真・東方夜伽話

玉付きメリーさん

2012/09/14 03:54:48
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玉付きメリーさん

もや子
「マエリベリー・ハーンという子が転校してくる」

転校生。ましてや外国人。それは変わらぬ日常に変化を求めたがる後半年で卒業を控えた男子高校生にとってこれまでの二年半の内で最もセンセーショナルな話題であった。
課題に追われた夏休みが明け本格的に受験に向けたカリキュラムが始まる憂鬱な新学期の一日目、宇佐見蓮は友達の射命丸文彦から妙にクラスメイトが沸き立っている理由を聞いた。
「夏休み半ばから噂になってたのに知れなかったんですか?」と文彦はわざとらしく驚いてみせる。
それは君が新聞部部長で交流が広いからだろ。と言いたかったがよく考えれば春休みの間誰かに会うことがなかったのだから知らないのも無理はない。

「それでも転校生ってだけでこんな盛り上がるのは異常だよ。小学生でもあるまいし」

「そう思うでしょ?」文彦の悪意の無い笑みにため息を漏らす。こういう表情を見せるのは決まって自分が相手より優位に立てる情報を持っているときだ。

「何か他にあるの?」

よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに文彦は右手をパチンと鳴らして胸ポケットから一葉の写真を取りだした。肩にかからない程度のブロンドの髪に青のくたびれたジーパンと白いシャツを着た少女が公園をバックに写っていた。若干不鮮明なのと彼女がカメラに気づいていない無防備な仕草は盗撮だろう。相変わらず仕事の速い男だといつものことだが舌を巻く。

「これは?」わかっていながらも尋ねる。

「これが噂の転校生。スレンダーだけど綺麗ですよね」頷くしかなかった。何か運動をしているのか汗を流した活発な姿はボーイッシュな服装にマッチしていて運動嫌いの自分とは真逆の人物だと思いながらも息をのむ美人であるのに間違いない。口には出せないがクラスの女子が霞んでみえる。噂になるのも無理はなかった。自分なんかがかかわり合いになることはないとわかってはいるが悲しい。
あまりにもまじまじと見ていたのか、「欲しいんだったら上げますよ。300円ですけど」
「いらんわい」写真を突き返すと同時に担任が教室に入ってきたから文彦は渋々自分の席へと戻っていった。教壇に立つとざわつく生徒を静めるために深く咳払いをして話を始める。転校生の紹介はいつになるのか、という男子の興奮が凝縮された異常な空気に教師は気づくこと無く淡々とクラスへの報告を進めていき、時間的に最後の話題となった。

「最後に。もうすでに話を知っている人もいるでしょうがこのクラスに転校生がきました」

歓声があがる。僕は内心期待しているもののそんなクラスの空気に合わせる気にはなれず片手で頬杖をつき教室前の扉が開き転校生が入ってくるのを見つめた。
蓮も。文彦も。おそらくはクラスメイト全員が凍り付いた。
扉から現れたのは文彦の見せた写真と違わないブロンドの髪をした線の細い姿をしている。しかし一つだけ、違った。彼女―――いや、彼は学ランに身を包んだ少年だった。
担任に促されるでもなく彼は黒板に名前を書いていく。筆記体で整った字をしている。

「はじめまして、マエリベリー・ハーンといいます」

流暢な日本語。当たり前だが声変わりを過ぎた男の声。歩く。字を書く。礼をする。僅かな仕草の中にも気品を感じさせるものがある。
生まれがいいのか。性格がいいのか。

(後者なら嬉しいな)

そんな僕の希望は数分の後に否定された。
窓際の席が空いてるからそこに座って、と言われハーンは生徒の誰一人として目を向けることなく席へと着いた。
それから一分と立たず。ゴンともドゴとも言えるくぐもった音と共に隣の席の男が教室前まで吹っ飛んでいた。
僕はいかんせん彼よりも前の席で席に着くまで見つめるなんて初めて早々気持ち悪がれるようなことはできなかったからことの顛末はこのとき分からなかったが、人ってこんなに吹き飛ぶものなんだなと驚いた。後で文彦から聞いて知ったが吹き飛んだ彼はタラシで有名で、席に着いたハーンの目の前で女ではない落胆を見せたのが原因らしい。
転校生。それも外国人。しかも男。さらに凶暴。

誰が呼んだか「玉付きメリーさん」。

噂も事実も話題の当事者の居ない場所では同義語である。あっと言う間に学校中で転校生が初日から暴力沙汰を起こしたと話題になった。もちろん本人の前で「玉付きメリーさん」なんて呼んだ日には顔にストレートの一つは避けられないだろう。
新学期三日目。つまり転校三日目には早くもクラス全体のちやほやした空気は抜けていき、ハーンはクラスの中でも一線を置いた立ち位置を確立された。
二週間が経った頃には転校生のことなど誰も気にしなくなっていた。
夏が終わり秋が来た。
読書の秋。食欲の秋。なんと甘美な響きか。
しかし幸せと不幸は対なのになぜだか仲良くやってくる。
運動の秋、芸術の秋である。
体育祭。そして前日の文化祭。秋最大のイベント。特に三年はこれが終わるといよいよ受験の足音が聞こえてくるため今まで以上の熱気に溢れている。そんな中に僕が居ては不協和音でしかないだろう。だから準備に当てられた授業時間、僕は四階の空いている特別教室で一人読書をする。
奇遇にも外は雨。雨足は午後になるにつれて強まると朝の予報で言っていた。そうなると体育祭の行進練習などの時間も文化祭の準備に振り返られるからずっとここで休んでいられる。一、二限目の授業を終え、今日は最終限まで準備の時間だった。いずれは少なくなってゆく僕だけの自由な時間。
だけど、

「なにしてんだ」

その声に思わず身を強ばらせ、反射的に本を閉じて隠した。四階に学年の割り振られた教室はなく誰も来ないだろうと油断していた。
教師にしては若い声に違和感を覚えつつ声のした方を見る。

「メリー・・・さん」無意識のうちに自分の喉から出た言葉。メリーさん。しまった! と思い口を手で閉ざしてももう遅い。

ハーンが近づいてくる。一歩。また一歩。僕の方へと。力強く。蛇に睨まれた蛙よろしく僕は動けずにいた。僕の視界が彼で埋まる。右手が動く。
殴られる! とっさに目を閉じたがいつまで経っても痛みがくることはなくおそるおそる目を開けるとハーンは僕が隠した本をぱらぱらとめくっていた。

「こんなところで電気もつけずになにしてるのかと思ったら読書か」ハーンは僕の一つ前にある机から椅子を引き腰掛けた。本は僕の前に返される。

「メ・・・ハーン君はどうしてここに・・・?」思えばこれが彼と初めて交わした言葉。行動だけが先立って怖い人という印象しか抱いてない僕にはそう言うことさえかなり覚悟が必要だった。

「俺が居てもあいつら楽しくないだろ」ガラス越しのくぐもった外を見つめる寂しげな視線。「俺も楽しくないしな」

「それで抜け出して来たんだ・・・」

「展示の作成なんて数人居ればできるしな」

「うん・・・」

会話は途切れ、雨の音だけが広がる暗い室内。
一対一の状況なのに会話が途切れる気まずい状況。折角彼が話しかけてきたのだから本に逃げたくはなかった。
なにを話せばいいんだろう。
共通の話題が見つからない。
同い年。同じ学年なのに。
たとえばクラスメイトは何を話して会話を始める?
思い出せない。記憶にない。
汗が頬を伝い、顎から膝に重ねた手のひらの上に落ちた。息が上がる。どうしよう。どうすればいいんだろう。

「どうした?」緊張から目に見えて不自然に肩で息をしていた僕をハーンは心配げに見つめている。目と目がある。いや、僕の瞳は焦点が定まらず合っていたのか分からない。こうして人の顔を見るのも久しぶりで言葉が出ない。
目を反らしたい。閉じてもいい。誰も見たくない。

「な・・・なんでも・・・ないから、き、きにしな・・・いで」

精一杯の僕の声。顔が焼けるように熱い。震える。視線を落とす。

「気にするな、ってとても大丈夫にはみえないぞ。熱でもあるんじゃないか」

ハーンは腕を伸ばす。僕の額に。
せめて抵抗を見せようと椅子の後脚二本を軸に体を重力に負けない限界まで引くもハーンは机越しに体を前にし額へ触れた。
細い。女の子のような指。優しく撫でる。そこに凶暴な印象を抱かせる要素なんて皆無だ。
彼の冷たい腕。僕の身体が普段以上に発熱しているせいもあるだろうが本当に人間の腕なのかと思うほど冷たかった。

「ちょっと熱いか・・・?」額に当てた腕で前髪を払い、ハーンは額をくっつけてきた。
逃げられない。彼から視線を動かせない。
動悸の高まる音が聞こえる。
いや。いやいやいやいや。
だめ。もう自分を保てない。
重力に落ちる。その僅かな時間は永遠のように長い。
ハーンは机に乗り上げ僕の背中へ手を回すも止められない。
重力の井戸に落ちる。
反射的に目を閉じたものの痛みは背中とぶつかった背もたれだけからだった。
そして頭に当たるのは柔らかい感触。疑問に思い瞳をあける。
ハーンの腕だった。仰向けになった僕の上にハーンがいる。

「大丈夫・・・みたいだな」

安心したのか息を吐きつつ彼は腕を引く。僕は頷くことしかできない。
僕の頭を支えた腕が少し紅くなっているように見えた。

「その・・・腕・・・」

「ん、腕・・・?」

僕は先ほどまで自分の頭で敷いていた部分を撫でた。
白くて、柔らかくい。そして静かに流れる血管の脈動。

「ちょっと痛いだけだ。気にするなよ」

「ありがとう」

見つめあう少しの時間。時はとても静かに流れているように感じた。
今の僕はハーンを見つめる。焦点も彼の瞳に定まっている。こんなに人と目を合わせるのは初めてなのに僕はおかしいほど冷静だった。
綺麗な紫の瞳がウェーブのかかったブロンドの髪の間から輝いている。
雨音は強まるばかりだ。
立ち上がろうと「どいて」といいかけたハーンの唇が僕の口を塞ぐ。柔らかい感触と甘い匂い。
突然のことに驚きを隠せなかった。何か言わなければならないと思うのにハーンは僕の頭を押さえて離さない。離れたい。でも離れたくはなかった。矛盾する二つの意志のせめぎあい。僅かに離れた口の隙間から溺れてしまわないよう犬のように息を取り込む。

彼の舌が僕の中へ入ってくる。

舌と舌。

人と人。

同じ温もりを持っているのにどうして他人の暖かさには嫌悪感が生まれるのだろう。

でも嫌悪感もすぐに慣れてしまった。同じ人なんだから。

ふれ合うとハーンは女の子みたいな綺麗な容姿をしているのに舌の感触はざらついていて生々しい。そんな相違が面白く笑ってしまう。目を閉じて。獣みたいに。僕を求める。
数度、互いの舌を重ねあった後、ハーンは身体を引いて僕を見下ろす。離れあった唇を繋ぐ一筋の唾液は途中で切れて僕たちはカッターシャツで拭った。

沈黙。雨音。息づかい。

ハーンの表情は先ほどまでと一転して罪悪に飲まれたような相手からの拒絶に対する恐怖を抱いた今まで見たことのない表情を僕に向けていた。そんな顔もできるんだ。

「・・・悪い」

しばらくの沈黙を破って出たハーンの言葉。

僕は思わず吹き出し。おなかの底から笑ってしまった。ハーンには悪いけれど呼吸困難になるんじゃないかと自分でも心配になるほど笑って笑って笑い倒れた。

「何・・・だよ」さすがに失礼に思ったのか眉をつり上げ僕を睨む。

「ごめんごめん」そう言いながら僕は瞼からこぼれ落ちる涙を拭って、「初めて話す相手にまさかこんな熱いキスをくれるなんて思わなかったからさ。それにあんな強気だったのにことが終われば『悪い』って」
僕はまだ笑い足りない仕草をする。
ハーンは顔を赤く染め俯く。こうして見るとかわいい男の子にしか見えない。男の子に、だが。

「それでもようやくちゃんと話してくれるようになったな」

今度はハーンが笑う番だった。笑って僕の方を見た。
ちゃんと話す・・・?
どういうことかと考えていると先に彼が言葉を続けた。

「お前、いつも話してるのあいつばっかじゃん」

「あいつ・・・?」

「えーと、何だったか作り笑いが得意なあいつ」

「文彦・・・?」

「そうそう、文彦」

作り笑いが得意。文彦には失礼だが間違いないから笑ってしまう。

「そんなに僕ってちゃんと話せていない?」距離を置いているつもりだけど誰かに気づかれてしまうなんて。

「話せてないね」彼は頷く。

「よく見てるね」

「見えるのさ。後ろの席だからね」

なるほど。いい目をしてるんだな。

「それで、どうしてなんだ」

「どうしてって?」

「ほかのやつと仲良くしない理由」

「それは・・・ハーン、くんもだろ」

「俺は・・・お前だって見たろ、初日のこと」

それ以降も何度か暴力沙汰があったと聞くから仕方ないといえば仕方ないことだろう。

「だから、お前はどうしてか聞きたい」

僕は迷った。ここで彼に話していいのか。
もちろん人間は成長する。来年からは大学生になるのだから心だって中学生なんかより十分に成長していると言える。
だから言ってもいいはずだ。だけど言ったって彼が理解してくれるのか、笑ってうやむやにされるのか、それとも痛い子だと思ってもう僕と関わらなくなるのか。
怖いのだ。
そんな過去を繰り返したくない。
泣いていた。
その涙が誰のものか初めはわからずハーンが舐めてくれたことで僕のものだとわかった。

「言いたくないのなら言わなくてもいい」

そんな優しい言葉、僕に馬乗りしながら言う言葉か。
心の中ではわかっている。唇と唇を交えた行為。関係を作り出す課程でのそれには絶対的な力がある。
でも、とハーンは言う。「受け入れてくれてくれて俺は嬉しい」
彼は後方へと手を回す。そこにあるのは僕の逸物。いつのまにかそれはそそり立ち、制服の黒いズボンと共に一つの山を形成していた。気づかなかった。
驚きを見せる僕を彼は笑う。
ハーンは僕から目を離すことなく片手で器用に僕のベルトを、そして下着までも外しさらけ出した。
布による防壁を失い力強く立ち上がった僕の性器。教室という絶対にあるはずのない背景の中なのに僕の心は羞恥よりも興奮が強くなっていく。

「まだなにもしてないのに盛るなよ」

馬乗りだった脚を片方へどけ、彼は身体を僕の上へと寄せてきた。彼の手が僕の亀頭へと触れる。

「ひゃぅ!」触られる。そう分かっていても僕ではない他人のそれも細く柔らかい指が触れるという未知の感覚に声を抑えられなかった。

「可愛い声も出るんだな」ふふ、と笑い。僕の頬に息が吹きかかる。目の前にいるのは男の子。理解しているはずなのに股間の興奮は抑えられない。

片手で汗に濡れた僕の額を撫でながら、もう片方で僕の逸物をなぞる。
人差し指と中指で亀頭を擦る。
ゆっくりと。だんだん激しく。

「あ、あぁ・・・あ・・・!」

「まだちょっと触っただけじゃないか」

ハーンは額にあった手を僕の口に入れる。僕の汗の味。しょっぱい。だけど僕は口へと進入した指がハーンのものだと分かっている。分かっているから彼の指を舐めるのを止められない。

「そんなにがっついて。自分の汗がおいしいのか?」

僕の口にはハーンの指があるから声を出せず、首を横に振って意志を示す。彼は指を抜く。名残惜しい僕の舌は限界まで延ばしたけれど最後には離れてしまった。

「ハーンくんの指だった・・・か、あ・・・ああ!」

言葉は彼の手が僕の逸物を激しく上下させ始めたため途切れた。

「気持ちいい?」

快感に言葉がでない。首を縦に振る。いつ限界がきてもおかしくないほどの快感。
根本が熱くなっていくのが分かる。
それをハーンも感じたのだろう。「お、もう限界か?」
そう言うと擦る手はさらに激しさを増した。
僕の口から漏れるのは苦悶、いや陶酔の喘ぎ声だけ。
尿道を熱く、白い快感の固まりが登りあがっていく。もう止めることはできない。

「ああああああああッ!!」

絶頂は一瞬で駆け抜けていく。
動悸が抑えられない。こんな激しい感覚は初めてだった。
余韻に浸りながら僕は口で精一杯息を吸って、吐いた。
自慰とは比べものにならない射精後の恍惚と倦怠。
ぐったりと力を失う。
ハーンへと視線を移す。

「まったく」と、彼は呆れながら言った。「おもいっきりぶちまけて片づけどうすんだよ」

下を見る。激しく吹き出した欲望は彼の手にとどまらず、違いの制服を、そして床にまで飛散していた。みるも無惨な惨状である。ここが学校の教室だから余計に。

「・・・ごめん」

「まぁ、俺も悪かったから気にするな」

雨音はさっきより弱くなっていた。



床はティッシュと雑巾で拭き取りごまかすことができたものの制服はそうはいかない。上がカッターシャツで同じ白なのはせめてもの救いに思えたが黒いズボンはどうしようもなく、ハーンの提案で授業が終わり帰宅時刻になるまでこの教室に居ることになった。静かに。だけど思ったより早く時間は過ぎて、会話はなくても僕はとても残念だった。
誰もいない教室。僕たちの荷物だけが残されている。
荷物を取って、下駄箱で上靴から履き換えて外へ出た。すっかり暗くなっていたけれどいつの間にか雨はやんで星空が見えた。

「ねぇ」そこで僕は言った。「言わなかったよね。どうして僕がみんなと距離を置いたのか」

どうしてだろう。星空に浮かぶ時間。抱き寄せられた肌の温もり。腕の熱。舌の熱さ。初めて話した相手の前なのにこんなに心が落ち着いているなんて。

「・・・僕の目。見えないはずのものが見えるんだ」

だから言ってしまった。彼なら理解はしなくても分かってはくれるはずだと思えた。
ハーンは少しの沈黙のあと、笑った。
後悔が浮かんだ。彼も笑ってしまうのか。
でもすぐに否定された。「なんだ。そんなことでなやんでたのか」

「なんだ。ってなんだよ」僕自身を軽くあしらわれたように感じてつい言葉はキツくなる。

「ごめんごめん。いや、俺だって見えるのさ。普通見えないものが」彼の言葉は余りにもシンプルで嘘を言っているとさえ思わなかった。

「馬鹿にしてるの」当然、僕は睨む。

「・・・していない」彼は笑みを崩して、僕を見る。紫の瞳が闇に輝く。
まっすぐ僕に近づいてくる彼。動けない。

「だから俺だって他人と違う自分を怖いと思ったり、子どもの頃は虐められたりしたから分かる。お前の気持ちが」

その言葉で彼は僕と同じ気持ちなのだと理解した。だからだろうか、初めての相手にここまで気を許せてしまったのは。
ハーンが目の前まで近づいてきた。
こうやって立って見ると彼は十センチほど僕より高いんだな、と暢気に思う。
彼の人差し指と中指が僕の額を小突いた。

「そんなに気張ることなんてないんじゃないか」

彼は笑う。僕も笑う。

「ありがとう。ハーンくん・・・」自然と言葉は漏れた。

「メリーでいい」

え、と僕は驚きを示す。「いいの?」

「そっちの方が呼びやすいだろ、蓮」

鼓動が高まるのを感じた。初めて呼んでくれた僕の名前。

「わかった。メリー」僕は笑った。メリーも笑った。

世界はこんなに輝いているんだ。
帰り道。誰も居ない道中で僕たちは唇を重ねて別れた。
また明日。
早く明日になれ。そんな感情が浮かんだのは久しぶり。一人、自室でメリーの匂いを確かめながら僕は星の輝く夜空を見ていた。
星空に浮かぶ時間は今も時を刻んでいる。明日はすぐそこだ。
拙い描写ですが最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
もや子
http://www.pixiv.net/member.php?id=303044
コメント




1.名前が無い程度の能力削除
ハーンくんいろいろと手が早い(驚愕

男体化BLごちそうさまでした。