真・東方夜伽話

友達と恋人の境界線

2012/04/23 20:48:00
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友達と恋人の境界線

かも

 気付いたら好きになっていた。
 倶楽部活動を重ねる度に、もっと一緒にいたくなった。
 構内で待ち合わせをする度に、そこへ行くのを心待ちにしていた。
 私の中で段々彼女が占める比率が大きくなって、ふとしたことで意識する。例えば一般教養で使った教室だったり、例えば学内カフェだったり、一緒に過ごした場所を見るだけで、彼女のことがセットになって思い出された。
 酷いときには講義そっちのけで窓の外を見ては彼女のことが頭に浮かんで離れない。
 理由を付けては次の約束を取り付けて、その日が来るのが待ち遠しい。
 そうして大学のスケジュールと睨めっこしながら時間を作っていつか、ひと月ふた月と時が過ぎる内に、気付けばもうどうしようもない位に私はメリーを好きになっていた。


 昼下がりの喫茶店、客の入りは七分に少しといった所。私の目の前には、座るメリーと頼んだ品に紅茶がそれぞれ一つずつ。お菓子にフォークを差し入れ口へと運ぶ。
「ん、おいしい」
 甘さが舌を通して広がってきた。
 そしたらメリーの声が飛んできた。
「蓮子の食べてるそれ何て言うんだっけ?」
「フォンダンショコラ」
「中からチョコが溶けてておいしそう」
 そう言うメリーの視線はショコラを捉えて離さない。
 何となく催促されている気がした。
「食べる?」 
「食べさせて?」
「っ……」
 んぁっと雛鳥みたいに口を開けるメリー。それを見て私は言葉に詰まってたじろいだ。
 公衆の面前でとは、やってくれるじゃないのメリーったら。
 不遜にも取れる私のその物言い。けれど、そんな余裕な口ぶりは頭の中だけで、実際のところ私の頬はかぁっと朱に染まっている。
 メリーは友達として何の気なしにそんな悪ふざけをしているんだろうけど、無邪気にそんなことをされると私はそれにもしかしたらを期待してしまう。
 メリーも私と同じで同性を好きになる人なんじゃないのかって。
 私はメリーと恋人になれるんじゃないのかって、期待してしまう。
 でも、もし私の勘違いだったら?
 そんなことになったら、私は……。
「はやくー」
「う……」
 考えだして深みにはまりそうだった所を、口調まで雛鳥みたいになったメリーに呼び戻された。その、メリー?今私すごく真面目なことを考えていたんだけれど、それは卑怯だと思います。可愛すぎです。卑怯です。
 その姿に絆されて、思いを告げるよりは今メリーと居られる時間と距離を大切にしようと何とか自分を立て直す。蓮子さんはへこたれない。私は彼女の口へとフォークを持っていく。
 私だけの一方通行でもいいから、せめて心の中でだけは恋人として行為をさせてと、それなら迷惑かけないからと、そう願いながら。
「はい、メリー」
「ん、おいしい」
 口に片手を当てて満足げにするメリーを見て私も嬉しくなり笑う。もくもくと口を動かすメリーは少しするとその音をんくっというものに変えていた。紅茶のカップに口を付けて一息してからメリーは私へ言葉を投げる。
「蓮子ってお菓子作るの好きよね?」
「それなりには」
「これも作れたりするの?」
 メリーは今しがた私のフォークがショコラを運んだ出発点の皿を指差した。
「フォンダンショコラ?作れるわよ、難しい作業は特にいらないし」
 言ってこの一連の流れに気付いた。
 あぁ、これは。催促するような目の次に作れますか?のその問いに、作れますよと私は答えてその次は。
「ね、今度蓮子の家に行ってもいい?蓮子が作ったショコラが食べたい」
「う、ん。メリーがそう言うんなら」
 やめてメリー。貴女は友達として私を見ているからそんなことが言えるんだろうけど、これ以上私を期待させないで。メリーが無自覚に私へ近づけば近づくほど、私はメリーを好きになって仕方ない。なのに貴女は友達気分で私の家に来るなんて、私にとってメリーはもう同性だから好きになる人なのに、メリーが望むような友達としての距離を装うのは痛いよ。メリーといられるのは嬉しいけど騙してるみたいに思ってしまう、罪悪感を覚える、悪いことなんてしてないのに。ただ好きなだけなのに。
「どうしたの蓮子?」
「ううん、何でもない」
「そう?それじゃあ今度、楽しみにしてるから」
メリーと約束をしてその日は解散となっていた。

 次の日は講義と研究室があって会えなかった。
 その次の日はメリーにゼミがあって会えなかった。
 翌々日はメリーの予定も自分の都合も知るもんかー!と電話でメリーに用件を告げて結界暴きを強行した。

 メリーが私の家に来るその前日夜。
 私はシャワーを浴びてベッドに寝転がっている。
 まだ乾いていない髪が少し濡れていた。
 枕に髪が散らばっている。伸ばした片方の髪がくすぐったい。
 頭にあるのは当然メリーのことだった。
「明日はメリーがここへ来る」
 呟く言葉は漏れて聞こえてシーツに落ちた。
 メリーが来る、それを口にしただけで言葉が急に現実味を帯びて私に迫る。
 自分の部屋にメリーがいることを想像したらもう駄目だった、疼く。
 私が寝室にいたこともそれに拍車をかけたように思う。
「んっ……」
 軽く太股を擦り合わせると衣擦れの音がした。
「良いよね。想像だから、迷惑なんてかけてない」
 下着の中に手を入れて自分の秘所を慰める。
 割れ目の周りを手で触り、胸を自分で揉みしだく。
「はっ、ぁ。メリー」
 名前を声にするだけでとろりと愛液が溢れるのを感じる。
 つぷりと中指を膣へと入れるといやらしい音が耳へと届いた。
 後で下着替えないと。
「メリー、好き。好き、メリーとしたい。セックスしたい」
 メリーはどんな声を上げるんだろう?
 メリーはどんな顔をするんだろう?
 全部知りたい。
「ん、ん。ぁふ、ぁ」
 好きに自分を愛撫して、それでも私はイけなかった。
「はぁ。もっかいシャワー浴びて寝よう」
 メリーと私はどうなるんだろう。
 私はメリーと恋人になりたいし付き合いたい。
 けどメリーが同性を好きになる人なのかが分からない。
 このまま何もしなかったら、メリーにはいつの日かある日突然彼氏が出来たりするんだろうか。
「……いや」
 考えたら胸がじくりと締め付けられた。 
 同性にメリーを盗られるならそれは別に構わない。構わないって言うのはどうかと思うんだけど、それはまだ私も可能性のある所にいられるということだから。始めからそれさえなくて、私はメリーと恋人になる夢を見ることさえ出来ないなんて、そんなことになるのが一番堪えて辛くてやるせない。地面が私からなくなって立っていられない感覚になる。私は誰かを好きになる度に男女なら気にしないでいいだろうこんな境界線を意識しないといけない。臆病と言われても構わない、でもだけどもし伝えてメリーから拒絶されたら、気持ち悪いなんて思われたら、そう考えると踏み出す一歩が途方もなく怖い。
 メリー、私は貴女を好きでいていいの?
 可能性が、欲しいよメリー。


 メリーを家に招くその当日。
 今は講義も終わって後は待ち合わせ場所の正門に行くだけだった。
 軽いのか重いのか分からない足取りで私はそこへ向かっていく。
 キャンパスの並木道を歩いて少しすると彼女が見えた。
「メリー発見」
 そのまま続けてもう一度名前を呼ぼうとして人影に気付いた。
「男?」
 別にそれは何の不思議もない光景。ゼミだって何だって色々あるんだから本当にそういう機会自体はよくあること。私にだって研究室くらいある。けれど、メリーが楽しげに笑って話している様子が私の心を掻き毟った。
 ただ社交辞令で話しているだけかもしれない。
 悔しい。
 ゼミの事務連絡をしているだけかもしれない。
 怖い。
 私はメリーとそういう関係になれない?
 嫌だ。
 メリーは男を好きになるの?
「……っ」
 そう思ったら足が自然と動いていた。
 もう止まらなくってどうしようもないのに頭だけはやけに冷静で、こんな時だけ理知的な自分が恨めしい。
 メリー。メリー。
「それじゃあ今度のゼミは指定図書の256項からなのね、--君?」
 メリーの声が聞こえてきた。冷静に、冷静に、自然を装って会話に混ざる。
「あれ、メリー?ゼミの話?」
「あ、蓮子。もぅ、3分の遅刻よ」
 手を裏返して手首に付けた時計を見るとメリーはそう言う。
「私が遅れるのなんていつものことじゃない」
 いつも待ち合わせをしているのは私なの、と言葉で見せつけ心の中で暗い優越感を味わう。
 もちろんそんな感情は声音に表さない。
 嫌な性格をしているなと私は自分に思った。
「たまには時間通りに来て欲しいんだけれど」
「もう、メリーはうるさい」
「蓮子がルーズ過ぎるのよ」
 ここまで話してから今まで放って置かれている彼に私は会話を振った。
「わっと、ごめんね。貴方はメリーと同じゼミの人?」
 私が言うとメリーから答えが飛んできた。
「ゼミの--君よ」
「そうなんだ」
 私のその声を一つの区切りと取ったのか、紹介された--君が会話に加わる。
 それに私はそつなく波風を立てないように返す。
 自分の嫌な感情をこの人にもメリーにも見せないように細心の注意を払って会話を続けた。
 そして良い頃合で話を切り上げた。
「それじゃあね。メリー、行こ?」
「蓮子?」
 メリーの手を引いて足早にそこから離れた。
 私に手を引かれるメリーが何か言いたげにしていたけれど、そんなことは知らなかった。 
 今はメリーから何を言われるのも怖い。
 もしメリーからさっきの彼を庇うようなことを言われたら。さっきの蓮子はちょっと失礼だった、何て言われたら。
 自分のせいだって分かっていても私はきっとそれに意固地になって反発してしまう。
 メリーが彼の肩を持つこと自体に見当違いの嫉妬をしてしまう。
 メリーは彼が好きなの?と。
 そんな嫉妬を同性の私がすることになんてメリーはきっと気付きっこない。
 だから私はそうなったら素直になんて謝れない。
 そんな私にメリーの言葉がはっと飛ぶ。
「ちょっと、蓮子どこまで行くつもり?蓮子の家はあっちでしょ?」
「あ、ごめんメリー」
 こんな些細なことなら素直になれるのにとそう思って踵を返すと、私はメリーを連れて家へと方向を変えて歩き出した。
「変な蓮子」
 何故かメリーはくすくすと嬉しげに笑っていた。


「おじゃまします」 
 メリーの声が玄関へ響いた。
「邪魔するなら帰ってよね」
「それじゃあ帰りましょう」
 何が楽しいのかメリーは顔を綻ばせながらからかう調子でそんなことを言う。
 それにつられて何だか私は気分が軽くなり、気付けば言葉が口を突いていた。
「わ、嘘よメリー。上がって上がって」
 そんな風に言う私を、メリーは満足しましたとでも言いたげな表情で一度見ると、それから改めてまた言った。
「おじゃまします」
「どうぞ。お菓子と紅茶くらいしか出せないけどね」
「今日はその為に来たのよ蓮子」
「この食いしんぼ」
「期待してるわパティシエさん」
 そんな応酬を交わして私はメリーを部屋へと通した。ソファーに座って待ってもらいすぐさま私は作業へ取り掛かる。大学へ行く前に下準備をほぼ終わらせていたので、やることは殆どカップに入れてオーブンで焼き上げるだけだった。
 オーブンの蓋を閉じてスイッチを入れる。
 するといつの間にそこに居たのか、ソファーに座っている筈のメリーは私の傍にやって来てしげしげと様子を観察していた。
「15分で焼きあがるから」
「蓮子は将来いい人になりそう」
「何よそれ」
 将来って、何よメリー。
「言葉そのままの意味よ。いい人」
 からかうでもない、でも少し含みを持たせた眼差しでメリーは私の顔を見る。
 いい人、言葉そのまま、これほど無責任な言葉もない。
 良く言う良い人止まりのそれなのか、深い付き合いをする意味のいい人なのか。
 私はそれを貴女に確かめても良いの、メリー?
「ふぅん。メリー、先に紅茶でも飲む?ソファーに行ってて」
「ほんと?丁度何か飲みたかったの。タイミング良いわね蓮子」
「蓮子さんを舐めないでよね」
 
 すぐに紅茶を入れてメリーへ運んだ。
茶葉は甘いショコラに合わせたアールグレイを選択した。
 メリーは私からありがとうと言ってそれを受け取り、私も座るのを待ってから紅茶へと口を付ける。
「むぅ、やっぱりショコラも一緒に欲しいわね」
 眉根を寄せつつも嫌味のない口調と顔でメリーはそう言う。
「あと少し待ってくださいなメリーさん」
「楽しみにしています」
 敬語なのに言葉はとても柔らく聞こえた。
「そうだメリー?次の倶楽部活動のことなんだけど」
「何かめぼしい情報でも見つけた?」
「神社にね、それらしいのがあるの。場所が場所で何個か回りたいからちょっとした旅行になりそう」
「二泊三日くらい?」
「出来れば三泊四日くらい」
 私がそういうとメリーは答える。
「最近ちょっとゼミが忙しいから日程調整しないと難しいかも。もちろん倶楽部活動が優先なんだけど」
 メリーは倶楽部活動を優先だって言ってくれたけど、ゼミのことを気にかけるメリーが私には今日の彼を意識している風に聞こえてしまった。
 メリーにだってメリーのスケジュールがあるのにこんな自分勝手な感情、嫉妬深くて身勝手で嫌になる。
 それを意識してしまって私はメリーから顔を逸らせた。
「そうね。ゼミには--君もいるもんね」
 当て付けみたいなその言葉。
 私がしまったと思ったときにはもう遅く、メリーを見ると不思議に怒りとか悲しみとかがない交ぜになった表情を浮かべていた。
「それどういう意味よ蓮子」
 あぁ、駄目だ。止まれ私。
「言葉のままよ」
「ふぅん」
「私の知らないところで--君の家にも行ってるんじゃないの?」
 言った瞬間に今度こそメリーの顔は悲しみ一色に変わっていた。
 けれどそんな影はすぐに潜めてメリーは私に怒るでもなく言葉を返す。
「はぁ、心外。あのね蓮子、私を馬鹿にするのもいい加減にして。親しくもないましてや好意を持っていない人の部屋になんて私は簡単に付いていったりしない」
「言ってくれるわね。私にだって色々あるんだから」
「蓮子が何を悩んでいるのか、まぁ大体は分かるんだけど」
「へぇ、なら当ててみてよ」
 心外と言われて腹がたって、だからすこしムキになって私はそんな風に言ってしまう。
 なによメリー、私の気も知らないくせに。いつものほほんとしているメリーなんて、どうせ私が貴女をどんな思いで見るようになったかなんて知らないくせに!
「今日私が待ち合わせ場所で男と話してたとき」
「うっ」
 そのままずばりなことを言われてしまって言葉に詰まった。メリーのその言葉だけでたがの外れそうになっていた感情が綺麗に萎れてしまう。あぁもう私はどうかしている、たったこれだけの言葉だっていうのにどうかしてる、メリーが分かってくれているって自分勝手に期待して嬉しくなってたまらない。 
「あのとき蓮子は割り込んできた。そつなく会話してるみたいだったけど、話を早く切り上げようと喋ってた。それに気付かないほど私は馬鹿じゃないわ。私が男に盗られるとでも思ったんでしょう?」
「…………」
 言葉に詰まった。
「蓮子?」
 金の瞳が言えと必至に詰め寄った。
「そうよ」
 だから私は顔を俯けそう言った。今どんな顔をしているのか、嬉しいのか悲しいのか自分の感情が分からない。そんな風に迷う私をよそにして、何故か詰め寄ったメリーの方から震えた弱音が私の耳へと漏れ聞こえる。
「馬鹿にしないでよ」
 さっきの私がそうしたように、今度はメリーが顔を俯けそう言った。その言葉の意味が分からなくて、何を言えばいいのか分からなくて、だから私は言葉を返す。
「メリー?」
 そばに行くことさえ出来なかった。そんな臆病な私に、砂城が風にさらわれ剥がれるようにメリーの言葉が降ってきた。
「馬鹿にしないでよ。倶楽部のことだって今日だって、私が蓮子と居る理由に気付きもしないくせにそんな見当違い、ばかにしないでっ。ただの友達、倶楽部活動だったらこんなに蓮子と一緒にいたりなんてしないっ、いようなんて思わないっ、このっばかっ、ばかぁ」
 メリーの頬に伝う涙が見て取れて、ようやく私はメリーに触れると人差し指を添え寄せる。
「メリー?」
「見ないでっ!」
「っ……、見る、見ます。だってメリーだから」
「意味分かんない」
「うん」
 メリーの頭を両手で抱える。額を合わせて言葉をやっと彼女へ伝える。
「メリー、好き。私はメリーが好き。宇佐見蓮子はメリーにずっと恋してる」
 触れると柔らかい金の髪の感触が震える程にいとおしい。
 俯くメリーの顔は涙に暮れたそのままで、私を見つめて言葉を放つ。
「もう一回いって」
「好きよメリー」
「蓮子は私に恋してる?」
「宇佐見蓮子はメリーにずっと恋してる」
 私がそう言うと、泣き笑いのように破顔するくしゃくしゃのメリーの言葉が優しく細く、けれど確かに聞こえてきた。
「私も蓮子にずっと恋してた」
 遠くレンジの音がショコラの焼き上がりを告げていた。


 その後は予定通りにショコラをメリーへ振舞った。
 テーブルには食べ終えた食器が置かれていて、当のメリーはソファーをベッド代わりに体を横に寝かせていた。
「もう。メリー?風邪引いてもしらないからね」
 薄く胸を上下させて寝息を立てるメリーに私はそう言った。いやメリーの胸自体は薄くはないんだけれど。
 そんなメリーの姿を見て今日はこれでお開きかと少し残念に思う。
 起こすのもなんだしこのままにしておこうかと私はタオルケットを取りに行く。すぐそこのドア一つ隔てた寝室に確かあったはず。ノブを回して部屋へと入りベッドの上に目的の物を確認すると洗いたてのそれを引っ掴む。
 時間にして10秒も掛かっていない歩みを終えてメリーの所へ戻り終える。私はタオルケットを広げる。そして、いざメリーに掛けようかというところで私の目にメリーの唇が留まった。薄く開かれているそれは食事の後なのに艶やかで綺麗で私は目を奪われた。
 良いのよね、メリー?
 もうそういう関係なんだからと自分に言い訳めいた応援をして、それを意識すると嬉しくて、けど変な対抗心がメリーへ湧いたので前後のおかしい2度目の言葉を掛けてキスをした。  
「おやすみメリー。風邪引いてもしらないからね」
 触れるだけの軽い口づけ。たったそれだけのことなのに私はどうしようもなく嬉しくて、床へぺたんと座り込む。メリーと触れた自分のそこを中指でなぞる。そして、目線に近い彼女を見たら寝ている筈のメリーがくすくす笑って私を見ていた。
「起きてたなんて人が悪いわメリー」
「蓮子が私にキスなんてするからよ」
「お味はいかがでしたかメリーさん?」
 何となく気付かれたのが悔しかったので虚勢を張ってみた。
「無理しちゃって」
 見抜かれてました。
「もう、メリーったら。私後片付けしてくるから、タオルケットはそこ」
 そう言って私はその場に立ち、離れようとメリーへ背を向ける。
 そしたら袖に力を感じ振り向くとメリーが横になったままで私を掴んでいた。
 起き抜けなのに確かな意思の灯った瞳が私を見ていた。
「ね、蓮子。さっきの言葉もう一度聞かせて?」
「さっきの?」
「そう」
「どれのことよ?」
「いいからはやく」
「タオルケットはそこ?」
 メリーは顔を横に振る。
「お味はいかがでしたか?」
 メリーは顔を横に振る。
「風邪引いてもしらないからね?」
 その私の言葉にメリーは言った。
「ならベッドに連れて行って、蓮子」


 寝室に入るまでのことは覚えていなかった。
 メリーの手を引いていたような気もするし、メリーは私の袖を掴んだままだった気もする。
 何だかよく分からないけどとにかくよく覚えていなかった。
 分かるのは今メリーと二人してベッドの上に居るということだけ。
「シャワー浴びてからの方が良かったかも」
「何なら今から浴びるメリー?その、一緒に。狭いけど」
 私がそう言うとメリーは意外そうな顔を私へ向けて、それから上から下へと服のラインをなぞるように視線で追った。
「うう、ん。いい」
 その表情から彼女の呼吸が浅く早くなっているのが私にも分かった。
 視線からはメリーの欲情を感じた。
 だから私は心に思った。
 メリーが私の服の下を想像してる、……嬉しくてたまらない。
「私の裸を見たいのメリー?」
 私がそう言うとメリーは頬にさっと朱を差して視線を外した。
 口元へ人差し指を持っていき、唇淡く少ししてから声を出す。
「見たい、蓮子の体。見たいし触りたい」
 嬉しい。
 メリー、もっと言って。もっと私が欲しいって言って。
「服、今脱ぐから」
「うん」
 ブラウスのボタンを上から順に一つずつ開けていく。黒のブラに包まれたメリー程とは言えない胸の起伏が徐々に顕になっていく。
 その度にメリーの視線を肌へ直に感じた。それだけで私は自分が濡れていくのが分かる。
 ブラウスの袖から手を抜いてそれを床へ脱ぎ去る。後ろ手にホックを外して腕からブラを取り外す。恥ずかしかったので軽く片手で胸を隠した。
「感想は、メリー?」
 照れ隠しにそう言いつつも私はメリーの顔を直視出来ずに目を逸らしていた。まだスカートは履いていたけれど、上半身を見られるだけで胸が高鳴り止らない。
「きれい」
 そんなお仕着せみたいな台詞、と天邪鬼に思ってけれどやっぱりそう言われるのは嬉しかった。だから私はメリーに言った。
「メリーも脱いでよ。私だってメリーのこと見たいんだから」
「うん」
 メリーが膝立ちベッドが軋んで音を立てる。
 腰紐を緩めて外すと流れのままにそれは下へと落ちていた。
 胸のボタンを外すメリーに目を奪われて、訳わかんないくらい鼓動が逸る。
「っ、っ」
 メリーも私と同じみたい、吐息が形になって目に見えそう。
「メリー」
「いま脱ぐから」
 その言葉を言い終わるとすぐにメリーは袖から腕を抜き去って、すとんとワンピースを脱ぎ下ろした。
 メリーの体が私に見えた。
 膝立ちしたメリーを上目になるよう見上げたら自然に言葉が漏れていた。
「メリー、綺麗」
「語彙が貧弱」
 だってメリー、私それしか言えない。言葉なんて尽くさなくてもこれだけで十分。
 さっきはお仕着せなんて言ったけれど、それは私の勘違い。伝わる言葉はいつも短くそれでいい、それがいい、一番届く想いの言葉。
 体が動く。
「メリー」
「れん。ふ、は」
 メリーの肩に手を掛けてキスをした。
 ずっと貴女とこうしたかった。
 一度すればもう止まれなかった。
「んは、ん。ちゅ」
 私がメリーの背に手を回すと、メリーも私に手を回してくる。背中に這わされる手の感触が私の疼きを増やしてく。首からなぞるように髪をかき上げられて、それだけで総毛立った。
 気持ち良い。
「はっ、ん。メリー、メリー。ん、んぅ」
 最初は触れるだけのキスだったそれが、もっともっとと激しくなってお互いに舌を絡め合わせて求め合う。肌でも舌でもどこでも、メリーとなら触れ合うだけで気持ちが良かった。
「ん、ん。ふむ、ちゅ、ん。蓮子、れんこっ」
「ちょ、メリーっ?」
 押し倒された。メリーから私に体を預けてきて、そのままその重さで私はベッドに仰向けになる。私の上にはメリーが重なり、片手は彼女の背に回し、もう片方はシーツの上へと投げ出されていた。そしたらメリーは私の首筋に軽く口付けをしてきて、そこを強く吸ってくる。吸われる感覚とその音に私は堪らず喘ぎをあげる。
「あっ、は。ん」
 受け入れるようにメリーの頭を両手で抱えた。
「私の」
 キスマークを付けられたんだと容易に分かった。
「もう、大学行くとき困るじゃない」
「でも蓮子は私のだもの」
「下手に話題になっても知らないわよ」
「言ってやればいいのよ。私たちは恋人同士だって」
 それが出来たらどんなに良いだろうと私も思う。周りに言えたらどんなに良いだろうって。幾ら私とメリーがこういう関係だからって、おいそれと外で恋人同士として振舞えるわけじゃない。
 メリーの方もそれは分かっているのか、伏し目がちに私の胸へ顔をうずめて悔しそうにしていた。そんなメリーを楽しませたくて、私はわざと軽い口調で悪戯たっぷりにこう言ってみせる。
「目の前でキスして見せるとか?」
 その言葉を聞いてメリーははっと私を見てきた。すぐに私の意図に気付いたのかメリーは表情を緩めて乗ってきてくれた。
「そうよ」
「それは痛快ねメリー」
「でしょう蓮子」
 有り得ないと分かっていても、何も気にせず外でそうすることが出来たならという夢想はきっと嘘じゃない。 
「蓮子は口が上手くてやんなっちゃう」
「メリーが私をそうさせるのよ」
「嘘ばっかり」
「あ、失礼ねメリー」
 私がそう言うとメリーは今までより強く抱きしめてきた。
「うそ。分かってる、好き」
「メリーったら」
「好き。蓮子、好き」
「はっ、ふ。メリー?」
 胸の先端を口に含まれて声が出た。メリーの舌が私を感じさせようと動いてそこを何度も舐める様が見えて興奮した。優しく舐めあげたかと思えば突くように何度も舌を出し入れしたりして愛撫された。その度にメリーの口で唾液のぴちゃという音が耳まで聞こえて来て、それに私は高まってゆく。
「あっ、あっ」
 甘く突起を噛まれてもっとと言うように声が出た。 
 気付けばスカートも下ろされていて、メリーの手は私の下着へ伸びてきていた。
「ぁっん」
 既に濡れそぼっていた秘所にメリーの指が入ってきて、その感触に弦を弾くような声を上げてしまう。じんわりと心地の良い快感、激しい動きは無くてもメリーの指がそこにあるだけで気持ち良い。それだけでずっと浸っていられそうだった。
 けど、メリーは私を喘がせたいのか指の腹を使って膣壁を擦ってきた。
「メリー?ふむっ、ん、んぅ」
 私の疑問の声をメリーはキスで塞いできた。舌先で誘うように私の中へ入ってくるメリーのそれに抗いがたくて、自分からも舌を突き出した。息が出来なくなるくらいメリーとはしたなく交感しあう。
「メリー、ぁっ、ぁっ、めりーっ」
 私の感じるところ、探してる。
「ん、ふ。ちゅ、じゅ、ん、ん」
 自分の下腹部へ意識が集中していると今度は胸から気持ちよさが沸いてきた。
 胸や首、そして耳へと唇で愛撫されてどうしようもなく声が漏れる。
「や、ぁん。ふ、んっんっ、ふっぁ」
 悔しい位に私はメリーに翻弄されていた。
 もう触れるもの全てが気持ちよくて訳が分からなくて、欲望のままにメリーの愛撫に身を任せ、私は腰を浮かせて快感に縋った。
 メリー、イかせて、イかせてっ、もっとして。
「蓮子、イって」
 耳元でそう声を吹き込まれてキスをされ、私はもう何も考えられない。
「あっ、あっ。イくっ、メリーっ、めりーっ!もっ、いくっ、めりーっ!」
 覚えているのはただ広がっていく気持ちよさだけ、メリーだけ。


「うー、メリーにイかされた」
 枕に顔をうずめてそう言うと急に気恥ずかしさが襲って来た。メリーの舌がちろちろと私の胸を舐めたことや裸の姿が思いだされて甘い疼きが下腹にはしり、私はふるりと股を擦り合わせる。こんな状態で隣に居るメリーの顔なんて見た日にはどうにかなってしまいそうだっていうのに、それが分かっているのかいないのかメリーは悪戯顔でこう言ってきた。見えてなかったけど、メリーは絶対そういう顔してた。
「あっ、あっ。イくっ、メリーっ、めりーっ!もっ、いくっ、めりーっ!だったかしらね蓮子ちゃん?」
 わざとらしく蓮子ちゃんだなんて、くすくすそう言うメリーに何故だかとてもむかついた。
「メリーのいぢわるっ!ばか!あほ!」
「あはは」
 ぼふんと私の顔は枕にダイブ。
 あんまりメリーにやられっぱなしなのもあれだからとちらり横目でメリーを見ると、両手で顔を支えるメリーが見えた。私を見てた。
 笑うメリーのその顔はからかう言葉とは裏腹にとても穏やかで優しくて、そんなメリーに心をとくんと動かされ、すごくすごく嬉しくて、だから私はメリーに聞いた。
「何よ?言いたいことがあるならはっきり言えばいいじゃない」
 素直じゃないにも程があった。
 そんなハリネズミも真っ青な私なんかにメリーはこつんと頭を寄せてくる。金を流すメリーのその髪がくすぐったくって心地良い。
「言ってもいいの?」
「言えばいいじゃない」
 分かってたけど、どうやらメリーも私と同じくらいに素直じゃないらしい。
 何となくはぐらかされそうな気がして、だけど私のその予想は大いにはずれ、メリーは誰にともなく喋り始めた。
「私の愛撫で感じる蓮子が、すごく嬉しいなって思ったの」
「ちょっと」
 いきなり恥ずかしいこと言わないでよ。私がそんな風に思っているとメリーは何の躊躇いもなく、そうするのが本当に自然な仕草でキスしてきた。
「ん、は。蓮子が感じてるの見るだけで、私もイきそうだった」
 メリーからのそれを当たり前のように受け入れて、キスより後のメリーの言葉に乱されて、かぁっと頬が染まっていくのが分かったから慌てて私はメリーに言った。
「メリー、メリーちょっと待って。分かった、分かりましたすみません。恥ずかしくてどうにかなりそうなので許してください」
「んーん、止めてあげない。全部思ってること蓮子に聞かせる」
「う」
 聞かせる、その微か強制を思わせる言葉を放ち、たじろぐ私を見るメリーはどこか楽しげで、それに何か私は気圧されてしまい心の中で弱音を吐いた。
 イニシャルMの癖して猫を被ってたのねメリー、その、ひどいと思います。
 何故か敬語だった。
 言葉に出せなかったのは、出してしまうとメリーに何かされそうだと本能的に思ってしまった訳だからじゃない。断じてない、と思います。
「相手のこと好きだって思ってないと愛撫だけで私もイきそうになるなんてないもの。だから、私は蓮子を本当に好きなんだなって、それが分かって嬉しいの」
「何よメリー、それちょっと傷つくんだけど。半信半疑だったってこと?」
「んー、そういう訳でもないんだけど。でも蓮子も好きな相手じゃないとイけないでしょ?好きでもない相手に触られたり、指を入れられただけで気持ちよくなるなんてないじゃない」
「それはまぁ、そうだけど。でも、そういうことで確認されるのは、そういうのは。メリーなら嬉しいけど、やっぱり嫌よ」
「蓮子?」
 そう言って伏しがちになる私の顔をメリーは覗き込んでくる。
 何だか私だけが始めからメリーを好きだったみたいですごく癪で、でもメリーは行為を重ねる対象として私を好きだって言ってくれて嬉しくて、だから。
「はむ」
 かぷっとメリーの首筋に私はそっと噛み付いた。
「あっ」
 メリーはそんな喘ぎを上げておとがいを浮かせたので私の心は上々気分。
 そのまま舌先を這わせて耳裏をひとうちし、そうして言葉をふたつ囁いた。
「ばか。何度だって好きにさせてみせるから」 
「うん。何度だって好きにして、蓮子」
「メリー、それ意味違わない?」
「それじゃあ試してみる?」
「言ったわねメリー?」
「言いましたとも」
「それじゃあ」
「えぇ」

「「第二ラウンド」」 

 メリーを愛撫していて、それだけで私もイきそうになって正直何度もイったけれど、メリーのイく姿も見れたから、すごく幸せな気持ちになって私たちは二人一緒にベッドで眠って、そしてやっぱりというか当たり前に同じ部屋で朝を迎えました。 
こんな秘封もありだといいなぁと思いつつ。

2012/4/27
うぉぉ誤字すみませぬ、今更修正しました。
コメントもありがとうございます、楽しんで貰えればこれ幸い!
かも
コメント




1.名前が無い程度の能力削除
GJ!
2.名前が無い程度の能力削除
まさにネチョ秘封SSの王道ともいうべき話だった
黒の下着とは中々蓮子も挑発的じゃないか
メリー側の絶頂も見たかったので残念です

余計ですが誤字報告
×着いていったりしない
○付いていったりしない
3.名前が無い程度の能力削除
素晴らしい
素晴らしい
4.名前が無い程度の能力削除
想いを確かめるまでの不安な気持ち
ねちょるまでのドキドキ
素敵ですね
5.名前が無い程度の能力削除
どきどきしました。らぶ。