帰せ! ここから出せ!」
「これが終わったら帰してあげるからね」
 床ばっかりの私の視界に、咲夜の靴のつまさきが現れた。苦労して顔を上げると、目の前に立つ咲夜は両手に何かを抱えている。バケツ……何の変哲もない、人間の里で売られていそうなバケツ。咲夜はそれを黙々とした顔で見下ろしている。
 最初、それが何を意味しているのか分からなかった。
 やがて咲夜がバケツをかたむけて内側を見せびらかした。
 バケツの中には、ミミズによく似た生物がうごめいていた。一匹や二匹じゃない。何十匹いるだろう。バケツの半分まで埋め尽くす、赤黒いへどろたち。
 咲夜は分厚い革手袋の片手で、その一匹をつまんで持ち上げた。すぐに咲夜の指先に巻きついて、口と思しき場所で噛み付く。この時点で、ただのミミズじゃないことは明らかだった。だってミミズに顎があるはずがない。真横にひらき、細かな歯と繊毛をそよがせる不気味な顎だった。
 咲夜がはじめて笑う。
「これ、なにかわかる?」
「え……」
「パチュリー様が実験につかっている蟲の一種で……あなたの体に塗ってあげた淫毒とおなじ体液をもってる」
「い、いやだ! やだああああ! ほんとに、ほんとに、もういやなんだよお! 私がなにしたんだよお! 加湿器なら交換するからあ! 新しいのあげるからあ! ね? ね? 返金も対応してるよ?」
「加湿器?」
 十六夜咲夜は眉をひそめて、そんな言葉を生まれて初めて聞いたと言わんばかりの顔。が、すぐに気をとりなおした様子で私の視界から消えていくと、背後に立つ気配。
 私は吊るされているのをいいことに、必死で体を振り回した。私の体重を支えている縄は、天井で金具とこすり合わさってギチギチと音を鳴らした。それに合わせて私の体が左右に揺れ動く。
 だがそんな抵抗も意味をなさない。咲夜の手が力強くお尻をひっつかんで逃すまいとした。指が陰部をなぞり、尿道にあてがわれる。まさか……いやそんなわけが……だってそこは尿道だ。ありえない……
 咲夜の動きが止まる。私もつられて動きがとまってしまう。何をしでかすつもりか見定めようとして、呼吸さえとめて注意した。一瞬だけ、尿道の入り口に生暖かいぬめりけが触れた。それが尿道に忍びこんできた。
「アッ、ハアッ!? アアアアアア!?」
 今までに感じたのことのない感触だ。細いが弾力のある物体がどんどん尿道を突き進んでいく。おしっこの逆流しているような感覚、信じられないほどの圧迫感、目がチカチカしてくるほど。
「まずは一匹。すぐ二匹目いきましょう」
「ガッ、やめっ、オオオオ……なにごれ、なにごれぇ……」
「パチュリー様が仰るには、表皮の上からより、内側の粘膜から刺激したほうが効果が強いのじゃないかって。けれど、あんまり芋虫で刺しまくるのも跡が残ってかわいそうでしょ。だからこの蟲に内側から淫毒を注入してもらう」
「とってえっ、やだっ、やだあ! あっ、アッ……」
「ほら、二匹目も入る。おしっこ穴をかきわけていくのが分かるでしょ?」
 二匹目も滑りこみ、一匹目の尾と重なりあうと、さらなる圧迫感。
 と、尿道の奥に、急にゴリッとした痛みが走る。
「ギィッ!?」
 蟲が噛みついてきたのだ。蟲の顎の角ばった感じ、生え渡る繊毛のぞわぞわとした気味悪さ、それらが痛みの合間に感じ取れてしまう。
 嫌悪感に背筋が怖気立つのも束の間、すぐさま三匹目が入ってくる。一匹目と二匹目が噛み付いてきて、鋭い痛みに体がのけぞる。
「ア"ッ、ア"ッ、ン"ア"ア"ア"ア"!」
「河城にとり、どうしたの? クリトリスが真っ赤に膨れ上がっているじゃない。尿道ごしに、クリトリスの神経を刺激されているみたいね」
 そのクリトリスに、革手袋のざらつきが覆いかぶさってきた。ゴリゴリと上下に強引に擦り上げられる。下腹部に火を当てられたように、快感がはじけてひろがった。
「やめへぇ! ヤ"メ"ヘ"エ"! イ"ク"ノ"! イ"ッチ"ャウ"カ"ラ"ァ"!」
「こんな乱暴でイクの? 普通は痛くて気持ちよくなるどころじゃない。けど今のにとりの狂いきった神経じゃ、肉が潰れるくらい力任せにされても感じわけね」
「ア"ッ、イ"ッ……ン"オ"オ"オ"オ"オ"オ"!!」
「お腹が波打ってる。尻たぶもひきつってる。もうイッたの? こんなのじゃ今日一日もたないんじゃないの?」
 さらに尿道に忍びこんでくる蟲、そして内側を噛みつかれた痛みで、絶頂にひたっていた感覚が引き戻される。余韻と痛みと、それから終わりのない放尿感、ぜんぶ一緒くたになって脳髄をかき乱す。
 咲夜の指がやっとクリトリスから離れた。だが、つぎに触れたのは陰唇。蟲と淫毒にさんざん汚され腫れ上がったそこをなぞられ、かきわけられると、痒みとも快感ともつかぬ耐え難い感覚に襲われる。
 くる……と覚悟する間もなく細いものが入りこんできた。
「マンコはさすがに余裕があるかな。手でやると面倒くさい。浣腸を使っちゃおっか」
「……か、かんちょう……?」
「そう。浣腸器に蟲を詰めてマンコに注入する」
 などといっている間にも、咲夜がもぞもぞと作業している衣擦れの音が聞こえてくる。いやだ、ありえない、こんな毒々しい蟲を浣腸で注ぎ込まれるなんて、私死んじゃうかもしれない。
 そのときはすぐに来た。浣腸器のひんやりとしてなめらかな感触が、膣口にぬるっと差しこまれた。そして、満を持してドロドロが大量に注ぎこまれてくる。蟲の数が多すぎて、ねばつく液体にしか感じられなかった。
「ア"ッ、ヤ"ア"メ"ッ、タ"メ"ッ、ンググググ、ハアッ、ハアッ……」
 数秒もすれば、行き場を求める蟲たちが、それぞれにうごめきだす。膣壁のしわに体を滑らせ、丹念になぞりあげる。そんな蟲たちの暴力的な奔流が、新たな圧迫感をともなってどんどん奥へ奥へ……
「タ"メ"ッ、タ"メ"タ"メ"タ"メ"タ"メ"ッ! ト"ッテ"ェ! ト"ッテ"ク"タ"サ"イ"! サ"ク"ヤ"! サ"ク"ヤ"サ"ン"!」
 汚らしい濁流がどんどん奥へ、奥へ……指や道具では絶対にたどり着けない位置にすら、蟲の気配がうごめく。落ち着きはじめた蟲から、ゴリゴリと膣肉に歯を突き立てる。予想もできない場所に、引き裂くような痛みが。
 咲夜の手のひらが私の下腹部に押し当てられた。撫でるような手つきだったが、すぐに、膣内の蟲ごと潰してしまいそうな勢いでわしづかんでくる。
「オ"オ"ッ!?」
「もう子宮まで蟲が侵入しているみたい。内臓のゴリゴリゆがむ感触にまじって、蟲のブヨつく弾力がする。私の圧迫から逃れようと動き回ってる」
「ヤッ、ヤ"ア"ア"ア"ア"ア"! ト"ッテ"ェ! カ"マ"レ"テ"ル"! ナ"カ"カ"マ"レ"テ"ル"ゥ!」
「子宮を内側から侵されるなんて滅多にない体験じゃない。男相手でもできないこと。たっぷり味わって。一生の思い出にしないとね」
 咲夜が指先で子宮をゆすぶるたび、下腹部がそのまま崩れて溶け出してしまいそう。本当に溶けてなくなってしまえば、どれだけ楽だろうか。けれど蟲が膣肉にむさぼりつく痛みで現実にひきもどされる。私の肉はいまだガッシリと形を保ち、咲夜の非情ないたずらも、蟲の容赦ない攻撃も、すべてきちんと受け止めてしまうのだ。
と、なんの脈絡もなく、ひやりとした浣腸器が肛門に押し当てられた。
「タ"メ"エ"! タ"メ"タ"ッテ"! オ"ヒ"リ"タ"メ"ェ! ハ"カ"! ハ"カ"ァ!」
 といっている間にも、生暖かいねばつきが腸を逆流してくる。さいしょは浣腸器から押し出された勢いでほとばしり、そこから先は蟲のねちっこい歩み。腹をくだしているときのような鈍痛と合わさって、強烈な不快感。しかも縦横無尽に動き回っているのが、嫌というほど感じ取れてしまう。
「ア"ッ! ハ"ア"アッ!? オ"オ"オ"オ"……」
 もう、本当に、わけが分からなくなってきた。いま自分の感じている痛みはどこから巻き起こるものなのか、いま自分を酔わせている快感はどこから吹き出しているのか。尿道? 膣? 子宮? 肛門? 腸? 答えられない。ぐちゃぐちゃだ。
 咲夜の声も、どこか遠くから聞こえてくるやまびこのよう……
「蟲が漏れないように栓をしてあげる。尿道にはカテーテルを、マンコとケツ穴には張り子を。上等でしょ?」
 尿道にズルズルと入り込んでくる硬い棒。明らかに蟲と異なる感触なので、すぐに分かった。つぎに膣と肛門へ挿入されてきた張り子は、入りかけが異様に大きく、かと思えばするりと収まっていく。
「ン"ン"――! ナ"ニ"コ"レ"ェ……」
「変に息むと穴が切れるからね。張り子は栓の形をしているから、息んだって、穴が下品にヒクヒクするだけ。まあ、どうせいまのあなたじゃ、穴が切れても気持ちいいのだろうけど」
 ふたたび咲夜の手が腹を撫で回してきた。今度はかわいがるような優しい手つきで、へそから胸にかけて滑らかに触れてくる。撫でられているだけで、皮も肉もドロドロになっていくみたいだった。
「ア"ア"~~サ"ワ"ン"ナ"イ"デ"ェ……」
 その間にも、蟲はうごき噛みつき続ける。
 特に、腸を犯している蟲たちが最悪だ。どんどん奥へくだっていく。腸内を自由勝手に動き回られる気持ち悪ささえ、ふと油断すると、背筋をゾクゾクさせる快楽に変わってしまう。
 だめだ、またイッてしまう、内臓を襲われているおぞましい感覚でイッてしまう、我慢できない、絶頂の気配が、蟲よりも陰湿に皮下を這いずりまわる、それがたまらなく怖いのに、早く体を突き破ってほしくもあって……
 咲夜が腹から手を話しながら言った。
「またイクのね。お腹がいやらしくうねってる。絶頂したくって力んじゃって、さっきからケツ穴がブリブリおならしてるけど?」
「ウ"ウ"ウ"ウ"! ウ"ル"サ"イ"ウ"ル"サ"イ"! ア"ア"~~~~……」
「ほらまた、ぷっぷっーって。人前にケツをへこへこ突き出しながら、おならをぷっぷっー。ほらまた、ぷっぷっ……ふふ。ブッーって、さっきのはでかいわね」
 恥ずかしい、なんでこんな辱めを受けないといけないんだ、けど力むのを止められない、絶頂が体の中で爆発寸前だ、けどイキたくもない、いやだ、こんなイキ方ふつうじゃない。
「ン"ン"ン"ン"……ク"ウ"ウ"ウ"……」
「イケ、河城にとり、さっさとイッてしまいなさい。尿道とマンコとケツ穴に集中して、蟲の動きをめいいっぱいに感じて」
「ヤ"……ヤ"タ"……ア"ア"ア"ア"」
「集中して。蟲が子宮の中をうぞうぞと動いて、噛み付いているでしょ? 腸壁のヒダヒダに潜りこんで、なぞっているでしょ?」
「ハ"ア"ッ、ア"ア"ッ、ア"ッ、イ"ヤ"ア"ア"ッ……」
「集中して。蟲を感じて。蟲に犯されている自分を想像して」
 ダメ、やめろ、そんな言葉をかけないで、想像しちゃう、あのミミズみたいな蟲のうごめく姿を想像しちゃう、脳みそまで蟲だらけになっているみたいになっちゃう、くる、もうくる、もうダメだ、イク、イカされる、蟲にイカされる、いやだ、いやだ、いやだ……
「ク"ッ、ク"ッ、ッ~~~~~~~~~~~~!!」
 視界が真っ白にかすんで、耳はなにも聞こえなくなる。
 体はどこかへ消え失せたみたいになる。
 何も感じられない。
 しあわせの時間。
 まるで何時間もそうしていたような気さえした。気がつくと、腹のくだった痛み、蟲の噛み付く痒み、するどすぎる快楽が、一塊の荒波となってもどってくる。
「ア"ア"ッ、ヤ"タ"ッ、モ"ウ"ヤ"タ"ッ! タ"ス"ケ"テ"! シ"ン"シ"ャウ"! シ"ン"シ"ャイ"マ"ス"! サ"ク"ヤ"! サ"ク"ヤ!」
「あんた妖怪でしょ? このくらいで死にません。それじゃ私、帰りますから。パチュリーさまがもどってくるまで、よろしくね」
 バケツのカランとしまわれる音。
 十六夜咲夜のカーンカーン、靴音が遠ざかっていく音。
 この部屋の扉が開いて、閉まる音。
「マ"ッテ"! イ"カ"ナ"イ"テ"! ト"ッテ"! モ"ウ"ト"ッテ"ヨ"ォ! ア"ッ……タ"メ"ッ……マ"タ"ク"ル"、イ"ク"、イ"ヤ"タ"……イ"ヤ"タ"ァ……」



◆もっと激しく、もっと強く、もっと鋭く◆

 私は妖怪の山にいた。
 もどってきたのだ。
 山に流れる滝の裏、河童たちが住む洞窟の私の住居。
 ここに私の動きをさまたげる革ベルトはない。私をはずかしめる台座もない。淫毒を塗る筆はない。蟲を注入する浣腸器もない。
 ここにあるのは自前の家具と、工具と、作りかけの機械、それから一週間前に食べかけて放置したままの、今は乾燥しきったみかんだけだった。
 私はお気に入りの椅子にすわったままじっとしていた。ふと気がつくと、額から垂れた油汗が頬をつたっていく。ハンカチは持っていなかった。ハンカチをタンスへとりにいくのは嫌だった。そのままにしておくと、汗が顎先からこぼれおちて服に染みをつくった。
 突然、玄関扉が激しく叩かれた。そのドシドシいう音に私はびっくりして背筋をのばす。ふらふらと立ち上がって玄関扉の鍵を開けると、待ちきれないという具合に扉が開かれた。目の前に姫海棠はたてが立っていた。滝をくぐってきたせいで体がずぶ濡れになっている。
「にとり、一週間もどこいってたの」
「え……」
 私がすっとんきょうな声をもらすと、はたては眉を八の字にする。ポケットから携帯を取り出して、手渡してきた。
「本当は先週に渡すつもりだったんだけど、にとりいなかったじゃん。だから私さ、一週間も〈な〉のボタンが動かないままだったんだからね」
「ああ、壊れたの」
「すぐ直してよ」
 言うが早いか、はたては何食わぬ顔で部屋に入りこんでくる。私は慌てた。
「ちょ、ちょっと勝手に入らないで」
「ボタンくらいすぐ直るでしょ。前も一時間くらいで直してたじゃん。待ってるから。冷蔵庫どこだったっけ。きゅうり漬け食べさせてよ」
 私はよろめくようにはたてに近づいて袖を引っ張った。我ながら病人みたいな動きだった。はたてもその動きにギョッとして身をすくめる。
「な、なに」
「とにかく出て。今日はひとりがいいんだ」
「顔、むっちゃ赤いんだけど。熱でもあるの?」
 答えられずに顔をそらした。本当はすぐにでもはたてのそばから離れたかったが、歩くのさえためらわれた。
 はたてはバツが悪そうに私を見つめていた。やがてそういうやりきれない雰囲気のまま「夕方くらいにまたくるから」と潔く引き下がってくれた。
 訪問者が部屋から出たなり、私はすぐに玄関に鍵をかけて、預かった携帯を机の上に放り投げて、私自身は椅子にどしっと座りこんだ。
 せっかく体が落ち着いていたのに。はたてが来たせいで。対応のためにほんのすこし歩いただけで。また体が言うことを効かなくなってきた。
 椅子にすわったまま、スカートに手を差しこんで陰部をまさぐる。ドロワーズにはもう愛液がこびりついていた。陰毛はドロドロに汚れていた。情けなくなってくる。だが指は止められない。
 すぐさま陰唇をかきわけてクリトリスをつまみ出す。それを親指と人差し指の腹で、けずらんばかりゴリゴリ押しつぶす。肉のねじれる痛み、痛みを上回る圧倒的な気持ちよさと、気持ちよさを待ちかねていた解放感。けれど、足りない。もっと痛みと快感がほしい。クリトリスがつぶれてしまってもいい……もっとあの頭の吹き飛ぶような刺激がほしい。
「くっ……んっ……うんんん……」
 机に頭をつっぷして声を押し殺す。目をつむってクリトリスに意識を集中させる。爪をたててつねってみれば、蟲に噛みつかれた痛みを錯覚させた。だが、やはり物足りない。
 右手の指でクリトリスを潰しながら、左手の指を膣穴にねじいれる。爪がやわっこい膣壁をひっかくと、蟲の責めを思い出させてくれた。痛い……いい感じだ。
 膣壁は蟲にいたぶられた跡をまざまざと残す。肉は腫れ上がって、鈍痛をくすぶらせながら、私の指にブリブリと抵抗する。そのパンパンに炎症した膣壁をひっかきまわせば燃え上がるように熱くなってくる。連鎖して、下腹部のいたるところ、じゅくじゅくと気持ちよくなってくる。
 いつのまにか、私は腰さえつかって、下腹部を椅子に押し付けていた。そうすれば、お尻のあちこちに残っている蟲刺されの傷跡が刺激されて、たまらなくて……
「んふうううう……んんんん……はあ……ああ……」
 絶頂をためこんだ風船が大きくなっていく。頭がふわっとして、感覚があいまいに。代わりに下腹部はギラギラと鮮やかで。
 もっと激しく、もっと強く、もっと鋭く。そうすれば蟲が無情にやってくれたように。パチュリー・ノーレッジや十六夜咲夜がぞんざいにやってくれたように。あの感じが味わえる。耐え難くて、私を地獄へ落とす気持ちよさ。痛みと快感のまぜこぜになったわけのわからなさ。
「グッ、ングッ、ンウウウ……ッ……」
 くる。イキそうだ。歯をくいしばって、全神経を下腹部に。もうひと押しあれば、風船を破裂させられる。クリトリスを今までにないくらい、普段の自分じゃ怖くて絶対にできないくらい、強烈にねじりあげた。
「ンン――~~~~~~~~!」
 体がこわばったのは一瞬、そのあとはつい無意識に腰がうねる。
 きもちいい。
 たまらない。
 落ち着いてきてからは、全身をやさしく包む余韻を楽しもうとした。
 何かが足りない。
 何が足りないのか思い付かない。とにかく物足りない。はたてが来る前、我慢できずに自慰したときもそうだった。こんなに気持ちよかったのに、こんなに痛みでズキズキしているのに、何が足りないんだろう。
 そうだ。
 わかった。
 絶頂が一度だけで終わっているからなんだ。
 紅魔館で一週間も蟲責めにあっていたときは、淫毒と、やまない刺激のせいで、絶え間なくイカされ続けた。休みのない絶頂が普通になっていた。
 けれど、自分でやると羞恥心や情けなさで、手が止まってしまう。紅魔館での出来事を思い出しながら股間をまさぐるなんて恥知らずに、我を思い出してしまう。
 物足りない。
 ……いま、私はとんでもないことを考えてしまった。紅魔館にいけば、ひょっとするとあの責めをしてもらえるのではないかと考えてしまった。
 パチュリーは私を解放した直前に言った。妖怪で蟲の人体実験をしたかったのだと。私がえらばれたのは、いちばん都合がよさそうだったからだと。そして、もうこんなことはしないだろうと。
 しないのか。してくれないのか。そうだろう。パチュリーはもう実験の記録を取り終えている。私にもう用はないだろう。
 そうだ。考えちゃいけない。もう終わったこと。あんな地獄はもう二度と味わいたくない。あんな拷問とほとんど変わらないこと……



◆にとりの訪れたわけ◆

 紅魔館の大きな玄関扉を叩くと、受付の妖精メイドが現れる。用事をつたえて彼女がひっこんでいくと、数秒もしないうちに十六夜咲夜が現れる。
 咲夜は、涼しい笑顔で私を迎えた。あの一週間のことを忘れているどころか、そんなことがあったことさえ感じさせない笑顔だった。
「ようこそ河城にとりさま。なにかご用だそうで」
「えっと。あの……あれ、つまり……」
 私といったら。ここまで来ておいて言い出せないなんて。
 しばらく、無言で咲夜のつま先を見つめ続けた。
 つぎに喋りだしたのは咲夜だった。
「パチュリー様のところまでご案内しましょうか。それがいいんですよね?」
「……」
「ついてきてください。パチュリー様は、淫毒が体に残留する度合いを調べることを、すっかり忘れていたと仰っていましたから」
 私は顔をあげた。
 咲夜の冷ややかなせせら笑いがあった。
「どうせ蟲を味わいたくて戻ってきたんでしょう?」
にとりの声真似しながら書くのが楽しかった
今野
コメント




1.性欲を持て余す程度の能力削除
ナズのいじめられる話といい、この話といい全く最高だぜ!
次回作期待してます。