真・東方夜伽話

フリルのヒト形レイシズム

2016/06/20 01:52:53
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フリルのヒト形レイシズム

ぱ。

東方リアル催眠合同(https://unkaiichirin.booth.pm/items/271588)寄稿作品です。
興味をお持ちいただけましたら是非合同誌のほうも手に取ってくださいませ(DL販売中です!)
あとがき欄にリンクがあります。

「よ、よう霊夢。今日はどうしたんだこんな所で」
 うあ、霊夢。霊夢だ、霊夢。いかん、顔を見るな。見られてしまう、知られてしまう、私のこの気持ち。鍔広の帽子を深く被り、表情はできるだけ平静を装う。うん、大丈夫。私は大丈夫だ。いつも通りの、恋の魔法使い霧雨魔理沙だ。
 こういきなり出くわすと心の準備ができない。困る。
 
 ……よし、落ち着いた。
 
「どうしたって、私が神社に居るのに理由が必要なの?」
「ああ、それもそうだ」
「そして、あんたが大した理由もないのに現れるのも知ってる。一応聞くけど今日は何の用?」
 いつも通りの投げやりな口調と、澄ました顔。白い頬に、サラサラした黒髪が流れて、とても綺麗だ。神社の境内を抜ける風が、霊夢の背から私の方へと吹いて、ふわりといい匂いを運んでくる。その風はそのまま、鳥居を抜けて外へ出ていくのだろう。霊夢を通った風が、幻想郷を作っている、そんな幻想に囚われる。
「えっ、あ、いや……霊夢の顔を見たくて」
 って待て、私はいったい何を口走っているんだ。これじゃ隠している気持ちがバレバレじゃないか。そう、私は……霊夢のことが、好きだ。毎日夢に見て、胸に刺さった想いの棘を、かりかり、撫でて眠るんだ。
「あー? 何よそれ。まあ見てもいいし拝んでくれても構わないけど、ご利益は保証しないわよ。まあ、お賽銭次第では考えなくもないけど?」
 霊夢は庭掃きを続けつつ、呆れ半分にそんなことを言う。そうなんだ、こいつはいつもこうやって、私の気持ちを想像したりはしない。私が霊夢の顔を見たいと言ったところで、そういうこともあるか、で片付けてしまうんだろう。助かったけど、少し……寂しいな。
「そうだな、それじゃたっぷり拝ませてもらおうか。お賽銭はツケにしておいてくれ」
「いつまでよ」
「返すまでだな」
 でしょうね、と言って霊夢は本殿の方へと歩き出す。いつもの、ふわりと凛々しい霊夢も美しいが、地に足を付けた霊夢も、綺麗だ。
「掃除はもういいのか?」
「いいのよ」
 慌てて私も追いかける。土埃が舞い上がる。霊夢の時はそうならないのに、私が走るといかにも土臭い。……わかっている。私は霊夢のように綺麗ではないんだ。
「境内に出るのは参拝客を迎えるためよ。客があったのなら、もてなすのが当然でしょ」
「体のいい言い訳だぜ」
 つまり霊夢は、私のために時間を取ってくれるってことだ。いつもそう、いつもだけど嬉しい。いや、いつもだからもっと嬉しいんだな、これは。
「正当な理由と呼んでちょうだい」

 茶の間へ上がりこみ、勝手に座布団を出して座る。いつも来ているから、ここはいつもの私の席だ。霊夢は、台所へ茶を淹れに行っている。畳の匂いが気に入りの部屋だ。
 やがて、盆に二人分の茶を載せた霊夢が戻ってくる。茶菓子は私が勝手に出しておいた。
「まだ早いけど、ご飯は食べていくわよね?」
「分はあるのか? あるなら頂くが……」
「あら珍しい。魔理沙がそんなことに気を遣うなんて、明日は雨でも降るかしら」
「霧雨というやつだ。あれは本に良くなくてなあ」
「あらそう。じゃあ晴れは?」
「それも本に良くない」
「本に生まれなくて良かったわ。……と。はい、お茶」
「頂くぜ」

 ……お茶を飲みながら、つい霊夢のほうを見てしまう。いつから、こんなに気になるようになったんだったかな。
 落ち着いた佇まい、茶を飲む仕草一つでさえ、なんだか神聖なものに見えてくる。いや、そういえば実際に神聖なものなのだ、霊夢は巫女なんだから。
「どうしたの。そんなに心配しなくても、魔理沙の分のごはんはあるわよ」
「どうやったらそれを心配しているように見えるんだろうな。……って、なんでだ? 私が来るってわかっていたのか?」
「そんなわけないでしょう。と言っても、誰かしら良く来るし。最近、居候まがいがずいぶん増えたしねー」
「居候まがい、か」
「そ。良く飲む奴とか、見かけ通り小食な奴とかね」
 ちくり。あ、よくわからないけど、これ、嫌だ。
「いつも来るのか? 寝泊りも?」
「まあね、ちょくちょく。今日は珍しい方かな、だからたくさん食べてもいいわよ」
「ああ……」霊夢と同じ家で寝泊まりしている奴らがいる。人間でもないくせに。なんだよそれ、不公平じゃないか?
「あいつらは人間じゃないし、困ったらぶちのめすなり、いつでも言うこと聞かせられるからね」
「なんだそれ。人間はだめなのか?」
「私は妖怪退治を生業とする巫女よ? 人間にそんなことできるわけないじゃない」
 妖怪ならいいのか、とか、どこまでやるつもりなのか、とか……うん、聞きたくないな。

「霊夢ー、いるかしら?」
「あら? 出てくるわね」
「ああ」誰だ? 今の声は、ああ、あいつか。何しに来たんだ一体。

「はい、お邪魔するわね。あら魔理沙、奇遇ね」
「ああ、本当にな」霊夢が連れて来たのは、やっぱりアリスの奴だった。
「やっぱり、今日は珍しい方かな。まあ、三人分なら賄えるけどね」
 いったいどれだけ炊いているんだ、この巫女は。この神社の食物って、大半が里からの寄進物だろう?
「なあ霊夢、もしそれだけ用意しておいて誰も来なかったらどうなるんだ?」
「さー? 不思議と、私がご飯の用意を多めにした日に限って、誰かしら来るのよねえ」
「霊夢らしいわ」
「ああ、そうだな……」
 しかし、参ったな。アリスが来るなんて聞いてないぞ。霊夢と二人きりになれるチャンスを邪魔されること自体癪だが、それ以上にこいつはダメだ。何を言い出すかわかったもんじゃない。
「ところで、アリスは何か用事があって来たんじゃないの?」
「そ、そうだ。どうしたんだ? 珍しいじゃないか」
 そうだ、来るな。帰れ。うむ、早く帰るんだ。
「あら、用が無かったら来るなってこと?」
「そんなこと無いけどね、そこにも一人居るもの。ね、魔理沙」
 んあ?
「あ? あ、ああ、そうだな」
 いかんいかん。名前を呼んでこっちを振り向かれると、どきりとする。霊夢の可愛らしさときたら全く反則だ。天邪鬼もびっくりだ。
「ところでお昼は何を食べるの? 里で高菜のお浸しを貰ったんだけど、付けさせてもらっていいかしら」
「あら、いいわね」
「へえ、お前の芸もたまには役に立つんだな」
「そうね。滑稽に踊る人形は、いつの世でも好まれる娯楽よ?」
「趣味悪いぜ」
「趣味悪いわね」





 ――深夜。
 魔法の森は静まり返って暗く、虫の音すらも聞こえない時分。古ぼけたランプに魔法の光を灯し、ベッドの周りを軽く片付ける。やれやれ、今日はあまり捗らなかったな。昼過ぎまで神社で駄弁っていたのだから仕方ないというものだが。
 そう、アリス。あいつときたら私の邪魔をしに来たに違いない。せっかく霊夢と二人きりでゆっくり話ができると思ったのに、だ。あの魔女ときたら本当に性格がねじ曲がっているのだから始末が悪い。
 そして、私。霊夢のことがこんなに好きなのに、今日も結局こうして、いつもの時間、いつもの会話。いつもの……行為。
「アリス、いるか?」
 自分のベッドに入り、仰向けに転がって、どこへともなく話しかける。頼む、頼むから居てくれるなよ。私を私でいさせてくれよ。頼むから、またあんな、『いるわよ』「っ」
『ああ、もうそんな時間? しょうがないわね、可愛がってあげる。魔理沙』
「可愛がっ……て、って」
 私のベッドの、枕を挟んで両側に、アリスの作った人形が置かれている。これは地底に行った異変の時に使ったもので、私とアリスが離れていても会話を可能にするアイテムだ。つまり、私とアリスは今、森の中でそれぞれの屋敷、それぞれの自室にいて、その短いような長いような距離を挟んで、通話をしていることになる。
『言葉通りよ。可愛くて滑稽な人形を愛でてやるの。違うかしら?』
「ちが……」
『違うなら、さよならね』
 だめ!! 反射的にそう思って、「違わないっ……可愛がって……くれ」
 私の喉は弱々しく震えた。あまりの惨めさに笑えてくる。
『ふふ、じゃあそうね。可哀想だし、戻してあげる』
「戻……す?」
 何を? 私はもう何かされていたのか?
『ええ、魔理沙。あなたの心に絡まった、操りの糸を解いてあげる。私が三つ、三つ数を数えるわ。すると、昨日あなたに掛けた暗示が解ける。あなたの心は元通り、あなたの恋も元通りよ。ひとつ、ふたつ、みっつ、ほらっ』
 ぱちん。と音がした。
 ぱち、ぱち。今度は私の大げさな瞬きだ。
「はは……趣味悪いぜ」
『そう? 可愛かったわよ、霊夢に色目を使う魔理沙』
 やめてくれ、恥ずかしくて死にそうだ。
「しかし、不思議だな……あんなに好きになっていたのに」
 昼間の自分を思い返すと、確かに異常だった。霊夢のことが愛しくて仕方なかった。そんなはずないだろ、だって霊夢だぞ。第一女同士じゃないか……ん、あれ? 女同士……。
『可愛い魔理沙ちゃん。あなたが好きなのは、誰かしら?』
「……アリス、だ」
 すとんと腑に落ちる。
『そうね。あなたは本当は私のことが好き、そうだった。ちゃんと思い出せたわね?』
 そう、そうだった。私はアリスのことが大好きで。アリスの声はとっても気持ちがいいんだ。アリスの言うことは全部正しくて、私の頭はすぐぼーっとして、幸せになれるんだ。だから毎日こうして、アリスに可愛がってもらうんだ。
「アリス……好き」
『私も、だいすき』
「だいすき……」
 私の両耳に向けて、左右のアリスが私に声をくれる。人形のアリス。私の宝物だ。最初はレーザー出したり爆発したりするんじゃないかと不安だったけど。
『ええ、大好き。大好きな魔理沙。ほら、目を閉じなさい。目を閉じて、私の声をよぉーーーーーーく聞くの。大好きよね、大好きだから、聞いてしまうわ。そうでしょう』
「あ……」
 きもちいい……。背中がふにゃーっと溶けたみたいに、眠気と気持ちよさに溺れそう。
『私の声は銀の糸。さらさらで気持ちのいい、透き通って光る糸。キラキラとしたその糸が、あなたの両耳から入り込んでいく。ほら、するするー……っと入ってくるわ。入ってくると、耳の中がぞわぞわーーーーーっとして、頭の中がふわーーーーーっと気持ちよくなる。ふわふわで真っ白な綿。綿の詰まったぬいぐるみのように、ふわふわ、ふわふわ。ほら、ふ~わふわよね』
 あ、しろい。



 ――魔法の森、深夜。この静かな夜は私の好みね。
『ん……』
 この様子だと、今日も深く掛かっているみたい。まったく、魔理沙は素直なんだから。
「綿は何にも考えられない。ただふわふわ、ふわふわ。私に可愛がられて真っ白になるだけ。幸せ、気持ちいい、とっても幸せ」
『あ、あ……ふあ』
 もう何度目になるだろうか。遠隔通話を用いた催眠暗示で、魔理沙の心を盗むような行為。直接手を出すのは趣味ではないから、こうして離れたところから徐々に落としていくのだ。魔理沙にも私に弄ばれている自覚はあるはずだけど、気持ちよくなってしまうから、拒否できない。渋っているような顔をするくせに、本当は私にして欲しくて、して欲しくて、仕方がないんだわ。
「そのぬいぐるみの頭を、私の糸が通っていく。するする、するする。あっちかな? こっちかしら。頭の中を、あちこち通って、するする、するする、ぞくぞく、ぞくぞく。気持ちいいわね、すっごく気持ちいいの。気持ちいい、するする、ぞわぞわ……」
『ひ、あ、……は』
 さあ、今日も始めましょう。一度にはしない。毎日少しずつ覚え込ませて、私の言うことを聞くのを本当に当たり前にさせる。抜け出せない迷宮に自分から踏み込ませる。私は気づかれないように後をつけ、扉を閉めて閂をかける。それだけなのよね。
「首を通って……ほら、全身へ広がっていく。あなたが息を吸ったその隙に、空気に紛れて肺へ、そしてふわふわ、するする、両腕へ。銀の糸が筋肉の繊維に紛れ込み、隅々まで潜り込む。するするする……こすれて、ぞくぞく、気持ちいい。ぞくぞく、ぞわぞわ」
『んふ……ふああ……』
 本当に、簡単な子。いいのかしら、私なんかをこんなに素直に受け入れてしまって。目を閉じて夢想する。目の前に魔理沙の心があって、私はそれを捏ね回したり、壊したり、いつだって簡単にできる。食べてしまうことも。私はそんなに素直にはなれない。人形遣いは操る者、操られるのは真っ平ね。
「私の声は気持ちのいい銀の糸。私の糸は操りの言葉。あなたは私に操られる気持ちよさを、誰よりも良く知っているわよね。だから、もう手足は動かせない。動かそうとしても、気持ちのいい脱力感に溺れるだけよ。試してみましょうか、右足を上げようとしてごらん。かかとを浮かそうとしてみるの、ほら」
『う、あ……く』
 魔理沙はもう催眠に入っている、私が動かせないと言った以上、上がるわけがないのだ――そもそも、仰向けに寝てかかとを浮かせるなんて相当頑張らないとできないわけだから、催眠に入っていなくても普通は上がらない。言った通りになっている自覚、私に操られている自覚を与えるのには便利。本当のところがどうであれ、私の言う通りになってしまった事実は、彼女の心を縛るから。
「重い、重い、力を入れているはずなのに全く上がらない。筋肉がぷるぷる震えるばかりで、力を受け取ろうとしないわね。ほら、諦めちゃうと、くたりと落ちる。甘い快感に絡め捕られ、沈む。くたり」
『……ぁ、っ』
 緊張からの解放。気持ちいいのよね。魔理沙は今、右脚全体が甘い痺れに包まれて、意識もそちらに引っ張られているはず。さぞ幸せでしょう。
「ほら、左足はどう? 上げられるかしら。腰に力を入れて、上げようと力を込める。ほら、上がらない。上がらないわよね」
『く……ん』
 上がる訳がない。そもそもかかとを浮かすためには、脚全体に万遍なく力を入れる必要がある。付け根である腰部分だけに力を入れても、上がるものも上がらない。
「重くて、ぐったりして、上がらない。その力を抜いちゃえば気持ちいいわよ。ほら、抜ける、すーーーーーーーっと抜ける。くたーっと、落ちる、落ちる、沈む」
『……ん、ふ』
「次は右腕ね。そのぐったりして、ずーーーーーーーんと重たい右腕を、肩に力を入れて、がんばって持ち上げるの。ふふ、動かないでしょ。ほら、震えるばかりで上がらない」
『く、は……んっ』
「左腕もよ。ほぉら、ぐうううっと力を入れて頑張っても、全然反応しない。重い、重い、重い、ずーーーーんと重い。ほら、諦めて力を抜いてしまいましょうね。3、2、1、0。かくん」
『ぁ』
「糸の切れた人形のように、くたりと落ちる。無機質に横たわる。何もない、空っぽのあなたが、ただ、落ちる。落ちる。そこに、落ちている。静かに落ちているよね。穏やかで、気持ちいい。気持ちいい――」
 ……静かになった。落ちているって言葉は便利ね。進行と完了、二つの意味を同時に満たしてくれるもの。井戸の釣瓶のように、ひゅーっと落ちていると同時に、糸の切れた人形のように、そこに力なく落ちている。それは幸せなのでしょう。
「そう、あなたは可愛いお人形。私の糸に導かれるまま、滑稽に踊る人形よ。目を覚ましている間は、それに気づかずにいつも通り踊っていられる。だけど私があなたに〝ぷちん〟と言うと。あなたが私から、ぷちんと糸の切れる音を聞くと、あなたを吊って踊らせている糸が離れてしまうの。お人形は糸がないと動かないから、すとーーーーんと暗い所に落ちて、今のように何にもわからなくなってしまう。私が〝ぷちん〟と言うと、あなたはいつでも糸が切れて、落ちる」
 ――静かなまま。完全に催眠に入っている。どんな顔をしているんだろう? 虚ろに目を開いたまま? 穏やかに目を閉じている? 口はぽっかり開いてるの? よだれが光っているのかしら? ぞくぞく、ぞくぞく。見えないのが却って良い。魔理沙の可愛い顔が見えていたら、こんなに余裕を持ってはいられない。
「さあ、少し練習よ。お人形さんの腕に、私の糸がするすると巻き付いていく。私の言葉が手首を縛る。その先はずっとずっと上へ続いているわよね。あなたの両手首から、真上に糸が伸びている。私がこれをゆっくり引くと、あなたの両手は上へあがる。力の入らなかった両手が、するするすんなり上がってしまうの。ほら、三つ数えて引っ張ると、ゆっくり、するする、両手が上がるよね。ひとつ、ふたつ、みっつ、ほらっ。ぐぐぐぐ、きりきり、ぐーーーっと引かれて、ゆっくり上がる。ぎぎぎぎ、きりきり、上がり切ったら、ほぉら、〝ぷちん〟!」
 パチン、と指を鳴らしてやると、通話の向こう側からどさりと音がした。
「すとーーーーーんと落ちるよね……首からも力が抜けて、枕の上で横に、かくんと傾く。傾いているのが気持ちいい。何にもわからない。誰もいない。気持ちいい、穏やかで、すごく気持ちいい」
 こうして、落とされるのに慣らしてあげることで、どんどん落ちやすくなる。文字通り、これは練習。どんなに明晰に目覚めていても、すぐ真っ暗な催眠の中に落ちられるように。
「すごーーーーーく気持ちいい。私の声が、私の糸が、あなたの身体に巻き付いて、するする、するする、くすぐられる。とっても気持ちいいわね。その気持ちのいいところから、あなたは一度目を覚ます。気持ちいいから、起きるのは嫌かもしれないけど、大丈夫。あなたは、私の声に従うことで、またいつでもここに落ちてくることができるわ。私に従えばいつでもまた、くたーーーっと気持ちよく落ちることができる」
 そう、人形は人形遣いに逆らわない。だって私に操られるのが一番気持ちよくて、幸せなんですものね。
「さあ、私が三つ、また三つ数を数えて合図をすると、あなたの手足に付いた糸が、ぐっと引かれて力が籠る。あなたを動かすエネルギーが、私の糸から注がれる。私が三つ数えると、お人形さんは目を覚まして、意識を取り戻すことができるわ。ほら、ひとつ、ふたつ、みっつ、はいっ」
 ぱん。
『ふあっ』
「おはよう」
『あ、あ……ああ。おはよう』
 寝ぼけているみたいな声。魔理沙はこういうところも、可愛い。
「大丈夫? ちゃんと起きているかしら」
『ん、大丈夫だ。私はいつでも大丈夫だからな』
 はいはい。
「本当に? じゃあちょっと思い出せるかしら」
『思い出す?何を』
「さっきの気持ちいい感じを思い出しなさい」
 さあ。
『え、っうあ』
「ほら、とろーーーっと意識が蕩けてきちゃう」
 さあ。
『やめ……』
「ほら魔理沙。〝ぷちん〟」
 さあ、気持ちよくなっちゃいなさい。
『ぅあ』
「意識がすーーーーーーーっと穏やかになる。精神の水面が、ぞわぞわとさざめいて、ぞくぞく。ぞくぞく、気持ちよくなったら、静かに凪いでいくわ。とても気持ちよくて、幸せ」
 すう、すう。心地よさそうな寝息が聞こえる。寝入っているわけではなくて、深いリラックスに浸っているだけ。
「糸が外れて、打ち捨てられたお人形は、何にも考えていない。何もわからない。私の声がするするとあなたを通過する。じんわり気持ちいいけど、何を言っているかはちっともわからないわね。そう、わからないのが気持ちいい。とても気持ちいい。だから、わからないまま、私の声を受け入れていく」
 そう、魔理沙は私の言葉をを受け入れるしかない。だって、気持ちよくなりたいんだものね。可愛いお人形。
「あなたはまた、私が三つ数えて合図をしたら、糸を引かれて目を覚ますわ。でも、あなたには忘れていることがあったわね。本当はあなたは、今夜は異変解決に向かうところだった。どんな異変だったかしら。そう、私も、あの霊夢でさえも気が付いていない、とても大規模で致命的な異変。夜が明けるまでになんとかしないと、人間の里が大変なことになるのだったわね」
『う……ぅ』
 唸っているけど、目を覚ます気配はない。きっと、私が言った通りのことを〝思い出して〟いるんだわ。
「あなたは大事なことを思い出した。何としても今夜中に、この異変を解決しに行かなくてはいけない。だから目を覚ましたとき、焦って飛び起きる。上半身をがばっと起こし、汗だくで目を覚ます。早く行かなきゃいけないけれど、私の声は気持ちいいままだから、ベッドを離れることはできない。そう、あなたは私から離れることはできないまま。大事なことを思い出して、でも気持ちいいまま、目を覚ます。ほぉら、ひとつ、ふたつ、みっつ。はい」
 ぱんっ。
『うあっ! っあ、あ、あ』
「どうしたの魔理沙。ふふ、なんだか可愛いわね」
『違う! ああ、悪い。大事な用事を思い出した、今日はお開きだ』
「ええ? 魔理沙は私のこと、嫌いになったのかしら」
『そうじゃなくて……ああ、アリスも手伝ってくれ、実は』
「〝ぷちん〟」
『うあ』
「はい、落ちる。すごーく気持ちいいわね……ずーんと落ちる……抵抗すると、もっと気持ちいい、落ちちゃう、ふかーく、沈む……」
『あ。あ』
どさっ。
「気持ちいい……とーーーーーっても幸せで、気持ちいいわね……そう、大事なことがあった気がするけど、頭がぼんやりして、わからなくなって、だめなのに落ちる。だめなのに気持ちいい。だめだから、気持ちいいのよね……」
『ぅ……』
 これは本当に気持ちいいのだろう。必死に抵抗しようとして、でも、気持ちよさに負けて落ちてしまうのだから。ふふ、ちょっと羨ましいかも。
「ほら、起こしてあげる。大事な用事があるのだから、頑張って起きなくちゃね。ひとつ、ふたつ、みっつ、はい」
『うああああっ!』
 あらあら、頑張っちゃってまあ。
「気持ちよかった?」
『待て、待ってくれ。異変なんだ、気持ちいいのは待って』
「気持ちいいの嫌いかしら」
『そうじゃない……大変なんだよ、本当に。早く行かなきゃ』
「そんなのどうでもいいじゃない。私と気持ちいいことしましょう?」
 自分で言ってて思うけど、これ完全に馬鹿女の台詞だわ。
『早く行かないと……私がやらなきゃ、人間の里が』
「あら。じゃあやっぱり関係ないわね。人間なんてどうだっていいでしょう。ねえ魔理沙、ほら、頭がふわーーーーーっとしてくるわよね」
『やめっ、やめて、やめて、だめ、だめだから』
「じゃあ頑張って抵抗したら? 悪い魔女から逃げ出してみなさい。ほら、とろーーーっとして、きもーーーーちよく、落ちる――」
『だ、め』
「そう、だめよね。でも、〝ぷちん〟」
『あ』
「すーーーーーーーーっと落ちる。ぐるぐる、ぐるぐる、回りながら、真っ暗でどろーーーーっとした、気持ちのいいところに吸い込まれる。頑張っても、もがいても、ぬるぬる、どろどろ、這い上がれない。落ちる。諦めて落ちると、とっても気持ちいいわね。ほら、すーーーーーーーーっと、落ちる」
『ぁ……ふぁぁ……♥』
「気持ちいい……気持ちいい、そう、逆らわなければ、最高に幸せ……」
 あーあ、これが本当だったら人間の里はお仕舞いね。頼りない魔法使い様だこと。
「ふかーい、気持ちいいところで、あなたの心に沁み込んだ、私の暗示が抜けていくのを感じる。そう、すーーーーっと抜けて、何が入っていたのかも思い出せるわよね。そう、異変なんか起こっていなかった。大丈夫、魔理沙は気持ちよくなっても大丈夫だったの。ほら、安心すると、気持ちよーーーく、ふわふわ、幸せよね。そのまま、ちょっと幸せが抜けきらないままで、ふんわり目を覚ます。もう、数を数えなくてもいいわね。わたしが合図をすると、ぐっと身体を引っ張られて目を覚ます。ほら、魔理沙。起きなさい」
 ぱんっ。
『あ……ん。おはよぉ……』
「はい、おはよう」
 とろとろした声。
『アリスだぁ……♥』
「ふふ、気持ちよさそうね」
『あ……ああ、そうか』
 ぼんやりして、思考がまとまっていない様子。もう少し待ってあげることにする――まあ、まともな思考なんて、何度でも奪ってあげるつもりだけど。夜の彼女に知性なんかいらない、ただ可愛いお人形で居てくれればいい。小賢しい魔理沙は昼間にいくらでも楽しめるのだから。
『うん、思い出した……すごいな、アリスは。本当にめちゃくちゃ気持ちいいよ』
「それはどうも。ねえ魔理沙、あなたの寝室ってどんな風になっているんだっけ」
 こうして遠隔通話で催眠を掛けているとき、しくじらないコツは相手の状況をできる限り正確に把握しておくことだ。
『寝室? どうと言われても普通の寝室だぜ』
「あーっと、そうね。まずベッド……ベッドの縁に柵とか板とかはついている?」
『アリスは私を赤ん坊だと思っているんだな?』
 ああもう面倒くさい。ホントに魔理沙は正気にさせておくもんじゃないわね。今度部屋を見せてもらおうかしら?
「普通枕元にヘッドボードがあるじゃない」
『ああ、そりゃ確かにある』
「横にはないわよね。足のほうは?」
『横に板はないが右は壁だな。足下には何もないぜ』
 なるほど。
「わかったわ」
 それだけ分かれば充分ね。
「じゃあ魔理沙、ベッドの足側に腰掛けて座ることはできる? 毛布はどかしてもいいわ」
『ん……待ってな。あ、声遠くなっちゃうんじゃないか?』
 確かに。声を届ける人形は枕元に二体、身体を起こしたらどちらの声も届きにくいかもしれない。
「そうね。人形は片方ひざの上に抱いて座って」
『わかった』
 ごそ、ごそ、衣擦れにも似た音がしばらく響く。
『こうかな』
「座ってる?」
『ああ』
「そこからは何が見えるかしら」
 私も目を閉じる。魔理沙の状況を詳しくイメージしておくため。
『部屋のドアが見える』
「そう、そのまま見ていて」
『ああ……』
「ところで、さっき落ちた時は気持ちよかった?」
『ん、う……気持ちよかった……』
 あ、もうトロンとしてる。もう、可愛いんだから。
「どんな風に気持ちよかったの」
『だめなのに……からだ……力ぬけて……ぼーっとして』
「身体の力がくたーっと抜けちゃって、頭がぼぉーーーーーーっとしていたのね。それから……?」
『ふわふわーっとして、すーーーーっと落ちていくみたいで……きもちよかった』
「落ちちゃだめよ」
『あう。あ……あれ?』
 ぞくぞく。こうして気持ちよくなりたがっている子って本当に可愛いと思う。もっと深く、もっと気持ちよく、してあげたい。
「ぼぉーーーーっとしたまま、ドアを見つめていると、ふわふわしてくるけど、我慢するの」
『ん……』
「ドアノブのあたりをじーっと見つめていると、ゆら、ゆら、揺れているみたいね。ほら。ゆら、ゆら、左右に、ゆら、ゆら」
『あ、う、あ』
「揺れているのはドアじゃないの。あなたの両肩を、私が優しく掴んで揺すっているのよ。ほら、ゆーら、ゆら、ゆーら、ゆら」
『……あ、あ』
 もちろん実際に触れてなどいないけど、魔理沙は本当に私に揺すられているような気がしているはずだ。そして、きっと実際に揺れている。
「ゆら、ゆら。ほら、ぼーっとして、目が半開きになっている。何を見ていたのかよくわからなくなっている。頭の中は、絵の具を流したみたいに、どろーーーーーーーーっと溶けて、ぐにゃぐにゃに、気持ちよーーーーく歪んでいる」
『う、あ、あ』
「顎の力も抜けて、口もだらしなく半開き。とろーーーーーっとよだれが垂れるかもしれないけど、それは気持ちいい証だから、気にならないわ」
『ん……ぅう』
「ゆーら、ゆら。そう、気持ちいいわね。すごく気持ちいい。首からも力が抜けて、揺れるたびにかくん、かくん、もう視線も定まらない。落ちたい? 我慢しなさい。そう、我慢してれば、気持ちいいわよ」
 うめくような声も弱々しくなっていく。もう頭の中はドロドロでしょう。
「気持ちよさがどんどん強くなって、頭はどんどんドロドロになっていく。落ちたいね。背中をぐーーーっと引っ張られているみたい。でも、我慢して、我慢して、限界まで耐えるの。限界になったら、あなたを支えている糸が切れて、ぷつんと後ろに倒れるわ。あなたの背には柔らかいベッドがあるから、安心して一思いに倒れることができる。それはものすごく気持ちよくて、あなたはダメになっちゃうから、頑張って耐えるの。ほら、我慢」
『う、ああぁぁ、あぁああぁああ』
「ゆら、ゆら。気持ちいい、気持ちいい、かくん、かくん。揺れる、我慢する、強くなる、落ちたい、ふふふ。気持ちいい」
『あ、ぅあ、ぅ』
 こんな風になってしまうと、通話しているだけの私には魔理沙の様子がよくわからない。でも、大丈夫。ちゃんとわかる仕掛けになっているから。
「私の声が聞こえなくても、ゆらゆら、ゆらゆら」
『ぁ……ぁ』
「ふわふわ、とろとろ、気持ちいいままよね。限界まで、我慢する」
『ぅ……ぁ……』
 きっと魔理沙は、目は開いているのか閉じているのかよくわからなくて、口の端には涎がべっとり垂れて、首をかくんかくん揺らして、気持ちよすぎて頭の回転はすっかり鈍って、天国を彷徨っているのだ。見えていなくてもわかる。
『ぁ……』
 どさり、と大きな音がした。ほら、見えていなくても手に取るようにわかる。
「ふわっと受け止められたら、金魚すくいの網みたいに、柔らかいものがすっぽり破けて、ほら落ちる。すーーーーーーーっと落ちる。何もかも投げ出して落ちていく」
『……』
 最高に気持ちいいんでしょうね、これ。
「全身を横たえて、ドロドロした金色の蜜に浸っているみたい。どろどろで、甘くて、気持ちいい、女を蕩かす危険な蜜。こんなところに居たら、魔理沙はダメになっちゃうわね。早く起きないといけないわ。私がぱんと軽く手を叩くと、あなたは肩を強く揺さぶられて目を覚ます。私が肩を強く掴んで、一息に揺り起こすわ。ほら、魔理沙。起きて」
 ぱん。
『ひあ』
「ほら、魔理沙。ちゃんと起きて」
『え? あ、ああ……』
「我慢しなきゃだめじゃない。ほら、身体を起こして」
『え? ああ、わかった』
 んん、と力を入れたような声がする。身体を起こしたあたりで、「ぷちん」パチン、と指を鳴らす。
『ぁ』
 どさっ。
「落ちる、落ちる、頭の中ぐにゃっとして、わからなくなって落ちる。金色の蜜がばしゃんと跳ねて、どっぷり浸かる。気持ちいい……」
 この調子でもっと癖をつけてあげることにする。
「魔理沙はまた、私に肩を揺すられて目を覚ますけど、目を覚まして身体を起こすと、その瞬間、落ちたい気持ちが一気に膨れ上がって、立ちくらみみたいに一瞬で倒れて落ちてしまう。あなたは目を覚ましても、身体を起こした瞬間失神してしまうわ。ほら、魔理沙ってば。起きなさい」
 ぱんっ。
『ひっ、あ、あれ……またか……』
「ちゃんと我慢しなきゃダメでしょ」
『あ、ああ、悪い……んしょ……っぁ』
 どさり。
「ぐにゃって歪む。倒れる、沈む。気持ちいい、そう、気持ちいい……」
 可愛い。落ちる間際の声の幸せそうなこと。
「さあ、また目を覚ますわよ。どろどろの、気持ちいい蜜の中から、頭の中までべっとり甘いまま、あなたは目を覚ますことができる」
 そろそろ、もっと虐めてあげてもいい頃合いかしらね。ぞくぞく。さっきの、異変解決に行くつもりが気持ちよくなってしまう暗示の時もそうだったけど。やっぱり魔理沙は、虐めてあげたときが一番可愛いのだ。
「でも、あなたは私のお人形。あなたの身体は私の言う通りに動いてしまう。あなたの身体は私の言葉の糸で操られ、あなたの意思では止めることができない。さあ、糸を引いて起こしてあげる。魔理沙、起きて」
 ぱん。
『ん……あれ』
「ふふ、どうだった?」
『ああ、あー……すごかった、な』
 でしょうね。
『うん、ヤバいんじゃないかってくらい気持ちよかった気がするぜ……』
「それは何よりね」
 願わくば私も体験してみたいところではあるのだけどね。
「ねえ魔理沙」
『ん?』
「好きよ」
『あ、ああ。私も好きだ』
 面食らいながらもちゃんと応えてくれる魔理沙も可愛い。でも。
「嘘つき」
『え、なんで』
「霊夢のことばかり見てたくせに」
『はあ? だって、あれはアリスが……』
「ふーん、私のせいにするのね」
 私のせいだけどね。
『そう言われてもな』
 困っている。これは良くないわね。面倒臭そうな馬鹿女の振る舞いって、存外楽しいものだわ。
「そういうこと言う魔理沙は、嫌いよ」
『いや待て、それはおかしいんじゃないか』
「は?」
『あ、いや……』
 ふふ。
「お仕置きね」
『お仕置き……って、何だよそれ』
「魔理沙が誰のものなのか教えてあげる。魔理沙、あなたの身体を返しなさい。あなたはもう自分では身体を動かせない」
『あ? うわ、ちょっと待て』
「動かないわよね。だって、私が貸していただけだもの。そのお人形の本当の所有者は、私よ」
 理不尽極まるけど、良いの。魔理沙はこういうのが気持ちいいのだ。何度も可愛がってきたから、良く知っている。
「お人形さん。右手を高く挙げなさい」
『うあ』
「ほら上がる。糸で引かれて上がっていく。ぐーっと上がる」
『う、うう』
「さあ、お人形さん。お仕置きよ。布団を掛けているなら左手でどけなさい」
 特に反応はない。掛けていないようだ。あとは、前にエッチな暗示を入れたときに聞いたからわかっている。魔理沙は下着姿でベッドに入るから、太腿はむき出しになっている。
「その右手にぐっと力を籠めて、自分の太腿を思いっきり引っぱたきなさい」
『なっ!? うわ、やめ、やめてっ』
「止めてみたら? あなたの身体なんでしょう? ほら、叩くわよ。はいっ」
『いやっ、やだ、やだあっ!』
 バチン! ひぐっ、とくぐもった悲鳴。結構痛そうな音がした。
「自分の身体に裏切られるのはどんな気持ち?」
『やだ、痛い……怖い、アリス、怖い』
 あら、可愛いじゃない。
「でも気持ちいいのよね。私の言葉に従うと、お人形さんは気持ちよくなっちゃうの。言いつけどおり悪い子を引っぱたいて、私に褒めてもらうと、とっても幸せ。ほら、良い子ね、魔理沙」
『や、ちが……ふあ、ぁ♥』
「ほら、もう一回。さっきと同じところを、真っ赤になるまで、何度も叩きなさい」
『や、やだあ、やだ、や』「やりなさい」
 バチン!
『ひっ、が、あ』
「痛いわね、良い子ね……」
 バシィン!
『ひぃぁ、あ、はっ、はぁっ、はぁっ、はふぁ』
 あ、だいぶ感じて来ているわね。魔理沙はもともとがマゾヒストなのか、この手の痛みを与えるプレイを喜ぶ。
「ほら、もっと」
『はひっ』バチン。
『ひぎ、あ、あぐ』
「痛いわね……気持ちいいわね」
『きもちひ、い、いあ、痛い、きもちいいぃ』バチン。
『あぐぁ、はぁ、はぁ、はぁん♥』
 すっかりトロトロだけど、あまり痛いのが残っても良くないわよね。そろそろ助けてあげ『ひぎっ、ああっあ♥』ああもう、駄目だわこの子。
「魔理沙、あなた痛いのが気持ちいいのよね」
『きもちぃ、きもちひいぃぃ』
 バチン。叩く音がまた聞こえる。遅れて、聞くに堪えないだらしない悲鳴。
「ねえ、そういう人のことなんて言うのかしら」
『わか、わかんない、わかんにゃひ、っひぎ、ぁあぁ』
 バチィン。自分で自分を思いきり引っぱたく姿って、どういう感じでしょうね。ちょっと目の前で見てみたいわ。
「教えてあげる。マゾって言うの。変態の仲間よ」
『あ、あ、あはぁぁぁぁあ♥』
 嬉しそうにされても困るというもの。
「何喜んでいるのよ。マゾで変態の魔理沙」
『はひ、ごめんなさ、いっひいぃ♥』
 また叩く音がした。
「ほら、手を挙げて止める。その手に、とっても痛くて気持ちいいエネルギーが溜まっていくわ。ぷるぷる震えて、あなたを引っぱたきたくてうずうずしてる」
『あ、あ、あはぁ♥』
「その手に引っぱたかれたら、滅茶苦茶気持ちよくなって、頭の中ぶわぁーって真っ白になっちゃうの。とっても痛くて気持ちよくて、魔理沙、あなたはイってしまう。イって、真っ白になって、深い所に落ちてしまうわ」
『あ……』
 明らかに期待している声。この子はもう本当に駄目ね。
「私が数を下に、三つ数えてあげる。三から数えて、ゼロになったら、その手は振り下ろされる。私が三つ数えると、お人形さんはその最っ高に痛くてキモチいい手で、あなたの太腿を引っぱたくの。そうしたら真っ白になって、落ちる。ほら、三、二、一……ゼロ」
 ――バチィィン!! 『ぃぎッ!? ぁふ、ぁはぁぁあ…♥』
「落ちる。真っ白になって、ふわーーーっと浮いてから、くたーーーーーっと、楽になって、落ちる――」

 しばらく、痛みと快感で息が上がっている魔理沙を休ませる。次はどうしようか……そうね、ちょっと面白いことをしてみるとしましょう。私の方も大変だけど、まあ何とかなるでしょ。
「穏やかで……気持ちよくて……幸せね。そう、すごーーーーーく幸せ。頭の中は真っ白のまま、うっとり、心地よい催眠状態。とろとろ、ふわふわ、あらゆる快感が全身を包んでいる。手足がじわーーーーーっと温かいわね」
『ふぁ……』
 さて、やってみるとしましょうか。
「ふかーーい所で、あなたの中に何かが入ってくる。するするーーーっと、気持ちいい銀の糸。……いえ、それだけじゃないわね。私そのものが入っていく。あなたの中に、アリスが入っていく。ほら、あなたの良く知っている、大好きなアリス。いつもの服を着たアリス。ふわふわのフリルがついた服を着た、私が、あなたの中に入っていく――」
『ぁ……ぅ、あ』
 大丈夫かしら。
「そう、あなたはアリス。プライドが高くて性格の悪い、人形遣いのアリス・マーガトロイド。あなたは人間の友人である、霧雨魔理沙に魔法をかけ、その身体を乗っ取ってしまったの。だからそれは魔理沙の身体、魔理沙の家。その身体に入っているのは、あなた。アリス、あなたよ」
『ん……』
 あ、寝息からして少し、大人しくなった。そうよね、私は魔理沙みたいにあーとかうーとか下品な声出さないもの。
「あなたはアリス。そして私は……そう、魔理沙。あなたは魔理沙の身体を乗っ取る代わりに、魔理沙の魂は自分の身体に閉じ込めてしまったの。だから、私はアリスの身体に入った魔理沙。あなたは、魔理沙の身体をしたアリス。私たちは入れ替わっている。あなたは――」
 と、いけない。ここからは私も魔理沙を演じないと、辻褄が合わなくなる。
「ん、あ、ああ。お前はとっても意地悪なアリスだから、手に入れた魔理沙の身体でたくさん悪戯をしたいと思うよな。アリスは私のことが大好きで、スケベなことばかり考えている淫乱だから、私の身体を使って厭らしいことをたくさんしようとする」
 あーーーーーもう。自分で自分をボロクソ言うのって、遣る瀬無いわね本当。そして、魔理沙の喋り方は、難しい。疲れる。やめておけば良かったわ。
「あー……そう、アリスは私の身体をまじまじと見たり、触ったりして、それをとても魅力的に感じる。だってアリスは魔理沙が好きで好きでたまらないから。世界で一番魅力的なカラダで、理性が飛ぶくらい欲情して、思う存分オナニーをするんだ」
『んふ……』
「そう、アリス。お前は私の身体や、私の匂い、私を自由にできるという状況に発情する。アリスは性格が悪いから、私がやめろと言っても、煽るばかりで絶対にやめないし、それが気持ちよくて仕方ない。いつもオナニーばかりしている手慣れた指遣いで、夢にまで見た魔理沙の身体を、馬鹿になるくらいキモチよくさせるんだ」
 ……自分で言っていて嫌になるし、だいたい嘘ではないのが余計に嫌である。だってしょうがないじゃない、魔理沙を好きなのは本当なんだから。だから、魔理沙の口調だって、たぶんそこそこ上手く真似ができている。
「ほらアリス、お前は今の状況が理解できたら、自然に目を覚ますよな。そう、首尾よく私の身体を奪ったお前は、頭の中は悪巧みとスケベなことでいっぱいで、目を覚ます。自分がどうなっているか、理解できたら、ゆっくりと目を開けるんだ」
『んん……ん――』
 こういう複雑な暗示を入れたときは、急がせないほうがいい。きちんと心身が適応できたところで、自分から目を開けてもらうのがいいのよね。
『ん……あれ?』
 あ、起きた。私も魔理沙らしくしなくては。
「あ? ちょっと待て、何だこれ」
 我ながら白々しい。
『あ、うまく行ったわね。うふふふ』
 うわあ、魔理沙が変な喋り方してる。魔理沙のイメージの私はこんな感じなのね。
「待て、うまく行ったって何がだ」
『あ、私の声。そっちは魔理沙かしら?』
 へえ、うまく入るものね。さすがは魔理沙、頭の回転は本当に早いし、凄いと思う。
「あー? なんだよそれ、って、これアリスじゃないか」
『そうよ。魔理沙の身体は、私が借りてるから。その間、私の身体は貸してあげる。……傷つけちゃだめよ?』
 見事なアリスぶりである。こんなにうまく行くとは思わなかった。暗示でアリスになった魔理沙と、素面で魔理沙を演じている私なのだから、確かに私の方が不利か……って、不利って何?
「いやいや、なんでそんな悪趣味なこと」
『だって、魔理沙が可愛いからよ。ふふふ、魔理沙って本当に厭らしい格好で寝てるのね』
 あー。
「ばっ馬鹿、何だよ厭らしいって」
『普段はあんな風に男勝りなくせに、寝るときはドロワーズの上はベビードール一枚って、可愛いところあるじゃない』
 ……やばい、笑いそう。だって、これ、魔理沙が自分で言ってるのよ?
「やめろ、返せ、それは私の身体だ」
『いいえ、私のよ。うー、しかし失敗したわね。太腿がジンジン痛いわ……魔理沙、あなたよくこんな痛いのでああも感じられるわね、変態』
「ああああああ、やめろ、やめて、やめてって」
 ホントやめて。変態って。だから、笑いを堪える難度がルナティックなので、そういうの勘弁してくれないかしら。
『しかしこうして見ると、魔理沙って本当に胸ないのねえ。何だか哀れだわ……』
「大きなお世話だぜ」
 だぜ。初めて言ったわこんなこと。……しかしこれ、正気に戻したら、この子恥ずかしくて死ぬんじゃないかしら。
『私のおっぱい触っててもいいのよ? 今だけでも楽しんでおきなさいね』
 何このアリスって女。ナチュラルにムカつくんですけど、魔理沙は私を何だと思っているのか。
『うわあ。凄いわね魔理沙』
「今度は一体何をしてるんだ変態魔女」
『ふふ、今はあなたがその魔女よ』
 あ、はい。
『魔理沙ったら、濡れてるんだもの』
「うああああああ覚えてろよ。第一お前だって濡れてるじゃないか! 何だよこれ」
 魔理沙っぽく振る舞うために言ってみたけど、これ思いっきり墓穴掘ってる気がするわ。でも、しょうがないじゃない、だって……『だって、魔理沙が可愛かったんだもの』そう。あんな声聞いていたらゾクゾクするに決まっているでしょう。
ってあれ?
 ……ま、まあいいわ。
「あー。結局いつ戻してくれるんだ?」
『気が済んだらね。私はこのままでもいいけど』
「そりゃあいい。アリス自慢のおっぱいは私にくれるというわけだな」
 と返しながら思ったけど、魔理沙は多分、私の身体を欲しがるわよね。仮にも不死の魔法使いなのだから。彼女の性格上、言うことはないでしょうけど。
『それより魔理沙、この家、鏡ってないの?』
「あ? 鏡?」
 あ、しまった。私は魔理沙じゃないのでそんなこと知る訳ない。うーん、ここは……。
「どうせろくでもないことに使うんだろう。教えるもんか」こうね。うん、魔理沙っぽい。
『あっそ。じゃあ家探しさせてもらうわね。……うー、ねえ魔理沙。自分で探し物とか片付けとか、面倒じゃない?』
「どういうことだ?」
『いつもなら人形にさせているから、自分でこんなことしないのよ』
 あー。なるほど確かに、私は普段そんな感じである。魔理沙も大概、私のことを見すぎなのではないだろうか。完璧にアリスになり切っているわよね、これ。
『そういえば、前に遊びに行ったとき玄関にあったわね』
 ん、そうね。そういえばあった気がする。
「玄関って、ちょっと待て、勘弁してくれ」
 あの寝間着で玄関に出られるとすれば、こういう反応がいいわよね。
 がさごそ、ぱたぱた。物音や足音。
「おいアリス、私の家を荒らすのはよしてくれよ」
『ああー……やっぱり魔理沙は可愛いわね。ねえ、これキスしてもいい?』
 聞いちゃいない。私そこまで無茶する女じゃないわよ?
「キスって……まさか」
『そ、今玄関の大鏡の前にいるわ。魔理沙のカラダ、顔、本当に最高……♥』
 ちゅ、ちゅぷ。水音が聞こえる。何か私までつられて、魔理沙の気分になっていたけど、これ落ち着いて考えれば凄い状況よね。
『はふ……魔理沙ぁ……好き、好き』
 魔理沙が、アリスになったつもりで、半裸で玄関まで来て、おそらく鏡にへばりついて、うっとり目を潤ませて、鏡に映る自分の顔にキスをしている。
 ちゅぱ、ちゅぷ、ぢゅるる。
 そう、ちょうどこんな厭らしい水音をさせて。鏡に映る自分に欲情して。
『魔理沙のおっぱい……あ、ん、んんっ』
 ちょっとこの子何やってんの。
「おいアリス、何してる」
『ん……魔理沙の身体、気持ちよくさせてあげてるのよ』
 要するにオナニーしてるのね。
「念のため聞くが、今どこにいる?」
『魔理沙の家よ?』
「それはわかるが……まさかまだ玄関に居るんじゃないか?」
 まさかも何も、多分玄関でやってるんだろうけど。
『だってここにしか鏡がないんだもん……♥』
 だもん、じゃないわよ。私はそんなアホな喋り方しない。しないから。
「やめてくれ、誰か来たらどうするつもりなんだ」
『どうしようかしら……あ、んん、気持ちいいから、いいわよね。見てもらってもいいかも……♥』
 それは魔理沙自身の趣味でしょう。アリスのつもりで言わないでもらいたい、風評被害である。
「そっちがその気なら、私だってお前の身体で恥ずかしいことをしてやってもいいんだぞ」
 なんて言って牽制してみる。
『いいわよ。それで魔理沙が気持ちよくなるなら、私の身体いっぱい使ってちょうだい……でも、魔理沙の身体のほうが気持ちいい……♥』
 どうやら私は魔理沙に、手の付けられない痴女だと思われているようである。いや、確かにそういう暗示を入れたのだが。釈然としない。
「……そんなに私のこと好きなのか?」
『好きよ……ねえ魔理沙。私の身体でオナニーしてよ、一緒に気持ちよくなりましょ?』
 うわあ。なんだかすごいことになってきたわね。
「馬鹿言うなよ。アリスみたいな淫乱と一緒にするな」
 自分で言ってて悲しくなってくるのにも慣れてきた。
『あら。忘れたの? 今あなたはその淫乱の身体をしているのよ。私の身体は、魔理沙が気持ちよくなっている声を聞いたら、うずうずして我慢できなくなるんじゃないかしら』
「な、なんだよそれ」
『ねえ魔理沙……今、魔理沙の身体の、可愛いおっぱいを弄ってるの。乳首の先を、っくぅん……この下着、すごくエッチよね。レースとフリルでふわふわで、薄手の生地越しに擦ると、っひぃん、気持ちいいの、これ』
 ちょっと待って、これダメ。だって、魔理沙が今、鏡見ながら、エッチな下着越しに乳首を? え? うわ、だめ、駄目よこんなの。
「だめ、だめ……っ」
『だめ? そうよね、私の身体は、魔理沙の声でこんな気持ちよさそうにされたら、だめになっちゃうわ。ほら、頭の中がとろーーーーっと溶けて、腰の奥がうずうず、むずむず』
「っひ」
 待って、何で魔理沙が催眠掛けてくるの? あ、私になっているから?
『ほら、魔理沙。カラダが魔理沙を求めてるでしょ? 聞いて、私のエッチな声、これ、ホントに、気持ち、ぃ……♥』
「やめ、て……」
 やばい、やばいって、これ。
『うふふ……私の方が我慢できないみたい。ねえ、魔理沙って、エッチな身体してるのね……♥』
「さ、さっき胸ないとか言ってたくせに」
 私も魔理沙はエッチだと思うけど。
『鏡で見てると、むらむらして、おまんこなんてこんなに幼いのに、とろっとろに濡れて、指、入れるわね……っひ、ああぁ……♥』
 だから、魔理沙の中で私は一体どんな女なのよ。いくらなんでも痴女が過ぎるってもんじゃないの?
「や、やめて……私の身体を返してくれ……」
 何だか雰囲気に呑まれて、本当に魔理沙になった気分になってきた。
『あはぁ……魔理沙ってば、処女なんだ。それなのに、こんなに敏感なんて、本当に厭らしい……好き、好きよ……魔理沙……っ、あぁ、ん、ひぅ』
 なんでそんなに気持ちよさそうなのよ。どこ触ってるの? 乳首? クリ? 膣内……Gスポットのあたり? 全部?
「アリス、やめ、やめて、う、ううう」
 ずるい、羨ましい、あなたもアリスなんでしょう。なんであなただけ。私も魔理沙でしたい。気持ちいいことしたい。魔理沙と、魔理沙としたい。魔理沙とおなにーしたい。
『んひゅ、ふあぁ……魔理沙のおまんこ、すっごい、指にまとわりついて……♥』
 ずるい。ずるい。同じアリスなのに。ずるい。
「……は、ふ」
 むり。もう無理。する、するんだから。
『魔理沙のちくび……こんなに固くなって、厭らしい、あぁあ、なんでこんなに気持ちいいのよぉ……♥』
「くううう」
 上着を脱いで、ベッドの脇に放り捨てる。ふっくら柔らかい、レース飾りのブラジャーが目に入る。アリスのおっぱい。大きくって、柔らかそうで、いい匂いで……って違う。私はアリスだ。最初からアリスだ。駄目だもう、私まで混乱してきている。ブラも取って、もぞもぞ、下も脱ごうと試みる。
『魔理沙、好き、こんなに感じて……うふふ、可愛い、魔理沙の気持ちいい顔、可愛い……』
 うう、羨ましい。
「はぁ、ん、はあ、はあ、アリス、そんなに、私のこと、好きか?」
 私はアリス。でも魔理沙のつもりで喋る。本当は魔理沙じゃない。ちゃんと意識していないと、混ざりそうになる。
『好き、しゅき、好きよ。魔理沙、大好き。いっぱい虐めて。気持ちよくさせて、私のお人形にするの。だから、ほらあ、ここ、気持ちいいんでしょ……っきゅ、あ、あ、気持ちいいぃぃ……い、い、イく、イ、きそぉ』
 あああ、可愛い、そんな声出さないで、ぞくぞくして、ほら、私もオナニー、我慢、できないじゃない。
「っふ、あ、イ、イくの?」
『うん、魔理沙のカラダ、イかせちゃうの。キモチいい、もっとしてって、私にゾクゾク送ってくるのぉ』
 だめ、これだめ、エッチすぎる。こんなの、無理。とっくにドロドロになってるあそこに、指二本突っ込むの。
「ひ、ひ、っきゅ、イくの、イくの?」
 ぞぞぞぞっ、一気に気持ちよくなって、背中がそわそわ、浮つく。歯がカタカタ鳴る。ひキゅ、喉からヘンな感じに空気が漏れる。
『イく、イくの。魔理沙とイくんだもん……♥』
 だから、だもんとか言わないし。気持ちいいし。
「は、っひ、くふ」
 一番気持ちいい突起は指の付け根で、指先は奥までぐにゅって突き入れて、ガクガク震えながら、ぐちゅぐちゅ水音。やばいと思ったけど大丈夫、向こうからも聞こえてる。魔理沙とアリスが混ざって、ぐちゅ、ぐちゅ、わかんない。
『あ、あー……イ、って、る、イ、ひ、あふ、ぁ』
 う、あ、気持ちよさそう。私も。あ、来る、これ、だめ、イく。
「イ、ってるの? あ、、あ、アリス、イってるのね、イくのね」
 私も、イく、アリスがイくの。『えへ、えへへへ、魔理沙の身体、もっと、もっと感じて、もっとぐちゃぐちゃにするのぉ』
 ほら、くちゅくちゅくちゅくちゅ。
「あ、あ、あ」
 あ、私イってる。だめ、声、我慢。
「っ、ふ」
 ぶるぶるぶる、震える。
ぢゅぷぢゅぷ、ちゅぱ。いろいろ水音が聞こえる。これ魔理沙、また鏡とキスしてるわ。ずるい。
「う、あ……ね、ねえアリス」
 あ、だめだ。これ魔理沙っぽくない。
『なに? 魔理沙もしたい?』
 この子もアリスっぽくない。認めない。
「な、なあ。私のこと好きなんだったら」
『うん、好きよ。魔理沙、大好き……♥』
 う、あ、駄目。私は今、駄目なことを言おうとしてる。
「じゃあ、じゃあさ、私の身体で、アリスの名前呼ばせたらどうだ……?」
 ごくっ、と聞こえたのはどちらからだろうか。
『うふ、ふふ……素敵ねそれ。いいの、そんなことしても』
「し、知るもんか。どうせ、お前を満足させないと戻れないんだろう」
 あ、あー。我ながら白々しい。
『じゃあ、えっと……魔理沙の真似するとしたらこんな感じかしら』
 真似もモネもない。あんたはオリジナルの魔理沙でしょうが。
『……アリス、好きだぜ』
 あ。
「うあ」
 ぞくっ。ぞくぞく、ずくん。なんか来る。響く。
『あ、これ……気持ちいい。もっと言ってみるわね……アリス、可愛い。ほら、私も、っひ、気持ちいい、よ、うっあ、すご、すごい、これすごい、すき、すき、アリス、好きぃ』
「――っ、く」
 うつぶせになって、枕に噛み付いて、声を殺して、返事もできない。だって、こんなのは、気持ちよすぎる。
『アリス、アリス、ああ、アリス、好き、好き、っ、い、イく、もう、あああ、好き、魔理沙、好き、好き、すきぃ』「はぁっ、っく、はふ、はあっ」
 余裕がなくなったら、アリスに戻るのね。そう。魔理沙は今、アリスになっている。魔理沙が好きなアリス。私は最初からアリス。魔理沙が大好きなアリス。だから今、聞こえている魔理沙の声は、私たち両方を狂わせる。気持ちよくさせる。
 もう、私もオナニーがやめられなくなっている。もう二回も達したのに、隠していて声も出せないのに、両手で胸と股間を、いつものように弄っている。
『魔理沙の指、気持ちいいよお……♥』
 本当にずるい。私にはアリスの指しかないのに。
「アリスは変態だ……私の身体でオナニーして、鏡を見ながら気持ちよくなるんだろ」
『うん、うん、気持ちいいんだもん』
「変態、変態のアリス。スケベなことしか考えてないんだろ、アリスは」
 ぞくぞく。私の中で演じていた魔理沙が、アリスを罵る。
『変態でもいいもん……気持ちいいんだもん、魔理沙のゆび、こえ、魔理沙のおまんこ、ぜんぶ気持ちいいのぉ』
「アリスは変態だ……どうしようもない淫乱で、魔理沙とエッチすることしか考えてない変態、変態だ」
『あっ、ああああ、きもち、きもちいいぃ♥』
 ぞくぞくぞくっ。私が演じる魔理沙の言葉は、二人のアリスをどうしようもなく発情させる。だめ、これ、もうイく、我慢できない。
「っ、く、ほっ、ほらぁ、イけ、イけよ、変態、変態のアリス、魔理沙の指でイっちゃえよ……っ、あ、っく――」
『イく、イくの、あああ、魔理沙、魔理沙ぁ、すき、すき、すきぃぃ』
 そこは、私の名前を呼んで欲しかったな――なんて思いながら。私は魔理沙と一緒に、甘い声を張り上げる彼女と対照的に、息を殺して絶頂した。こんなに気持ちよくて、こんなに不満な自慰は、初めてだった。

『うあー……やっちゃったわ。魔理沙、ごめんね』
 え? あ、そっか。
「ん……」
 そう、私は今は魔理沙の役をしなきゃいけないんだ。
「やっと起きたか。ちゃんと片付けておいてくれよ」
 うん、こんな感じ。
『……ねえ魔理沙』
「何だよ」
『あんた、こっそり私の身体でしてたでしょ』
 うわ、バレてる。
「んなっ」
『聞き慣れた息遣いがずっと聞こえてたわ。私の身体が気持ちいい時の吐息。毎日自分で聞いてたしね』
 うるさい。毎日なんてしてないわ。魔理沙はホント私を何だと思っているんだ。
『嘘をついても無駄よ。どうせ元に戻ったら、弄ってたかどうかなんてわかるんだから』
「う、うう、だって」
 だって。だってしょうがないじゃない。
『だって気持ちいいんだもん♥ って?』
「違うわ!」
 言わないから!
『私の身体、気持ちよかった? 魔理沙、いつも私のおっぱい見てたもんね。気づいてるのよ?』
「んな……」
 気付かなかった。いつも見てたんだ、魔理沙。ふふ、可愛い。
「そういうアリスこそ、私の身体で酷いぜ」
 ぜ。この喋り方、ちょっと楽しいわね。
『ふふ、魔理沙の身体ってすっごく敏感なのね。こんなに気持ちよかったら、毎日オナニーしちゃうんじゃない?』
 ……それはつまりアレかしら。魔理沙は毎日オナニーしてたの?
「そ、そんなことよりそろそろ返してくれよ」
 そろそろ私も疲れたしね。
『はいはい、ベッドに帰ってきたわよ』
 あ、それは助かるわ。それなら……。
「そう、じゃあ……。〝ぷちん〟」
『え? あ』
「すーーーーーっと気持ちよくなって、ほら、ふわりと落ちる。怪我をしないようにベッドに、くてーーーーっと、吸い込まれて、落ちていく――」
『ん……ふ』
 ごそ、と身体を丸めたような音。大丈夫そうね。
「深い、ふかーーーーい催眠に落ちて、とっても気持ちいい。そう、とーーーーっても幸せなあなたは、魔理沙。霧雨魔理沙に戻っている。私たちは元通りになっている」
『んぅう……』
 あ、今の呻き声は魔理沙っぽかったわ。
「でも、あなたに入っていたアリスは、一つだけ悪戯をしていったわ。あなたの左腕に、小さな注射痕が残っている。そう、魔法使いである私は、あなたの家にある薬を調合して、あなたの身体に注射をしたの。ほら、得体の知れない液体が、身体の中を、どくん、どくん、回っている」
『うぁ、あ』
「それはとっても気持ちいいのよ。ほら、じわぁーーーーーーって、身体中に沁み込んでいく。気持ちいい……」
『んふ……ああ……』
 うっとりしてる。可愛いわ。
「その薬はあなたの分泌腺に作用して、あなたの体液を作り替えるの。あなたの、大事なところの潤滑液……そう、愛液。それがとっても甘くなる。美味しくなる。一口舐めれば虜になって、一心不乱に求めるような、麻薬めいた甘露になるわ。そして、あなた自身を誘う甘い芳香を漂わせる。毒花のように蠱惑的で、淫らな甘い香りがするでしょう」
『んんんぅ』
「あなたはまた私の合図で目を覚ます。しばらくは平気かもしれないけど、すぐに甘い匂いに誘われて、股間の蜜を舐めたくて、舐めたくて、仕方がなくなる。飢えと渇きが同時に襲い、あなたを狂わせ、そして口にすればあなたの頭は桃色に染まり、極上の甘露に酔うでしょう」
 ああ、こんな暗示入れたら、どうなっちゃうのかしら。魔理沙、どうなっちゃう?
「その味が引くと、あなたは更にそれを求め、強烈な飢えに支配される。もうそれを舐めることしか考えられなくなるの。他はすべてどうでもよくなるわ。ほら、魔理沙……起きなさい」
 ぱちん。
『んぁ、あ……あ、私だ』
 そうね、私も私だわ。
「おはよう。ふふ、魔理沙の身体、気持ちよかったわよ」
 話を合わせておく。
『うう、辱められたぜ……』
「そういう魔理沙だって、やっぱり私でしてたんじゃない。こんなにして」
『アリスの身体、柔らかいから……』
 何それ、太ってるってこと? どんな記憶になっているのかしらね。
「ともあれ、ちょっと休憩しましょうか」
『確かに、何だか身体の調子が変だ』
「あらあら、やりすぎちゃったかしら。股間とか拭いたほうがいいかもね」
『ん……そう、だな』
 ごそごそ、音がする。
『あ……っ』
「どうしたの?」
『え、いや……な、何でもない』
 あ、ごくっ。って聞こえた。美味しそうなものを前に生唾を呑む音。ふふ、どれだけ美味しそうに見えるのかしらね。
『アリス』
「なに」
『何かしただろ』
「さあ、知らないわ。何か変なの?」
『白々しいぜ……』
 言ってみればいいのよ、おまんこのお汁舐めたくてしょうがない、ってね。
「で、どうしたの」
『これ……あ、あああ、あああああ』
 ごそっ、ごそごそ。あら、思ったより我慢できなくなるの早いわね。
「何やってるのかわからないわ」
『うるさい、ん、ちゅ』
 あ、舐めた。
『ひい、ん、んん、んんん』
 じゅるる、じゅぷ、ぴちゅ、ぴちゅ、ぢゅぶぶ。下品な音をさせて、おそらく愛液を掬った指を舐めしゃぶっている。
「ねえ魔理沙、何してるの」
『おいしい……おいひいよお』
 数拍置いてまた、じゅるる、じゅるじゅる、水音がする。たぶんまた掬ってきたのかな。
「魔理沙、両手で交互にしたらいいと思うわよ」
『んんぶ、ん、んふ、甘いよお、えへへへ、おいしい』
 あ、馬鹿になってる。なるほど、麻薬感あるわ。
『足りないぃ、もっと、アリス、もっと、もっとちょうだい』
「もっと? 私はしてあげられないわよ」
『えへへへ……こうしたら、もっと出てくるかなあ』
 ぐちゅ、ぐぷ、遠い水音が聞こえる。完全に馬鹿になった頭で、乱暴なオナニー始めたみたい。じゅるじゅる啜る音も聞こえる。
「おいしい?」
『おいしい、おいしいよおぉ、あぶ、あむう』
 ……これ、見てるぶんには可愛いけど、手が出せないわね。
『はひ、んんん、んぶ、んあ、きもちいいぃ』
「おいしいし、気持ちいいの? それは幸せねぇ」
 呆れ半分。
『おいし、おいしい……幸せぇ……♥』
 可愛いし、しばらくこのまま放っておこうか。
「私ちょっとお茶を飲んでくるから、魔理沙はそのままその美味しいやつ、舐めてていいわよ」
『ほんと? えへへへ、アリスすき……♥』
 はいはい、私も好きよ。

 ふう、と一息つく。お茶とクッキーで一休み。深夜にやることじゃない気がするけどまあいいわ。今頃魔理沙はもっと幸せなおやつを楽しんでいるんでしょうし。
んー、さっきのオナニーで身体が汚れている。汗を流したい……けど、なんだか最近、湯を浴びる気になれないのよね。最後にお風呂に入ったの、何日前だっけ……まあ、いいか。人間ってわけでもないのだし、別に臭わないでしょう。
 時計に目をやると、もう一刻ほどで日が上るところ。少し、やりすぎたかしら。思えば、入れ替わる暗示は楽しかったわね。ちょっと疲れたけど。
「戻ろうかしら……」
 魔理沙、生きてるかな。

『えへ、えへへ』
 ぢゅぶ、ぢゅる、ぴちゅ、ちゅぶ。
 お変わりないようで。
「魔理沙、気持ちいい?」
『きもちいぃ……おいしいよおぉ』
 これは駄目ね。脳味噌溶けてるんじゃないかしら。気持ちいいのでしょうけど、そろそろ休ませてあげないと危ない感じかも。
「魔理沙、それすっごく美味しいけど、舐めていると頭がどんどん、馬鹿になっていくのよ」
『ええー、私馬鹿じゃないもん、だいじょうぶだもん、んんふ、おいしいぃ』
 馬鹿。
「ほら、頭がどろーーーーーーっと溶けていく。どこを見ているかもわからなくなる。目が上にぎょろっと回って、完全に白目を剥いて、ほら、頭の中も、ひっくり返って、ぐるん。落ちる――落ちる」
『あぐ、あ』
「ずーーーーーーーーんと落ちる――全部、全部、わからない。ぐるん」
『ぅ……ぁ』
 あ、これちょっと、気持ちよさそう。
「すごぉーーーーーく気持ちいい、魔理沙の大好きな、催眠の世界。とっても幸せ。私の声に操られるまま、ふわふわ、ゆらゆら、あちらこちらへ、踊る。それがとーーーーっても気持ちよくて……あなたにとって何より、幸せなことよね。うっとりと恍惚に浸り、身体を手放し、心を手放す。私に委ねると、ほら、幸せ――」
『ぁ……♥』
「あなたの飢えは、渇きは、もう癒されてすーーーっと楽になっている。あなたの愛液は、もう甘い香りはさせていない。だけど、身体に入った分は、もう吸収されている。あなたが舐めた甘いおつゆは、実は強力な媚薬なの。澄ました妖怪の賢者でも、すぐ色狂いの雌に変えてしまうほどの、逆らえない発情の薬。獣の繁殖に使うような、生殖本能をむき出しにするお薬。あなたはたっぷり舐めてしまったから、もう身体中に回っている。ほら、発情する。頭の中がふわーっと、セックスで塗り潰される」
『あぁああ……』
「でも、あなたが思い浮かべるのは女。人間の雌。あなたは男には欲情しない。女の白い肌にしか興味がない。だって、あなたの股間には、たくましいペニスが生えているから。あなたは女だけど、男性の性器を持っている。みんなに隠しているけれど、そう、あなたは所謂両性具有で、そのじくじく疼いたおちんちんを、女の膣内にうずめたくて、仕方ない。そうよね、ほら、うずうず、みちみち、固ぁく勃起するの」
『……はぁ……はぁ……』
 ああ、可愛い。
「あなたのおちんちんはとても敏感で、女の粘膜に包まれれば、すぐあなたを夢中にさせてしまう。どんなに嫌いな相手でも、情熱たっぷりに抱いてしまうわ。そのセックスは気持ちよすぎて、あなたの意思なんか無視されるの。そして、自分で触ってもちっとも満足できない。女、女、女の子が欲しいわね。ほら、欲情して、むらむらして、若い娘を抱きたくてしかたない」
『っく……はっ、は、っ、はぁぁ』
 切羽詰まった感じ。いいわねぇ、元服前のお坊ちゃんって感じよ。
「あなたは部屋のベッドにいるつもりだったけれど、実はそうじゃないの。あなたは夢の中にいる。私が作る甘い夢。それはあなたにとって、疑いようのない現実として広がる、精巧な幻想。私の作る夢の中。あなたはどこにいるのかしら……そう、人間の里。あなたは欲情を鎮めるために、人里を訪れた。誰にしようか。蕎麦屋の娘? 団子屋の娘? 懇意にしている、貸本屋の生意気なあの子? それとも、寺子屋通いの年端もゆかぬ小娘かしら――」
『ぅ……く、うあ』
「夜中に里を彷徨うあなたを、若い男が見つけたわ。声をかけてくる。ほら。嬢ちゃん、こんな時間にどうした、って。どこか厭らしい響きを込めて言いながら、あなたの肩を叩いて……あなたが発情していることは、すぐにバレちゃうわね」『つひ、ちが、ちがあ』
「なんだお前、痴女かよ。そんなこと言われて、胸をぐにゅっと揉まれる。男に興味はないのに、ぞわぞわって、気持ちよくなっちゃうわね」
『くひ、あぁあ』
「へへへ、こいつはいいや。なんて言われて、その男は背中越しに、あなたの股間に手をやって……それに触れる」
『うあ、っあ、これ、これはあ』
「どんっ。ほら、突き飛ばされる」
『ひっ』
「お前、男だったのかよ……いや、化け物か? 出て行け、化け物! なんて言われ、砂利を掴んで、投げられる」
『や、やだぁっ、違う、違う、違うのぉっ』
 ああ……魔理沙、可愛い。ぞくぞくしちゃうわ。
「あなたは偉い魔法使いだから、人間に手出しはできないのよね。泣きたくなるような屈辱と、気が狂いそうな欲情が、身も心も打ちのめす――でも、それがゾクゾクして、たまらない、気持ちいい、ほら、魔理沙は気持ちいいの」
『ふあぁ……やだぁ……やだよぉ……♥』
「そうしてドロドロになったあなたは、あなたを受け入れてくれる女を探して、夢の中を彷徨っている。ほら、とぼとぼ、とぼとぼ。腰の疼きはちっとも収まらない。女、女、女。女が欲しくてたまらない」
『ああ、あ、あ、あ……』
「あなたがたどり着いたのは、私の――」

 ちくり。

「――いえ。……神社。そう、神社よ。博麗神社。あなたはぼんやり彷徨って幻想郷の端、博麗の巫女の住まう寝所まで来てしまった」
『うあ……』
 危なかった。忘れてたわ。
「広い畳の間に、薄手の布団。その真ん中には寝息を立てている霊夢。白い寝間着を着て、すうすう眠っている。障子は閉じてあって、ぼんやりと月明かりを透かして、とっても綺麗ね」
 そう。今日も、最後はこの子を、霊夢のことが好きになるようにして終わるつもりなのよ。だから、これで合ってる。危なかったわ。下手をすると私の行いがばれるものね。
「ぼうっとしたまま、あなたはお人形さんに戻る。ほら、とろーーーーーーっと意識が濁る。あなたは私の人形。命令通りに動くのが幸せ。ほら、お人形さん。掛布団を丸めて、あなたの隣に横たえなさい。ほら」
『ん……』
 ごそごそ、がさごそ、しばらく物音がする。
 頃合いを見計らって。
「あなたは今、博麗神社の寝所にいる。霊夢の布団に忍び込んでいる。霊夢はまだ眠っているけど、あなたは彼女を見ると、もう欲情を抑えることはできないわ。あなたの意思も、霊夢の意思も関係なく、あなたはそのおちんちんで霊夢を犯す。それはとっても簡単なこと、あなたには女性器、おまんこもついていて、そこから垂れる愛液は……覚えているわね。何者でも淫らに変える、媚薬だから。あなたは眠っている霊夢の口に、自分の股間で湿らせた指を差し入れ、舐めさせる」
『はっ、はぁっ……はぁ』
「そう、あなたは自分の部屋ではなく、霊夢の布団の中にいる。目を開けると鮮明にその様子を見ることができる。そしてあなたは、霊夢を発情させ、自分の性欲のはけ口にするわ。でもそれは、あなたも霊夢も最高に気持ちよくて、快感に溺れ、互いに夢中にさせる。あなたが彼女の中を一突きするたび、あなたたちはお互いを愛するようになる」
 ふふ、せいぜい乱れてちょうだいね、魔理沙。
「私が三つ数えると、あなたは霊夢に覆い被さり、これから襲うところ。そう、あなたの隣にある重たいものは、寝間着姿で無防備に眠る、あの美しい巫女。、さあ魔理沙。あなたは、性欲が抑えきれない状態で、目を開ける。目を開けたらもう、あなたには霊夢しか見えない、私の声も聞こえない、認識することはできない。幻想の霊夢との交合に溺れるだけ。ほら、ひとつ、ふたつ、みっつ、はいっ」
 ぱん。
 
『はぁ……はぁ。霊夢……あ、うあ、だめだ、ごめん、霊夢、ごめん』
 くちゅ、ちゅぴ。
『口開けろよ……ほら、これ舐めれば……苦しくないから、霊夢も、気持ちよくなれるからさ……』
 自分勝手なこと言って。結局、女を抱きたい、それだけのくせに。私がそうしたとはいえ、醜いわ。
『脱がすからな……こんな脱がしやすい格好で寝てるお前が悪いんだからな……!』
 馬鹿じゃないの。きっと魔理沙は今、丸めた布団を相手に、ままごとみたいに服を脱がそうとしているんでしょうね。完全に私の操り人形。滑稽に踊るがいいわ。
『あ……あ、いや、これはな……すまん、霊夢。触るからな』
 あ、起きたのかしら。で、居直ってレイプしようとしているのね。魔理沙って、おちんちん生えたらこんな最低な奴なんだ。男のモノが生えたら、誰でもそうなのかしら。
『ふふ……気持ちいいだろ。腰が甘くて、エッチなことしか考えられないんだろ。わかってるよ、だって、私がそうなんだからな……っ』
 臨場感たっぷりと言うか……私にまで、困惑しつつ甘く鳴いている霊夢の姿が思い浮かぶ感じ。魔理沙ったら、嬉しそうにしちゃって。私にもしてくれればいいのに。
『ほら、もっと舐めろよ。霊夢、私に夢中になってくれ……私は、お前のことを……』くちゅ、くち、水音が聞こえる。
 ……。何だろう、この感情。
『ほら、見てくれよこれ……びっくりしたか? 霊夢、ふふ、なんだよ。そんな……物欲しそうに見たら……』
 おちんちん見せたのね。で、発情しきった霊夢がうっとり見上げていると。なるほど、わかるわ。ほんっと、都合のいい展開よね。私が手引きしたとはいえ。
『がっつくなよ……霊夢、ほら。まずは私の指でしてやる』
 ……さっきまであんなに余裕無かったくせに、女が見つかるとこうなのね。男ってやつは。いや、魔理沙は男じゃないけども。
『霊夢……ぐちょぐちょだな。ほら、指、入れるからな……ほら、ここ、くにくにしたら、気持ちいいだろ』
 うう、何よそれ。私も、したくなっちゃうじゃない。今の魔理沙には、私の声は聞こえないんだし。
『胸も……ああ、意外とあるんだな。羨ましい……ここ、くりくり、したら……ああ、そうだろ。私の指、気持ちいいよな……いいよ、このまま、イっちゃえ』
「……く、ん……魔理沙……」
 魔理沙が言っている通りに、片手で乳首、片手で……下を、くりくり、くちゅくちゅ。なんか、すごく惨め。でも、魔理沙の声を聞きながらすると、めちゃくちゃ気持ちいい。
『霊夢の声……可愛い。もっと聞かせて』
「っふあ、くうぅん」
 馬鹿、あんたが聞いてるのは私の声よ。霊夢なんか居ない、あんたが抱いているのは布団。そんなこともわからないくせに。一番あんたを好きなのは、私なのに。一番あんたで気持ちよくなれるのは、私、私。アリスなのよ。
『ああ……私も、我慢できないから、霊夢、しよう、な。うん。そう……交わるの。したいだろ、霊夢』
 したい。私もしたい。セックス、魔理沙と。したい。
「魔理沙、ぁ、魔理沙ぁ……して、してよぉ、私にして、私に、それ、ちょうだいよぉ……♥」
『霊夢……厭らしいな。巫女のくせに』
「ちがう、ちがうの、気持ちいいのは私なの、魔理沙、まりさ、まりさぁ」
 くちゅ、くちゅ、自慢の細くて長い指が、私の膣内を巧みに掻いていく。何年も続けているめちゃくちゃ巧いオナニー。我ながら、こんなに性技に長けているのは異常ってほどに。でも、ほんとに欲しいのはこれじゃなくて、魔理沙の。
『霊夢、入れる……ぜ。ほら、あ、うわ、あっ』
「ひぃ、っく、あ、ああっ、魔理沙、ま、魔理沙ぁ、だめ、だめ、ぇっ、イっ、く……ぅふぅぅん……♥」
 ずくん、と子宮まで響く深くて甘い快感。喉を鳴らして腰をへこへこ揺すり、思う存分甘い声を出して、イった。魔理沙には聞こえていても、認識できない声で。ざまあみろ。霊夢ばかり見てるから、こんなに可愛いイき声を聞き逃すのよ。ほんとは私が一番、魔理沙のこと好きなのに。
『れ、霊夢、ひっ、あ、だめ、きもち、きもちいぃ……っ、こ、こし、止まんない、あ、あ、あ、あぁぁっ♥』
 魔理沙なんかそうやって、布団相手にありもしないおちんちん突き入れて、あんあん言ってればいいのよ。
「ふふ、魔理沙、魔理沙すき、すき、すきよ、ほら、魔理沙で、おなにー、気持ちいいの、聞こえる? 聞こえないわよねぇ、ばーか、ばーか、魔理沙のばかぁああ」くちゅくちゅ、一回二回イったくらいじゃ、全然満足できない。魔理沙のエッチな声で、いっぱい、する。
『霊夢、あ、っ、すき、好き、好き、れいむ、れいむっ、出る、でる、っあ、あ、あ、あ、っくおぉぉあぁぁ』
 ぎし、ぎし、ベッドが軋む音が聞こえる。霊夢の中で射精してるつもりなんだろう。実際には、布団に腰を押し付けてるだけでしょうけど。
「魔理沙ぁ、すき、すきぃ、私に、私にちょうだい、まりさ、魔理沙の、せいし、ちょおだいよお……♥」
 あ、また、イく。ぞわぞわって、魔理沙の声で、イったまま、また次が、イく。あ、あ、あ、ああああ。
『れいむ、もっと、もっとしよ、もっとしよう、そう、セックス、えへ、えへへへ、好き。好きだぜ。私も、霊夢が好き』
「ばか、ばか、魔理沙のばかぁ、あ、イく……ぅうん♥」
『れいむ、っ、気持ちいい、うん、一番好き、霊夢が一番だ、好き、好きだ、好き……あ、また、出る……っ♥』
「すき、すきぃ、魔理沙好きっ、霊夢なんかより、ずっと、好き、好きなのぉ……♥」
 気持ちいい。ホント、気持ちいい。涙が出るくらい気持ちいい。ぼろぼろ、泣いて、これは、気持ちいい涙なので、悲しいわけじゃなくて。
『はぁ、はぁ、はぁ……霊夢……』
「きゅふ……ん、んんんぅ……あは、魔理沙ぁ……♥」
『霊夢……愛してる……うん、私も、大好き……』
「う、うぇ……うええぇええええ……ばか、ばかあ……」

 なんで、こんなこと、してるんだろう――。







 ――そして今日も、博麗神社にやってくる。

「お邪魔するわね」
「ん、入って」と、霊夢。
「お邪魔してるぜ」魔理沙もすでに来ている。
 今日の手土産は山菜の包み。今回は貰い物でなく、私が里で買ってきた。
「はい、これ。良かったら汁か浸しにでもしてちょうだい」
「へえ、アリスは本当に気が利くわね。誰かと違って」
「そうだな、今度肉でも持ってくるよ。虎の」
 魔理沙は今日も口が減らない。でも、霊夢に向ける視線は明らかに、恋するそれ。そりゃそうよね、私がそういう風にしたんだから。何でも私の思い通りになってしまう魔理沙は、本当に可愛いと思う。だって、あんなに霊夢をうっとり見上げている彼女、本当は私のことが好きなのよ。それって、ぞくぞくするじゃない。

「そうね、それじゃちょっと料理しようかな」
「霊夢は食べ物には誠実で勤勉だからな」
「そうね、じゃあ待たせてもらうわ」
 お茶をすすりながら、霊夢を見つめる魔理沙を眺めるのもいい。彼女のとびきり可愛い顔。
「うにゃ、アリス。せっかくだからあんたは、風呂に入っていきなさい」
「え?」
 風呂……って、やだ、臭うかしら。気が進まない。
「そうだな、何だか少しアリスの匂いが濃い気がするぜ」
 うう、そりゃ確かにしばらく入ってないけど。どうしてか、嫌なのよね。
「まあ、身体を拭いていくだけでもいいから」
「……そういうことなら」

 博麗神社の浴室は、離れにあって、魔理沙のいる茶の間からは距離がある。そこまで霊夢に案内され、道すがら。
「アリスは、お風呂は嫌いかしら」
「そういう訳じゃなかったんだけど……」
「そう。ま、そうよね。はい、鍵を開けたわ。ここが脱衣所よ。後はわかる?」
 ぽん、と風呂敷の包みを渡される。
「ええ……」
 うう、どうしてか、気が進まない。とにかく、中に入り、戸を閉める。……まあ、身体を拭くくらいなら。
 上着を脱いで、脱衣籠へ放り込む。ふわ、っと鼻をくすぐる、品の無い甘い香り。そりゃあそうよね。昨日あれだけオナニーして、それを誤魔化すために香水を使っているんだもの。自慢の可愛いレースのブラを外そうと、背中に手を回す。そこで。
「入るわよ」
 ガラガラ、と不躾に戸を開けて、霊夢が入ってきた。
「ふあっ!? ちょっと何?」
「いいから。アリス、聞きなさい。私の声はあんたの背中から、じんわり染み渡る、ほら」
 え……。
「う、あ……?」
「アリス。あんたの背中に貼った符を、私が剥がしてあげるからね。これが剥がれたら、あんたに憑けた式も剥がれる。そう、アリス、今までご苦労だったわね。あんたは元に戻れるわ。魔理沙への気持ちも、今までしていたことも、全部、式と一緒に剥がれるの。ほら、剥がすわよ。せーの」

 ぺり。





 ――茶の間。

「魔理沙、お茶のお代わりは?」
「ああ、もらう」
「ふふ、たんとおあがり。ねえ、私の淹れるお茶は、美味しい?」
「……変なこと聞くんだな。美味いよ。最高に美味しい」
「良かった。ねえ魔理沙。話があるの」
 一拍。
「……な、何を改まって」
「笑わないで聞いてくれるかしら」
「勿論だぜ」
「そう。ねえ魔理沙、私、あんたが好き」
 再び、一拍。
「……正気か?」
「正気よ。私、あんたともっと親密になりたいの。同じ人間として、並び立つ存在として。親密に、時には愛を交わしたい。おかしい?」
「いや……おかしくない。おかしくないし、私もだ」
「あら、魔理沙も?」
「ああ。霊夢、好きだ。ずっと好きだった……」
 二人の距離がぐいと、詰められる。霊夢の側から。

 ちゅ、ちゅぷ。ちゅる、ぴちゅ。小さな朱が交わり、睦み合う。互いの味を確かめ合う。蕩けるように甘く熱い、神酒の如き味わい。
「ふふ、素敵。ずっと、魔理沙とこうなりたかった」
「なあ……霊夢。私、ちょっと怖い」
「どうして?」
「霊夢のこと、好きすぎる。我ながら正気じゃない……今も、好きすぎて、震えが止まらない」
「いいことじゃない」
「霊夢、私に何かしたんじゃないのか。何か変なこと」
「……どうしてそう思うの?」
「霊夢は、すごい奴だよ。並び立つなんてとんでもない。お前がその気になれば何でもできるだろ? 本当に私のことを好きだっていうなら、私の方を変えてしまうくらい簡単なんじゃないのか?」
 面食らったような顔。そして破顔。
「あははは、何よそれ」
「な、何だよ。霊夢だって笑わないで聞けって言ったくせに」
「ふふ、そうね。悪かったわ。……魔理沙、心配いらないわよ。私はあんたと同じだから」
「同じ?」
「そう。私は、霊夢である前に、博麗の巫女だもの。言わなかったかしら? 私は、人間に不正な手出しは絶対にしない、できないわ。魔理沙もそうでしょう?」
 ――。
「……確かにな。そうか、私も人間の側か」
「そうよ。そのおかげで、ずいぶんな回り道だったわ」
 苦笑。
「なんだよ。人間じゃなかったら実力行使してたのか?」
「そりゃあね。でも、人間にはしないわ。魔理沙、あなたにもよ。ね?」
「そう、だな。そう……か」

 ぱた、ぱた、湿った足音。
「お、アリスかな」
「そうみたいね」
「ただいま。久々の長湯、堪能させてもらったわ」
「お? 何だかんだ言ってさっぱりしたんだな」
「良かったわ。水嫌いは克服した?」
「――ええ。どうしてだったのかしらね」
「さあ、解らないわね。妖怪のことは」
「そうね、私も人間のことはときどき、分からないわ。あなた達は特にね」
「ところで霊夢、料理の方はいいのか」
「いけない、忘れてた。アリスごめんね、もう少し待てる?」

「ん……いや、帰るわ。お邪魔みたいだし」
「あ? 何よそれー」
「……別にそんなことは、なあ」

 ぽろり。

「帰るの。またね、魔理沙。――霊夢も」
「そう。またね」
「おい……?」


 ――。

「なあ霊夢」
 ちゅぷ、くちゅ。
「なあに、魔理沙。あ、そこ……続けて」
「アリスのやつ、泣いてなかったか」
「――そう? 髪が濡れてたし、わからないわ。第一、妖怪の涙なんて、聞いたことないわよ」
「そうか、それもそうだ。なあ霊夢」

 くちゅ、くち。
「んふ……なぁに」
「愛してる」
「うん、私もよ、魔理沙」




       フリルのヒト形レイシズム  了。 
普段から催眠をかけている人間が普段通りの催眠SSを書いてみた次第。

東方リアル催眠合同(https://unkaiichirin.booth.pm/items/271588)寄稿作品です。

宣伝がてら公開させていただく運びとなりました。
わたしの作品以外にもリアルな催眠描写を含む小説・漫画がたくさん掲載されていますよ~。
興味をお持ちいただけましたら是非合同誌のほうも手に取ってくださいませ(DL販売中です!)
ぱ。
コメント




1.性欲を持て余す程度の能力削除
ぬわー、ずっこい、もったいない。これ読み上げソフト使っても成りきれなきゃ催眠かかれないやだー!
催眠されたくなっちゃうもん書いちゃうなんて卑怯だわ、これ。
それはさておき読み物としてとても楽しめました、アリスエロい魔理沙エロカワイイ。
>茶菓子は私が勝手に出しておいた。これ最高に魔理沙だ。ほんとこういうところ巧くて好きです。
妖しく笑ってるアリスとかとろけた目で倒れ込む魔理沙とかすっごい目に浮かぶし演技してて馬鹿女だわって突っ込み入れちゃう場面とか楽しすぎでしょう。一気に読ませてくる力はさすが、です。いやたまらん面白かったしエロかった。特にアリスのオナニーとか。終始オナニーしかしてませんが。
ラストはまさかのどんでん返しで「おー」となりました。まさか霊夢がと思う反面、最後のタイトルで刺してくるんですもん、ほんと卑怯だわ氏は。
ひとつひとつ語り出したら長くなり過ぎてしまうので、誤字か脱字の報告にて終わりたいと思います。

>「分はあるのか? あるなら頂くが……」→脱字が迷いましたが分「は」でしたので、「霊夢・おまえ・自分の分は」のいずれかでしょうか。違ったらごめんなさい
>そう、魔理沙は私の言葉をを受け入れるしかない。→そう、魔理沙は私の言葉を受け入れるしかない。
「私が三つ数えると、あなたは霊夢に覆い被さり、これから襲うところ。そう、あなたの隣にある重たいものは、寝間着姿で無防備に眠る、あの美しい巫女。、さあ魔理沙。(ry)→前後の流れで迷ったと見受けします、読点の消し忘れ、でしょうか。

私が見つけられたのは以上です。誤字脱字でなく衍字でしたごめんなさい、あと報告最初の分は違ったらほんとごめんなさい汗

最後にもう一度、とても楽しめました、ありがとうございます。また氏の作品に出会えることを願っております。(催眠なら音声関係がいいので縁があればかかりたいですねw)
では長々と失礼しました
はー、エロかった!
2.性欲を持て余す程度の能力削除
背徳感が素晴らしい。とても面白かったです
3.性欲を持て余す程度の能力削除
最初から霊夢がなんか怪しいとおもってたんですが、アリマリが面白くて途中で忘れたww

最後のどんでん返し、響きました。また縁があれば、是非。

ありがとうございました!