真・東方夜伽話

睡眠薬

2014/12/08 00:00:05
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睡眠薬

しずおか

自分で作った睡眠薬をメリーに飲ませ、眠ったメリーに対して……

 私は酔い止め薬の成分表を食い入るように見つめていた。そこには100年以上前から使われている、ある成分が確かに書いていた。
 
 スコポラミン臭化水素酸塩水和物 0.25mg
 
 化学の知識が豊富なわけではない私でも、この成分のことは知っていた。
 昔からずっと使われている成分の一つで、鎮痛薬に使われるアスピリンよりは歴史がやや短い。昔は目薬にも入っていたとか。
 効果は勿論、酔い止め。正確には副交感神経の働きを抑制するものだ。
 棚に置いてあるだけのその酔い止め薬を掴み、そのままレジに持っていった。
 店員は私を不思議そうに見つめたが、顔を見られないように帽子を深くかぶり直した。

 薬局の不透明な袋を提げて私は自分の下宿へと歩く。子どもがいたずらを仕掛ける時の、高揚感と少しの罪悪感が胸の内で渦巻いていた。
 夕方になっても京都の気温は下がらない。もう9月だというのに私は背中に首に汗をかいていた。
 信号待ちで立ち止まり、袋の中を覗き込むと、ピースをしながら笑顔を見せる男性のイラストが見えた。
 その笑顔が私の側頭部をズキっと痛めつける。
 これからすることは、決してこのイラストのような、ほんわかしたハッピーなことではないのだ。

 下宿についた私は早速酔い止め薬の箱を取り出した。一箱で12錠。5箱全てから錠剤を取り出し、ビニール袋に入れる。
 あらかじめ購入しておいた日曜大工用の安いゴムハンマーを取り出す。
 右手にハンマーを構え、左手で錠剤の入ったビニール袋を机に押さえつける。

 そこで、手が止まる。
 こんなこと、一体何の意味があるのか。

 私には分からなかった。ただ思いついたまま行動し、ここまで至ってしまった。
 正しいとか間違ってるとか、そういう感情はどこにもない。
 ただ、そうしなければいけないような気がしたのだった。

 ゴン、と鈍い音を立ててハンマーはビニール越しの錠剤と衝突する。
 繰り返し何度も何度もハンマーを下ろす。錠剤はどんどん潰されて粉薬のようになっていく。
 
 私は悪くない――。私は悪くない――。

 ビニール袋の中の錠剤が粉々になると、私は鍋に水を張った。そして先ほど粉にした錠剤を水の中へ投入する。
 サーという音と共に鍋の水が白く濁る。成分が溶けていく。鍋を火にかけ、白濁液を熱する。

 その後の私は酔い止め薬の箱を全て解体し、はさみで細かく刻んで元の袋に入れた。薬局の袋を何重にも縛り、別の袋の中に入れておいた。

 あとは待つだけ――。

 敷きっぱなしの布団に潜り込み、枕を抱きしめる。ズキズキと痛む胸を私は枕で抑えつけようとする。それでも心臓は外に飛び出さんとばかりに強く鼓動する。

 やがてグツグツといった音が鍋から聞こえてくる。水分が蒸発していく音だ。私は立ち上がって鍋の中を確認した。白く濁った液体は当初よりだいぶ量が減っていた。鍋の底から現れては消える気泡を、ぼんやりと見続けた。

 火を止めると鍋には底に薄く残る程度の液体が残っていた。湯気の勢いが弱まったところで私はプラスチック製で魚の形をした醤油さしを使い、その液体をスポイトのように吸い取った。液体は二つの醤油さしを一杯にした。

 鍋を洗い、醤油さしを冷蔵庫に保管した。時刻は午後6時。もうすぐメリーがこの部屋にやってくる時間だった。

 何もすることがなくなった私は敷きっぱなしの布団の上に寝転がる。冷蔵庫のほうを見つめながら、いつアレを使おうかと考える。早いほうがいいのか遅いほうがいいのか。

 悩んでいた時間はほんの数分だった。私は立ち上がり、コップを二つ用意した。冷蔵庫から麦茶と例の醤油さしを取り出す。もうすぐやってくる友人のために、冷たい麦茶を用意しておく。そしてその麦茶の中に例の薬を仕込む。そうすれば自然に薬を飲ませられるうえに準備も簡単にできる。私はそう考えたのだった。

 トプトプと二つのコップに麦茶を注ぐ。そして片方のコップに醤油さしの中の液体を数滴垂らした。ちょうどその時に部屋のベルが鳴った。

「はいはい」

 薬を盛ったほうのコップを間違わないように私はお盆の上に置いた。そして醤油さしは咄嗟にシャツのポケットに入れた。
 ドアを開けるとリュックを背負ったメリーがいた。お泊まり用の着替えなどが入っているのだろう。

「どうぞ。狭い部屋だけど」
「おじゃまします」

 8畳のワンルームは玄関から部屋の中を隅々まで見ることができる。メリーは首を振って部屋を見渡し「蓮子の生活感が分かる部屋ね」と言った。
布団が敷きっぱなしなのがだらしなく感じられたのだろうか。でもそんなことはどうでもいい。どうせすぐに布団を使うことになる。

 布団を少し端に寄せ、部屋の真ん中にテーブルを引っ張ってくる。そして先ほど入れた麦茶をメリーの目の前に置いた。

「暑かったでしょ」
「ありがとう」
「あ、座布団あるから使って」

 メリーは座布団の上に足を崩して座る。リュックを部屋の端に置いた。
 私はメリーがコップに手を出すのを今か今かと待ち構えている。薬の効果はどれほどのものか分からない。すぐに効くのかもしれないし、30分くらいかかるかもしれない。もしかしたら量が足りないかもしれない。

 飲み物に薬を盛って相手を眠らせるという行為は、おそらく犯罪になるだろう。法的な問題以外にも倫理的な問題がある。私は今からとても悪いことをしようとしている。確かな自覚がそこにはあるのに、何故か私は他人事のように感じられた。誰かに指示されてやっているような主体性の欠如があった。誰かが私を操っているんじゃないだろうか。

 メリーが部屋の中を珍しそうにキョロキョロと見渡す。そして自然な流れでテーブルの上のコップを手に取った。
 飲んでしまえ――。私は心の中でそう願った。
 当たり前のようにメリーは口を付け、コップ半分ほどの麦茶を飲んだ。

「どうしたの? じろじろ見て」
「ううん。なんでもない」

 あまりにも凝視していたせいで少し疑われてしまった。しかしそれももう遅い。メリーは麦茶を飲んでしまった。酔い止め薬から抽出した鎮痛作用のある成分。睡眠薬よりも効果があると言われている。何せほんの数滴で効果があるというのだから恐ろしい。

「晩御飯なんだけどさ、カレーでいいかな?」
「ええ。カレーは私も好きよ」
「それ飲んで落ち着いたら、一緒に作ろう。メリー、料理できるよね?」
「あら、馬鹿にしてるのかしら。私、日本料理に憧れて自分で何回も作ったことがあるのよ」
「それは頼もしいわね」

 そう言っている間にもメリーはコップの中の麦茶をどんどん飲んでいく。やがて、コップが空になった。
 メリーに特に変わった様子はない。さすがにドラマや小説のようにすぐに眠くはならないのだろう。
 私は何かをやり遂げたような気持ちだった。あとはメリーの反応を待つだけだ。どう転ぶかは神のみぞ知る。

 二人でキッチンに立つとなかなか狭い。ほとんど肩をくっつけている状態で私たちはカレーを作り始めた。メリーは皮むき器で、私は包丁で人参やじゃがいもの皮を剥いていた。

「お肉は冷蔵庫に入ってるから」
「これね。お鍋はこの底の深いやつね」

 私が玉ねぎを切る間にメリーは鍋の準備を始めた。まず肉を鍋で炒めなければいけない。
 コンロに鍋を置いて火をつけたところで、突然メリーが後ろの壁にむかって倒れた。一瞬驚いてしまったが、すぐに薬のせいだと分かった。

「メリー! 大丈夫?」
「あ、ご、ごめん、なさい。急にめまいが」
「立てる? 無理なら横になってていいよ。ちょうど布団があるし」
「悪いけどそうさせてもらうわ。ごめんなさいね」
「ううん。いいのよメリー」

 なんて白々しいんだろう。私に「大丈夫?」なんて聞く資格はないはずなのに。
 メリーはよちよち歩きで布団のほうに向かい、そのままゴロンと転がって仰向けに倒れた。私はコンロの火を止めてメリーに近寄った。

「メリー?」
「……」

 肩をゆすったり頬をつついたりしてみたが、メリーは起きる様子はなかった。口元に顔を近づけるとスーという寝息が聞こえてきた。私は呼吸が止まっていないことを確認して安堵する。

 ついにやってしまった。越えてはいけない一線を越えてしまった。
 目の前で起きている事実があまりにも恐ろしく私は身震いをした。麦茶にほんの数滴垂らしたあの薬で、メリーがコロッと眠ってしまうなんて。
 本当は失敗してほしいという気持ちもあった。失敗したらそれはそれで諦めがついていた。

 メリーが目の前で眠っている。ちょっとやそっとの衝撃じゃ起きそうにもない。一つ一つ事実を確認していく。心臓の鼓動がかつてないほどに高まっているのが分かる。私はメリーを……。メリーを……?

 乱れた金髪が普段自分が使っている布団の上に散らばっている。メリーの身体は全てが無防備で、何もかも私の前にさらけ出されている。
 つやのある髪。ぷるんと弾力のある唇。細い喉元。少し浮き出た鎖骨。服の上からも分かる柔らかそうな胸の膨らみ。

 私はメリーをどうしたいのだろう。

 少しくびれた腰。むっちりとした太もも。袖口から出ている白い手。

 私はメリーの手を取った。スベスベで柔らかくて、何よりメリーの体温が凝縮されているかのように温かかった。私はそれを自分の両手で包み込んだり、自分の足に触れさせたりした。メリーの手に触れられるとぞわぞわという奇妙な快感が生まれた。

 唇が目に入った。メリーの、ピンク色をした綺麗な唇。メリーのファーストキスはいつなんだろうか。もしかしてまだだったりするのだろうか。
 人差し指の先で恐る恐る触れると、柔らかい弾力が返ってきた。唇を交わせたらとっても気持ちいいんだろうなと思う。

 私はメリーの顔を真上から見下ろす。メリーの顔がとても近くにあって、胸の奥から抑えきれない感情が湧き上がってくる。
 メリーの唇の位置を確認する。とてもゆっくりとした動きで私は顔を近づけ、瞼を閉じようとした。

 ポタリと何かが落ちた。一瞬何か分からなかったそれは、私の瞼の端から落ちたものだった。私はいつの間にか泣いていた。
 私の涙はメリーの唇の端を濡らしていた。

 どうして泣いているのだろう。私は私自身が分からない。

 今度こそと意気込んで私は唇を押し付けた。柔らかい感触が生まれ、ぞわぞわとした気持ちよさが全身に広がっていく。

 それから私は何度もメリーにキスをした。軽く閉じられた唇に強引に舌を押し込み、唇の裏側や歯や歯茎などをペロペロと舐めまわした。メリーとキスをしているという幸せの中に、無理やり犯しているという背徳感があり、自分が異常な行動をしていることを自覚する。メリーの口元が私の唾液で汚れていくのを見て私は内心興奮していた。

「メリー、メリー、大好きなメリー」

 頬を舐めてみたり、前髪を上げて額にキスをしてみたりしたが、やはりメリーが起きる様子はない。そう判断した私はさらに踏み込んだ行為をしてみたくなってしまった。
 私はメリーの服のボタンを一つずつ外していった。紫の衣服の下から薄いピンクの肌着が露わになる。私より豊満な胸のふくらみがはっきりと分かる。そのふくらみの上に手を乗せ、私はゆっくりと撫で始めた。肌着の奥のブラの感触が手のひらに生々しく伝わってきた。それから私は手を下にスライドしていき、お腹の辺りに触れる。メリーは一定の呼吸を繰り返したままで起きそうにない。

 いつの間にか私は呼吸が浅く早くなっていた。鼓動を打つ心臓も速さを増していて、頭が心拍に合わせてズンズンと刺激された。
 
 今ならまだ戻れるだろうか。ここでこの服のボタンを元通りにすれば。そして今までの行為を全て記憶の奥底に閉じ込めてしまえば。
 ダメだ。そんなことはどうせできない。こんな強烈な経験を忘れることはできない。きっと私は一生この時の記憶に囚われながら生きていくことになるのだ。

 私は肌着を胸の上までゆっくりとまくりあげた。ピンク色を下地に白の刺繍が施された可愛らしいブラが、メリーのふくよかな胸を覆っていた。
 メリーの下着をここまでじっくりと見ることができるのは、世界広しといえどもおそらく私だけだろう。私は誰も知らないメリーの姿を見ている。
そういう自覚が私を興奮させる。
 ブラを外すと後で戻すのが大変だと思い、私はカップの隙間に手を入れてメリーの胸に触れた。メリーは何も反応しない。指先で奥にある突起に触れる。どんどんメリーを犯していっている。きっと誰にも触れさせたことがないであろうところまで。私はメリーの初めてを次々に手に入れているのだ。

 側面についたチャックを下げ、スカートをずらす。ショーツはブラと同じ柄だった。そこから肉付きのよい太ももが伸びていた。私は太ももを外側から内側にかけてじっくりと撫で回す。すべすべの感触が手のひらに伝わってくる。傷やシミは一つもない綺麗な肌で、食べちゃいたいくらいだった。
 メリーの足を少し広げさせ、その間に自分の身体を入れる。そして太ももにゆっくりと顔を近づける。ぷにっとしたメリーの太ももの感触を頬で受け止める。ツルツルで気持ちいい。もしこの感触のクッションがどこかで販売されていたらすぐにでも買いに行くだろう。

 メリーは眠っているというよりむしろ昏睡しているに近いような気がしてきた。ただの睡眠ではない。命にかかわることはないだろうが、意識不明の状態といって差し支えないと思った。

 ペロっとメリーの太ももを舐める。起きない。私は続けて唇で太ももの肉にかぶりついた。口づけをしながらディープキスのように舌先で太ももの味を楽しんでいた。反対の太ももも同じように舐めまわし、しゃぶり尽くした。

 私はもう、メリーが何をしても起きないと確信していた。そしてその確信が私に更なる行為をさせる。

 メリーの右側に座り、右手を持ち上げる。意識のないメリーの身体は石のように重かった。手を開かせ、私はそれを自分の左胸に当てた。

「んっ、はぁ……」

 服越しなのに思わず吐息が漏れてしまう。自分の手ではない感触というのはここまで強烈な刺激になるのか。自分で動かしているにも関わらず、私は本当にメリーに触られているかのように思えた。大好きなメリーが、私の胸を……。そんな映像を脳内に映し出すと、いよいよ手の感触が快感へと変わっていった。

 ブラウスのボタンを外し、ブラもホックを外して取っ払い、私はメリーの目の前で上半身をさらけ出す。メリーの前で私は今、上半身裸でいるのだ。事実を敢えて脳内で確認すると、興奮は更に高まっていく。

 メリーの手を恐る恐る自分の胸に近づける。指先がツンと触れた瞬間に私は身体をビクンと跳ねさせ、思わず顎を上げて天井を見上げてしまった。

「んはぁあっ……これ、すご、いっ……あぁぁ! いい……ひぅ、っ……ひゃ、これえぇ、いいっ……」

 メリーの指が、私の乳首に触れてる。手のひらが、私の乳房を持ち上げている。触れられるたびに乳首は快感を得るべくピンと立ち上がっていく。感度はどんどん増していき、快感が微量の電流となって全身を流れてゆく。

 自分のものではない体温を感じることで私の中の寂寥感は和らいでゆき、充足感が増してゆく。しかしそれは背徳的な行為から得られた偽物であると自覚したとき、私は再び暗い井戸の中に落とされる。それでも私は、その偽物にすがりたかった。例え偽物だろうと、満たされたという実感が欲しかった。
 
 片方だけでは飽き足らず、私はメリーの腰辺りにまたがり、メリーの両手を使って自慰行為を始める。身体が接近した分、本当にメリーと行為に及んでいるかのような臨場感があった。呼吸は浅く早くなり、脳が快感の熱に埋もれてゆく。自分の手では決して味わえない快感だ。
 メリーの身体を犯しているのは私なのに、メリーに犯されているような気分になる。私はメリーになら喜んで犯されたい。犯されるということはメリーが私を求めてくれるということだ。私はメリーに求められたい。

 仮に今メリーが起きたらどうなるだろう。メリーの手は私の胸に当てられている。私はメリーの腰あたりに馬乗りになっている。寝起きにこんな状況に陥ってしまったメリーは一体どんな行動を取るだろう。私を蹴飛ばして距離を取り、そして蔑むだろうか。しばらくそのままの状態で冷静に状況を判断したのちに、「何やってるの?」と目だけ笑っていない笑みをくれるのだろうか。
 それとも、「蓮子ったらこんな趣味があったのね。ふふ、いいわよ。最後までしてあげる」なんて。いや、そんなことは天地がひっくり返ってもあり得ない。こんなもの所詮は私の妄想の中だけの出来事なのだ。
 もしもメリーが目覚めたら、その時はメリーを殺してしまうかもしれない。この世の終わりのような巨大な絶望感とともに、私はメリーの首を絞めつけて窒息死させるだろう。こんな姿を見られてしまってはもう元の関係には戻れない。それならばいっそメリーを殺し、私も死んで全てを終わらせたい。絶望の中を生きていくのはもう疲れた。

 しかし、メリーは目を閉じて眠っている。寝たふりではないかと顔を近づけてみるが、間違いなく眠っていた。
 私は本当はメリーに起きてもらいたいのかもしれない。電子機器の電源を切るように、プツっと全てを終わらせたいのかもしれない。今の私の人生は、楽しくもないゲームを延々とやらされているような感じだった。

「めりぃ、んん、はぅ……気持ちいいよ……めりぃ、ああ、ん……ふあぁ、ちくび、かんじちゃう……ひぃ」

 身体全体がポカポカと暖まってくる。眠っているメリーの目の前で、しかもメリーの身体を使って行う自慰行為は、背徳感によって快感がより強く感じられた。
 こうなったらできるところまでやってしまおう。ショーツ脱いでしまうと、秘部は既にびっしょりと濡れていた。
 メリーの片手を下ろし、右手の中指を立て、自分の秘部に当てた。途端、乳首なんかとは比べ物にならないくらいの快感が全身を駆け巡った。
 メリーの指が、私のはしたない液によって汚されていく。愛液をメリーの指になすりつける。とんでもなく変態な行為をしているという背徳感で背中がゾクゾクする。

 入れちゃおう。メリーの指でオナニーしちゃおう。
 十分に濡れた私の秘部は、メリーの指をいとも簡単に飲み込んだ。狭い膣内をかき分けてメリーの指を根本まで入れる。自分の指ではないそれは普段のオナニーとは全く違った感覚を引き起こす。簡単に言えば、気持ちいいのだ。

「はぅぅ、これ、すごい……めりーの指が、入ってる……ん、ふぁあ、めりー、めりーが、私のなかにっ……」

 まるでメリーに責められてるみたい。気持ちいい。出し入れするたびに私は腰をくねらせ、背中を反らせて天井を見てしまう。
 愛液はさらにその量を増し、メリーのお腹はびちゃびちゃに汚されていく。頭の中ではメリーに責められている妄想を広げてリアリティが増すようにする。
 妄想の中のメリーは「ここがいいの?」とか「蓮子って変態ね」なんて言ってくる。そのたび私は否定しようとするが、言葉を発する前に次々快感を与えられ、メリーに責められっぱなしである。

「だめなのっ、めりぃ、これ、いひぃ、んんっ、はあ、きもちよすぎて……おかしくなる、から、んあぁ、ひっ、ああぁっ」

 中を出し入れさせてびちゃびちゃになったメリーの指を今度はクリトリスに当てる。指の腹を使ってこすると強烈な快感が下半身から脳天に向かって駆け上がる。過剰に分泌された唾液を飲み込みきれず、その一部は唇の端からこぼれ、メリーの胸のあたりにポタリと落ちた。
 唾液でもメリーを汚してしまった。それは何故か愛液よりも生々しいもののように思えた。秘部から分泌される液体よりも、それは遥かに現実味を帯びた液体だった。

 自分の指を秘部に差し込み、メリーの指先でクリトリスをいじる。中と外を両方同時に責めることで、片方だけとは比べ物にならない快感に襲われる。絶頂という大きな波が近づいてきていた。背中はのけ反ったり元に戻ったりを繰り返す。呼吸は荒く、早くなる。愛液はメリーのお腹をどんどん汚していく。

 クリトリスとメリーの指先が触れるたびにピリピリと電流が走り、腰がガクガクと震える。身体の最も敏感な部分をメリーに責められている。大好きなメリーに、その熱を持った指で。

「も、だめっ……いっちゃう、いくのっ、めりー、めりーのゆびでっ、めりーにおかされてっ、ひっ、んんん、んはああぁ、だ、め……いっ」

 脳がどんどん快楽に支配されていく。もはやそこに思考は存在しない。ただ快感を求めて指を動かすだけだった。
 視界に白い世界がちらついていた。絶頂はもうそこまで来ていた。
 このまま、メリーの目の前でオナニーしていっちゃう。
 膣内をいじる指を加速させる。クリトリスをいじるメリーの指もより早く上下運動をさせる。

「いくのっ、いっちゃうのぉ! めりーの目の前でいっちゃうの……んああ、もう、いっ、くうぅ……ふあああぁ!」

 頭に強烈な電流が走った。ピークまで膨らんだ快感が一気に弾け、私の身体は魚のようにビクンと跳ねた。

「んあ、あああああああああっ!」

 視界が真っ白になり、口から絶叫が漏れた。座った姿勢を保っていられず、背中をエビのように反らせて後ろに倒れた。
 腰の痙攣がいつまでも止まらなかった。メリーのお腹は秘所から溢れた愛液でべっとりと濡れていた。
 見慣れた天井が白くフラッシュしていた。脳は全てが快楽に染まり、呼吸すらも忘れてしまうほどだった。

「はっああぁ、ん、ふああぁ……めりーの、ゆび、で、いっちゃった……めりーに、おかされて……めりー、めりー、んん、はあぁ……」

 絶頂の余韻は長く、身体中を快感が支配していた。全身に力が入らず、ただただ快感を享受するだけだった。心が何かで満たされていくような気がした。私がずっと求めていたものの一つが手に入ったように思えた。
 メリーの指、気持ちよかった。本当にメリーに犯してもらってるみたいで。メリーの指は私に素晴らしい快感と充足感を与えてくれた。そして背徳感と罪悪感も。

 まるで違う生物のように跳ねる腰を押さえつけながら、私は妄想の中のメリーの声を聞いていた。

「いっちゃったわね蓮子。私の指で大事なところをいじられて」

 そうよメリー。私は女のあなたに大事なところをいじられて感じる変態なのよ。

 腰の動きも止まり、視界も正常に戻ったところで私はようやく身体を起こした。
 もはやメリーが起きるかどうかなどどうでもよかった。起きるなら起きればいい。
 私は何かを得たと同時に、きっととても大切なものを失った。友達の身体を自分の汚い液で汚し、友達の身体を使って快感を得るための行為をするという下賤なことをした。自分の欲望のために友達の尊厳を踏みにじったのだ。

 メリー? ほんとは起きてて寝たふりをしているなんてことはない? 
 仮にそうだとしたらいつから? もしかして最初から? 私に身体をいじられて、唇を舐めまわされていたときも、メリーはずっと我慢していたの? いや、我慢ではなかったのかしら。本当はこういうことを望んでいたの? 私に犯されることを?

 メリーの首に指先を当てる。ちゃんと脈はある。生きている。でも、やはり意識はなかった。私はメリーに同意を得ることなくメリーの身体を汚し、背徳的な行為をしたのだ。

 どうして、起きないの?
 あれだけのことをしたのに。薬の作用が強すぎたのかな。

 ティッシュを持ち出して愛液で汚れたメリーの肌を拭いた。私の中を犯した指も、愛液で濡れたお腹も。まるで死人にお化粧をしている人のようだ。しかし、勿論メリーは死んでおらず、相変わらず静かな寝息を立てている。
 自分の手と秘部もティッシュを使って処理をした。ピンクの肌着を元に戻し、メリーの服のボタンを留める。ずらしたスカートも腰まで引き上げ、ホックを留めた。これでメリーは私に犯される前の姿に戻った。あくまで見かけ上は。

 全裸の私は服を切る気になれなかった。身体から力が抜けてしまい、何もする気が起きなかった。エアコンからの冷風が汗をかいた私の身体を冷やしてくれた。
 シャワーを浴びよう。このままじゃ風邪を引いてしまいそうだし、どうせ下着も替えるのだ。
 未だ仰向けのまま眠るメリーを横目に私は脱衣所に向かった。壁に取り付けられた鏡には、ひどい顔の自分が映っていた。テレビのニュースに映る、殺人犯や強姦魔のような暗く冷たい顔をしていた。

 ふと、洗面所に剃刀を見つけた。手に取って安全カバーを外してみる。そこには5センチほどの小さな刃。しかし、頸動脈のような皮膚に近い血管を切るくらいなら容易にできそうな気がした。
 右手をゆっくりと首へと持ち上げる。鏡の中の私も、同時に左手を持ち上げる。刃が首の皮膚に当てられる。冷たくも暑くもない、ただの無機物が触れているという感触。
 このまま手を下に動かすだけで私は簡単に命を絶つことができる。人間の命はなんてちっぽけなものなんだろう。

 鏡の中の私がこちらを見ている。悲しそうな目をしていた。
 何がそんなに悲しいのか。
 分からない。何が、何故、どうして。
 疑問詞が次々と頭に浮かぶ。
 誰が、誰が悪いのか。私か、メリーか、日本か、この世界そのものか。
 誰かを悪者にしたかった。私の行動の原因を誰かに与えたかった。自分に非が無いことを証明したかった。

 思考が次々に沸いては消え湧いては消えを繰り返す。沸騰するお湯から気泡が出てくるように。
 きっと私のことを誰かが操ってるんだ。鏡の中の自分を見つめてそう思った。そいつはこの手を振りおろさせようとしている。そうはさせるか。誰かの意思でなんて死んでやらない。
 剃刀の刃に安全カバーを取り付け、洗面台の上に置いた。浴室には入らず身体を回転させて再びメリーのそばに座る。

 すやすやと眠るメリーの手を取り、両手で握りしめると、メリーの熱い体温が伝わってくる。何だかとても安心する暖かさだった。

「メリー。あんなことをしておいて、今更何を言いだすのかと思うけど。さっきは、ごめんなさい」

 なんて愚かな行為だろう。何も考えずに行動していたくせに、後になって気まずくなったから謝るなんて。

 手を握りしめたまま、メリーの横に寝転がった。畳んだ敷布団の中から、タオルケットを引っ張り出し、肌の上にかけた。頭がすぐ隣に並び、寝息が耳に入ってきた。私は眠ろうとする子どもに聞かせるような小さな声で、胸の中の暗い気持ちを言葉にする。



 いつからだろうね。メリーのこと好きになったの。
 気づいたら好きになってたの。最初は友達としてよ。友愛というのかしら。そういう感情を持っていたわ。
 でもそれが、ある時からか変わったのよ。宝くじが当たって暮らしが一変するような、そんな変わり方じゃないわ。季節が少しずつ巡るような、とっても小さな変化だったの。友愛から恋愛へ。本来異性に対して向けられるべき感情が、同性のメリーに対して芽生えてしまったの。



 そこで私は頭を起こしてメリーの顔を見たが、彼女の寝顔に変化はなかった。もし起きて聞いていたらどうしようかと思ったが杞憂だったようだ。私は再び頭を下ろす。



 メリー。もし、私が男だったら……なんて、あり得ない仮定に意味があるかどうかは置いておいて、聞いてほしい。
 もし私が男だったとしても、メリーは変わらず私と関係を持っていたかしら。秘封倶楽部をやってくれたかしら。私の『彼女』になってくれたかしら。
 私はメリーの『彼氏』にはなれない。どんなに頑張っても私は男になることはできない。女のままメリーの恋人になることはできない。メリーがいわれのないそしりを受けるのは私が耐えられないから。
 だから、もし来世で私たちが生まれ変わったときに、男と女だったとしたら。今度はちゃんと、うまくいくかしら。

 こんな仮定は馬鹿馬鹿しいしあり得ないことも分かってる。でも、つい現実から目を背けたくなるの。
 メリーさえいなければ、なんて身もふたもないことを考えることもあるわ。殺してしまいたいと思ったことは何度もある。そして実行しようとしたことも……。でもいつも最後までやり遂げることはできなかったわ。得体のしれない恐怖と、罪悪感が内側から私を侵して支配していくの。



 もう一度確認したが、やはりメリーは眠ったままだった。相当強力な薬を使ってしまったらしい。次からは量を減らさないと。

 次から? 果たして次があるのか。
 眠らせて、身体を弄んで、自分の快楽のために身体を使うあの卑しい行為をもう一度やるというのか。
 違う。誰かが私にやるように指示しているのだ。先ほどの行為は全て私の意思によるものではない。誰かに操られた結果なのだ。そうに違いない。
 私がそんなことをするはずがない。
 薬局に行ったのも、薬を作ったのも飲ませたのも、メリーの身体を犯したのも、全部私じゃない。私はちゃんと欲望を押さえこんでいるはずだ。メリーを犯したいなんて思いが行動に移されるはずがない。

「私じゃない! 私は悪くない!」

 気づけば一人大声で叫んでいた。メリーの身体に馬乗りになり、その細くて白い首に両手をかけた。

「私のせいじゃない! そうよねメリー! メリー!」

 親指が喉元に食い込んでいく。誰かが私の手を操っているのだ。
私の中の何かがメリーを殺せと指示している。私はその力に対抗しようと必死に手を広げようとするけど、無慈悲に親指は首に食い込んでいく。

「メリー! 起きろメリー!」

 精一杯の抵抗としてメリーの耳元で叫んだ。私は何故か泣いていた。まぶたから零れた涙がメリーの顔にポタポタと落ちていった。

「メリー!」

 二度目の叫び声でついにメリーは目をうっすらと開いた。しかしこの手は力を緩めてくれない。メリーは苦しそうに顔をしかめながら寝起きの状況を把握していた。
「う、くっ……れん、こ……? ちょ、いた……」
「メリー! 違うの! これは私じゃないの!」

 メリーの両手が首元を押さえる私の手を掴んだ。すると私の手は急に電源が落とされた電化製品のようにぐにゃりと力を失くした。行き場を失った手は床につかれ、私はメリーを押し倒したような格好になった。

 メリーの顔が正面にある。怒っているのか悲しんでいるのか、全然わからない。無表情に近かった。そんなメリーの顔に恐怖を覚え、何故か涙をこぼしていた。

「ごめんなさい。ごめんなさいメリー。ごめんなさい」
「いいのよ」

 メリーは私の身体を押しのけて身体を起こした。まだ寝起きで覚醒しきっていないはずなのに、私の泣き顔を見ただけですぐに私を慰めてくれた。
 メリーの腕が、私の胸や秘部に触れたあの手が、私の背中に回される。背中に手の熱い感触を覚える。
 裸の私を何の抵抗もなくメリーは抱きしめてくれた。私はメリーの服に顔を押し付けていつまでも泣き続けた。

「私じゃないの……。私じゃ、ないの……。ごめんなさい。ごめんなさい」
「いいのよ蓮子」
「たくさん、ひどいことして、ごめんなさい」
「いいのよ」

 まるで私のしたことを全て知っているかのような口調だった。
 でもきっとメリーは知らない。
 私が眠っているメリーの身体を犯し、汚したことを。
 それなのに、メリーは全て包み込んでくれる。いいのよ、と私を慰めてくれる。
 そんなメリーのことが、好きで好きで。
 狂ってしまうくらい愛おしい。
 それはもう、殺してしまいたいくらい。

「ごめんなさい。ごめん、なさい」

 いくつもの罪に対して謝罪を繰り返した。薬を飲ませたこと、身体を汚したこと、首を絞めたこと。謝れば消えてくれるかもしれないという儚い希望を持って、私はごめんなさいを繰り返す。

 メリーの手が背中をポンポンと叩いた。

「大丈夫よ蓮子」

 大丈夫じゃないよメリー。
 こんなことを繰り返していたら、いつか私は、メリーを殺してしまうかもしれない。
 そんな時もメリーはちゃんと私を止めてくれるの?
 だめだよ。きっといつか、未遂じゃなくなっちゃう日が来る。
 その時までに、私は一体どうすればいいの。

 涙はいつまで経っても止まらなかった。もはやメリーの服どころか肌にまで直接涙がしみていた。
 それでもメリーは変わらずに「いいのよ。大丈夫よ」と言ってくれる。こんな風に泣きつくのは初めてではなく、何度か経験しているはずなのに。

 いつか、大丈夫じゃない時が来てしまうのに。

 メリーに大丈夫と言われた私は、自分にそう言い聞かせ、「大丈夫」なことにしてまた日々を過ごしていく。そしてその「大丈夫」が崩壊したとき、またメリーに泣きつくのだろう。

 終わりのない、出口なんてない世界の繰り返し。

 唯一出口があるとするならば、それは私かメリーが死んだときになるかもしれない。

「大丈夫よ、蓮子」

 今日もまたメリーは、そう言って私をだまし続ける。
 いつか来てしまう限界も知らずに。
七作目です。お久しぶりです。

もはや病んでる蓮子は私の得意分野になったのかもしれない。
ツイッターやってます→https://twitter.com/touhounijiss

>>blueさん
コメントありがとうございます。
リクエストの件は、私に病んだ二人を書ける力があればいつか書くと思います。気長に期待せずにお待ちください。
しずおか
コメント




1.blue削除
氏の作品は読んだことが無かったのですが、良いですよね。病み蓮子。
文章も力があって良かったです。
どうして今まで読まなかったのだろう(笑)

勝手ながらリクエストですが、
病んだ蓮子と病んだメリーの恋愛(?)小説を書いて頂けますでしょうか?

もし書いて頂けるならうれしいです。
2.性欲を持て余す程度の能力削除
とても面白かったです。病んでる秘封が大好きです。
3.mku削除
れんめりはーこうでなきゃー(喝采