真・東方夜伽話

淫紫テミル

2014/11/23 00:35:12
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淫紫テミル

喚く狂人

紫が時々会う外界の人間。それは醜い、豚のように肥えた、畜生以下の男だった。
彼女にはとても似つかわしくない男は、しかし、紫を性的に満足させることのできる、数少ない存在だったのだ。
C87頒布予定の短編集から、書下ろしの話を一本まるまる。

 小汚い街だ。道は狭く、今にも倒壊しそうな建物がひしめく。街灯は切れており、月光が道中の伴だ。かつて日本の中心だった都市も、遷都で首都が西に戻ってから、寂れる一方のようだった。この一帯のように、半ばスラム化したところまである。
 すれ違う人間は奇異の目でこちらを見てくる。こんな時間にこんな場所を女が一人で歩くこと自体珍しいのだろう。さらにいえば、彼女の気品や美しさ、まとう雰囲気、着衣の上等さ、そういった何もかもがこの辺りの空気に場違いだった。そもそもこのご時世にドレスなど、まるで仮装だ。不躾な視線を向けられるのももっともだった。
 とあるアパートの敷地にふらりと入る。周囲のものと同様、台風でも来れば簡単に潰れてしまいそうだ。鉄製の外階段をは赤錆が浮いている。吐息が白くもやる。
 こんな地域、こんなアパートは、気品ある彼女にとても似つかわしくない。しかし、彼女はあくまでここに用があった。ここの、二〇三号室に。
「うぁあい! もぉ、誰ぇ!」
 呼び鈴すらない扉を手の甲でノックすると、不機嫌な声の後でドタドタと音がした。がぎっ、と、金属の擦れる音がして、アルミ製の安っぽいドアが開かれた。
「んはっ! 紫ちゃんかぁ! おはよぉお」
 出てきたのは豚だった。いや、豚のような男だ。それも不正確か。畜生でも、この男よりはいくらか清潔感がある。脂でぎとつく天然パーマの頭に、痘痕面と団子鼻、指紋の浮かぶ瓶底眼鏡。この寒いのに着ているタンクトップは黄ばみ、何のものともしれないシミが浮かんでいる。腕も脚もぶよぶよと太い。鼻を突くような体臭からは、風呂にすらろくに入っていないことがうかがえる。紫を十人中十人が振り向く美女とするなら、これは十人中十人が顔を背ける醜男だろう。全てが人を不快にさせるかのようですらあった。しかし彼女は、そんな男を、自分から訪ねに来たのだった。
「おはよう、ねぇ……。十二時なのだけれど」
 昼ではなく夜の十二時だ。いずれにせよ、おはようという時間ではない。
「ンッフゥ、さっき起きたばっかだからおはようだよぉ。そんなことより、せっかく来てくれたんだから、上がってってよ紫ちゃん。そのつもりだったんでしょぉ?」
「まあね。お邪魔するわ」
 招かれるまま上がる。くすんだシンクには、いつ使ったか分からない皿がごちゃりと重なっている。六畳はあるはずの室内は、中央の万年床や、散らかされたゴミやら服やらで、ひどく窮屈だ。ものを退けずには座れないし、あまり素足で歩きたくない。ゴミ捨て場のそれを薄めたような、饐えた匂いがした。
「前、掃除してあげたと思うのだけど。あのときよりひどくなってないかしら?」
「んひッ? いやぁ、そうなんだけどさ。なんかこうなっちゃった。テヘヘ」
 彼には自活能力というものがおよそ存在していなかった。どうやって食っているか知らないが、生きていけているのが不思議に思えてくるほどだ。
「まあ、いいわ。言ってもしょうがないしね。ほら、差し入れ」
「おぉおおぉ! いつもありがとぉ! 助かるよぉおお」
 それでも、死なれては困――るというほどでもないが、代わりを探すのが面倒だ。差し出したビニール袋には、水やら携帯食料やらインスタントものやらを詰めてある。ここを訪ねる前に、コンビニで買ってきたものだ。以前渡した分のゴミがその辺りに転がっているあたり、食べてはいるらしい。でもなければこの体型は維持できないか。
 彼は袋を、近くにあったゴミ袋の上に置く。ぶふゥんと鼻息をついた。
「さて、それじゃあ紫ちゃァん。僕んとこに来たってことはさぁ」
「そうね。いつも通り、私を愉しませてちょうだい」
 欲丸出しの視線を受け流しつつ、挑発する。ぐふッ、と笑い声を上げ、彼は言う。
「フフゥ、じゃあ体調のチェックからしようかぁ。下着脱いで四つん這いになって、僕の方にお尻を突き出してみてくれるかなぁ、ぐふッ、ぐふ、ふ」
 フンフンという荒い鼻息混じりに、指示が飛んでくる。口角には泡が浮かんでいる。先にシャワーを、などという気の利いた言葉など、彼からは出てくるまい。そもそもこのアパートに風呂はない。さすがに気になるので、いつも先に済ませていた。
 言われた通りスカートに手を差し入れ、ショーツに指をかける。ガーターは着けていない。どうせ脱ぐと分かっていたからだ。す、すすと、布の擦れる小さな音がした。下半身がひやりとする。部屋に暖房の類はなかった。
「ンふッ、レースかぁ。紫ちゃんの下着っていつもオトナだよねぇ、スケベだなぁ」
 小さく丸まったソレを、彼は血走った目で見つめ、気色の悪い笑みを浮かべている。手渡すと、脂の浮かんだ団子鼻にクロッチを押し当て、ふごふごと嗅ぎ始める。恍惚の表情ですら見苦しいのは、ある種の才能だろう。
「ンーっ、ふぉ、ふぉ……いいにおい……」
「ねえ、そうするのは勝手だけど、私のことを忘れてないかしら?」
 敷かれた万年床の上で、犬じみた姿勢になる。言った通りにしてやっているのに、放っておかれるのはつまらない。科をつくりながら下品でない程度にねだる。
「おひっ、ほひ、ごめんねぇ、そっ、それじゃ、健康診断の時間だよぉ」
 屈む、という動作は、彼にとって難しいものだ。腹が邪魔だし膝に負担もかかる。それでも彼は屈み込み、鼻息がかかるほどの距離まで顔を寄せながら、ドレスの裾をつまんでゆっくり、ゆっくりとめくり上げていく。
「ドレスの丈、前よりも短いねぇ。ひひ、セクシーだね、そういうの、いいよねぇ」
 気の利かない、対人能力の低い男だが、そういう所だけはむやみに目敏い。
「すべすべだねぇ、いいねぇ」
 裾が上がるのに合わせて、ソーセージのような丸々とした指が白い肌を這う。性感というよりくすぐったさを覚え、彼女は小さく息を零す。感じてるのかなぁ、という揶揄はない。それが性感由来のものでないと分かっているのだろう。
「ふっひ、丸見え、丸見え。いやぁらしいなぁ」
 そうしている撃ちに、ドレスの内に隠されていた剥き出しの秘部があらわになる。綿密な幾何学的計算に基づいているかのように完璧な曲線を描く尻肉を、掌が覆い、むにり、むにりと揉み始める。そこは圧力に応じて淫らに形をかえながらも、確かな弾力をもって指を押し返している。
「っ、くんッ」
 甘やかな感覚に、先程とは意味の異なる息が溢れる。部屋の中は、生ゴミを薄めたような臭気が漂っている。ことが進んで息が上がってくると、この悪臭が肺を、頭を冒し始める。にも関わらず、気分は悪くなるどころか、むしろ高揚するのだ。こんな汚らしい場所で私はこんなことを――という意識が、そうさせた。
 彼の方をあえて見ず、長年汗を吸って黄ばみつつある煎餅布団をじっと見つめる。何をしようとしているか分からないほうが、愉しめるというものだ。
「お尻の手触りはいつも通りサイコーだねっ、こっちは、どうかなぁ」
「ひんっ……」
 情けない声が漏れてしまった。体の内に、ひやりとした空気が触れたのだ。
 ぴっちりと閉じていた陰唇を、彼の指が割り開いていた。女としてもっとも重要な秘めおかれるべき部位に、粘つく視線が注がれている。こんな男に、見られている。
「ひっひひ、触診っ、触診んっ。僕といない間に紫ちゃんが他の男とセックスなんてしてたら嫌だからねぇ。おまんこの中に他の男のザーメン入ってないか調べるよぉ、いわば浮気チェックって感じかなぁ」
 健康診断だの浮気チェックだの、普通ならそれは、そういう建前の下で愛撫するぞという宣言になるだろう。だが彼の場合は違う。その証拠に、その手つきは、愛撫のそれではなかった。本気で検査しているのだ。浮気の証、他の男の遺伝子が、彼女の肉洞から出てこないかどうか。そういうことを真面目にやるような、奇妙な男だった。
 ――それにしても、浮気? この男のものになったつもりなど、かけらもないのに。あくまで、性処理に便利だから相手をしてやっているだけだ。
 妖怪というのは、多くの点において人間より強い。体力、知力、そして性欲もだ。特に、彼女は大妖怪とまで称される身。交わりへの欲求も、相当に強かった。
 それは自慰のような代替行為では満たせない。そもそも大妖怪としてのプライドが許さない。かといって、誰とでも寝るような真似も、立場上できない。うっかりして醜聞が広まりでもすれば、幻想郷の運営に関わる。
 ならばいっそ、郷の誰にも知られようのない、外の人間を相手にすればいい。
「んんんっ、ふ、ザーメンは出てこないけどぉ、ぬるぬるするお汁が出てきたねぇ」
「……ぁっ、く、ん」
 ぬち、ぬちと、水音がし始める。漏れる声に甘いものが混ざり始める。人差し指は執拗に膣内を検分していた。襞の一枚一枚に至るまで丁寧に。
 外界の者を相手にとはいっても、誰でもいいわけではない。まず、彼女の強い欲に付き合えるだけの精力は必須だ。それをクリアしてもまだ不十分だ。せっかく二人で交わるのだから、話術なりなんなりで、それなりの愉しみを提供できることも必要だ。
 第一の条件の時点で、満たす者はそうそういない。二つ目もとなれば皆無に等しい。そんな中、この男は良かった。精力は猿ほどに強い。そして愉しみも提供してくれる。こんなゴミ同然の輩に抱かれるなんて、という自尊心の疼きは、存外に刺激的だった。だから、生物としてはともかく、性欲処理の相手としては気に入っていた。
「んふッ! 触診おしまいッ、浮気はしてないね! いやぁ、それにしても、触診で濡らしちゃうなんて、やっぱり紫ちゃんはスケベだなぁ」
「ッあっ……」
 にゅぷんと、指が引き抜かれる。陰の唇から指先まで、悦びの涎が糸を引いているのが、見なくとも分かる。弄られた体内が、うずうずと疼いていた。彼の愛撫は良くいって中の中だが、ときとして偏執的なまでに丹念だった。そもそも彼を訪ねるときはこちらがそういう気分になっているのもあって、あっさり体の準備ができてしまう。
「ねぇ、そろそろ……」
「ダメダメぇ、最後までちゃんとチェックしないとぉ! 今度は、こっちぃ」
「あ、ちょっと、そこはっ」
「大丈ぉオー夫、早めに済ませちゃうからねぇ」
 四つん這いになった彼女の、綻びつつある唇の上、ひくひく収縮するおちょぼ口に、指が押し当てられる。背骨にゾクリとするものが走り、腰が小さく震える。
「く、ぅ、ンッ」
 狭い背徳の道を、愛液に濡れた指がちゅぷ、ちゅぷと浅く出入りする。じっとりと湿った不潔なシーツを握り、耐える。こちらの経験もあるにはあるが、どうも苦手だ。秘部での悦びと違い、じわじわ浸すようで、どう受け止めていいか分からない。
「まっ、でも、時間ももったいないし、ダブルで触診するねぇ」
「ンッ!」
 股座に、ぴりりとした快感が走る。またも腰が震える。
「ンッフゥ、ボッキしてるねぇ。おまんこ触る前は普通にぷらぷらしてたのにねぇ。グフッ、おまんちょとお尻ぬぷぬぷされてボッキしたんだねぇ。ンフッ、ンフフゥ」
「はっ、ん、馬鹿言わないで、硬くして、なんて」
 ぽってりとした掌が、紫の体の一部、尖った部位に触れていた。女なら決して存在しないはずの部位に。硬くしてなんていないと彼女は口にした。誰が聞いても、無理があると思うことだろう。それは明らかに充血し、反り立ち、膨れ、硬くなっていた。この現象を勃起と呼ばずして、なんと呼べというのか。
 紫の股座から伸びるもの。彼の手が、優しく包んでいるもの。それは紛れもなく、勃起した男根だった。女にはありえないはずのそれは、そこらの男のものなどよりもはるかに立派で、雄々しかった。境界という曖昧なものを操るからか、紫自身もまた、ひどくあやふやだ。これは、いわばその最たる象徴だった。
 性欲処理の相手の条件として最も重視するのは、これの存在をどう捉えるかだった。揶揄されるのは論外として、腫れ物に触わるような扱いされるのも自尊心が許さない。
 この男を気に入った最大の理由もそこにある。こいつはこれを、気持ちよくなれるところが多くてお得だな、くらいに考えているようだった。愛撫することにもなんら抵抗を感じないらしい。人間としてどこか壊れているような奴だからか、女にモノが生えていても気にしないでいられるらしい。気にする能力がないだけかもしれないが、そういう素質は、顔と人間性のマイナスを打ち消せる程度には貴重だった。
「感度はどうかなァ?」
「ん、ン、あっ、あぁっ」
 菊穴に指を出し入れしながら、ゆるゆると扱いてくる。敏感な棒は、指一本一本の細かな凹凸まで明敏に感じ取った。下半身に思わず力が込もる。
「ンフゥ、先走りが出てきたねぇ。ぬるぬるだよぉ」
 紫が感じているものは、尿道口から分泌される粘液として現れた。彼はそれを指先で掬い取り、にちゃ、にちゃと音をたてながら全体に塗り広げていく。
「このままゴシゴシして、射精できるかのチェックをしてもいいんだけどぉ。実は、紫ちゃんのために、凄くいいものを手に入れておいたんだぁ、きっと気に入るよぉ」
 熱を孕み脈動するモノが、解放される。よりによって、こんな中途半端なところで。焦らすつもりでやっているのだとしたら、企みは大成功だ。
 知らず知らず、下半身に片手が伸びていく。八雲紫が、幻想郷の管理者が、まさかこんな自らを慰める行いだなどと――プライドが訴える。だが、この男と逢っているのだって、そういうプライドの疼きを愉しむものなわけで。ならこれも、問題はない。
「ぁ、んん……はぁあ」
 甘やかな声が唇から零れ落ちる。ドレスグローブの滑らかな生地が、亀頭を包む。掌に比べればややざらつくものの、それがかえって刺激となって気持ちが良い。
「ひひッ、我慢できなくなっちゃったかなぁ? ごめんねぇ。でも大丈夫、すンごくいいものを用意したからさ、ほんとに。そりゃもう、ほんとにスンゴクいいのを」
 見れば、桃色をした筒状のものを、彼はゴミの中から掘り出していた。ぶぢゅると、中に潤滑油を注いでいる。柔らかい素材で出来ているのか、ぷるぷると震えている。
「……それは、何?」
 凄く良い、などと言うわりに、見た目は安っぽい。第一、この部屋にあったものだ。何に使うのか知らないが、衛生面が気になった。
「ンッ、使ったことない? オナホールだよぉ。おちんちんハメて気持よくなる道具。あっ、もちろん未使用だからね、僕のおちんちん挿れたりはしてないからね」
 オナホール。女性器の内部を模して造られた、男の自慰用の道具だったか。話には聞いたことがある程度で、現物を見るのは初めてだった。潤滑油は愛液代わりか。
 彼女はそういった道具に疎かった。そういうものを自分で使うのは、自慰と同じで代替行為にすぎない。プライドが許さなかった。
 とはいえ、二人での行為の一環としてなら、悪くない気がする。それになにより、そこまで推されては、ちょっと気になってしまう。
「ほら、中はこうなってるんだ、おまんこみたいだよねぇ、グフフッ」
 思った以上に柔らかいらしい。ローションでぬめる内部に指を差し入れ、彼はそれをぐぱぁ、と裏返してみせた。膣襞をオーバーに模した凹凸が無数に刻まれている。
「姿勢はそのままだよぉ。今からこれで、僕が紫ちゃんのおちんちん、たぁっくさんヌッポヌッポしてあげるからねぇ」
「あっ」
 亀頭にひんやりとした感覚が走る。ホールの入り口が押し当てられたのだ。潤滑油の冷たさは、彼女を萎えさせるどころか、むしろその昂ぶりを増さしめる。
「そぉれ、入ってくよぉ、ズブズブぅうう」
「あ、はぁッ……、……ん?」
 ぬ、ぬぬ、と、亀頭が、続いて肉幹が、筒の内に飲み込まれていく。モノの太さに対して穴の口は狭かったが、素材が柔らかいからか、それは割り広げられる形で紫のペニスを受け入れていく。シリコンかなにかでできた襞が、モノをみっちり包み込む。
 そして彼女があげたのは、快楽の声――でなく、疑問符だ。初めてのオナホールは、悪いというほどではなかったが、期待をもたされたほどでもなかった。確かに奇妙な感じはするが、これなら普通に扱いた方がまだ気持ち良いのではないか。
「んッフフ、拍子抜けにはまだ早いよぉ。これね、引き抜くのがスゴいんだよぉ!」
「え……あっ!? くっ、ふぅうう……ッ!」
 スゴい、という言葉の意味が、一瞬で理解できた。内側に仕込まれた、ローションまみれの無数の襞が、ぬろろろろろろ、と、一斉に肉幹に吸い付き、愛撫していた。ゾゾゾッ、と登ってくるソリッドな感覚に、びくっ、と腰が震える。
 どうやら、襞は全て、返しのような構造になっているようだった。挿れるときには優しく迎え入れ、引き抜くときには逃すまいとするかのように絡みつくのだ。そう、ちょうど今彼女がされているように。
「ひぃ、ンッ、んんんぅっ」
 唇を噛み、シーツを握り、足裏にぴんと力を込め、耐える。大妖怪も、感覚は人間と大差ない。殴られれば痛いし火に触れれば熱い。気持ち良いものは気持ち良いのだ。
 彼はゆっくり、ゆっくりとオナホールを引いてた。それがかえって、紫に襞の一枚一枚の感触を認識する時間を与え、快楽を増大せしめていた。
「ンッふふ、一往復しただけだよまだ。それもゆぅっくり。すンごい感じてるねぇ。これ、ガシガシ扱く人もいるんだけど、紫ちゃんにはまだ刺激が強いかなぁ?」
「がっ、がしがし?」
 愕然とさせられた。あの速度でも、腰の骨を抜かれるような快感があった。そんなものをガシガシと使うなど、快楽が大きすぎてショック死するのではないか。人間はたまに恐ろしい。恐ろしいほど馬鹿だ。
 とはいえ、いくらか余裕を手に入れつつもあった。彼の言うとおり凄い道具だが、あれくらいゆっくり扱かれるのなら、まだなんとか耐えられそうだった。……しかし、その目算が甘かったと、すぐに思い知らされる。
「でもねぇ、実はこれで終わりじゃないんだ。もういっこ用意してあるんだよねぇ」
「え、ちょっと、あの」
 複数あるなどと、言っていなかったではないか――抗議するよりも先に彼は道具を取り出し、自慢気に説明を始める。
「コレはさすがに知らないかなぁ。エネマグラだよ、ンフ、ホントは医療器具らしいけどねぇ。フフッ、これイイらしいよぉ。あっ、これももちろん未使用だからね?」
 うねうねとした奇妙な形のそれを、わざわざ見せつけてくる。オナホールと違い、こちらは見た目から用途が想像付かない。医療器具というのも眉唾に思えた。
「お尻の中の前立腺ってとこを直接ほぐすんだぁ。そこを責められると、おちんちん気持ちいいらしいからねぇ。ちょっと試させてねぇ」
「ちょっと待ちなさい、らしいらしいって、もしかして自分で使ったことないの?」
 ぎょっとする。自分で使ったことのないものを人様に使おうというのか、こいつは。それも、尻の中を直接ほぐすといった。つまりこれは尻にねじ込むものということか。
「ごめんねぇ、僕お尻開発してないからさ、でも多分気持ちいいよ」
 彼は聞く耳を持たなかった。こちらに対しそれを使うということは、彼の中で既に決まっていたことなのだろう。ホール同様、たっぷりと潤滑油をまぶされたそれが、菊穴にぴとりと押し当てられる。
「馬鹿、待ちなさ――あっ、くぅッ、んぅううっ……」
 せめてもの反抗として括約筋を締めようとするが、ローションで摩擦を失ったそれは、あっさりと直腸の内側に入り込んでくる。
「ぅ、くぁ、はぁああっ……」
 重苦しく息を吐く。実際のところ痛みはない。けれども、汗臭い布団に突っ伏して耐えなくてはならなかった。背骨にホットチョコレートを流しこむような甘ったるい快感が、体を浸してくる。こちらの快感は本当に苦手だ。こちらが煉瓦の壁を作って堪えようとしているのに、水のように隙間から忍び込んで駄目にしてくる。
「どうかなぁ。コレ使うと、おちんちんも気持ちいいらしいんだけど」
 鷹揚な声が聞こえてくる。答えられなかったが、彼の言う通りだった。エネマグラの挿入部はまっすぐになっておらず、やや角度がつけられている。腸内のある部分、ちょうどペニスの裏側あたりを重点的に圧迫してくる――その快感は、まるで直通のルートでも存在しているかのように、ペニスへと直接伝わってきた。
「っ、い、今なら、怒らないから、これ抜きなさいっ……」
「えぇっ? そんなに気持ちよさそうなのに怒っちゃやだよぉ。ほら、オナホールでゴシゴシしたげるから、機嫌直してよぉ」
「ッ、ぅくぅうううッ!?」
 腰が思い切り跳ねた。筒を握った手が、ぐいと動いたのだ。ずるるっ、と、モノがその奥まで挿入される。その瞬間、下半身が弾け飛ぶような快感が走った。
 その快楽は、先ほどまでとは比べ物にならなかった。いや、変わったのはこっちだ。まるでペニスだけ、神経の本数が数倍に増えたかのようだ。そうなったのは、間違いなく尻穴に捩じ込まれたエネマグラとか呼ばれる道具のせいだろう。
 紫は恐怖すら覚えていた。今のは、挿れるほうだった。そしてこの道具は、挿れるときより引き抜くときに重点を置いて作られていた。挿れる方でこんな電撃のような刺激が走るなら、引き抜くときは、いったいどうなってしまうのか。
「じゃあ、引っこ抜くよぉ」
「待って、本当に待って、あぅッ、あっ、ひ、あくううぅううううううッ!」
 ずろろろろっと、よりにもよって彼は一息にホールを動かした。急に引き抜かれたことで内圧がかかり、無数の襞は先ほどにも増して激しく、きゅうきゅう、みっちりと肉幹に吸い付いて刺激する。ただでさえこちらの感覚は、エネマグラに高められているというのに。
 二重苦ならぬ二重の快楽に、ただでさえいっぱいいっぱいだった彼女が耐えられるわけもなかった。筒の中で、限界を迎えた肉棒が脈動を始める。びゅく、びゅく、と、白い欲望を偽りの膣穴で無駄撃ちしていく。放たれた精子は、ありもしない卵子へとまっすぐ突撃していく。白濁が放たれるたび、頭を灼くような快楽が走り、半狂乱にでもなったかのように髪を振り乱した。
「はぁぁ、くぅ、んぁ、っひ、ふぅぅッ、あ、うぁッ」
 膣内射精の感覚に震える。肉体は曖昧でも、性自認は女だ。抱かれることはあれど、抱くことはなく、彼女はいまだに童貞だった。擬似的とはいえ初めての性交は、腰が抜けるほどの快感をもたらした。
「ンヒヒッ、イッてるねぇ、派手にイッてるねぇ。イイと思うよぉ、そういうの」
「はっ、くぅぅ、ぅアッ」
 牛の乳を搾るように、ペニスの根元から先端にかけ、ギュッ、ギュッ、とシリコン越しに圧を加えてくる。尿道に残る残滓までも吐き出させようという手つきだった。家畜のような扱いをされ、紫は怒りを覚えるどころか、心の中のある部分を震わせる。
色めいた喘ぎが零れる。息は荒く、肺に腐臭を帯びた空気が流れ込んでくる。それは今いる場所、していること、その相手がいかに八雲紫という存在に似つかわしくない最低のものであるかということを彼女に意識させ、屈辱に高揚せしめた。
 長い長い射精が終わった頃、彼が声をかけてくる。
「気に入ってもらえて何よりだよぉ。おまんこもトロトロになっちゃったねぇえ」
 遠慮もなしに、指が秘唇に触れてくる。稀なほど濡れているのが自分でも分かる。
指はそのまま淫肉を掻き分け、体の内へ入り込んでくる。男の悦びばかり与えられていたせいか、不意にそうして女の部分を弄られると、はなはだしく反応してしまう。
「ほぉら、聞こえるぅ? おマン汁がクチョクチョいってるよぉお。しかもどんどん溢れてくるねぇ。すごいねぇ、すごいやらしいねぇ、んフッ、ンフヒッ」
 わざわざ大きく、ゆっくりとした動きで、ことさら音が立つように掻き混ぜてくる。彼はそのまま指を引き抜くと、粘液にまみれたそれを見せつけてきた。愛汁が蛍光灯の光を反射し、てらてらと輝いている。
「どおだったぁ? 紫ちゃん。スゴかったでしょぉ?」
「……そうね、悪くはなかったわ」
 息を整えながら返す。それは高いプライドが許容する、最大限の賛辞だ。そのことを知ってか知らずか、男はにまにまと笑っている。
「そっかそっかぁ、良かったんだね、ならもっとしてあげよう」
 にゅぽん、と音をたて、ようやくオナホールが取り外される。解放されたペニスはローションと子種にまみれ、薄白くぬらぬらと輝いている。未だびくびくと脈動しており、雄々しさを失っていなかった。尻穴に埋められたままのエネマグラが、背徳の穴からペニスを刺激し続けていた。
「ンッフフゥ」
「あっ、ひッ、あくっ」
 粘液まみれのペニスを扱きたてながら、彼はもう片手で近くのゴミを漁り始める。達したばかりのモノへの刺激は鮮烈で、望むと望まざるとに関わらず腰がかくかくと動いてしまう。
「ひひ、あったあったァ」
「それは……ゴム?」
「ンフフフ、そうだよ、コンドーム。それとこれ、ローター」
 どちらも知っている。ゴムは性病予防を目的とする道具だ。しかし彼女は妖怪で、人間のかかる病は問題にならない。ローターの方は二つあった。細いケーブルの先に、ピンク色をした豆状のものがぶら下がっている。スイッチが入れられており、ぶぶぶ、と無機質に震えている。
 何をする気かと訝る紫に、男は自慢げに言う。
「実は最近、いーいオナニーの仕方を発明しちゃったんだぁ。ノーベル気持ちいい賞とかもらえると思うんだけど、せっかくだし紫ちゃんにもおすそ分けしちゃうよお」
 故ノーベルも草葉の陰で泣いていることだろう、と思わずにはいられない。しかし実際、期待を覚えてもいた。そういうことに関してのこの男の目は、間違いがない。
「ゴムつけると気持ちよさが減るっていう人いるけど、やり方の問題だと思うなぁ」
 ぬるぬるとする肉幹に、ローター二つが押し当てられる。その上からコンドームが被せられ、固定された。逃げ場をなくした振動が、直接伝わってくる。
「ん……あ、ぅ」
 オナホールの灼けるような快感とは違い、これは穏やかで、悪くいえば物足りないような感じだった。じわり、じわり、と広がっていくような気持ちよさだ。
「まっ、最初はちょぉっと微妙に感じるかもねぇ。でもすぐに分かるよぉ。ひひっ、さぁて、紫ちゃん。四つん這いも疲れたでしょぉ。一回立つ?」
 言われ、立ち上がる。ちょうど腕と背中がだるくなっていたところだった。しかし立ち上がると、重力に逆らう肉棒がドレスの下から鎌首をもたげるのが丸わかりだ。
「ンッフ、ンッフ、服、脱ごうかぁ。ひ、ひひ、裸、はだかんぼっ、見せて見せて」
「はいはい、分かったから」
 囃し立てるような勢いをなだめつつ、ドレスに手を掛ける。ゆっくり、ゆっくりと、見せつけるようにまくりあげていく。
 フゥフゥと、獣じみた興奮にまみれた息遣いが聞こえてくる。いや、獣ではない。獣は単純に、子孫繁栄のために交尾する。だがこいつは、あくまで気持ちよくなる道を探っているのであって、子を成すことなど考えていないだろう。
「脱いだけれど」
「うん、うんッ、ほぉおおおおおぉおお、おおおおぅおおおおおおッ」
 目を血走らせ、まぶたを見開いて、鼻頭がぶつかるほどの距離で、頭頂からつま先までを見つめてくる。唇から漏れる声は、混じりっけのない感嘆を表していた。逢うたびに見ているだろうに、毎度毎度、大げさなほどに反応する。
 とはいえ実際、彼女の肉体は、そういう反応をしてしまうのも当然のものだった。神が最後の一日に休んだのはこれを作り出すためではないかと思わずにはいられない美しい肉体がそこにあった。しゅる、と下る首筋は、優雅に、ペガサスの翼のように伸びる鎖骨へ連なっていく。乳房の稜線は、他のどんな方程式の描く曲線すらも軽く凌駕しており、数学と幾何学の水平線を越えた先に存在していた。くびれた腰・腹は白く、その他のあらゆる部分と寸分の狂いもない調和を見せていた。あと一ミリでも太くとも細くとも、これほどの安定は生み出されていなかったろう。
 そして、下腹。そこは彼の行為により濃厚極まる雌の匂いと雄の匂いをむわぁ、と撒き散らし、比類なく淫らな様を晒していた。陰毛は蜜に濡れ、朝露を浴びた庭園のようにしっとりとしている。秘むべき裂け目は昂ぶりを抑えられず、埋められるのを待っているように収縮している。対照的に、背徳の門は、埋められた喜びに歓喜の声を上げ、エネマグラをしっかりと咥えこんで離そうとしない。雄々しく猛々しい男根、女にありえないはずのものは、世界一のシェフが丹精込めて作ったスープに何の考えもなく放り込まれたマヨネーズのように、女の完璧たる美を破壊するはずのものだ。しかし実際の所、彼女の美しさは、むしろそれの存在によって完成されている。それはゴムを被せられ、二つの無機物の振動に責め立てられていた。腰と太腿が、ぞぞぞ、と震えている。
「ンああぁあああ、すンごくやらしい体だねぇぇええ、もぉ、見てるだけでザーメンびゅるるんってしちゃいそうだよぉおッ、ンンンッ」
 感嘆の言葉を喚きたてながら、彼は自身のモノを扱き上げていた。いつの間にやら、彼も裸になっていた。股座のものは、お世辞にも立派とはいえない。くろぐろと生い茂る密林に埋もれており、皮もたるんでいる。情けない、醜悪な欲望を具体的な形にしたかのようだ。恥垢がぐずぐずとへばりついている。腐臭が漂ってきそうだ。
 そんなモノ、行為を見て、紫は、無意識的に羨ましさを覚えていた。あんな風に恥も外聞もなく力強くガシガシと扱けたら、さぞ気持ち良いことだろう。それは、自分には真似できないことだった。妖怪としての矜持が邪魔をするのだ。そもそも、羨望自体、普段ならばプライドが覚えさせはしないだろう。しかし今、その箍は緩みつつあた。快楽がじわじわと、その頭を犯しつつあった。ローターが与えてくる刺激は、どこにも逃げず、放出されることもなく、体中に蓄積していくようだった。
 熱をはらんだ欲の棒から、じわり、と先走りが滲むのを感じた。それはゴムにせき止められ、先端に溜まっていく。
「ところで、それ……撮ってるの?」
「そうだよ? ッああダメダメぇ! ダメだよぉせっかく紫ちゃんのいやらしい姿の永久保存版をつくろうとしてるのにさぁ!」
 さすがに羞恥を感じ、乳房、そして浅ましい姿を晒す股間を隠そうとすると、制止された。しぶしぶ従った。無機質な視線がレンズから浴びせられているのを感じる。彼の横に、三脚が立てられていた。ビデオカメラがこちらに向けられている。こちらが脱いでいる間に自分も脱ぎつつ、そんなもののセットまで済ませたらしい。こんなことだけはやたらと手際が良い。
「ところで紫ちゃぁん、僕のオナニー、羨ましそうに見てたよねぇ」
「な、馬鹿言わないでよ、誰が」
 図星だった。うかつだった。この男の変なところでの目ざとさを忘れていた。
「隠さなくってもいいよぉ、責めてるわけじゃないから。ただ、それなら最高の提案があるからさぁ。……オナニー、見せ合いっこ、しようよ」
「誰が――」
 否定の言葉はあやふやなものとなった。実際、それは胸の踊る提案だった。言い訳が与えられたのだ。しろといわれたから、という言い訳が。
「……まあ、仕方ない、わね」
 あくまで、しようと言われたからそういう体を保ち、口やかましいプライドを騙す。にやつく口端、高揚する声を隠せただろうか。
「ンフッフゥ! じゃあほら、早速見せてみてよぉ。紫ちゃんのオナニーを見たくて見たくて、僕のちんちんスゴイことになっちゃってるんだよぉ」
 指を秘裂に伸ばす。ひくついている陰の唇に、くちりと触れる。視線が注がれているのが分かる。穴のあくほどというのはこのことだろう。見られているからやめろ、などと、己のうちの誇りが口やかましく命じてくる。やれって言われたんだもの、と反論する。思考停止ともいえるその言い訳は、それ以上の一切の反論を無意味にする。
「あっひ、くぅっ」
 自らの指を、自らの体内に沈めていく。するのも己ならされるのも己、自らが自らに施すその行為は、しかし確かな快楽を彼女にもたらす。
 膣肉が指に割り開かれていく。襞はきゅうきゅうと異物を締め付け、歓待してくる。我が肉体ながら、なんと淫らなことだろう。
「ひッ、ひひッ、フヒヒぃ、オナニーだぁ、紫ちゃんのオナニー、すごいぞぉおお」
 目を血走らせ、鼻息も荒く、こちらの動きをほんの一瞬でも見逃すまいとするかのように、じぃいい、と見つめている。その熱を感じながら、彼女は行為を進めていく。埋めた指を鈎のように曲げ、襞を指の腹で引っ掻いていく。
「ッぅあんッ、っあは、ぅくぅ」
 下半身が泥沼に浸かったかのようだった。快楽という泥だ。無機質な道具によって与えられる快楽は、逃げ場のないがゆえに溜まりに溜まり、体の半分を埋め尽くす。指は例えるなら、沼を浚う棒のようなものだ。ぬっちゃ、ぬっちゃと音をたてながら、こなれた淫肉をかき混ぜる。
「う、ひぁ、あっ、あぁぁあ」
 しかし、いくら逃げ場がないとはいえ、快楽も無限に高まっていくわけではない。風呂桶に湯を張るようなもので、ある一定量を超えれば、当然、溢れだしてしまう。
 それは尿道口から漏れる白濁という形で現れた。しかし、びゅるびゅると放たれたわけではなかった。じわぁあ、と、先走りのようにして滲み出してきたのだ。射精のときの、目の裏側が白くなるあの感覚が、静かかつ確実に、押し寄せる高波のように彼女に襲いかかる。焦燥にかられたような声が零れる。ゴムによって堰き止められた白濁が、その先端に溜まり、水風船のように膨らませていく。
「ッ、あぁ、く、ひっ、ぅうア」
「ひっひ、始まったねぇ。どぉ? 紫ちゃん。それかなりイケてるでしょう。コツは厚めのコンドームにすることだねぇ。でないと、途中で破けたりしちゃうからねぇ」
 どうでもいいようなうんちくを語りながら、彼はペニスを扱き続ける。その言葉を、紫は聞いていなかった。というよりも、聞こえていないのだ。射精の快楽は、彼女の頭を精液にどっぷりと漬け込み、まともな思考をさせなかった。
「あぁっ、あひぃあ、ッくひ、あっ、ぁぁあっ、はぁぁああッ」
 もはや立ってもいられなかった。膝をつきながら、ぐちゅぐちゅぐちゅと音を立て、掻き回す。恥だの外聞だのというつまらないものなどを気にしているだけの余裕は、もはや残されていなかった。口からは淫らな喘ぎを、秘裂からは猥雑な水音をたて、自らを嬲る行為に没頭していく。八雲紫を知る者が見れば、偽物ではないかと疑うか、さもなくばこんな光景はありえないと断じることだろう。
「ンッフゥ、スゴイねぇ、猿みたいだねぇ、お猿さん。ひひひっ」
「はひ、あひぃあッ、く、ぅううああああッ」
 この私を、下等な猿ごときに例えるなど――浮かぶ屈辱と怒りは、彼に対する攻撃どころか、さらなる行為という形として現れていく。もっともっと、猿のように。
 それだけ掻き混ぜても、掻き混ぜても、満ち足りない。この緩やかな射精は確かにたまらないものがあった。射精の感覚をゆるやかにずっと味わえるのだから。しかしこれは同時に、いわば起承転結の転が延々と繰り返されているようなものでもある。転が転として成り立つのは緩急があるからこそだ。ゴムの先に白濁が溜まり、縁日の水風船のようにぶらぶらと垂れ下がっている。その貯蔵量に比例して、じわりじわりとではなくびゅるびゅると思い切り射精したいという欲望は高まっていく。高ぶりは、具体的な形をとった。器具を取り付けられ、情けない姿を晒すペニスへと伸びる、手。
「ああああダメダメダメダメぇっ、扱いちゃったらソレする意味ないじゃんかぁぁ」
 だというのに、彼はそれを認めない。そのいかにも鈍重な体がいったいどうしたらと思うような素早さで、彼女の手を取った。怒りすら覚えた。飢えに飢えた犬の目の前から餌を奪ったなら、怒りもするというものだ。しかし、犬と違い、噛み付くことはない。彼女ほどの妖怪が噛み付いたなら、人一人の命などあっさり吹き飛ぶだろう。そうなってしまったとき、本当に困るのは己だ。また人探しをしなくてはならない。
「大丈夫だよぉ、大丈夫大丈夫。おちんちんはゴシゴシしちゃだめだけど、こっちをズブズブしてあげるからねぇ」
「あっ」
 そのまま上体を倒される。またも犬じみた四つん這いの姿勢にされる。彼の視線は、指をしっかりと咥え込んだ淫らなる裂け目に注がれている。
「ひっひひ、これくらいクチョクチョトロトロにほぐれてたら前戯とかいらないよね、フヒッ、フヒヒッ、このままおちんちんハメハメして、おまんこの中ぐちゃぐちゃにして、紫ちゃんのやらしいやらしいおちんちん裏側からゴリゴリしたげるからねぇ」
「あっ、あっ、あぁあ」
 ずるりと、指が体内から強制的に抜かれる。代わりに膣口に押し当てられたのは、硬く熱い、槍の穂先だ。
「あはっ……」
 小さな声が零れた。期待に濡れた声だった。本能的なものだった。曖昧ではあれど、紫とて女だ。それも発情した女だ。雄と雌の交わりを目の前にして、どうして疼かずにいられるだろうか。それも、ろくに風呂にさえ入っていない、入っていたとしても洗っていないだろうペニスを捩じ込まれるとなれば、本能のみならずプライドまでも疼かずにはいられない。あんな恥垢まみれのものが捩じ込まれるのだ。捩じ込まれて、好き放題にずごずごと犯されて、膣襞でもって清めさせられるのだ――倒錯的な考えが、頭の中を支配する。彼女は顔をしかめるどころか、むしろ目尻を垂れ下げ、腰をくねらせてみせた。
「ひひっ、おちんちんが欲しくて欲しくてしかたないって顔してるねぇ。いいよぉ、僕こう見えて寛大だからねぇ、あげちゃう。ひひっ、ほら、入ってくよぉ、紫ちゃんのやらしいメスおまんこの中にぼくのおちんちんずぶずぶしていってるよぉ、へひ」
「んあぁッ、は、くひっ、んぁああ」
 目にするのすら汚らわしいようなものが、よりにもよって女としてもっとも大切な場所を、ぬ、ぬぬ、と掻き分けていく。あろうことか、そこはそれの侵入を、悦んで受け入れていく。彼女があげるのは、拒否の言葉でも、拒絶の悲鳴でもない。切ない、上ずった、快楽をねだるおんなの声だった。
「ひひッ、んひひッ、ンッふぅうう、紫ちゃんのおまんこきもちいーッ」
「あぁッ! ひ、あっ、あっ、はぁぁぁっ!」
 そして抽送が始まる。重量級の彼のストロークは、鈍重でこそあったが一発一発が重く、霧のかかる街に払暁を知らせる鐘のように脳髄に響き渡る。ごりゅ、ごりゅと、硬直した海綿体に膣肉が抉られていく。そのたび、ズチュッ、ずちゅんと、膣口から蜜と空気の混ざった猥褻な音と、肉同士のぶつかる乾いた音が響き渡る。宣告通り、彼は紫のペニスを裏側からゴリゴリと刺激してきた。その快感はエネマグラが与えてくる性感と合流し、精液という形で尿道口からとろとろと垂れ流される。突かれる度、白濁がぎっしりと詰まって球状になった先端がぶらぶらと揺れた。
 こんな下等な男の、汚らしい粗末なものに犯されて、ああ、なんてきもちいい――思考は色欲に染められ、淫らなことが頭のなかを、それこそ猿のように満たしていく。彼の抽送に合わせるように腰を振りたくり、快楽を貪っていく。獣じみた喘ぎ声が、互いの口から溢れでている。カメラの存在など、とうに忘れてしまっていた。
「ンフッ、こっちもごちゅごちゅしてあげるよぉ、ほらっ、ほらっ、ほらっ」
「あへぁ、ひっ、んァ、おほっ、おっ、おっ、おぉおおっ、ほひっ」
 下品な声を隠そうともしない。というより、隠せない。仕方がない。百キロを優に越す体重の乗ったストロークで、女の径の奥の奥、小さな祠の入り口を突かれれば、誰であろうとそうなってしまうというものだ。舌を突き出し、狂ったようなよがり声をあげる以外に、彼女にできることなどなかった。突かれる度、豊満な乳房が揺れる。
「そぉれっ、ぐりぐりぃいいい」
「ああぁはあぁぅぁ、んァ、はひぃいッ」
 目尻から涙が零れる。悲しみによるものではない。痛みによるものでもない。悦びがそれを流させた。怒り狂った杭の先端を、子をなす聖域の入り口にぐりぐりと押し付けられていた。女として、子を孕むものとして、これほどの幸せはない。まして、彼女は半陰陽。女とも男ともつかぬもの。だからこのようにはっきりと愛されれば、これ以上なくキく。彼女の子宮は、彼のペニスに何もかもを捧げようとしていた。
「どぉ? 紫ちゃん、ひひ、気持ちいい? 気持ちいい?」
 奥の小室を突き上げながら、ねっとりとした言葉を耳元に注ぎ込んでくる。彼女の脳はとっくに快楽に支配され、言語野もまともに機能してはいないが、にも関わらずその言葉に限ってははっきりと明確に捉え、答えを導き出す。言うまでもない答えを。
「気持ちぃいッ、セックスするのッ、奥ずこずこされるのいいぃいいッ」
「ンッフフゥ! そうだよねぇ、そんな腰ぐりぐりってさせちゃってさぁ、もうこれ、ちんちんズボズボされるのが好きだって言ってるようなもんだよねぇ。おちんちん汁びゅーびゅーされてびゅーびゅーする準備はばっちりって感じだねぇ」
 はへ、あへと喘ぎ乱れ狂う彼女を、彼は言葉でもって追い詰めていく。その言葉は、全く故のないものというわけではなかった。彼女は確かに、彼から子種を搾り取ろうとするかのように腰を密着させ、くねらせていた。その動きは蛇のようであり、またどこまでも淫らでもあった。
「ところでさぁ、気持ちいいってそれ、おちんちんとどっちがいいの」
「んァっ、はっ、あぁんっ、……えっ?」
 答えられない。羞恥が邪魔をしたからではない。究極の選択にぶち当たったからだ。
「いやさぁ、紫ちゃんさっきおちんちんでイキそうだったのに、今はおまんこの方が気持ちいいって感じだからさぁ。ホントはどっちでイキたいんだろうなぁって思って。言ってごらんよぉ。気持ちいい方でイかせてあげるよぉ?」
「ひッ、あぅ、んァあッ! はっ、あぁッ、アァッ、あくぅううううッ……!」
 言いながら、両方の快楽を引き出してくる。体ごと刺し貫くように腰を突き出し、さらにはエネマグラをぐりぐりと弄って前立腺をも刺激してくる。
 汗臭い布団に顔を伏せ、呻く。どっちが気持ちいいか? そんなもの、決めようがない。どっちも気持ちいいに決まっている。それは甲乙をつけられるようなものではなかったし、どちらが欠けていても成り立たなくなる。男であり女でもある彼女には両方の悦びがあってしかるべきだし、性の悦びは絶頂という幕切れがあってこそだ。
 だから答えられない。どっちがという前提のもとでは絶対に無理だ。だというのに、
彼はさらに残酷な宣告を彼女に下す。
「あれっ、答えないの? あっ、もしかして、どっちでもイきたくないとかかなぁ。それならこんなことするのもヤだよねぇ。ごめんねぇ気づかなくって、やめよっか」
 紫が覚えたのは、恐怖だった。どんな妖怪を相手にしようと、どんな強力な攻撃を受けようとも決して怯まない彼女が、たった一人の不出来な人間がこぼした一言で。
 それは、死の恐怖だった。もっとも不本意な形での死に対する恐怖だ。彼女は本気で恐れたのだ。大げさなようであるが、当然のことだった。今や彼女の頭は快楽漬け、中毒の状態にある。魚が水無しで生きられないように、人が空気無しで生きられないように、彼女はもはや、肉の交わりによる悦びなしには生きられない。
 腰が引かれていく。抽送のためではない。たった今まで彼女を犯していたものを、あろうことか引き抜こうとしているのだ。彼は本気だった。
「いっ、嫌、やめちゃ嫌……」
 零れ落ちた言葉は、さながら童女のそれであった。取り繕った部分が取り払われ、そこから素の彼女がのぞいていた。
「んっ? 嫌なの? じゃあおまんこでイきたいのかなっ? いいよぉ。おマン汁が溢れすぎて体中の水分なくなるくらいまでイかせてイかせてイかせたげるよぉ」
 だのに、それでもなお、彼は依然として理解してくれない。引き抜きかけたモノを再び突き入れながらも、口にするのは的外れな言葉だった。回数や程度は関係ない。彼女にとって悦びとは乗算なのだ。片方をどれだけ大きくしようと、もう片方がゼロであれば、全くもって無意味でしかない。
「違う、違うの、そういうことじゃないのッ」
 首を振って否定する。駄々る子供のような様に、彼は困ったような声を上げる。
「んんっ? おまんこでもない? でもやめちゃいけない? どういうことかなぁ。イきたくはないけどハメハメはしたいのかな? それならそれで一晩中でもズボズボして、おまんこ元に戻らないくらいにしてあげるよぉ」
「違うのっ、そうじゃなくて、そうじゃなくって! どっちかじゃなくて、両方っ、両方でイきたいのぉッ!」
 赤裸々な告白だったが、彼女は大真面目だった。もはや生と性がイコールになっている彼女にとって、絶頂は生きていくために必要な呼吸なのだから。
 心の中で、こきゃりという乾いた音が響いた。芯のあるものが、へし折れた音だ。彼女のプライドが、へし折れた音だった。
 大妖怪だからどうだとか、幻想郷の管理者としてどうだとか、そんなことは、もうどうだっていい。早く気持ちよくならないと、私はきっと、死んでしまう。
「あっはぁ! そういうことかぁ! なるほどなるほど、なるほどなぁ! なんだぁ、そういうことなら早く言ってくれればよかったのにぃ、それなら、たくさんたくさん、一生分くらいイかせてあげるよぉおッ」
「あぁッ――イかせて、私のこと、一生分っ……」
 零れたのは期待に濡れた声だった。彼女は胸を高鳴らせていた。一生分。紫ほどの妖怪の一生分ともなれば、大層なことになる。そんなにもイけるだなどと、どうして期待せずにいられるだろうか?
 ペニスが引き抜かれた。埋められていて当然の女陰は、埋めるものを失った。体は狂わんばかりの切なさを訴え、彼女を身悶えさせ――はしない。分かっているからだ。これはあくまで、さらなる快楽のための、準備にすぎないのだと。少しくらいなら、待つこともできる。
「ヒヒッ」
 ころん、と転がされ、仰向けにされる。ねっとりとした笑みと、視線が合う。彼の股座のモノは、愛の蜜で濡れそぼち、ぬらぬらと輝いている。べったりと張り付いていた恥垢が見当たらない。抽送の間に剥がれ落ちて、己の体内に残されてきたのだ。
「ひひ、可愛いねぇ紫ちゃん。可愛いねぇ、あっそうだ、ちんちん、ちんちんだよ」
 何のことだかわからなかった。ペニスがどうした、と思ったのだ。ほら、これ、と彼が手でしたこまねくような仕草でわかった。犬にさせるほうのちんちんだ。やれと言っているのだ。きっと自分が、餌を待ちわびる飼い犬のような、媚びた服従の顔を浮かべていたから。ふざけるな、そんなことができるものか、私は八雲紫だぞ――と訴える声は、ない。そこにいるのは正真正銘、快楽を求める一匹の雌だった。
「くぅん……」
「ヒヒッ! ンッフゥウ! いいねぇッ、いいよぉ、ひひひっ、かンわいいよぉぉお紫ちゃんんん、そんなにおセックスが好きで好きでたまらない紫ちゃんは今すぐ気絶するくらい犯して犯して犯して犯して犯してあげるよぉおおおおおおおッ」
 媚びた鳴き声までつけ、彼女は求められるがままの姿勢を取った。ぶふゥウんと、豚のそれより荒い鼻息の後、興奮に狂った声とともに、でっぷりとした肉体が彼女にのしかかる。生まれたままの体を、ぴったり密着させ。彼は体重全てを預けてきた。重さと、洗っていないが故の酸っぱい匂いを感じる。それに対して彼女が覚えたのは、嫌悪ではない。愛されているという実感だった。
「さぁあ、紫ちゃん、チューしようチュー。ほら、んぶちゅ、じゅぶるるっ」
「してっ、チューして、私に、あむ、んっ、ふむぅぅううっ」
 たらこよりも太い唇が押し付けられ、舌が入り込んでくる。腐臭漂う粘膜が、口内をれろれろと舐めまわしてくる。彼女もそれに合わせるように舌を動かす。粘っこい唾液が送られてくる。ろくに歯も磨かず、荒れ放題の胃から込み上がる悪臭を含んだ、地獄のような液体だ。彼女はそれを、喉を鳴らして嚥下する。仙酒のように芳醇だ
「ぢゅるッ、ふむッ、ぢゅぅるるるるるる」
「んっふ、んぅ――くぅんんんんッ!」
 彼のそれは接吻というよりも、ただ吸い付いているといったほうが近い行為だった。しかし紫は目を細めながら受け入れてみせた。繋がった粘膜の中で、嬌声はくぐもって響いた。そして高い声があがる。ペニスが再び、淫らな小径の内側へ侵入したのだ。姿勢が違うだけに、先ほどとは異なる部分が擦られる。紫は腰を掲げるようにして、それを受け入れる。神も認めた子を作るための体位。だが二人は、そんな神聖な目的のことなどまるで考えてもいなかった。頭にあるのは、ただこの場このときの快楽のことのみ。ただ気持よくなることだけだった。
「んもっ、ぉぅ、ぢゅる、ぢゅるるッ、んっフッふぅゥ」
 唇をタコの吸盤のように吸いつかせながら、彼は抽送を始める。上から下へ、体重の乗ったピストンだ。百キロを下らない重みを恥骨にかけられ、紫は目を白黒させる。みっちりと密着した腹が、ペニスを擦る。でっぷりとしたそこは汗でぬるついており、ローターと前立腺の快感に散々焦らされていたモノを愛撫していく。じわじわと滲む精液の出がさらに良くなり、水風船のようだったコンドームがさらに膨れあがる。
「ぶっはぁ、ほらほらほらほらどうかなッ、紫ちゃん、僕のちんずぼ、どうッ?」
「アハッ、はひっ、あへっ、ほっ、おひぃ、ひんッ、あっあっあっあっ、はへぇッ」
 唇の間に唾液の橋を伝わせながら尋ねてくる。答えることはできなかった。一突きごとに、意識がリセットされるほどの快楽が彼女の世界を満たしていた。それだけのよがり具合を見れば、さすがの彼でも理解できたのだろう。ぶふひィ、と鼻息を吹き出しながら、さらにまくし立てる。
「ンンフフフフウ、相ッ当イイんだねぇ。よぉし、それなら射精すよぉ、紫ちゃんのためにずっとずっと溜めておいた僕の濃厚トロトロプリップリザーメンをいやらしいおまんこにどぴゅどぴゅびゅるびゅる注いだげるから、紫ちゃんもびゅるびゅる射精しちゃってよォッ、ほらイクよぉ、ついでに手伝ってあげるよぉ、おおおおッ」
 こんな安アパートのくたびれきった床などぶち抜いてしまいそうなほどの勢いで、彼は腰を上下動させる。どしぃんッどしぃンッという音は、建屋中に響き渡っているだろう。それだけに飽きたらず、紫のペニスをゴムごと握り締めると、シェイクするように扱きまくる。内側の精液によって滑ったゴムがずれ、ゴムとローターで扱いているような形になる。
「あああああッ、射精して、ビューッてして、あなたのせいえきっ、私のおまんこに、おねがいっ、頂戴、ちょうだっ、あああああッ」
 狂女のように喚き散らし、白濁をねだる。律儀にちんちんの姿勢を取り続けていた腕を、脚を、背中に絡め抱き締める。彼の子種が、万が一にも零れたりしないように。そんなことをすれば孕むかもしれないという考えは、頭のどこにもありはしなかった。ただひたすら快楽のために。高慢さを失った彼女は、どこまでもそれの中毒だった。
「ンフッ、フフッあぁぁぁ射精る射精る射精る射精る射精るおおおぉおおおおお!」
「あっ、いく、いく、いくぅッ、あはぁぁぁぁぁあああああああああああ――ッ!」
 彼は子宮口を小突き、ペニスをへし折るほどの勢いで擦り、さらにはエネマグラを思いきり引っこ抜いた。三重攻撃を受け、紫はあっさりと絶頂を迎える。
 そうして彼女は、無限の時間へ放り込まれた。世界からセックスのこと以外が消失したからだ。時間の経過という概念も。新たな世界は真っ白だった。鮮烈な快楽しか存在しなかったからだ。膣内、子宮に熱く注がれていく白濁を構成する精虫一匹一匹の存在が感じられるほど、感覚が明敏になっていた。そんな中、彼の射精は尋常ではなかった。子宮はすぐに膨らみ、それでも足りなかったがゆえに、白濁が膣道にまで溢れだす。なおも収まりきらずに、ぶぴぃと音をたてながら、膣口から逆流していく。
 一方で、尿道を通って勢い良く放たれる己の子種も、はっきりと感じられていた。限界寸前だったコンドームがそれだけの量の液体を追加で受け入れられるはずもなく、とうとう弾けた。解放された彼女自身のスペルマが、彼女を、そして彼を汚していく。二人のうちどちらも、それを嫌がってなどいないようだった。むしろ自ら望むように、身体を擦りつけあい、曖昧な性から放たれた明確な男を塗り広げていく。
 永遠に続けばいい。そう思った。しかし、そうはいかないのだ。絶頂の快感とは、修行僧が長年の座禅の末にわずかに垣間見た真理のようなものだ。そこにそれがあると気づいた頃には、ふっと姿をかき消してしまう。あとに残るのは、余韻だけだ。
「ほおぉおおおおっ……おぉお……ほぉおお……」
「あは、ひっ、あぁっ、あ、はぁ、はっ、ああ……」
 精も根も尽き果て、二人ともぐったりとする。一物が肉穴からずるりと這い出る。途端、到底収まりきらない白濁が、ぶぴぃと間抜けな音をたてて逆流し、黄ばむ布団を漂白していく。それは彼の言葉通り、濃厚だった。シチューを連想させる色合いだ。
「ひっ、ひっひぃ」
 いつまでも人を下敷きにしてはいけないという気遣いは、さすがの彼でも働いたか、のっそりと起き上がる。にぢゃぁあ、と音がした。二人の腹の間で、紫のスペルマはべっとりと広がっていた。彼はおもむろにそれを手に掬うと、彼女の肌に塗りたくりはじめる。
「ふひっ、紫ちゃぁん、疲れたでしょぉ。マッサージしたげるよぉ、マッサージ」
「んっ、あ、はぁ」
 陰部を、太腿を、腹を、乳房を、腋を、粘つく手が撫でさする。その甘やかな快感に、そして己の種によって全身べとべとにされているという背徳に、彼女は熱い吐息をこぼし、身体をくねらせる。
「ひひッ、できたできたぁ」
 マッサージとは名ばかりの行為が終わる頃には、たわわな乳房から何から、全てに白い粘りが擦り込まれ、べとべととし、蛋白質の異臭を放つようになっていた。この部屋には風呂がないから、このまま帰らなくてはいけないというのに――、
「おっ、ムクムクしてきたねぇ、マッサージされて興奮しちゃったかな? やらしいねぇ、さすが紫ちゃんだねぇ」
 子種を吐き出しきって萎びたはずのペニスは、またも充血し、その威容を取り戻しつつあった。破れたゴムの残骸が取り付けられたままのソレも、やはり白濁にまみれ、べとべととしていた。彼女の身体で、そうなっていないところはなかった。
「あはぁ――」
 両脚を開く。指を陰唇に押し当て、ぐぱ、と割り開く。子種がどろどろと零れる、散々に犯されたそこを。その意味が分からない彼ではなかった。
「ヒヒッ、いいよぉ紫ちゃぁん、今夜は、いや明日もずっと、ずぼずぼじゅぶじゅぶしようねぇ、ンッフゥ、おまんこがグズグズのゆるゆるになるくらいまで掻き回して、おちんちんはボッキしなくなってダメになっちゃうくらいぐっちゃぐっちゃにして、たぁくさんイかせてあげるからねぇ、ヒヒッ、フヒッ、ひっひぃ!」
 そうして男は、紫へとのしかかる。――今夜も、まだまだ楽しめそうだった。
C87で頒布予定のR-18短編小説集、「ファック・ファック・ファック」より、書きおろしの一編でした。全体では350P、1500円を予定しています。
どこでどういうきっかけでアイデアが得られるかってのは本当にわからないもんですね。ツイッターで「八雲紫さん(ふたなり)をオラッこのチンポ女ッとかいいながら後ろからハメたい」とか呟いてたらそんな感じのイラスト描いてくださった方がいて、それからインスピレーション的なサムシングをもらってこの話が完成しました。紫様にはおちんちんが似合うなぁ……。
ともあれ12/29はソ-25a「わめしば」で僕と握手! あわよくばセックス! あわよくばセックス!
喚く狂人
http://wamekuaeguononoku.wordpress.com/
コメント




1.性欲を持て余す程度の能力削除
狂人さんの新作を見落としていたッ…不覚ッ
とっくに堕ちてるのにプライド取り繕ってる紫様がそそりました
ごちそうさまでした
2.mku削除
もう最高です。楽しませて頂戴、からの堕ち方で何回も抜けます。おちんちん紫ちゃんかわいい
3.性欲を持て余す程度の能力削除
うあああ……エネマオナニーしたくなるぅ……っっ////