真・東方夜伽話

銭湯に行こう

2016/08/27 09:45:28
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銭湯に行こう

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他サイト様に投稿させて頂いた過去作です。
いろいろご容赦下さい。

幻想郷、夕刻。赤く燃えていた空は東の方から順に鎮まりを見せ、今は薄紫の静かな空模様だ。
そんな空の中に、博麗神社の縁側でお茶を飲んでいた霊夢は、一つ黒い点を見つけた。それは次第に大きくなり、やがて、霊夢のよく知る人物の形になる。
魔理沙だ。
「れーいむーっ!」
そう呼びながら境内に降り立つ魔理沙。特に用がなくともやって来る魔理沙だが、今日はどこか様子が違う。
「あら、こんばんは。魔理沙」
「こんばんは。………て挨拶なんかいいんだよ」
大事なことだと思うのだけれど、そう思いながら霊夢はお茶を啜った。
「あんたが用がなくとも私の所に来るのは、経験則として分かってるわ。でも、一応聞いてあげる、『どうかしたの』?」
「どうかしたんだぜ」
魔理沙が用もなく霊夢の所を訪れるときは、大抵笑っている。人の悪そうなニヤニヤした表情のときもあれば、屈託のない満面の笑みのときもある。とにかく笑顔だ。
それが、今日はどこか困ったような表情をしているのだ。
「話くらいならお賽銭しだいで聞いてあげなくもないわ。なんなら、私にできる範囲でその『どうかした』ことについても対処してあげる、勿論お賽銭しだいで」
「悪い霊夢、冗談付き合ってられるほど、今の私に余裕はないんだ」
全部、本気なんだけれど。ちょっと拗ねたような表情で、霊夢はお茶を啜った。
魔理沙は落ち着かないような素振りを見せている。視線を左右にせわしなく動かしているし、何か言おうとして開けた口をまた閉じたり。
「もう、どうしたのよ」
「あいや、その………」
「らしくないわね」
霊夢はまた湯呑みに口を付けた。
さて、ここで巫女の勘を働かせてみよう。霊夢は湯呑みを軽く傾けた状態のまま、片目を閉じて魔理沙を分析する。と言っても、感覚的に得られる情報からある答えを導き出すだけで、正しい分析とは少し違うのだが。
魔理沙の様子がおかしいのは確かだ。らしくない歯切れの悪さがそれをよく示している、さっきから妙にもじもじしてどうにもしおらしいのだ。右往左往する視線からは、どうやら霊夢を直視できない訳を感じ取れるが、それが霊夢に起因するのかはたまた魔理沙自身にあるのかはまだわからない。
魔理沙が境内に降りてからまっすぐ霊夢に向かって歩いて来たのはいつもの通り、だがいつもの通りでないのは、魔理沙との距離感だ。立ち話だけで帰ってしまうこともないことはない。だが、そういうときは魔理沙はすぐに帰るのだ、まさしく本当に用がなかったから。用はなくとも何か話をしたいというときの魔理沙は、決まって縁側の霊夢のすぐ隣に座る。
霊夢と魔理沙の間合いは距離にして数歩分。ならこの数歩分の距離に何か鍵がある。
口にお茶を含み喉を嚥下するまでの数秒もない時間で一度その結論を得た霊夢は、湯呑みから口を離して確認ついでに魔理沙にカマをかけた。
縁側の自分のすぐそばをぽんぽんと叩いて、霊夢は言う。
「座らないの?」
「えっ………あ、いや、今日はいいんだぜ」
ちょっとたじろいだ魔理沙はむしろ半歩ほど下がってしまう。霊夢はまたお茶を啜った。
なるほど、魔理沙は霊夢の隣に座ることを躊躇っている。
単に私を避けているとしたら、こうして訪ねてくること自体がおかしくなるからその線はない。第一、魔理沙は『どうかした』と言った。霊夢に解決策を求めている。
距離感。
隣には座れない、と言うより、近づくことが躊躇われると解釈した方が正しいだろう。立ち話をするにしても、もっと近づいてもいいはずなんだ。この数歩分の距離は確かに声は届くが、座らずに話し込むには遠すぎるように思える。
魔理沙は何かを気にしている?
それが妥当だろう。
近づいて気になるもの。魔理沙は今スッピンとか?はっ、笑わせる。この童顔おこさまりさに化粧など百年早いわっ。
ならあとは…………。
「…………におい?」
「えっ!?霊夢いま何て」
そう、あとは臭いだ。
改めて情報を整理してみる。『どうかした』と言う魔理沙。ここに来たからには私を頼って来たに違いない。距離感。臭い。
霊夢は合点がいったと残りのお茶を一息で飲み干した。
「あんた、風呂壊れたんでしょ?」
「げ………なんで分かった?」
「勘よ。それで?風呂貸したらいいの?」
「ああ、頼むぜ。ここ二、三日シャワーすら浴びてないんだ。里の水道屋に工事頼んだんだけど、私の家が場所が場所だけに工事は明後日になるらしい」
お風呂に入れないのは、いくら魔理沙と言えど女の子として死活問題だ。清潔でいたい願望は霊夢にだって分かる。
だから快く貸してやるつもりだったのだが。
「ねぇ、折角だし。人里の銭湯に行かない?」
「………はぇ?」
なんとも間抜けな顔をする魔理沙だった。


そして人里。
銭湯の女湯脱衣所には霊夢と魔理沙の姿があった。
「何年ぶりだよ、人里の銭湯とか」
「たまにはいいでしょ?」
「まあ家の風呂に比べりゃ、広いけどさ」
「小さいあんたならどこの風呂でも十分広いでしょ」
「うるせぇ」
服を脱ぎながらそんな他愛のないやりとり。脱いだ服を棚の籠に全て放り込み、霊夢は髪を結い上げていたリボンを解き、魔理沙は肩に垂らした三つ編みを解いた。
「お前、リボン取ると印象変わるよな」
「あんたは帽子がなくなって余計ちっさく見えるわ」
受付で貰った真っ白なタオルで前を隠し、二人はいよいよ浴室の戸を開けた。
もうもうと湯気が立ち上る大浴場。そこに他の利用者はおらず、期せずして霊夢と魔理沙の貸切状態となった。
「お前、反対側のシャワー使えよ」
「なに?お子様ボディを見られるのが嫌なの?」
「霊夢だって似たようなもんだろっ」
「あんたよりはツーカップ上よ」
「サラシ巻いてりゃ変わらないだろ………。もういいから向こう行けって」
半ば魔理沙に背中を押されるようにして霊夢は魔理沙とは反対側のシャワーを使うことになった。
こういった、手前が洗い場で奥が浴槽というタイプの銭湯ならだいたい洗い場の両壁際と真ん中にシャワーが設けられているものだが、ここの銭湯は両壁際にしかシャワーが設置されておらずなかなか広々としている。
適当な位置に腰を下ろした霊夢は、蛇口を捻ってお湯を頭から浴びた。ここは銭湯、お湯は使い放題だ。髪を一通り濡らした後は、顔を軽く拭い、少し胸を反らして体にお湯を浴びる。少し熱めのお湯とシャワーの水圧が心地いい。
霊夢は湯船に浸かる前に先に体を洗うタイプだ。目の前の容器から洗髪剤を手に取り、軽く手のひらで延ばしたあと髪を洗い始める。
折角の銭湯だ、二回くらい洗ったってバチは当たらないだろう。
一度目は単に汚れを落とす程度にとどめ、頭のてっぺんから毛先まで一通り泡が行き渡ればすぐにシャワーで洗い流す。
「まりさーっ?」
不意に霊夢が大きな声で魔理沙を呼んだ。それくらいの声量がなければ反対側にいる魔理沙には声が届かないほどに、この銭湯は広かった。魔理沙がシャワー浴びていたらなおのこと聞こえづらいだろうし。
霊夢の声は魔理沙に届いた。「なんだー?」と今の霊夢と変わらない程度の声量で声が返って来る。
霊夢が上体を捻って魔理沙を確認すると、魔理沙も髪を洗っている最中だった。背中を丸くしてガシガシ洗っている。あれは二回と言わず三回くらい洗いそうな勢いだ。
「そっちー、石鹸ないー?」
「せっけんー?」
「あるー?」
「あるぜー?」
「よこしてー」
一旦頭から手を離した魔理沙は、何やら手元でゴソゴソし始めた。魔理沙との間に湯気のカーテンが広がる霊夢には、いまいちはっきりと何をしているのか視認できなかった。
やがて泡だらけの頭でこっちを振り向いた魔理沙は、片手に持っていた石鹸を霊夢目掛けて滑らせた。
「は?」
何をしたのか一瞬理解が追いつかず、霊夢はものすごい勢いで滑走してくる白い固形石鹸を呆然と眺めた。
どうやら、魔理沙は霊夢の所へ持ってくるのが面倒でスタイリッシュに横着をかましたらしい。まあ魔理沙が洗い場をペタペタ歩いて横断するよりは、確実に速いだろう、逆の場合でも然りだ。
魔理沙からのパスを違えず足の裏で優しく包み込むように受け止めた。
そのあとは特に何も無く、霊夢と魔理沙は黙々と体を洗った。魔理沙は久しぶりの風呂だったため、かなり念入りに洗い込んでいた。
そうして、熱い湯船に二人並んで肩まで浸かる。
「はあ〜、生き返るぜぇ」
「泳いだりしないの?」
「もう卒業したんだぜ」
「やってたんだ………」
霊夢は、チラと魔理沙を見た。一糸纏わぬ姿で、ぐでーっと壁に背を預けて体を伸ばしている。子供みたいなぺったんこな体つきはまるで凹凸がなく、けれど羨ましいほどに艶やで。
「は〜」
気分は極楽、だらけきった顔がそう言っていた、神社に来たときはおどおどしてたくせに、すっかりご機嫌らしい。それが霊夢にはなんだか憎たらしくて、ちょっと、ちょっかいを出してみたくなった。
「ねぇ、まりさぁ」
「わひゃぁっ!?」
急にしな垂れかかってきた霊夢に、魔理沙は風呂中に響き渡るほど大きな悲鳴を上げた。
むにゅり、と確信犯的に魔理沙の腕に自分の胸を押し付ける霊夢。
「ななななな、何やってんだぜ!?」
「私たち、もう長い付き合いよね……」
凭れるようにして魔理沙の頭に自分の頭を寄せた霊夢。胸を押し付けた魔理沙の腕に自分の腕を絡め、さらに体をぎゅっと密着させる。
「おま…………っ、逆上せたのか?」
「そろそろね?そういうのも、あっていいんじゃないかしら」
濡れそぼった金色の髪から覗くほんのりと朱色に上気した魔理沙の耳に、霊夢はギリギリ唇が触れるくらいの距離で、甘く、「ね、まりさ」と囁く。
「ひゃうんっ」
これはあくまでイタズラだ。ここいらで終わらせた方がいいだろう。「なーんてね」と言ってやるつもりだった霊夢だが、しかし、霊夢がその言葉を放つより早く、浴室の戸が開いた音が二人の耳に届いた。
「あなたたち、公共の場で何やってるのよ」
人形遣いアリス・マーガトロイドが、開いた浴室の戸口から冷めた目で二人を見ていた。


「奇遇ね」
「奇遇よ」
「奇遇だな」
三人して同じ単語を放つ。
今のポジショニングは長方形をした浴槽の、壁の三面にそれぞれ一人ずつ凭れて座った状態。なんとも言い難い緊張感が漂う距離感だ。
霊夢、魔理沙、アリス、一様にして腕を組んで思案顔。霊夢のイタズラ心が期せずして生んだ不幸だが、魔理沙にしたらいい迷惑だ。アリスはべらべらと何でもかんでも喋って言いふらすような性格ではない、けれど明らかな誤解を与えてしまったのだから。
「さて、どう釈明するのかしら?」
アリスは冷静を装っているが、その言葉尻には痛いほどトゲを感じる。おそらく、わざとだ。
別にこの三人の間柄に特別な関係があった訳ではない。アリスは、そういうことなら言ってくれたらよかったじゃない、と拗ねているのだ。敵対することはあれど、あくまでそれは遊びの中、私たちは長い付き合いなのだから、と。
「私は被害者なんだが」
「あら、逃げようと思えば逃げられたじゃない」
「霊夢、お前にそれを言う資格はないと思うぜ」
「私が悪いとでも?」
「100パーセントな!」
「九一(きゅういち)であんたにも責任あるわよ!」
「そこまで認めてるならもういいだろ!」
「はいはいそこまで!」
白熱しそうになる、というかもう火の点いている二人がバチバチと視線だけで火花を散らす間に、アリスは仲裁に入る。
この距離は、剣線(ソードライン)だ。万が一抜刀しても、相手に切っ先が届かないセーフティな距離感。まあ、弾幕という飛び道具が公認の幻想郷では意味をなさないだろうが、いくらなんでも人里の銭湯で弾幕ごっこなどするはずない。
「つーまーり!あなたたちの関係は、私の誤解って言いたいのよね?」
「その通りだ」
「その通りよ」
「はあ………。まあそれについては私も早計だったと思うけど、いくら人がいないからって、そういうことを公共の場で平然とするのは咎められて然るべきよ」
「だから、私は被害者だと言ってる」
「魔理沙がイジめたくなるような愛らしい見た目してるからいけないのよ」
「おまっ………!それが“咎められて然るべき”なんだよ!」
「私はあるがままに生きてるだけよ!」
二人のバカに板挟みにされるアリス。だんだんいらいらしていた、こんなガキのイタズラ現場を目撃してしまいあまつさえ変な誤解をした挙句疎外感を抱いてしまった自分と、やっぱり公共の場で大げんかする霊夢と魔理沙に。
「っもう!わかったからッ!!」
突然響いたアリスの大声に、キャンキャン言い合っていた霊夢と魔理沙は驚いて黙った。
「揉めたら勝負。それが幻想郷(ここ)のルールでしょう?」
その一言に、霊夢と魔理沙の目の色が変わった。
そう、弾幕士の目だ。


太陽も完全に沈み、いよいよ宵闇が辺りを支配する頃、幻想郷の人里にある銭湯ではこんな看板が女湯の方にだけ掛けられていた。
『少女決着中』。
どうやら空気を読んだ受付のおばさんが用意してくれたものらしい。
表の通りから見えるように大きな板に大きな字で書かれたその文字を、鈴仙・優曇華院・イナバは訝しげに眺めていた。
「まあ、なんとなく中に誰がいるのか想像つくけど……」
鈴仙は薬の訪問販売で人里を訪れていて、置き薬のストックについてあちこちを聞いて回ったり、新薬の宣伝活動をしたりして、今の時間までかかってしまっていた。
方々歩き回れば流石に汗もかく。じっとりとした首筋や蒸れた下着の中は不愉快極まりない。その分帰ってから入る風呂はたまらないのだが。
「どうしよ、帰る前に一(ひとっ)風呂(ぷろ)浴びてこうかな」
それぐらいの小銭は持ち合わせているし、まあ入れば間違いなく碌なことにならないだろうが怖いもの見たさもあった。人里の銭湯まで来ていったい何をしているのか、好奇心を擽られるのだ。
明日の仕事に支障を来すことさえなければ、師匠である八意永琳も黙認してくれるだろう。
鈴仙は銭湯の引き戸を開いた。
受付のおばさんに軽く挨拶をして脱衣所に向かう。戸口の看板は遠回しに『今は入るな』と言っていたのだが、鈴仙の顔を見てなるほどと納得したようすで快く通してくれた。
訪問販売で抱えていた荷物を棚に置く。それだけで一枠埋まってしまうが、他に客は来ない、鈴仙はもう一枠使わせてもらう。
服を脱いだ順から棚の籠に放り込んで、全て脱ぎ去った鈴仙は受付で貰ったタオルで体の前側を隠………すというより良心程度に局所を覆っているにすぎない。タオルがなす曲線は、鈴仙の体の特に胸元の豊満なラインを完璧に写し出してしまっている。むしろ“横”などはみ出しているほどだ。
そんなことは気にもせず、というか他に人がいないから気にする必要などなく、鈴仙は浴室の戸の前に立った。
「うるさ………」
戸を開けずとも浴室からはギャーギャーと騒ぐ声が聞こえてきていた。鈴仙は音の波長を読み、中の人数と誰がいるのかを察知する。
霊夢、魔理沙、アリス。
あの三人か。まあ霊夢と魔理沙がいるのは最初から分かっていた鈴仙だったのだが。
今更帰るつもりもない、服は全て脱いでしまっているのだ、この体は熱いお湯でさっぱりすることを望んでいる。
鈴仙は、浴室の戸を開けた。


突然開いた戸に、霊夢、魔理沙、アリスは三人して固まった。
呆れた顔をして入って来たのはうさ耳鈴仙だった。
「あんたたち、人里まで降りて来て何してるの………」
そこそこ大きくなった女の子が、三人、全裸で何をはしゃいでいるのか。
「奇遇ね」
「奇遇だな」
「奇遇よ」
「いやまそうかもだけど………」
見れば床は泡だらけ。どこから持ち出したのかデッキブラシを一本ずつ持つ三人も体のいろんなところに泡をつけている。
「一旦中断か?」
魔理沙がそう言った。何かの決着を付けようとしているのは看板が教えてくれていた、どうやらまだその決着は付いていないようだ。
「そうね。審判、一時休戦を申し出るわ」
「構わないわ。霊夢が5点、魔理沙が4点で、一時休戦」
いったい何の話か、割とぶっ飛んだ連中の多い幻想郷で、霊夢と魔理沙は群を抜いてぶっ飛んでいる、鈴仙の頭は追いつけなかった。
説明を求める目で鈴仙は、比較的まともな会話ができそうなアリスを見る。
「いきなり来といて何だけど、説明してくれる?」
「そうねぇ、私が知ってる範囲で言えば………」
かくかくしかじか。
「うん、思った通りの下らない理由だった」
当事者の霊夢と魔理沙を見ると、シャワーでお湯を頭から被っているところだった。
事情を把握した鈴仙は、とりあえず体を洗うことにした。シャワーを浴びる霊夢から三つほど離れたところに座る。
蛇口を捻って、待ち侘びた熱いお湯がやっと体にかかろうかというところで、横から思いっきり冷水をぶっ掛けられた、タライで。
いきなりずぶ濡れになった鈴仙は、髪から冷たい水滴を滴らせしばし無言。
やがてキレた様子で霊夢に怒鳴り散らした。
「いきなり水ぶっ掛けるとか、何考えてんの霊夢!?心臓止まるから!」
「宇宙人なんだし体は丈夫なんじゃないの?」
「それ偏見!」
「にしてもあんた、ずいぶん“美味しそうな”体してるわね。今夜はウサギ鍋かしら」
「ちょっ………!?やめてよ、オッサン!?」
思わず身を抱いて後退る鈴仙。霊夢の目はいやらしく笑っている。
「って、それでこの騒ぎなんでしょっ!自重しなさいよ色ボケ紅白巫女!」
「そぉんなメロンみたいな胸しといて、食べられたくないとか悪い冗談でしょ?」
「あんたが悪い冗談なんだけど!?」
全裸で手をワキワキさせて鈴仙ににじり寄る霊夢、全裸で胸を隠して後退る鈴仙。
二人を魔理沙とアリスは冷めた目で見ていた。
「あ、そうだ」
不意にノーマルに戻った霊夢は、ぽんと手のひらを打った。何か閃いたらしい。その内容が何にしても、鈴仙にはもはや嫌な予感しかしなかった。
「2対2でやりましょうよ」
「おお、いいじゃないか」
シャワーはもう十分なのか、蛇口を止めて椅子に胡座をかいていた魔理沙が霊夢に乗った。せめて股を閉じろと、鈴仙は言いたい。
「審判、構わないかしら」
「構わないわ。なら、私がチーム分けさせてもらうけれど」
「いいぜ」
アリスは霊夢、魔理沙、鈴仙を見た後、数回頷いてそのチームを発表をした。
「チームは、霊夢と鈴仙のペア、魔理沙と私のペアよ」
「断固抗議するっ!!」
「熱いわね、鈴仙」
「なんでこの変態巫女とペアなのよ!」
「それは………」
そこまで言いかけたアリスは一度顔を伏せた。「え、何……?」と不審がる鈴仙だが、次に顔を上げたアリスの表情に絶句した。
アリスは誰も見たことのないような凶悪な笑みで、こう告げる。
「霊×アリ?笑わせないで頂戴。作者の都合で、まり×アリよ!」
メタかった(霊×アリを否定する気は一切ありません)。


受付のおばちゃんに頼んでもう一本用意してもらったデッキブラシを鈴仙に持たせ、霊夢は、魔理沙とアリスと対峙していた。
銭湯の洗い場をコートに見立て、脱衣所側の壁が魔理沙とアリスの守るゴールであり浴槽の縁が霊夢と鈴仙の守るゴールとなる。
両チームの間を湯気が踊る。おそらく、全裸でなければもっとカッコがつく絵面だったと思われるが、四人の真剣そうな表情がただただシュールだ。
ペアは前衛と後衛に分かれ、ボールもとい石鹸を奪い合うオフェンスの前衛と、飛んで来る石鹸からゴールを守るディフェンスとキーパーを兼ねた後衛にそれぞれ一人ずつがつく。
「鈴仙、しっかり守りなさいよ」
ブラシを肩に担ぐ霊夢。今ならそのデッキブラシが新たなお祓い棒にすら見える。
「分かってるって……」
「失点許したら、今夜は帰さないわよ」
うさ耳を垂らして青ざめる鈴仙の反応を楽しんだ霊夢は、肩からデッキブラシを下ろしながら半回転、ブラシのブラシ部分を相手チームに突きつける。
「鈴仙も入ったからルールのおさらいね。制限時間は無限。そっちの洗い場の壁とこっちの浴槽の縁、相手側のゴールに石鹸を叩きつけたら1点。10点選手から半分に減らして5点先取した方の勝ち、得点はリセットして両チーム得点0から始める。手や足で石鹸を触るのは禁止、ただし手や足で直接石鹸に触らないなら能力の使用はおーけー。人への攻撃と弾幕は禁止。出来るだけこのブラシを使って石鹸を撃つこと」
「把握したぜ」
「分かったわ」
「ほんと下らないこと考えるわね……」
ホッケー選手のように霊夢がブラシを構えたのに倣って、魔理沙、鈴仙もまた構えを取る。アリスが洗い場のちょうど真ん中に石鹸を置き、後衛のポジションに着いてブラシを構えたのを確認して、霊夢。挑発的な視線で魔理沙に笑う。
「レディ…………?」
対する魔理沙はいつものように、不敵に歯を見せる。
「「 ゴゥッ!! 」」
浴場のタイルを蹴り、打ち出されたバネのように霊夢と魔理沙が飛び出す。最初に石鹸を得たのは、霊夢だ。魔理沙より長いリーチで石鹸を払う。
ボールは石鹸、コートは濡れたタイル。力加減を間違えれば確実に石鹸は明後日の方向へ飛んで行ってしまうが、霊夢がそれを違えることはなかった。
魔理沙の横をすり抜け、足裏でタイル上をスライドしながらブラシを軸にして石鹸の側面に回り込み、アタックポジションに着く。
「とぉおりゃああっ!!」
パッコーン!と振りかぶったデッキブラシで霊夢は鋭いアタックを撃ち出す。タイル上の水膜に乗り、勢いを落とすことなく石鹸は魔理沙たちの壁に迫る。
「アリス!」
「心配いらないわ!」
よほど変なことをしない限り石鹸は真っ直ぐに滑って行く。故に弾道は読みやすい。さらに霊夢のアタックフォームからも撃ち出される石鹸の角度、速度は読み取ることができる。人形師アリス・マーガトロイドはそれらの情報から石鹸の軌道を瞬時に計算し、霊夢のアタックと同時にその軌道上へ動いていた。
見事、アリスは霊夢のアタックを打ち返すことに成功する。
「させないっ!」
霊夢が咄嗟の判断でブラシを伸ばす。が、僅かに届かず虚しくブラシは空を切る。
「ナイスパス!」
そして石鹸は霊夢の後方で控えていた魔理沙へと繋がれる。
「鈴仙っ!」
「分かってるから!」
鈴仙が魔理沙のブロックに入ろうと動く。小柄な魔理沙からすれば体格差のある鈴仙は壁だ。しかし、魔理沙は臆することなく、寧ろ楽しげに笑って鈴仙に正面から突っ込む。
正面突破は不可能だ、魔理沙は鈴仙の左右どちらかに動いて彼女を躱す必要がある。魔理沙がどちらから抜けようとするか、鈴仙の視線が魔理沙の操るブラシの動きに注がれる。
右か左か。
魔理沙が選んだのは……………左だ!
鈴仙のブラシが魔理沙の下にある石鹸へと素早く伸びる。確実に石鹸を払えるコースだ、しかし、鈴仙のブラシが石鹸に触れることはなかった。
鈴仙の伸ばしたブラシが石鹸を弾く直前、石鹸は、“右”に動いた。
「えっ!?」
気付いたときに魔理沙も石鹸も、鈴仙の右手にいた。
フェイントだ。魔理沙は持ち前の手癖の悪さと器用さを活かし、巧みなブラシ捌きで左を選んだと見せかけて鈴仙を見事に嵌めたのだ。
それに気づいた鈴仙だったが、しかし、もう遅い。魔理沙がブラシを振りかぶりアタックを撃ち出すのに間に合うはずもなく。
石鹸は浴槽の縁にぶつかり、コーンといい音を立てた。
「ナイスディフェンス」
「ナイスゴール」
ハイタッチを交わす魔理沙とアリス。対して霊夢と鈴仙はギスギスしていた。
口だけは裂けんばかりに吊り上げて笑っている霊夢と、その霊夢の視線から必死で目を逸らす鈴仙。
「お持ち帰り?」
「まだ………まだあと4点あるし………」
「おーい、次行こうぜ霊夢」
その後も攻防が続き、魔理沙のチームに一歩リードを許した状態で両チーム点を伸ばしていた。
そして。
「よ………4対3」
流石の霊夢も若干焦りが見えた。もう後がない。
鈴仙は最初に1点取られて以降、よく防いでくれている。魔理沙が放ったアタックは計7回、セーブ率は悪くない。
そして霊夢は。霊夢が撃った回数は計9回。得点率は、三割弱だ。
アリスの守りが予想外に堅かったようだ。アタッカーのフォーミング観察からの軌道予測、それをすさまじい速さでしかも正確に行う。だが、逆に言えば、そんなアリスから霊夢は3点取ったのだ。
霊夢は再びブラシを構える。霊夢にはもうアリスのセーブを抜く手段が見えていた。
と、そこへ鈴仙が声をかける。
「ねえ、一つ聞きたいんだけど」
「何かしら」
「このゲーム、そもそもの目的は何なの?」
「あら、聞いてなかった?」
「聞いたけど、今見失いかけてる」
「そう、ならよく聞きなさい。一度しか言わないわ」
霊夢は一呼吸おき、肩で息をする。
そう、その目的を見失ってはならない。私は、今そのために戦っているのだ。
ギュッとデッキブラシの柄を握りしめ、いつにない真剣さを目に滾らせて、霊夢。
「九一(きゅういち)で魔理沙の愛らしい見た目に非があるかどうか、白黒つけることよッ!!」
これを聞いた鈴仙は、心底げんなりしたと言う。


すでに何度目かになる霊夢と魔理沙の合図により、再び勝負が始まった。タイルを蹴ってスプリングのごとく飛び出す二人。
魔理沙に石鹸を取らせてはならない、あのフェイントは危険だ。鈴仙は闘いの中で成長し、魔理沙のフェイントに高確率で対処できるようにはなった、しかしそれは100パーセントではない。
霊夢がブラシを伸ばす。やはりリーチの差だ、霊夢のブラシは魔理沙より先に石鹸を捉えた。そして掬うようにしてブラシの毛で石鹸を魔理沙から見て右側へと弾く。
「チッ!」
魔理沙が舌打ちをした。無理もない、魔理沙は右手でブラシを持っており、同じ右側に弾かれると対応が遅くなるのだ。
霊夢はタイルを蹴って石鹸が滑走した方向へと素早く対応する。魔理沙がカットないしブロックにこちらへ来るには、一度身を反転させる必要がある。撃つか、攻め込むか。アリスは接近戦に弱い、攻め込めば少なからず得点のチャンスはあるだろう。
霊夢が確実なアタックを撃てるポジションはつまりアリスに確実にアタックを防がれるポジションとイコール。アリスの分析は鋭く、フォーミングから既に石鹸の軌道を読まれてしまう。
しかしそれは、アリスに霊夢が“見えていたら”の話だ。攻め込むより確実な方法が一つある。
「鈴仙っ!」
「もうっ、無茶言わないでほしいんだけどっ!」
すぐに霊夢の考えが読めた魔理沙がまさかと鈴仙を見る。彼女の目は、紅く光っていた。そうして振り向いたときにはすでに、霊夢の姿は消えており、その足元の石鹸もまた視認できない。
鈴仙は波長を操作し、霊夢と石鹸の像を拡散させたのだ。
しかし、これは諸刃の剣だ。像を拡散させたということは、アタッカーの霊夢にも石鹸が見えていないのだから。インビジブルの効果は永続ではない、チャンスは一度。霊夢が撃ち損じたなら、この後は大きく不利になる。
それでも霊夢には、そこにある見えない石鹸を撃つ絶対的な自信があった。
「おおおおおおっ!!」
銭湯に、見えない霊夢の咆哮が響く。次いで、カーンという音がした。
魔理沙とアリスの視線が洗い場の床を走る。石鹸が滑走しているなら水飛沫が少なからず跳ぶはずだ。それを見つければ………!
「ごめん、限界っ」
鈴仙のインビジブルの効果が切れる。アタックを打ち終えた体勢の霊夢と、魔理沙チームの壁に物すごい勢いで迫る石鹸が姿を現した。石鹸とゴールまでの距離は、あと僅か。
「アリスっ!」
「くっ!」
咄嗟に反応するアリス。分析などない、ほとんど反射運動に近い動きで倒れ込むように体とデッキブラシを最大限伸ばす。
しかし、アリスのブラシが石鹸を捉えることはなかった。アリスの対応はむしろ十分に速かった方だろうが、霊夢の撃った石鹸はそれ以上に速度があった。そして石鹸は、アリスを抜けて壁にぶち当たる。


「4対4………、燃える展開ね」
鈴仙の所まで戻って来た霊夢はそう言った。鈴仙の活躍のおかげで点差は埋められたが、次の1点を取れなければその活躍も意味がない。珍しくその表情には余裕がなかった。
同じく鈴仙にも余裕がなかった。肩で息をしながら、近くのバスチェアに腰を下ろしている。戻って来た霊夢を見上げる目には疲労の色が滲んでいた。
「私、もう能力使えないんだけど………」
普段ならあれくらいのことで能力が使えなくなるほど疲労したりしないが、この尋常ならざる空気の中だ、鈴仙は変に緊張して無駄に体力を消耗してしまったのかもしれない。
「構わないわ。後は意地でなんとかするから」
「ここまで来て根性論………?」
「博麗の巫女を舐めないで頂戴。それに、これに勝てたらお持ち帰りは勘弁してあげる」
「貞操の危機………」
「燃えるでしょう?」
「わっ!ちょ、冷たっ!?」
霊夢は足で蛇口を捻って鈴仙の真上のシャワーから彼女に水を浴びせた。
「もうっ!ほんとに心臓止まるから!」
「いや、鳥肌立って起き上がるあんたの胸の先端がエロくてつい………」
鈴仙は全裸であったことを思い出し、咄嗟に胸を覆った。今でも十分貞操の危機である。


「決着といこうぜ?霊夢」
「そうね。あんたには自分の外見について自覚してもらいたいし」
洗い場の中央で睨み合う霊夢と魔理沙。身長差にして頭一つ分くらいだろうか、霊夢は魔理沙を見下ろし、魔理沙は霊夢を見上げていた。
「今回ばかりは勝たせてもらうぜ」
ぺったんこな胸を張り、フンと挑発的に鼻を鳴らす魔理沙。霊夢はそれを見ていもしない妹と遊んでるような感覚になった。顔がニヤけそうになるのを堪え、魔理沙が見せた威勢に応える。
「勝利は勝ち取るものよ。博麗の巫女博麗霊夢と、永遠亭の薬師八意永琳の一番弟子鈴仙・U(うどんげいん)・イナバが残りの全力を賭けて相手になるわ!」
口上を述べた霊夢は、魔理沙に背を向けスタートポジションへとゆっくり歩く。魔理沙もまた、霊夢に背を向け霊夢と線対称な位置へ歩いていく。
そして、位置につき同時に振り向いた二人の視線が、熱くぶつかる。
「レディ………?」

「「 ゴ ゥ ッ !! 」」

引き絞ったバネのように飛び出す霊夢と魔理沙。霊夢のしなやかさはさながら豹のようであり、魔理沙の俊敏さはさながら猫のようだ。
一対の狩人が獲物へと牙を伸ばす。
同じタイミングで繰り出されたデッキブラシ。この場合リーチにおいて優位な霊夢が先に石鹸に届くはず、しかし、魔理沙はもう学習済みだ。
「リーチがなきゃ補えばいいんだぜ!」
魔理沙の声が響く。魔理沙の伸ばしたブラシは、霊夢のブラシと同時に石鹸を捉えた。
そう、魔理沙はデッキブラシの柄の後端ギリギリを掴んでリーチ不足を補ったのだ。その作戦は成功し、霊夢に先に石鹸を取られることにはならなかった。
けれども。
「ふっ、くぅ………っ!」
「んんぅ……っ!」
二人の力は拮抗していた。
霊夢と魔理沙のデッキブラシは石鹸を挟み込むようにして左右から力を加え、しかもお互いに相殺し合っているのだ。
プルプルと腕が震え、しだいに筋力に限界が近づく霊夢。魔理沙にこれほど筋力があるとは思ってなかった、試したことなどないが単純な力勝負なら絶対に勝(まさ)っていると、霊夢はどこかで思っていた。いや、単に霊夢の筋力不足とも考えられるが。
腕どころか全身に力が入り同じく体中がプルプルしてくる霊夢と魔理沙。それを後衛の鈴仙、アリスが見守る。
膠着する最終戦、アリスはともかく鈴仙は己の貞操が割りと本気でかかっているためじれったくなってくる。
そして、ついに、決戦の場は動いた。
右にも左にも逃れることのできないエネルギーは、四人の想像を裏切る“上へ”と働いた。
「「 ッ!? 」」
霊夢と魔理沙のブラシから弾かれ、二人の間で宙へと跳ねる石鹸。二人のブラシがカンッ!とぶつかり、石鹸は洗い場を天高く舞い上がる。
いち早く反応したのは霊夢だ。天井付近まで跳んで落下してくる石鹸を、真上に高くジャンプして思いっきりヘディングする。手足の使用は禁止だが、その他なら触れても構わない、ルールの裏解釈だ。
霊夢にヘディングされた石鹸は魔理沙の頭上を越えてタイルに着地、そのままヘディングの惰性に乗って魔理沙チームの壁へと滑って行く。
そこへ、アリスがブラシを構えて回り込む。
「魔理沙、パス!」
カーンッ!と魔理沙へ鋭いパス。ブラシの毛でそれをそれを受け止めた魔理沙は、着地した霊夢の横をすり抜け鈴仙に迫る。
鈴仙との距離が縮まる中、魔理沙は迷っていた。フェイントにかけるか、だが、鈴仙はカットの精度を上げている。万が一下手をして鈴仙に石鹸を奪われてしまえば敗北が色濃くなるだろう。かと言って、魔理沙のアタックに霊夢ほどの鋭さはない。
後がないのは両チーム同じ、取るべき手段は。
魔理沙のデッキブラシが、天井に届けと言わんばかりに高く、高く掲げられる。
「マァスタァァアア、スパァァアアクッッ!!」
入れ。その全力の思いを込めて、魔理沙は必殺技の名を叫んだ。
カーンッ!という音と共に、撃ち出される石鹸。魔理沙は、アタックを撃った。
「本物同様、対処しやすい弾幕ね!」
たが、そんな技巧も何もないアタックを決めさせてやるほど、鈴仙は甘くない。滑走してくる石鹸の軌道上に素早く入り込み、容赦なく撃ち返す。
オーバーアクションでマスタースパークを撃ったことが祟った。魔理沙はパスカットに間に合わない、魔理沙の伸ばしたデッキブラシは空を切った。
「霊夢!」
「決めるわ!」
霊夢にチャンスが巡ってくる。
鈴仙からのパスを受け取った霊夢は、アリスへと攻め込む。アリスが接近戦に弱いのは知っている、サシの勝負になれば霊夢に分があるのだ。
「アリス、いくわよ!」
「くっ……!」
そしてアリス自身にも、その自覚があった。故に焦る。
どうする、どうしたらいい?アリスは思考を焦がす。このまま霊夢に攻め込まれれば、アリスは高確率でディフェンスを抜かされるだろう。
考えている間にも霊夢はどんどん近づいてくる。
魔理沙を見る。霊夢との距離はかなり空いている、絶対に間に合わない。
その後ろ、鈴仙を見る。敵チームだ、助けになる訳がない。
「………鈴仙?」
アリスは瞬時に、霊夢が鈴仙にちょっかいを出していた光景を思い出した。霊夢はどうやら鈴仙の豊満な胸に興味があったようだ、鈴仙がここに来たときもメロンだとか言って触ろうとしていたし、勝負の合間も水を掛けてその生理現象を楽しんでいた。
そして辿り着く、一つの“賭け”。おそらく、霊夢なら掛かるはずだ、あの色ボケ紅白巫女なら。
アリスは、一世一代の勝負に出る!

「 鈴 仙 が 乳 首 弄 っ て る !! 」

「えっ!!」
「えっ!?」
見事に、引っ掛かった。
嬉々として振り返る色ボケ紅白巫女と、出しにされた哀れなうさぎの声が重なった。
霊夢が鈴仙の方を振り向いたその隙に、アリスが横から石鹸を掻っ攫って、攻める。
「はっ!しまった、つい!」
「はぁぁあああっ!!」
霊夢のフォーミングを幾度も見てきたアリスは、それを完璧に再現してアタックを、撃つ!
威力まで再現されたアリスのアタックは、凄まじい勢いでタイルを滑走、鈴仙の守備するゴールへと迫る。
「なんっ………のぉッ!!」
ディフェンスにギリギリ間に合った鈴仙、体とデッキブラシを伸ばしアリスのアタックをなんとか撃ち返す。
だが、その先には。
「もらったぁぁああっ!!」
魔理沙だ。
鈴仙が撃ち返した石鹸を、今度こそ全力で放つ。
コーンッ!
気持ちのいい音を立てて、魔理沙の放った石鹸は浴槽の縁にぶち当たった。


かぽ〜ん。
そんな音が似合いそうなくらい、まったりとくつろいだ雰囲気の銭湯女湯。
客は少なく、浴室には四人の少女しかいなかった。
先ほどまで抗争を繰り広げていた霊夢、魔理沙、アリス、鈴仙。今は四人並んで湯船に身をほぐしていた。
「いやー、いい汗かいたぜ。身の潔白も証明できたし」
「結局、霊夢に100パーセント非があるということでいいのかしら?」
「そうね、決着も着いちゃったし」
「…………」
「どうした鈴仙、元気ないぜ?」
「今夜はうさぎ鍋確定ね」
「いやだぁぁぁあああっ!!師匠様ぉぉおおおっ!!」
「あ!こら待ちなさいっ」
突然湯船から飛び出した鈴仙。脱兎のごとく脱衣所へと走る鈴仙を、同じように湯船から飛び出して霊夢が追いかける。
「私らも出るとするか」
「そうね、逆上せてしまいそうだわ」
「そういや、何でアリスはここに寄ったんだ?」
「人形劇の帰りよ」
脱衣所で服を着て軽く髪を乾かした後、四人揃って銭湯を出た。受付のおばちゃんに挨拶をすると、暖かい笑みと冷えた牛乳をくれた。
月はすでに天高く昇っており、人里の通りを月光を吸い込んだ冷えた夜風が吹き抜けた。人間の姿は少なく、ちらほらと遊びか飲みにでも来た妖怪たちの姿が見受けられる。
「私たちはここでさよならするぜ」
「魔理沙。箒の後ろ、いいかしら」
魔法の森組である魔理沙とアリスに別れを告げる。二人の影が夜空に消えるのを見送って、霊夢は鈴仙を見た。
「さて」
「そそ、それじゃぁ、私もこの辺で………」
踵を返す鈴仙の襟首を霊夢が掴む。
「れれれ霊夢?!わたわたた私………っ、明日もししし仕事、あるからっ!」
「永琳には私が言っといてあげるわ。さあ、帰りましょう、鈴仙。ちょっとマニアックなプレイになっちゃうかもしれないけれど」
「マニアックっ!?」
霊夢にズルズルと引きずられながら、鈴仙はその単語を聞いて霊夢が片手に持つ牛乳瓶を見て青ざめる。
「いやだぁぁぁあああっ!!助けて師匠ぉぉぉおおおっ!!」
「あははははっ!」


その晩、博麗神社からは嬌声が絶えなかったと言う。
ありがとうございました。
ZINI
コメント




1.性欲を持て余す程度の能力削除
ネチョれよ
2.性欲を持て余す程度の能力削除
受付のおばちゃん、寛大だなあ…(そこかよ

純粋なギャグエロは久々に見た気がする