真・東方夜伽話

マニキュア

2012/03/15 14:01:01
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マニキュア

カラシナ

 


「ねぇちょっと」

 遠くから届いた声に、舞う勢いを広げた腕で殺し始める。回る景色は次第々々に落ち着いて、木立の中に穣子を難なく見つけた。
 相変わらず大きいわね。厄の紗を透かした向こうに背負い籠が立っている。背負うよりも背負われている格好で、腰に手をあて佇む姿は豊穣の象徴と言えなくもない。

「珍しいわね。どうかしたの」
「どうかしたって、それはあんたでしょ。これ」

 丸い青は瓜かしら。あちらは岸辺にこちらは川中、腕一杯に掲げられても遠目では判別が付かない。けれども、背に垂れる汚泥にも似たこの感覚。予感に押されて流れを歩む足が速まる。やっぱり。

「どうかしているわね」
「分かった?」

 瓜の瑞々しい表面に、厄がぬらぬら這っている。
 慣れはしても親しみは到底出来ない濁った黒だ。

「溜め息はいいから早く取って。腐っちゃう」
「ええ、ごめんなさい」

 人差しと中の二指で掬い上げ、僅かな勢いをつけて肩の高さに放す。巡り始めた様子を見て、溜め息をもうひとつ。
 量は多くない。獣が中ればひと月足らずで食われるだろうし、人ならば病を患い同様に死神を迎える。妖怪であればしばらく寝込みもするかも知れない。
 質はともかくそれだけで霧散し、災禍に多を巻き込まない小さなもの。

「これだけかしら」

 穣子の指先で混じりけの無くなった素直な青が、裏に表に返される。
 確かめなくても大丈夫だと思うけれど、こうなると自信が無いわね。

「そんだけ、多分ね。拾ったのは結構下の方だけど、ここまで特に感じなかったから」

 満足したのかひとつ頷き、背中の籠に放り込む。ごそりと鳴った。

「で、本題。また別れ話? 痴話喧嘩ならもうちょっと平和にやりなさいよ」

 やっぱりそう考えるわよね。拾い損ねるなんてしくじりは、あれが初めてだったから。けれども今と同じように、枯れ枝へ纏わせ運んできてくれた静葉は、穏やかに微笑むばかりだった。
 姉妹と言っても真逆。赤くなった手に息を吐きかけ「寒くなってきた」というひと言は、間近へ迫った冬に気付かせた。

「喧嘩とは違うけれどもにとりは当たっているわね。少しばかり考え事をしていたから」
「考え事ってあんた、あんな真っ黒けなら酒かっ食らって寝てても叩き起こされるでしょ」

 違いない。

「まぁいいわ。別に首突っ込みたいわけじゃないし」

 でもね、と続けられた声はひどく明るいもので、足元の小石へ向けていた目を上げさせるには十分だった。

「ちょっとくらい笑ったらどう。不景気そうな顔した厄神なんて、御利益の欠片も無いわよ。あんた達がどうなろうと知ったこっちゃないけど、詰まんないのは嫌」

 違いない。
 穣子のことだ、励ましではないと知っている。かといって皮肉でもない。何事においても享楽し、のみならず周囲もそうであるように願う心から出た言葉だろう。裏表のない笑顔は少しばかり眩しい。
 半ばを自嘲が占めてはいても、何であれ笑えた。踵を返す彼女に礼を言う。

「あ、これあげる、変な天気ばっかりで心配したけど、今年は結構いいわよ」

 瓜を渡された。ひと口齧ると、水気に漂う仄かな甘味が鼻を抜ける。
 まだ少しばかり若いのにこうまでなら、確かに期待できるわね。

「今度こそ、じゃあね」
「ええ、もういちど、ありがとう」

 軽快に上下する籠を森の奥に見送って、首を空へと巡らせる。中天からやや外れて輝く太陽で、八つ時頃と見当を付けた。遅れそうね。考えに没頭していたと良く分かる。
 今日の仕事に方を付け、椛の家に足を向けた。
 降り注ぐ木漏れ日が無闇に明るい。

「また」

 やってしまった。私はどうしたというのだろう。
 一週間前はまだ良かった。流れを踏み、波間に沈んだ厄を浮かび上がらせる。掬おうとしたところで手元が狂い、弾き飛ばしてしまった。こういうこともあるわよね、考え、自分を慰める。最後にあったのは何十年前かも覚えていないというのに。
 三日前のものは言い訳も付く。山のどこかで家の建て替えでもしたのだろう、川面を埋め尽くして押し寄せる量に対処しきれず、下がり続ける内に普段の場所が遠く霞むほど離れていった。いつもならこの程度、思い、ブーツの紐が緩んでいたせいだと誤魔化した。実際、結び目が解けていた。
 そして今日だ。
 さり、瓜を齧る。飲み下す。若さからの苦味だけで、甘味など見当たらなかった。
 原因なら分かっている。

「にとり」

 百にひとつ。彼女が誘ってくれる夜の頻度だ。
 淡白なわけではない。恥ずかしいという一心で抑え込んでいるだけだ。そのはずだと思っていた。
 けれどもいつのことだろう、長くともひと月は経っていない。私は色を求め過ぎているのではないか、にとりは倦怠を覚えているのではないかと不安が芽吹いた。
 光の届かぬ心の奥底だというのに、子葉を開いてからは早かった。
 守矢神社の、他所様の風呂場で求めた記憶が私を苛む。にとりが恥ずかしがるなんて目に見えているでしょうに。不安には棘の植わる後悔が茂った。笑って許しを言う彼女の瞳に、嫌気は差していなかっただろうか。あっても当然でしょうね。枝先に暗褐色の疑念が生った。私は、にとりに迷惑を掛けてばかりいる。たわわに実り、落ちず、腐乱の様相を色濃く纏い始めた。

 私は傲慢だ。今に至って尚、彼女に動いてくれるよう望んでいる。
 僅かにでも私を求めてくれたなら、この不安もさらさら解けるでしょうに。しんしん積もる寂しさはひと足毎に厚くなり、目に映る光景を冷たい白で覆っていく。更には木々の隙間にも歩み寄ってくる白が見えて、

「なんだい、瓜じゃあないか。にとりの奴が増えたのかと思っちまった」

 誰かと思えば椛の同僚だった。
 豪放を象ったかのような白狼天狗の白い姿に、幻の白を打ち払われる心地がした。本当、どうかしているわね。ひとつ小さな息をつく。首を振り、悩みを頭から追い出そうとして疑問が湧いた。
 何故、にとりが?

「何ね、椛と呑もうなんて考えて、ほら、いい鮎だろ。こいつを肴にしてさ。でも先客にあいつと山の巫女がいたんで振られっちまった寸法だよ。殺生な話じゃないか、ええ? 折角の非番を当て込んだのにねぇ。
 まぁそれで帰りの風に、それ、その瓜と出くわしたってぇわけだ。厄神様とひとつ所で匂えば、そりゃあ鼻も化かされるってもんさね」

 まだ日も高いのに。そうは言っても、これが天狗なのでしょうけれど。
 何にせよ聞けて良かった。にとりも来ていたなんて。用が済めば家に寄ると伝えたはずだけれど、仲間外れは嫌だったのかしら。
 ともかく心の準備は出来るわね。虚をつかれた姿を曝すなんて想像もしたくない。優しい彼女は眉を曇らせて不安がるだろうから。

「そういやあんたは? この先ならやっぱり椛かい」
「ええ、ちょっとね」

 どちらかと言えば早苗の方だけれども。突然お針を教えて欲しいだなんて。
 尤も理由は充分合点のゆくもの。椛の仕立てた浴衣に惚れたのだろう、デート用に一着持ちたいという言葉には頷ける。文のためにと心を砕く様は初々しくて微笑ましい。

「なんともまぁ先約だらけじゃないか。今度は取り決めてあいつを独り占めにしてやろうかねぇ。うん、そいつが良さそうだ」

 はたりと尻尾をひと打ちして、

「ああ、用事があるんだったね。それじゃあ私はもう行くよ」

 放歌される黒田節が木立の合間に呑まれていった。私も行かないと、随分待たせているわね。
 残った最後のひと欠けを口に押し込む。味の少しばかり戻った塊が、喉を転がり落ちていく。



***



 深呼吸をひとつ。

「椛、いる?」

 中からの返事に続いて戸が引かれた。
 やっぱり白い。耳と尻尾は当然として、胸を纏めるサラシが余計に白を付け足している。暑がりな子。尤も舌を垂らしていないから、まだましなんでしょうけれど。
 涼しげな薄着に反って夏を感じつつ、奥に座る早苗とも挨拶を交わし、

「雛っ!」

 飛び付かれた。
 百にひとつ。気構えなんて物の役にも立ちはしない。にとりの香りと柔らかさに、どろりとした欲が湧く。馬鹿げたこと。

「あらあら、どうしたの。こんなところで押し倒されても」

 冗談の誘いを目元に載せて、

「困らないわね。積極的なにとりも好きよ」

 真に受けてはいないと思う。それでも彼女は朱に染まっていく。
 このしがみつく両腕が私を貪ってくれたなら、どれだけ安心できるだろう。心中を読んだかのように彼女の体が飛び退った。

「そうじゃなくてっ。ねぇ雛、見て見てっ」

 勢い良くかざされた爪は、仄暗い屋内にあって尚鮮やかな真紅に濡れている。

「爪紅? そんな高価な物、何処から」

 知らず息を呑み、

「ああ違うわね。ごめんなさい、にとり。とても素敵よ」

 にとりの瞳に影が過ぎった。まだ冗談を続けていると思ったのかも知れない。
 本当にごめんなさいね、お詫びと心からの賞賛を込めて頬を撫でる。怯えないで笑って頂戴。

「うん、ありがとう」

 良かった。と思ったけれど私には良くないわね。
 爪には鮮血の滴る生々しさがあるのに、朗らかに浮かべた笑顔は向日葵を思わせる。私は我侭だ。いざ笑ってくれたところで、この匂い立つ色を怖いと感じるなんて。見続けると歯止めが効かなくなりそう。逆に私が押し倒しかねない。
 視線を外した先、流し場では椛が手を動かしていた。急須を掴む指に意識が向く。こちらも爪紅。

「貴方も綺麗ね。そうなると出所は早苗かしら」
「ご明察です。まずは上がってください。丁度茶を淹れるところですから」
「ありがとう。そうさせてもらうわね」

 土間を横切り、上がり框に腰掛ける。これでひと安心かしらね。少なくともブーツを脱ぐ間はにとりを見ることもない。
 真夏の陽気からではない汗が、背中にじっとり染みだした。お茶が待ち遠しい。

「あの、雛さん」
「何かしら」

 声に振り向けば、早苗が小瓶を掲げていた。
 ギヤマンを透かした中に粘度のある真紅が見える。

「良かったら、えっと爪紅、試してみませんか。色々揃えてますし」

 私が?

「それは悪いわよ」

 言ってから、にとりの姿がまぶたの裏にちらついた。ひと目だけでも欲を掻き立てるあの紅を、私がもし付けたなら。
 気付けば口が動いていた。



***



――メロン色って言うんです。

 萌黄でいいと思うのだけれど。爪紅をマニキュアだと言い換えたり、外は随分ややこしい。
 私の服に真紅はいかにもくどく見えるでしょうね。何であろうとにとりは褒めてくれると思うけれども、私は最善を尽くしたい。並べられた小瓶を眺め、手に取り外から届く照り返し光に透かして、悩む。
 不意に早苗がひとつ差し出してきた。若々しい瓜の色だ。そして、にとりの色。好んで身に着け、また口に入れる色。考えれば考えるほど、これ以上のものは無いように思われて、もう合うか合わないかなど頭の片隅にも残っていなかった。
 湯舟に目を向ける。にとりは綺麗と言ってくれたけれど、

「ひどいよ雛ぁ」

 拗ねている。
 何が、と訊き返すけれども大体の察しは付く。帰り道の間も夕飯中でも不貞腐れていて、風呂の支度ではだんまりを通した理由。
 分かってはいるけれど、彼女の口から言わせたい。きっとかわいいから。

「それは」

 思った通りに口篭る。なぁに、と返したところで唸り声が聞こえるばかり。
 もういちど促した。

「雛のバカっ」

 ちゃぷん、音がした。
 何かしら。髪を絞りつつ横目に窺えば、窓から差し込む夕日が見えた。その影には何もいない。代わりとして、稲穂の金に煌く波間に青の水草が漂っていた。
 行儀の悪い逃げ方だこと。少しばかり意地悪し過ぎたわね。

「ごめんなさいにとり。そう怒らないで。けれども嘘を吐くわけにもいかないでしょう。あれで誤魔化したほうなのよ」
――なんでそんなに深く切ってるんですか。

 早苗が問うた。視線は私の手に向けられている。「爪のことです」と付け加えられてようやく分かった。そう言われれば深爪になるのね。
 答えようとして背後から忙しく裾を引かれた。ぼかすようにという懇願だろうと当たりを付ける。確かににとりが気にしそうな事柄だ。
 結局、早苗には謎掛けをして煙に巻いた。
 狐に抓まれたような顔は久々に見たわね。半年も前には頻繁にあったけれども、近頃はとんと見かけなくなっていた。早苗もこちらに慣れてきたのでしょうね。見聞きする物事に逐一驚き、好奇心を剥き出しにして文を質問攻めにする様は、彼女をひと回りも幼く見せた。思い返して喉の奥から笑いが湧き出る。どうしてこう懐かしく感じるのかしら。
 追憶から引き戻すかのように、ふたつ、みっつ泡が弾けた。
 優しい子だから分かってはくれているのでしょうね。納得できていないだけで。かわいい子。爪の意図を悟られたくない恥ずかしがり屋。

「それに遅かれ早かれ早苗は知るわよ。遠からず、二年も経たない内に、かしらね」

 言っておきながら少しばかり長いかとも考え、やはり二年は掛かるだろうと思い直す。何しろ相手はあの文だから、早苗が押せばどこまでも逃げ続けるでしょうね。そして鴉の逃げ場たる空には限りがない。本当、臆病な子。
 けれども愚かではないし優しい子だ。機会さえ訪れたなら、指に植わった刃物には早々に危険を見出すだろう。早苗が脆弱な人間だということは幸か不幸か、尚更に気を配るはず。事に及ぶ前に考えが至っても驚かない。

「どうせなら早めに知っておいて欲しかったのよ。お節介だと分かっているけれど。にとり、許して出てきて頂戴。茹で河童になる前に。後家は嫌よ」

 ざぶり、見当をつけ指を水面下の首筋に伸ばした。くすぐり、泡がぽつぽつ浮かび始める。もうひと息かしら。顎の下へ。
 ごぼり、特段に大きなものがひとつ上がって……腕? 湯舟に引き込まれて、咄嗟に目を閉じ、ざわつく気泡が駆け上り、

 ひとつ口付け。

「もう、無茶しないでよ。こんなの私だって無理なのに」

 百にひとつ。また欲が湧いてきた。我ながら呆れ返る。
 今の唇は仲直りの合図でしかない。その証拠に髪の先から金の雫を滴らせ、彼女はもう笑っている。拗ねも怒りもしていない、夕暮れの物寂しさをひと口に呑み込む明るい笑顔。

「雛だってちゃんと考えてくれてたんだよね。ごめん」

 私こそ、直視の出来ないまま返す。髪を纏めると、やることも身の置き所もなくなって、湯船に体を沈ませる。
 ただ二人で浸かっているだけの時間が、一昼夜にも思えた。



***



 どうかしたのと訊ねられ、手の止まっていたことに気が付いた。
 浅瀬の青にも似た髪から、水気を手拭で抜き取っていく。

「少しね。昼間のことを考えていたから」
「これ?」

 襦袢の白を肘に垂れ下げ指が上がった。行灯の光を受けて爪の真紅が鈍く揺らめいている。
 目を背けた。無邪気に聞き返してきた今、その気はないだろう彼女を煩わせたくはない。

「ええ、それよ」

 抱きついてくれたこともあるのだけれどね。
 髪の乾き具合を確かめ、櫛を取る。

「マニキュアって名前、なんかいいよね。丸っこいしかわいいし、うきうきする感じでさ」
「そうね」

 新し物好きならではの感性だろう、指先を眺める横顔は大きな笑みに崩れている。飴細工を手にした童ね。彼女の興奮を櫛が仲立ちして指先に伝えてくる。釣られて私の顔も綻ぶのを感じた。
 私はこうまで幼げに楽しむ心地になれないけれども、反って嬉しい。恋人でよかったと思う。
 幾年関係を重ねても彼女と私は重ならない。重ならずに混ざり合い、河の注ぎ込む湖のようにいつまでも清新な水と共に在り続ける。
 櫛を置いた。

「終わったわよ。どうする」

 にとりはうんうん唸って迷い始めた。このまま寝ると思っていたのに珍しいわね。何か用事があったのかしら。

「あのさ」

 くるりと振り向いた瞳を間近で見詰め返す形になった。伏し目がちな顔に行灯が陰影を付けて、尻込みする表情に不安の形を浮き彫りにしている。
 こんなところも珍しい。何かしら重大な用件なのか、戸惑いながらも先を促す。それだけで躊躇いは消えたのか勢い込んで話し出した。

「昼間、雛がマニキュア塗り終わってから全然時間なかったからさ。うんん、えっと、ないことはないけど、すぐ早苗達と浴衣縫い始めたよね。別にそれでもよかったんだけど、隣でずっと見てたから。でもやっぱり足りなくって。だからさ、だから」

 布団に突いた指が沈んだ。何を気負いこんでいるのかしら。

「雛の爪、もっと見たいんだけど、ダメ?」

 拍子抜けした、何かと思えばそんなこと。次いで自嘲が零れ出る、そんなことで遠慮させるのね。
 応えようとして、ふと思い出す。何のために塗ってもらったのか。今ならば彼女もこの色に、色を感じてくれるだろうか。
 もとより否と返す心算もなかったけれど、飽きるまで見るよう告げる声に幾許かの期待が載った。

「うんっ。でも飽きるなんてことないと思うけどなー」

 にとりが布団にうつ伏せて、私の指を手に取った。心持ち目を細めて眺める表情には実際、飽きないという言葉に誇張はないのだろうと思わされる。

「かわいいよねー。メロン色だっけ」
「そういう話ね」

 かわいいと言ってくれるのは嬉しいけれども、思い知った。やっぱり駄目だったわね。空いている手で彼女の髪を撫でる。望むなら夜が明けるまででもこうしていよう。残念だけれど、仕方ない。
 胸中の粘つく泥に梃子摺っていると、ゆるゆる摩るにとりの指が目に入る。その先で紅がぬらりと蠢いた。
 私の目を恨みたい。無理矢理にでも意識しないようにしていたものを何故、今になり見つけてしまうのだろう。
 それでも、思う、向こうからは望みがなくともこちらからなら。ほんの一時でも、この寂しさを紛らわせてくれたなら。
 手を髪から外す。首に伸ばして、肌に滑らせ、

「あのさっ」

 指を引いた。
 今夜は諦めましょう。無理強いなど出来るはずもない。ただでさえ神社の一件があるというのに。
 落胆を微笑みに捻じ曲げて、「なぁに」を返す。これで彼女は安心して他愛ない世間話を始めるだろう。尤も、

「えっと、あれ、なんだっけ」

 少しばかり時間が掛かるけれど。
 もう少し落ち着きなさいな。



***



 彼女が話す。地震で壊れた麓の神社に河童達が携われなくて少し残念だ。
 私は繋ぐ。予兆を告げる、雷と共に私を音なった客のこと。

「会いに来るなんてすごいね。私達以外だと何年ぶりかなー」

 忘れてしまったほど遠い昔としか分からない。

「それだけでも珍しいのだけれど」

 更に、あのお客は周りの厄を一顧だにしなかった。もう一度会ってみたいけれども無理かしらね。名前すら訊けず終いだったから。

「早苗だってむちゃくちゃ緊張してたのにね。見てるこっちが気の毒だったくらい」
「よく言うこと。貴方もでしょう。初めての人間に会うからって、隠れ蓑まで持ち出すかしら」
「言わないでよ」

 肩の力が抜けていく。単純ね。
 行灯のちろちろ揺れている様も、忍び笑いをしているように思えてくる。

「早苗も変わったよねー。初めの頃は信仰集めにそこら中飛び回ってたのにさ」
「落ち着いてきたのでしょうね。文に負うところも大きいのだろうけれど、別人のよう」
「うん、変わったって言えばさ、椛もそうだよね。将棋には付き合ってくれるけど気もそぞろっていうか」
「はたてがいるんですもの、当然でしょう」
「まだふたりが一緒にいるとこ見たことないんだよね。そんなにすごい?」
「すごいと言うより、面白いわね」
「雛っていじわる」
「貴方も見たら分かるわよ」

 惚気こそ言わないけれど、耳も尻尾も常になく浮き足立っている。本当、初々しいわね。
 昼間の姿は特にかわいいものだった。針仕事の合間々々に気付けば手を止めていた。目は決まって爪に載ったパールピンクだという桜色を見詰めていて、その度に尻尾の床を払う音が聞こえてくる。思い描いていたのは何かしらね。紅を褒めるはたての笑顔か、頭を荒く優しく撫でる手か。
 私達の気を削いでしまうと考えたのだろう、三度も繰り返したところで跳ね回る尻尾が腰に敷かれた。尤も、だらしなく倒れる耳はどうにもならなかったようだけれど。
 あの姿を見たならはたてはどうするかしら。考えるまでもないわね。一にも二にも、まずは飛び付くのだろう。昼間の私に対するにとりのように、照れも気後れもせず。それから……頬を擦り付ける? 白の髪に鼻先を埋める? 両方一時にやるかも知れない。

「あら」
「あれ」

 灯りが消えた。当たり前だ。瞬いていたのは油が尽きる前兆だ。なんとも可笑しい。
 待つように言い残して、にとりの立ち上がり土間に消える気配がした。
 彼女の声と手触りがなくなった暗闇の中、りぃりぃと鳴く松虫達の声を聞く。開け放された障子の向こうに、蚊取り線香が煙に揺らめき灼ける赤を纏っている。
 静かね。段々と暗さに慣れて。月明かりだけでも方々の影形が付いてきた。ざわりと夜風が梢を揺らせば、ぴたりと虫は羽を休める。そしてまた遠慮しいしいりぃと始める。
 にとりが蝋燭を手にして戻ってきた。

「お待たせ」

 皿に油を注いで灯心に火を移し、蝋燭を扇ぎ消す手元に紅がちらちら煌いた。諦めの付いたせいか、爪を覆っていた滑りが見えなくなっている。
 少しばかり残念だと思う。色香のあるにとりはかわいいから。

「結構話し込んじゃってたんだね」

 頬杖を突き、私の手を改めて眺め始めた。色香がなくともかわいい。
 行灯の微光を受けて、髪を撫でる。くすぐったそうにもぞりと頭は動いたけれど、『もっと』と言わんばかりに手のひらへ押し付けられた。喉の鳴り方で、彼女を上機嫌な猫と錯覚してしまいそう。
 今が頃合でしょう。滑りの見えないことには嬉しいとも感じる。素直に感想を口に出せるから。戸惑い、焦りからの言葉ではなく、しっかりと伝えたい。気落ちさせてしまった償いもあるけれど、何より彼女に喜んで欲しいから。
 ゆるゆる摩る手に手を重ね、

「にとりの爪、綺麗ね」

 顔が私に向けられた。力の入りように少しのけぞる。 

「それって本当?」
「本当だけれど」

 抱きすくめられた。続けるはずだった「どうかしたの?」が行き場を失う。

「お願い、もいっぺん言って」
「ええ、それはいいけれど」

 言う度に、「もういちど」とせがまれる。回された腕がきつく、更にきつく胴を締め上げていく。河童の膂力は少しばかり私にとって強過ぎる。身じろぎひとつ出来はしない。仕舞いには肺へ息を送り込むことも難事になる。緩めるよう頼んだところ、初めて気付いたかのように謝りながら力を抜いてくれた。
 「もういちど」はいつの間にか「もっと」になっていた。
 何があったのかしらね。打って変わって普段甘えてくる時の柔らかな抱擁を感じながら「綺麗」を言い続ける。幾度繰り返したのか勘定も出来なくなった頃に、ようやく「もっと」以外の言葉が聞こえた。

「ありがとう、すっごく嬉しい」

 事情に見当の付かないながらも背中を撫で続ける。

「ねぇ雛、私が初めて大会に出た時のこと覚えてる?」
「ええ」

 忘れられようはずがない。あの発明大会は彼女にとってだけではなく、私にも初めての体験ばかりだった。ほんの八十年ほど前なのに随分と昔に感じる。
――あのさ、良かったら、

 それでも始まりの言葉から、天気の移り変わりまで覚えているのは、大切な思い出だから。
――良かったらだけど、見に来てくれないかな。


 どこか心細げな友人に誘われた。
 台風の訪れる度に洗い流される河原へ向かう。河を挟んだ先は、黒山の人だかりだった。
 極稀に見かける程度の河童達が喧騒を為していることにまず驚き、場違いじゃないかしら、ドレスを検め居心地の悪さを感じる。青や緑を基調にした簡素な装いの群集に、この赤は混ざりようがない。お祭りだから普段通りでいいって言ってくれたけれど。
 木陰に潜んで踏み出す一歩を躊躇っていると、背後から様付けで呼ばわれた。そう言えば来るって聞いてたわね。多少なりとも知った声に安堵を覚えた。挨拶を返し、名で呼んでくれるよう改めてお願いする。
――失礼致しました、雛様。

 硬い。にとりの友人は私の友人という風には行かないようだ。定規を当てたような直線で頭を下げる椛の姿に歯車の精密さを連想した。しかも噛み合ってはいない癖、何故か滑らかに回り続けるもの。にとりから聞かされる分だと優しい姉を立派にこなしているのだけれど、何かしらどこかしら間の抜けて……
 ああでも、落ち着いた格好は確かにお姉さんね。晴れ着かしら。群青に染められた色無地の縮緬と、枝垂れ柳をあしらった白の帯には清涼な静けさを感じる。
 時節に馴染んでいて綺麗だと感想を言った。
――ありがとうございます。

 纏う雰囲気が丸みを帯びた。硬直していた狼の耳が、息を吹き返したかのように柔らかくなる。何かむず痒いわね。嘘ではもちろん無かったけれども、素直な子。
 にとりはしょっちゅう悪戯を仕掛け、椛はその都度律儀に引っかかり叱ってくれるのだと言う。常々疑問だったけれども、なるほど合点がいった。
――今日は大会の見物においでなさったのですか。

 その心算だったけれども今まさに諦めようとしていたところだ。返そうとして、椛の姿に改めて気が付いた。お祭りには少しばかり硬すぎる。肩肘の張らない祝賀にならこのままでも参列できるだろう。
――にとりの初舞台ですから、恥を掻かせぬよう相応に整えたく。

 親馬鹿なのかしらね。
 何であれ助かった。場違いなひとりより、ふたりの方が余程ましだろう。
 未だ他人行儀な椛に伴われて会場へ向かう。近付くに連れて鳴り響く爆竹と、絶え間ないざわめきが耳を聾さんばかりに迫ってきた。大丈夫かしら。火薬の量を間違えたとしか思えない轟音がどこかで上がった。にも関わらず聞こえもしなかったかのように、周りの誰も彼もがてんでばらばらな方向へ駆けていく。
 私は雑踏に慣れていない。それどころか初めてだ。目を回してよろけ躓き、椛に幾度も支えられる。仕舞いには、旋風のように傍を駆け抜けようとする肩にぶつかられて、
――ごめんねっ。

 申し訳なさそうに片手で拝み、それでも隠し切れていない興奮を浮かべる笑顔に謝られた。
 あの様子なら大丈夫なんでしょうけれど、勢いが不安になるわね。今回はどうあれ今すぐにも事故が起きるのではないか、肝を冷やして目に付く端から厄を拾い集めていく。小火騒ぎくらいなら余興で済むのに、我ながら過敏だったこと。
 のぼりや天幕の間を抜けていく。虹にも引けを取らない豊かな色彩。合間々々に赤の頭襟が幾つかちらほら見え隠れしていた。
 物好きな鴉天狗が暇を持て余していたのだろう。背丈が低い河童達の中にあって、高下駄で練り歩く様には目を惹かれる。祭の熱に浮かれていても恐れを為すだけの冷静さは残っているのか、進む先の人垣が波の引くように別れていくから尚更。場違いじゃないかしらなんて杞憂だったわね。
 喧騒の中心に分け入っていく。普段の生活とは懸け離れた人いきれの息苦しさに疲労を覚え始めた頃、老齢の河童と目が合った。目礼をする。
――河城から御来訪のこれあるを伺っておりました。手前味噌では御座いますがまずい芸は致しません。一時の慰みになれば幸甚の至り。どうぞ、ごゆるりと。

 準備に奔走する年若達にとり囲まれていようとも、それをするりと抜けてきた。柄にもない挨拶に苦笑が湧きかけ、周囲を意識して取り繕う。顔役も苦労するのね。
――犬走殿もお変わりないようで。お二方、にとりの奴をあんじょう頼みます。

 礼を返した私達に幽かな囁き声が届いた。本当、苦労するわね。指揮に戻る背中を見送る。
 最後の調整をしているにとりを励まし、出店の半分も冷やかした頃、不意に一際大きく音がした。飛び跳ねかけた足を踏みしめる。体の奥にまで振動を届かせたのは恐らく大砲だろう。少しばかり遣り過ぎじゃないかしら。
 号砲に従って舞台に目を向けると、先程の河童が中央に立っていた。溢れていたざわめきが静かな威厳に呑まれていく。会場を押し潰そうとする緊張に、梅雨の空気が冷え込んで、
――始めるぞ。一番手、上がれ。


 結果は散々だった。
 にとりの作品は『雨を風で散じる』というもの。有体に言えば紙の張られていない傘。
 方々から酷評が上がった。

 曰く「風向きの制御がお粗末。帽子を吹き飛ばしかねない」
 曰く「携帯に適う大きさではない。蒸気機関には無理がある」
 曰く「着想からして他所の二番煎じ。ならば元を越えてこそ」

 他所とは鴉天狗のことだろう。彼女達の風を纏い雨中を過ぎる姿を時折見かける。
 背中を丸め舞台を降りるにとりに。見ていていいものかと目を逸らし、拳を握り立つ椛が隣にいた。自らを恥じた。
 向き直って見届けようとし、舞台上からにとりを呼ばわる声を聞く。

――河城やい、何故そいつを作った。
――えっと、それは、
――何を愚図愚図と。はっきり話せ。
――私の友達ふたりのために。
――そうか、もう行っていい。次ぃ、二十一番手、上がれ。

 上で私達に目星を付けていたのだろう、駆け寄ってくるにとりの笑顔が痛々しい。泣きたいのは彼女の方でしょう、私の役目は友人を迎えること。
 椛の「お帰り」に続けて、「お疲れ様」を言った。
――ありがとう。でも折角見に来てくれたのに、かっこわるいなぁ。

 私達は語る言葉を持たず、次々と手酷く扱われる出場者達を見ながら閉会を待った。
――これで仕舞いだ。樽を開けろ。

 空気が変わった。暗い筒の中で花火が点火を待ちわびているもの。
 順々に杯が配られ、酒を注がれた。行き渡ったのを確かめたのだろう、壇上から朗々と声が響く。
――御託は言わん。お客人の皆々様に、作り上げたガラクタと、ガラクタに惚れた救いようのない阿呆なあたしらに、

 掲げられた杯が会場に火を放つ。
――乾杯。

 河童達が爆発した。
 待ち構えていた爆竹にたちまち溢れる楽の音と、雨雲が吹き飛ぶかと思える歓声。
 どういうことかしら、助けを求めて隣を見上げたら、困惑する目とかち合った。耳と尻尾が窮屈そうに縮こまっていて分かりやすい。部外者は私だけじゃなかったようね。
 入れ替わり立ち代り河童達が挨拶に訪れる。初を労い、次いであれが良かった、ここは改善の余地があると続く会話を横目に、椛と杯を傾ける。人波が途切れがちになった頃、するすると渋面がやって来た。
――にとり、良くしてもらってるな。そいつを作った理由、忘れるなよ。お前がケツに殻つけたひよっこだってこともな。

 こくりと頷くにとりを見て、無愛想な目元がいびつに歪んだ。あれで微笑んだ心算なのでしょうね。深々とこちらに一礼し、宴会の輪に溶け込んでいく背中へ苦笑を向ける。
 ぽつりと何かが聞こえた。聞こえた気がした。振り向き、やはり聞き間違いだろう、にとりの僅かに持ち上げられた口角は、紡いだはずの言葉に相応しくない。桜色を幽かに載せた緩い頬は、たった一度の乾杯で酔っている。興奮に輝く瞳は。新作を披露してくれる時と同じもの。
――悔しいなぁ。

 もういちど。表情との食い違いに耳を疑った。
 にとりは笑っている。
――雛、どうかした?

 戸惑う声で我に返り、私は、


「初めて『綺麗』って言ってくれたんだよ」
「そうだったわね」

 知り合ってまだ日も浅い友人に贈った、掛け値のない賞賛。どこまでも突き進もうとする意思と、心から楽しんでいる彼女は綺麗だった。
 私は自身を森の一部だと思っている。涸れを知らない流れを舞台にして、せせらぎの奏でる旋律に繰り返し踊り続ける人形だ。
 観衆たる木々は四季を時の鐘にして日々を過ごす。朝日に向かって芽生え、中天に上った頃には果実を蓄え、暮れなずむ空の下で散っていく。山火事や嵐の起こらない限り、激しい感情とは無縁の緩やかな一日。春を夢見る森の中で私は微睡む。
 にとりの姿は春雷の鮮烈さをもって、私の心に焼きついた。

「なんかさ、お姉さんだった雛が言ってくれて、私って少しは成長できたのかな、って思っちゃって。嬉しかったなー」

 驚き、破顔したにとりの様ははっきり覚えている。顔を覆うようにして立て続けに杯を呷っていたわね。単純に照れたのだとばかり思っていたけれど。かわいい子。
 幾年連れ添ったところで知らない部分は無くならないわね。悔しいけれども、嬉しい。今の私は、あの時のにとりと同じ笑みを浮かべているのだろうか。

「ごめんね、雛」

 何のことかしら。視線を落とすと 申し訳なさを滲ませた瞳が私を見詰めていた。

「さっき意地悪してたのは爪のことなんかじゃ全然なくて、すごく羨ましかったから。雛に綺麗って言ってもらえてた椛がそうで、綺麗を何でもないって感じで受け取れる椛がお姉さんだったこともそう。それに針を持った雛がすごく綺麗でお姉さんだったことが一番そう。
 『素敵』はちゃんと嬉しかったんだよ。でも綺麗って勝手に期待してて拗ねちゃって、ほんとにごめん」

 あの目はそういう意味だったのね。

「謝ることはないわよ。私の方こそ気が付かなくて、ごめんなさいね」

 この子には、余裕を持って振舞いたがる節が確かにある。
 精一杯に爪先立ちする童と変わらない。そういったところも愛しい。

「貴方は綺麗よ」
「ありがとう、雛」

 幾度でも言ってあげたい。髪を梳く指へ、この気持ちが伝わるように願いを込める。

「うん、嬉しい。それにもっと言って欲しい」

 まだ足りないのかとは思わない。私が同じ立場なら一晩聞いても聞き飽きない。
 今夜はずっと言い続けよう。それでも私は言い足りないと思う。

「だからさ、だから」

 撫でていた髪がつと持ち上り、首筋にさらと零れた。


「今日は私がお姉さんだよ」


 ひとつ口付け。
 まさか。期待し過ぎる私の頭が、何でもかでも良いように解釈してしまうだけだろう。寝かせ付けてくれるとか、抱き締めてくれたまま布団に入るとかそういった類。
 それなら私は相応に振舞いましょう。何れにせよにとりの香りに満たされた寝床は、身を浮かべてどこまでも流され続けたくなる河のように安らげるものだから。

「さっきはごめんね。私の方から始めたかったの」

 ああでも、この目は、行灯で幽かな煌きを宿した瞳は、

「それでお姉さんになって『綺麗』って言ってもらう予定だったんだけど、ずっと言い出せなくて、なんかあべこべになっちゃった」

 百にひとつ。私の勘違いじゃない。

「どうしたの」
「気にしないで。何でもないわよ」
「でも」
「嬉しくて、幸せ過ぎただけ。ねぇにとり」
「何」
「私をあやして頂戴。お姉さんなんでしょう」
「敵わないなぁ」

 にとりが抱いてくれた。
 にとりが口付けてくれた。
 にとりが私を食べてくれる。

「雛、かわいい」

 息継ぎして三度。唇に吐息が触れた。雪解け水を渡る薫風とも、日差しに焼ける熱風とも感じる。茹だる暑さを押しのけて、別種の熱さを伝えてくれる。
 控えめに打たれた舌鼓を聞き、舌を感じる。にとりは優しい。漆の塗り残しがないように、塗り終えて尚、上塗りするよう丹念に唇を湿された。輪郭をなぞられる感触に、私の震えが静まっていく。口中に期待が湧いて溜まっていく。早く彼女を味わいたい。漆とは似ても似付かぬ甘い蜜で、私を芯から溶かして欲しい。
 けれども先導してくれるというなら堪えて待つべきでしょう。催促したくなる気持ちを、敷布団に広げた五指へ押し込める。
 それにしても長いわね。期待が溢れ、口の端から零れ落ちる。それもまた掬い上げられ、見計らったようにぬるい肉が潜り込んできた。
 甘い。一足先に送り込まれた蜜が、私の味蕾を刺激する。ようやく。安心感に虚脱し、体が崩れ、

「んっ」

 抱き止められた。
 私も離れたくはない。両腕を脇の下から背中に回し、縋りつく。襦袢越しに仄かな体温が伝わる。ざらつくはずの麻布は、まるで音を立てないままに擦れ合った。湿気っている。座っているだけでも汗ばむほどなら当然でしょう。そして、にとりでもっと熱くなりたい。
 互いに膝をにじらせ体をずらし、凹凸に合わせて落ち着かせる。胸の辺りに早鐘を感じる。私達どちらのものかしら。
 お預けのまま吸い付いていた唇を、薄く開いて誘い出す。焦れていたのは彼女も同じと見えて、一心不乱に私を探し始めた。歯列の手前、歯茎の裏、更に奥。仕方のない子。お姉さんならもう少し落ち着きなさいな。
 隠していた舌先で向こうを掠め過ぎる。探し物の出てきたことに喜び、震え、くすぐり返してきた。息が漏れ出る。こそばゆいと思う暇も有らばこそ、先から表、表から裏へと周る頃にはくすぐったさが全て、体を煮立たせる甘露へと変わっていた。
 顎が徐々に弛緩していく。流れ出る唾液の線が二筋、三筋と増えていく。のぼせた頭が舌を突き出す。私は強請っているのかしら。そうなんでしょうね。けれど恥ずかしいとは思わない。欲しくなるのは当然だから。
 にとりは悔しがるかしら。何度お強請りを促したところで、いつも恥ずかしがるかわいい子だから。鼻先にあるはずの定かに見えない表情へ、赤面の記憶を重ねて可笑しくなった。
 肉を絡め取られ、にとりが欲しい、絡み返す。折々に張り付いて、引き剥がす度に湿り気を含んだ音が口から耳へと抜けていく。全身が舌になって愛でられている。錯覚は音のひと打ち毎に弾みがついて、終には肌へ感じ、

「ぷぁ」

 考えるより先に頭を引いていた。
 何があって跳ねたのか体に尋ねようとして、

「逃げちゃダメだよ」

 楽しげな声の後に吸い付かれる。もういちど。今度は分かった。にとりの指が首筋をそろそろ撫でている。錯覚ではない本物。
 これは私の遣り方だ。真似をしようと思えばいつでも出来たでしょうに、もしかして今の今まで控えていたの?
 ぴたり、反響する水音が私の疑問を塗り潰していく。さらり、反復する指先が私の背骨を溶かしていく。

「にとり」

 何も考えられなくなる前に、と白旗をあげた。これでは朝日が昇るまででも飽かずに身を委ねかねない。遣り方は確かに私のものだけれど、全く違う。技術屋の気配りが行き届いた指付きは、酒にも似た酩酊を触れた先から引き起こしていく。

「上手ね」

 いつもより、とは言わない。普段から丁寧さは折り紙つきだ。けれども体を交えるようになって幾年経とうと幼さは残り続けて、ともすれば空回りをしていた。
 自信を付けたのかしら。今日はいつもと違う巧みさ。

「気持ち良くなって欲しいからがんばったよ」
「それなら成功よ。ありがとう」

 にとりの手で身を横たえられる。
 私はそんなに弱ってるように映ったかしら。それともお姉さんだからかしらね。何れにせよ、嬉しい。布団に降ろし、肩の下から抜かれる腕に、彼女の優しさを感じられる。日を浴びる草原にも似たこの温かさに、全身を委ねたい。

「うん、でも」

 両脇に手を付いて私を見下ろす顔は、横から行灯の灯りを受けて仄かに照らし出されている。そこに隠そうともしない邪な笑みを見つけた。私や椛においたを仕掛ける時と同じ、無邪気な悪戯心。
 けれどもここに咎める役目を負うものはいない。嗜める心算もない。

「これからもっとがんばるから、もっともっとがんばるから期待しててね」
「期待しているわ、お姉さん」

 私は微笑んでいるかしら? 無理でしょうね。仮に出来ていたとしても騙しおおせるとは思えない。忙しなく上下する胸は雄弁に私の今を語っている。
 そして、息の整うまで彼女は待ってくれない。待つはずがない。にとりはいじわるな子だから。それが嬉しい。思う様に私を食べて欲しい。

「雛、大好き」

 頭を抱きかかえられて唇を塞がれた。
 にとりはずるい、
 自分だけ言うなんて。全身を内から焼き尽くす言霊を彼女にも渡したい。
 彼女の重みに抗って体をよじる。裾を引く。唸り声を上げる。傍から見ればむずがる赤子だろうけれど些細なこと。にとりならこんな姿もかわいいと言ってくれる。
 上半身から覆い被さる力が消えて、いつの間に目を瞑っていたのかしら、恐る恐るまぶたを開ける。「どうかしたの」と、黒い天井を背負った不安げな顔が見えて、

「にとり、好きよ」

 宵闇に花が開いた。

「うんっ」

 満開の笑顔に重みを感じ、まぶたが再び閉じられる。暗闇の向こうから、汗の混じった香りが音も立てずに降りてくる。額を過ぎる柔らかな吐息に予兆を感じ、肌が小さく粟立った。
 ぽつりと髪の隙間を縫って口付けが降る。優しく私を溶かしていく。これは慈雨だ。
 ぽつりぽつりと天辺に降り始めた雨は勢いを増し、下って、もう耳の傍。髪を掻き揚げて次は、

「んんっ」

 ぞろりと舐め上げられた。堪えてゆるゆる息を吐き出す。本当、いじわるな子。

「今の、どう?」

 砂糖の入った葛湯のように、囁きがとろりと絡み付いてきた。応えようとして、またぞろりとくる。問いへの返事は中途で蕩けた。優しい雨滴は何処へ行ったのかしら。
 ざらついた湿り気が耳の輪郭を擦り立て、外から内へと濡らして行く。耳孔の縁に辿り着く。ざわりと流れ、ぴたりとひとつ舌鼓。篠突く雨が私の中に降り注ぐ。

「雛の息、やらしくなってきてる。嬉しい」

 そうでしょうね。でも返事はしないわよ。
 良いようにされ続けるのは少しばかり悔しい。

「ふぁ」

 噛まれた。戦慄いた。詰まらない意地なんて物の役にも立ちはしない。
 軟骨を食む歯の向こう、喉の奥からくつくつと笑い声が聞こえてくる。今夜は本当にお姉さんをしているのね。妙な意地は枕の下に押し込めてしまおうかしら。そうしよう。私はこれを望んでいたのだから、明日布団を干すかたがた捨ててしまえばいい。
 肩の力が抜けた。気付いたのだろう、笑い声が消えて、

「ふごあないえね」

 動かないでって、何があるのかしら。戸惑う耳に、噛み千切るかも、と続きがやはりぼやけて聞こえて。
 胸に指。
 襦袢越しに左手で持ち上げられた。中央に寄せられ、ゆっくりと円を描くように手のひらで転がされる。これならどうということもない。落ち着けるくらいね。
 むしろ少しばかり物足りない。拍子抜けして、何が来ても受け止められるようにと食いしばっていた歯を解き、瞬間に胸の先を擦られた。

「動かないでって言ったのに」

 またひとつ。

「でも今の声、かわいい」

 もう噛み締めても間に合わない。噛む力も入らない。
 二度、三度と掻き立てられる毎に、静まりかけていた熾き火が目の眩むほどに火勢を強めていく。

「もう尖っちゃったね。雛のおっぱいもかわいい」

 麻を押し上げる先端が痛い。それにも関わらず上下左右に弄る動きを追いかけて止まらない。意地汚いわね。私はにとりの指を恋い慕っている。じりじりと焦がれている。
 宥めるように耳たぶを食まれるけれど、何の慰めにもなりはしない。やわやわと確かめるように噛まれる感触は燃える焦燥に油を注ぎ足すだけだ。けれど、もっと熱くして欲しい。
 腕に力を込めて炎を掻き抱く。まだまだ足りない。喉をふいごにして吹き起こす。まだ足りない。背を反らして火種に押し付ける。足りない。胸から広まる甘いとろ火はちりちりと全身で燻り続ける。
 狂おしい。

「にとり」

 息の継ぎ目に無理やり言葉を捩じ込んだ。

「なぁに」

 にとりの顔。綺麗でかわいい大好きなにとりの笑顔。
 頼りない行灯の中に、私にしか見せない悪戯心が浮かんでいる。

「お願い早くして、早く」
「指のこと?」

 分かっている癖に。

「にとり、触って、お願い」
「触ってるよ」

 にとりはいじわるだ。

「お願い。脱がせて、触って」
「お強請りする雛、かわいい」

 いじわるなにとりが私の帯に手を掛ける。
 緩んでいた結び目が抵抗も無く片手に解かれ、擦れ合ってしゃらと鳴った。もう片手は静かに私の髪を梳いてくれている。にとりは優しい。
 壊れ物を扱う手付きで衿を開かれた。涼しい。蒸れた息を吐き出して火照った肌に外気を感じる。少しばかり涼しすぎる。彼女の温めてくれた熱が逃げて、名残惜しいとも感じる。けれども、これから、

「美味しそう」

 にとりが私を食べてくれる。期待に背が浮き上がる。
 「でも」と囁かれた声に爪先まで強張った。まだ何かあるの?

「こっちはまだだよね」

 押し潰されるばかりだった左の乳房に滑らかな感触。水で濡れた板の互いに合わさるように、指と肌とが吸い付き合って、待ち望んでいた彼女の体温を知る。
 眠っていた突起をくすぐられた。

「ふぁっ」

 息を吐ききる。ようやく訪れた甘いも何もない痺れに四肢が限界まで張り詰めた。
 幸せは苦しい。呼吸を求め、また擦られる。喉が詰まった。涙が滲む。

「うん、あっという間。雛、やらしい」
「なんとでも、言いなさい」

 貴方が触れてくれたんだから当然でしょう。

「でも、やらしい雛も大好き」

 喘ぐ胸に彼女が流水のように落ちてきた。肌に広がり私を包む。息の整うまで待ちはしない。にとりはいじわるだから。それが嬉しい。このまま溺れさせて欲しい。
 鼻先を青がひと房掠めていった。吸い込む全てがにとりになる。風呂上りの清々しさへ、幽かに混じる河童の香り。苔の青さと瓜の甘さ。気道を通って肺に彼女が満ちていく。血潮に乗って隅々まで行き渡る。幸せは芳しい。

「ここ、汗溜まってるよ」

 覆うものの無くなった鎖骨を咥えられた。稜線を緩やかに横切られる。
 改めて乳房に手を添えられた。麓から慈しむように掬い上げられる。
 今までの調子なら、恐らくこの後。

「ぐっ」

 ずるりと啜られ、ぎゅうと捻られる。耐えられた。
 こめかみに脈を感じる。握り締めた指が食い込んでいる。噛み締めた奥歯から鈍い痛みが伝わってくる。でも、まだ平気。歯の隙間から長く、細く息を吐く。

「我慢しないで、声聞かせて」
「それは」

 固いまぶたをこじ開ける。絡む唾液を飲み込んだ。

「お姉さんの、頑張り次第よ」
「意地っ張り」

 不満そうね。けれど口を尖らせられても、そのお願いは聞けないわよ。
 今でさえいつになく昂ぶっているのに、素直に受け入れたら私が狂う。
 にとりが折角張り切ってくれているのに、中途半端で終わってしまう。
 私は彼女の全てを感じたい。

「ねぇ雛」

 猫撫で声は似合わないわよ。何か良からぬことを考え付いたのでしょうね。
 でも、その生きている瞳も好きよ。大好き。

「これ、見て」

 身を起こした彼女の下、言葉の指し示しているだろう『それ』を見下ろす。
 暗さも相まって、滲んだ視界には小豆としか見えないものが胸の上に映っている。何が言いたいのかしら。目を凝らす。段々と焦点が合ってきて、色形に区別の付き、

「マニキュアっていいね。こうすると雛がすっごく綺麗」

 てろてろと滑る真紅が私の薄紅を噛もうとしている。
 にとりの爪が、私を食べかけている。

「雛もそう思わない?」

 抓られた。

「うん、その声かわいい。もっと聞かせて」

 跳ね上げられた腰が布団を叩いた。にとりの爪は艶やかだと思い知る。怖い。目で追い、私はこの爪にどう食べられるのだろう、追うだけで何も出来ない。
 胸の上に真紅が再び辿り着く。形に添うように撫でられて、膨らみ全体を纏めるように捏ねられて、宙へと吊り上げるかのように抓られる。二弦箏を爪弾く調子で私が幾度も奏でられる。震えて高く、掠れて低く。真紅の箏爪が自由自在に私を奏でる。
 紅い。私の、私だった色。今はにとりの色。閃く軌跡が薄明かりの中残り続ける。いましがた弾いてぴんと反り返った指先は、肌の上に漂っている。そしてすぐにも降りてくるだろう。来た。押し潰された。
 淫らな音。肺から絞り出されて代わりにひゅうと、ぬるい夜が流れ込む。涼やかで甘いにとりの香り。いくら息を継いでも間に合わない。どれだけ呑んでも満ち足りない。けれども酔いは、俄雨に荒れる流れの勢いで私の意識を濁らせていく。

「もっと感じて、もっともっと気持ちよくなって」

 二弦のみでは物足りないと感じたか、舌が首筋に這ってきた。喉の外から押し出され、声が夜のしじまに飛び去っていく。
 にとりの爪、私の胸、にとりの唇。濃淡様々な紅が踊り狂い、つと箏爪が輪から外れた。脇腹を撫で下ろして新しい音色を生んだ。彼女はどれだけ私を歌わせるのだろう。
 太股にさらりと擦れる襦袢を感じて、何かしら、髪のにじり動く様子が見えた。降りてきている。
 蝸牛を真似るかのように、滑り遅々と歩む舌の行き着く先を予感して、震えた。もう、これ以上は。好物を貪ろうと這い進む口を両手で挟み引き剥がそうとして、押し留めるだけの力も無かった。かじられた。
 割り込んできた音を虫達はどう思うのだろう。ちらと頭を掠め、想像は舐り続ける唇に飲み込まれた。
 弦をかじっていた蝸牛は横に逸れ、新たな箏柱を立てようと肉を吸い上げ歯型を付ける。ひとつ、ふたつ、みっつと増えた。

「にと、り」

 枕から首を上げることもできないままに呼びかけた。掠れている。言葉の態を為してない。しゃくりあげる嗚咽も、打ち鳴らされる歯の雑音も邪魔だ。きっとこれは聞こえない。でも気付いて欲しい。彼女なら気付いてくれる。縋りついたまま強張る指にあらん限りの力を込める。
 長々と私に印を刻み込んでいた唇が離れて、にとりの顔。気付いてくれた。
 ありがとう、口を開こうとして、喉が震え用を為さない。諦め、開くことも覚束ない唇で『おねがい』の四文字に形を付ける。ひゅうひゅうと奥から鳴った。

「うんっ」

 にとりは優しい。それでも引き下がる前に、指は頂を名残惜しげに撫でていく。抑えず弦の鳴るがままにするように、私の中で残響が尾を引いた。
 にとりはいじわるだ。私の顔を見ているはずなのに、指と舌は悠々と散策でもするかのようにあちらへこちらへ彷徨いながら降りていく。
 胸を持ち上げられて唇が寄り添った。音を立てて啜られる。私はそんなに汗を掻いていたのだろうか。正中線を撫で下ろされた。動きに従い体がひきつる。臍の周りに口がきて、

「やっ」

 舐められた。白熱する鉄塊が腹の底でごろりと動く。
 重い。押し潰されそうな苦しさに、喉を仰け反らせて喘ぐ。渇いて痛い。早くして、精一杯の抗議に肩を引き、掛けた腕を撫で摩られて骨の髄まで痺れが回る。はたりと手の布団に落ちる音を遠くに聞いた。にとりはいじわるで優しい。

「力、抜いて」

 自力では動かせそうもないほど固く伸びきった脚が、彼女の手で割り開かれた。
 そろりと這いこむ夜気を感じる。熱い。

「雛の匂い。くらくらしちゃう」

 陶酔した声。私の中で無色の泡が弾け散る。

「襦袢だけじゃ足りなかったね」

 真紅が私の影に隠れて、来るべき衝撃は来ない。内腿に手の添えられる感触。泡が弾ける。皮膚の左右へ引かれるに連れ、鉄塊が形を変えて全身にざわりと広がる。出入りする息まで重い。
 早くして。耐えられない。

「こんなになってくれるなんて、嬉しい」

 お願いにとり、焦らさないで早く。

「それに赤くて膨らんでて震えてて」

 触って、早く。

「お強請りしてるみたいで」

 はやく、おねがい。



「かわいい」



 達した。

「雛?」

 明滅する光の果てに、とおい、愛しい人がおぼろげに見え、さびしい、指の形をした熱、動き続け、ちかく、腕と脚、もがいて、縋りつき、もっとちかく、乳房で潰し潰され、すき、掻き抱き、もっときつく、彼女の鼓動、胸を叩いて、にとりすき、抱き返されて唇に唇、

「好き」

 耳鳴りを透かして声が、いわないで、無音の白に響いて、もえる、耳も頭も胸も腕も脚も爪先も、うねる波、溢れ、もっといって、こめかみに流れて、

「雛、大好き」

 だいすき。引きつる体が落ちてゆく。
 息を吸って、吐き出して。細波が来る。

「ふっ、あっ」

 残滓が通り過ぎた。布団に沈む。

「びっくりした」

 桜色。唇が動いている。
 額の髪を払ってくれた。

「雛かわいい」

 嬉しい。言葉に触れられ、ふるり、肩が細かく震えた。

「なんか、初めてした時みたいだね」

 そうね。大きく動かし余韻を宥める胸に、古い行李が浮かび上がった。
 開くことは滅多にないけれども折のある度に埃を払い、蓋に手を掛け思いを馳せる。中にはあの頃の私達が仕舞われている。開けたなら、破瓜にも至らないまま登り詰め、互いに互いを感じ合いながら寝息を立てる姿があるだろう。大切な思い出だ。
 同じように今も眠ってしまいたい。こうして髪を柔らかに梳いてくれる指は、あの時と変わらない。考え、頬が緩んだ。
 焦らなくても、こんなに優しい貴方はいつもお姉さんだったのよ。

「でも」

 何かしら。薄くまぶたを開く。私を覗き込む瞳が見え、離れていく。どうして。出来た隙間に夜気が割り込んでくる。涼しさは火照った肌に心地良いけれども、寂しい。涼しさが余計に寂しい。
 私を抱き締めて、もっと撫でて。力の戻らない腕を震わせ、離れてしまった肩に縋

「まだ平気だよね」

 間に合わなかった。脚の間に炎が生まれる。にとりが私を撫でている。
 苦しい。平気じゃない。収まりきっていないのに。
 仰け反ろうとする首を正し、睨みつけようとして目が合った。色香に潤んだ眼差しと茶目っ気をふんだんに織り交ぜた口元に、上気している悪戯な頬。

「入れていい?」

 ずるい。熱病と思えるくらい震えているのに、しがみつくことも覚束ないのに、涸れた喉は溢れる音で裂けそうなのに、まだ私に訊こうとする。

「ダメ?」

 いいかどうかなんて知ってる癖に、耐えられなくなるまで駆り立てようとしている癖に、まだ私に訊こうとする。貴方はいじわるだから。それが嬉しい。
 私は全身で、彼女の全てを感じたい。

「おねがい、にとり」

 宵闇に花が開いた。

「うんっ」

 悪戯な頬も口もどこかに消えて、無邪気にはしゃぐ明るい笑顔。幸せはあどけない。
 にとりの癖は知っている。まずは人差しと紅差し指とで茂みを左右に掻き分けるだろう。宛がわれて背筋が強張る。やっぱり変わらない。流れ込む空気に触れられ気が遠くなる。
 次は中指で沿うようにして撫で下ろしてくるだろう。ひとつ、来た。

「もしかして、またいっちゃった?」

 まだ。

「そう? でも、すっごく気持ちよさそう。雛の声で私もどうかなっちゃうかも」

 私の? 口を塞いでから、自分の動いたことに気が付いた。
 けれども私は、彼女にどうなって欲しいのだろう。霧の掛かった頭で考え、

「ダメだよ雛」

 口の封を剥がす指に断ち切られた。

「手はこっち。ちゃんと聞かせて」

 幼子へ言い含める穏やかな声音に、気力が根こそぎ抜け落ちた。臍の上まで引き降ろされて、片手に手首を纏められる。私の爪と、彼女の爪。萌黄の蔦に真紅の花が巻きついて、逃げられない。

「声、出してね」

 泣きたくなるほど優しい眼差しを残して、立てた膝の間に青の髪が沈んでいく。次は何が来るのかなんて分かりきっている。にとりは聞きたがってくれている。それなら私は。喉を開く。
 吸われた。
 手首の戒めが重みを増して暴れる腕を抑えつける。もし口を塞いでいたままだったなら、出口を持たない声で私は破裂していたのかも知れない。
 全て出し切り、彼女の指、入って、重い。

「一本だけかなって思ったけどやっぱりこれだけ。ここ、すごく欲しそうだったから。大丈夫?」

 平気。平気じゃないけど平気。嬉しい。

「じゃあ動かすね」

 音が生まれた。淫靡に湿り、爪先から髪の生え際まで鳴動させる大きな音。
 腹の奥底から鳴り響き、肺腑を満たし、喉を辿って口から溢れる。

「かわいい。ほんとにかわいい。雛の目も声も口もおっぱいもお臍もここも、全部全部かわいい」

 何度も何度も音がする。広げられ、分け入られ、掻き乱されて、何度も何度も奏でられる。
 思い出したかのように抜き差しされて、合間々々に拍子を付けた。

「そろそろ?」

 私の芯に触れるか触れないかの距離を隔てて、ふたつの感触。最前の光景が闇夜に浮かぶ。
 てろてろと滑る真紅に私の薄紅。抓られただけで私は狂った。今また同じ様にされたなら。
 想像し、幻覚の指に触れられて視界が歪んだ。

「ねぇ雛」

 摘んだままで訊かないで。応えられないなんて知ってる癖に。

「お願いしていい?」

 焦らさないで。何でも聞く。何でもいい。だから、

「かわいい雛を、全部頂戴」

 あげる。ぜんぶぜんぶあげる。だから、

「ありがとう」

 わたしを、たべて。



「雛、大好き」



 にとりだいすき



***



 甘い香り。瓜のもの。
 髪に、指? 梳かれている。優しい。嬉しい。

「起きちゃった?」

 遠いけれども確かな声に愛しい恋人を意識した。まぶたを開ける。
 膝を崩して座る姿に、誘ってくれた喜びが胸を圧して込み上げる。

「朝まで寝てても良かったのに。疲れてるでしょ」

 そうね。実際、体が重い。髪の先まで沼に浸っている。抜け出せそうもない。
 何故、目を覚ましたのだろう。

「どのくらい」

 語尾が潰れた。喉まで重い。首を巡らせ様子を確かめようとして、諦めた。天井を見上げ続ける。梁の輪郭は辛うじて判別の出来る暗さ。行灯だろう光で夜が仄かに照らされている。
 油は切れていないようだし、わざわざ注ぎ足しもしないだろう。薄れ掛けてはいるけれど残り香もある。虫達の遠音は相変わらず。

「着替えてちょっとだから、そんなに経ってないよ」

 そう言われれば乾いた麻を肌に感じる。それに涼しい。体も拭いてくれたのね。
 こうまで乱れたのはいつ以来だろう。考え、梅雨の大喧嘩だと思い当たる。案外近い。疲れ切った頬が笑おうとして果たせず、僅かに引きつった。

「もう私も寝るから、灯り消すね」

 喉の奥から篭った声を出す。諾と受け取ってくれたのだろう、彼女はひとつ頷いた。髪から抜け出る指を感じる。
 寂しい。どうして私は返事なんてしたんだろう。後悔に急き立てられて、行灯に向かう背中を目で追う。火袋を傾けたのだろう光は強まり、消えて、にとりが夜に隠れた。
 寂しい。さらさらと擦れる畳に彼女の近付く気配を聞いて、募る期待と孤独感に泣き叫びたくなる。早く来て欲しい。
 布団を捲り、潜り込む音がして、

「じゃあ、おやすみ」

 どうして。
 萎えそうになる気力を振り絞り、頭を傾け、月明かりを受ける障子の白と、盛り上がった小山の影絵が視界に映った。
 必要もない寝床が隣に敷かれている。

「来てくれないの」

 もぞもぞと口篭り、虫の音色に紛れてしまいそうな「うん」が聞こえた。
 途端に『何故』が私の中を駆け巡る。

「雛?」

 『何故』は心臓を止めて、喉を焼いて、指先まで痺れさせて。
 全身を凍りつかせるほど冷え切っているのに、熱い。

「待って泣かないでごめん今行くからっ」
「ほんと?」

 嗚咽交じりの問いかけに、慌てる「ほんと」が被さった。にとりが来てくれる。嬉しい。
 『何故』は消え失せ、けれども溢れる熱は止まらない。早く彼女を抱き締めたい。抱いて欲しい。力の限りに布団を持ち上げ、同時に温かい体が隣に入ってきてくれた。

「これでいい?」

 よくない。

「にとり」
「何」

 鼻先で向かい合う愛しい顔に、

「ぎゅってして」
「うぇっ?」

 何故、戸惑うのだろう。にとりを感じたいのに、何故。いつもしてくれるのに、今日に限ってお預けなんて我慢できない。逸らされた瞳の中に何故を探して、答えは見つからない。喉が詰まった。
 何故、私はこんなに涙脆くなっているんだろう。

「分かったっ、分かったから泣き止んでっ」

 力任せに、けれども優しく包まれた。全身の震えが押さえ込まれる。嬉しい。私からも。
 抱き締めて、足りない、全然足りない。敷布団を蹴って体を寄せ、首筋に顔を

「ふぁっ」

 何かしら。

「ちょっと待って雛。少しでいいから離れて欲しいんだけどっ」

 何を言い出すのだろう。聞けるわけがない。つい上げてしまった顔を埋め直して、もういちど鼻に掛かった声が届いた。かわいい。けれども、これは。
 確信に突き動かされ彼女の衿に手を掛けて、

「まってひなそれだめっ」

 差し入れた。

「ひぁっ」

 やっぱり。

「にとり、これ」

 視線を上げると、入れ違いに彼女の目が伏せられた。

「だって、雛、疲れてるから」

 息遣いに混じる呟きは弱々しくて、ともすれば夜影に溶け込んでしまいそう。この子は、収めないまま寝る心算だったのかしら。
 覗きこみ、睫毛の震えと唇の戦慄きを見た。愛しい。
 夜露に濡れた茂みを撫でる。指先で彼女が跳ねた。

「ねぇ、にとり」

 目が合い、潤む瞳を見た。疲れなんて構ってられないわね。
 腕を抜いて布団を捲り、彼女の肩に手を突いた。

「うあっ」

 馬乗りになって敷布団に押し付ける。腰を膝で挟み込む。
 かわいい子。口付けた。

「ひなぁ」

 切なさに濡れている。もう息が浅い。どうして貴方は、こんなにかわいいのかしら。
 漏れ出る声のひと欠片も残さずに飲み込みたい。吸い付き、舌を差し入れ溢れる唾液をこそげ取る。瓜の甘さ、にとりの味。
 ようやく分かった。何故、私は無理矢理にでも眠りの淵から体を引き上げたのか。
――雛の声で私もどうかなっちゃうかも。

「貴方はずるいのよ。私の声ばかり聞いて」

 かわいい声を聞きたいし、髪を振り乱す様も見たい。
 彼女の蜜を飲み干したいし、私の指で狂って欲しい。
 私は全身で、貴方の全てを感じたい。

「私にもさせて頂戴」

 頬に手を沿え、

「お姉さん」

 こくりと頷くにとりを見た。愛しい。
 きっと、襦袢だけじゃ足りないわね。
 幸せは愉しい。



***



 妙なこと。

「いつから診療所に鞍替えしたのかしら」
「そのつもりは無いんだけど。とりあえず雛も上がって」

 茶の間にずらりと並んだ三人の寝姿は、どこか気の抜けるものがある。もう少しばかり心配してもいいのでしょうけれど。
 訊けば、椛と早苗は真夏の日差しに中ったようで、

「はたてはどうしたの」
「あれはただの昼寝だよ」
「静かなのは嬉しいですが、少々物足りなさもありますね」

 椛の腕を枕にしている。随分懐いたこと。
 とりあえず、とばかりにお茶と胡瓜を渡された。縁側の庇が差し掛ける影に座って齧り続ける。
 毒にも薬にもならない話を交わしている内に、文が荷物を引っ張り出した。

「ああそうでした。早苗がこれを雛さんに、と」
「何かしら」

 掲げる袋には、漫画からだろう動物が踊っている。猫?

「マニキュアですよ。貰って欲しいそうです」
「へぇ、いいのかなぁ。早苗、あんなに張り切ってたのに」

 恐らく六つか七つあった小瓶とベースコートだとかいうものまで、一切合財詰め込んであるのだろう。これは受け取れないわね。幾らなんでも高価に過ぎる。
 断ろうとして、文の指が目に入った。やっぱりそうなるわよね。

「それ、苦労しているわね」

 一瞬目を丸くさせ、合点のいったか苦笑を零した。

「ええ、ひどいものです。何を言ってもどう宥めても、早苗は聞いてくれません。記者としてあるべき姿は信用第一だというのに、こんな爪で『清く正しい射命丸』の看板を掲げられはしないですよ。まったく」

 満足してくれたようだからいいのですが、手拭を載せた寝顔に向けて呟いた。目を細めた表情は、海千山千の文には似つかわしくない。
 別に爪紅があっても構わないと思うけれど。むしろ指先の紅梅色は、柘榴の瞳を鮮やかに引き立たせていて安定感がある。そもそも信用があるところから疑わないと駄目ね。
 何だかんだ言っても、ただの照れ隠しなんでしょう。かわいい子。

「あ、そうだ。文は早苗の爪どう思うのさ。すっごく気にしてたけど」
「まぁまぁいいんじゃないでしょうか。馬子にも衣装ですよ」
「そんなこと言ったの? 早苗泣くよ」
「あやややや、それは、ですね」

 恐らくお茶を濁したか、それとも……やっぱり誤魔化しているところしか想像できないわね。

「ちゃんとかわいいって言ってあげなよ。きっと喜ぶからさ」

 素直に褒める姿を思い浮かべようと四苦八苦している内に、諭し続けるにとりの声がして、蝉時雨に重なる文の唸り声は部屋に段々満ちていき。楽しいのは分かるけれど、あんまり突っつくと、

「言われなくたって分かってるわよっ」

 あら、拗ねたわね。てっきり開き直るか怒り出すかすると思ったけれども。
 何にせよ、胡坐の膝に頬杖を突く姿はひどく大人げない。けれども威嚇のためなのか、広げられた翼の先が小刻みに揺れていて落ち着かなげだ。言おうか言うまいか悩んでいるのかしらね。
 爪といえば謎掛けは解けたかしら。畳に力無く伸ばされた早苗の腕に目を向ける。
 整えてはあっても深くはない。駄目だったみたいね。この子の性格ならひと思いに切り揃えてしまうか、少なくとも試すくらいはするだろうから。
 尤も、にとりの恥ずかしがる理由は無くなったからいいのかも知れない。安堵を感じ、彼女を探す。文をからかっていた。ふたりともかわいいわね。夏の空に向き直ろうとして、途中で蚊取り線香が目に入る。ゆるゆると白煙をたなびかせていた。

 爪紅から話題は外れ、四方山話に花を咲かせる。
 次第々々に蝉時雨は慎ましやかになり、鴉の声が高くから落ちてくる。夕暮れが空を茜に染め始めていた。

「そろそろ起こしましょうか。あんまり遅くなってもいけないから」

 縁側に湯呑みを置けば、乾いた木の音がする。これは今日に終幕を降ろす拍子木。
 三人をそれぞれ起こす。外に出て見送ろうとして、何かしら、妙な組ね。椛と早苗、はたてと文?

「ああ、はたてとうなぎで呑みに行くのです」

 早苗はそれでいいのかしら。振り向き、何か納得している姿があった。当人同士で話が通っているなら構わないのだけれど。
 東から群青の迫る空に早苗を送り出し、次は誰。
 振り向くと、骨も折れよとばかりにはたてが椛へ抱きついていた。そう言えば。疑問が湧いた。にとりの文に抱いたものと同じ問い。

「貴方は、椛の爪紅をどう思うかしら」
「椛の?」

 飲み込めない様子で一拍置き、

「かわいいに決まってるわよ。パールピンクだっけ? まぁ何でもいっか。とにかくかわいい。桜餅みたいよね。耳と尻尾は綿菓子だけど。食べていい?」
「勘弁してください。それに私は狼です」
「じゃ、撫でる」

 片手に腕を抱きかかえ、もう片手で耳を捕らえる。椛が困り顔を作った。
 腕を取ったのは逃げられないようにするためかしら。

「切がないからその辺にしなさい。さっさと行くわよ」
「文ってせっかちよねー。まぁ今日はここまで。ありがと椛」
「どういたしまして」

 くるりとはたてが振り向いて、

「ねぇ爪紅、あんたが持ってるんでしょ」
「ええ」

 結局、早苗には押し切られた。

「今度、私にも使わせてよ。時間がある時でいいし、なんか奢るから」
「構わないけれど」
「ありがと」

 言うなり椛に抱きついた。
 遣りすぎるとまた暑さに倒れるわよ。聞き入れはしないだろうけれど。

「待ってなさいよ椛。あんただけかわいいなんてずるいから。私だって爪紅塗ってあんたにかわいいって言わせるから。じゃあねっ」

 鴉が飛んだ。消えていく。
 分かってしまえば何のことはない。空に消えゆく黒い姿で唐突に思い当たった。
 私は彼女の押しに羨望を感じていた。本当、初々しいわね。

「それでは私もこの辺で」
「うん、気をつけてね」

 夕日を照り返す白銀の尻尾は寂しげに項垂れている。夜勤ですから、と事も無げに呑みを断った姿はどこに行ったのかしらね。そう気落ちされると何か居心地が悪い。

「あのふたり、ほんとにすごいんだね。びっくりだよ」
「面白いでしょう」
「雛っていじわる」

 どちらからともなく身を返せば、動く影のない光景が目に入る。
 奥の部屋には傾いた夕暮れが居座って、積み上げられた工具と部品を照らし出している。
 雑然としているけれども、伽藍堂だ。

「みんな帰っちゃったね」
「そうね」

 縁側に腰を下ろして湯呑みを手に取る。
 お茶をひと口含んだ。ぬるかった。

「あのさ」
「なぁに」

 言葉を待ち、続きは来ない。
 昼間の熱気を宿した風が、梢を揺らして通り過ぎた。風鈴が小さく踊る。一番星を高くに見つけた。

「あのね」
「なぁに」

 隣から気配とも思えぬ気配がして、何かしら、じっと待つ。
 松虫達がりぃと始める恋の歌。群青が茜を静かに呑み込んでいく。土の冷えゆく日暮れの匂い。
 さらと鳴る衣擦れは躊躇って、引き、もういちど音を立て、

 脇へ突いた手の甲に、ついと滑った彼女の指。

「ご飯の支度しよっか」
「そうね」

 立ち上がって土間に向かう。甲には感触がちりちりと残り続けた。
 初めてのことではあっても、意図を読み違うはずがない。その証拠に彼女の目は只管に私を避けて、頬は笑みと照れとで燃えている。

「にとり」
「何」

 目元には応えを載せて、

「好きよ」

 夕暮れに花が開いた。

「うん、私も雛が大好きっ」

 高鳴る胸を宥めつつ、割烹着に袖を通す。よかった。しくじらずに確り応えられた。手元が震えて背中の紐に梃子摺った。竈へ掛かりきりになっているにとりを確かめ、悟られないよう深呼吸。
 百にひとつはふたつに増えた。もしかしたらと弱気には思わない。この先必ず彼女の指は、ひとつの合図に為るのだろう。
 穣子の籠にも納まりきらない。これからきっと、ふたつはみっつに、三十、五十に生るのだろう。

「雛、水菜お願い」
「ええ」

 笊から取り上げ、皮を剥く手に爪を見つける。メロン色、水菜の青より柔らかく、若々しい瓜の色。そして、にとりの色。早苗に見立てる心算などあるはずもないけれど、未だ熟さぬ瓜の色は、なるほど私に丁度いい。
 こんな程度で先輩風を吹かそうとしても、相手と言えば天狗達に風祝だ。通用はしないだろう。それでも生って間もない果実達に少しばかり語りたい。

 私達は、これから熟れていけるのよ。






 
初めまして。雛祭りだったんです

3/18 追記
読んでくださった方々へ、ありがとうございます
ふたりのこれからを見守ってくだされば、と思います

>10さん
「破願」は含みも何もない誤字です。どうやったらこんなミスをするんでしょうか
また引用符については意味を知らないまま使っていました
他の作品の分は今更とも思いますので、折角のご指摘ですが使い分けは今回以降にいたします
直してみると随分すっきりしました。ありがとうございます
カラシナ
http://karashina.katsu-ie.com/
コメント




1.名前が無い程度の能力削除
なんというかこの文章そのものが“綺麗”
2.名前が無い程度の能力削除
雛は口紅も似合いそう
3.名前が無い程度の能力削除
>「お姉さん」
ここが良いね、最高
4.名前が無い程度の能力削除
そして熟れ熟れに熟しまくった続編へ・・・(チラッチラッ
5.名前が無い程度の能力削除
にと雛はいつまでも初々しい空気も良いし、夫婦な感じも良いしでたまらないね
6.名前が無い程度の能力削除
モブ河童達の嫉妬心MAXじゃないですかっやったー
7.ナナシAcid削除
なんか文章のところどころに妖艶さを感じてスゴく…えっちぃです…!

早苗の言い換え方(?)も言葉遊び的な要素を感じて面白い!
8.名前が無い程度の能力削除
素敵だ・・・
9.名前が無い程度の能力削除
自分よりも雛の方がお姉さんだと自覚してるにとりの頑張り様がかわええ
そして雛の精神的セクシーさも垣間見えて二度おいしい話
10.名前が無い程度の能力削除
色を求め過ぎているのではないかと、不安になるような文体が、雛に良く似合っているようです。
熟れすぎて弾けそうな続編はまだですかねぇ……?(ソワソワ


ところで、もじりだったら申し訳ありませんが、破願>破顔でしょうか。
あと、引用符にも対応があります。‘この’“ように”。お見知り置きいただければ。
11.名前が無い程度の能力削除
美…!
12.オスマンダ削除
チグハグとして気持ちの整理がつかない雛の感情がそのまま文体に表れているような感じがしました。
読み手も雛と同じ立場で話を追っているような感覚はするのですが、どうももやっとしてしまう……
文章から滲み出ているものにえもいわれぬものを感じました、GJ!!
13.名前が無い程度の能力削除
すばらしい繊細さと艶を感じました。
実に綺麗でした。