真・東方夜伽話

一瞬、されどその永遠

2012/03/10 09:30:16
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一瞬、されどその永遠

無在

 このSSは、百合、ふたなり、レミフラの成分を含みます。
 また、このSSは、『ある一夜の約束』(作品集11)等の作者のSSの設定を引き継いでいます。
 以上のことをご了承の上、このSSをお楽しみください。

















 ――ときどき、幸福に殺されるんじゃないか、と思うことがある。






 フランドール・スカーレットは、最愛の姉――レミリア・スカーレットに抱かれながらそんなことを考えた。


 いつか自分は姉に抱かれる快楽と幸福で殺されてしまうんじゃないか、と、そんな理解できない恐怖を感じることがあった。

「しばしば」ではなく「たまに」でもない。
「ときどき」よりも少ない。
 けれども、ふとそんな馬鹿な考えを起こすときがある。

 抱えきれないほどの幸せを与えられてる自分の身を振り返ると、フランはかけがえのない喜びに包み込まれながらも、言葉にすることのできない不安を感じるのだった。


 妹が姉を受け入れるために大きく脚を開いていた。桜色の華奢な膣を白く長く滑らかな指が出たり入ったりしている。自分の秘所が立てる淫らな水音と、抑えようと思ってもこぼれ出てしまう喘ぎ声、そして、ばくばくと羞恥と悦びを体全身に運ぶ心臓の音を聴いていた。フランは幸福に九五%染められた心のうちの残った五%で、漠然とした不安に耐えているのだった。


 お姉さまに抱かれていると幸せすぎて、何もかもどうでもよくなってしまう。


 もし、そのことをレミリアに告げたら、きっと姉は少しだけ考えて、こう答えるだろう。


 『幸せなら、それでいいじゃない』


 レミリアは微笑みながら、フランを慰めるようにそう言うのだ。


 きっとそれはこの世界で一番優しい微笑。


 姉の微笑を想像するだけで、フランの胸はどうしようもなく熱くなって――そして、胸のどこかがちくりと痛むのを感じるのだった。


 レミリアの揃えられた二本の指が、フランの膣で最も敏感なポイントを探り当てた。姉の指が繊細なひだひだの間に潜り込み、妹の急所を愛撫する。鮮烈な刺激がフランの背筋を駆け上がり、自然と身体が跳ねた。滑らかな指の腹による執拗な愛撫を受け、フランは白い喉をのけぞらせる。

 「ふああッ!? だめ、お姉さま、そこッ……だめぇ! そこ、すごく感じちゃうの! だめなの、そこはぁ――ひん、あん、んゃあぁ……!」

 言葉とは正反対に、フランの膣は、もっともっととねだるようにレミリアの指を締め付ける。腰もがくがくと震え、交合の悦びを表現していた。

 「フランはここがいいのよね。簡単にわかるようになったわ」

 フランの喘ぎ声を聞いて、レミリアは意地悪く笑う。慈しむように背中から妹を抱え込むようにしている姉は、耳元に唇を寄せて妖しく囁きかけた。

 「今度はどれくらいでイっちゃうのかしら、フランは? エッチなフランは何分?、それとも何十秒でイっちゃうのかしら?」

 「やだぁッ……お姉さま言わないでぇ……おかしくなっちゃう、おかしくなっちゃうよぉ……やらぁ、やらぁ……!」

 レミリアに言葉で責めたてられるたびに、フランは子宮から全身へ――全身から心の奥まで燃え上がるのを感じるのだった。甘美な囁き声は、耳から注がれた毒薬のように全身に拡がってゆき、熱病のごとくフランの身体を上気させた。そして、妹の乱れた泣き声を聴いた姉は、心底嬉しそうに唇をつり上げ、そのまま妹の耳にしゃぶりつく。白く輝く歯がフランの耳を優しく甘噛みし、唾液に濡れた紅い舌が滑らかな表面をなぞる。舌が淫らに動き、フランの被虐欲をさらに加速していく。姉が自分の耳をしゃぶる音がぼんやりと、だが、鮮明に頭の中に響き、身体から力が抜けていく。頭のなかが熱く震えるほどの快感に、フランは自分がさらに絶頂へと、また一歩背中を押されるのを感じる。もはやフランはレミリアに自分のすべてを委ね、姉の思うがままに蹂躙されることを甘受するしかなかった。
 

 だが、妹は知っている。


 今でこそ姉は意地悪くふるまっているが、本当は心の底から妹を慈しんでいることを。


 もし、妹が本気で傷ついたような仕草を見せれば、とたんに表情を崩し、妹を気遣う言葉を発し始めるだろうことを。


 妹は、姉に愛されていることを知っていた。


 妹の白く柔らかな腹に置かれていた姉の左手が、蛇のように妹の滑らかな身体を這い上がり、膨らみかけの乳房を掴む。冷ややかな手指が、小さいながらも餅のように柔らかな胸を堪能するように揉みしだき、人差し指で弱点である桜色の乳首を転がすように弄んだ。

 「んにゃあ!? だめ! お姉さま、おっぱいだめ! 乳首、だめぇえ!」

 フランがいっそう息を乱して快楽によがる。乳房と乳首を通じて、全身に電流を送り込まれているみたいだった。すっかり硬くなってしまった乳首が悦びに震える。それと同時に女肉がより強く姉の指を締めつけた。いつの間にか、妹の細腰が姉の指の動きに合わせて、大きく前後していた。フランの淫らに喘ぐ姿を見て、レミリアは満足そうに微笑んだ。だが、その微笑は同時により多くの歓びを求める笑みでもあった――いや、『さらに多くの悦びを与える』、のほうが正しいかもしれない。今のレミリアは、フランを幸福にすることしか考えていなかった。
 レミリアはフランをもっと悦ばせるために、妹の肉壺をまさぐる指の動きを丁寧にした。溢れ出した愛液で、姉をより受け入れやすくなった膣を、二本の指が蹂躙する。二本の白く細い指が、執拗にフランの快感の急所を責め続けていた。乳首を弄ぶ指の動きも休むことはない。悦びを主張するように硬く震える二つのピンクが、フランの荒い呼吸に合わせて、妖しく上下に揺れていた。
 フランの身体は快楽に抵抗がないどころか、むしろ姉の愛を積極的に受け入れようとしていた。繊細ながらも激しい姉の愛撫に敏感に反応し、腰ががくがくと揺れる。レミリアの指が膣の中で踊るたびに、操り人形のようにフランの四肢が跳ねた。姉の指で性器をめちゃくちゃにされるのがたまらなく切なく、涙がとまらないくらいに気持ち良い。愛欲によって支配される悦楽――姉に与えられる幸福な支配にまた深く溺れていく自分を、フランは呆け切った理性で感じていた。
 大きすぎる性感に身体をばらばらに引き裂かれそうになりながらも、一%だけ残った理性で、息がかかるほど近くにある姉の顔を薄目だけ開けて覗き見る。
 
 三日月よりも眩く輝き、剣の先よりも冷たく鋭い横顔。

 フランがこの世で一番美しいと信じている姉の横顔がそこにあった。

 その事実を再確認するだけで、フランの身体は極楽にまで燃え上がる。
 


 ――お姉さまに犯されている。


 
 フランは、身体が――頭が――心が――魂が――どうにかなってしまうのを感じていた。



 ――もっと、犯して!



 ――もっと、私を、お姉さまで滅茶苦茶にして!



 もはや言葉を発する余裕さえないフランは、だらしなく舌を突き出し、空気を求めて荒い息をする。フランは心のなかで、より大きな声で姉の愛撫を欲しがる声を上げ、微かに開いた炎色の瞳で、姉に訴えかけるのだった。
 もう終わりは近かった。膣を痺れさせる電撃のような快楽とともに、下腹部に熱くてたまらないものが高まってくるのを感じる。姉の手で開発され切った膣が悲鳴を上げていた。レミリアが丹念にこねくり回している膣の一点は、すでに限界を主張するようにぷっくりと膨らんでいる。

 ――ふぁ……このままだと、また……
 
 フランの頬が羞恥と期待により赤く染まる。尿意にも似たその快感は爆発寸前だった。この後の自分の痴態が想像できるにもかかわらず――否、思い描くことができるからこそ、その羞恥と快楽に、フランは眉をぎゅっと曲げ、舌を垂らし、口の端からよだれを零す。妹の膣の感触の変化と乱れ切った表情から、絶頂が近いのを悟ったレミリアは、にやあっ、と実に意地悪そうに――本当に嬉しそうに笑った。妹の悦楽を自らの幸福とする姉は、フランをさらに追い込むために、妹の耳元から言葉という媚薬を再び注ぎ込む。

 「もう終わりみたいね、フラン。今日もたくさん潮吹いてイっちゃうのかしら? 本当にびっくりするほどエッチになっちゃったわよね、フランは」

 「……ッ!? やぁ! だめなのぉ! お姉さま、そういうこと言っちゃやらぁ! 気持ち良くなっちゃう、気持ち良くなっちゃうよおッ……あん!? ふぁあ! やああッ!」
 
 レミリアの言葉を聞いた瞬間、轟々と燃え上がっている頭と下腹部にガソリンを注ぎ込まれたような灼熱を感じた。全身を破壊してしまうような快楽の嵐も、どこまでも意地悪で優しい姉が愛おしくてしかたがない気持ちも、もはや抑えつけることはできなかった。自分でも信じられないような淫らな言葉を散らしながら、精一杯首を振る。フランは珠のような涙をふりまきながら、激しく喘いで叫んだ。

 「んやぁ、にゃあ! だめぇッ! 限界……もう、限界だよぉ! お姉さまの指が気持ち良すぎて、出ちゃう……もう出ちゃうよぉ!」

 そして、レミリアは慈しむようにとどめの言葉を囁くのだった。

 「いいわ、フラン、たくさん出して? フランが私の指で気持ち良くなっちゃうところを私に見せて? あなたの可愛い姿をいっぱい見せて?」

 レミリアは言葉と同時に少しだけ強く、妹の急所をぐりっと押す。姉の囁き声と指の一押しが妹の無力な心を突き上げた。殺されてしまいそうなほど大きい幸福がフランの心を真っ白に弾けさせ、身体をがくがくと震えさせた。

 「やぁあ! 出ちゃうッ、出ちゃうよぉ! お姉さま、お姉さまぁあ! ――ひあぁああああああッ!」

 フランが絶頂に達した。衝撃的な快感とともに下腹部のずきずきとした熱い塊が閃光のように弾けてゆく。ぷしゃぁぁああ――っと、秘所から勢いよく潮が飛び散った。下半身から電撃のような快感が走り、全身を支配する。幼い肢体が激しく痙攣し、意識は白く暗転してゆく。石のように固くなった乳首は反り返り、柔らかくしなやかな膣が姉の指を強く求めて、きゅうきゅうと収縮運動を繰り返す。絶頂の震えがとまらない妹を、姉は包み込むように抱きとめた。そのまま三〇秒ほど、レミリアはフランの絶頂の痙攣が終わるまで、優しく妹の小さな身体を抱き締めていた。
 
 「……あぅう、出ちゃったぁ……また出ちゃったよぉ……」

 絶頂の余韻に震えながら、ぼそぼそとフランが涙声で呟く。肩で大きく息をする妹を、レミリアは愛おしげに抱きかかえていた。妹の様子がようやく落ち着いたのを確認すると、レミリアはくすりと笑って、ぐったりとしているフランに囁きかけた。

 「すごい気持ちよさそうだったわ、フラン」

 「あんなに感じてくれるなんて、姉冥利に尽きるわ」と心から嬉しそうにレミリアは微笑む。一方のフランは恥ずかしくて仕方がない。ベッドに自分の痴態の跡がしっかり残っていた。尿とも愛液ともつかない液体が、白く滑らかなシーツを濡らしている。まるでお漏らしでもするみたいに性器から潮を噴き出す自分の姿を想像すると顔が真っ赤に熱くなる。またお姉さまに潮を吹かされて果ててしまったのか、と思うと本当に焼け死んでしまいそうだった。
 
 けれども。

 それがフランにとって嫌なことではなく――死にたくなるほど恥ずかしく、困惑してしまうことなのに、その一方で、幸福と喜びのあまり、身も心も震えてとまらなくなってしまうことが、一番大変な困りごとなのだった。
  
 フランは桃色に上気した顔のまま、姉を見やる。姉は不敵で誇らしげな笑みを浮かべていた。そんな姉の目は瑕一つない紅玉のようで、穏やかで美しかった。すると、またフランの胸は熱くなる。自分を幸せにすることを喜びとしてくれる姉がいる――フランにとってこれ以上の幸福はなかった。
 まだ若干息の荒い妹が、姉の裸の肩に頭を預ける。痩せた体躯ながらも、レミリアの肩は柔らかくて温かくて、フランは気持ちよさそうに目を細めた。レミリアは両腕を妹の胸の前でからませ、大きな鳥が広げた翼で雛を守るように、フランの身体を抱きしめる。こうして姉の温かい裸体に包まれているだけで、妹はどうしようもなく幸福になってしまうのだった。触れ合っている肌から姉の心が流れ込んでくるようで、フランは穏やかな性感を感じていた。
 
 そして、ほんの数センチの距離で、姉と妹の視線が絡み合う。
 
 お互いの心と心がつながり合う。
 
 レミリアがフランの唇を奪う。

 フランも受け入れるように自らの唇を捧げる。

 姉の紅の唇が、妹の桜色の唇に吸いつく。紅い姉の舌が妹の口内に侵入する。フランも姉の求めに応えるように、進んで舌を姉のそれに絡めた。捻じれた赤いかけ橋を伝って、二人の睡液が混ざり合う。舌の先から舌根まで、歯ぐき、奥歯、犬歯、前歯など……妹の全てを奪うように、姉の舌が動き回った。直接魂を慰められるかのような愛撫。姉の舌の動きと同時に送り込まれる睡液をこくこくと飲み込むと、頭がくらくらするほど甘い。果てたばかりだというのに、また柔らかで温かい幸福がフランの頭のなかに膨らんでいく。姉妹は息が切れるといったん口を離し、荒い呼吸のまま相手の瞳を見つめる。そして、二人は何の合図もなく、再び同時に唇を合わせ、深い口づけを交わすのだった。

 
 何て幸せ――


 ふわふわとした心で、フランはとろけるような幸福を感じていた。

 そして、その幸福に、また自分が牢獄への階段を一歩下りたことがわかる。
 
 ――牢獄。

 今、自分が幸福という名の牢獄、あるいは地獄に囚われそうになっていることを、フランは感じていた。
 
 姉とキスを重ねるたびに、そのキスの甘さが増していく。
 
 一つ前のキスよりも今のキスのほうが、ずっと甘く、心地よいのだった。
 
 そして、今のキスよりも、次のキスのほうがさらに気持ち良い。
 
 たぶん、次のキスよりも、次の次のキスのほうが、もっともっと幸せなキスなのだろう、とフランは思った。
 
 キスだけじゃない。
 
 姉と夜の営みを行うたびに、その歓喜と悦楽はどんどん強くなっていく。
 
 これ以上、気持ちの良いことなんてない――そう考えていても、次の交合はもっと気持ち良い。
 
 姉に抱かれる悦びは日毎夜毎に、大きくなった。
 
 さっきの潮吹きにしても同じだった。

 レミリアは言わなかったが(……そして、言わなかっただけで姉は気付いているだろうが)、自分が気をやってしまうまでの時間がだんだん短くなっている気がした。時間だけでなく、噴き出した潮の量も増えてきているような感じがする。

 何より、絶頂を迎えたときの衝撃――それが明らかに強くなっている。

 姉が慣れてきたということもあるだろうが、理由はそれだけではないということを自分でもわかっていた。
 
 フランの身体は姉の性技に馴染んできているのだった。
 
 確実に着実に――フランは身も心もレミリアによって開発されているのだった。
 
 それは姉の夜の技術が巧みである、ということだけではないだろう。
 
 確かに姉の性技は信じられないほどの妙技だったが、むしろ、それを望み、受け入れている自分がいるから、フランの身体はこんなにも正直にレミリアから与えられる快楽に順応しているのだ。フランは自分から望んで、姉による開発を受け入れているのだった。
 そのことを自覚すると、フランは恥ずかしさで頭が朦朧とするのと同時に、喜びで胸が裂けてしまいそうになる。
 次は今以上にお姉さまの愛を感じることができる――そう考えるだけで、フランは死んでしまいそうなほど幸せだった。
 
 そして。

 やはり、それは恐怖でもあった。

 幸福の影につきまとう、重苦しい恐怖。

 先ほどから感じている漠然とした怖れ。

 お姉さまに愛されていることが、どうしようもなく怖く感じることがある。

 ――何で私は怖い思いをしなきゃいけないんだろう?

 はっきりとした理由もわからないまま、フランは心のうちにごつごつとした恐怖を抱えていた。

 ――お姉さまに幸せにしてもらってるのに、どうして嫌な気持ちを感じなきゃいけないんだろう?

 理不尽な恐怖のまえにただ耐えることしかできない自分が嫌だった。幸せというものは、恐怖などとは縁遠いもののはずなのに、どうして嫌な気分にならなければならないのか。

 ――こんなに幸せなのに、どうしてこんなに怖い想いをしなきゃいけないのだろう?

 フランはレミリアと舌を交えながら、そんなことを考えていた。


 何度目の息継ぎだろうか。フランは苦しさと甘さの混ざった息を吐きながら、レミリアから唇を離す。軽く一〇回以上、姉妹はキスの往復を繰り返していた。
 だが、次の一回が行われることはなかった。
 フランのとろんとした緋色の瞳に、姉が映っていた。
 何かを深く考えるようなレミリアの顔。
 先ほど妹を苛めていたのとはまったく異なる、まっすぐな表情。
 今までと少し違う姉の雰囲気に、フランもまた唇を求める動きを止める。
 刹那、姉妹はお互いを見つめ合った。
 永い一瞬の後に、姉が表情を柔らかくして言った。

 「ねえ、フラン、少し休憩しない?」

 レミリアの微笑に陰が見えた。

 フランの息が一瞬止まる。

 妹は、その陰が罪悪感や後ろめたさから来ているものではないことを瞬時に理解していた。
 
 そして、フランは絶望する。


 やはり、私はお姉さまから逃がれられないのだ、と。


 レミリアの笑顔に浮かんだ陰は、フランを心配し、気遣う陰だった。
 フランの不幸を厭い、幸福を願う陰だった。
 フランは嫌な顔や辛い顔をしたわけでもなく、泣き言を言ったわけでもない。
 だが、姉は、ほんの些細な仕草からも――フラン本人でさえ気付かないちょっとした表情の変化からも、妹の心のうちを全部知ってしまうのだ。
 姉はその限りない優しさゆえに、妹のことを理解し尽くしてしまうのだった。

 ――こんな相手から、逃げることなんてできるはずがない。
  
 フランは問いに答えることなく、しばらくじっとレミリアの顔を見ていた。
 レミリアも微笑んだまま妹の返答を待た。
 やがて、フランは何も言わず、こくりとうなずく。
 妹の返答を聞いたレミリアは絡めていた右腕を解き、フランの柔らかな金色の髪を優しく、大事そうに撫でる。左腕はぎゅっと、フランの小さな身体を抱きしめる。


 お姉さまの温かい腕は、殺されそうなほどに優しかった。

 








 休憩と言っても、やることがそれほど変わるわけではなかった。
 妹の居室である地下室のベッド。姉妹はその上に横になり、一つの枕と一枚の毛布を二人で使っていた。姉妹は息がかかるような距離で、横寝になってお互いの顔を見ながら、話をしていた。
 姉の手が、妹のさらさらとした髪を梳き透す。フランはレミリアに頭を撫でられるのが好きだった。レミリアの手にぬくぬくとした温かい気持ちを感じながら、言葉を紡ぐレミリアの美しい唇に見入っていた。

こうして妹が姉とともに愛を重ねることは珍しいことではなくなっていた。数年前から、二、三日に一度くらいの頻度で、姉妹は寝所をともにし、身体を交わらせて、愛を語った。女同士であろうと、血の繋がった姉妹であろうと関係なかった。ただ姉は妹の愛と悦びを求め、妹は姉を受け入れてそれを快楽と幸福とする。彼女たちが魂から愛し合っていることは確かな真実だった。

 話し始めて二〇分くらいだろうか。レミリアが口をつぐんだ。またレミリアが少しだけ真剣な目でフランのことを見ていた。どこまでも紅いその瞳に、心のなかを全部覗かれてるような錯覚を感じる。胸のうちが少しだけ震えるフランに、レミリアは気遣うような口調で尋ねた。

 「今日のフランは、なんか元気ないみたいだけど……もしかして、嫌だった?」

 フランは姉の問いに対して首を振る。心にかかったわずかな影を隠し、妹はその問いを否定した――姉に心配をかけるのが申し訳なかった。
 人間にしろ妖怪にしろ、日によって心の浮き沈みがある。バイオリズムというものだろう。何の理由がなくても、心が自然と落ち込んでしまう日もあるし、逆にやる気に溢れる日もある。今日は前者の日なんだろう、とフランは考えていた。
 心の調子がおかしいというわけではない。フランの心はときどき『発作』を起こすことがあった。魂が壊れていることによって生じる発作。そのときは、本当に意味もなく、怒りや憎しみといった悪い感情が心の奥から溢れてくるのだった。最近はかなり軽くなり、頻度も少なくなってきたけれど、フランはこの発作に悩まされることがときどきあった。

 だが、今回の理由はそれではなかった。

 言ってみれば、気まぐれ――なのだろう。

 自分はそんな気まぐれで怖い思いをしているのだった。だから、こんな恐怖は、明日になれば忘れているような、あやふやで根拠のないものでしかないのだ。
 だが、今のフランは、この恐怖を忘れようとしても、忘れることができなかった。
 姉に愛されることの怖さは、消えなかった。
 けれども、そんなものは一時の感情だ。そんなあやふやなもので姉に心配をかけるのは嫌だった。そして、レミリアから愛されていることが怖いという事実を認めるのが怖かった。曖昧な不安を隠しながら、フランは微笑みながら、姉に謝った。

 「ううん、そんなことないよ。私はお姉さまとこうしていられるのが、すごく嬉しい。もし、そう思っちゃったならごめんね、お姉さま」

 強いて笑うフランに釣られてレミリアも微笑むが、紅い瞳にかかった憂いの陰は消えなかった。
聡明な姉は、丁寧な手つきで柔らかな髪を梳き透しながら、愛する妹の顔をじっと見つめていた。どこまでも強く、まっすぐな視線に、フランの胸は早打ちしてしまう。まるで見つめられるだけで心臓を握られているような感覚に、フランは耐えることしかできなかった。
 
 「そう。それならいんだけど……」

 優しげに微笑んで、レミリアは口をつぐむ。どこまでもレミリアは優しく、大人だった。
 黄金の髪を撫でていた右腕で、フランの頭を抱き寄せる。そのまま左腕も伸ばして、レミリアはしっかりとフランを捕まえた。フランはレミリアの胸の温かさを頬で感じる。目をつむって、その心地よさを噛みしめた。もし天国の温かさというのがあるならば、それはお姉さまの温かさかもしれないと思った。
 そして、姉に抱かれたまま、フランは自然と目が潤んでくるのを感じた――これはお姉さまに抱かれているからだ、と甘霞んだ頭で考える。決して不安のせいじゃない。お姉さまの温かさはどんな凍りついた涙腺さえも融かしてしまうのだ、と。意味もなく涙が零れてしまうのはこんなときなのかもしれない――そう思いながらも、フランは姉に心配をかけまいと必死に涙をこらえていた。

 「……幸せね」

 甘い香りのする妹の髪に、顔を押し付けていたレミリアが呟く。胸の奥から絞り出されたような声はかすんでいて、だが、ちゃんとフランの耳に届いていた。

 「……本当に私は幸せ者だわ」

 レミリアはフランの身体を抱きしめる力を、少しだけ強めた。

 「こうして、フランを抱きしめることができるのだもの……」

 本当に幸せだわ――と、ため息をつくように言う。じんわりとその言葉が、フランの胸に沁み渡っていた。フランもぎゅっと姉の背中に回した腕に力をこめる。姉の心音がとても穏やかにフランの耳に響いていた。

 「ねえ、フランは幸せ?」

 夢見心地のような声で、レミリアはフランに尋ねる。どくん、とフランの心臓が一つ跳ねた。

 「私はフランを幸せにできてる?」

 姉の言葉が、頑張って耐えていたフランの涙腺を刺激する。ぎゅっと目をつむって耐えようとするが、何滴かの涙がぽろぽろと零れてしまう。妹の小さな涙が、しっとりと姉の胸を濡らした。
 腕の力をゆるめて、レミリアがフランの顔をのぞく。そこにはうつむいて目を閉じている妹の顔があった。不思議そうな顔をした姉が右手を妹の顔に優しく添え、少しだけ持ちあげる。姉は、必死に目を閉じて何かをこらえる妹の顔、けれども、その頬に何条かの水が伝っているのを見つけた。

 「違うの……」
 
 姉に問われる前に、聡明な妹は言った。

 「嫌なんかじゃないの……本当に嫌なんかじゃないの。でも、何でか涙が出ちゃうの……」

 レミリアにこんな泣き顔を見られてしまうなんて、フランは本当に泣き出したい気分だった。優しい姉に勘違いされるのが一番嫌だった。姉の好意に報いるどころか、傷つけてしまうなんて、絶対許せなかった。それなのに、レミリアに知られてしまったことで嫌な気持ちはどんどん強くなり、涙の量は増えるばかりだった。
 
 「私はお姉さまに幸せにしてもらってるのに、なぜか涙が出ちゃうの……止まらないの……」

 すんすん、と鼻をならすフラン。フランは両手で必死に目の端から零れる涙をぬぐうが、涙滴は次から次へとこぼれて止まらなかった。

 「お願い、信じて、お姉さま……お姉さまは悪くなんかないの。悪いのは私なの。お願い……」
 
 自分でも理由のわからない涙を流しながら、フランが懇願する。レミリアは右手で、フランの頬を大切そうに撫でた。そして、レミリアはまた右手をフランの背中へと回し、静かにフランの頭を胸へと抱き寄せた。柔らかく温かな姉の胸にフランの顔が押し付けられる。レミリアの柔らかな匂いと心臓の鼓動が妹を包む。それだけで、フランは嫌な気分が不思議と和らいでいくのを感じた。

 「……泣きやむまで、待っててあげるから」

 頭の上からレミリアの優しい声がかかる。

 「思いっきり泣きなさい。そうすれば気分がすっきりするから。……話はそのあとに、聞かせてちょうだい」

 「遠慮しちゃだめよ? フランが泣き虫だなんて、昔からわかってるんだから」――そう言って、レミリアがくすりと笑った。

 姉の言葉に、フランは心から不安の色が消えていくのを感じた。同時に緊張が解ける。すると困ったことに涙腺は今まで以上に緩んでしまった。もう我慢できなかった。フランは顔をレミリアの胸にこすりつけて泣いた。レミリアは赤子を落ち着けるような手つきで、ぽんぽんと右手で妹の頭を叩いていた。涙とともに、暗い気持ちを流し出そうと、フランはレミリアの胸で泣き続けた。









 「……ねえ、お姉さまは幸せなのが怖いって、思ったことがある?」

 目を赤くはらしたフランが、レミリアに尋ねた。二人はベッドの上に座って抱き合っていた。レミリアに胸を貸してもらって、一〇分ほどたっぷり泣いたフランはすっかり元気になっていた。でも、それで終わりにするわけにもいかなかった。少し心配そうな顔をするレミリアに事情を説明しなければならなかった。
 フランはレミリアにどんな言葉で説明すればいいのかわからなかった。そもそも、自分でもこんな理不尽な気持ちが存在するのか、と困惑しているのである。しかし、黙りっぱなしでいるわけにもいかない。何も言わずにいれば、余計にレミリアは心配することだろう。「別に言いたくなければ言わなくてもいいのよ?」とレミリアは言ってくれたが、それでは自分が許せないし、自分でも言葉としてこの気持ちを吐き出したかった。こんな気持ち悪い気分でいるのは嫌だったし、姉に余計な気遣いをさせたくなかった。
 そして、フランは正直に姉に白状することにした。フランは言葉の選定に悩んだが、そのまま伝えるのが一番だ、と決めて話し始めたのだった。
 
 「幸せなのが怖い、ね……」

 と、レミリアがぱちくりと目を瞬かせる。どきどきしながら、妹は姉の反応を待っていた。もしかしたら、自分は変人扱いされてしまうかもしれない。「幸せなのが怖い」なんて理由で泣きだすなんて、普通じゃないと自分でも感じていた。
 
 「……その気持ちはわかるわ」

 レミリアは腕を組み、言葉を選びながら話す。姉は妹の様子をよく観察し、妹の言葉の意味を真剣に考えていた。

 「私もその経験はあるもの。本当にときどきだし。フランみたいに泣き出してしまうほどじゃないけどね」

 真摯な紅い視線を、フランは受け止める。そして、少しの驚きを感じていた。レミリアには、いつでも「私に怖いものなんかないわ、ふふん」と胸を張っているようなイメージがあったのに。

 「お姉さまでも、幸せなのが怖くなることがあるの?」
 
 「……ええ、『幸せなのが怖い』、というより、『幸せすぎて怖い』と言った方がいいかもしれないわね。例えば――」

 レミリアは口を動かしながら、きょとんとしているフランを見て、困ったように微笑む。自然とフランの頬に右腕をのばし、優しく撫でた。くすぐったそうに目を細めるフランに、レミリアは言い聞かせるように言った。

 「例えば、フランのことを考えているときとかね」

 その言葉を聞いて、フランはさらにびっくりする。そしてすぐ後に、何だかやけに嬉しい気持ちと、少しの心配とちょっとの申し訳なさの入り混じった感情が心のなかに舞い込んできた。フランは眉を八の字にして、うつむく。

 「……なんだか、私、お姉さまに悪いことしてるみたいだね」
 
 そう言って姉に謝るフランを見て、レミリアがくすりと笑う。フランの頬を撫でていた手を動かし、フランの頭を自分の側に引き寄せた。

 「そんなことないわ。私が進んでフランのことを考えてるんだもの。フランが気に病むことじゃないわ。それに、」

 レミリアは慈しむような笑みを浮かべて、フランに言い聞かせた。

 「それに、それはどうやっても避けられないことなんだから」


 ――『避けられない』。


 フランはその言葉に引きつけられる。その言葉の重みを頭のなかで反芻しながら、フランはレミリアに質問する。

 「避けられないってことは、お姉さまの力じゃ、どうにもならないの?」

 その言葉に、レミリアはすぐには答えなかった。代わりにとても真っ直ぐな視線をフランに向け、一瞬だけ――ほんの一瞬だけどこか遠くを見るような目をして、それから温かな微笑を保ったままうなずいた。

 「ええ、どうにもならないわ。というより、人や妖怪なら、誰しもが考えてしまうことじゃないかしら」

 姉の言葉に、フランは首をかしげる。『誰しもが』自分のように感じているということだろうか。そういえば、『幸せすぎて怖い』と言う言葉は小説で読んだことがあるのを思い出した。では、あの感情が、小説で言うそれなのだろうか。

 「……でも、おかしくないかな? 『幸せ』なのに『怖い』って。幸せなんだから、苦痛だとか、恐怖だとか、そういうものから自由なはずなんじゃないの?」

 妹の言葉に、レミリアがうなずく。そして、寝物語を言い聞かせるように、妹に語り続ける。

 「そうね。フランの言うとおりだわ。幸せというものは、悪い物から解放されて、良い感情だけが心のなかにある状態だもの。言葉からして矛盾してるわね。でもね、フラン。悲しいけど、人や妖怪というものは、先のことを考えてしまう生き物なのよ」

 「それがあるから、人や妖怪はその存在たりうるのだけれどもね」と、レミリアは微苦笑を浮かべる。フランにはなぜか、その微笑みがひどく悲しいものに見えた。

 「生き物はみんな、幸せな状態でいたいの。でも、どんな状況も永遠には続かないものだわ。いつかその幸福を消える時が来る。避けられない、その日が。だから皆、心のどこかで考えてしまうの。『この幸福が消えてしまったら、自分はどうなるんだろうか』って」

 レミリアの手が宝物に触れるように、フランの頬を撫でる。

 「だから、幸福過ぎて怖いってことは、何もおかしい話じゃないのよ。誰しもが考えてしまうことなのだから。幸せになった人間なら、皆が考えること。だから、」

 そう言って、レミリアはフランの身体を抱き寄せ、金色の髪に触れた。レミリアの紅玉の瞳がまっすぐにフランの緋色の瞳を見ていた。

 「それは、フランが幸せだっていう証拠でもあるのよ」

 その言葉を聞いて、フランは心のどこかの凍った部分が氷解するのを感じた。


 ああ、そうか、私は幸福なんだ、と。


 フランは改めて、自分が幸せでいることに気付いたのだった。

 また、じわりと視界が霞んできた。「やれやれ、本当にフランは泣き虫なんだから」と、レミリアがフランを胸にかき抱く。フランは姉の肩に顔をおしつけていた。

 「……そっか、私、幸せなんだね」

 「ええ。きっとそうよ、フラン。おめでとう」

 ようやく幸せになれた、という言葉が、フランの心のなかに響いていた。温かな安らぎが沁み渡っていく。全身の強張りが解けて、緊張が解放される心地だった。
 ようやく、だった。
 長い時間をかけたけれども、自分は人並みのところに立てたのだと。
 狂気に冒され、495年の地下生活を送り、地上に戻ってからも苦しんできた自分でも。
 人並みの幸福を手にすることが出来たのだと思うと。
 喜びはもちろん、それより大きな安堵で心がいっぱいになる心地だった。
 そして、そんな自分をぎゅっと抱きしめてくれる姉の存在を実感する。
 こんなに嬉しいことはこの世にないと思った。
 
 そして、幸福な自分の心の影に、フランは気付く。
 姉が『避けられない』といった、その影を。

 「ねえ、お姉さま……」

 幸せの意味を知ったばかりの少女は、姉に尋ねる。もしかすれば、今までよりももっと重大な意味をもつ質問を。
 
 「幸福はいつか終わってしまうものなの?」

 妹の真摯な視線。そして、姉もまた逃げずにそれを受けとめた。

 「幸福の終わりは避けられないの?」

 フランは姉に尋ねた。得体の知れない恐れにつつまれながらも、フランは質問を発する。

 幸福の終わり。

 自分にとって、それはどんなものだろうか。

 これまで得てきたものを失ってしまうということなのだろうか。

 地下室の外にでることも、
 友達と弾幕ごっこすることも、
 好きな時に紅魔館のみんなに会いに行くことも、
 お姉さまとこうしていっしょにいられることも、

 そういうことが全てなくなってしまうということなのだろうか。

 嫌だった。

 確かに、これは怖い。

 この幸福な時間の前に感じていた、冷たい世界。

 ずっと続くんじゃないかと思っていた絶望の世界。

 それはすぐそばに感じられるほど怖かった。

 ――しばらく、レミリアは答えなかった。フランも新たに生まれてくる不安を押し殺して、姉が話しだすのをじっと待った。レミリアは少しだけ目を閉じて考え、やがて、目を開いて答えた。

 「その答えはイエスであり、ノーでもあるわ」

 強い意志のこもった目だった。

 「どんな幸福も確かに終わりはある。常に同じ姿を保ち続けていられる幸福は存在しないでしょう。運命を操る力があっても、不変の運命を作り出すことはできない。物事が変わっていくこと自体を否定することはできない。でも、なかには、姿を変えながら生き永らえる幸福もある」

 潤んだ瞳だったが、フランは力強く言葉を発する姉を見つめていた。

 「この世に変化しないものは存在しない。けれど、変化があったとしても、その存在自体が消えてしまうものばかりではないわ」

 「幸福には終わりがある。でも、その続きの幸福もまた存在する」と、レミリアは自分の額をフランの額へとくっつける。

 「幸福は大事なもの。でも、それを感じ取る心はもっと大事なものなの。必要なのは幸福を見つけられること。幸福が消え去ったとしても、その先にはきっともう一つの幸せが存在するわ」

 「そして、」と、レミリアはフランの緋色の瞳をのぞき込む。どこまでも真っすぐで、祈るような紅色の目。その視線に、フランは姉の真剣さを感じ取る。

 「今、この瞬間、フランが確かに幸せだったということを忘れないで」

 自然とフランを抱きしめるレミリアの腕に力がこもる。

 「どんなに時間が経っても、フランが忘れない限り、この事実はなくならない。私がフランを愛することでフランが幸せになってくれたという事実をフランが覚えていてくれれば、時間でもこの事実には決して干渉できない。過去は変えられないと嘆く人も多いけど、逆に見れば、良かった過去は良かった事実として永遠に残るの。後は、それを振り返った未来の人々がどう感じるか――それだけなの」
 
 レミリアはとても真剣な顔でフランに話しかける。



 「いい? 今、この幸福は――今、この愛は永遠よ」



 真っ直ぐな視線で、レミリアはフランに言う。



 「私がフランを愛していることも。フランが私を愛してくれたことも」


 
 「もちろん、フランが私を愛してくれるおかげで、この私が幸せでいられるという事実も」と、レミリアはにっこりと笑う。

 そして、レミリアは自然な振る舞いでフランに口づけをした。

 フランも当然のように姉の接吻を受け入れる。

 口と口、舌と舌で姉妹は愛を交わし合う。この世の一つの事実として――二人が深い接吻で愛を交えたという事実を永遠に刻み込むように、姉妹は熱くお互いを愛し合う。

 息が続かなくなるまで、互いの口唇を貪りあった二人は、紅潮した顔で互いを見つめあった。

 優しく、温かな姉の視線がとても愛おしかった。最愛の人から見つめられることの幸福をフランはじんわりとかみしめていた。どきどきと心臓が熱を帯びて興奮しているのを感じる。それは不安からではなく、純粋な喜びだった。フランの心臓は喜びに踊っていた。

 「ねえ、お姉さま、お願いがあるんだけど……」

 少しだけ勇気を出して、フランはお願いする。「――何かしら?」とレミリアは楽しげに微笑んだ。今にも暴れ出しそうな心臓を押さえつけ、フランは息切れしそうになりながらも、姉に伝えた。
 
 「もっと私を幸せにしてください」

 熱のこもった緋色の瞳で一生懸命にレミリアを見る。

 「私がお姉さまに幸せにしてくれたという事実が忘れられなくなるくらい――その幸福が永遠になるくらいに、私のことを愛してください」

 最愛の人の視線を浴びながら、フランはお願いを言い切った。

 「お姉さまが私を幸福にしてくれた証しを、私にください」

 しばらく虚を突かれたように目を丸くしていたレミリアだが、やがて、心底嬉しそうに微笑む。そして、フランの額にキスした。

 「わかったわ、私のお姫様」

 そのままフランの両肩に手を置き、優しく押し倒した。妹の期待するような視線を受ける。もう暗いところのない眼差しを見て、レミリアは心から安堵すると同時に、再び強い情欲が燃え上がってきた。
 
 「今日はとことんやってあげるわ。忘れられないくらい徹底的に」
 
 そう言って意地悪そうに笑う姉に対して、フランはにっこりと笑って答えた。 
 
 「望むところだよ」







 

 「んっ、ふゃ……お姉さま、そんなところ……んぁあっ……」

 「ふふっ、やっぱりフランはまだまだね。始める前は余裕ぶってても、すぐにこれだからね」

 レミリアが紅い舌で、フランの陰裂を優しく舐め上げていた。敏感なそこを強く刺激しないように、姉の舌が繊細に動く。ふっくらとした白い大陰唇の、柔らかくなめらかな感触を味わい、隙間から零れ出る愛液を真紅の口唇で吸い上げる。ガラス細工を扱うような優しい舌遣いは、却って、フランに強い性感を与えていた。首筋から鎖骨、乳首、肋骨、臍へと、レミリアの舌による愛撫と口唇による刻印が順番に降りてきて、今まさにフランは脚をレミリアの手で大股開きにさせられ、秘所をついばまれているところだった。

 「んう……お姉さま、あんまり見ないでね……」

 「あら、何を言ってるの、フラン。こんな綺麗なもの、見ないでいる方がおかしいというものよ……」

 「そんなことな、んんーっ……!」

 始める前の強気な口上はどこに行ったのやら、いつものように、フランの頭は愛欲でくらくらしていた。いつものように、姉に自分の陰部を見られ、口で愛撫されているだけにも関わらず――すでに百回を超える回数それを体験しているにも関わらず、普段と特に変わることのない姉の性技だけでフランは心も体も、あっという間に姉の虜になってしまったのだった。
 もっともそれだけでは済まなかった。与えられる羞恥にすら姉の愛とぞくぞくする快感を覚えている自分を自覚し、さらにフランの恥ずかしさが募った。積み重なった羞恥にフランは真っ赤な顔をしつつも、レミリアの顔の前で脚を開き続ける。レミリアもまた、特に気にする様もなく、フランの身体を丁寧に労わっていった。やがて、フランの陰裂を責めるだけでなく、大陰唇を両手で、くぱぁとかき広げて、ピンク色の陰唇全体を舌で刺激し始めた。

 「ひゃぁあ! お姉さま、そこだめ! そんな汚いところ……んんっ、だから、そこはぁ……」

 レミリアの舌の先が、フランのおしっこの穴をくすぐる。尿意と羞恥をかきたてられる愛撫に、フランは思わず身悶えした。フランからは見えていないが、小さな尿道口が、ぷっくりと盛り上がってきている。レミリアにはそんな妹の痴態が可愛くて仕方がない。やめろと言われても、そう簡単にやめられるものではなかった。サディスティックに口元を歪めながら、敏感な場所を責め続ける。フランは尿の出口を触れられる鮮烈な快楽と、本当に失禁してしまったらどうしようという恐怖から、股間を押さえようと両手を伸ばす。しかし、その華奢な手は、姉の頭と強過ぎる刺激に妨害されて、さらさらとした蒼い銀髪をかすることしかできなかった。

 「ふぁぅんっ! んや、んぐ、にゃあっ! だから、お姉さま、だめだってばぁっ……!」

 「あら、駄目なのかしら? フランのここはそう言ってないみたいだけど。ほら、こんなにひくひくしてて、とても気持ちよさそうだわ」

 「そんなことっ……ああっ! やっ、やっ、んやっ、んやあっ! ……だめぇっ! だめなのぉっ! ……とにかくっ、やめてぇえっ……!」

 「んー、ここをいじられてるフランはすごく可愛いのに。残念だけど、仕方ないわね」

 姉に『可愛い』と言われて、不覚にもフランの頭の熱が加速してしまう。どうしようもなくなったフランは、ばたばたと太ももを動かして、ささやかな抵抗を示した。レミリアとしては言葉の通り、もっとフランをいじめたいところだが、やりすぎはよくないのはわかっていた。本当に放尿までさせてしまったら、フランは後でいじけてしまうことだろう。いじけるどころか、本気で傷ついてしまうかもしれなかった。姉として愛する妹にトラウマを与えたいわけがなかった。なごり惜しげに小さく震える尿道口から舌を離し、別の場所を楽しむことにする。
 
 「んっ……今度はそこっ……、あんっ、んあぁ、あぁん……っ」
 
 拡げた小陰唇の内側からフランの味を堪能するレミリア。ピンク色の滑らかなひだは、すでに愛液で濡れそぼっており、妹が十分に発情していることを示していた。だが、これだけで本番に入ってもつまらないだろうと、レミリアは口による愛撫をやめない。

 「……本当に可愛いわね、フランは。最高よ、あなた」

 「ふぁあっ! そんなこと言われてもっ……うぅんっ! あん! やぁんっ!」 

 前戯から妹を盛大にもてなすのがレミリアの主義だった。そして、主義以上にフランを前戯で昂ぶらせていくのは楽しい仕事だった。尿道口だけでなく、もはやフランの陰部全体は特上の性感帯と化していた。舌の動きに敏感に反応するフランがレミリアの嗜虐心を満足させてやまない。小陰唇だけでなく、膣口も責め立てる。その狭い入口の周囲をなぞるように紅い舌先を動かすと、フランの膣口はひくひくと息をするように震えた。その反応と同時に小さな穴の奥からフランの膣液が流れてくる。甘露よりも甘いその味を堪能しながら、舌の先っぽを膣口に差しいれると、「ひゃあっ!」という嬌声とともに、フランが首を仰け反らせて悶える。舌先を離すと、桜色の膣口が物欲しげに震えていた。そんな妹の姿が可愛すぎて、レミリアの嗜虐心は最高潮になっていく。妹のさらに乱れた姿を見ようと、姉は繊細に秘所への刺激を続けるのだった。

 ――ひぁ、ふぁ……今日は、……今日は、すごいよう…… 

 フランはぼんやりした頭で思う。いつもと変わったことをしているわけでもないのに、前戯だけで涙が流れるほど気持ちいい。先程まで暗い気持ちになっていたのが嘘のように、フランは身も心も姉に愛されることのよろこびを感じていた。レミリアの舌による快楽が岸辺に寄せる波のように次々と押し寄せてくる。その一つ一つが、フランを身悶えさせ、息を荒くさせていた。自分のものであるかもわからないくらいに、秘部がどうしようもなく熱い。フランの股間はレミリアによる快楽にすっかり支配されて、下半身の奥深くも物欲しげに疼いていた。言いようもない焦燥感にフランの心は振り回され始める。すでに腰が姉による愛撫に合わせるように、上下に波打っていた。フランはベッドのシーツをぎゅっと握って、快楽に耐えるのがやっとだった。

 ――『この愛は永遠よ』

 快楽に咽びながら、フランは姉の言葉を思い出す。その瞬間、火がついたように身体の芯が熱くなった。スイッチを押したかのように、レミリアの言葉がフランの性感を何倍にも強くさせた。そして、苦しいくらい気持ち良くて仕方ないのに、快楽を増幅させる言葉を何度も何度も頭のなかで繰り返した。
 涙でぼやけた視界で、ちらりと目を股間のほうにやると、一瞬だけレミリアと視線が交差した。
 レミリアが慈しむように微笑んだ。 
 それだけで、フランは快楽だけでない、明るく温かな気持ちに満たされるのを感じる。
 今この瞬間、レミリアに愛されているという事実が、この上なく幸福だった。

 「そろそろメインディシュかしらね……」

 フランの身体の昂ぶりを観察していたレミリアが判断する。フランの透き通るような白い肌は興奮によって赤く彩られ、女陰は己の出した蜜液とレミリアの唾液によって濡れ咲き乱れていた。

 「もっとも、私の口にとってのメインディッシュで、フランにとってはまだ副菜程度だけど」

 レミリアのサディスティックに微笑む。その微笑を見て、フランは寒気にも似た恍惚が背筋を走るのを感じた。幸せで自分がどうにかなってしまうのではないかという震え。愛する姉に自分を所有されるという歓喜。幸せの陰に対する怯えなどではなく、未知に対する畏怖と本能的な期待が混じった悦楽だった。

 レミリアは最後までとっておいた場所へと舌を伸ばす。

 「んんっ!? だめぇ、お姉さま! そこは感じ過ぎちゃっ……ふぁあっ!」

 レミリアはフランのクリトリスを舐め上げていた。これまで以上の丁寧な愛撫。敏感な陰核を傷つけることのないように、優しくなぞる。フランのそこはすでに石のように固くなり、膨張していた。大陰唇を押し広げている手を少しだけ動かし、赤い真珠の被っている傘をずらす。包皮を剥かれ、完全に無防備になったそこに、とんっと舌先を押しこむ。

 「んんっ、んゃぁぁあっ……!」

 がくりと、背骨を弓のようにしならせて、フランの身体が跳ねる。予想以上の反応に、レミリアは背骨に嗜虐の愉悦が駆け上がるのを感じる。包皮の裏さえ舐めまわすように、レミリアの舌が徹底的にフランのクリトリスを愛撫した。妹の勃起した桜色の陰核が、姉の真紅の舌に蹂躙される。フランは白く滑らかな喉を仰け反らせて必死に息をしながらも、意識が絶頂にもっていかれるのに耐える。髪を左右に振りみだし、目尻から涙をこぼし、もはや抑えることもなく喘ぎ声を漏らすフランの姿はたまらなく淫靡だった。
 だが、ここで、手を休める姉ではなかった。妹の陰部を開いていた右手を離す。そして、フランが気付く間もなく、中指と人差し指を揃え、狭い膣口へと突き入れた。

 「あぅんっ……あひぃいいんっ!? だめぇっ! いま指挿れちゃらめなのぉっ! おかしくなっちゃうっ! おかしくなちゃうからぁっ! ……んやああああああっ!?」

 愛液を溢れさせながら、レミリアの白く長い指がフランの陰部へと侵入していった。一秒もかからず、レミリアの指はフランの膣で、最も気持ちのいい場所を捉える。そのまま、じっくりと円を描くように的確かつ集中的に急所を愛撫する。幼い性器のなかで、快感が爆発した。その快楽の爆風がフランの頭を完全にショートさせる。

 「だめぇっ! だめなの、お姉さまぁ……! そこっ、そこはっ気持ち良すぎるのお……! 気持ち良すぎておかしくっ……やぁんっ! ひぁあっ、ぁんっ、あんっ、あんんっ……だめなのおっ……!」

 涙をぼろぼろと散らし、快楽に咽びながらも、フランは姉に懇願する。クリトリスと膣の急所を同時に責められ、フランの頭は甘く刺激的な快楽ですっかりやられてしまっていた。

 「……本当に嘘つきねフランは。もう、ここはこんなになっているのに」

 レミリアはフランの懇願に耳を傾けながらも、熱い愛液に濡れた指を動かす。フランの女肉が強くレミリアの指に吸い付いていた。レミリアはフランを快楽の限界点へともっていくようにじっくりと誘導していく。最大の一撃を最高の状態で与えられるよう、愛撫の間隔を変え、イきそうになりそうならば指をとめるなどして、巧みにフランの身体を焦らした。
 フランは、もはや姉に焦らされていることすらわからなくなっていた。死んでしまいそうなほど強い快楽と、寸止めにされる苦悶、そして甘い幸福で頭がいっぱいになり、考える力はもう残っていなかった。姉の手に身も心もゆだねるような状態へとできあがってしまっていた。
 ぼんやりとした頭と涙で霞みきった視界で、なんとなく股間にいるレミリアを再び見る。フランの様子を確認するために視線を上げていたレミリアと目が合う。姉はまた安心させるように柔らかく笑った。お姉さまが笑ってくれた――霞んだ理性でそう思うと、フランのなかでまた温かな幸せが限界まで膨らんでいく。
 一番最初のときのように、フランの膣の急所がぷっくりと膨らんできた。充血した小さなクリトリスも限界まで固く勃起し、絶頂のサインを示している。レミリアは今が頃合いだと悟った。

 「フランの可愛いイき姿、よく見せてね……」

 ぐっと少しだけ強く押して、フランの膣道の膨らみを刺激する。

 同時に、舌と口唇全体でフランのクリトリスをしゃぶるように包み込んだ。

 今までで一番強い刺激が、最も気持ちの良い二つの急所を襲う。

 最大の一撃をもらったフランは、下半身の奥深くが融け、瞬間、弾けていくかのような衝撃を受けた。

 「んぐぅうん!? んんんんんんんんんんんっ!! んああああああああ――!!」
 
 派手に身体全体を仰け反らせて、大きな嬌声とともにフランが絶頂を迎えた。桜色に紅潮した肢体が痙攣する。ピンク色の秘所から透明な潮が激しく飛び散った。妹の噴き出した、はしたない液体が姉の顔に当たるが、レミリアは目をつむるだけで、その飛沫に涼しげに耐えた。がくがくと細い腰が震え、膣壁が姉の指をむさぼるように締めつける。やがて絶頂の痙攣がやむと、全力疾走したかのように、妹はぜえぜえと肩で息をしていた。涙をこぼし、舌を突き出して喘ぎながら、半ば放心状態のフラン。幼い陰部は姉の舌と指の感触を惜しむように、まだ痙攣を続けていた。

 「どう? 気持ち良かった、フラン?」

 レミリアが顔に降りかかったフランの潮を右手でぬぐい、べろりと長い舌で舐める。意識がぼんやりとしつつも、フランは自分の胸の上に乗っかかっている姉を見た。今まで自分の秘所を愛撫していた紅い舌が、姉の指を舐めとっている様を見て、フランは感動に似た灼熱を頭のなかに感じる。それに、自分の噴き出した恥ずかしい液体を舐められていると思うと、もう恥ずかしいやら、気持ちいやら、嬉しいやらで考える力はなくなってしまった。だいぶ息が落ち着いてきたが、頭はまだ白く霞んでいるような感じだった。夢見心地のまま、フランは姉の問いに答えた。

 「うん……すごかった。すごく、気持ちよかったよう……」

 まだ震える声でフランが言う。快楽に陶酔する妹の様を見て、レミリアが満足げに微笑む。レミリアは左手をフランの頬に添え、労わるように撫でる。そうしていると、フランの瞳にだんだんと理性の力がもどってきた。それを見つめながら、レミリアは妹に尋ねた。

 「それで、どうする? このあとの続きもする? フランがいいっていうなら、しないけど」

 レミリアにとっては前戯の段階だが、フランにとってはちょっと刺激が強すぎたかもしれなかった。『徹底的に』というから、フランのお願いに応えてあげようと思い、少し頑張ったのだが、フランの壮絶な反応を見て、やりすぎたかな、と反省するところがないでもない。もし、フランが嫌なら、それも構うまいと考えていた。

 けれども、フランの答えはすぐに返ってきた。

 「……するよ」

 恥ずかしげに目を伏せながらも、フランは答えた。短いが、力強い言葉に、レミリアは正直驚いていた。フランはしっかりと、姉の紅い瞳を見ながら、はっきりとした声で言葉を重ねた。

 「お願い、お姉さま。私はしたいな。ちゃんと続きをしたい」

 フランもまた自分の声の大きさに驚いていた。自分の心にこんな強さがあったんだとフランは少し感動していた。
 でも、最後までやり通したいという気持ちは強固なものだった。
 この幸福を最後まで経験したい、と。
 幸福の陰に怯えることなんてなく、今の幸福を肯定したい、と。
 幸福を失うのが怖いから、幸せになるのが嫌なんてまっぴらごめんだった。

 「最後までしたいの、お姉さま。ちゃんと最後までやって、幸せの先にあることなんかどうでもよくなるくらい、幸せというものを知りたいの。私は確かに幸せだったという、その証が欲しいの」

 そう言って、フランはレミリアの言葉を待つために口を閉じた。

 「あ、でも、お姉さまが嫌なら、別にしなくてもいいけど」と慌てたようにすぐに付け加えるフラン。そんな妹を見て、レミリアは自然と、だが、大切なものに触れるかのように、妹の頬を撫でる。レミリアはまっすぐな瞳でフランを見つめた。フランも真剣な面持ちで姉を見返す。緋色に明るく輝く瞳がレミリアを見ていた。その瞳を見て、レミリアは目頭が熱くなるのを感じる。妹が一つの苦しみを乗り越えるたびに成長していくのが嬉しくてたまらなかった。レミリアは少しだけ目を閉じて、涙を流すのをこらえる。たとえ嬉し涙でも、今のフランに涙を見せるなんて興醒めだと思った。

 「ねえ、フラン」

 レミリアが目を閉じたまま呟く。

 「……何、お姉さま?」

 フランが問い返す。

 「愛してるわ」

 姉の言葉を聞いて、くすりと妹が微笑む。

 「――私もお姉さまのこと、大好きだよ」

 目を開けた姉の前には、妹の満面の笑顔があった。 







 「そういえば、お姉さま、幸せは変化するものだって言ったよね?」

 次の交合の準備をしながら、フランがレミリアに尋ねた。
 レミリアは男根を生やす魔法の薬を飲んでいるところだった。あくまで疑似的であり、生命を生み出せないものの、陰茎の性感を使用者に伝え、精子を出すこともできる優れものである。一方のフランはというと、特に準備の必要もなかった。あれだけ激しい前戯があったため、フランの膣は十分すぎるほど受け入れ準備が整っていた。レミリアが薬を飲み、数秒で男根が生え終わり、フランに向かい合ったところで、フランが何かを思いついたような顔でレミリアに尋ねたのだった。レミリアはきょとんとしながらも答える。

 「ええ、言ったけど、それがどうしたの?」

 すると、妹は嬉しそうに笑った。何かすごいことを発見して、はしゃいでいるときのフランの顔だった。
 
 「『幸せは変わらざるをえない』っていうと、みんな幸せが崩れたり、不幸になっちゃうって考えるじゃない。でも、そうじゃないこともあるんじゃないのかな」

 フランがにっこりと笑って言う。


 「たとえば、幸せがもっと大きな幸せに変わったり、とか」


 レミリアは黙ったまま、フランの笑顔を見つめ、妹が言葉を続けるのを聞いていた。

 「別に変わるのなら、悪い方向だけじゃないもの。良い方向にだって変わることもあるんじゃないかな。だからきっと、悪い方向にばかり考えるんじゃなくて、良い方向に考えることをすればいいんだよ。そうすれば、落ち込むだけじゃなくて、元気にもなれるもの」

 フランは溌剌とした笑顔で姉にそう教えた。
 言い終わると、レミリアの身体は自然と動いていた。
 姉は包み込むようにフランを両の腕で抱きしめる。
 この小さくも心の強い妹が愛おしくて仕方がなかった。

 「すごいわ、フラン。その通りだわ。本当に、その通り」

 姉に褒められて、フランははにかむ。ぎゅうっと柔らかく温かいレミリアの身体に抱きしめられて、フランは幸せでいっぱいだった。
 
 「じゃあ、フランは今の幸福の先に、どんな幸福を望むの?」

 レミリアが腕のなかの妹に問う。夢心地でフランは声に上げて、幸福を数えていった。

 「うーん……もう、私は地下室にこもってなくてもいいし、毎日お姉さまに会えるし、咲夜のご飯は美味しいし、パチュリーの図書館で本はたくさん読めるし、小悪魔とも遊べるし、美鈴にはいろんな外のことを教えてもらってるし、霊夢や魔理沙ともたまに弾幕ごっこしてるし……うーん、」

 言いながら、フランは困ったように――だが、朗らかに笑った。

 「今のままで十分幸せで、何を望んでいいかわからないなあ」

 「幸せよりも、もっと大きな幸せを探すのって難しいね」と、フランは言いながら自分で気付いた。地下室のときとは比べ物にならないほど、フランの生活は明るく輝いていた。そもそも満ち足りているからこそ、それを幸せと呼ぶのであり、それ以上のものがないことが幸せなのだから、それは締自明の理なのだ、とフランは気付くのだった。
 そんな妹をレミリアは優しく見守っていた。聡明な姉はとっくにフランが新しく得た答えに行きついていたが、それでも黙って、妹の思考の末を見守っていた。妹の成長は、姉にとって何よりの幸福だった。
 フランは諦めなかった。諦めずに、今より大きな幸福について考え続けた。本当に、もっとあればいいと思うものはないのだろうか、と。今の自分をもっと喜ばせてくれる――そんな素敵なものはないだろうか。「うーん」、「んー」とうなりながら、フランは真面目に考えていた。
 やがて、フランはその答えに気付く。けれどもその答えに、フランは戸惑ってしまった。そして、困惑と同時に、その答えに至った自分という存在が、なぜか無性に嬉しく、そしてとても誇らしく思えるのだった。でも、恥ずかしいことには変わらなかった。明るい困惑に、視線を泳がせると、レミリアの視線に当たった。そこで、恥ずかしさが二倍増しになる。顔が真っ赤になるのが自分でもわかり、うつむいてしまう。当然、レミリアは妹の仕種を不思議に思う。

 「どうしたの、フラン?」

 「な、何でもないよ!」

 尋ねるも、必死の声で返答をするフラン。レミリアとしては是非、フランの答えを聞きたかったし、フランが恥ずかしがっていると、いしめたくなる心が首をもたげてくる。「どうしたの?」と何度訊いても答えようとしないので、実力行使に出ることにした。わきわきと手を動かして、妹のわき腹をくすぐる。

 「ちょっ……お姉さま、くすぐりは反則だよっ! ……ぷふっ、ちょっともう、やめてってば!」

 「ほら、早く答えなさい。ちゃんと答えるまでやめないわよ」

 「そんな強引なっ……あははっ! ふぁんっ! もう、お姉さまったら!」

 三〇秒ほどで、フランは、「言うから! ちゃんと言うから! もうやめて!」と降参の声を上げた。
 真っ赤になってフランがレミリアを睨む。だが、姉にとっては、そんな妹が可愛くてしょうがないのだから、まったく効果がない。「もう、本当にお姉さまは……」とごにょごにょと呟き、やがて諦めたようにフランはすっと小さな深呼吸を一つした。そして、決意を固めたような顔に代わり、桜の花のような赤い顔で、自分の大きな幸福について言った。



 「その……お姉さまの赤ちゃんが産むことができたら、もっと幸せだろうなって……」



 レミリアはじっとフランを見つめたまま固まってしまった。本当に皿のように目を丸くして、最愛の妹を見ていた。

 「お姉さまの子供を産んで、育てて、いっしょに暮らせたら、もっと幸せじゃないかなって、そう思ったの……」

 そう言って、フランはその相手となるレミリアを見つめた。言い終わった今でも、心臓がばくばくと興奮している。でも、フランは望みを口に出せたことを喜んでいる自分に気付いていた。いや、言い出す前からすでに、自分の望みを姉に聞いて欲しかったという気持ちもわかっていた。恥ずかしいのは確かだけど、お姉さまに自分の願いを認めてほしい自分がいることを、フランは比較していたのだった。

 「…………」

 黙ったまま、レミリアはフランに向かって突然倒れかかった。華奢な肩をつかんで、そのまま妹をベッドに押し倒す。

 「ねえ、フラン」

 いきなりのことで、どぎまぎしているフランにレミリアは低い声で問いかける。なぜか、姉は荒い息をしていた。

 「どうして、フランはそんなに可愛いの? 私を殺す気なの? その可愛さで私を殺そうとしてるの?」

 「……ううん、そんなつもりは一切ないけど……」

 野獣の目をした姉にひるんで、首を縮めるフラン。ウサギのようにびくびくしながら、「お姉さま、落ち着いて」と胸のドキドキを聞きながら姉をなだめる。すでに陰茎は戦闘態勢に入っていて、妹が唾を飲んでしまうほど凶暴そうにいきり立っていた。レミリアは何とか息を整えて、心を落ち着かせる。まだ本番に突入するには早かった。レミリアはそれよりも先にフランに自分の言葉を伝えなければならないと思った。余裕や強がりなどをすべての消した表情で、レミリアはフランに向かい合った。

 「フラン、私の願いを言うわ――幸福の先の幸福を」

 フランもまた表情を引き締める。本当に妹がこの子で良かったと思いながら、レミリアは自分の願いを伝えた。

 「私もフランとの子供が欲しいわ」

 二人とも表情を変えることなく、正対していた。

 「フランとの子供を作って、いっしょに育てることができたら、すごく楽しいと思う。きっと今以上の幸せよ」

 やがて、フランが微笑んだ。穏やかで、静かな微笑だった。

 「同じだね」

 レミリアがうなずく。
 
 「ええ。あなたの願いと同じだわ」

 姉の返答を聞いて、フランがぽつりとつぶやく。

 「……これも永遠だよね」

 フランの目から一筋の涙がこぼれる。

 「私とお姉さまの願いがいっしょだった、っていう永遠」
 
 レミリアは妹の頬を流れる滴をキスで受け止めた。

 「ええ、永遠だわ」

 ぎゅっとお互いを抱きしめ合う。
 時間が止まってしまいそうなほど、優しい瞬間。
 姉妹は深く長い口づけを交わし、その何よりも大切な幸福を二人だけで感じ合う。
 やがて、レミリアとフランは額と額を合わせ、くすりと微笑み合った。
 
 「……始めましょう?」

 「……うん」

 レミリアとフランはもう一度、幸せそうにキスをした。







 「……ふぐっ、んぁっ……」

 レミリアの白くスレンダーな肢体が、フランを押し倒していた。
 両手をベッドの上に立て、妹を見下ろす形になっているレミリアを、フランは大きく股を開いて受け入れている。レミリアのたくましい陰茎を、身体の最奥まで受け入れて、フランは甘美な快楽を享受していた。ぬちゃ、ぬちゃ、と結合部から漏れ出す、いやらしい水音と、互いの息遣いを聞きながら、姉妹は性交を楽しんでいた。
 フランは姉の荒い息を感じる。頭のすぐ横には、自分に最高の幸福を与えるため、姉の身体を支えている姉の二つの腕が強く立っていた。そして、すぐ目の前には、愛する姉の美しい顔があった。
 今、フランの前にレミリアの全てがあった。
 オーロラよりも美しい蒼がかった銀髪。日本刀を思わせる端正な顔つき。自信に満ちた、だが、その奥に優しさを抱いた眼差し。すっとした流麗な肩のライン。無駄な肉のないしなやかな体つき。細いのに、限りない強さを感じさせる両腕。俊敏な狩人を思わせる細く
すっきりとした脚。こうして上げていけばきりがない姉の美点。
 そして、レミリアの意思の全てが、妹の自分へと向けられているという事実――
 
 「ふぁっ……お姉さま、お姉さまっ……」

 快感に咽びながら、フランが姉に言葉を伝える。

 「お姉さま、すごく綺麗……」

 全ての姉の美しさがフランに向けられていた。フランにはそれが眩しいほどに誇らしく、幸福で心がとろけそうだった。
 
 「……あなたもよ、フラン」

 ――レミリアもまた同じだった。

 「本当に綺麗……この世のどんなこともどうでもよくなるくらい……」

 眼下のフランを見つめて、ほうっとため息をつく。両の脚を開いて、姉を懸命に受けとめる妹の姿には、淫らを通り越して、神聖ささえ感じる。フランの心が自分によってもたらされる快楽に集中しているのだと考えると、幸せでたまらなくなる。今、フランの全てがレミリアの下にあった。金色に輝く柔らかな髪も、どんなお伽噺のヒロインよりも愛らしい花顔も、細くて綺麗なまつ毛も、星の光のように明るく穏やかな眼差しも、女の子らしい丸みの帯びた肩も、ふっくらとした成長途上の胸も、適度に引き締まったくびれた腰も、思わずつついて遊びたくなるような臍も、桃のようにぷりんとした臀部も、他の全ての美しい物も――フランの全部がレミリアのものだった。

 「……何て美しさ」

 レミリアが思わず言葉をもらす。言葉にできないまでも、フランも姉と同じことを思った。レミリアが腰をゆっくりと突き上げるたび、フランは右手でシーツをぎゅっと握り、目尻の涙をこぼしながら、悩ましい喘ぎ声をもらす。白いシーツを背景に、桜の花のように火照っているフランの肌が映える。レミリアは眼下のフランの美しさに夢でも見ているのではないかという錯覚に陥った。フランもまた、レミリアの美しさに頭が恍惚としていた。上乗りになっている姉の髪の毛先の一本一本が、身体の動きとともに揺れるのが見えた。まるで蒼い極細の宝石の雨が降っているかのよう。そして、その奥の姉の紅玉の瞳が自分に向けられているのが、この世のものと思えないほど美しかった。
 レミリアはフランをゆっくりと労わるように、腰を動かし続ける。フランの幼く狭い女陰をレミリアのたくましい陰茎がスムーズに前後する。前戯による激しい絶頂で、フランの身体はすっかりできあがっていた。よく濡れそぼった妹の幼い膣は、大きさにはやや不釣り合いな姉の肉棒を子宮口まで受け入れ、その力強い運動にも十分に順応していた。しかし、いきなり激しく動かれては苦しいだろうからと、レミリアは時間をかけてゆっくりとピストン運動をしていた。姉妹は荒い息をしながら、自らを相手に馴染ませていくかのように、静かにゆっくりと腰を動かすのだった。

 「……ねえ、フラン、気持ちいい?」

 レミリアが問う。

 「ゆっくりやってるけど、どうかしら?」

 妹はこくりこくりとうなずく

 「うん……ふぁ、ひあ……気持ちいいよ。十分すぎるほど気持ちいいの……というか、今日はっ、何だかおかしいようっ……おかしいくらい気持ちいいようっ」

 「……ええ、私もだわ。これだけしか動いてないのに、今にも達しそうなくらい気持ち良いわ……」

 ゆったりとお互いを労わるような愛の営み。それは一見、穏やかでとても微笑ましいものに見えたが、実際のところは違った。
 二人の味わう快楽は、普段の何倍も強かった。激しく動いているよりも気持ちが良い。もし、今の状態からスパートをかけたら、どうなってしまうのか想像できないくらいだった。
 レミリアのたくましい陰茎が、フランの幼い膣へと押し込まれる。狭い膣道を固い肉棒が押し広げ、フランの下腹部を満杯にしていく。そのたびにフランはまるで、自分の心まで膨らませられるような気分になった。姉によって自分が満たされていくのが、たまらなく気持ち良い。そして、肉の槍の先端が、小さなゆりかごの入り口を小突く。そのたびに子宮口から胸の奥まで電気ショックのような快感が走った。フランの悦楽と愛しさは膣奥から心臓に連結して、際限なく膨らんでいく。子宮口を突かれるたびに、まるで魂を直接突き上げられているようにフランは感じていた。そして、陰茎が引き抜かれるときも、たまらなく気持ちよかった。レミリアの亀頭の傘がフランの膣の急所をひっかくようにして刺激する。「あ、あああっ」と、思わず、フランの口から喘ぎ声が漏れる。身体を埋めていたものを引き抜かれる寂寞感と鮮烈な刺激が、着実にフランを巨大な絶頂へと運んでいく。数えきれないほどの快楽が波状攻撃のように押し寄せ、フランの身体を蹂躙していた。
 激しい快楽に襲われているのはフランだけではなかった。レミリアは気を張りながら、挿入を続ける。ゆっくりとだが、着実にフランを絶頂へと達せさせるために。しかし、フランの滑らかでしっとりとした膣壁がレミリアの陰茎を包み込み、強くしなやかに亀頭からペニスの根元近くまでしっかりと刺激していた。快楽に溺れるフランの膣壁が意識をもっているかのように収縮する。フラン自身も快楽を味わおうと、責めるレミリアもまた、フランによって強い快楽をもたらされていた。
 
 だが、そこでは終わらなかった。

 今のままでも十分気持ちがいいのに、姉妹はもっと強い快楽を希求していた。

 言葉もなく、二人は腰の動きをだんだんと加速させていく。自然とレミリアは腕を曲げ、自分の身体をフランの身体へ合わせるように密着させていた。白くなめらかな肌と肌が直接触れ合うだけで、お互いの性感が高まっていく。レミリアのすっきりとしたしなやかな背中にフランが両腕を回していた。そして、姉のスマートな腰に、すがりつくように両脚を巻き付け、股の中心を姉のそそりたつものへ深く押し付ける。抱擁の快楽を味わいながら、二人は思うままに腰を振る。限界を超えて壊れてしまいそうなほど強い快感。だが、どれほど快楽が強かろうと、レミリアとフランは互いの身体を愛するのをやめようとしなかった。

 どうしてなのか、と二人は互いの姿を見つめながら、考える。
 
 どうして、身体が自然に動いてしまうのか。

 どうして、こんなに気持ちいいのに、これ以上を求めようとするのか。

 そして――どうして、こんなに相手を愛しく思う気持ちが大きくなっていくのか。

 姉妹はお互いを見つめ合う。悦楽に喘ぎながらも、しっかりと目を合わせて互いを見つめる。

 紅の光と、緋色の光が交わる。
 
 言葉はない。

 けれども、その瞬間、姉妹はすべてを理解する。

 あまりにも当たり前で、最初から知っているような答えにたどり着く。

 自分は相手のことを愛し、相手は自分のことを愛してくれているのだ、と。

 短いその一瞬は確かに永遠だった。

 そうして、姉妹は息を切らしながらも、言葉を交わすように微笑み合った。

 レミリアのピストン運動がそろそろ最高潮に達するところだった。フランももうとっくに限界になっていた。いつ絶頂に達してもおかしくない。いっぱいの幸せで頭がおかしくなってしまいそうになりながら、必死に腰を振り続ける。
 フランの心には一つの願いが宿っていた。ぼんやりしかけた頭のなかで、まばゆい光を放つ炎のように、その望みが轟々と生きていた。フランもまたその烈火の存在を自覚していた。普段の自分なら、きっとたまらなく恥ずかしくて、その考えを改めようと思うのだろう。けれども、今の自分にはそんなものはどうでもよかった。恥じる心さえ振り切ってしまうような、その願いの存在のもつ力に驚きながらも、フランはその願いをもっていること自体が、とても誇らしく、嬉しかった。

 「んんっ、ふぁっ……ねえ、お姉さま……」

 荒い息のなかで、フランがレミリアに必死に伝えようとする。深い抱擁をしてくれていた姉が顔をあげて、フランのことを見つめる。涙でぬれた視界のなかでも、姉の顔はたまらなく綺麗だった。そんな綺麗で素敵なお姉さまにフランはお願いをする。

 「ふぅ……ひぃんっ……私の膣中に出して。お姉さまの温かいのを、私の膣中に出して……」

 その言葉を聞いて、レミリアが少し驚いたような顔をする。まあ、いつもの自分では決してこんなことは言わないだろうから。少しでもレミリアをびっくりさせられたことが、愉快で嬉しかった。これから言う言葉はもっとお姉さまを驚かせるかもしれないなあ、と思いながら、フランは喘ぎながらも言葉を紡いだ。

 「お姉さまの温かいのがたくさん欲しいの……お姉さまが私を愛してくれたという証拠を私の身体のなかに残してほしいの……」

 「ふぅ……はぁ……フラン……」

 レミリアが真面目な顔で妹の名を呼ぶ。その表情はフランの好きな姉の顔の一つだった。この顔をするときはいつも、自分のことを真剣に考えてくれるから。レミリアはきっと、フランの言葉の真意を掴もうとしているだろう。そして、そのことを理解したのだろう。また、フラン、とこれ以上なく優しい声で妹の名前を呼んでくれた。
 今のレミリアの陰茎は、マジックアイテムによって疑似的に作り出したものだ。それは本物そっくりにできていて、使用者と感覚をリンクし、精液まで出すことのできる、非常によくできたコピー品だったが、完全にオリジナル通りにはいかなかった。肉棒から吐き出される精液もまた、疑似的なものにすぎない。つまり、今のレミリアの出す精液には生殖能力がなかった。しょせん作り物なのか、オリジナルの卵子と結合して、新しい生命になることはできないのである。この薬は七曜の魔女の開発したものだったが、まだ現在の魔法技術では、オリジナルと同等の疑似精子は創造できないらしい。だから、どれほど、フランの膣内で射精しようとも、フランはレミリアの子供を宿すことはできなかった。


 「でも、」


 フランが喘ぎ喘ぎ言う。


 「ふぁ……、ひぁ……でも、私、お姉さまの赤ちゃん欲しいから……」

   
 永遠ではない幸福を少しでも、良い方向へともっていきたいから。

 幸福が変わりゆくものであっても、それをどこあで終わらすことなんて嫌だから。

 お姉さまとだったら、自分も永遠に変わっていくことを許すことができそうだから。

 そして、きっとお姉さまなら、私との永遠を大事にしてくれそうだから。

 そんなお姉さまの子供を産めたとしたら、きっと幸せに違いないから。


 フランも真心をこめて、レミリアにお願いする。たとえ、理性では魔法で作られた擬似精液に生殖能力がないと理解していても、諦めることなんて出来そうになかった。
 
 仮に今、作ることができなくても、証がほしかった。

 レミリアとの永遠の証。

 自分の幸福を永遠と肯定した、その証明。

 姉の愛を、身体の奥でじっくりと受け取りたい――

 それがフランにとっての最大の願いだった。

 「あんっ……ひぃん……だから、出して……お姉さまが私を愛してくれた証明を、私の身体に刻み込んで……! 私にお姉さまの赤ちゃんを産ませて……!」

 じっと妹の顔をみつめていたレミリアがいきなり強く腰を振った。ほとんどフルスピードだった状態から、さらに加速する。その突然の快感の襲撃に、フランは背を反らして喘ぐ。だが、かまうことなくレミリアは腰を振り続ける。

 「……わかったわ、フラン」

 レミリアはこれ以上なく真剣な顔をしていた。

 「……私がどれくらいフランのことを、よくその身体に教えてあげる。私の愛で、あなたをいっぱいにしてあげるわ」

 「……うんっ! ひゃあんっ、いひぃんっ……! 嬉しい、お姉さまっ! 嬉しいよう……!」

 レミリアの最高の返答にフランは無理をしながらも微笑む。ぼろぼろと目の縁にたまった涙がこぼれ出す。まるで宝石のように、その涙はフランの頬の上で輝いていた。

 姉妹の限界はすぐそこだった。こつんこつんと、レミリアの陰茎がフランの子宮口を強くノックする。姉の腰に回した脚まで使って腰を動かし、フランが自分の膣とレミリアの陰茎をこすり合わせる。一心不乱に二人は腰を振り続ける。もう完全にめちゃくちゃだった。だが、そんな体裁は姉妹にとってはどうでもいいことだった。今の二人には一つのことしか頭になかったのだから。

 やがて、フランの膣が小刻みに痙攣し始めた。絶頂寸前のサインだった。真っ赤な顔をしたフランが叫ぶように喘ぐ。

 「ひぃんっ! にゃあんっ! イくっ! イっちゃう! ああっ、ああああああああっ……!」

 レミリアもまたゴール間近だった。下半身に熱い塊が集まってくるのを感じる。ラストスパートに入りながら、フランに語りかける。

 「ふぅ、ふぅ……私ももうすぐよ……出すわよ、フラン、あなたのなかに。あなたに、私の全力の愛を出してあげる……好きなだけ受け取りなさい……!」

 「うんっ! 出して、お姉さま! 私のなかに全部出してぇっ! ……大好きっ! お姉さま大好きぃっ……!」

 「フランっ、フランっ――」

 「お姉さまぁっ! ふああああああああああああああああああ――!」

 レミリアの陰茎の一突きが、フランの子宮口を一際強く打つ。最後にふさわしい刺激を受けて、フランは絶頂に達した。
 
 前戯よりも激烈な絶頂感。下腹部の中心が弾けるような快楽がフランの全身を閃く。喉をのけぞらせ、背筋を三日月の形に曲げ、フランの身体全体が激しく痙攣した。姉に飛びつくように、背中に回した両腕と腰の両脚を使って、全身で抱きつく。視界が真っ白に暗転していくような激しいオルガスムを感じながら、フランが絶頂の嬌声をあげた。びくびくと震える膣が搾り取るようにレミリアの陰茎を刺激する。それによって、レミリアもまた強い絶頂を迎えた。
 膣の最奥で、白濁色の幸福が放たれた。レミリアの精液が、フランの小さな揺りかごに流し込まれる。絶頂にとろけた子宮も、収縮しながらレミリアの熱い精液を飲み込んでいく。魔法薬によって作られた大量の疑似精子が結合部から漏れ出して、妹の愛液と混じったどろどろが、シーツを濡らした。
 
 二人はつながったまま、相手の身体を抱きしめて快楽の大波に耐えた。ぎゅっとお互いを包み込むように、強く抱擁を交わした。しばらくして、絶頂の痙攣が終わる。フランの身体にかぶさっていたレミリアが、転がるようにしてフランの右横へと動く。姉妹は呆然とするように、数秒間、互いの顔を見つめ合う。そして、それがもはや自然であるかのように、深いキスを交わした。
 
 息が続くなったところで、二人は顔を離す。妹の前には慈愛の微笑を浮かべる姉の顔が、姉の前にはとろけたように微笑む妹の顔があった。
 
 「……お姉さまの温かいのが、私のおなかのなかにいっぱい……」

 フランは愛おしそうに自らの下腹に手を置きながら言う。

 「おなかのなかがすごく温かくて、気持ちいい……」

 言葉にできないほどの多幸感を感じる。子宮いっぱいに注がれた精液は、まさにレミリアの愛そのもののようだった。身体の奥から、無理やりにでも、姉が自分を愛していることを教え込まれるような、そんな幸福があった。膣口からあふれる精液の感触でさえ、愛おしかった。

 「……ありがとう、お姉さま」

 「私のわがままに付き合ってくれてありがとう」と、フランははにかむように微笑んで、レミリアにお礼を言う。お礼を言えることさえ嬉しい。本当に自分のお姉さまがこの人で良かった、と感じながら、フランはレミリアに感謝の言葉を伝えた。
 
 「……嬉しかったわ」

 レミリアが言う。右腕を伸ばし、フランの髪をなでる。心地よさそうな顔をするフラン。妹が可愛くてしょうがない姉は言葉を紡ぎ続ける。

 「フランが私の赤ちゃんが欲しいって言ってくれたのが、本当に嬉しかった。たとえ、それが不可能なことであっても、そう言ってくれるフランが嬉しかった」

 「愛してるわ、フラン」と言って、レミリアがフランの頬をくすぐる。フランは姉のその手に自分の左手を愛しげに重ねた。そして、フランは自分の下腹部を愛おしそうに撫でた。姉の精液の温かさを感じながら、うつむく――やっぱり赤ちゃんなんて不可能なのかな、と思うと、少しだけ切ない気分になった。

 「そんな顔しないで、フラン」

 妹の心配を読み取ったかのようにレミリアが言う。もしかしたら、また表情に出ていたのかもしれないと、フランは心配になって顔をあげた。けれども、レミリアにはそんなことはどうでもいいようで、言葉の先を続けた。

 「確かに、今では無理かもしれない。でも、もしかしたら将来、子供が作れるようになる薬ができるかもしれない。そうすれば、ちゃんと子供ができるかもしれない」

 レミリアはにっこりと笑って、フランに問う。
 
 「変化していく幸福を、確実に良い幸福に変えるための方法があるんだけど、何か知ってるかしら、フラン?」

 きょとんとするフラン。確かに自分は、幸福は消えていくだけじゃなくて、より良い幸福になる可能性があるかもしれないと言った。でも、それを実際に実現する方法をお姉さまは知っているのだろうか。不思議そうな顔をしているフランの額に、レミリアは自分のそれをこつんとぶつけた。

 「それはね、『諦めない』ということなのよ」

 「…………」

 「どんな幸福も変わらずにはいられない。でも、そうだからといって諦めちゃいけない。諦めて放っておいたら、どんどん悪い方向に変わっていって、本当に消えてしまうから。幸福は見放された瞬間になくなってしまうものだから。幸福が変わり続けるものであることを忘れてはいけない。でも、それに抗うことが意味のないことだとも思ってはいけない。本当にその幸福を大事に思うなら、抗わなきゃいけないし、それに、抗う力も、心も、ちゃんともっているはずよ」

 レミリアがくすりと笑う。レミリアの言葉を聞いているうちに、フランは自分の心から全部の暗いものが消えていくのを感じた。

 「それに、フランはちゃんとそれと戦ってこれたじゃない」

 そういって、レミリアがフランから少しだけ目を離し、地下室を見回した。

 「フランがこの地下室から出られたのも、弾幕ごっこで友達をつくるようになれたのも、外に出られるようになったのも、私とこうして愛し合えるようになったのも、全部、フランが諦めず、希望を捨てずに戦ってきたからよ」

 フランは黙って、姉の言葉を聞く。お姉さまは本当にすごい、と思っていた。本当にこの人は、私の永遠なんだ、と感じざるを得なかった。
 レミリアがフランを抱き寄せる。温かい胸にフランは顔をうずめた。フランもまたレミリアの背中に腕を回して、抱きしめた。

 「だから、希望を捨てないでいましょう、フラン。確かに難しいことかもしれないけど、心の片隅にちょっとの希望を置いて。その希望を大事にとっておきましょう」

 「私もそばにいてあげるから」とフランの額にキスするレミリア。その言葉通り、今までずっとフランのそばにいてくれた姉が微笑んでいた。フランが困難に打ち勝つのを助け、一つ一つ幸せになっていく自分を確かに見てくれていた姉は素敵な笑顔をしていた。
 
 ……すると、どうしてか、フランは腹が立ってくるのを感じた。……ここまでくるとずるい、とフランは思った。お姉さまは私の悩みを次々解決しちゃうんだもの。こんなにすごくて格好いいなんて、いくらなんでもずるい、と。

 本当にこのお姉さまといれば大丈夫なんだ、何であんなことで悩んでいたんだろう、とフランはため息をついた。

 幸せな気持ちで、再びレミリアの胸に額をこすりつける。そして、言った。

 「……ねえ、お姉さま」

 「何かしら、フラン?」
 
 「私、お姉さまのこと大好き」

 「あらまあ。私もフランのこと愛してるわ」

 「……ずっと、私のそばにいてね」

 「お易い御用よ」

 「永遠にだよ」

 「ええ、永遠にね」

 姉の顔を見ずに、会話を続ける。けれども、フランにはレミリアが笑っているのがわかった。それだけで幸せな気持ちになって、フランもまた姉に見えないように微笑む。でも、この姉のことだから、そのことすら筒抜けだろう。まったく、こんなお姉さまではたまらない、まったく逃げられやしないとフランは思う。そして、そう思いながら、幸せに笑わざるをえない妹だった。

 二人だけの永遠のなかで、姉妹は幸せそうにお互いを抱きしめていた。

 

 
投稿4作目です。
稚拙な文章ですが、楽しんでいただけたら幸いです。

お久しぶりです。無在です。本当にご無沙汰しております。
リアルが非常に忙しく、SSの書けない日々が続いておりました。これからはこの忙しさが数倍に加速するというお話。マジ勘弁と思いますが、まあ、生きていくしかないのですね。それにしてもブランクは空けるもんじゃないですね。SS書くのってこんなに難しかったっけという気分になりました。自分の求める文章のレベルが上がっているのなら問題ないのですが、そうでもないのが悲しいです……

さて、記憶というものは本当に勝手なものです、主に記憶する人間自身が。過去なんてしょせん現在からの投影でしかないのですからね。現在の状況によって変わるものです。昔散々遊んでおいていい思いをして今になって後悔する人間もいますし、つらかった経験が今になってはいい思い出と呼ばれて回想されることもあります。しょせん、今の自分次第なのですが、でも過去にあったことは確かにそのときにあったことなのでしょう。人間という自分勝手な生き物が忘れているだけで、過去というものはちゃんとそこにいて、私たちを見ているのではないかと思ったりしております。この話は、過去のそのときのことを忘れずに生きていこうとする、そんな姉妹の話です。

というか今さらですが、この姉妹、やばいですね、言ってることがw お嬢様も妹様も完全に相手にぞっこんです。まー、でも、恋という気持ちほどどうにもならないものはないですね。この二人の場合は、それにプラスして、普通じゃありえない強固な経験と絆があるために、それが悪化しているわけですが。もう、こっちのことは放っておいて、勝手に二人でいちゃいちゃしてください、という感じです。スカーレット姉妹に幸あれ。

以上の駄文をもって、筆をおかせていただきます。

※ 誤字・脱字・表現など随時修正中です。
※ 申し訳ありませんが、今回、リアルの忙しさが原因で、作者のコメントレスができるかどうかわかりません。可能な限りしたいと思うのですが、できなかったときは何卒ご了承のほどよろしくお願いします。

※ 3/20 全般的にちょっと酷かったので、加筆修正しました。
無在
hitokiri.humikata@gmail.com
コメント




1.名前が無い程度の能力削除
久しぶりに貴方の名前を見て拝読さしてもらいました。私は夜伽話で色々な話を見ましたが、無在さんのレミリアとフランがお気に入りです。意地悪だけど妹を愛しているレミリアと幸福に溺れるのを恐がりながら姉を愛してるフランがとても良かったです。        スカーレット姉妹に幸あれ。                  長文、失礼しましたm(_ _)m
2.名前が無い程度の能力削除
久しぶりに無在さんの名前を見つけたので拝読さして頂きました。私は夜伽話で色々な作品を見ましたが、無在さんのレミリアとフランがお気に入りです。意地悪だけど妹を愛しているレミリアと幸福に溺れるのを恐がりながらも姉を愛しているフランがとても良かったです。スカーレット姉妹に幸あれ。                  長文、失礼しましたm(_ _)m
3.名前が無い程度の能力削除
姉妹百合は至高だという事を再認識させられました
ヒャッホーイ! れみふらさいこーう!
4.名前が無い程度の能力削除
レミフラもいいものですね
5.無在削除
≫1様 ありがとうございます。ひねくれ者の姉と臆病ながら優しい妹に幸福のあらんことを
≫2様 1様と同じ方のでしょうか……。何にせよありがとうございます。
≫3様 私も温かい姉妹百合は最高だと思います。
≫4様 そういってくださるとこのSSを書いた甲斐があったとしみじみ感じます。レミフラは良いものです
6.喉飴削除
なんて濃い……っ!
無在さんのレミフラ、というかレミフラ自体割と久し振りに見た気がします。
やっぱり良いですねぇ。
7.無在削除
>>喉飴様
 ありがとうございます。
 私もレミフラがもっと増えればいいと思っていますw
8.名前が無い程度の能力削除
無在さんの作品が一番好きです
状況が落ち着いたらまた貴方の作品が読みたい
応援してます。