真・東方夜伽話

射命丸文のビッチな一日

2011/06/03 11:50:16
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射命丸文のビッチな一日

野田文七

 肉棒が襞を分け入ってくる。射命丸文は、男の胸に両手をついて、息を吐き出した。膣の中に、男のモノの熱さが伝わってくる。
「くぅ……文さんの中、めちゃめちゃ熱いっす!」
 なんだ、同じこと考えていたんだ。
 そう思うと、組み敷いた年下の鼻高天狗が、かわいらしく思えてきた。確か名前は那須野陽一郎といったはずだ。綺麗な胸をしているが、厚みがまだ足りない。ただ、若さに任せて腰をひたすら突き上げてくるその激しさは、悪くはなかった。
 男は眉をひそめ、口を半開きにして、鼻にかかった喘ぎ声をあげた。文も、その若い声に合わせるように声をあげる。
「あおぉ、おうっ、ふう」
「はあぁん、んっ、んくっ……ハァッ」
 文は、自分のこういう声が嫌いではなかった。体が求めるがまま、喉を震わせ、息を吐き出す。すると、こういう声が出るのだ。それを聞いて、下にいる男の動きが慌ただしくなるのも、気分がよかった。
「おっ、オ、オッオッ、やばいっす、文さん、うおおおお文サンのマンコまじでいいですよ、ウ、ウォ、今ぎゅって締まりました! 興奮してるんですか!? 俺も、もうほんとヤバイっす、うぁ、あああ、もうイクもうイク、あやさああああやさんあやさん」
 暴れ馬のように腰を叩きつける男の動きに、文は布団についた両膝を使い、うまくバランスを取る。男が突き上げるときは、こちらも体重を落とす。男が引いたときは、膝に力を入れて少し腰を浮かせる。そしてまた次の一撃に備える。急に早くなったり、ペニスをねじこんだまましばらく抜かなかったりと、那須野の騎乗位セックスはテンポが一定でなかった。それでも文は、性器の出し入れを繰り返すうちにだいたいタイミングを合わせることができるようになった。何かが那須野の肉棒を上ってくる予感がする。それに応えるように、文の膣が締まる頻度が上がる。
「ふぅっ、ふっ、はぁっ、いいですよ、那須野さん。出してしまいなさい。ンンッ、あなたのオチンポ、もう限界そうですよ。わかるでしょう、あなたのタマですよ、ほらッッ、ほらほらァァァッ、もっと突いて、突いていいのよッ。私のオマンコ、ほじくってええええ……んむっ」
 文の唇に、熱気を放つ塊が押しつけられた。少し短めだが、片手では包みきれないくらい太い肉棒だ。
「射命丸、俺のも頼むよ」
「ん、もう山彦(やまびこ)ね」
 カリ首に上唇をひっかけながら、文は言った。見上げると、山伏天狗の山彦健(たける)の筋骨隆々とした体がそびえている。毛むくじゃらの陰嚢を撫でると、その四角い顔からオフゥという情けない声が出た。
「はむっ、チュパッ、ンンッ。ぷあぁっ……心配しないで、ンッ、ちゃんとみんな相手してあげるから……ハァッ」
「おあああああ、文さん、お、おれ、もういく、いくイクイクイク……うごおおぉおぉぉっ」
 那須野の体が、陸に打ち上げられた魚のように跳ねた。文の柔らかな太ももに手を乗せ、少しでも陰茎を奥までねじ込もうとするかのように、強く自分の腰へと引き寄せる。文は山彦へのフェラチオを続けながら、腰の動きを小刻みにした。
「ふぐぉっ……おっ……あ、ぐぉ……ん」
 舌をだらりと垂らして、あらぬかたを見ながら、那須野は果てた。勢いよく自分の中に放出される精液を感じ、文は目をうっとりと細める。今、自分の口の中にある肉棒も、そう長いこと持たないことは、経験でわかる。山彦とは、ずいぶんとしてるから。
「やっぱりお前、かわいいよな」
 山彦はごつごつとした手で文の黒髪に指を差し込んで、撫でた。ガサツな彼としては精いっぱいの繊細さだ。
「んじゅっ、んっンッ、ちゅるぅ、ぶじゅぅぅぅ、じゅるるるるっ、んんむっ」
 それがわかるから、文は気持ちよくなる。舌は性感帯だ。木の根のように野太いペニスをねぶるたび、文の舌先から舌の根、歯茎から口の中全体へと快楽が広がっていく。喉がひくつく。早くこの男の精液が欲しい。あの生臭い雄の体液を、喉の奥まで流し込んでほしい。
「うおっ、た、たまんねェッ、出すぞッ」
 山彦は文の裸の肩をつかんだ。指が皮膚に食い込む。その圧迫感が、また心地よかった。文は山彦の尻に両手を這わせ、顔を彼の股間にうずめた。
「んじゅぅぅぅぅるるるるっ」
「お、おふぉぉぉぉっっ!」
 山彦は膝を曲げ、腰を落とし、上体をのけぞらせた。倒れてしまわないよう、文は尻にそえた手に力を入れた。期待通りの味が、臭いが、口腔内に広がっていく。舌をかき回して、ゆっくりと濃厚なゼリーを楽しむ。固さが取れてきた山彦のペニスに、かき回している最中に何度か触れた。その度に、固さを取り戻していく。
「っく、ゴキュっ、ゴクッ、んふぅぅーっ、んっく、ごくっ」
 精液をある程度飲んで、鼻で息を吐くと、もうその息はすっかり雄の臭いに染まっている。それがわかると、文はまた興奮する。山彦もまた、文の様子を見て、口の中に入れたままの陰茎を、盛り上がらせていた。
「んん?」
 文は人差し指と中指を立てて、首を傾げる。
「ああ、二発目、頼むぜ」
「んん」
 咥えたまま、うなずく。
「しばしお待ちになってはいただけないでしょうか、山彦さん。物事には順番というものがあります。射命丸さんとセックスをしたい男は、何もあなただけではないのですよ」
 鴉天狗のすらりと伸びた長く美しい腕が、文の右手を取った。そして槍のように尖ったペニスにその手を添わせる。文の指はすぐに答え、五本の指を巧みに使い始めた。
「な、なんだよ疾風(はやて)さん、俺はまだ……」
 疾風光(はやて・あきら)は、女のようになめらかな肌を紅潮させ、その端整な顔を悩ましげにしかめていた。
「おお、おおぉ、相変わらず射命丸さんの指使いは素晴らしい。その繊細な気配り、時に加えられる大胆な力強さ、その辺の有象無象の女陰よりも遥かに上等な代物ですね」
「ってなんだよ、手で満足してるじゃねぇか」
「ちゅるっ……ぷはっ、れる、れるぅっ、じゅりゅっ。れるれる、チュッ」
「うお、そのソフトタッチ、すげえ」
 咥えこんでいたペニスをいったん放して、舌の腹や唇の先で愛撫を加える。山彦は身を震わせた。文の手は動きを速めつつある。単に肉筒をしごくのではなく、速まる中にあっても、五本の指は多彩に動いていた。時に全体をぎゅっと締めつけ、時には鍵盤を流れる指のように部分を刺激する。疾風の陰茎の先から漏れた汁が、その手の動きに淫らな音を添わせていた。
「おおお、ふおおお、見事、見事です」
「なんだよ、オッオッ、お前まんこ使わないのかよ、んあぉっ」
 文は、ソフトタッチからディープスロートに切り替えた。
「何をそんなに焦ってるのですか。文さんのまんこは逃げたりしませんよ。私はまだこの手を十分に味わっていません。話はそれからです」
「じゃあさっきみたいにウホッ水を差すようなこというなってんだホオッ」
「ふぅ、やれやれ」
 疾風はため息をつきながら、首を振ってみせた。
「なんだよ」
 疾風は中指で眼鏡をクイとあげた。全裸のときでも、彼は眼鏡を外さない。
「私は長幼の序を守るように助言しただけですよ」
「ああん?」
 疾風は文にしごいてもらいながら、身を屈め、文の背中から左脇に腕を回して、持ち上げた。ぬぽっ、と那須野のしなびたペニスが文のヴァギナから抜けた。那須野は失神しているらしく、「あふぉ」と声をあげただけだった。
「ちょっと腰を上げていただけますか、射命丸さん」
「んむっ」
「那須野さんは邪魔だからちょっと横にずらしましょう」
「えむっ」
「おい何するんだよ」
「あなたは黙って。そのまま咥えられてなさい」
 文は膝立ちになったものの、山彦の股間に顔をうずめ、右手で疾風のペニスを握っているため、非常に不安定な姿勢だった。
「んぷ? ぷあっ……おや、翼(つばさ)さんではありませんか」
 文は山彦のペニスから口を放して、部屋のドアを振り返った。山伏天狗の熊田翼のずんぐりとした影が、帯をほどきながら寝室に入ってきた。肥満というわけではないが、太っている。坊主頭から頬、顎にかけて髭がみっしりと生えており、いかつい容貌をしていた。
「おぉ、始めてンなお前ら」
「ご無沙汰してます、熊さん」
「悪ぃなヤマ、途中参加なんて興ざめだろ。もうだいぶヤッてんのか」
「いえ、そんなことありませんよ。日付変わったあたりからヤリ始めたばっかりですんで」
 山彦は疾風に対するときとは打って変わって、折り目正しくお辞儀をする。
「翼殿、ご覧の通りに空けております」
 疾風は、山彦に対するのと同じように慇懃な態度で、文の尻を指し示した。
「おおすまねェな、こんな年寄りに気を使ってもらわなくたっていいのによ。まあ、せっかくのお前らの気遣いを無下にするのもなんだしな」
 翼が褌を取ると、山彦ほど太くなく、疾風ほど長く鋭くはないが、貫録のある立派な陽物が姿を現した。
「じゃあお先に失礼するぜぃ。文、相変わらずいい尻してるなぁ」
「ふふふ、いいでしょう」
 右手で尻を撫でまわしながら、左手の中指を大陰唇に這わせる。
「アッ」
「ああ、いいねェ。お、なんだ他の奴のがもう入ってるのか、こりゃいい滑りだ」
「射命丸、な、なぁ」
「わかってるわ、続きね。はぷっ」
 文は山彦へのフェラチオを再開した。
「ウゥッ!」
 疾風が何やら行き詰った声を上げたかと思うと、まもなく射精した。文の右腕に精液が降りかかる。
「じゃあ早速行くぜぇ……よっ、ほぉぁっ」
 文の太ももを両手でがっしりと支え、後ろからヴァギナに突き入れた。
「ふももぉぉっ」
 文は山彦のペニスを咥えたまま、体をのけぞらせた。
「っく、おぉ、チンポに声が響く……」
「こうして間近で挿入されている射命丸さんの美しさもまたひとしおですね」
「あんたもう出してんだから離れろよ」
「まだ一発ですよ。射命丸さんの手コキが一度で終わるわけないでしょう」
 疾風は中指で眼鏡を上げながら、自分のそそりたった男根を指差した。今しがた出した精液が文の手によって練り広げられ、石鹸のように泡立っていた。
「フゥッ、お前ら、元気だなぁ、俺ッ、は、もう、これだけでたまんねェぞ……っ」
 肌と肌が叩きつけ合う音が寝室に響く。翼は猛然と腰を振り立てていた。文もまた、それに応え、腰の動きに微妙なひねりを加えつつ、翼を迎え入れた。
「おおおっ、オォォ、フォ、フォッ」
「んんんっ、ンムウウゥゥッ、あぐっ! アヒッ、ヒアァッ、あんっ」
 とうとうペニスから口を放し、高い声を上げた。
「アァァァッ、いいっ、いいです翼さん、もっと、もっと翼さんのぶっとい肉チンポねじこんでください、かきッ、ヒッ、かきまわしてっ、もっとぉぉぉいっぱぁぁぁぁい! れりゅっ、んちゅる、るれるっ、あぶっ」
 叫びながら、目の前のペニスを舐め立てた。山彦の体全体が痙攣する。さらに、文はやさしくペニスに息を吹きかけた。
「ふぅっ」
 それがとどめになった。
「おっ、オァァ、で、でるっ!」

 ぶりゅりゅ、どびゅっ、ビュビュゥゥゥッッ!!

 山彦の肉棒がめちゃくちゃに跳ね回り、文の前髪、額、鼻の頭、上唇、顎、頬に精液を振りまいた。山彦はそのまま仰向けに倒れた。
「あああっ、熱、ィィッ! 突いて、突き刺して、もっと突き刺しまくってぇぇ!」
 文もまた首を振りまくり、汗や精液がまわりに飛び散った。そうしながらも、右手は疾風への刺激を続けていた。
「う……うぅん」
 文の横で気を失っていた那須野がゆっくりと目を開けた。そして、視界の端で揺れている文の左乳房を見た途端、そこにかぶりついた。
「ウオオオ、オッパイ! 文さんのおっぱい! 柔らかい、それでいて無駄に大きくなく、ほどよく顔がうずまるこのおっぱい! 文さんマジパネェっす! べろべろ、れろ、れりゅ、じゅばっ、あぶっ、ぶりゅぶりゅ」
 文の乳房をしゃぶりながら、自分で自分の肉棒をしごき立てた。
「あヒッ」
 予期せぬ胸の快感に、文の膣と右手にそれぞれ力がこもる。
「おぐぁっ」
 疾風が果てた。文の右腕に、己自身の精液をさらに重ね、力なく尻もちをついた。
「くぅぅ、文、締めつけ過ぎだぞうおおおおお」
 翼は天を仰ぎ、ここを先途とばかりに腰を振り立てた。お互いの骨に響くほどの衝撃だった。
「いく、いくぞ、出す文、ザーメン出すぞ、おおおお、ぐあああ気持ちぇぇぇ!」
「ひぃ、翼さん、出して、私のおまんこにいっぱいびゅーびゅーしてください、イッてくださいぃぃぃっっ!」
「あイクッ」
 文の下の那須野が、先に自らの手で射精した。それは文の左腿に付着した。
「ふんォッ」

 ビュビューッ、ビュッ、ブジュルブジュッ、ドブブッ!

 続いて翼が絶頂を迎えた。射精しつつ、バン、バン、と何度も強く腰を押しつけた。そのたびに文の膣は締まり、翼の肉筒に残った精子をさらに絞りとっていく。
「おお……おおお……」
 呆けたようなため息をつきながら、翼の腰の動きは少しずつ弱まっていく。
「はぁぁぁぁっ、あん……んっ、ふっ、ふゥゥゥ、フウウ……」
 自分の中で少しずつ萎えていく肉棒を感じながら、文も、徐々にペースを落としていった。体中に弾けていた快楽が少しずつ落ちてきて、心地よい疲労が汗となって肌を伝っていく。振り乱した髪が、何本か目に張りついたので、指で取った。一緒に、顔にたっぷりとかかった精液が指についてきた。
「ふぃ~、出したァ出したァ」
 満足げな声をあげ、翼はペニスを抜いて、そのまま布団に尻をついた。両手を後ろについて、両足を広げ、ぼんやりと斜め上を見上げている。
「はぁ、はっ、はぁぁ……」
 文は呼吸を整えながら、足は正座にして、背中を少し曲げ、うつむき、指の上でぷるぷると揺れる精の塊を、舐めたり眺めたり、乳房の上に塗り広げたりしていた。
「ふぅぅっ……ん?」
 ふと、何かに気づいたように、壁際を見る。白狼天狗の少年、伯楼木霊(はくろう・こだま)が、折り目正しく正座をしていた。彼の前の畳は、何度放出されたかわからないほどの精液で、まるで白くふやけているように見える。股間からは、小ぶりだが充溢した精気を感じさせる肉棒が、飽くこと知らず勃起していた。
「木霊さん、どうしたんですか。さっきからそんなところでコイてばかりいて。あまり先輩方に遠慮していてもしかたないですよ? こういうときぐらい、組織の縛りは忘れましょうよ」
「は、はいッ、あ、あの」
「といっても完全には無理ですけどねぶっちゃけ、無礼講なんて」
「あ、あ、しゃっ」
「性とはつくづく社会的なものです。すぐれてガチガチの統制社会である我ら天狗がセックスするとき、その快楽は権力関係を抜きにしては語れない、あくまで理想論ですよ、日ごろの社会関係を忘れてまんこちんこズポズポしましょうねなんてのは、それでもやっぱり、そう言って取りかからないことには、興ざめしてしまうんです」
「しゃ射命丸さんっ」
「文でいいわ」
「文さんっ」
「なぁに?」
 文は両手両膝をついて、木霊ににじり寄る。木霊のペニスが、期待で震え、先端から先走り汁が滲み出た。
「ぼ、お、俺……うッ」
 文が手を伸ばし、木霊の剛直を握った。途端、木霊は言葉を失った。空いた手で、木霊の足を撫でる。
「足を崩しなさいな」
「はっ……」
 木霊は言われたとおりにした。まだ発達しきっていない、凹凸なくまっすぐ伸びた白い足を左右に開いた。胸板も腰回りも、まだこれから鍛えられていくといった感じで、ほとんどメリハリがない。文が指を這わせると、その肌は敏感に震えた。
「ううっ……文さん」
「なぁに」
「はぅっ、あっ、うぁ……文さん」
「だからなぁにってば」
 腰の骨の突き出た部分、脇腹、乳首のまわり、喉を、十本の指先でそっと責め立てる。木霊は全身を痙攣させて、文の愛撫を受けていた。彼のペニスは触れられてもいないのに、次から次へと透明な汁を迸らせていた。
「ああっ、文さん! イキそうですっ」
 木霊の手が自分の剛直に伸びる。文はその手をすばやくはたいた。
「駄目ですよ、そういう勿体ないことしちゃいけませんよ」
「ああでもっ、も、もう僕……ッ」
 文は指先での愛撫を強めた。強めるといっても少しだけだ。今まで指をただ置くだけだったのを、何センチがなぞるだけだったのを、それぞれ、指先で押しつけるようにし、二十センチほど引っ張るようにしたくらいだ。だが、それが木霊の快楽全体を底上げた。木霊は自分でも知らぬ間に身をそらし、首でブリッジをやろうとしているかのようだった。頃合いと見た文は、今まで手を付けずにいた木霊の内太ももを撫でさすった。びくん、とペニスが跳ね上る。さらに素早く陰嚢を右手で握り、精液にまみれた左の中指を木霊の肛門に突き入れた。
「う、うああああイクッッ!」
「んー?」
 文は鈴口を覗き込んだ。その途端、精が文の顔に弾けた。

 ぶびゅっ、ぶびゅるっ、どぴゅどぴゅぅっっ! びちゃっ! びゅくん、びゅくんっ

 青臭いにおいがたちこめる。
「うふぁ……いっぱい、かかったね」
 文は右目だけ開けていた。左目にはたっぷりと精液がかかっていて、開けられない。指で、左目に溜まった精液を拭い取る。濃度のあるそれらは、はじめ、そのままでぷるぷると震えていた。やがて重力に従い、ゆっくりと流れ落ちていった。
「はぁっ、はぁ、はぁぁっ……」
 木霊はまだ全身を時々痙攣させながら、天井を眺めていた。文はそっとペニスを握り、残った精を少しずつ絞り出していく。まだ、固さは完全に取れてはいない。木霊の耳元に口を近づけて、囁く。
「どうする、木霊君」
「あぁ……」
「まだ、元気だよ。とくんとくんって、脈を打ってる」
「うぁ」
「今日はまだ、私の中に出してないよね」
 木霊の肉棒が力強く立ち上がった。文はすぐさま木霊に跨った。文自身、自分の言葉で興奮していた。自分で指を入れて開くと、それだけで湿った音がした。我慢汁と精液で濡れそぼってぬるぬるに滑る木霊の亀頭に陰唇を添え、一気に腰を落とした。
「ふわ……ああっ」
「アアアアアッ、文さん……熱い、熱いですっ」
 木霊はしゃにむに腰を動かした。那須野よりも、さらに未熟だった。さすがの文も、すぐにその動きをつかむことができない。というより文自身、膣に分け入ってくる若く燃え立つ勃起に、感じまくっていた。膣の肉がぐいぐい締まるのが、自分でもわかる。
「うああああ、イ、いきます!」
 十秒も経つか経たないうちに、木霊は射精した。
「あ、ああ……」
 木霊の脱力は、文には残念でならなかった。それでも十分気持ちよかったので、自然と、木霊に対して感謝とねぎらいの気持ちが起こった。
「お疲れさまでした、木霊さん」
 文は虚ろな眼差しの木霊に手を伸ばし、頭から頬にかけて撫でてやった。腰を上げ、ペニスを引き抜く。雄の樹液が、濃密な匂いを放ちながら、ふたりの性器の間をつないだ。


 身づくろいをしてバスルームを出ると、玄関で靴を履いている山彦と目があった。
「あら、お片付けご苦労様」
「おう。新しい畳は明日にでも届けさせるよ」
「ええ、いつも通りお願いします」
「んじゃ、俺も帰るな」
「はい、お疲れさまでした」
 山彦は戸を開け、羽を広げて、飛び去って行った。今回は彼が掃除当番だったらしい。毎回、ジャンケンやクジで負けた者が、体液まみれの文の寝室を片付けていく決まりになっていた。寝室に戻ると、淫臭がまだ部屋に染みついている。布団だけは、真新しいものが敷かれていた。山彦が甲斐甲斐しく布団を敷いて、シーツを広げて、その上に掛布団を重ねるところを想像するとほほえましい。
 やはりベッドメイキングは山彦のが一番好みだった。疾風もいいが、彼の場合だと、シーツはピンと張られてて、枕もきちんと布団にそって置かれる。あまりに整いすぎているため、旅館にでも来た気分になる。たまにはそういう新鮮さもいいが、掛布団をめくるとき、ちょっと気負ってしまう。翼ももちろん、悪くはない、十分だ。那須野辺りに当たると心配だが、意外とああいう手合いの方が綺麗に片づけるかもしれない。
 どの男も、片づけ自体は、わりときっちりしてくれる。そもそも家に呼ぶ時点で、ある程度選別はいつも済ませている。文は無礼な男は嫌いだった。
 ローブを羽織ったまま、布団にもぐりこむ。充実した疲れが体中にのしかかってきて、たちまち彼女の意識を奪った。


 風が、窓を軋ませる。かなり近くを、天狗が通った証拠だ。もう通勤ラッシュの時間だろうか? 寝足りない思いで、文は目を開けた。時計を見ると、まだ六時だ。
 予定では七時に起きるつもりだった。なぜ、一時間早く起きてしまったのか自問する。表に誰かの気配がする。それが、今しがた窓を通った風だ。文は布団から立ち上がり、すっかりはだけてしまったローブを、ひとまず前で結んだ。昨夜、というか厳密に言えば今日、あの後風呂に入っていなかったので、皮膚や髪に張りついた精液がそのまま乾いて、あまり上品ではない臭いをかもし出していた。
 ローブの前を締めて、廊下に出る。玄関の磨り硝子に移った影で、誰だかすぐにわかった。
「どうしたんです、木霊さん。こんな朝早く」
 戸を横に開きながら、声をかけた。白髪の白狼天狗の少年は、顔を赤くして、文の顔を見上げた。
「あ、あのっ、文さん」
「おはようございます、木霊さん」
「おはよございますっ、文さん」
「どうしたんですか。あれからまだ、三、四時間しか経っていませんが、ちゃんと眠りましたか」
「いえ、その、一睡も、まだできていません」
 まだヤリ足りないのだろうか。だが文の見たところ、木霊は、相手の都合も聞かずにいきなり押しかけるような少年ではない。文が筆下ろしをしてやってからというもの、二、三度はすでに呼んでいるが、いつも控えめだった。こんな風に突然訪問することは、今までなかった。
「ちゃんと眠らないといけませんよ。いったいなんですか、ちゃんと言わないとわかりませんよ」
「こ、これをっ」
 木霊は手に持っていた封筒を差し出して、頭を下げた。
「う、受け取ってください」
「え、ああ、はい、わかりました」
 文は封筒を受け取り、封を切った。中に綺麗に折りたたまれた手紙を広げる。木霊が悲鳴を上げた。
「あーっ! なにするんですか」
「なにって、受け取ってって言ったじゃないですか。どれどれ、一目見たときからあなたのことが好きでした。ふむふむ、今でも仕事のとき、あなたとすれ違うたびに胸がどきどきします。ほむほむ、あなたは僕のことをどんな風に考えているのでしょうか。ふへぇへぇ、よかったら、僕と僕と僕と、ふえっへっへっへ」
「あああああもういちいち声に出さないでくださいよ!」
 文の手から、手紙をひったくる。
「読まれたくないなら渡さなきゃいいじゃないですか。私がもらった以上、私がその恋文を使ってどんな所業に及ぼうが私の勝手です」
「だからってわざわざ本人の前で読むことないでしょうがっ。というかそもそも、これは文さんのじゃありません。お預けしたいのです」
「え、違うの」
 文は封筒の宛名を見た。その瞬間、頬の筋肉がゆるみ、目尻が垂れ、唇がつりあがる。それは、実に楽しそうな、凶悪極まる笑顔だった。

   ***

 姫海棠はたて 様

   ***


 印刷工場のシャッターはまだ降りていた。アスファルトの広場を、背中を丸めて掃いている男がいる。白い袈裟を羽織っている。ずんぐりと太った体格だ。
「おはようございます。早起きですね」
 文が空から降り立つと、山伏天狗の翼は顔を上げた。
「おう、お前こそ早いじゃねェか。あんまり寝てないな」
「お互い様です」
「年寄りは早起きなんだよ。で、毎日の庭掃除をしないと落ち着かねェのさ」
「いやあ、偉いと思いますよ、そこは、素直に」
「まあ、朝だけよ。開業したらあとは昼まで寝てらァ」
「それじゃあ、今日も昼まで温泉ですか」
 翼は腰を伸ばし、文を正面から見た。
「何か用か?」

 大浴場は無人だった。湯気ばかりが濛々とたちこめている。左右には鏡と蛇口、シャワー、風呂椅子が一セットで、それぞれ十席ずつ並んでいた。
「相変わらず広いですねぇ、ここを貸切にするなんて、たいしたものです」
 文はバスタオルを胸のところから巻いていた。肩と太ももは剥き出しだった。一見ほっそりとした体つきながら、触るとぴたりと手のひらに吸いつくような、豊かな肉が備わっている。下半身にだけタオルを巻いた翼は、眼福とばかりに文を見ている。
「仕事上、ここの河童さんにとっちゃァ、俺はお得意様だからな。多少の融通は利くさ。年寄りのヒラがやれることっていったらこのくらいのもんだからな。情けねェことに、他じゃ威張るところがないもんでね」
「いえいえ、そんなことありませんよ、どうせ権力持つのなら、会議室の座り心地の悪い椅子よりも、こうやって温泉を独占する権力の方が素敵に決まっています」
「嬉しいこと言ってくれるね」
 翼は風呂桶を取って浴槽からお湯をついで、肩にかけた。
「ああ、私がしますよ。あなたはそこに座っててください」
 椅子を指し示しながら、翼の背中に、自分の前面を押し当てる。腰の結び目をほどくと、タオルは床に落ち、男の下半身を露わにした。右手で軽くさすると、すでに半ば勃起しているのがわかる。文もバスタオルを外した。
「さあさどうぞ」
「おう」
 大浴場の風呂椅子の中で、ひとつだけ形状が違うものがある。普通の風呂椅子より一回り大きく、中心が大きく凹んでいる。形状が違うことに気づく客もいるが、だからどうというわけでもないので、そのまま他の席と変わらずに使っている。
 真の用途は、こういったときのためだった。
 壁に向かって翼を据わらせ、スポンジにボディソープを染み込ませ、たっぷりと泡を立てた。背中も羽も、泡だらけになった。白い羽と肩甲骨の付け根に口づけすると、翼は低く呻いた。文はスポンジを脇に置き、風呂椅子の下から手を伸ばし、翼の肛門から陰嚢、裏筋にかけて手のひらを這わせた。
「ヒョォッ」
「フフ、変な声出ましたね」
 文はくすりと小さく笑った。今度は下からペニスを握り、そこから陰嚢、肛門と逆にたどっていく。
「ホォッ」
「ちょっと、笑っちゃうじゃないですか」
「おォ悪い悪い」
 引き続き、下から翼の敏感な部分を撫でていく。
「そいで、話ってのはなんだ」
「開業一番の大天狗会議に、私の指示する議題をすべり込ませてほしいんです」
 肛門をくすぐり、羽の付け根を舌先でテロテロと責め立てながら、文は言う。
「おホォ……不正の依頼とはこれまた穏やかじゃないな。順番は守るもんだぜ。そうはいってもまあ、いつも世話になってるからな、そのこと自体は別に構わねェよ」
「ありがとうございます」
 背中に乳房を押し当てた。固くなった乳首でコリコリと男の背中を刺激しつつ、上から手を伸ばして、陰茎をしごいた。
「う、お、お、ペースが速くないかちょっと」
 文のペニスをしごく手の動きはますます速さを増していく。ほとんど目にも止まらない。むやみに力を加えているわけではなく、しごいている最中でも巧みに握りの角度や強度を変えている。翼のペニスの具合を、文は本人以上に知っている自信があった。
「なっ……うお、ォォ、で、出るっ」
「んっ」
 文は翼の脇から頭を突き出して、ペニスを咥えこんだ。そのやや強引な姿勢による咥えこみが、さらに翼を興奮させたようだった。

 どぴゅぅぅっ、どぶっ、びゅくびゅくんっ、どびゅーっ!

 文が熱い肉の塊を口に含んだ途端、口腔内で精が弾けた。斜め後ろから咥える形になったので、舌の方がカリ首に当たっている。鈴口が上顎を突く。射精の脈動に合わせて、カリ首を丁寧に舌でねぶった。口の中が動物の生臭さで満たされる。
「ウ……ぉ」
「んぷ、れりゅっ」
 口を放す。精液と唾液で光る翼のペニスを、ゆっくりと揉んだ。反対の手で、脇から手を伸ばし、ボディソープを押し広げるように、翼の胸を撫でる。
「こういうときはつくづく、俺みたいなヒラでも、どっかで権力を握っておいてよかったなァと思うね」
 文は翼の肩に、軽く歯を立てた。
「別に。私は打算だけで動くほど妖怪できていません。まごころだけで動くほど強情でもないですが。翼さんとのセックス、私は結構好きですよ」
「そうか、俺は大好きだね。お前の腕も、胸も、腰も足も、それに目とか唇とか、顔全部、エロくてたまらねェ、見てるだけで勃つ」
 すでに翼の勃起は完全に復活していた。
「ふふっ、うれしい」
 文は唾液に濡れた舌を翼の口に差し込んだ。広い浴槽に、ふたりの舌が互いの口腔を行き来する音が、しばらく続いた。
「ぷはっ、んっ……んちゅる、ぬりゅ、んじゅっ、じゅじゅじゅぅぅぅ」
「おぶふっ、ふううっ、ふ……はっ、れぇろっ、じゅぶっ、じゅるるるるっ」
 舌が行き来するたびに大量の唾液をかき出し、嚥下する。その間、手のひらは相手の背中や腕を撫でていた。やがて、文の手が翼の股間に伸びる。
「もう入れていい?」
「ああ」
「あれで、イカせてあげますね」
 文の手には、しなびた風船のようなものがあった。そこに息を吹き込むと、瞬時に広がり、筏のような形になった。ビニールでできたマットだ。先日、河童の店で買った。はじめ発売された頃はビニールもごわごわしており、形もすぐに崩れていたが、年々改良を重ね、性能が良くなっている。今は翼のように太った男が乗って体を動かしまくっても、余裕を持って弾いてくれる。
「さ、どうぞ」
 翼は文の言葉のまま、マットにうつ伏せに横たわる。文は手元の瓶の蓋を開け、盥に中身を垂らした。とろみのある透明な流体が、盥を五分の一ほど満たした。お湯でそれを二倍に希釈して、両手でかき混ぜる。縦に、ちょうど水車が回るように、右手と左手を交互に回す。これも河童の店で買った。
 とろみのある流体を自分の胸や腹、太ももに押し広げ、さらに翼の背中にも塗り広げる。そして上からのしかかった。背中に乳房を押しつけながら、マットの間に手を差し込み、翼の胸、腹、太ももを撫でまわす。りゅ、りゅ、とマットがビニール特有の音を立てる。
 翼が感極まった声をあげた。
「うおォ、これはたまらん、うおお文ッ、文あっ」
 文は自分の上体を起こし、翼を仰向けにした。パンパンに膨れ上がった肉棒を、もはやじらさず、そのまま自分の肉壺にねじ込んだ。
「あふぅっ」
 自分の中に異物が入ってくる。体全体に痺れが走った。視界の端々が、水彩画に水を落としたように滲んでいく。
「はあああっ、あああっ、チンポッ、おちんぽ入ってますっ、ビキビキになった勃起肉イイッ、まんここすってるッ、いひっ、イイイイイッ、突いてっ、もっとついて!」
「おおおおおおっ」
 翼は文の腰をつかみ、全力で腰を振り上げた。
「ズンズン来るのぉ、震動すごい、ちんこ突き上げすごい! 締まりますッ、私のマンコきゅんきゅん締まってます、ほら、わかるでしょ、いいのッ、チンポ汁搾り取るわっ、出してねいっぱいビュービューッて、あなたのちんぽ袋空っぽになるまで、精子出し尽くしてェッ!」
「フオオオッ、オッ、オオオォォ、おあぁあああああがあああああ……あぉっ」

 びゅびゅぅぅぅぅっ、どくっ、どりゅりゅりゅっ、ぶびゅーーーっ!

 ブリッジをするように腰を高く突き上げ、翼は絶頂に達した。

 びゅびゅっ……どぷっ、びゅるっ……びゅっ

 絶頂が過ぎても、まだ射精は続いていた。
「あ……まだ、出てます」
「お前もまだ締めつけてるぜェ」
 文も翼も、表情に余裕が戻りつつあった。
「ふぅぇ、しかし出した出した」
 文が立ち上がると、粘液と体液でぐちょぐちょになったふたりの性器が離れ離れになった。愛液が、翼のペニスに垂れると、それに反応するようにまた少し精液が出た。
「私も、良かったですよ、翼さん」
「ちょっと風呂で一服していこうぜ」
 翼は気だるげに上体を起こした。ローションですべりやすくなったマットの上なので、バランスを取りづらそうだ。
「悪いですよ、一番風呂でしょう」
「誰もそっち使うとはいってねェよ、横にバブル湯があるだろう。そこだったら全部抜いてもそう手間はかからん」
「……あなたも勝手ですねぇ。じゃあお言葉に甘えまして」
 シャワーで一通りマットの上を流す。吸い込み口に口を当てて息を吸うと、瞬時に、また元のしなびた風船状のものに戻った。ふたりはべとべとの粘ついた体のまま、浴槽に身を沈めた。開業前のためか、バブル湯といっても、まだ泡は出ていない。ただの風呂と変わらない。
 文はヴァギナに指を伸ばし、ねりこまれた粘液を取っていった。精子の塊が、ゆらゆらとお湯の中を漂っていった。
「稟議書は出しておいてやるよ」
 お湯を両手ですくって顔を洗いながら、翼は言った。
「ありがとうございます。助かります」
 文は笑顔を見せた。その笑顔に見入って、しばらく翼は手が止まった。そのあと、照れたように、また顔を洗う。
「俺が言ってどこまで通るかわからんが、なるべく朝イチで議題に上るようにするよ」
「いえ、ご心配なさらず。あなたが言えば一発です」
「書面の体裁はもう考えてあるのか」
「そりゃもちろん。服着てから、渡しますね」


 新聞会社に向かっていると、後ろから呼び止められた。金髪に染め、ピアスをした青年が笑顔で手を振ってきた。天狗の袈裟も大胆にアレンジしている。
「文さぁん、文さんじゃないっすかぁ! 昨日はどうも、スッゲェよかったっすよ! 最高っした!」
「おや、那須野さん」
「にしても文さん朝早いっすねー、まだ八時前ですよ」
「十時開業に間に合わせるならこのくらいでしょう」
「いやいやいや、文さんって昼から悠々と出勤、ってかもう家で気が向いたら原稿書くぐらい悠々自適な生活だと思ってたんで。羨ましいぜくぅぅ~、って思ってたところです」
「そりゃ私だって言いたいですよ。羨ましいですねぇ、そんな生活してるひといるんですかねぇ。組織から自由になっているひとなんて」
「文さ~ん、昨日はマジ最高でした! やっぱ文さんは綺麗っすね」
「ありがとうございます」
 褒められて悪い気はしなかった。ただ、今はこれからのことに気を取られていたため、目の前のはしゃぐ青年にあまり関心を抱けなかった。
「文さん、良かったら今日とか、個人的に俺とヤリませんか? 複数プレイじゃできない濃密なことも、できますよ。絶対イカせる自信がありますね、俺は」
「今日は悪いけれど用事が立て込んでて、あなたのお相手をできそうにないんですよね」
「うわ、なんかつれないな。ちょっと待ってくださいよ文さん」
 先へ進もうとする文の前に回り込む。
「もう、なんですか」
「文さああん、昨日はあんなに激しく腰をすりつけてきたじゃないですか、そりゃないっすよ。ねえ、俺のテクすごかったでしょ、またヤリましょうよぉおおお」
「窪(くぼ)の園(その)」
「え?」
「店の名前よ。あとで検索してみなさい」
「そこにいつもいるんですね」
「私がいないときもあるけど。そういう目的のひとが集まるわ。ただ、わりとみんな礼儀正しいから、無作法者は嫌われるわ」
「でも、要する目的は俺と一緒でしょ」
「まあそうですね」
「噂には聞いたことがありますよ。妖怪とか神様も集まって、お相手を探すんでしょう。そっか、やっぱり実在したんですね。おっし、俺そういう秘められた高級クラブみたいなとこ大好物なんですよ。行ってハメまくってやる。そういや、そこの写真は取らないんですか? 文々。新聞用に。きっと高く売れると思いますよ、そういう闇の密会所みたいなところ」
「ほんと、無作法はいけませんよ。あそこの用心棒さん、結構強い上に、かなり数が多いですから。とてもカメラなんて撮れたものじゃありません。撮るにしたって、きちんと手続きをとって、これは撮っていい、あれは駄目、など面倒な決まり事を呑まないといけないんです」
「へへっ、俺たちは天狗ですよ。心配ご無用です。そこでモテモテになってみせますよ。そうしたら文さんも俺の良さをわかるってもんだ」
 那須野は喜び勇んで飛び去って行った。文は去っていく彼を一顧だにせず、新聞社へ向かう。
 鼻高天狗の那須野は知らない。彼が思っているより、はるかに文の鴉天狗内でのヒエラルキーが高いということに。それは新聞の能力を買われてではなく、純粋な戦闘力の故だった。彼女より速く、鋭い鴉天狗は、数えるほどしかいない。組織を上から動かすタイプではないため、外でも通用するような肩書きこそ持っていないものの、文の力を知る者はどの天狗のどのヒエラルキーに属していても、一定の敬意を払っていた。
 その文が好き勝手できない、という意味を、那須野はあまりよく考えていないようだった。

 天狗社会の情報管理は、鴉天狗が行なっている。
 原則として、生まれた種族によって職業が決まる天狗社会において、文もまたごく自然な流れで、新聞会社に所属した。ひとに指示を出したり、集団をまとめ一定の方向へ邁進したりする能力がないことは早くから自他ともに認めるところだった。鴉天狗の中でも目立つほどの速さと、抜け目のなさ、図太さから、好んで彼女を敵視しようとする者もいなかったが、仲間として囲い込む者もいなかった。彼女と関わることそのものが、出世から遠い行為であることは明らかだった。文は一般の新聞社員として、大新聞のこまごました記事を書いたり、各仕事部屋の備品の補充をしたりして、日々を過ごしている。時間ができたら、文々。新聞の執筆と、そのネタ探しに外へ飛び出す。

 開業してまもなく、上司に呼び止められた。
 応接間に連れて行かれると、案の定、疾風がいた。
「それでは私はこれで失礼いたします、疾風さん、何かあればなんなりとお申し付けくださいませ」
 上司の鴉天狗は上体と床を平行にするかのような低姿勢で、何度もお辞儀を繰り返して出ていった。出際に文に向かって囁いた。
「くれぐれも失礼のないように」
「わかってますってば」
 苦笑とともに、上司を送り出す。代わりに、社内でも五本指に入る美人秘書がやってきて、疾風と文にお茶菓子を持ってきた。秘書は頬を赤らめ、疾風に見入っていた。
 そんなにまでして見るものでもなかろうに、と文は思う。
 確かに疾風は容姿端麗だった。トレードマークと化している彼の眼鏡も、毎度少しずつ違っている。今日の細長いフレームは、彼の知的でクールな印象をさらに強めていた。黒々とした髪の毛はオールバックにしている。背は高く肩幅も広い。そして、何より鴉天狗の幹事長という地位だ。彼は文とあまり年齢が変わらないにも関わらず、鴉天狗という組織の実質的なトップにいた。大天狗たちや天魔は無論のこと、鴉天狗内でも彼より地位の高い名誉職にいる者は何人もいるが、実際に組織を取り仕切っているのは彼だった。
「職場でお会いするのは珍しいですね」
 文はお茶を啜った。
「今日、山の神様と折衝があります」
 疾風は淡々と振る舞っていた。だが、付き合いの長い文にはわかる。
「お辛そうですね」
「ええ、ストレスで胃に穴が空きそうですよ。射命丸さん、あなた、八坂殿とお会いしたことはありますか?」
「宴会場でなら。フレンドリーな方ですよ」
「そうですか、その印象をそのままお持ちになってください。私は、彼女が怖い」
「自分の利益が絡むとえげつない印象はありますね」
「自分の、というより自分の仲間たち、ですね。利害が一致しない相手には容赦しない。ご本人と話すと結構大雑把なところもあって、一見与し易そうなんですけど、細かいところまで意外と気配りが聞いている」
「守矢神社は、裏方が優秀なんですよ。それを使いこなす八坂様もたいしたものですが」
「射命丸さん、あなた、冷静に敵を誉めないでください」
「敵ですか?」
「少なくとも私の胃は痛い」
 天狗保守派の突き上げを疾風が一身に引き受けていることは、文も知っている。昔ながらの、天狗が妖怪の山を一党独裁していた時代を是とする保守派の勢力は、無視できないくらいに大きい。中には過激思想を持った連中もいる。彼らは新入りの山の神を排斥しようと、時期をうかがっている。そして、普段は誰とでも気さくに会話をする八坂神奈子は、状況次第では顔色ひとつ変えず武力を用いる女だ。
「今日の会談がうまくいくかどうか、私は心配でならないのです」
「がんばってくださいね、今の天狗社会で外務を担当できるのは、疾風さんぐらいしかいませんから」
 これは、文の本心だった。
「なんなら、元気出させてあげましょうか」
 文は、机に置かれた疾風の手の甲を引っ掻いた。疾風はその指を手でつかまえる。ふたりは目を合わせた。五本の指で、文の人差し指をこねくり回した。そのまま指を口に含む。文は、自分の指がしゃぶられるがままにした。残った四本の指で、疾風の頬や顎を撫でてやる。
「射命丸さん、ちょっと私の自慢話を聞いてください」
 指から口を外すと、疾風は眼鏡を外し、袂から別のケースを取り出した。前のよりもう少し薄くて細いフレームの眼鏡が入っている。疾風はそれと付け替えた。繊細な印象に傾いた。椅子から立ち上がり、講義をするように話し始める。
「この眼鏡は先日、私が特別にオーダーメイドで河童に作らせたものです。ご存知でしょうが、私は眼鏡の好みには大変うるさい。様々なカタログに目を通し、そこに自分の好みを反映させます。ミリ単位の長さ、コンマ何度の角度、そういったものが重要になってくるのです。眼鏡もまた、ひとが発明した装身具のひとつ。呪具といってもいいかもしれません。眼鏡をかけると知的に見えるでしょう。これは呪文をほどこしているからなんですよ」
 文は、二歩、疾風から距離を取った。話に辟易したためではない。ふたりの間では、暗黙の裡にルールが決まってしまっていた。文は内心でため息をつく。下駄を脱いだ。今は、普通にヤリたい気分だった。まさか疾風がここまでストレスを抱えているとは思わなかった。だが、そういう風に求められては、文としても燃えないわけにはいかない。
「この特注の眼鏡をしていると、心が澄み渡ってきます。何かいいアイデアが浮かんでくる気がする。こんな、日々の仕事に神経をすり減らす私にも、何か決定的な癒しが訪れてくれる気がする……」
 文は体をひねった。
 そして渾身の後ろ回し蹴りを、疾風の顔面に叩き込んだ。
「うるっせえええええんだよぉぉぉぉメガネメガネ言いやがってこの無能メガネがぁあああっ!」
「おっひ、おひぃぃっぃっ」
 眼鏡が割れ、レンズが疾風の目のまわりに刺さった。疾風はそのまま仰向けに大の字に倒れる。文はすかさず足蹴にした。
「ホラホラホラァ、どうしたどうした、自慢の眼鏡は木端微塵になっちゃったわよぉ、みじめったらしいわねぇ、そんな床に這いつくばっちゃって」
「げふっ、えふっ、おぐっ、や、やめてください射命丸さん」
「さんだとぉ!? お前ッ自分の立場がまだわかってないようだねぇこのメガネは!」
 腹を踏みつける。
「げほっ……しゃ、射命丸様ッ」
 普段、怜悧な視線で周囲を威圧している男が、顔を歪め、少し血を流して、曲がった眼鏡をつけている有様を見ると、文の背筋に、快楽の波がジンジンと昇り、広がっていった。
「声が小さいよォオォォッッッホォオォァ!」
「しゃ、射命丸様! 射命丸様ああ!」
「みじめったらしく豚みたいに喚きやがって!」
 腹を、顔を、何度も踏みつける。
「お、おやめください射命丸様、もっと、あなたの足でもっとゆっくり踏んでくださぶえっ」
「私に指図するってぇの!? お前、自分の立場というものがわかってないみたいだねこのクサレ変態先輩はァァ!」
「えふっ、ごふう」
「ホラホラ豚は豚に似つかわしく、豚みたいに鳴けってんだよ
「げふっ、おふっ」
「おふじゃないよおふじゃ。あんた日本語わかる? 聞こえた? 豚のように鳴くんだよブヒーブヒーと」
「ぶ、ぶひー」
「そんなのただ言っているだけだろうがああ!」
 したたかに頭を踏みつける。
「うぐぇ、おぐっ、んごーっ、んごおおおお」
「よおしよし、鳴けるじゃないか豚め、なぁ豚」
「はいっ!」
「言ってみなさいよ」
「はいっ!」
「私は豚ですってね」
「はいっ! しゃ、射命丸様、私は豚ですッ、職場のストレスで毎日家に帰っては憂さ晴らしの方法ひとつ知らずひとり途方に暮れているしがない一匹の豚ですぅぅぅ!
「よおしよくできたわねぇ、偉いわねぇ」
 股間を足でぐりぐりと踏みつける。
「あう、おうっ」
「あらあら服の上からでもわかるわ、もうこんなにパンパンに勃起させて。鴉天狗の下っ端の女に罵られてこんなに興奮したのね」
「ううっ、うふぅ」
「返事はァ!」
 踏みつける力を強められ、ますます疾風は大きな声をあげた。
「おふぅぅっ、はいいぃ!」
「シコってほしい?」
「はいっ、シコってほしいです!」
「シコシコってほしい?」
「はい! シコシコってほしいです」
「じゃあ自分で脱ぎなさい」
 疾風は仰向けに倒れた状態で、いそいそと服を脱ぎ始めた。
「ああ、なんだか催してきちゃったわ」
 文はミニスカートをたくし上げた。
「射命丸様、ここに、便器がございます!」
 服を脱ぎながら、疾風は身をくねらせた。その言葉が終わらないうちに、黄色い液体が放物線を描いて、半裸の疾風に浴びせられた。
「ひどい顔ですねぇ」
「ああぁ……」
 疾風は口を開けて舌をだらりと垂らしていた。目のまわりの血と、文の小水が混じっていた。傷に染みて痛いはずだが、そういう様子は見受けられなかった。
「きったない豚ねぇ」
「おお……私も……」
 文の足に、生温かいものがついた。見ると、勃起の先端から噴水のように小水が飛び出していた。床に黄色い水溜りが広がっていく。肉棒から最後、しぼり出るようにびゅっと出た。疾風は小さく震えた。
「なァァァにを粗相してんだぁぁこの豚がぁ! 汚ねぇだろうがよォ人前で小便なんか漏らしやがって!」
 文は足を振り上げ、裸の腹を何度も踏んだ。文の方はまだ全部出切っていなかったので、文が足踏みをするたび、文の股間から残った液体が振りまかれた。
「射命丸様ッ、どどうぞ!」
 用を足したことで少し萎えていた疾風のペニスは、踏まれていく過程で、今度はもっと別のものを出そうと、再び大きくなってきた。
「どどうぞじゃないわよどどどうぞじゃァ」
 今度は剥き出しになったペニスを踏む。
「どう? この靴下越しの感触がたまらないんじゃないかしらこのド変態の半端なマゾセックス大好き中毒の豚はァァァアア」
「最高ですゥ! 靴下でも素肌でも最高ですゥ! 私の玉袋はもう限界寸前です、出します出します、射命丸様の美しきおみ足にザーメンぶっかけたいですぅぅぅ!」
 文は、内側から破裂しそうなプリプリの肉棒を見て、舌なめずりをした。咥えたい。が、思いとどまった。足を離す。今は、疾風のターンだ。ここで水を差すのは、却って悪い。そして、プレイの最中にこんなことを考える時点で、自分はとても真正のサドなんかにはなれないなと、文は思う。空気を凝縮し、風の糸を創る。疾風の四肢を縛り付けた。疾風は、跪いて、頭を床に着け、尻を高く上げ、両腕は背中で縛られた。的確、かつ厳重に縛られているので、それ以上身動きはできない。
 文はスカート越しに自分の股間を揉む。揉んでいくうちに、そこは盛り上がってきた。スカートをめくると、陰茎が生えていた。文はしゃがみこみ、突き上げられた疾風の尻を撫でた。ビクン、と尻が跳ねる。さらに、肛門に指を添わせ、玉袋、裏筋とたどっていく。少し文が指に力を込めるだけで、疾風は裏返った声を上げて反応した。
「はぁっ……オォ、射命丸様、どうか、どうかイカせてください」
「んんー?」
 疾風の裏筋をたどった手で、そのまま剛直を握り、上下に扱く。ひとコキするたびに疾風の尻や腿が震えた。
「イカせてあげましょうかぁ?」
「ハイイッ! どうかお願いいたしまするゥゥ! イカせてくだしゃいましぇええええ!」

 どぴゅっ、ぼびゅびゅっ!

 すでに疾風は射精を開始していた。文の右手にこってりとした精液がたまった。勃起はまったく衰えた気配がない。疾風は自分が射精したことも気づかぬ様子で、尻を振っている。文は手にこんもりと溜まった精液を、疾風の肛門に塗りつけた。
「おふぅ」
「この畜生キモガラスめ、淫乱に尻をふりやがって。あんたの精液であんたのシリアナ濡らしているわよ、どう、気持ちいいでしょう? アブノーマル大好きな腐れチンポのノイローゼ君?」
「はい、キモ……気持ちぃです……大変気持ちがよろしゅうございます」
 あまりの快楽に、疾風は息も絶え絶えだった。文は発破をかけるように疾風の尻を音叩く叩いた。
「声が小さい! どうして欲しいか言ってみなさいよ、大きな声で、宣言しなさい」
「ハイッッ! この卑しく汚らしい小便まみれの下種豚のケツ穴に、射命丸様の素敵で立派なグングニルオチンポをぶちこんでください! そして跨りながらわたくしめの背中をナメナメしながら、ちんこをシコシコシコしてください! そして、そして!」
「注文が長ったらしィンだよォォォ!」
 文は望み通り、疾風の肛門に己のペニスを突き立てた。
「ぬふぅぅぅぅあふぉぉぉぉっっ……ああああおおっ、ぜ、前立腺がよすぎます、射命丸様!」
 疾風のペニスがひとりでに跳ね上がり、ザーメンをまき散らした。

 びゅびゅっ、びゅるぅーーっ! びゅくん、びゅくん。

 文は疾風の背中にのしかかり、乳房を押しつけながら、疾風の肉棒を扱きあげた。
「ホォラホラ、ケツ穴ほじられながらチンコいじられて、最高だろォが、天にも昇る心地だろうがァ! 鳴けよ! プライドかなぐり捨てて鳴けよォ!」
 文は激しい興奮に突き動かされるまま、背中から胸を離し、疾風の太ももをがっちりとつかみ、暗い悦びとともに腰を振りまくった。
「おおぉっほおおおおおおお!! 出る、出るぅぅううっ! 出すッ出しますッ、ウオオオオオオ、ああぁぁ、ケツ、お尻っ、ちんぽッ! 射命丸様ッ、射命丸様ァァァァ!!」

 どぴゅるるるっ! ぼぴゅるっ、びゅぶっ、ぶびゅぅぅぅぅっ!

 文と疾風の射精が重なった。
 疾風は体をねじり、頭を床にこすりつけ、押し寄せる快楽の波に耐えていた。
「おぉ……ぉぉ……ふぅ」
 満足げな息をつく疾風の肛門から、文は肉棒を抜いた。文は乾ききった自分の口腔を舌で舐めまわした。口の中が粘つく。体に気怠い疲労感が溜まっている。身を乗り出し、疾風の顔を覗き込んだ。こうして間近で見ると、遠目では見えない疲労の皺が、顔に深く刻み込まれているのがわかる。
「アキラ先輩」
 文は彼の頬を舐めた。しょっぱい汗の味がした。薄目を開けて、疾風は文を見た。文は両手を彼の頬にそえ、口づけをした。
「元気出してください、ね。たまにはゆっくり休んで」
 そして男から離れ、身づくろいをして、部屋を出ていった。


 大会議場は妖怪の山の、大きく窪んだところに建てられている。武道場のような、板張りの大部屋だ。百人はゆうに収納できる。全幹部が集まる年末年始の会合なども、ここで開かれている。
 下っ端の天狗たちが、建物のまわりに注連縄をつけたり、簡易御柱を立てたりして、山の神様の歓迎ムードを演出していた。
『手洗いはこちら』
 山彦は、大会議場のすぐ隣に別棟として建てられたトイレに、張り紙をつけた。
「おや、お仕事に精がでますね」
 山彦の隣に、風をはためかせ、文が着地した。
「おう、射命丸か。お前、また余計なサービスしてくれたな。浴槽替えるのめんどくさいんだぞ」
「ひょっとして、見ていたんですか」
 山彦は文の顔から、ブラウスを膨らませた胸元、そしてフリルのついた黒いミニスカート、白く伸びた足を順に見ていった。
「見ちゃいなかったがな。クマさん、朝から機嫌いいぜ。昨晩あんだけヤッてたのに、お前らも元気がいいこった」
「うふふ、羨ましかったですか」
 山彦は応えずに、大会議場の壁に『私たち天狗は、山の平和を願っています』と書かれた紙を次々と貼っていった。やたらかわいらしい天狗が、満面の笑みを浮かべたイラストが描かれている。
「どのくらい、引き連れてきますかね、あちらは」
「さあな。まあ、大会議場に入りきるぐらいだと助かるが」
 張り紙の作業を終えると、山彦は腕時計を見た。ちょうど十二時だった。
「よし、休憩に入るか」
「もうこんな時間ですか」
 文も、山彦の腕時計を覗き込んだ。髪が、山彦の頬にかかった。
「お前、ちょっと近いぞ」
 そのまま文は山彦を見る。甘い息が、山彦の鼻をくすぐった。山彦は目の前の、厚くぽってりとした唇を吸った。すぐに相手の唇から舌が出てきて、山彦の舌を絡め取る。たちまち周囲の空気が湿っていく。ぴちゃ、ぴちゃ、と舌の間で唾液が躍る。
「どうした……お前」
 山彦はいったん口を放した。
「気分ですよ」
 文は山彦の胸に顎を押しつけるようにして、上目づかいで見上げる。手は、山彦の袈裟の上から、股間を撫でまわしていた。山彦はかすれた声をあげる。
「ああ、反応早いなあ。もう大きくなってきた」
「そりゃ、お前、というか、ひとが」
 文の肩を手でつかみ、強く引き寄せながら、山彦は周囲を見回した。今のところ、大会議場とまわりの木々のおかげで、誰にも見られてはいないようだ。だが、ちょっと離れたところでは誰かが作業していたり、雑談をしたりしているのが聞こえる。
「ここじゃ、まずいだろ」
 そう言いながらも、足を少し広げ、膝を曲げ、文の手の動きに合わせるように、腰をゆっくりと前後上下に動かしている。
「もっとひとのいないところで」
「あと一時間で会議が始まるわ。あまりゆっくりはしてられないでしょう」
 帯を解き、山彦の肉棒を直接握る。山彦は反射的に腰を引いた。文は逃さず、しっかりと握り、素早く前後させる。早速先端から先走り汁が出て、文の手のひらを湿らせた。
「おま、ちょ、待て、早い」
「会議の前に、あなたたち山伏天狗は列整頓をしなきゃいけないから、急がないとね」
 建物の陰から誰かの話し声が聞こえてくる。文は、ペニスを握っていない方の手で、トイレを指した。
「お誂え向きの場所があるじゃない」

 男子トイレは、入って左手の壁に小便器が八つ、右手に大便用個室が四つあった。一番手前の大便用個室はドアが閉まっていた。
「誰か使っているみたいだな」
「なに? 個室がよかったの? あと三つ空いているわ」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「いいじゃない、ここで」
 そういって、文は床に膝をついて、山彦の袈裟をめくり上げた。
「ほらもう、おちんちん、こんなビンビン。はぷっ、んくっ」
「お、おいマジか……うおっ」
 手で何度も刺激を受けていたため、すでに山彦のペニスは臨界点が近かった。
「ちゅるっ、じゅるっ、ぷはっ……汗と混じって、いやらしい匂いがする……」
 うっとりと目を細め、唾液にまみれたペニスに頬ずりした。髪の毛が何本かペニスにはりついた。山彦は、閉じられた大便用個室にまだ目をちらちらと向けていたが、手は、文の髪の毛を何度も梳いていた。
「んん……? んぷ、はっ、れるぅぅっ。髪で、してほしいの」
「ああ」
「いいわよ」
 山彦は腰を押し出し、文の髪の毛にペニスを突き込んだ。べとべとのペニスに、文の黒いつややかな髪の毛が幾重にも絡まり、はりついた。自分で扱こうとする山彦の手をやさしくはねのけ、文は髪の絡まった熱い剛直をぎゅっと握った。前後に扱きたてる。
「ウ、ウォッ、オッオッ」
 山彦は小刻みに呼吸を繰り返し、まもなく精を放った。

 ドピュッ、ビュビュッ、ブビュルッ

 文の髪と、手に、こってりとしたザーメンが放たれた。濃い雄の匂いがたちこめた。文は手の動きをゆるめはしたが、止めずにそのまま刺激を続けていた。精液でぐっしょりと濡れた髪の毛は、何度も肉棒とすりあわされるうちに、石鹸のような泡を立てはじめた。ペニスを少し持ち上げ、空いた手で玉袋を愛撫する。
「ふふっ、また固くなってきた」
「そりゃ、こんなされたらよ……」
「もう一回手で出しておく? でも、あまりゆっくりするといけないわよね」
 文はペニスから手を離した。
「あっ……」
 文はブラウスのボタンを外し、前をはだけ、乳房も臍も露わにして、床の上に仰向けになった。足を広げると、自然とミニスカートの裾がたくしあがる。
「ちんぽ入れて……」
「お、おい、ちょっと汚くないか、というか射命丸、お前、今日どうした」
 ためらいがちな口調と違い、下半身はびくんびくんと上下に跳ねている。さっきの射精でペニスについていた精液と、新たな我慢汁が飛び散って、文とトイレの床に跡を残した。
「たまにはこういうのもいいじゃない。乱暴に、ヤッてよ」
 山彦も床に四つん這いになった。啄むような控えめなキスをしながら、亀頭をヴァギナに触れさせた。入り口の辺りで上下にこする。
「んむっ、ふぁっ、それっ、それいいッ」
 キスの合間に文は喘いだ。
「も、我慢できないの、お願い、入れてぇぇっ、山彦ッ、チンポッ、チンポ入れて!」
 入り口でぺたぺたと触れていたところを、いきなり奥まで突きこんだ。文は頤をそらし、山彦の袈裟に爪を立てた。かすれた声を上げる。
「アア……っ、ああ……っぁぁぁおぉ……」
 山彦はもう余計なことは言わなかった。言う余裕がなかった。快楽の衝動に従い、ひたすら腰を振りまくった。

 びゅびゅ、びゅるるるっ、ぶびゅーーーっ!

「ッハァ……出てるぅ、山彦もっとだしてェ……」
 声は途切れ途切れだが、腰の動きは衰えるどころか、ますます激しさを増していく。山彦も、抜かずにそのまま続けた。山彦の剛直は出した直後こそ固さを失いかけたが、すぐに復活し、持ち主の力強い意思に応えた。
「いいっ、射精いいのぉ……精子熱い……勃起チンポ、素敵ぃ……」
「しゃ、射命丸、射命丸ッ……」
 いつ果てるともない肉のぶつかり合いに、ふたりは没頭していた。
 だが、それもやがて終わりは来る。尻のあたりから股間にかけて、快楽の波がざわざわと生まれ、押し寄せてくるのを山彦は感じた。
「射命丸、射命丸、出るぞ、出すぞ射命丸ッ!」
「うん、ん……うんっ」
 文は上の空で、うなずくばかりだ。膣がぎちぎちに締まる。
「オッ、ア……搾られる……うあぁっ」

 ぼびゅっ、びゅびゅびゅ、びゅばっ、どちゅっ

 文の体に手をまわし、全力で抱きしめる。文も、腕を背中に回し、足と足を絡め、これ以上ないほど山彦と密着した。

 どりゅっ、びゅる……びゅっ、どぴゅっ

 射精は勢いをなくしていき、やがて止まった。
「はぁっ、はあ……ハァァッ」
「んお……うぉ……はっ、はあっ、くは……」
 ぎっちりと抱き合ったふたりの力が、どちらからともなく、抜けていく。それでも、立ち上がる気力はふたりともわかなかった。文は、天井と、視界の隅にある山彦の袈裟を見ていた。山彦は、トイレの床のタイル模様と、文の精液にまみれた髪の毛を見ていた。
 大便用個室の水が流れた。
 ドアが開いた。
 文も山彦も、そのままの姿勢で、目だけを、開け放たれた大便用個室に向けた。
 赤い和装を基調とした女が立っていた。髪の毛は青紫だ。長身の、堂々とした体格だが、女が持つ柔らかさもまた、少しも欠かさず、併せ持っていた。
「八坂……様?」
 文は、ぽつりと呟いた。
「八坂様、ここ、男子トイレですよ……何やってるんですか」
 八坂神奈子は、ふたりを見下ろし、それから男子トイレの壁を見た。その向こうには女子トイレがあるはずだ。
「故障していたのよ、女子トイレ」
 神奈子はそう言うと、悠然とした足取りで、トイレから出ていった。やがて、外でどよめきが広がっていく。午前中から、彼女ひとりのために、多くの天狗が準備に追われていた。それが、突然、伴も連れず、天狗社会のど真ん中に現れたのだ。情報は数十秒で駆け回り、たちまち空は天狗たちの羽ばたく音で満たされた。
「射命丸」
 心地よくのしかかってくる重さとともに、山彦の声が降ってくる。
「わかっているな」
「ええ、ヤバイです」
「早くここを出ないと」
「これだけ天狗たちが慌てて集まってきたら、誰かがトイレを使うでしょう」
 ふたりは瞬時に立ち上がると、服の身づくろいもそこそこに、窓から外へ飛び出した。


 川原では大きな箱が分解され、中身のこまごまとした物が整然と並べられていた。河城にとりは、地面に寝転がって、図面と睨みあっていた。右手には、今まで分解に使っていたペンチが握られている。
 上空で風が渦巻いた。にとりは眉をひそめた。自然に吹く風にしては、せかせかと気が急いている。その時点である程度訪問者が限られてくる。面倒くさそうに頭を掻きながら、立ち上がった。
 天狗がふたり連れで空から降ってきたときも、さほど驚かなかった。予想の範疇内だ。その服が、雄臭い雌臭い体液でしっとりとしめり、髪の毛や口回りにもその痕跡が色濃く残っているのを見て、にとりは呆れて叫んだ。
「あんたら真昼間から何やってんの!」
「まあまあにとりさん、これには事情がありまして」
 文はニコニコしながら、宥めるように手のひらを前後に揺らした。
「天狗社会が山の神を迎え撃とうって緊急事態に野外でしっぽりしなきゃいけないどんな事情があるっていうんだよ」
「いえ、私のまんこがですね」
「うるさいなそんな言葉昼間っから聞きたくないよ」
「あと五時間もすれば暗くなりますよ」
「とにかく、私のせっかくの優雅な思索の時間を邪魔しないでおくれよ」
「そうそう、そんなことはどうでもいいのでした。にとりさん、洗濯、お願いできますか? いやあこういう困ったときに助けを求められる仲間がいるって、本当に素晴らしいですね」
「あーそうだね、よかったね」
 にとりはごろりと寝転がって、わざとらしく文たちに背中を向けた。文は口元には変わらぬ笑みを浮かべたまま、目を細めた。
「今までお貸ししたものを……今ここで徴収してもいいんですよ?」
「川に入りな」
 にとりはすぐに立ち上がった。
「二十秒で終わらせるよ」
 文と山彦が川に入る。真ん中まで行くと、腰まで水に浸かった。

水符「河童のフラッシュフラッド」

 川面が揺らいだかと思うと、水柱が立ち、ふたりを飲み込んで空高く跳ね上がった。水柱はさらに、巨大な蛇のように縦横無尽に空を飛び回り、最後は再び川面にその蛇頭を叩きつけるようにして墜落した。あとには、何食わぬ顔で立っている文と山彦がいた。体はすっかり水浸しだ。
「いやあ、助かりました。これで何とかなります」
「乾かさなくていいのかい」
「いえいえ、こんなの、飛んでいれば自然と乾きますよ。じゃっ」
 文の姿が消えたと思ったときには、すでに上空で小さくなっていた。
「ありがとな、河童さんよ。俺は天狗の山彦ってもんだ。じゃあな」
 文とにとりの関係を測りかねて、とうとう諦めた山彦は、とりあえず最低限の社交辞令だけは守ろうと、挨拶をして、文を追った。


 大会議場のまわりには、物見高い天狗たちが集まっていた。中には、天魔、大天狗たち、さらに鴉天狗、鼻高天狗、白狼天狗、山伏天狗らの幹事長はじめ各幹部連など、天狗の上層部しか列席を許されていない。
「あれっ、文。文じゃないの」
 ピンクがかったブラウスに紺のネクタイ、紫と黒のチェックのミニスカートを着用した、姫海棠はたてだった。
「あら、何かいい写真は写せましたか」
「全然駄目。念写しようとしたけど、写せないの。やっぱり列席しているメンツがメンツだけに、おいそれとは念を通してくれないわね。遠写が駄目なら近写ということで直接申し込んでみたけど、外交機密だから取材はお断りですって」
「バカですねぇ、そんな取材する気満々でいったら、拒否られるに決まっているでしょうが」
「じゃあどうすればいいのよ」
「あとで、会議に出たひとから、何の気なしに、フラッと聞けばいいんですよ。あなたは警戒心を抱かせすぎなのよ」
「ふーんそう。あーあ、どうにかして中に入りたいのよね」
 しゃべりたいだけしゃべったので、文の言葉は左から右に流れたようだ。ぶつぶつひとりごとを言いながら、手元のケータイをいじり始めた。
「私、あとで中にいるひとと話す機会がありますが、何かネタがあったら貸しましょうか」
「ほんと?」
 すぐにケータイから顔をあげ、嬉しそうな顔をして文を見る。この現金さが、この子の強さなのかもしれないな、と文は内心で思う。
「ええ、その代わり」
「なんだやっぱりそう来たか」
「伯楼木霊」
 たったその一言の効果は絶大だった。はたての肩はびくんと跳ね上がり、目はあらぬかたを見やり、口はおぼつかなげに半開きになった。
「な、な、な、こ、木霊く……伯楼がどうかしたっていうのよ」
 文は大仰にため息をついた。
「あんまりわかりやすすぎるのもつまらないですね。もっと反応をひねってくださいよ」
「う、うるさいわね、彼とはなんにもなってないわよ」
「残念ながら、が抜けてますよ?」
「うるさいうるさい、あんた関係ないでしょ、なんで伯楼の名前知っているのよ」
「まあ、先日ちょっとした縁で知り合ってからは、ちょくちょく顔を合わせるようになりましたね」
「私たちと違って、彼は純粋なの。あんたと会っているときっとロクなことにならないわ。今度注意してあげないと。ちょっと、文、あんた何ニヤニヤしてるのよ」
「いえいえ、木霊君は純粋ないい子ですよ」
「何を知った風な。あんたに伯楼の何がわかるのよ」
「あまりわかっていないかもしれません。なにしろこの通り、彼とは結構な歳が離れていましてね」
「あんたの場合、歳が近くても彼とは絶対にわかりあえないでしょうね」
「あの……老婆心ながら一応言っておきますが、木霊君も立派な男の子ですよ。色々と健康なことも考えます。あまりあなたの理想を押しつけない方がいいと思いますよ」
 今度は、はたてが思い切り派手にため息をついてみせた。
「あんた、やっぱりわかってないわねぇ、そんなことわかっているわよ、そういう、年頃の男の子らしいところだってあるに決まっているじゃない、そういうのも含めてなの。何も私だって、いつまでもキラキラしたフリルを着た美少女たちの幻想世界を夢見ている少女じゃないのよ。白馬の王子様なんていらないわ。私は現実をちゃんと見ているわ」
「はいそうですねまああなたがそう思うのならそうなんでしょうよ。おお、みんな出てきましたね。ちょっと取材してみます。それじゃあはたてさん、これは贈り物です。どうぞ受け取ってください」
 襟元から封筒を取り出し、はたての手に乗せる。そこに書かれた文字を見てはたては目を白黒させた。


 会議は、大会議場が夕日に染まる頃、お開きとなった。
 会議に列席した天狗は、誰も彼も口をそろえて疾風を褒め称えた。たったひとりで天狗の中枢に乗り込み、一見親しげな様子を見せつつ、その実背後に膨大な信仰の塊を背負ってきた八坂神奈子相手に、一歩も引かなかったらしい。しかも、自陣の頑迷な保守派が何か言おうとすると、それを毅然としてたしなめた。神奈子は会議の終わりに、疾風を名指しした。
「私の名前は八坂神奈子。一度聞いてはいるが、今一度、名前をお聞きしたい」
「疾風光と申します」
「鴉天狗の疾風光、ありがとう、名前を教えてくれて」
 この日の会議で、疾風はさらに株を上げた。


 窪の園は、川の上流から少し離れた崖にある。正確には、その崖に穿たれた穴の奥だ。
 崖の近くに森がある。たいてい、待ち合わせはそこでする。崖の真下で待ちぼうけなど、みっともないからだ。
 待ち合わせは暗闇の中だ。たいていの妖怪は夜目が効くので灯りは必要ない。それ以前に、視覚に頼ることもない。夜の逢引きは、決められた拍子の口笛だったり、葉を鳴らす音だったり、体に身に着けた化粧品の香りだったりした。
「文さん」
 茂みに入ると、すぐ声をかけられた。
「桃の匂い、いいですね」
「ありがと。木霊君のお香、結構渋いわね」
「年寄り臭いって、よく友達からは言われます。でも、好きなんですよね」
「いいと思うわ」
「あのひとも気に入ってくれるといいんですが」
 木霊はそう言って、目を伏せた。
「急に呼び出したりして、迷惑に思われないでしょうか」
 文は木霊の肩を叩いた。
「大丈夫よ、木霊君。私が保証する。あの子はきっと来るわ」
 木霊は顔を赤らめた。今日の文は敬語が少ない。
「ほ、本当でしょうか。集会で時々顔を合わせるくらいで、挨拶ぐらいしかしたことないんです。しかも、鴉と白狼が集団で顔を合わせると、いつもロクなことにならないんです。だから、ひょっとしたらはたてさんも、僕を白狼天狗のひとりということで、嫌っているかもしれません」
「そんなことないわ」
「文さん、手紙を見たときの彼女の反応、どうだったんですか!? 本当のことを言ってください。変な期待をして天上から叩き落されるよりも、今のうちに現実を知っておきたいんです」
「木霊君、私は本当のことしか言わないわ。だって、仮にも新聞記者ですよ。はたては、君の手紙をもらって、少し、はにかんでいたわ」
 文としてはごくごく控えめな表現だった。今すぐにでも股を広げてあなたのチンポを入れてもらいたがっていましたよ、と言いたかったが、そこは自重した。
「は、はにかんでいたってことは、どういうことでしょう……照れてたのかな、それとも、本当は迷惑だったけど文さんの前だったから遠慮したのかな……」
「そんなことないわ、自信を持って。あなたの想いを真剣にぶつけたら、きっとあの子も想いを返してくれるわ」
「……はい!」
「そうしたら、あなたなりのやり方で、あの子をたっぷりとかわいがってあげなさい。それだけのことは、教えてあげたつもりよ」
「はい……文さんには、色々教えてもらって、本当に、感謝していますっ」
「いいのよ、私も楽しいから」
 文は木霊を抱き寄せ、股間をさすった。
「オチンチン、もう大きくしているわね」
「は、はい……ッ」
「でも、焦っては駄目よ。急にオチンチン大きくしたら、あの子びっくりしちゃうから」
「や、やっぱり引いちゃいますか」
「表面上はね」
 文は木霊の股間から手を離した。耳たぶを噛む。
「でも、大丈夫。あの子も本当はこういうこと、すごく好きだから。昔、私が教えてあげたの。保証する」
「文さんが教えられたんですね……そうしたら、もう何の心配もいりません」
 木霊は引き締まった顔つきになった。文は無言でうなずき、木霊から離れる。
「ほら、来たわ、梅の香りよ……河童が売っている人口梅の香水……あの子、安物をつかまされたわね」
「今度、一緒に香水を買いにいきたいと思います」
「いってらっしゃい、健闘を祈るわ」
 文は満面の笑みを浮かべて木霊を送り出した。はたては、森の前で挙動不審に振る舞っていた。彼女も知識上、窪の園の近くにある森がどういう意味を持っているのかは知っている。だが、いまだ自分が使ったことはなかった。
「ひ、姫海棠さんっ」
 木霊が茂みから姿を現した。はたてはツインテールの髪と、肩を跳ね上げる。
「こっ、こここ木霊君っじゃなかった伯楼っ」
 ふたりは向き合う。ふたりとも、あ、とか、う、とか、相手の名前をどもりながら言うばかりで、一向に話が進まない。
 文は苛々してきた。
「ひめ……はっはたっはたっはっは」
「はっ、は、はは、はいっ」
「僕は、あなたが、すすすすすす」
 文は、何か的確なアドバイスを木霊にしようと、隠れていた木の上から、顔を覗かせた。
 はたてと目が合った。
「ち、違うの、これは違うのわあああああ言いふらさないでえええええ!」
「ああっ、はたてさん!」
 はたてはなりふり構わず飛んで逃げた。白狼天狗の木霊に追いつけるスピードではない。
「チッ、あのバカラスが」
 文は舌打ちし、枝を蹴って追いかけた。あとに風が巻き起こり、森を一斉にざわつかせた。
「ち、違うのよおぉぉぉぉちょっと告白されそうな雰囲気に似たような雰囲気になって、あ、あ、これってひょっとして告白!? 告白的な雰囲気的!? とか思って期待してそうだったとか、そんなんじゃないからぁぁぁぁ!」
「こぉのボッケガラスがぁぁぁ木霊君の顔をきちんと見ました? 完っ全っにあなたに惚れてますよ? この馬鹿馬鹿鴉、ああ勿体ない、ひとがせっかくお膳立てをしてあげたというのに! どうせマンコぐちゅぐちゅに濡らして期待しているんでしょーがっ! あまあまラブラブなシーンを私に見せてくださいよぉぉっおおおおお!」
「イヤッイヤッ、私、そんなえっちな女じゃないもん! あんたみたいなビッチじゃないもん!」
「ほうほうほう、ほほうほう、そんなことおっしゃいますかはたてさん! その昔、毎夜毎夜、私の腕の中でアヘ顔さらしていたのはどこの誰でしたかねえ! 忘れたとは言わせませんよォ、はぁーたてぇーさんはったってっさぁぁぁん!」
 文はスカートを脱ぎ放った。勃起したペニスが空を切り裂く。
「イヤアアアア思い出させないでえええ!」
「思い出させてあげますよぉぉぉぉ、ねぇ、ふぁぁああぁぁぁっとぅぉわぁあああっとぅぅぅぅぅえええええぃぃぃぃっっっすぅぅうぅううわぁあああああぁぁん!」
 山の夜空を、ふたりのアマツキツネが高速で駆けていく。
 ひとりの天狗が、ひとりの天狗を振り切るため、山の岩壁を蹴って方向を急変化させる。追う天狗もすぐに岩壁を蹴り、追いかける。追いつかれまいと、逃げる天狗は行く先々の岩壁や大木を蹴って、方向転換をし続ける。だが、追う天狗は決して逃さない。
 まるで遥か天空でばら撒かれるはずの流星が、すぐ真上の夜空に降りてきたようだった。右へ左へ、西へ東へ、ふたつの流星が行き交う。

「幻想風靡」
「幻想風靡」

 そして、ふたつの流星はひとつになった。
「はぁぁああぁぁぁっ……ア、アアアアッ、入った、なんか入ってきたのぉぉぉぉお、いやっ、アァン、抜いて、イヒッ、抜いて、抜き、ぬっ、ヒッ、アヒィッ」
「ああやっぱりはたてさんはかわいいですねえ」
 文は下半身に充足感を味わいながら、岩壁を軽やかに蹴って、反転した。
「ンヒッ」
 その衝動が来たのだろう、はたてがひときわ激しく眉根を寄せた。
「ふふふ、子宮の奥にズンと響いて気持ちがいいでしょう」
「ち、違うわよ、こ、これは」
 岩壁を蹴り、またも方向転換する。
「あふぅっ」
「クセになりそうですね、これは」
 速度を落とさず、山を蹴り木を蹴り、夜空を駆けていく。流星のあとには、喘ぎ声が尾を引いた。

「幻想淫靡」

 とうとう、重なり合った流星は、元の森の前に墜落してきた。轟音を立て、土を吹っ飛ばし、地面を抉った。
「う……うぅ。え、え?」
 衝撃を覚悟して頭を抱えていたはたては、目を開いた途端、驚愕の叫びをあげた。文が、身を挺してはたてを守っていた。かろうじてはたての上半身だけが地表に出るほどに地面を抉る衝撃だった。文は今、仰向けになり、大の字になっている。そして、彼女の腰ははたての腰とつながっていた。騎乗位の体勢で、地面に激突したのだ。
「あんた……どうしてッ」
「ふふふ、私は新聞記者です。おもしろい記事を書くためなら、演出もためらいませんよ」
「どういう意味……」
「はたてさん!」
 木霊が駆けつけてきた。その姿を見た途端、はたては自分の膣が強く締まるのを感じた。下で文が小さく呻いて射精した。
「大丈夫ですかっ」
 はたての背中に腕をまわし、引き上げる。膣から文のペニスが抜けた。はたては体に力が入らなかったので、そのまま木霊に倒れかかってしまった。
「あの、は、はたてさん。ひょっとしてどこか怪我をしているんですか」
「ううん、違うの」
「そうか、よかった……」
 はたての胸は、木霊の確かな心音を感じていた。それは早鐘を打っている。同じように、はたての動悸も激しくなる。右手が、木霊の胸に伸びた。左手は、股間に伸びた。
「はたてさん……」
「ごめんね、木霊君、ごめんね」
「どうして謝るんです、はたてさん」
「私、君に、色々言いたいことあるのに、ありがとうとか、うれしいとか、すすす……す、だとか、なのに、こんなはしたないことをまず君にしようとしている。こんな女で、ごめん。けど、もう止まらないの」
「そんなこと、ないですよ。僕も、ずっとはたてさんと、こうしたかったんです」
 木霊の指がはたてのヴァギナに入った。まず中指がなんの抵抗もなく入り、さらに人差し指と薬指をねじ込んでも、彼女の膣は快く受け入れてくれた。断続的に指が締めつけられる。
「木霊君……」
「はたてさん」
 ふたりはぎこちない、しかし濃密な口づけを交わした。



 文は満ち足りた笑顔で夜の川辺を歩いていた。途中、何かに蹴つまずいた。見ると、両手両足を縛られた那須野だった。手拭いで目隠しされ、口には猿轡を噛まされていた。
「ンムムーッ、ンゴーッ」
「おやまあこんなところに。だから言わんこっちゃないですか」
 文は苦笑し、目隠しと猿轡を取ってやった。ついでだから手足の紐も切ってやる。文が肩を叩くと、那須野は体を震わせ、土下座をした。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「那須野さん? もう帰っていいですよ」
「ごめんなさいごめんなさい、ひいごめんなさい、ひい」
「いや、そんな謝られると、かえって、窪の園にけしかけた私の方が悪い気になってきますから。もう、いいですよ」
「クボノソノこわいクボノソノこわい、ごめんなさい僕もうセックスしません、したいと思いません、ひいごめんなさい」
 那須野は、相手が文とわかっていないようだった。さすがにかわいそうになったので、文はやさしくキスをした。
「ん……あ、文……さん、すか」
「目が覚めましたか?」
「あ、お、俺……」
「もういいんですよ、怖い思いをしたんでしょう? それを心の片隅に置いておきなさい、それでいいのですよ」
「あ……す、すいません」
「今日は、どうしますか」
「いえ、俺……今日は、帰ります」
「そう。気をつけてね」
「はい。助けてくれてありがとうございました。キッツイお灸だったっす」
 那須野は肩を落として、しょんぼりと飛んでいった。

 文の体は心地よい疲労感で満たされていた。崖沿いに飛んでいく。やがて崖の突端に自分の家が見えた。上空に浮かんで玄関口を見下ろすと、今まで待っていたらしいふたりが顔を上げた。
「おーう、待ってたぜ」
 山彦は腰を下ろして扉にもたれかかっていた。手にした袋には、果物がぎっしりと詰まっていた。
「今夜は差し入れをお持ちしました」
 疾風は新しい眼鏡を中指でクイと上げながら、一升瓶を掲げてみせた。文は、またも火照り始めた自分の体を、半ば呆れ、半ば悦ばしく思いながら、玄関口に降り立った。



 上弦の月が山間にかかっていた。
 素裸の文は、窓辺の椅子に腰かけ、煙草を吸っていた。月光に照らされていた文の肌に、影が落ちた。
「いったいなんて格好しているんですか、文さん」
 犬走椛は、心底呆れた様子で呟いた
「おや、椛ですか、こんばんは、夜勤に精が出ますね」
 文は窓辺に乗せた灰皿に煙草の灰を落とした。
「いくら夜だからって、それはまずいんじゃないですか」
「いいんですよ、どうせ見るのはあなたぐらいでしょ。なぜ隠す必要があるんです」
「それは、社会のモラルと言いますか、そういうものです」
「違いますよ。なぜ隠すか、それは、暴く悦びを相手に想像させるためにあるのです。サービスの一環です。ただのおっぱいが、普段は隠すことによって、なんだかとてもありがたいものに見えてしまう。想像力って素敵ですね。あなたにそんなもの喚起させようったって無駄ですから、しないんです」
「はあ、そうですか」
 煙草を吸う。先端が、橙色に強く輝く。
「そういえば、煙草、お吸いになるんでしたね」
「避妊用ですよ」
 口を半開きにし、その間から煙を吐き出すに任せる。
「あまり煙草、好きではないんですが」
「はあ……そうですか。文さん、風邪を引かないよう、気をつけてくださいね。おやすみなさい」
射命丸文は、一番ビッチが似合うキャラだと思います。

追記6/8
コメントありがとうございます!
眼鏡豚てw
天狗の社会は、幻想郷の中では今の人間社会にもっとも近い形でしょうから、こういう社会人っぽいエロも書けますね。
思いついたエロシーンをナベのようにひたすらぶちこんでみました。

射命丸文の魅力のすべてをまだ書けた気がしません。エロ、シリアス、あの手この手で彼女の奥深い魅力に迫りたいです。

>七星さん
お久です&コメントありがとうございます。

いやあ、みなさん男優にも言及してくれてて嬉しいですよ。
オリキャラとはいえ、彼らもまた僕にとっては東方の一員なので、愛着があります。
妖怪の山シリーズってのも、おもしろそうですね。
野田文七
http://blogs.yahoo.co.jp/alfettaalfetta
コメント




1.名前が無い程度の能力削除
この作品でしばらくはおかずに困らなさそうです。特に眼鏡パート。
文ちゃんとの二回戦が無かった那須野くんかわいそす。
2.名前が無い程度の能力削除
エロい文エロいらビッチは文の為にある言葉だったんですね。あやもみ派の自分は最後のストイックな椛がかっこよすぎて早く文に落として欲しいです。
素晴らしいあややありがとうございました!!(^q^)
3.名前が無い程度の能力削除
素晴らしいありがとうございます嗚呼生きていて良かった。
ぶ、ぶひー ぶひぃぃぃいいいい(歓喜)
願うことが出来るのならば、この射命丸の一日が永遠に続いて欲しいとさえ思えました。
敬礼!!!
4.名前が無い程度の能力削除
天狗になりたい……なんてうらやましい性活。窪の園には誰が来てるのかな……

ビッチの次は、幻想郷女子を次々にこますあやちゃん伝説も読んでみたいです。
5.名前が無い程度の能力削除
お世話になりましたありがとうございました
6.名前が無い程度の能力削除
世の中には相手も良くできる良いビッチと、
自分のことしか考えない悪いビッチが居て、
この射命丸は良いビッチなのだと愚かな私にも理解できましたぁああ、射命丸様ぁぁんぁあああ!
あと無作法ダメ、ゼッタイ。
7.名前が無い程度の能力削除
木霊くん可愛いよ木霊くん
ぜひとも続編を!!
8.ねじ巻き式ウーパールーパー削除
えろいあややはとても素敵です。いいものをありがとうございました。
9.名前が無い程度の能力削除
ギャwwwグwwwかwwwww
なのにちんこ勃ってる不思議。一々シーンがやばかったですね。特に眼鏡豚。踏んでる方が「オォォッッッホォオォァ!」てww思わず口に出しちゃいましたよ、オォォッッッホォオォァ。
文ちゃんがビッチなのには同意です。むしろビッチでこそ文ちゃん。
10.名前が無い程度の能力削除
ビッチ萌えは流行る

木霊君お幸せに
11.名前が無い程度の能力削除
あややエロいよぉ…
最後に煙草吸ってるところがやたら艶っぽい…
12.Admiral削除
このあややは良いビッチ。いわゆるあげまんじゃないでしょうか?
天狗社会を裏で支えていると言っても過言じゃないですね。あややマジパネェ!
木霊くん、いいですね~。はたてとの話も読んでみたいです。
光さん、頑張れ。超頑張れ。
神奈子様のカリスマ感も半端ない、のもいいですね。
こんな妖怪の山の話をもっともっと読んでみたいです!
13.七星削除
初見ではコメ付けられなくて舞い戻ってきました。
言いたいことは多々あれど、ビッチあややは正義の一言で済んでしまう。

個人的にはオッサン燃えでした。羨ましい。
いいものをごちそうさまでした。実に美味でございました。
14.名前が無い程度の能力削除
オリキャラと既存キャラの掛け合いが小気味良くて
読んでて楽しい気分になれました。
機会があればはたてと木霊くんのらぶらぶちゅっちゅや
窪の園での那須野くん豪遊記も見てみたいです。
15.名前が無い程度の能力削除
オリキャラはそれぞれが愛嬌あってキャラ立ってて良かったです。
文もビッチながら芯が一本通ってて見ていて清々しい。
髪で抜く山彦さんが将来化けるんじゃないかと思った変態的な意味で。
16.夜空削除
正直なところ官能小説でこれが売ってたらマジで買ってしまうレベルで素晴らしくエロい!
ちんこもげましたと素直に告白できる……ビッチあややマジ天使と言う点を差し置いても台詞回しや地の文の配分が絶妙過ぎて参りましたの一言に尽きます
身体を重ねるやりとりの一連がとにかく生臭くて性の汚らしい面まできちっと書き込んである点が本当素晴らしい
間々に挟まれたオリキャラの小粋なネタもGOODで最高でした。これはマジで脱帽ものです、非常に美味しゅうございました