真・東方夜伽話

宇佐見菫子と夢の魂

2015/10/21 00:47:18
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宇佐見菫子と夢の魂

えるす

初投稿です。
エロシーンだけ読みたい方は、2・4の部分のみお読み頂ければ大丈夫です。
捏造設定有り。



 こんな夢を見た。
 教室の窓から、塔が屹立している景色だった。
 心臓のように赤黒く脈動するその塔を前にして、宇佐見菫子は致命的なまでに冷静だった。

(ああ。これは、夢の中なのね)
 冷静がゆえ、その答えを弾き出す。

 ――しかし菫子の足元で仰向けに寝転がっている男の方は、彼女ほど冷静ではない。
 冷静ではないがゆえ、その答えは導けない。
 外には男根のメタファーたる塔が無数に立ち並ぶ景色が広がっており、空には雲の変わりに大量のアワビが浮いている。(実の所浮いているというのは言い過ぎで、実際は殻から空気を噴出し滑空しているのだが。男には知る由もない)
 そんな景色を見て、すっかり男は混乱していたのだ。

「ねえ、あなた」

 菫子は机の上に行儀悪く腰掛けると、スカートの中のパンダがプリントされた子供っぽい下着が見えてしまうのも気にせず、男へ声をかけた。
 ぼうっと、口をあんぐりと開きながら外を眺めていた男。やがて声に気が付くと、視線を異界のように変貌した外から、すぐ傍の女子高生へと向ける。

「そこのあなた。ちょっと私と――セックス、しましょ」
 聞き間違いだと思った。言うに事欠いてこの異常状況を前に。初対面である自分を相手に、セックス。
「ねえ。しましょうよ。セックス」
 ここは夢の中なのだと、ようやく男の方も気が付いた。



 壁ドン。
 尤も教室の壁際に追い詰められているのは菫子ではなく、先程まで寝転んでいた男の方であるのだが。
「集合的無意識、って知ってる?」
 間近。端正な顔をした少女が、間近にいるのだ。
 吐息がかかる程近い距離でそう問いかけた菫子に対し、男は答えることが出来なかった。というか、物を考えることが出来なかった。
「知るわけないか。あなたみたいな、その辺の人が」
 侮蔑するような視線。
 男にとってはそれすらも、眼前の少女が自分と会話をしている証として受け止められた。
「要するに今、繋がっているのよ。私の夢と、あなたの夢は。――この醜悪な世界は、あなたが望んだ夢でしょう?」

 菫子は胡散臭い文字の描かれたマントを翻しながら、外の景色を指差す。
 男は慌てて首を振るも、鼻で笑われてしまう。

「自分の無意識が望んだことすら理解出来ていないのね? まあいいわ。郷に入れば郷に従え、私も貴方の夢に――従うことにしたから」
 ジジ、と音が鳴り響く。
 それが男のジーンズのチャックを下ろす音だと気が付いた時には、既に甘勃起している股間が下着の中から露にされていた。
「やっぱり、興奮してる」
 菫子は胸板にぴたりと柔らかな身体を寄せると、悪戯気な笑みを浮かべる。その白い指先には、男のペニスが握られていた。
「ねえ。あなた。――世界一素敵な夢を、見せてあげる」

3 
「ねえ、メリー」
 幾度となく繰り返された問い。
 宇佐見蓮子はカフェのテーブルに頬杖を突きながら、眼前の相方へ声を掛けた。
「なあに、蓮子」
 客の少ないこのカフェテラスは、彼女ら秘封倶楽部の部室とも呼べる場所である。
 メリーと呼ばれた金髪の女は、パインサラダを小皿に取り分けながら答えた。
「私思ったのだけど。メリーの見る夢って――本当に、夢なのかしら?」
「……どういうこと?」
「だってさ。夢って普通は、夢で終わるものじゃない」
 メリーは取り分けていたサラダを、机の上に落としてしまう。
「普通じゃない、って。そう言いたいの?」
「そうね。でも、普通じゃないのは大歓迎。99%の努力をしたって、1%の普通じゃない才能がないと無意味だもの」
 メリーは安堵したように息を吐くと、取り落としたサラダを紙ナプキンの上に乗せる。
 非日常を楽しむ為には、ある程度の日常が必要なのだ。秘封倶楽部としての活動は、彼女にとって非日常であり日常でもあった。
「そうね。いくらプランク並の天才だって、授業の遅刻を繰り返していれば単位を落とすハメになるわ」
「大学はプランクに厳しい」
「じゃあプランクトンにでもなる? 研究する側から、される側に」
「私達の目は、きっとプランクトンよりは価値のある研究材料でしょうね」

 軽口を叩き合う。
 目を見つめ合うと、思わず頬の綻ぶ二人。
「それで? 確かに私の夢は、普通じゃないわ。それがどうかしたの?」
「私、思ったの。――メリーが見ているのが、夢じゃないとしたら?」
「夢じゃない? って言うことは……現実だって言うの?」
「かもしれない。だって、夢の中から物を持ち帰ったり、普通ではないでしょう?」
「それは認めざるを得ないわね。でも、それなら私が見るはずだった夢は、どこへ行ってしまったのかしら」
「それよ。メリーが見ているのは、夢じゃない。だけど、あらゆる人間は夢を見れるように出来ている」
 蓮子はメリーに向け人差し指を突き出すと、そう言った。
 得意げに自説を披露する時、決まって彼女はこのポーズを取るのだ。
「私は夢を視ていない。夢の代わりに、何かを視ている……」
 再びパインサラダを摘みながら、頭の中で整理するように、繰り返すメリー。
「メリー、メリー」
「なあに、蓮子」
「寝ましょ? 私と一緒に、体を重ねて」
 メリーは再びパインサラダを、取り落とした。

4

「――ねえ。貴方のここ、もう大きくなってるわよ?」
 ぐに、ぐに、ぐに。
 菫子は一定のリズムに合わせ、楽器でも演奏するかのように男のペニスを指で挟み込む。
 牡のシンボルは弄ばれるうち大きさを増していき、先端からは透明な先走りを垂らし始めた。
「男の人なのに、女の子にイジメられて抵抗出来ないんだ。セックスって馬鹿のする遊びだと思ってたけど。意外と面白いじゃない」 
 白い手袋越しに裏筋を人差し指で撫で上げ、鈴口を突付く。漏れ出た先走りで汚れた手袋をゆっくり離すと、男の唇へと触れさせた。
「ね。舐めて。そしたら、もっと好くしてあげる」
 男は抵抗出来ない。
 眼鏡の奥に鋭く光る菫子の瞳に、魅入られたように舌を伸ばす。自身の先走りで汚れた手袋に唾液を塗し始めてしまう。
「あは♡ ほんとに舐めちゃった。自分のおちんちんの味、美味しい?」
 ちゅぷ、れる。ちゅるぅ……っ。
 男は一心不乱に指を舐め、懇願するように腰を突き出している。
「分かってるって。それじゃ、もっとイじめてあげる」
 菫子は一度瞼を閉じると――にへ、と。愉悦に満ちた笑みで、口角を釣り上げた。
 瞬間、男のペニスに衝撃が走る。
 触れられていなかったはずのそこに、突如膣で包み込まれるような快楽が襲い掛かったのだ。堪らず甘い声を漏らす男。
「どう? 超能力で作った、テレキネシスおまんこ。……って。その顔見れば、訊くまでもないか」
 自分のペニスが、虚空でびくっびくっ♡ と跳ね回るのが見える。

 ぐにっ、ぐにぃっ♡ しゅこっ、しゅこっ♡ ずりゅぅ……♡
 念力の膣は柔らかに包み込んだかと思えば、根本から全体を揉み込むように圧迫する。激しくピストンするように扱き立てたかと思えば、緩慢に撫で擦りながら甘く絡み付く。
 女性器やオナホールであれば一つか二つしか有しない膣の機能を、念力は毎秒ごとに変化して飽きぬ刺激でペニスを苛む。

「口が止まってるわよ?」
 菫子は悶える男を嘲るように笑いながら、手袋を脱ぎ捨てる。
 快楽のあまり半開きで甘い声を漏らし続ける口内に、白く細い指先を挿入した。
「ほら。舐めて?」
 膣の刺激が、先端を虐めるような動作へと変わる。
 竿は暖かく包み込んだまま動かず、敏感な亀頭を指で撫でるような刺激に切り替わったのだ。
 イきそうでイけない刺激に男は腰を揺らすも、念力の膣は張り付いたように竿を扱くことはなく、先走りだけを掬い取るように動き続ける。

「イきたいんでしょ。イきたいわよね? じゃあ。態度で示さなきゃ。ね?」
 すっかり芽生えた嗜虐心を隠すこともなく、口内に含ませた指先で舌を摘まんだ。

 あむ……っ、れるぅ。じゅぽっじゅぽっ♡
 首を動かしながら、指先に奉仕するようにフェラチオを行う男。舌は爪と指の間に唾液を塗りたくりながら、唇で包むように揉んでいく。

「あは。可愛いわよ? ご褒美、あげるね」
 ぐぽっ♡ ぐぽっ♡ じゅぞぞぞぞっ♡
 亀頭への刺激で敏感になったペニスを、音を立てながら膣が扱いていく。イボイボが竿を揉み込むように刺激しながら、尿道からバキュームするように吸引が始まる。
 
「見ててあげるね。可愛いところ」
 菫子はポケットからスマホを取り出すと、カメラを起動した。
 激しすぎる人外の快楽に耐えられず、恍惚とした表情で指を舐めしゃぶる男。
「処女の女子高生に犯されて。おちんぽ触られてもいないのにイっちゃうんだ……。写真撮られてるのに無様なアヘ顔晒してイっちゃうんだ……」
 高まる官能、ピストンを増す偽物の膣。吸い出す刺激、嗜虐的な笑みを浮かべる菫子。
 男の声が、女のように甲高く上擦る。

「――いいよ。おちんぽ、びゅーって。して?」

 ――どぷっ、どぴゅるるるるっ♡ びくっびくっ、ぷしゃぁぁ……っ♡♡
 その言葉がスイッチになり、菫子へ向け白濁を撒き散らす。
 射精中も刺激は緩むことなく、まるで掃除機で吸引するかのようにゼリー状の濃厚な精液を吐き出していった。
 カメラのシャッター音を鳴らしながら、嘲る菫子。
「あはははは! ホントにイっちゃった! ばっかみたーいっ♡」
 勢いよく飛んだ精液は菫子まで届き、その体を汚す――かと思われたが。
 見えない壁に阻まれるように空中て止まってしまった。

「こんな汚いもの、かけられたら堪らないわ? 男の人って、こんなに面白い玩具だったのね!」
 菫子は夢の中の教室で、悦びが芽生えるのを感じた。

5

「ねえ、メリー」
「なあに、蓮子」
「一つのベッドで二人は、流石に狭かったんじゃない?」
「いいじゃない。私、ソファで眠るなんて嫌よ?」
「私は床でも良かったんだけど」
「だーめ。それに、こうしていた方が、同じ夢を見られるかもしれないでしょ?」
「まあ。それは、そうだけど」
 メリーと蓮子はベッドの上で身を寄せ合うと、手をしっかりと繋いでいた。
「別に一緒に眠るだけなんだから。このくらい普通でしょ。それとも、何かやましいことでもあるのかしら?」
「何よ、やましいことって」
「……もう、馬鹿蓮子」
 ――そう。宇佐見蓮子に、やましい気持ちなど一切なかった。
 彼女はただ、マエリベリー・ハーンの夢に入り込もうとしたのだ。
「メリー、メリー。夢を探しましょう。無くしてしまった、本当の夢を」
「作られた偽物、幻想ではない。人間としての私が持っていた、本当の夢」
「そう。メリーだって、よく視ているのとは違う夢があるはず。それを、夢の中で探すの」
「それに何か意味があるの?」
「あるわ。夢を、現に変える為。秘封倶楽部として、夢を解明することは必要不可欠なの」
「ふうん」
 蓮子の言ったその理由は、嘘だった。
 実の所、最近のメリーは夢に傾倒し過ぎている。現実を見れていない。
 メリーの悪夢を覚ましてやる為には、まず今の夢を変えてしまう必要があると考えたのだった。

「でも、蓮子。私、分からないわ」
「分からない? 何が」
「――失われた夢は、何処へ行ってしまったのかしら」

 メリーは不安げに、蓮子の手を強く握った。
 指を絡め、握り返される指。体温は、暖かかった。

6

≪――失われた夢は、何処へ行くと思う?≫
 それは、校内放送だった。
「……!?」
 夢の中の教室。そのスピーカーから響く、女の声。
 ねっとりと、心の奥底まで絡み付くようなその声。菫子は声の主に聞き覚えはなかったが、それでも妙な不安を感じた。

「なに、これ。これもあなたの夢の一部?」
 男に問いかけるも、首を横に振る。
≪無駄よ?≫
 再び響く女の声。それはまるで、脳に直接響いているかのよう。
「無駄って、何がよ!」
 反発するように声を荒げる菫子。
 無様に射精する男を見ることで得た悦びは、すっかりどこかへ行ってしまっていた。
「――わかっているのでしょう」
 三度目の女の声は、スピーカーからではなく菫子の背後から聞こえた。
 慌てて振り返ると、窓の辺りに境界の裂け目が出現し――そこから、金髪の女が顔を出した。

「誰よ、あなた」
「私? 八雲紫と申しますわ。お見知り置きを」
 不吉。
 その女は、全身に不吉を孕んでいた。あれは“好くない”ものだ。菫子は、直感的にそれを感じた。
「ねえ。この女の人、貴方の知り合い?」
 横目でちらりと男へ視線を移すと、そう問いかけた。が。
「ねえ。あなた。先ほどから、誰と話しているのです?」
「誰って。何? この男の人に決まってるでしょ」

「そんな所に。男の人間なんて、居ませんよ? ――最初から」

 ばさ、と。
 紫が扇子を開く音。
 気が付くと男は、教室から居なくなっていた。

7

 マエリベリー・ハーンと、宇佐見蓮子。二人は、人の気配がない教室の中に佇んでいた。
「……ここは、何処?」
「夢の中、かしら」
 メリーは手をぎゅっと蓮子の手を握り、不安げな声を漏らす。
 それも当然だ。一見するとそこは普通の教室だが、窓の外にはまるで性器を模したような歪な風景が広がっていたからである。
「でも、メリー。おかしいわ」
「おかしいって?」
「ここは私の夢じゃなければ、貴方の夢の中でもない。だってほら」
 黒板を指差す。
「あら、ほんと。黒板だわ。本物の」
 科学世紀。
 平成は終わり、科学は結界という不可思議な存在すら研究対象になっている時代。
 宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンが、秘封倶楽部として活動している時代。

「ね。これが私達の夢なら、黒板が電子化されていないのはおかしい」
「なら。ここは何処だと言うの?」
「誰か、別の人の夢に迷い込んでしまったのかも」
「そんなことってあるのかしら」
「ほら。集合的無意識よ。人の深層心理は、過去も未来も関係なく、繋がっているから。迷い込むこともあるんじゃない?」
「フロイトね。言われてみれば、この周囲の景色も性的欲求、内に秘めたイドを表しているわ……あら?」
 メリーが視線を壁に向けると、机の影に何かが落ちていることに気が付く。
「ねえ。蓮子。あれって何かしら」
 目を凝らすと、それが木で出来た人形であることが分かる。
 人形と言っても色が塗ってある訳ではなく、顔もない簡素な、デッサン人形のようなものだ。
「あれは……男の人形みたいね」
 蓮子がその、顔のない人形を男だと判断したのには理由がある。
 ――ペニスが、そそり立っていたのだ。
 簡素な作りの人形が、ただ一部。男根のみが緻密に彫られ、硬く隆起していた。

「……気持ち悪い」
 吐き気を堪えるように、口元を抑えるメリー。
 しかし蓮子の方は、面白いものを見つけたとばかりに興味深い視線を注ぐ。
「きっと。あれはアニムスね。人は誰しも、二面性を持っている。男の人でも、女っぽい所があるし。女の人の中にも、男みたいな部分がある。女の人が想像し創造する、男という原型の偶像」
「蓮子の体に、男の子の部分なんてなかったわよ?」
「いつの間に見たのよ」
「妄想の中で見たわ」
「メリーとの付き合い方、考えなおした方がいいかしら」
「そうね。実際に確認してみるのが一番だし」
 こほん、と一つ咳払いする蓮子。
「……とにかく。ここが誰かの夢で、私達がうっかり迷い込んでしまったのは間違いなさそう。出られればいいんだけど……」

 ――きん、こん、かん、こん。
 教室内に、チャイムの音が鳴り響く。
 と、同時にスピーカーから女の声が。

≪この夢は50秒後、崩壊します。ただちに脱出してください≫

「ですってよ、メリーさん」
「あらやだわ、どうしましょう蓮子さん」
「――行きましょう!」
 呑気なやり取りから一転。
 蓮子はメリーの手を握り直すと、教室の戸へと駆けて行く。
「……駄目だわ、開かない! どうしましょう、メリー!」
 戸は叩いても動かしても蹴り飛ばしてもびくともしない。
 メリーは一度目を閉じると――瞳の色を紫に変え、辺りを見渡した。
「ここじゃないわ。この夢の主は、この扉が開放に繋がるとは思っていないみたい」
「メリー?」
「境界の裂け目は、――外にある。行くわよ、蓮子! あの窓が、きっと出口!」

 メリーは知る由もなかったが、指差した窓の場所は先程菫子の前に、八雲紫が顔を出した際開いたスキマのある位置だった。
「……信じるわ。メリー、行きましょう。――夢を、現に戻すのよ!」
 二人は昏い教室の中を駆けて行く。
 机の上を飛び跳ねながら、手を握り――窓をブチ破って、夢から抜け出た。


8

「私をどうするつもり?」
 崩壊する夢の一部始終を眺めながら、菫子は毒づくように言い捨てた。
「どうもこうも。致しませんわ? 貴方に歩き回られると、困るのよ」
 菫子は真っ白な部屋の中で、十字架に縛り付けられていた。
 紫はかつ、かつと足音を立てながら、菫子の頬を撫でる。
「私が、夢を渡り歩くのがそんなに迷惑?」
「ええ。勿論。夢を彷徨っているうちはまだ良いけれど――貴方が“また”、幻想郷へやって来ては困るの」
 紫の指が、蟲のようにじりじりと菫子の胸元を這う。
 指先は雪のように冷たく、しかし触れられた先は燃えるように熱くなる。
「ん、ぁ……」
「くす……。好い子。そうして大人しくしていれば、可愛がってあげますのに」
「こんなことして。霊夢さんに言いつけてやるんだから」
「あは。面白い冗談だこと」
 ――ぐにっ♡
 鷲掴みにするように、菫子の胸を揉む。
「んひっ♡」
「さぁ啼いて。喚いて。私の欲を、よぉぉく。満たしてご覧なさい?」
 朝も夜もない真っ白な部屋の中、菫子の嬌声が、響いた。

9

「ふああぁぁ~~~」
 大欠伸。
 そうとしか表現出来ぬほどの欠伸を聞くと、九尾の狐は肩を竦めた。
「お早うございます、紫様」
「はい、おはよう。藍」
「良い夢は見られましたでしょうか?」
「そうねえ。久々に、良い夢ではあったわ」
「であれば重畳」
 紫が体をのそりと起こすと、布団を丁寧に畳んでいく藍。
「藍」
「なんでしょう、紫様」
「――失われた夢は、何処へ行くと思う?」
 ぴた、と動きの止まる藍。
 この主はいつもそうだ。自分の答えなど求めてもいない癖に、しばしば答えのない謎かけを繰り出してくる。
「夢にはそれぞれ、夢魂が有ります。肉体が失われてしまえば、その魂は冥界へ行くのでは?」
「ふうん。詰まらない答えですこと」
 ほら、これだ。
 内心で毒づきながらも、「紫様はどうお思いですか?」と問いかける。
 どうせ答えらしい答えは得られまい――そう考えていた藍だったが、その返答は予想していたものとは些か異なっていた。

「夢は、歩き出すのよ」
「歩き出す?」
「そう。本人の意思とは離れて、魂を持って歩き出す。夢遊病、離魂病、ドッペルゲンカー。言い方は色々あるけれど、それはどれも夢が持ち主の意思を離れたことを意味する」
「はあ」
 藍は気のない返事をしながらも、その頭ではある事件を思い出してた。
 ――都市伝説。
 確か先日の騒ぎの中に、ドッペルゲンカーのオカルトを用いた少女がいたはずだ。

「宇佐見菫子、ですか」
「そう。彼女は、この幻想郷に行き来する力を得たことで、本来の夢を失っていた。失われた夢はドッペルゲンカーとなった訳だけれど――」
「だけれど?」
 紫はくす、と。蠱惑的な笑みを浮かべると、スキマを開いた。
「――困るのよ。宇佐見菫子がドッペルゲンカーに会ったら。未来が、変わってしまうじゃない」
 藍に背を向け、スキマへと歩を進める紫。
「お出かけですか?」
「ええ。また少し、夢の中へ」
「行ってらっしゃいませ、紫様」
 八雲紫の考えは、自分には分からない。
 分かろうとする必要もないと思考を打ち切ると、藍は恭しく頭を垂れた。


10

「ねえ。仲良くしましょう? 宇佐見菫子の偽物。――同じ、夢の魂同士。ね」

 八雲紫は、菫子であった存在の手をぎゅっと握った。
 その手は先ほどよりも、少し暖かかった。
ドッペルゲンガーならセックスのことしか考えてない菫子でもいいよね、みたいな気持ちで書き上げました。
えるす
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