真・東方夜伽話

ラヴミーテンダーモアザンプリーズ

2011/08/22 15:44:09
最終更新
サイズ
34.94KB
閲覧数
2411

分類タグ

ラヴミーテンダーモアザンプリーズ

七星
「はぁ~あ……」

青空を眺めて、溜め息。川の淵の大岩に腰掛けて、足をぶらぶらさせるは、カッパのQちゃん、もとい、河城にとり。
「神社でお呼ばれごとがあるから、またね」
と、雛が早々に引きあげてしまって、川のほとりに取り残された格好だ。

ひとの世には、雛まつり、という風習があると言う。女の子の成長を祝って桃の花を飾り、雛人形を供えて甘酒を飲むのだ。その起源は、厄払いに紙の人形を流したこと。
言うまでもなく、雛が雛として存在する意義をもたらした行事であり、だから山の神社は雛を呼んだのだろう。今頃はきっとにぎやかに、宴が催されているはずだ。

今日は、にとりも魔理沙と午後から約束がある。それまでの時間にちょっと会えればいいなぁ、くらいには思って来てみたけど、顔を合わせただけでバイバイになるとは思わなくて、あまりの肩透かしにがっかりした。
当たり前のように毎日会った後だと、それでは何だか物足りない。
「なんか…さみしいっぽい…」
寂しいのは、会った時間が少ないからだけではない。
ひょんなことから雛と甘い関係になったはいいが、実はまだ、

「雛から、きちんと『好きだ』ーって、言ってもらったことがないんだよねぇ……」

雛は、抱きしめたら抱きしめ返してくれるし、にとりがキスをしても、服の中に手を入れても、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら受け入れてくれる。
最初のうちはそれだけで幸せで、これ以上何も要らないって思っていたのだけど。

「我ながら、欲張りになるもんだなあ」

雛からも求めて欲しいだなんて、贅沢な望みだって分かっている。けど、一方通行は切なくて、ひとりの時間、こうしてもやもやと考えこんでしまう。
いっそのこと、発情期みたいに肉欲で手一杯になっていたほうがよかったかもしれない。自分で自分を追い込んでいるのが分かるから、憂鬱の雲は晴れるどころか厚みを増して、今にも雨が降りそうだ。

川に流れてみようか。そうしたら雛は自分を回収しに来てくれるだろうか。
そんな益体もないことを考えて、また、大きく息を吐き出した。


*-*-*-*-*


「っというわけでぇー!河城にとりさんと目下ラブラブ満喫中のー!鍵山雛さんにイーンタビュゥウウ!やっぱり河童ってエロガッパというだけあって、床での作法は熱心だと思われますが、そこのところどうなんでしょうか!?」
「えっ、え、ええっ!?」
ペンをマイクに見立てて、射命丸文がその先を雛の口元に突き出す。
雛は酒の所為だけではなく、真っ赤になって俯いた。
「そんな、こと訊かれても」
「お願いしますよぉ雛さぁあん、みんな知りたがってるんですよう!」
「あの、困ります、文さんお願い、お水、そうだお水飲みましょう、ねっ」
「……今更水なんか飲めるかァーーーーーーーーー!」
「きゃあああああああ!?」

黒い神風は荒れていた。天狗はなべて酒には強いはずだったが、今日に限って文はほとんど泥酔といってもいい状態だった。
「あー、八つ当たってんねぇ。あの犬コロ天狗と上手くいってないんだろか」
「八坂様、しぃっ」
「根は乙女なのに態度が俺様だからねぇ~」
「洩矢様まで……」
奥に並ぶ二柱は、さながらお内裏様とお雛様。早苗は甲斐甲斐しく酒を注いで回っているが、そうでもしないと自分も飲まされて酷い目に遭うからだ。
「それにしても、噂は早いものですね。にとりさんと雛さんがそういう関係だって、もう山で知らない人はいないんじゃないでしょうか」
そういう早苗だって、最初はものすごい食いつきっぷりだったくせに。神奈子は思い返して、薄く微笑んだ。
「人ならぬ者の年月は長いからね。娯楽に飢えてるのさ」
「そうそう。かくいう私たちだって、相当からかわれてきたもんだしね」
諏訪子も、思い出し笑いに襲われたらしい。
「ねー」
「ネー」
二柱は顔を見合わせると、くすくすと笑い声を重ねた。
はいはい、と早苗は銚子を傾ける。なみなみと満たされた杯を、一気に飲み下すテンポの良さ。交互に酒を呷る様は、なんとなく、餅つきの呼吸に似ていた。
三人のまなざしが結ばれる先では、雛が涙を浮かべて助けを求める目線を送っていた。
面白がって見ていられるのもここまでのようだ。もう少し放っておけば、文の暴走がどこまでになることか。
「……しょうがない、ちぃっと行ってくるよ」
「あいあい。いってらっしゃい、かなちゃん」
神奈子はゆるりと立ち上がると、暴風の渦の中へ飛び込んでいった。後姿を見守る諏訪子の顔ときたらどうだろう、ほれぼれが惜しげもなく漏れている。
その顔を、盗み見て、早苗は諏訪子の杯に酒を注いだ。

「だから、にとりが、好きって、好きになってごめんって、言ってくれて、でもすごく泣いてて、好きになってごめんなんて言わないでって、言って」
「くぁあああぁ!『好きになってごめん』ですって!甘酸っぱい!甘酸っぱいです!今度の見出しはこれで決まりですぅううっ!」
「調子に乗るな、記事にしたら二人が困るだろうが。でー、雛、おまえさんも、にとりのこと、好きなんだろ?」
悶える文を押し分けて、神奈子は空の杯を掲げる。雛は一升瓶をよいしょと持ちあげると、危なっかしい手つきで注ぎながら。
「…………」
「どした?」
てっきり、好きだとか恋しいだとかそういう返事が聞けるかと思ったら、雛はただ、ほうっと溜め息をついただけだった。
「好き、じゃないのかい?すっかり噂になってるけどね。おまえさんとにとりの逢引のこととか」
「それは、いいんです。けど、好きか、って訊かれたら……私、よく分からなくて」
「分からない、ですか?」
文もきょとんとしている。雛の一升瓶を奪う勢いの手を、神奈子がばちんと止めた。

「前の、友達だったときと何が違うのか、自分でも分からないの。お喋りして、キスして、触れ合っても、ドキドキはするけど」
にとりが自分を求めるような気持ちで、雛はにとりを求めることが出来ない。
彼女はそれでもいいよと笑っているけど、振り返る一瞬前、表情を作るのが遅れて、寂しげに尖った唇が垣間見える。
以前は満面の、嬉しくて堪らないといった笑顔が多かったのに、今は切なさが滲んだ輪郭の鈍い微笑みばかり。
「好きって、言ってあげられたらいいんですけど……」
キライじゃない。決して、嫌いじゃないし、イヤでもない。
でも、にとりが溢れるほどに注いでくれる気持ちに、同じものを返せないのが、悲しい。
……そんな暗い横顔に業を煮やしたか、黒い神風が膝立ちでにじりよる。
「…………雛さん。飲んで」
「えっ」
「いーから飲め!」
「えっえっ」
雛の肩を抱き、文は酒がなみなみ入ったコップを押し付けた。
「飲んだら面倒くさいこと何も考えられなくなってすっ飛んでしまいますよ!そしたら『スキ』が見えるかもしれないでしょぉ!」
「えっえっえっ」
助けを求めて神奈子を見るが、
「それも一理あるなぁ。お前さんはちょっと考え過ぎってるとこがあるような気がするよ」
助けてくれる気はないらしい。
「…あの~…」
ぐっと宛がわれたコップの縁が痛い。飲まなきゃ離してくれなさそうなので、とりあえず受け取って、口を付けた。
ちびちびと啜ると、辛みのあとに米の甘味が広がる。さほど強くないが香りがいい。
飲んでいる間は口がふさがっているので、聞きに回ることができる。自分を挟む天狗と神の視線を感じながら、雛は酒を啜った。
そんな雛を尻目に、文はまた思い出しぷんすかに突入していた。
「やーでもにとりさんの気持ち分かるー分かるなー。だいたいさー椛はツンデレなんですよ、ツン・デレ。わかりますぅ?
ツンデレですからツンあってのデレですよ私とてそのくらい分かります、しかし椛はツンばーっかり!ツン、ツン、ツン、どこまでツンなんですかーって!しかもデレ部分滅多に見せなくてマジへこむんですけどぉ~。
いっかい、私のことどう思ってますかって訊いたら、何て言ったと思いますか!『面倒な上司・兼・厄介な恋人気どり』と来たもんだァ!うわぁああん椛のバカー!もう知らないキライ嫌いきらーい!
……だから雛さん、飲んで!さぁ飲んで!死ぬほど飲んで!」
「だから、が繋がってないだろうに」
神奈子が絡み酒の文を窘めるが、初々しい二人の様子を目の当たりにしたのが余程堪えたと見えて、文の暴走は収まる様子がない。
「どーせ、どーせ、私ばっかり好きなんですよぉ!だからせめて雛さんには自分の気持ちに気付いてほぢいですっ!好きって、言ってあげてくださいよぉ、ふぁいと!ふぁいと!おー!」
「はーいはいはい待った待ったそこまで~」
見かねたレフェリーのタオルが投げ込まれる。もぎ離された文は、うにゃ~と半泣きでうなだれて尚、ぶつぶつと口の中で椛に対する文句を呟いている。神奈子は文をポイと脇に置くと、半分ほどが空になった雛のグラスに酒を追加した。
「ひとつ、いいこと教えてあげよう」
「はい」
飲んで、と促すと、雛も素直にグラスを傾ける。
「――女ってね。どんなに勢いに負けても、どれだけ好きだの言われても、結局相手のことを好きじゃなかったら、体がイヤって言うんだよ」
「……はい」
「こいつじゃない、こいつに自分の体を任せたくない。そう思ったら絶対、体は開かれない。そういうもんさ。お前さんが、心の中でいろいろ考えてしまうのも分かるよ。そりゃ、いっぱい考えた方がいい。だけどね、雛」
神奈子に『雛』と呼ばれるのは、変な気分だ。もやりと怖く、うすらと嬉しい。微妙な感覚を押し流そうと、雛は酒を流し込む。
「お前さんはもう、答えをちゃんと持ってるように見えるけどねぇ?」
「答え、ですか」
注がれるままに酒が進む。もっと神奈子の言葉が欲しい。自分の中の迷いの渦を止める何かが欲しい。ああ、この酒、すごく美味しい――
「それがまだ分からないなら、そうだな、……にとりに、自分から触れてみな。言われるの、されるの、待ってるだけじゃなくて」
「じぶんから……ふれる……」
「髪撫でるでも、手を繋ぐでも、何でもいいよ。それくらいなら出来るでしょう」
「…………」
「なぁ、雛。……ひな?おいー雛ちゃーんヒナヒナー?…………」
「どしたの、かなちゃん?」
いつのまにか、神奈子の背後に諏訪子が来ていた。様子が変わったのを見て、覗きに来たのだろう。
「……コレ」
神奈子が指差した先には、グラスを両手で握ったまま、背中を丸めて寝ている雛の姿があった。
「ありゃりゃ。おねむかぁ」
「早苗ー。悪いけど、ひとつ床の用意をしてやっておくれ。厄神様がお休みだわー」
遠くで、早苗のハーイが聞こえる。諏訪子は、神奈子の隣にちょこんと座ると、空いたグラスや瓶を寄せた。
「私もかなちゃんに触ってほしーなー?」
「ったく、どっから聞いてたのよ」
エヘヘと笑う諏訪子の頭を、ぽんぽんと撫でた。
「そっちの天狗はもういいの?」
「あー、コレね。なんか今日は本当に収拾付かない悪い酒だったみたいだから、そこらへんの天狗に連絡して迎えに来て貰おう」
「そだねー」


「……あらら」

床の準備を済ませた早苗が部屋に入ろうとすると、諏訪子が神奈子に甘えていた。頭を撫でられて、ご満悦のようだ。
5つをゆっくり数えてから、何も見てないフリで部屋に入った。
「準備が出来ました、八坂様」
神奈子は酔いも見せずに立ち上がると、ぐったりした雛をひょいと抱え上げる。
「……何、ニヤニヤしてるんですか洩矢様?」
早苗は一応ツッコんだ。
「なーんでもな~い~」
諏訪子も一応とぼけてくれた。
明日は赤飯かなー。益体もないことを考えながら、早苗は寄せてあったグラスを腕に抱える仕事にかかった。




夜更けすぎ、喉が渇いて目が覚めた。慣れない布団の感触に、一瞬、どこにいるのかわからなくなる。
(ああ、そっか。お酒飲んで、寝ちゃったんだっけ…)
思い当ってやっと自分が自分であることに自信が持てた。指を伸ばし、つま先を伸ばし、体の感触を確かめながら、布団のぬくもりの中で悶える。
流石に誰も起きてないだろう。水は分かるところにあるだろうか。
そうっと起きて、部屋を出ると、意外にも玄関先が賑やかであった。
大変申し訳ありませんご迷惑をおかけしました、大天狗様にもきちんと報告してきつく言って聞かせますから。
卑屈なほどに頭を下げる、あの毛並み、もとい、姿は。
「……椛さん?」
雛の声に、その場にいた全員が一斉に振り向いた。早苗に諏訪子、神奈子もいる。
椛は背中に黒いものを抱えていた。据わりが悪いのか椛がそれを揺すりあげると、うにゃ~っと呻いて腕を首に回した。どうやら文のようだ、が、ひどく酔い潰れて……いや、眠って?
「本当に世話が焼ける。厄神様にも随分なご迷惑をおかけしたようで、代わってお詫び申し上げます」
表情に、申し訳なさと、疲労とが、入り混じっていた。
「いいえ。私は別に、何ともありませんから、気にしないでください。それから、あまり叱らないであげてくださいね。私のお祭りにわざわざ来て下さったんです、お礼を言いたいくらいです」
「ありがとうございます。申し訳ありません。面目ない」
椛は深々と礼をすると、ではこれで、と踵を返した。
やわらかに骨の抜けた文を、無造作に、しかし、しっかりと、背に負って。
「が、がんばってくださいね!」
雛は思わずそう言った。掛けた相手は、椛と、文の両方だ。
頷くだけで、椛は姿を消した。一陣のつむじ風がひらりと消えるまで見送ると、雛もなんだか無性に帰りたくなった。
「八坂様、洩矢様、お世話になりました。お布団、ありがとうございます」
「おや。あんたも帰るつもりかい。折角だから一晩くらい泊まっていけばいいのに」
「早苗の朝ごはん、なかなかのもんだよ?」
二柱はやんわりと留めるが、あくまで儀礼的なやりとり、というのはお互いに分かっている。
「今日のぶんだけ、厄も溜まっているでしょうから、その分、明日頑張らないと」
「そっか。じゃあまた、飲みに来てね」
諏訪子が、早苗が、左右に分かれてモーセ。奇跡の道をおずおずと抜けて、靴を履く。
去り際、神奈子が手を振りながら、囁いた。
「ガンバりなさいな」
そのガンバれは、自分がさっき天狗に向けた頑張れと同じ意味だ。気付くと気恥ずかしくて、逃げるように山を降りた。

「いやー可愛いねー初々しいねー。…諏訪子にもあんな時代があったけどねー」
「はいはい」「ハイハイ」
「うわ!あしらわれた!?」



*-*-*-*-*


一度寝たお陰か、再び朝に目覚めたとき、体は軽かった。自分の持つ力がいつになく充実しているのが分かる。雛ははりきっていつもの滝壺へ向かい、いつものようにくるくると厄を集め始めた。
雛まつりのおこないとして流されてきたたくさんの紙人形と、それらに乗ってきた厄の淀み。引きずりこまれそうなほどの深い濁りは、雛によってみるみるうちに浄化されていく。
ターンとステップを繰り返すうちに、雛は次第に酔ったような気分になってきた。
めくるめくリズム、満ちる力、いちどクルリと回るだけで、腹の底が熱くなる。
頬を上気しながら足を止めると、まだ陽は高かった。
もう少ししたら、にとりも遊びにくる頃になる。何でだろう、今日はにとりにすごく会いたくてたまらない。
「にとり、早く来ないかしら」
川の上流を見つめながら待っていたとき、ふと違和感を感じた。
「……なに?」
急激に皮膚が張り詰め、神経が尖る。厄は厄でも『厄災』と言えるほどの大きな塊が、近づいてくるのが分かる。川の流れに乗って揺れながら、こちらへ向かっている。
もう一仕事。それも、とびきり大変そうなのが。雛は慌てて水辺に駆け寄ると、塊がやってくるのを待ち受けた。
「――ヒナぁ」
にとりの声が聞こえる。こんなときに。
「ダメ、今来ちゃダメよ、にとり!」
自分ならともかく、にとりを近づけるのはあまりに危険だった。これだけの厄になると、人間なら二度と立てないほどの大怪我か、死ぬまで寝付くほどの病気を得るレベル。妖怪の身だとしても、ただでは済まない。
だが、声は――
「ひなぁ……!」
声の源を探して視線を巡らせ、行き当たった時、雛は悲鳴を上げた。
「にとり!」
力なく川面に浮いて流れてくる、にとりが紙人形。そこには、粘つくほどの厄が乗っかって、にとりの胸を押し潰そうとしているように見える。
一晩でこんなに厄が溜まるなんてと驚きながら、雛は踊る、回る回る回る。
「にとり、しっかりして。今、私が厄を」
「……もういいよ、雛。無理しないで」
「無理じゃない、私なら出来る!」
「好きでもないのに、無理しないで」
「え?」
にとりの声は濁っていた。まるで雨上がりの早瀬のように、光を飲みこむ暗さを秘めている。

「雛は、私が可哀相だから、応えてくれただけだもんね。それだけで、私、ちゃんと飲みこまなきゃいけなかった。
でも、好きになって、傍にいたら、もっともっと好きになるの。もっともっと、欲しくなるの。
このままじゃ、私、雛を壊しちゃう。だからもういいの。もう、いいから」

「何言ってるの?」
厄に取り憑かれてのうわ言にしか思えなかった。確かに、雛はにとりにきちんと『好きだ』と言ったことはないが、拒んだり躊躇ったりしたことは一度もなかったはずだ。
このままじゃ厄に呑まれてにとりが流される。雛は全力で回った。それでもまだ及ばない。だったら。
「これで、どうかしら!」
滝壺に渦を成し、その中心で渦とは反対回りの雛が、連続32回転を決める。回転は次第に早まり、次第にスピンの様相に移り変わっていく。
にとりに張り付いていた厄は、意地汚く指先や髪の中に粒子を残そうとしていたが、雛は容赦せず、残らず厄を巻きこんだ。







空は優しく蒼かった。吹きわたる風は柔らかく、うらうらと間延びしている。
久しぶりに全開で厄を集めた。雛は、疲れを感じながらも、にとりを引きあげ、横たえた。岩場に頭が痛そうなので、膝に乗せる。
しばらくはにとりも静かだったが、やがて、ぽつぽつと事情を語りだした。

「魔理沙がね、面白いものを持ってきてくれたんだ」
「魔理沙が?」


 『ナプキン』っていう、外の世界の女が、それで月のものを処理するんだって道具。
 ふわふわのはんぺんみたいなのが、広げると手のひらくらいの大きさになるの。それを下着に着けて、股に当ててモノを吸わせるみたい。
 こっちって、綿とか羽毛とかに吸わせて、土に埋めて始末してるじゃない。ああ、これは便利なものがあるんだなーって思ったの。
 魔理沙はそれを魔法の実験で使いたかったんだって。でも、私が興味を示したら、少し分けてくれた。
 でさ、……月のものって、おんなの体から出る厄だって言うでしょ。だったら、この『ナプキン』って、厄を吸うのに使えるんじゃないかと思って、即席で機械を作ってやってみたんだよね。
 最初は上手くいってたの。厄はどんどん吸い取られて、『ナプキン』ってのに収まっていった。でも、だんだん、足りなくて。吸いきれなくなって。溜まった厄をどうしたらいいのかわからなくて、どうしよ、どうしよって、考えてるうちに、……機械が暴走して、ナプキンも粉々になって、それで、

「こうなっちゃったの」
「にとり……この、雛まつりの、ただでさえ厄が多いときに……」
全く河童の発想力は大したものだ。そして、考えついたものを即座に組みあげることが出来るにとりの実力も。
だが、厄の扱いを心得ていないものが不用意に手を出せば、やはり危ない。おそらく時期も悪かった。普段程度の厄であれば、もしかしたら何事もなかったかもしれない。
「でも、にとりが無事でよかった」
雛の手は、泣きっぱなしのにとりを拭うのにフル活用だ。膝の上の重みがなんとも温かく、心地よくて、そういえばこういう主導的な立場でにとりにふれたことは初めてだと気付く。
髪の毛も、耳たぶも、好き放題だ。これはなかなか楽しかった。
「雛。もしかして、遊んでる?」
「うふふ」
「……っちぇー…」
「ほんとによかった。こうやってにとりに触っていられるんだもの。ほっぺ、やわらかいのね。ぷにぷに」
丸い頬も、すべすべした肌も、柔らかい水晶色の髪も。にとりがにとりである全てのものが、いとおしい。

『自分から触れてみな。言われるの、されるの、待ってるだけじゃなくて』

不意に神奈子の言葉が蘇る。聞いたときは、自分から触れるなんて、できっこないと思ったのに、今なら出来る。何でも、出来る。
ほっぺたを捏ねくり回していた手を、そっと滑らせて、鎖骨へ、そして、その先へ。仰向けのにとりの、ふんわりとした膨らみまで、届く。
「えっと、雛?」
「こっちも、やわらかい」
「ひ、っ、!?」
服越しのふにゃふにゃした感触は、癖になりそうだ。いつも、にとりがしてくるように、円を描くように撫でる。
「ひゃふっ、うわぁ、あ」
にとりは反射的に手首を掴んでとどめようとした。一応、手の動きは止まったものの、覗き込んでくる雛と目が合うと、たちまち力が抜けてしまって、手の動きを抑制していられない。
「う、うそ、ひな、なん、っ」
あっと言う間に茹で河童。するときはあんなに積極的だったのに、される側に回った途端に、妙に弱々しくて、かわいい。
服越しにも分かる、尖った場所を、人差し指でよしよしと行き来した。痺れたように震えてはまた脱力する。膝はきつく閉じられているが、もじもじと忙しなく蠢いている。
「やあん、ひなぁ」
甘えるように声を上げる。知らずに背中が浮いて、手を胸に押し付ける格好になって。
エロガッパ、なんて、からかう気にもなれなかった。まるで溺れているみたい。必死になって浮きあがろうとして、浮きすぎてもがいている。
「にとり。目を閉じて」
「ふぁ?」
「お願い。目をつぶってて」
「や、やだ、何するの、雛」
戸惑いながらも言われた通りに目を閉じる。雛は、そうっとにとりの頭を下ろすと、脇から覆い被さった。両手で頭を抱え込んで、髪の付け根をくしゃくしゃと逆立てる。ぎゅっと、近寄る距離。
喘ぐまいとわななく唇に、弾むように重ねてみた。
「うきゅ!?」
にとりの足がびくんと突っ張って宙を蹴った。
力を抜いて。息を吹き込みながら角度を探った。隙間なく唇が張り付く絶妙の場所を見つけると、やがてにとりはぐてりと弛緩した。
されているときは、こんなににとりが柔らかいなんて思ったことがなかった。ふっくらした唇は、すがしい水の味がする。弾力は雛を拒まない。

(ああ、こんなに、にとりって)

閉じた瞼を震わせている、大事な大事なお友達。いや、違う。友達じゃない。彼女から好きだと言われたら嬉しいし、触れられたら幸せになる。……そして、自分から触れたら、もっと!
啄むようなキスを繰り返しながら体のかたちを確かめ回る。
今にも、燃え始めそうなくらい熱くなっている、その輪郭を。
「ひ、……な?」
「ダメよ、目を開けちゃ」
鼻先を頬に埋めるほどの勢いで深く。最初は伺うように、舌を忍ばせていった。小さく揃った歯に触れる。隙間が開いたところに滑り込むと、出迎えた舌が雛の唇を舐めた。呼吸を貪りあい、次第に大胆に舌を絡める。息をする間も惜しい。離れずにいたいのに、もっと食べたい場所があるからそうも言ってられない。
頭を抱えるのをやめ、肩から胸へと降りていった。
あるかないかくらいの膨らみを、丁寧に掬い寄せて、手の中に収める。
心臓が今にも飛び出してきそうだ。大丈夫だから安心して、伝えたくて手を緩めたら、物足りなさそうな喘ぎが零れた。
服が邪魔。じれったさが我慢出来ない。そんな声がずうっと漏れている。
「…にとり……」
嫌がらないでと祈りながら、ワンピースの裾に手を掛けた。するりと露わになった白い太ももが、光を放っているかのように眩しい。
片手で揉み、口づけを続けながら、更に布地を上へ引きあげる。可愛らしいショーツは若葉色、くびれの少ない腰回り、更にその先に――
「はずかしぃ、よぉ…!」
薄く肉が乗った胸元が、汗を浮かべて雛を待っていた。
直の手触りとぬくもりを手に入れる。まだこぢんまりとした桃色の粒が、可愛らしい。
もう一度、手のひらに包みこんで収めた。小さなキスを落としながら、力を込めたり緩めたり。漏れる喘ぎが、雛の口腔に直接注がれる。
「にとり」
「ひな…っ」
吐息越しに呼び交わすだけで切なくなってくる。呼べば呼ぶほど、好きになっていく。
にとりは、胸を揉む手に、次第にじれったそうに体を擦りつけてきた。
「……どうかしたの?」
「わたし、ひなに、さわられ、て」
「うん」
「ひなが、さわって」
「うん」
「どうしよ。とけそう。ながれちゃう」
「溶けちゃって、いいのよ」
雛の囁きににとりが震えあがった。
「全部、集めてあげる。そしたらまた、にとりが溶けちゃうまで、触っちゃうわ」
「うぅ…あぁあっ…!」
にとりの震えが大きく、荒くなる。
「うぁあっ、ひな、ひな、すき、すき!もっと、すきになるよ、ひな!」
「……うん」
頷いて、雛は体をずらし、唇を胸の上に降らせた。まるい場所にも、つんとなった場所にも、雨あられとなって波紋を広げていく。

(そしたら、私も、もっと、にとりのこと、好きになっていくのね)

雛の施すもの全てに、にとりは過敏なほど反応した。高い悲鳴が空に吸い込まれていく。迸る滝の、轟音さえも乗り越える。
もっとにとりに潜りたくて、粒に吸いついた。敏感な頂上を、交互に舐めては離す。
「ひなっ、ひな、っ、きゃっ、ひゃうんっ、やぁっ!ひなぁ、ひなあぁっ、雛、ぁっ」
肩を掴む指が食い込む。雛はそれを外さずに、手を背中側に沿って滑らせていった。
「うそみたい、ひなが、おっぱい、わたしのっ、舐めてる、ちょんちょんって、舌のさきっぽで、いじめるぅっ!」
応えるように、ちょんちょんを繰り返した。
「あっだめえっ、おっぱいだめっ、そんな、やらしくされたら、ぐちょぐちょ、なっちゃうよぉ」
にとりの悲鳴に、いやらしい言葉が増えて来た。箍がすっかり外れてしまったのだと思うと、嬉しい。
「ひなに、されちゃううっ!おっぱいで、イカされて…、イキっぱなしのぉ、えっちなおつゆ、いっぱいの、エロいおくちに、指、挿入られちゃう、ようっ…!」
「まだ、触ってないでしょう?」
雛の手はやっとウェストまで降りて来たところだ。細い腰をぬくめながら、これから腰を撫でようとしていたのに、にとりはもう期待が疼いて仕方ないらしい。派手に空を蹴っては、誘うように恥骨を晒して見せる。
密着する体の下で暴れて、どれほど焦がれているかを訴える。
「心配しないで。ちゃんと、するから。でも、もうちょっと我慢してね。にとりを、もっと見ていたいの」
「ひなぁあっ」
「……かわいい」
「ぅあ~…あぁあ~!」
舌をべろりと押し付けて、8の字を描く。交差する場所にある乳首は、ねぶられるごと左右に揺れ、埋まり、にとりの体に甘い痺れを走らせていった。
「ふぁぁぁああぁんっ!おっぱい、ッ、はげしいよぉ、こんな、えっちにされたら、ホントぉに、おっぱいだけでイッちゃうっ!」
もう片方に移るときには、にとりはほとんど泣き叫んでいた。
「焦らさないでえ、おね、おねが、ひな、イク、だめ、ばかになっちゃ」
「……にとり」
ちゅっと水音を立てて離すと、雛はもう一度、にとりに口づける。にとりは精一杯唇を尖らせて迎えるが、表情はとっくに蕩け切っていて、涙とよだれでぐちゃぐちゃだった。
汗ばんで、ぺしょりとなった生え際から、指を梳きいれた。にとりから、ほう、とまるい息が漏れる。
「にとりがほしがるみたいに、あげられないかも、しれないけど」
落ち着かせてやりながら、さらさらの髪の感触を楽しんだ。まだちょっと冷たい風に、額が冷える。
「最後まで、させてね?」
自分でもびっくりするくらいの、甘い囁き声だった。
にとりが、こっくりと頷き返してくれて、自然と笑顔がこぼれた。
ひと呼吸をいれてから、再度胸に屈みこむ。にとりが追われ過ぎないように気を付けながら、唇の表面を滑らせた。
「んあぁんっ」
肩を縮こまらせ、刺激に耐える。
ちょっとしかしてないのに、もう?にとりの胸の上で様子を見る。
「…ごめ、ひな、ごめん、頑張る…我慢するから…っ」
「我慢、ダメ。いっぱい感じて」
「れもおぉ…っ、ひ、ふぁ、あぅう、ひなのくち、あったかい、きも、ちぃいっ、すっごくっ、あったかくて、にゅるにゅるされて、やぁらかいの、あッ、吸いながらぺろぺろするのらめぇえ!」
「ん……ふ……っ…ん……ふぁ…」
「ぺろぺろ、ひゃめ、やあぁ、よすぎっ、てぇえ、やんッ、やああっ」
「いいこ、にとり。かわいいこ。……ンっ…」
雛は、軽く歯を押し当てた。にとりはぼろぼろと泣きながら、激しく肩を揺さぶった。
「ぃひなぁあああぁぁぁっ!」
長い悲鳴が弾けた。びくんびくんと緊張と弛緩を繰り返すさまに、雛の方が怖くなる。
「だめ、ひな、おまんこほしい、もぉジンジンして死にそうなのお…!」
「にとり。もう、ダメ?」
「ほし、い、よぉ、ナカに、雛が欲しいのぉ…」
蕩けた表情で懇願されると、何だか可哀想になってきてしまう。雛は手を滑らせて、にとりのショーツに手を掛けた。
若葉色のショーツは谷あいが濡れて、張り付いたところだけが深緑色になっていた。
あからさまな濡れように、見ているこっちが恥ずかしくなってしまうほどだ。
サイドを握ってゆっくりと引きずりおろすと、ちゅくん、と粘った水音がして、にとりからは安堵交じりの吐息が上がる。丸まり縮こまった生地に、少しだけ手こずりながら、やっと片足だけを抜く。
足の間に降りて行く途中で、胸の下のやわらかみを甘く噛む。
窪みは舐め、丘は吸い、くびれは何度も行き来した。
「おへそ、舐め、ぁ、くるくる、しちゃぁ、ひゃ、きゃふ、あぁ、ひな、ああ」
にとりはもう目を閉じきれなくなっていた。薄く開いたまぶたの合間には、焦点を失って熱を帯びた瞳が浮いている。
口もだらしなく開きっぱなしの上、唇も頬も真っ赤になって、随分といやらしい表情になってしまっていた。
「ふぅ…っ…ん」
「アァっ…ひなのおくちがぁ、ヌレヌレのエロガッパまんこにきちゃうよお…!」
にとりが予感した通りに、雛の唇は届いた。ふっくらと盛り上がった丘を掻き分けて、舌先に力を込めて谷に潜る。くぱぁと拓かれた唇から、噎せ返るほどの欲情が立ち上るのを、雛は思い切り吸いこんだ。
甘酸っぱい匂いで、くらくらした。粘りの少ない愛液が、舌に絡む。飲みこむと、匂いまで深みを増して、雛を酔わせていく。
「っっッきゅふああぁあんんっっ!」
「うぷっ」
興奮が極まって、にとりは思わず太ももで雛の頭を挟みこんでしまった。抑えつけられる格好になった舌が、うっかり肉芽を弾いてしまう。乳首よりも柔らかく、それでいてコリコリとした感触に、雛は反射的に吸いつき、舌を丸めてねぶってしまう。
「ふぁぁああぁぁやあぁあああんあんンっンッん、ん、んぁあ!あ!…っあァアっ…」
待ち望んでいた場所に、電撃ほどの衝撃が落ちて、にとりは最初の爆発に襲われた。
魚のように体をわななかせて、思い切り仰け反った。
イッてるのに、まだ舐められて、イくのがいつまでも止まらない。このままイき続けたらどうなるのかと考えるだけで、また高ぶって達してしまう。
「あっンッ、ん!あぁ、あ…ッ!イクっ、イク、いく、い…いっ!ちゃ…イク…っ!」
ようやく力尽きて、足が緩むと、
「…っぷぁっ」
雛が息継ぎに顔を上げた。
「……りゃめ…らめぇ…っ…イクぅ…いっちゃった…腰抜けちゃうよぉ…ナカ、まだなのに…きもちよすぎゆよぉ…っ」
そうは言いながら、足はしどけなく開いていくし、その奥の秘裂はすっかり丸見えだ。快感の余韻なのか、それとも更なる刺激を求めてなのか、ヒクついてうねっている。濃いピンク色の粘膜に、濁って白っぽい粘液と、トロリと透明な蜜が絡まっている。
口いっぱいに広がる塩味を、飲んだ。おいしい味ではないかもしれないけど、何だかクセになりそうな気がした。唇の上や端に残っているぶんも、舐め取って飲んだ。
「だめだよひな、そんなののんじゃ…!」
しゃくりあげながらの抗議にも、雛は聞く耳を持たない。
「……にとりの味がする。味に、可愛いっていうの、変かしら」
「ふぇ……っ」
「――もっと、ね」
太ももの内側を優しく押し広げる。震え続けるにとりを宥めながら、再び口を寄せていく。
粘膜の奥の奥の、もっと奥。舌先で襞をなぞり降りて、底が見えない場所まで来ると、入口の縁で円を描く。
「ふぁ、ふぁぁあ、は、あっ、あ、ひな、ひな、すごぉ、いっ」
目の前に火花が散るよな気持ちよさを、にとりは感じ続けていた。躰のどこかでバチンバチンと泡が弾ける。必死でワンピースの縁を掴んで、暴発する悦楽に耐えた。
「あっ、あぅ、した、が、はいっ…て…っ!」
奥を探るにつれて濃くなってくる味と、捉えどころのない侵入者を求める収縮を、舌いっぱいに感じた。
にとりの手前を、柔らかい襞が覆っている。もしかして、と思った瞬間、キューンと胸が高鳴った。
リズミカルに抽送すると、迎える膣壁も踊る。
「くにゅ、くにゅって、あんっ、ノックされてるぅっ、ベロで、つつかれっ、つんって、ツンってされてるのぉ!」
飲むのが追いつかないほど、溢れてくる。雛ももう夢中だった。にとりが混じった唾液で顎まで濡らして、息をする間も惜しんで舐める。
小刻みの挿入を、早くしてみたり、深めたり。具合を変えれば、その度にとりは新しい声音を見せてくれた。
「やらしっ、音、やらしいぃっ、くっちゅくっちゅって、はやぃの、かきまぜるおとっ、ひゃふ、ふぁ、あっ、あッッ、ふかっ、おく、歯が、あたっ……んっ、アっ、ダメ、イク、また、いっちゃう、ひにゃのおくちでいっぱいイッちゃうぅうっっ…!」
激しく悶える体が、脱力して、また、弾む。
「はあっ、はー、はぁ…はぁっ、ふ、くぅ、らめ、いってる、じんじん、とまんにゃいよぉ……」
肉芽が、皮を半分押し上げて、ちょこんと顔をのぞかせていた。柔襞がにゅくりと蠕動すると、それに乗って芽もそよぐ。
(……誘ってるみたい。おいしそう)
思ったままに、すぼめた唇で吸いこんだ。
「きゃ、きゃふっ、うゃああぁんっ!?」
今まで、舌を挿入していた場所に、指を添える。雛の方が戸惑ったが、にとりの入口は泡立つ愛液を零して指を待っていた。
「ひなっ、ヒナ、ひ、ひな、そこッ、あっ、そこ、いく、だめ、またっ!らめっ!」
「だ、だめ…?」
宛がったままで伺った。
「あぅうっ…ゆび…っ」
顎ががくがくとわなないて、言葉にならないようだ。首を振る仕草に、零れる涙の跡に、雛はそれを嘘だと知っているけれど。
「……ねぇ、にとり。ダメなの…?」
尖らせた舌で秘芽をくすぐって、答えを促す。
「い、ッ、あぁあっ、ふぁあぁんっっ」
「ガマンできないって言ったり…ダメって言ったり。どっちなの?」
うちがわと、そとがわの、境目が、ずっと指先に絡みついてくると、雛まで疼いてくるようだった。
「ひなぁ…」
切なく呼ばれて、昂ぶった。
「……にとり。いいよね?」
答えを聞く前に指を押しこんだ。抵抗は最初の一瞬だけで、すぐに蠕動が奥へと連れて行ってくれる。
「ひ、にゃぁ、あぅう、あっ、おく、もっと、おくにっ、雛の指がくるぅうっ!きてるっ、あったかぃ、ゆび、来て、こつんって、届い、っ」
「…うん、一番奥のところ…今、中指のね、先で、押してる」
「わかるっ、くぅって、おへそのほうに、押して、あっ、そこ、んんっ、ン、あっ、ん!」
短い悲鳴を刻みながら首を振る。中にかける力加減を変えると、その瞬間に声が上がって髪が揺れた。雛を求めてやまない蕩けた表情は、なんとも言えない可愛さがあって。ちょっとだけ見惚れてから、指と膣の境目に舌を這わせた。一緒に潜り込ませようとしたけど、締める力に押し返されて、仕方なく粘膜を上へ向かって舐め上げた。
「んあぁ!」
細身の体が、感電したかのように跳ねる。反応の良さが嬉しい。
幾度か小刻みに撫でてから退く。第二関節までを抜いて、一寸の距離を突き進む。
「くあぁんんンっ、んんんっ、くぅっ…!」
今度は、指の半分までを引いてから、虫が這う速度で侵した。
「ぃ、いっ、い、あ、あぁ、あっ、い、ぃ…!いっ…!」
にとりが溜まらず仰け反って、膣のカーヴが変わる。熱くて、ぬるんで、だけど雛の指を離すまいと更に圧力を高めてくる。
(あ…もっと、締まる…?)
「雛の、ゆ、び、らめ、おかしく、なゆ…ぅ…ぅっ」
ならば、と、抜けるギリギリまで指を戻した。今度は、人差し指も添える。二本はきついだろうか。大丈夫でありますようにと祈りながら、ゆっくりと壁に沿って、潜らせた。
「ふ、っ!?あ、お、おっき、ぃ、ゆ、び…?ッんっ、あっ、アっ、ぁ、ひゃあん!」
ちょこんと尖った肉芽にキスを繰り返す。膣はそれに応えるようにうねりながら、指を飲みこんだ。あまりに呆気なく根元まで届いて、雛の方がびっくりしたくらい。
「ナカ…、いっぱい、ひな、で…ぁ…」
そうよ、にとり。指を少し曲げて、存在を知らしめる。溢れてくる愛液を飲むのに忙しくて、声を掛けてあげられない。それがちょっと、残念。
「ひなっ、ひな、…ひな、ひなぁ、あんッ、すき、ッ、らい、しゅきぃ」
「んっ…」
指が、雛の髪を引く。思わず顔を上げると、にとりが両手を広げて待っていた。
「ちゅー、してぇ」
「…ええ」
指を奥深くへねじ込んで、離れないように留めてから、体をずり上げた。にとりの頭を片腕で抱えて、唇を奪う。深く重ねて、離して、息することも許さないほどの勢いで。
「ひにゃぁあっっ!」
どうしようもなく泣きじゃくりながら、にとりが縋りついてくる。キスを続けながら指の抽送を始めた。もう緩やかになんてやっていられない。思うままの速さと強さでにとりを犯す。
「にとり、だい、すき…」
「あ、あっ、ぁ、あっ、らめ、ひな、イク、いっちゃう、すごぃ、イク、やぁあ、あ、あ!ア!」
「いいよ。私の手で、きもちよくなって」
「アッ、んあっ!イクっ、ひなでいくの、ひなの、ゆびで、あっ…!きもちぃ、こわれゆ、ふぁぁあっ!」
「……愛してる、にとり」

「雛、すき、すきぃ、すきっ、あっ、ゥ、んぁああぁぁぁあ…ああぁああああぁ――――!!」


ぎゅうと、強く、抱きしめた。このまま溶けあって同じものになれるかもしれないと思った。
大きな痙攣で体が震えて、そして唐突に力尽きた。ふにゃりと手足を投げ出して、荒い息をつく。
「……好き。にとり。だいすき。にとりがすき。好きなの」
囁き続ける耳元に、涙が滝のように流れてくる。
「雛、私も、大好き……!」
何度言っても言い足りない。どんな言葉も全然足りなくて、もどかしい。焦れったくて抱きしめてるのに、これ以上近づけないのがまた悔しい。
残した指を、そうっと引き抜くと、にとりがまた辛そうに喘いだ。
「…ごめんね?」
首を振っただけで答えて、にとりが雛の鎖骨に額を寄せた。
「きもちよかったよ、すっごく」
そう呟いたにとりが、ホントに本当に幸せそうで、雛はそれを見てやっと、抱きしめる力を緩めた。




少し休んで落ち着いたのだろう。呼吸もほとんどいつも通りに戻っている。にとりは身を捩って、ワンピースを引き下げた。
そしてふと、何かを思いついた顔をして、雛の手を引き寄せた。手のひらを合わせて、大きさを比べる。
「わぁ。雛、指長い」
にとりの手は指は細いが全体的にこぢんまりとしている。一方で雛の手は指の長さのぶんだけ余計に細身に見える。合わせてみれば、雛の手の方がにとりよりも一回りは大きかった。
それで勝手に納得して、顔を赤らめてもじもじしているのだから、……何を考えているのか、想像に難くない。
「んもう。やっぱり、エロガッパ」
けしからない手を握って絡め取る。
「うぅ~……どうせエロガッパですよぉだ」
拗ねるにとりがまた可愛い。
「でもそれを言うなら雛だってエロ厄神じゃない…あんな…あんなに…~~」
「にとりが可愛いからしょうがないんだもの」
折角の反撃に、嬉しいカウンターパンチ。にとりはむにゃむにゃと口ごもって、俯いてしまった。
「~~ズルいっ、もぉおっ」
にとりは顔を真っ赤にして、頬をふくらかす。
「にとり。大好きよ」
絡め取り、握った指先ひとつずつに、くちづけた。
いつも、雛を翻弄する、大好きな手に、頬ずりして、キスをして、それでも足りずに胸元で抱く。
にとりがふくれたまま、ん、と唸った。その、いわんとせんことを汲むと、雛は手を解放して、にとりの体に腕を回す。
やわらかに添うだけの抱擁の中で、にとりがほわぁと溜め息をついた。
「――雛。私も、だいすき」
「うん。よかった」

抱き合ったままうとうとしかけたら、風が急に冷たくなって体を起こした。
いつの間にか夕方が近かった。二人で一緒に空を見て、今度は視線を見交わして、同時に笑い出した。



*-*-*-*-*



その日、にとりがやってきたのは、雛が文のインタビュウを受けているときだった。
ラブラブの秘訣は?キスは一日に何回?他の人には言ってますか?……応じる雛は恥ずかしそうにしながらも、時々堪らなく嬉しそうな笑みを見せる。
「文。あんまりそういうのほじくりかえさないでよー。プライベートてもんがあるんだからぁ」
にとりが、すわっと割って入ると、
「まぁ正直記事にするつもりじゃなくてですねぇ、何と言うか、参考資料に、そのぉ」
と、歯切れの悪いもにゃもにゃが。雛はすぐに気付いた。
「椛さん、ですよね?」
「ええ、あのー、まあそうです、椛です。あの子、この間酔いつぶれた私を迎えに来てくれたらしいんですが、私、さっぱり覚えてなくて……あれからまた態度が硬くなってしまって、なんか全然イチャイチャできないんですよね…」
文花帖に顔を埋めて、わぁっと泣く真似さえしてみせる。……余程、にとりと雛が羨ましいらしい。
「どうやったら、そんなに仲良くいられます?」
「どうやったらって…ねー…」「そうねぇ……」
にとりは雛にくっついて座った。寄り添う赤と青緑は、お内裏様とお雛様の様相。
二人して顔を見合わせ、しばらく考えこんでから、にとりは答えた。
「やっぱり、最初は、友達からかな?」
「ともだちぃ?」
「うん。友達。相手のことをしっかり知っていって、相手にも、私のことを知ってもらうこと」
だと思います!と、手を大きくバンザイに上げる。
移った文の目線にも、雛は笑って応じた。
「にとりが、私の笑った顔を見たかったんだって、言ってくれました。私も、にとりが笑う顔を見たくて、頑張りました。好きな人に、笑っていてほしいって、そういうのが一致する、ことだと思います。二人で一緒にいて、笑えるって、すごく、大事だと思うんです」
「……はぁ…まったく呆れるくらいラブラブですね!」
ペンと文花帖をポケットに突っ込み、文は後ろ向きにひっくり返った。

「まだまだ、これからです」 雛が笑う。
「もっともーっと、らぶら~ぶになっちゃうよ!」 にとりが笑う。

「あ~あ~、見てられませんよ、もー!もー!!」
春まだ浅い、ベビーブルーの空を仰ぎながら、手癖で胸元のカメラを握り、レンズを二人に向けてピントも合わせずシャッターを切る。
きっと、すごくいい笑顔の二人が写ってるんだろうなぁと思うと、記事に出来ないのが無性に残念だった。


.
そういえば、地元にも河童の伝説がありました。
七星
http://ameblo.jp/heaven-star/
コメント




1.JENO削除
ちくせう。なんて甘いんだ・・・
自分は手放しの甘甘なんて書けないからなぁ

しかしぱるぱるぱるぱる・・・・
厄神様でもまた書いてみようかなぁ・・・・・なんて。
2.名前が無い程度の能力削除
ああやっぱり良いなぁこの2人は
タイトル的に続編、と受け取っていいのかな
3.名前が無い程度の能力削除
最近段々嫌な方に生々しくなってきたな
これだから女の書く話は
4.名前が無い程度の能力削除
いいな、こういう甘々が私は大好きです。

あやもみのお話も書いていいのよ(チラッ
5.名前を忘れた程度の能力削除
大変甘々で美味しゅうございました。
あやもみの続編もお待ちしております(キリッ
6.名前が無い程度の能力削除
ヒヤアアァアアーーーーー!!!!エロス!!!!!
皮膚感覚が伝わってくるあなたの作品が大好きですよ!!エロガッパ!!!
7.名前が無い程度の能力削除
ごちそうさまでした。
とっても甘かったので爪が全部糖分に変わりましたありがとうございます

私の地元にも河童伝説がありますが、河を見つめながらにとり出てこないかなーとか思う毎日です。
8.名前が無い程度の能力削除
これはにと雛の続編と考えてよろしくて?
うへへへwwwwにとりかわいいなぁww
9.夜空削除
もうタイトルに偽りなしのLove me tenderな雛のやさしい恋心がたまらなくスウィートで倒れそうになりました
恋仲であるこその葛藤がこれもまた甘く、何だかんだで相手のことを思いやりながら愛に溢れてるやりとりがとても素敵!
それでいてねちょが雛Sadisticなのに、真っ直ぐな純愛で一方通行的なものに偏らない辺りの距離感が秀逸だと思いました
にとりや雛以外のキャラの立ち方も非常に活き活きしてて、特にあやややの泥酔っぷり等々楽しそうで仕方ないですね。くすっと笑えて甘くてねちょくて素晴らしかったです
10.名前が無い程度の能力削除
前作→今作で2人が公然とイチャつく土壌が出来たから
次はあやもみと2組でダブルデートするしかないな!フヒヒ
11.名前が無い程度の能力削除
にとりが空回りしながらも押せ押せで求愛して
雛がそれに戸惑いつつも段々受け入れていくってのが一番自然だよね
恋人のいないであろうモブ河童達の嫉妬ザマァwww
12.名前が無い程度の能力削除
ヌレヌレのエロガッパまんこで吹いたw
雛が自覚してハッピーエンドで良かった。
前作があるようなので読んできます。
13.名前が無い程度の能力削除
雛がものすごくがんばった感があって可愛かったです
にとりは普段からこんな風にイチャイチャしたかったんだろうね
14.名前が無い程度の能力削除
甘々かと思ったらガチエロ過ぎてもげた
15.名前が無い程度の能力削除
あら可愛いカップル
16.名前が無い程度の能力削除
ふみゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁかわいいょぉぉぉぉ(暴走しそうだったのでポロロッカされ厄をながされました
17.名前が無い程度の能力削除
厄神様もエロい。素晴らしい。
左右に分かれてモーセ。でなんかワロタ
18.名前が無い程度の能力削除
にと雛ふたりともかわいすぎる。いいぞもっと(ry
文ちゃんにもがんばってほしいけど、ここはかわすわ+早苗についてkwsk
19.名前が無い程度の能力削除
雛の方からこうして積極的になって動くのは勇気の要る事だったろうね
その分こうしてにとりはいたく感激してる訳だけども
20.Admiral削除
にとりと雛の互いを思い合う気持ちがびんびん伝わってきますね!
そして安心のネチョ。さすが七星さん。きゅうりがもげそうですw
素晴らしいお話、ありがとうございました。
21.名前が無い程度の能力削除
二人ともえろくてかわいい
がんばれあやちゃん!
22.名前が無い程度の能力削除
積極的な雛って珍しいがそれが良い!
それに、二人の想い想われがきちんと描写されてて微笑ましい。

ところでラブラブ安定のかなすわって実は珍しい気がする。
文もみとかなすわの様子もぜひ見たい