真・東方夜伽話

ある不幸な***の話・雛編

2011/03/08 04:38:35
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ある不幸な***の話・雛編

五木降 ニバル

この作品は東方プロジェクトの二次エロ創作です。
同じ導入部分から違うエンディングに繋がるパラレル的世界観の描写を目的とした、
“チー符『幻想霊符』”のシリーズの一作品となります。

導入部分は全く同じである為、同シリーズを御存知の方は、ブ男さんが霊夢からチートなお札を受け取り、
アリスさんの館を訪ねようとする直前辺りまで飛ばしてお読み下さい。
今回は前回(文編)で入れていなかった導入部を、細部修正の上入れてあります。



   ・先に進む
ニア ・全裸で先に進む





















其の男は稀に見る不幸な男であった。

思えば、幼き頃からの事。
早くに母を亡くし、父は酒に依存して生を放棄した。
同年代の子供の輪に入れず、石を投げられた事無数。
大人からは指を指され、忌避されたまま幼少期を過ごした。
父を亡くして天涯孤独となった後も、男を一人の人間として扱ってくれる知人は皆無だった。

男はけして何もしなかった訳では無い。
人一倍勉学に励み、人一倍勤労に精を出し、いずれ報われる時が来ると信じて努力を重ね続けた。

しかし、男は致命的に天性に恵まれなかった。

知識は得ても実践に応用する頭脳の回転に恵まれなかった。
労働に身を粉にしても肉体は貧弱の域を出なかった。
他人と変わらぬ量しか口にせずともぶくぶくと太り、
せめて清潔であれと丹念に身を清めても、其の身体は一刻程度で強烈な異臭を放った。

自分と同程度の努力をしていた(と、男が思っていた)同年代の子供は、二十歳を過ぎた頃に里の議会の役員となり、
周囲からの期待を一身に集め、幸せ絶頂の内に結婚した。
努力とは無縁だったはずの他の奴等も、年を経るごとに次々と幸せを手にしていった。

その様子を見せつけられ、耐えながら努力を重ねること十年。

ついに心が折れた。




        ☆          ☆          ☆




立つ鳥跡を濁さずと、部屋を綺麗に片づけて、男は長きを過ごした余り良い思い出の無い我が家を後にした。
向かう先は妖怪の山。
無論、今更守矢の神に縋ろうと言う訳でも無く、自らの命を絶つ為である。

強いて挙げれば、心残りが一つだけあったのだが、まあ、この期に及んで足掻いたところで叶いはするまい。
何の力も持たぬ自分では、最早夢物語とさえ言って良い。
未練を振り切り、夕暮れの中、男は死地に向かって歩き出した。

守矢及び天狗等による支配を擁する妖怪の山に於いて、本来、本能の儘に暴れる様な妖怪変化はそうそう現れない。
そして男の不運ぶりはこの様な処にまでしっかりと作用していた。

その妖怪変化が、男の目の前にいた。


『オオオォ――――ン!』


体長は、男の住んでいた小屋程もあろうか。
いかにも獣がそのまま妖怪になりましたといわんばかりの熊の様な、犬の様な様相の化物が大きく吼えた。

―――お前が、僕の死か。

萎縮した身体はもはやぴくりとも動かないが、目の前の死に対する恐怖はあまり無かった。

―――これでやっと、楽に―――

なれなかった。
男は、最後の最後まで徹底的に不幸であったのだ。




        ☆          ☆          ☆




ズド――――――――――――ンッッッッ!!!!


『ぎゃわうううぅぅぅんんっっ!!』


妖怪の顎が、今まさに男の頭を噛み千切らんとしたその刹那。空から降ってきた赤い塊が、猛烈な勢いで妖怪変化を直撃した。
巨体が一撃で横倒し、完全にのびてしまっている。
隕石の様に見えた其れは、一体如何程の物体であったのだろう。

「誰だか知らないけど、あんまり手を煩わせないで頂戴。
 こっちはこれでも一応急いでるんだから」

妖怪変化の陰から聞こえてきた声は、予想に反して可愛らしい少女の声であった。

「里の人? こんな時間に山の中歩いてるなんて、自殺行為よ。
 さっきみたいのに襲われても、誰も助けてくれないわよ」

腋の開いた特徴的な紅白の巫女装束。博麗の巫女だ。
間近で見たことは終ぞ無かったが、祭で舞を舞う姿を何度か見かけたことがある。

赤い塊は、どうやら手製の紙、何かしらの符の様だった。
暢気であまり仕事をしないと聞いていたが、どうやら実力は本物らしい。

そんなことを考えていると、男の黙りを訝しんだのか、巫女の方から話し掛けてきた。

「まあ、こっちが勝手にやったことだし、お礼を言えとは言わないけどね。
 何か一言くらい喋ったら?
 それとも、腰でも抜かしたかしら」

近くで見ると美しい少女だ。真っ白な肌、細い腰と手足。
ふわりと漂ってくる“女の子”の清廉な香りに、思わず股間が反応してしまう。
吹っ切れたつもりではいたのだが、こうして手の届く場に女の子が居るのを認識すると、
死に際して自分が童貞であることが改めて無念に思えてくる。

命を救ってくれた恩人に対して欲情してます。

そんな事を気取られたら最悪だ。
男は無節操に天を仰ぎ見る肉塊を悟られまいと、足を閉じ、より小さく蹲った。

「・・・・怪我でもしたのかしら?
 困ったわねぇ・・・動けない程痛いんじゃ、帰れないわよね・・・・
 かといって、ここに置いていく訳にもいかないし・・・・」

その男にしては幸いにも、自分の憂慮を余所に、巫女は全く見当違いな心配をしている処だった。
『縁起』の勇者目録には“勘は鋭い”と書かれていた。
恐らく、気付いていないと言うよりは、“そっち”方面の知識があまり無いのだろう。
その点も男の妄想を掻き立てる要因となり、男はますます小さく蹲らなければならなかった。

「大丈夫? ・・・・な訳は無いわよね、口もきけない位の苦痛じゃ。
 でも御免なさい、“はぐれ天狗”がちょっとやらかしたらしくて、
 このままだと人里に大きな被害が出るから、そっちを優先しなければならないのよ」

巫女が心配そうな表情で男の顔を覗き込んでくる。
少女の柔らかな薫りが鼻腔を貫き、股間に一気に血が集まる。
長い髪が数本、男の顔に掛かり、心の臓が飛び出る思いをした。

拙い。こんな無防備に迫られると、理性が飛んでしまう。
しかもとびきりの美少女。長く続けば、堤防の決壊は目に見えている。
三十余年も無理に抑えつけられてきた情欲だ。一度弾けたらどうなるか解ったものではない。

男は辛うじて、喉から絞り出す様な声で

「・・・・大丈夫だから・・・・早く行って・・・・」

とだけ口にした。
寧ろとっとと去ってくれ、と本心では願っていた。
一人になったら、思う存分に握り擦る事が出来る。
目の前の少女を、妄想内で滅茶苦茶に犯しながら、この世で最後の快楽を貪れるのだ。

「人を呼ぶだけの符じゃ来るまで危険だし・・・・
 結界符だけじゃ時間制限もあるし、帰れないわよね・・・・
 何か肉のすえた様な臭いがするし、またさっきみたいのが出てくるかもわからないのよね・・・・」

男に、その臭いは自分の体臭だと告白する勇気は無かった。
だが、もう一度近付かれたら流石に色々ばれる可能性が高いだろう。
男は爆発寸前の爆弾を股間に抱えたまま、早急に巫女が立ち去ってくれる事を切に願った。


「決めた。
 ホントは私の護身の予備だったけど、これ渡しておくわ。
 封魔符と狼煙符」


巫女が話し掛けてきた。
男がはっとして巫女の方を見ると、
巫女は懐から二枚のお札を取り出して、男の目の前に差し出した。

「封魔符はおおよそ五間四方の空間にいる妖怪の力を根刮ぎ奪い去る力があるわ。
 妖怪とか妖怪じみたヤツなら大概通用するから、一時的な護身にはもってこいね。
 人間には効かないから、里で誤用なんて心配も無いしね」

・・・・妖怪とか妖怪じみたヤツなら・・・・?
もしこの“お札”が巫女の作った物であるのならば、
先程の巫女の強さを鑑みるに、相当強力な妖怪でも太刀打ち出来なさそうな代物に思える。

「狼煙符は文字通りいわば“のろし”ね。
 使うと色とりどりの光と煙が出て、位置を知らせる。
 里に依頼されて作ってるのと同じ物だから、里の人間が見たらすぐに駆けつけてくれるはずよ」

それは自分には不要だ、とはさすがに言えまい。
まさかこの男が里人達にに忌み嫌われて命を捨てようとしている、等とはきっとこの巫女は露程も思っていないのだろう。

「使い方は符の真ん中の印に横線を引いて任意の場所に貼り付けるだけ。
 あ、こっちの符は逆ね。線じゃなくて横に切れ目を入れるの。
 貼り付けるだけ貼り付けといて、後から線を入れても良いわ」

巫女は男を置いて先に行かなければならない事が心苦しいのか、普段からは考えられない程親切に説明をしていた。
その時、男の思惑がどちらに向いていたかなど、全く知る由もなく。

「一つだけ重要な注意をしておくわ。
 暫くしたら私が戻ってこれると思うから、ホントは使わないに越したことはないんだけど」

幻想郷には多くの“女性型”妖怪が住まう。
奇しくもその事実は妖怪退治を生業とする博麗の巫女と、『幻想郷縁起』を編纂する稗田家の者により知らしめられた。
それらに記載される様な、力を持ち、且つ美しい妖怪にも通用する様な代物だとしたら―――

「妖怪に遭遇したら、必ず二枚一緒に使用すること。
 でないと後で大変なことになるから。
 細かく理由を説明している余裕はないのだけれど」

「・・・・わかった。助かるよ」

男は努めて苦しい振りをしながら、巫女から札を受け取った。
正直、最後の方は全く聞いていなかった。
これは、今まで不幸だった自分に、やっと回ってきてくれた最高の幸運なのだ。
自分を忌避して、見掛けだけの幸運を享受してきた里のクズ女共ではなく、
最高に美しい妖怪の女を自分のモノに出来るかも知れない千載一遇のチャンスなのだ。

「じゃあ、私は行くわ。
 貴方、見たところ全身に物凄い厄が纏わりついてるみたいだから、
 怪我が治ったら厄神の処でも行って、厄を取ってもらいなさいな。
 ここからなら比較的近い場所のはずよ」

身を翻して、巫女は山の頂の方へ向かっていった。


あっけなく。


力が、手に入った。




        ☆          ☆          ☆




巫女が去ったのを確認して、男はのそりと立ち上がった。
手元には、男の夢を叶える“力”。

股間の肉塊は未だいきり立ったままだが、
この場所で巫女をダシにして自らを慰めるよりは、即行動を起こすのが正解だろう。
快楽に身を委ねて夢中になっている間に、巫女が戻ってくる様なことになっても拙い。

巫女には、自力で戻ったか、お札の力を使って戻ることが出来たと思わせておくのが最良の選択であろう。
完全に昏睡したままぴくりとも動かない妖怪変化を一瞥し、男はそそくさとその場を離れた。




        ☆          ☆          ☆




男には心残りが一つだけあった。
同年代の男性陣のみならず、女性陣からも虐げられてきた彼にとって、かの女性の存在こそが唯一の心の支えだったのだ。


魔法の森の人形遣い、アリス・マーガトロイド。


初めて彼女を見たのは、守矢の神社に於ける祭りの際。
小さな屋台で、多くの子供達に囲まれて人形劇を繰り広げる美しい魔女に、一目で心を奪われた。

魔法の森で迷った際に、一晩の宿を頼もうと訪ねた洋館が彼女の館だと知った時は、神に心から感謝した。
表情に乏しく、応対こそつっけんどんながらも嫌な顔一つせずに助けてくれた金髪の魔女。
親ですら忌み嫌った自分を人間扱いしてくれた最初で最後の存在。

彼女を思い、歪んだ妄想で何度彼女を穢した事だろう。
彼女の、精巧な人形の様な美貌を思い浮かべるだけで、未だ経験の無い男の股間は一気に熱くなった。
だが、彼女は『縁起』にもその名を連ねる有名人。
元より自分の手が届く様な存在で無い事は承知していた。

堂々と告白したところでこの醜い容姿の自分が選ばれる訳も無く、
抑え切れぬ情欲を満たす為だけに強引に事を運ぼうとした処で、力を持たぬ自分が幻想郷屈指の実力を持つ魔女に勝てる訳が無い。
その上そんな事をして失敗したら、彼女までもが自分を汚物を見る様な目で見るだろう。
死に瀕しても、それだけは耐えられなかった。
故に、未練は振り切ったつもりだったのだ。

だが、今、この手には力がある。

“妖怪”であればまず通用するであろう、博麗の巫女謹製の強力な手札が。

もちろん、この期に及んでプラトニックに告白、ではあり得ない。
この強力な“力”を用いて、男の本懐を遂げるのである。
アリス・マーガトロイドを犯し、自分の種を刻みつけるのだ。
当然、失敗しようがするまいが、彼女にとっての自分の存在が地に落ちるのは間違い無い。
だが、成功の可能性が飛躍的に上がった今、男はあれだけ嫌だった
“アリスに汚物扱いされる”事自体をたいしたリスクとして感じなくなっていた。
もし失敗したとしても、元々死ぬ予定だったのだから。


男は、洋館の位置は熟知していた。
せめて一言だけでも心からの思いを伝えようと、館の前まで訪ねること数十回。
本人に直接的に絡まないだけまだマシとも言えなくは無かったが、いわば立派なストーカーと言って良かった。

しかし、男は折角手に入れた千載一遇のチャンスを不意にしてしまう可能性をどうしても否定出来なかった。
自らのあまりに不幸な人生の経歴が、突然魔女の館を訪ねる事に対して警鐘を鳴らしていたのである。

男は、森の魔女の館を訪ねる前に、巫女の言っていた『厄を取る厄神』に会い、
自らの厄を祓って貰う事に思い至った。
自らの不幸の源が、巫女の言う“全身に纏わりつく物凄い厄”であるのならば、
それらを無くす事によって、事に及ぶその成功確率をより一層高められるやも知れない。

男は奥まった獣道から守矢の参道まで引き返し、巫女の言う『厄神』の居場所を探した。
程なくして、小さな社に祀られた、草ぼうぼうの地蔵の側に、古ぼけて今にも折れそうな立て看板を見つけた。


『厄神様の通り道』


元より死を覚悟していたこの身である。
男は意を決すると、参道から外れた薄暗い獣道に足を踏み入れた。




        ☆          ☆          ☆




木々草々に囲まれた細道を、星の明かりを頼りに進む事約一刻。
男の進む先に、明るく開けた場所が見えてきた。
全身から汗と異臭を振りまきながらも、自然と男の足は速くなる。

男が息を切らせて辿り着いたその場所には、小さいながらも澄んだ泉があった。
月の光と星の光を反射して、その空気さえもキラキラと光っている様に感じる。
泉の対岸には小さな社があり、此処が神域である事を感じさせた。

だが、其れより何よりも。
男が立ち止まったままに、一歩も動けない程に固まってしまったのは。



   おうち わすれた こひばりは

   ひろい はたけの むぎのなか

   かあさん たずねて ないたけど

   かぜに ほむぎが なるばかり



鈴を鳴らす様な、ひばりが鳴く様な、神秘的な澄んだ声。
歌声に会わせて、泉の水面を跳ねる様にくるくると回りながらステップを踏むその姿。



   おうち わすれた まよいごの

   ひばりは ひとり むぎのなか

   おやまの きつねは なかぬけど

   くれて さみしい つきあかり



その柔らかな萌葱色の髪は胸元で纏められ、その舞と共にさらさらと揺れている。
西洋のドレスの様な、フリルで一杯の長いスカートは回転と共に大きく広がり、男の視線を釘付けにした。
水面でステップを踏むたびに水が跳ね、跳ねた水滴は月の光を反射して更に空気を光らせる。


厄神・鍵山雛。


厄を司る神と聞いて、もっと恐ろしく異形の姿を持つ存在であると想像していた男は、
今までに見たことも無い様な、余りに美しい、幻想的な光景に心を奪われていた。
それこそ、呆れている訳でもないのに『開いた口が塞がらなかった』。
いや、口がだらしなく開いたままである事をも忘れてしまう位に衝撃的であった、と言うべきか。

雛は、固まったまま微動だにしない男に気が付いた。
水面を蹴って跳び、くるくると二回転して華麗に男の前に着地する。


「私の名前は鍵山雛。厄を司り、人の厄を受け取って天に返す役割を担う神の一柱。
 こんな夜更けに、私の社に何の御用かしら?
 ここから先は貴方の様な普通の人間には慈悲も容赦も無い神域よ。
 ただ好奇心で迷い込んだだけなら、此処で引き返すのが貴方の為。
 ―――それとも、その派手に溜め込んだ厄災を祓いに来たのかしら?」


自らの胸元に右手を当て、自己紹介をする様に男に微笑みかける雛。
切れ長の目が男の視線と交錯し、男は全てを見透かされている様な、心臓を鷲掴みにされている様な気分を味わった。
近くで見るとその美しさが際立って見え、否応無しにこの少女が人間ではないのだと思い知らされる。

―――これは、人外の美しさだ。

普通の人間では有り得ないバランスを保った、精巧な人形の様な美しさ。
今までずっと男が恋い焦がれていた森の魔女・アリスに通じる所がある。

固まったまま返事をしない男に向かって、雛は歩いて近付いてきた。
男の心臓がばくばくと早鐘を打つ。
先の、博麗の巫女に近付かれた時に感じた様な、清廉な香りが漂ってくる。
女の子とは、みなこの様な芳醇な香りのするものなのか、と男が考えた途端に、
男自身の意志に反して、その股間に血液が集中し始める。

―――拙い。

鎌首をもたげ始める股間の異物を何とか鎮めようと、男は躍起になった。
だが、収めようとすればする程に、男の巨根は強く硬くその力を誇示し始める。
程無くして、股間の布を大きく押し上げる大天幕が出来上がった。

―――拙い、拙い拙い―――!

彼女が本当に神の眷属なのだとしたら、不敬もいい処である。
神様に対して下賤な人間が欲情しているなどと知れたら、先の巫女の時等とは比べ物にならない程の危機だ。
例の力を行使する前に、神によってその命を絶たれたなどという事になれば、其れこそ笑い話にもなるまい。
男は不自然に身体を捩らせて、なんとか両の手で股間の盛り上がりを隠さんと試みる。

ふと、男は、雛が立ち止まっている事に気が付いた。
背筋に冷たい物を感じながら、雛の洒落たブーツの先から、ゆっくりと視線を上に上げていくと―――。
左手はその身を隠すかの様に胸元に添えられていた。
揃えた右手の指先を小さな唇に当て、真白な頬を僅かに桜色に染めて、
透き通った瞳で男の股間を恥ずかしそうに見つめ続ける雛の姿があった。

―――完全にばれている!

我を忘れて、男は一目散にその場から逃げようとした。

「あ、待って」

雛が男を呼び止めようとした。
が、雛が持てる力を行使する迄も無く、男は不意に脚をもつれさせて倒れ込んだ。
男の体重での転倒時の衝撃たるや相当な物で、男は暫くの間動けずに蹲っていた。

雛が男の傍らにやってきた。
男には、その雛の僅かに微笑んだその表情が、自分を断罪する死神の微笑みに見えた。
元より死を覚悟していた身とはいえ、慎重に事を運ぼうとした結果がこれでは余りに間抜けである。
男は迫り来る死の恐怖と、自らの行動の浅はかさに対する後悔で半ば壊れかけていた。

そんな男の顔に、傍らにしゃがみ込んだ雛の細い指が添えられた。

反射的に身を竦ませる男。
脂ぎった汗と異臭にまみれた肌を気にするでもなく、雛の柔らかい掌が男の頬を撫でる。
男は驚いて澱んだ目を見開いた。
すぐ側に、しゃがみ込んだまま男の顔を覗き込み、柔らかな微笑みを見せる雛の美しい顔があった。
男が横になったまま茫然と雛を見上げていると、雛が口を開いた。

「貴方は何故ここにやってきたのかしら。
 別に、取って食ったりはしないから、正直に話して御覧なさいな。
 ・・・・その、今の貴方の様に、ソレを私の前で大きくしちゃう殿方は結構多いのよ。
 人間ならば自然に溜まっていく不幸の種である『厄』と、自ら溜め込んだ情欲とを勘違いして、
 厄神である私に性処理をして貰おうと考える不遜な輩が多いから」

男は一瞬ドキリとした。
此処に来た本来の目的は違いこそすれ、雛の美しい外見に劣情を催した事は確かであるのと、
その本来の目的が“アリスを犯し、本懐を遂げる事”の為に、不幸の元を取り除いて貰う事であったからだ。
直接的では無いとは言えども、自分は雛の言う“不遜な輩”と大差無い下衆なのだ。
男は、雛の見せる包み込む様な優しさに、胸の奥がきりきりと痛む思いだった。

「―――貴方は自らが興奮している事を私に知られた、と気付いたのと同時に逃げ出したわね。
 数多の“不遜な輩”達は、そのような行動は取らないわ。
 寧ろ、私に汚い欲望をぶちまけようと、喜んでその醜い物を私の目の前に露出しようとしてくる。
 尤も、そういった不届き者には、一寸だけ痛い目を見て貰って、丁重にお帰り頂いているのだけど」

雛の表情が僅かに曇った。
悲しそうに眉を顰め、少しだけ俯く。
本当に心から人間達の幸せを考えているのに、何故彼らには伝わってくれないのだろうと。
望まずとも男性を惹き付けてしまう、男達の情欲を喚起してしまう自らの外見を悩ましく感じる。
そんなジレンマがその悲しげな表情から見て取れた。

「正直に言ってくれるかしら。
 もし、貴方が此処に来た目的が、私に性処理させる事ならば。
 ―――本当は痛い目を見て貰う所だけど、今ならそのまま帰してあげる。
 ただ、二度と私の前に姿を現さないで頂戴」

雛が、俯いたまま唇を噛んでいるのが見えた。
如何に鈍感な男でも、こればかりはすぐに理解出来た。

雛は、人間を信じたがっているのだ。
人間が大好きで、人間の為に動き、人間の忌み嫌う『厄』を取り祓って、人間の幸せを願う少女の姿をした神。
司るのが『厄』であるせいで、大好きな人間から忌み嫌われても尚、人間の幸せを願い続けた。
だのに、ただ理解されないだけであれば兎も角も、雛の願いを曲解して利用せんとする輩の存在は、
本来“神”という意識体、概念の塊である雛にとって、自らの存在意義を揺るがしかねない程のショックだったのだ。

「―――もし、貴方が此処に来た目的が、本当に私の神力が必要な事ならば。
 その力で少しでも貴方が幸せに近付けるというのならば。
 私は、鍵山雛は全霊を以て、神の眷属の威信を以て貴方を手助けしてあげる。
 ―――だから、正直に話してみて」

一間変わらぬ柔らかな笑顔の雛。
しかし、男にはその愁いを帯びた表情が、今にも泣き出しそうに見えた。
むくりと上半身を起こして雛に向き直った男は、素直にこれまでの経緯を話す事にした。




        ☆          ☆          ☆




生まれながらにして不幸に取り憑かれた人生を送ってきた事。

自ら命を絶つ目的で妖怪の山に入った事。

博麗の巫女に命を救われ、『縁起』にも書かれていなかった厄神の存在を知らされた事。

厄を祓い、綺麗な身を以て、予てから焦がれる女性に告白しようと考えていた事。

女性に縁の無い人生だった為に、人外の美しさを持つ雛に対して欲情するのを抑えきれなかった事。


男は、一部脚色有りとはいえ、自分でも驚く程流暢に全てを語っていた。
かの女性を犯そう、本懐を遂げようと考えていた事に関しては、
当たり障りの無い様、『告白』しようと考えていた事にした。
人間を信じたくて仕方の無かった雛に対しては、その方が救われるだろうと、
あまり回転の速くない頭で必死に考えた、男なりの方便のつもりだった。


「三十点」

男の話を最後まで聞いてから、雛はぼそっと口にした。

「大筋で嘘をついていない事は解ったわ。
 でも、それだけだと―――。
 貴方が大事そうに懐にしまっているお札の説明が付かないわ。
 恐らく、博麗の巫女の作った、魔を封じるとても強力なお札。
 ―――私に、隠さなければならない理由は何?」

男は驚愕に全身を硬直させた。
雛の切れ長の眼から放たれる冷たい視線が、男の濁った瞳を鋭く射抜く。
すっかり見透かされてしまっている。
外見はか弱い少女の姿であろうとも、やはり神の一柱というべきか。

全身をがたがたと震わせて怯える男。
懐の封魔の札に思わず手が伸びる。

「先に言っておくけど、私は妖力で生きている訳ではないの。
 理と信仰に依って生きる存在だから、そのお札の効果の対象外よ」

万事休す。
男は一瞬死を覚悟した。
自分を良く見せようと、下手に方便など使わなければ良かったのだ。

優しそうな女神である。
封魔の符を差し出し、無礼を心から謝ればひょっとしたら許してくれるかも解らない。
だが、封魔符を失うのであれば、最早森の魔女と本懐を遂げる事叶うまい。
結局その後に生きる意味を見い出せなくなるだけだ。

如何せん。
如何せん。

前後左右を雁字搦めにされた気分で、男は膨大な脂汗を垂れ流したままに硬直していた。
焦点の合わない、怯えた瞳で雛の全身を眺めるのみであった。
本来の時間はものの数分であったが、男にとってその沈黙は数刻に及ぶ長時間に感じられた。

静寂を打ち破ったのは、雛の方であった。

「昔ね、貴方とそっくりな男の人に会った事があるのよ。
 外見が、じゃなくて、魂の色が、ね」

「・・・・・?」

「○百年ほど前の事よ。
 私はまだ生まれたばかりの若神で、やっと自分の使命を見いだした処、と言うくらい。
 流し雛の付喪神から神格化したばかりで、本当に右も左も解らなかったの」

男には、何故雛が突然そんな話を始めたのか、さっぱり解らなかった。
外見を殊更悪く言われる事には慣れているが、別段親しくもない相手、
加えて自分を欺こうとした男に対して、この女神は何のつもりで昔話など始めたというのか。

「その時の私は、流し雛の持てる使命しか心に無かったのよ。
 人間の厄を祓い、人間を幸福に導くという、所謂厄神としての本能しか無かったの。
 ―――自分のする事、出来る事が、人間の幸せに直結するんだって、頑なに信じ続けてね」

男が首を傾げる。
人の厄を宿らせた雛人形を川に流す雛流しの風習は、男が物心付いた時には、男の集落では廃れてしまっていた。
雛はそれを見て、納得した、と言う表情で小さく頷いた。

「流し雛を知らないのね。
 貴方の厄、凄い事になっているもの。
 多分そんな事だろうと思ったわ。
 ―――貴方の家系が在ったから、貴方の集落では廃れてしまったのね」

男には、雛の言っている事がまるで理解出来なかった。
だが、当面の命の危機は去ったものと判断した上で尚、全身の力を抜いて、雛の言葉に耳を傾ける。
今此処で雛の機嫌を損ねてしまったら、それこそどうなるか解ったものではない。

「話を元に戻すわ。
 ―――人間の幸せを願って、出来る事を何でもやってきた私の話を聞きつけて、その人はやってきたの。
 人間なのに、私達神格もかくやと言うくらいに整った外見で。
 ―――僕は不幸なんです。美しい貴女の力で僕を幸せにしてください、って。
 人間の方から名指しで必要とされたのは初めての事だったから、物凄く嬉しかったのを覚えてる」

下衆の勘ぐり、とでも言おうか。
男には、その後の展開が読めてしまい、その男と同様の思考を持っている自分に嫌悪を抱いた。

「何も知らなかった私が馬鹿だったのね。
 “ただ気持ちが良いから”なんて理由で平気で女の子を騙す男の人がいるなんて、思いもよらなかった。
 その美しい身体で僕を癒してくれれば僕は幸せになれるんです、なんてもっともらしい言葉に騙されて。
 その人の為に奉仕して、抱かれ、純潔をも捧げて。
 何度も抱かれて、身が穢れて、神格が薄れて、存在を保てなくなってきても尚、
 その人の幸せに繋がるならばとこの身を捧げ続けたわ」

耳が痛い。心が痛い。
自分が雛の語る下衆と同様の愚物である事が耐えられない。
自分は、苦せず手にした強大な力を以て、麗しき森の魔女にどんな狼藉を働こうとしたのか。

「神の眷属にとっても、精神と密接な関わりを持つ“契り”は大きな意味を持つわ。
 生きているだけで穢れを背負う人間との契りは、穢れを嫌う神にとって、命に関わる行為だったのね。
 私は、限界を悟って、せめて幸せになったあの人の姿を一目見てから消えたいと人里を訪ねたの」

耳を塞ぎたかった。
結末を悟ってしまった。
しかし、雛がこの場でこの話を始めたのには何かしらの意味がある筈だ。
雛を騙し、アリスに狼藉を働こうとした、醜い心の自らに対する罰として、
男は最後まで雛の告白を聞く事にした。

「とても幸せそうだったわ。
 正直、私の想像なんて及びも付かない程、幸せの絶頂だった。
 里の長の地位にいて、周りを虐げ、重税を課して。
 自分は周りに可愛い女の子達を侍らせて、巻き上げたお金で豪遊三昧。
 幸運を味方につけた悪徳領主、なんて呼ばれてたわ。
 里に叛乱の芽が生まれようとも、必ず彼にとって幸運な事件が起きて、全部芽の段階で潰されるんですって。
 ―――当然よね、あの人の不幸の種は、みんな私が祓っているのだから」

「~~~~~っっっ!!!」

男は雛の口から語られる、その凄絶な過去の告白に耐えきれずに頭を抱えた。
予想通りの結末。
人の幸せを望んだ無垢な女神は、その身の不幸を以てかの男に仮初めの幸運を与えたのだ。
何という予定調和。救いも何もあった物ではない。

「人間を心から憎んだのは、後にも先にもその時だけ。
 残った神力の全てを使って、里の人間達の厄を全て吸い取って、べったりとあの男にくっつけてあげたの。
 無知だった神様の、子供っぽい仕返しね。
 恐らく、一生涯では絶対にに祓いきれない位の厄だったわ。
 ―――その後、あの男がどうなったのかは知らないけど」

「・・・・」

男はまるで、雛がかつて享受した不幸を、自らが傷つけられたが如くに悔しそうな表情をする。
不幸な生涯を送ってきたが故に、他人の不幸に心から共感出来るのが、ある意味男の美徳と言って良かった。
雛は男の険しい表情からその心中を悟ると、ふっと微笑んで話を続けた。

「その時から後、人間の殿方がちょくちょくと訪れる様になったのよ。
 さっきの貴方の様に、みんながみんな、股間のソレを大きくしてね。
 恐らく、あの男が私を見限って、周囲に尾ひれを付けて言いふらしたんでしょうね。
 みんながみんな、私を“男の情欲を満たす事を生業とする女神様”だと思っていたみたい。
 
 ―――流石にもう、誰一人、身体を許すつもりは無かったけど。
 厄を背負っていた人は多かったから、祓ってあげるだけで感謝してくれる、根の素直な人も多かった。
 消えかけた私が今、この時まで生き長らえているのは、そういった人達が、
 里に私の正しい姿を伝えてくれて、私に正しい信仰が集まってくれたからなのよ。
 ―――相変わらず、勘違いしたままの男の人も、たまに現れるんだけどね」

そこまで話して、雛は男の方に向き直った。

「―――ここまで言えば、解るかしら。貴方は、その人にそっくりなの。
 多分、痩せたら外見もそっくりなんだと思うけど、何よりも魂の色が見間違えようもない位にそっくり。
 貴方が、あの男の生まれ変わりじゃないかって思ったのよ。
 私が、多分、唯一、一人の女の子として愛した、あの憎むべき男の生まれ変わりじゃないかって。
 ―――全部正直に話して欲しかったのは、それが知りたかったから」

雛の透き通った瞳が、男の眼を見据えた。
此処で目を反らす事は、雛に対する最大級の侮辱である様に思えた。
男は自分の前世を責められているような、背筋の凍る思いをしながらも、
目を反らさずに真っ直ぐに雛の瞳を見つめ続けた。

―――自分には前世の記憶など無いが。
    自分の前世がその様な憎むべき男で在るのならば。
    この心優しい女神の善意を食い物にした外道であるのならば。
    今の自分の謂われ無き不幸は受けて当然の罰なのだ。

男は、泣きそうな笑顔で語った雛を、真面目な表情で見つめた。
自らの不幸でしかなかった生涯。誰からも必要とされる事の無かったその生命。
最後に意義が見いだせるならば、男にとっては願ってもない事だった。
雛が自分を手に掛ける事で、その心に安寧をもたらす事が出来るのであれば。
自らの過去の罪を精算し、穢れた魂を少しでも浄化出来るのであれば。
たとえこの場で瞬時に命を消し飛ばされようと、苦しめられた上で嬲り殺しにされようと、男にとっては、本望であった。
歯を食いしばり、拳を握りしめ、男は目を閉じて雛の断罪を待った。



「ごめんなさい」



突然、謝罪と共に頭を下げた雛に、男は唖然とした。

「貴方は、あの人ではないけれど。
 ずっとずっと、言いたかった―――謝りたかったの。貴方、と言う魂の持ち主に。
 罪は地獄で精算されるべき物。
 貴方は地獄で苦しんで、罪を精算して、やっとの思いで許されて、やっと生まれ変わる事が出来たのに。
 生まれながらに私の力に翻弄されて、苦痛以外の何物でも無い人生を送ってきたのね。
 ―――生まれたばかりの貴方には、何の罪も無かった筈だったのに。
 私の様な、無知で身勝手な神様のエゴのせいで、貴方は前世の他人の恨み辛みを強制的に背負わされて生きてきたのね」

雛の瞳に大粒の涙が浮かぶ。

「人間の幸せを願って、なんてよくこの口が言えたものだわ。
 自分一人の恨みを晴らす為に神力を行使するなんて、神の眷属としてあってはならない事なのに。
 ―――貴方が女性に縁がなくて、そのお札を使って不埒な行為を働こうと考えた事だって、
 元はと言えば私の神力のせいなのかも知れない。
 だから、ごめんなさい。
 貴方が本当にあの人の生まれ変わりなのかどうかはまだ解らないけど、言わせて下さい。
 ―――心の弱い神様の、自己満足に過ぎないのかも知れないけど。
 それでも・・・・言わせて・・・・くだ、さい」

溢れる涙はとどまる処を知らず。
あどけない少女の姿をした女神は、外見通りの少女の様に泣きじゃくった。
人に恋した、人ならぬ存在の幾歳の物語の結末。
其れは果たして、幸運だったのか、それとも不幸であったのか。

雛を抱き締めて、慰めてやりたい気持ちをぐっと抑え、男は雛が泣きやむまで立ちつくしていた。




        ☆          ☆          ☆




「ごめんなさいね。みっともなく取り乱してしまって。
 貴方は貴方であって、別にあの男とは何の関係も無い筈なのにね。
 自分で勝手に決めつけて語り始めた癖に、なんだか、思いが溢れて、止まらなくなってしまって。
 私、神様失格ね」

眼を赤くして、泣きはらした雛が柔らかな笑顔で男に向き直った。
悲しみに涙して眼を紅くする事も、醜態を恥じて頬を染める姿も、とても人間らしいと男は感じた。
そういった意味では、確かに『神様失格』なのかも知れない。
自分の前世かも知れない下衆男をも含め、多くの人間や、山の妖怪達との触れ合いが、
本来人形の付喪神でしかなく、人間らしい思考を持たなかった雛をより魅力的に成長させたのであろう。

そんな雛を、男は心から好ましく思った。

「話を聞いてくれて有り難う。
 とてもすっきりした気分よ。貴方が此処に来てくれたお陰。
 ―――だから、今回お札を隠していた事に関しては、特別に不問にしてあげるわね。
 尤も、私にすっかりばれちゃった上で、尚不埒な行為に身を窶す、とも考えにくいけれど」

しっかりと釘を刺す事を忘れない雛。
男は最早誤魔化しの苦笑いで間を持たせるより無かった。

「それで―――ここからが本題よ。
 貴方の集落には、人間の厄を肩代わりに憑かせた人形を川に流す厄取りの神事“雛流し”が無いという話よね。
 幻想郷に於いても、古来からずっと続けられてきた風習だわ。
 その厄を憑かせる為の雛人形に付喪が宿り、人々の信仰が集まって出来た存在が私というわけ。
 それが、貴方の集落だけ廃れてしまった理由はなんだと思う?」

一転して真面目な表情で問いかけてくる雛。
本来であれば至極妥当な質問でこそあるが、そもそも雛流しを知らない男には解目見当も付かなかった。
それどころか、そもそも自らが不幸である事に対して、厄という要素の存在にすら思い至らなかったのだ。
男が難しい顔で首を傾げているのを見て、雛は再び口を開いた。

「―――本来、人間は生きている限り厄を背負う。
 肉体を持ち、生き長らえる事自体が罪だから。
 人が生きる事と、世界が平穏に存続する事との齟齬が厄となって人間に溜まっていく。
 何もしないで生きていれば厄は溜まる一方で、死後の裁きに影響を及ぼすの。
 だから、本来人間は生きている間に出来る限りの善行を積んで、溜まった厄に勝る“徳”を重ねる必要がある」

雛は、何も知らない男に対して、諭す様に語り続ける。

「人の信仰無くしては生きられない神が、より多くの信仰を得る為に、
 多くの徳を重ねずとも生きてゆける様にと授けた神事―――溜まった厄を祓う手段の一つが雛流しなのよ。
 溜まった厄の総量が少なければ、それだけ死後の裁きに有利に働く事になる。
 ―――この幻想郷が出来る前、遙か古代の神代から伝えられ、行われてきた事なの。
 それなのに、何故、貴方の集落だけ古来の風習が廃れてしまうようなことになったのかしら」

男は首を傾げた。
当然である。
今の今まで自らの不幸ぶりに振り回されてきた男が、その様な風習がある事を知っていて、
災厄の元を祓う事が出来るなどと言う知識を持っていたのであれば、それに縋っていない訳が無い。
男の見当も付かない、といった風の表情を察して、雛は話を続けた。

「人間には、厄を溜め込んでおける限界量があるの。
 その限界値に近くなると、その量に応じた災厄を引き起こす事で厄は自然に発散しようとする。
 この限界値が大きいのが幸運な人間で、限界が来る前に善行や神事などで厄を発散させやすいのね。
 ただ、放置しておくと、より大きな災厄を引き寄せてしまう恐れがある。
 限界値が小さいのが一般に言われる不幸な人間。
 厄がちょっとでも溜まると、発散させる前に限界を迎えて、頻繁に小さな災厄を引き起こす。
 ただ、大惨事を起こす様な大きな災厄を引き寄せる事はあまり無いわ」

男が疑問に思って、『自分は不幸な人間の方であるのか』と問うた。
雛はその問いに、小さく首を振る。
草の色をした長く柔らかな髪の毛が、さらさらと揺れた。

「ううん、貴方は前者よ。
 厄や不幸と頻繁に拘わってきた私ですら見た事の無い様な、膨大な厄の許容量を持っているわ。
 ―――問題は、その膨大な許容量を以てしても、ほぼ限界値に至る程の厄を既に抱え込んでいる事。
 ちょっとした神事や、少々の不幸、災厄程度では最早発散しきれない程にね。
 ―――幼い頃から欠かさず、神事に従事して、ちょっとずつ厄を発散させていれば、
 此処までにはならなかったのかも知れないけど。
 貴方の最初の不幸は、恐らく貴方の家系の秘密を教えられないまま早々に御両親を亡くした事。
 その不幸は、貴方が生まれながらに持ち合わせた膨大な厄のせいで引き起こされたかも知れない事よ」

雛の難解な言葉を何とか消化しきって、男は驚愕に身を震わせた。
何も教えられないままに今現在、この時まで一人で生きてきた男であったが、
まさか自分の両親は、自らを苦しめてきた不幸の元―――『厄』の正体が何であるかと、
それを発散させる方法をも理解していた、ということなのであろうか。

男はがちがちと顎を鳴らせて、知る由もなかった、知らない方が幸せかも知れなかったその答えを雛に問うた。

「ええ、多分。
 貴方の御両親には、多分私も会っていると思うわ。
 貴方の御両親は―――いえ、多分、貴方の家系は古くから“それ”を生業としていた筈よ。
 盲点は、自らの嫡子が生まれながらに膨大な厄を背負い、既に大きな不幸が始まっている事実に気が付かなかった事ね。
 私の予想が合っていれば、のお話ではあるけれど」

“それ”の意味は男にもすぐに理解出来た。
今までの雛の言葉を鑑みるに、恐らく、ほぼ間違いなく―――。

「雛流しの風習が廃れてしまった理由は物凄く簡単。その必要が無かったから。
 ―――貴方は、いえ、貴方の家系は、他人より滅法厄を引き寄せやすい体質をしているのよ。
 それを利用して、集落の人達の厄を引き受けて、纏めて私に祓って貰うのが貴方の家系の生業。
 貴方以外の、貴方の周りの人達は、皆幸せだったでしょう?
 当たり前よね。集落の人達の厄は、みんな貴方が吸い寄せ、その身体に取り込んでいたのだもの。
 皆の厄を一人で背負って、神事も行わず、私に祓って貰うでもなく、溜め込んだまま。
 厄の総量が多いから一回の災厄の度合いも大きいし、その程度の不幸では発散しきれないから不幸の頻度も高い。
 ―――よく、今まで我慢してきたと思う。貴方、本当は相当に心の強い人なのかも知れないわね」


雛の話を最後まで聞いて、男は唖然とした。
長年自分を苛んできた不幸の正体に愕然とした。
生まれながらに背負った厄は男を生んだ両親の不幸となり、
男に厄の存在を教えぬままに訪れた両親の死は男自身の不幸の原因となった。
なれば、この一連の不幸は一体何処に起因する物であるというのか。

雛の予想の通りに、前世の咎に起因するというのであれば、両親は自分が殺したも同然だ。
自ら被ってきた不幸の数々も、自身の前世の咎に対する罰以外の何物でも無いだろう。
もしも雛の予想通りではなく、雛の身体を利用した下衆男と自分が何の関係も無かったとすれば、雛には何の責も無くなる。
いや、そもそも誰にも責任などは無く、原因など無く、単に男が生まれて間もなくに、
たまたま『運悪く』、早くに両親を亡くしてしまった事が全ての不幸の原因となったのだ。

自分は神に見放された人間なのだ、とだけ思っていた。
雛の話を聞いて、享受してきた不幸を振り返ってみれば。
誰でも一生涯に一度はその身に受けそうな不幸を『運悪く』そのタイミングで受けてしまっただけ。

茫然としてへたり込む男。
雛はそれを見て、少しだけ悲しそうな表情を見せた後に、右の掌を男に向かって差し出して言った。


「貴方から厄を祓います」


雛の右掌の前に、一寸程の黒い点が現れた。
黒い点はすぐに直径三寸ほどの球体となり、雛の前でゆっくりと回転を始めた。

「貴方は今まで膨大な厄と共に生きてきた。
 貴方の肌が必要以上に黒ずんでいるのも、肉が爛れて太っているのも、周囲に振りまく異臭も。
 体内で消化しきれない厄が受肉して、肉体の一部として顕現しているに過ぎないわ。
 それらを祓いさえすれば、貴方の不幸は此処で終わる。
 貴方がこれから先、生きてゆく事を諦めさえしなければ、ね」

雛が黒い球体の前で大きく両手を広げてくるりと一回転した後、
天を仰ぎ見ると同時に、自らの胸を隠す様に両の手で肩を掻き抱く。
その動作にどういった意味があるのか、男には皆目理解出来なかったが、
踊る様な雛の美しい姿を目で追って行く度に、ほんの少しずつ、目の前の球体が大きくなっていく様に感じた。

男は何やら、その球体に向けて、自分の全身の肉が引っ張られている様な錯覚を感じた。

「でも、貴方が擁する厄の塊は、既に貴方と一心同体。
 多分祓う事は出来るけど、貴方は自分の身体が引き裂かれる様な苦痛を伴う事になるでしょう。
 いえ、寧ろ肉体の一部を剥がし取るのだから、本当に引き裂く事になると言っていいわね」

球体の引力は段々と力を増してくる。
既に男には、その力が錯覚でも何でもない事に気付いていた。
普段みっともなく垂れ下がる余分な肉は、天敵である女神の神力から逃げようと抵抗して、
男の身体を激しく振り回そうと試みる。


「―――私の真名は鍵山雛。
 厄を司り、人の厄を受け取りて天に返す役を担う神の一柱。
 私は私の真名を以て、汝哀れな人間の厄を祓い、天に帰す事を誓わん。
 汝、その血肉と苦悶の叫び無くして、我が神力を受け入れる事能わじ。
 汝の意を問う―――諾や、否や」


男の顔を真っ直ぐ見据え、厳かな言葉遣いと共に最後通告を行う雛。
元より死を覚悟してきた男は、意を決すると、一言、


「諾なり」


とだけ答えた。




        ☆          ☆          ☆




た―――・・・・ん・・・・・っ


雛が大きく跳んだ。
右へ、左へ、宙を踏み台にして。
踊る様にくるくると回りながら、その透き通った声で高らかに歌い始めた。



   たかのあまはらに かむつまります

   かむろき かむろみの みこともちて



どことなく聞いた覚えのある歌。
雛の綺麗な声も相まって、恐ろしい迄に幻想的に聞こえる。
雛の為に創られた歌なのでは無いかという錯覚すら覚える。
歌い、舞う雛はあまりに美しく、出会った時と同様に男の視線を釘付けにした。



   すめみおやかむ いさなきのおほかみ

   つくし ひむかの たちはなの をとの あはきはらに



ずしん。

立ち尽くす男に、急激に大きな圧力が加わった。
全身が空気に潰される様な感覚。
男の全身の血管が浮き上がり、身の張り裂ける様な激痛が襲ってくる。
指一本自らの意志で動かす事も許されず、男の手足が不可思議な力に捻り上げられていく。



   みそき はらひたまふときに 

   あれませる はらへとのおほかみたち



「ぐ、げ、ぅわ゛あ゛あ゛あ゛あ゛が が・・・・・っ!!」

男の全身の毛穴一つ一つが極限まで広がり、そこから黒い煙の様なものが一斉に吹き出した。
全身から吹き出した黒い靄は、猛烈な勢いで、男の前に残された黒い球体の中に吸い込まれてゆく。



   もろもろ まかこと つみけかれを

   はらへたまひ きよめたまふと まをすことのよしを



最早男には恥も外聞も無く、涙も鼻水も垂れ流しながら激痛に耐えるしかなかった。
その涙すらもどす黒く濁り、黒く染まった鼻水すらも球体の中に吸い込まれてゆく。
全身の穴という穴から『厄』が搾り取られていく。
まるで幼子が駄々をこねて暴れ回るかの様に、激痛に男の身体が跳ね回る。
強く吸い寄せられるその刺激に、男の股間の巨大な肉塊に血管が浮き上がり、激しく勃起した。



   あまつかみ くにつかみ

   やほよろつのかみたちともに



びぶっ、びゅるうっっ!!

男の醜い肉塊の先端から、半固形の液体が放たれた。
粘度の高い液体が尿道を擦る一瞬の快感もつかの間、男は股間から血を抜かれた様な激痛を感じ仰け反った。
男の見慣れた、白く濁った欲望の証とは違い、どす黒く濁っていた。
生命の原初であるヒトの子種の一つ一つに、男の溜め込んだ『厄』が取り憑いてしまっているのだ。

勢い良く一間の距離を飛び、地に零れ落ちた男の精から、黒い気が浮かび上がり、球体に吸い込まれた。
男の肉棒は放出しても尚、硬く尖ったまま締め上げられ続けている。
後何回、きつく締め上げ吸い取られるだけの、激痛を伴う射精を繰り返せば良いのだろう。



   あめのふちこまの みみふりたてて

   きこしめせと かしこみかしこみもまをす



「―――・・・・っ・・・・!」

歌と、舞と一体になって自らの身を神事とする雛が、一瞬顔を顰めた。
指の先が裂け、血の筋を描いていた。
それを見て、雛は悲しそうな表情で空を見上げた。
男の溜め込んだ厄は、雛の想像をも遙かに超えていた。
自らの神力を以てしても尚捌ききれない厄の量、現在の男の苦しみたるや如何程の物だろう。

雛は、宙空で舞いながら、男の居る地上を見つめた。
厄を集める神域は既に直径三間に至る程の巨大な球と化している。
眼から、鼻から、股間から垂れ流す黒い液体を搾り取られながら、全身の毛穴から黒い気を吸い込まれながら、
地獄の激痛に全身もんどり打って悶え続ける男の姿があった。

雛は、地に降り立つと、泡を吹いて悶え続ける男の側に歩み寄った。
男の周囲を嵐の様に吹き荒れる膨大な量の黒い靄が、侵入を拒む様に雛の目前に立ち塞がる。
男は、全身にびっしりと青筋を浮かび上がらせて、所々どす黒い血液を噴出させていた。
胴衣を突き破る程に高く聳える肉棒の先端からは、厄に穢され黒ずんだ子種が止め処なく溢れている。


「―――痛い? 苦しい?」


雛は、悲しげな、哀れみの眼差しで苦悶する男を見つめた。
仰向けに転がる男の側にしゃがみ込み、黒く染められた男の顔に躊躇無く触れ、その掌で優しく撫でる。
厄にまみれた男の涙。触れた雛の掌に灼かれる様な痛みが走った。

男は血走った目を見開き、焦点の合わない瞳で雛を見つめ、雛に震える手を伸ばし―――


「・・・・・た・・・・たす・・・・けて・・・・・」


とだけ口にした。


神事は既に尽くした。
本来ならば、後は雛の舞がもたらした神域が、男の厄を絞り尽くすのを待つだけ。
計算外だったのは、男の身を蝕む厄の量が、雛の想像を遙かに超えていた事。
全ての厄を絞り尽くす、その長い長い時の間に、男が耐えきれずに壊れてしまう可能性を考えなかった事だ。

あたかも水に溺れ、空気を求めて藻掻く様に身悶えする男の頭を、雛はその胸に掻き抱いた。
雛の艶やかな色をした古風なドレスに、黒い染みが広がってゆく。
雛は、男の膨大な厄の気にあてられ、触れた箇所の灼かれる痛みに身を捩らせ、悩ましげな声で喘いだ。

朦朧とした男の意識に、雛の柔らかな胸の感触が飛び込んでくる。
物心付いた時には、既に男の母親は他界していた。
男にとっては初めての、母性の象徴たる双丘の感触。
その持ち主が、美しく、母性に溢れた心優しい女神である事に、男は感激した。
このまま死んでもいい、とすら思った。


「貴方は死なせない」


全身を覆い尽くす激痛の波から逃れる為、意識を手放そうとした男の耳にはっきりと。
美しい女神の凛とした声が響き渡った。

雛はドレスの前のボタンを外し、その透明感溢れる白く美しい裸身を晒け出した。
巨乳という程ではないが、芸術と言っても差し支えない程に形の整った両の乳房が男の眼を射抜く。
無駄な贅肉の一切無い引き締まったウエストは、力を入れて抱き締めたら折れてしまいそうだ。
男が今までにひたすら求め続けて、手に入れる事の叶わなかった女体の神秘。
目にした最初のソレが、この様な、世の中全ての男が羨む様な絶世の美女であるなどと、男には想像し得なかった。

最早身動きも取れずに横たわる男の顔を、雛は再びその白い胸に抱いた。


じゅっ。


「――――――~~~っくぅ!」


実際に音がした訳では無いのだが、男の目には、その光景がその様な音を伴っているように感じた。
男の顔にこびり付く、厄にまみれたどす黒い体液がその白い肌に触れた瞬間。
『灼く』という表現が妥当だろうか。
雛の肌が、一瞬で火傷を負ったように赤く爛れて、雛が苦悶の声を漏らしたのだ。
苦痛に身を捩らせる雛は、痛ましいながらも、とても扇情的に見えた。

男の頭を優しく抱えたまま、額から脂汗を流しながらも、雛は呼吸を落ち着かせて、祝詞を唱え始めた。


「高天原爾 神留坐須 皇賀親 神漏岐 神漏美乃 命以知氐、
 八百萬神等乎 神集閉爾集賜比 神議里爾議賜比氐 我賀・・・・」


雛の肌を灼いた『厄』が、雛の胸元の傷から立ち上る。
その黒い煙は、雛と男の周囲を逡巡した後に、すぅっと神域に吸い込まれていった。
爛れた筈の雛の胸元は、まるで何事も無かったかの様にその白さを主張している。

雛が何をしようとしているのか、男にもすぐに理解出来た。
神域を作り、自然に厄が淘汰されるのを待つだけでは足りないと判断した雛が、
物理的な方法を以て、男の体内に強く根付いた厄の塊を引っ張り出そうと試みているのだ。
男の体内にこびり付く厄を、一度外に引っ張り出す事さえ出来れば、後は厄神である雛の独壇場。

だが、しかし。


「皇御孫命波 豊葦原水穂國乎・・・・っ!
 安國登、 平介久っ、 知食世登、・・・・く、んんっ!」


問題は二点。
あまり性急に男の厄を引き剥がしに掛かると、その苦痛で男の精神に異常を来してしまう可能性。
苦痛から逃れる為に、男自ら命を手放してしまう可能性も否めない―――先程の様に。
そして、厄を操り、周囲に溜め込み祓う力を持った雛の肉体自体が、厄に強いという訳では無い事。
厄は穢れの一つであり、神である雛の存在を傷つけ、貶めるもの。
故に、厄に直接触れた雛は、大きな苦痛を背負う。
下手を打てば、自ら処理出来る厄の許容量を超えてしまい、雛自身の存在が危ぶまれるやもしれない。


「事依奉里伎 此久 依奉里志 國中爾 荒振留神等乎婆っ、
 神問婆志爾問賜比 神掃比爾掃賜比氐 語問比志 磐根樹根立・・・・!」


雛の取った手法は。
男の生きようとする意志を繋ぎ止める為に、直接男と肌を触れあわせる事で、
自らの知る方法で男に快楽を与え続けながら、厄を直接男の体内から引き摺り出す方法であった。
―――自らの受ける苦痛と、自らの存在の危機は度外視したままで。


「草乃片葉乎母 語止米氐 天乃磐座放知 天乃八重雲乎 伊頭乃
 千別伎爾千別伎氐 天降志 依奉里伎 此久 依奉里志 四方乃國中登・・・・」


雛の肌を何度も何度も厄の塊が灼いていく。
その度に悩ましい苦悶の声を漏らしながらも、雛は祝詞を唱え続ける。
身動き叶わぬ男の目にも、雛のその苦悶の表情はとても美しく見えた。


屹立したままの男の股間の剛直に、雛の柔らかい指先が触れた。
身動きの取れなかった筈の男の全身が、死角からの急激な快感にびくんと跳ねた。
何度も何度も苦痛を伴う射精をさせられてきた男の剛直に、突然浴びせられた純粋な快感。
雛の柔らかい胸の谷間に顔を埋めたまま、その可憐な指先で醜い自らの肉塊を弄られる感覚。
ここは、一体何という名の天国であったか。


「大倭日高見國乎 安國登 定奉里氐 下都磐根爾 宮柱太敷立氐・・・・・。
 く、んんっ・・・・!
 ・・・・あの男に、教えられた知識を使うのは、癪だけど。
 男の人は、こうされるのが、気持ち良いのよね?」


雛の指先が男の長大な竿をそろりと撫でる。
これ以上無い位に硬く反り返った男自身がびくびくと跳ね、その快感を訴えた。
右の腕で男の頭を優しく抱き締めたまま、左の手で男の肉塊に刺激を与えてゆく。
縮こまった陰嚢を揉みほぐし、雛の小さな手では収めきれない程太いペニスを力強く、優しく、強弱を付けて握る。


「・・・・ぉ・・・・ぉ、ぉぅ・・・・っ」

「高天原爾 千木高知里氐 皇御孫命乃 瑞乃御殿 仕奉里氐・・・・
 ええ、いいのよ。
 出しちゃった方が、楽になれるわ」


そう言って、雛が男の先端の裂け目に、その指先を軽く埋めた瞬間。
男の仰け反った背筋を、ぞくりと強い電流の様なものが駆けめぐり、
肉塊の先から、今までのものよりも遙かにどす黒く、粘度の高いゼラチン状の精液が迸った。


「――――――か・・・・っ」


どくんっ、ぶゅるぶゅるぶゅるるうっ!


厄の引き剥がされてゆく苦痛は確かにあった。
が、今回の射精は、快感の方が遙かに勝っていた。
男が、今までに自らを慰める為に行ってきた、自慰行為による快感などまるで及びもつかぬ、
この世の物とは思えぬ様な、天にも昇る快感であった。

猛烈な勢いで放たれる精液が、雛の指先をその濁流に呑み込む。
指先を強酸に溶かされる様な激痛を感じて、雛は顔を顰めた。

溶かされる様な、では無かった。
見れば、雛の左の指先は、跡形もなく消え去っていた。
厄に取り憑かれた精の奔流を直接浴びて、肉体の構成を保てなくなったのであろう。
激しい痛みに耐えながら、雛は祝詞を唱え続けた。


「天乃御蔭 日乃御蔭登 隠坐志氐 安國登 平介久 知食左牟 國中爾、
 成出傅牟 天乃益人等賀 過氾志介牟 種種乃罪事波 天都罪國都罪・・・・」


雛の左手に再び力が集まってくる。
迸った男の精液から厄の気が昇り立ち、雛と男の周りを逡巡し始める。
雛の左の指先が、何事も無かったかの様に再構成されていく。

男の身体が、若干軽くなった様に感じた。
先の射精で身体から抜けていった厄の塊が、相当な量の厄であった様だ。
満足に、とは行かないまでも、男は軽く身動ぎする程度には身体を動かせる事に気付いた。

「め、女神様・・・・」

「許許太久乃罪出傳牟 此久出傅婆 天都宮事以知氐 天都金木乎 本打切里・・・・
 女神と呼んでくれるのね、私の事。
 先程貴方が吐き出した厄の塊は、相当大きなものだったわ。
 少しは楽になったんじゃないかしら」

辛うじて頷く男を見て、雛はにこりと柔らかな微笑みを見せた。
しかし、その額には脂汗。
顔色は真っ青で、男の身体を抱く細腕からは震えが伝わってくる。
明らかに無理をしている。
男の為に、自らの危険を顧みずにその身を挺しているのが、男にも丸わかりだった。

「でも、貴方の身体の中には、ふ・・・・っ、恐らく、もう一つ、大きな厄の塊があるのよ。
 あれだけの厄を放出しても尚、引っ張り出せないとなると・・・・うぅ、あ、あとは・・・・」

「女神様、もう良いです」

「・・・・え?」

「たった今、確信しました。
 貴女こそが僕の女神様だ」

その言葉に驚いて、思わず祝詞を忘れる雛。
自らの胸に掻き抱く男の醜い顔は、恐らく今までに一度たりとも見せなかったであろう、清々しい表情をしていた。

男の口から、雛に対しての心からの感謝の気持ちが溢れ出す。
自らが、博麗の札を使って思い人を凌辱しようと企んだ、雛の嫌う“女の子を騙す”下衆男と同様であるのだという告白。
雛が、そんな醜い心の持ち主である自分を、躊躇い無くその存在を賭けて迄救おうとしてくれた事。
その事が、今まで周囲に虐げられて生きてきた自分が、雛という女神を心から信仰するに至らしめたという事実。
そして、自分の様な下衆の為に、痛みと穢れを背負い、その身を犠牲にして欲しくないという懇願。
―――男自らが死に至り、生まれ変わろうとも、雛にはずっとそのままの姿で生き続けて欲しいという願望。

吹き荒れる厄の嵐の中、辛うじて動く口と舌で、男は初めて逃避以外の理由で自らの死を願った。
心に取り憑いていた『厄』が落ちたかの様に、透き通った、達観した瞳を雛に向けていた。
雛は、男の心からの信仰が、強い力となって身体に流れ込んでくるのを感じた。

この瞳は、以前に見た事がある。
自分を騙し、弄び、消滅するに至るまで利用し続けたあの憎むべき男が、
自分を口説く時に見せた、宝石の様に透き通った瞳。

―――違うのは、自らに流れ込んでくる、強い信仰の力と、嘘偽りの無い『思い』だ。



『やっと、会えた』



雛は男の言葉に対し、無言で泣きそうな笑顔を見せると、そのまま男の顔に自らの顔を近付け―――

濃厚なキスを交わした。

男のきつい口臭をもものともせず、その小さな口で男の舌を吸い上げる。
自分の舌を絡ませ、男の歯茎を舐め回し、唾液を吸い取っていく。
男の黒ずんだ唾液が雛の口腔に侵入し、雛の口腔内にピリピリと酸で灼かれる様な痛みをもたらす。

突然の雛の行為に驚く男の鼻腔を、雛の身体から立ち上る甘い香りが貫いてゆく。
雛の長くさらさらの髪の毛が、男の鼻先に引っかかり、男はその滑らかさに驚いた。
しかし、その毛先が自分の体液に触れた途端、火で焼かれたかの様に縮れて消滅しているのを見て、
男は目を見開き、あまり動かぬ身体で必死で抵抗の意志を示した。

「女神様! もう、止めて!」

雛が男の顔からゆっくりとその身を離していく。
恥ずかしそうにその胸を隠しながら、雛はゆっくりと立ち上がった。
その立ち姿の美しさに心を奪われそうになりながらも、
男は自らの希望を雛が受け入れてくれた事に対して、酷く安堵した。

と、男が安堵したのも束の間。


雛は、男の前に立ったまま、左手に何かを持っていた。
上品な、白く滑らかな生地で、多くのフリルに包まれた特徴的な布の塊。
一見男物のズボンの様な形状をしているが、男物とは思えぬ程柔らかく膨らみ、可愛らしいデザインの其れ。

所謂『ドロワーズ』。

女性用の下着として、褌と共に一般に広く認識されているその布を、
何故今ここで雛が手にしているのか、男には一瞬全く想像も付かなかった。
此処には今、男と雛の二人しかいない。
この期に及んで、雛が何かしらの必要に応じてドロワーズを用意する、と言うのも考え辛い。
導き出された結論は、当然―――

雛が、着用していた下着を脱いだ、という事になる。

混乱していた男は、その結論に達するや否や、顔を真っ赤に爆発させた。
皮のブーツは履いたまま、真っ赤なドレスを着たままに、あのスカートの下だけ生まれたままの姿とは。
そしてそのスカートの下の秘境の持ち主が、絶世の美女、いや、女神で有るという事実が、
激しい射精の後である上に、死の決意で萎えかけていた筈の男の巨根を、一瞬で天高く反り返らせた。

雛が再度、ゆっくりと近づいてきた。

横たわる男の側にしゃがみ込み、はち切れんばかりに膨張した男の肉棒を、愛おしそうにそろりと撫ぜた。
痛い程に、鋼の様にガチガチに固まった男の竿に、じーんと痺れる様な快感が走る。
びくびくと強く脈打ち続ける男のソレを、雛は優しく握り、さすり続けた。
快感に仰け反り、身悶えする男の身体の上に。

雛が、跨った。

雛が何をしようとしているのか、流石の男にも一目瞭然だった。

「め、女神様・・・・っ!」

「お願い。
 私の事は、雛って呼んで」

「ひ、雛様・・・・!
 僕は嬉しいけど、こんな事をしたら、貴女が大変な事に・・・・!
 お願いですから、もう僕の事は見捨てて、自分の身を案じて下さい。
 僕は、此処までしてくれただけでもう充分です。
 僕なんかを助ける為に、貴女に消滅して欲しくない」

「貴方は死なせない、と言ったわ。
 貴方は私の事を、嘘つきな女神にするつもり?
 こうでもしないと、その身体に巣喰う厄が抜けきる前に、苦痛で貴方の精神が壊れちゃうわ」

長いドレススカートの下。
暗がりの中で、器用に自分の巨大な肉棒を握る雛の指先の感触。
其れをしっかりと固定したまま、雛がゆっくりと腰を下ろしていく。
雛が立て膝の状態になる前にも拘わらず、男の長大な先端が雛の裂け目に触れそうになった。
雛の脚は一般女性よりも相当に長いのだから、男のモノが如何に巨大であるかが見て取れる。
雛は一旦、そのまま腰を下ろす事を躊躇して、男の肉棒から手を離した。

雛は心を落ち着かせてから、男に跨った状態で改めて立て膝をつくと、
自らの裂け目の前で、赤いドレスを高く持ち上げる男の巨根を強く握った。

「おほぅっ!」

男が全身をビクビクと痙攣させる。
雛は男の脈打つ肉棒を、力任せに押し下げて、自らの入り口にあてがった。
男の岩の様な先端が、雛のしっとりと湿ったクレヴァスに触れる。
あまりに柔らかな、男にとっては初めての心地良い粘膜の感触。
ぬるぬると亀頭にまとわりつく肉の襞の感触に、男は腰が抜け落ちそうになった。
あとほんの少し、雛が腰を前に動かすだけで、男の巨大な欲望の塊は簡単に雛の中心を蹂躙する事だろう。

雛のもたらす快楽と、雛に苦痛を与えている事への罪悪感の狭間で、男が苦悩する。
その心とは裏腹に、既に射精寸前の男に対して、雛は語りかけた。

「これが私の出来る最終最後の手段。
 貴方の精神を快楽で繋ぎ止めながら、厄に憑かれた体液の塊を短時間で根刮ぎ引き摺り出す。
 ―――こうしても、ひょっとして既に手遅れかも知れない。
 そうなったらもう私に出来る事はないわ。
 私は消滅。貴方も苦しんだ上に発狂して死亡。
 そうなっても、恨まないでいてくれるかしら」

「う、恨むだなんて・・・・
 なんで、貴女は、こんな、生きる価値もない様な、下衆なこの僕に其処まで良くしてくれるの・・・・?」

『もっとして』と『これ以上は止めて』の入り交じった、懇願する様な複雑な表情で雛を見つめる男。
雛は、何度も見せた、今にも泣きそうな、柔らかな笑顔で男に答えた。



「他ならぬ、貴方だから」




        ☆          ☆          ☆




ぐぐ・・・・ず、ずぶぶぶ・・・・っ!


「・・・・・ぅ、ぅぁああああぁぁ・・・・っ」

雛が男の肉棒から手を離し、軽く身体を前にスライドさせたその瞬間。
雛の肉穴に男の先端が埋まるや否や、強く反り返る男の肉棒が雛の身体を引き寄せ、持ち上げた。
重力に引き摺り降ろされた雛の割れ目に、男の巨大な其れがゆっくりと突き刺さっていく。
雛の全身が美しく仰け反り、あまりに巨大な肉の塊に貫かれ、押し広げられる感触に嬌声をあげた。

男の巨大な肉棒の先端が雛の中心に埋まってゆく。
雛の中の濡れた無数の襞が、男の岩の如く硬い肉棒ににゅるにゅると纏わりつき、きゅうっと締め上げた。
ただでさえガチガチに固まった、男の岩の剛直が、鉄を経て鋼の硬度へ成り代わっていく。
初めて味わう女の膣内、それも誰もが羨む絶世の美女ともあって、男は全身の震えを止める事が出来なかった。

―――気持ちいい、気持ちいい、気持ちいいっ!

男は歯をガチガチと打ち鳴らし、眼から黒ずんだ涙を垂れ流しにして、歓喜の呻き声を上げた。
硬くすればする程、締め付けてくる素晴らしく柔らかい肉の感触を満遍なく味わえるのだとばかりに、
男の股間に大量の血液が流し込まれ続ける。
未だ半分程しか埋まっていないにも拘わらず、男の肉棒は限界を迎えつつあった。

「・・・・あ゛か゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛・・・・
 ・・・・出る、雛様、出ちゃう・・・・気持ちいい、気持ち良すぎる・・・・あっ、出るっ、出るう・・・・!」

男は自らが射精寸前であるのを伝える事で、雛が一時的に身を離してくれる事を望んだ。
濃厚な厄の奔流を直接浴びさえしなければ、雛も其程のダメージを受けずに済むであろう。
男の懇願する様な視線を、雛は優しい眼差しで包み込み―――

そのまま最後まで、自らの腰を下ろした。


ず、ずずずず・・・・ぎゅぷぅっ!


「―――ぁっ、くぁぁああああああぁぁんっ!」


子宮を刺し貫かれるその感覚に、雛は全身を反り返らせて叫んだ。
柔らかな乳の肉が弾む様に揺れ、驚愕に目を丸くする男の興奮をより一層高めようとする。
男の先端に、亀頭を圧迫するあまりに柔らかく、暖かな粘膜の感触。
男が、生まれてこの方一度も味わった事が無く、これからも無いだろうと思っていたもの。
雛の最奥の膣肉の感触が、男へのとどめとなった。


「・・・・・・・・・・・ぉ・・・・・・・・・・・・」


どぷぷっ、びぶゅるるんっ!
びゅるるうぅ、どくん、どくん、どぴゅぴゅっ!


「・・・・・・・ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛・・・・・・・」


びるびるっ、ぶりゅりゅ!
びぶっ、びゅるる! どくどくっ!


女性経験の無い男にとって、雛の名器は数秒間耐える事すらも許されなかった。
恐らく自分でなくとも、世の数多の男共であっても、そう長くは耐えられないだろう。
其程までに雛の膣は絶世の名器と言えた。
男は、自分よりも先にこの名器を貪った男が居る事実に、強く嫉妬を感じた。

美しき女神の膣内に射精するその快感は、意識すらも白く融けてしまう様な恐るべき快楽であった。
涎を垂れ流したまま、止まらない快感の余韻に男が浸っていると、
男の膣内射精後の肉棒を、雛の膣肉が健気に強く締め付け続けているのに気が付いた。

男ははたと気が付いた。
思い切り、雛の膣内に射精をしてしまった。
あまりの気持ちの良さに一瞬、意識が白濁してしまい、雛への気遣いを忘れていた。
今の自分の、厄に取り憑かれた子種の塊は、神である雛にとっては命に関わる猛毒だ。
恐らく、射精後の、雛の強い締め付けは、猛毒を胎内で受け止めた激痛によるものなのだ。

ただでさえ人間との契りは自分の命に関わると言っていたのに、
身体の中心に穢れの塊を穿たれて、果たして無事で済むものか。

見れば、雛の顔はこれ以上無い位に真っ青で、
白く輝く、透明感溢れる肌には鳥肌が立っていた。
全身をガタガタと震わせ、眉間に皺を寄せながらも、笑顔を崩すまいと、健気に微笑んでいる。

「あと・・・・・すこ、し・・・・」

自らの胎内に収まる男の、未だに硬度を失わぬ肉棒を、腹の上から愛おしそうに撫で回す。
その指先が、男には透き通ってきている様に見えた。
神として顕現出来る、限界に達しているのではあるまいか。

「ひ・・・・雛様・・・・・」

「末打斷知氐 千座乃 置座爾 置足波志氐 天都管麻乎 本刈斷、
 末刈切里氐 八針爾 取辟伎氐 天都祝詞乃太祝詞事乎 宣禮・・・・っ」

「雛様! これ以上は・・・・!」

「此久 宣良婆 天都神波 天乃磐門乎 押披伎氐 天乃八重雲乎 伊頭乃・・・・
 あと、少しなの・・・・・。
 今の、貴方の放った精で、相当の厄が抜けたわ。
 今、私が受け止めた分は、多分、何とか浄化出来る。
 あと、一回。
 貴方の厄が抜けきるか、私が存在を保てなくなるか、どちらが先か」

雛の言葉に、男の方が絶叫した。
もう充分だと。
今までも充分な量の厄を取り祓っている筈だ。
この場は此処で一旦取りやめて、雛が充分に力を取り戻してから同じ神事をお願いするのでは拙いのか、と。
今や男にとっては、心の醜い自分を救う為に、雛が苦しい目に遭う事こそが拷問と言って良かった。


「人間の癖に、生意気言っちゃ駄目よ」


雛が悪戯っぽく微笑む。
少女の様な仕草に、男は一瞬心を奪われた。


「千別伎爾千別伎氐 聞食左牟 國都神波 高山乃末 短山乃末爾 上坐志氐・・・・
 神事には、それなりに約束事というものがあるの。
 この行為だって、コレでも一応約束事の一つよ。
 ―――実は、他にも理由はあるのだけど。
 それは、全部終わってから、納得出来るようにお話ししてあげるわ」


雛の全身が、ぽうと光を帯びた。
光の中に僅かに見える黒い点が、渦を巻いて飛び出してくる。
黒い渦はどんどんと大きくなっていき、やがて大きな塊となって、神域に吸い込まれていった。

「これで最後。
 今まで不幸だった貴方は、これから存分に幸せになる権利を持っているわ。
 これ以上、私にしてあげられる事は無いけれど。
 せめて、私の身体で存分に気持ち良くなって頂戴。
 ―――つつがなく幸せになれたら、私の様な、淫らで愚かな神様がいたことを思い出してくれると嬉しい」

そういって、雛は男を呑み込んだまま、腰をくねらせた。
雛の柔肉に包まれたまま、硬度を保ち続けていた男の肉棒に、不意打ちの快感が駆けめぐる。
今この時点に置いても、相も変わらず全身を苛む苦痛が男の身体を襲い続けていた。
しかし、雛の肉穴のもたらすこの世ならざる快感の前には、其れすらも些細な事と感じる程であった。


ずずずず・・・・


雛が男の巨根を、自らの秘所からゆっくりと引き抜いていく。
雛の膣内の柔肉が、男の肉棒を手放すまいと、引っ張る様に絡みつき、名残惜しそうに剥がれていく。
まるでそれ自体が生き物であるかの様な複雑な動きに、激しい射精の後にも拘わらず、男の肉棒はどんどん硬度を増していく。
あと少しで男の全部が引き抜かれようとする、その瞬間に。


ずっ、ぬぷぷぷ、ぐちゅうぅぅっ!


雛が一気に腰を下ろした。
そのあまりの快楽に、男の息が一瞬止まり、空気を求めて藻掻いた。
既に何度も射精している事もあってか、男はゆっくりと、余す処無く雛の膣内を味わう事が出来た。

男の巨大な肉棒の侵入に抵抗するべく、其れを必死に追い出そうと締め上げる雛の肉壁。
無数の柔らかい襞がにゅるにゅると男の竿に絡みつき、精を搾り取らんと激しく扱き立てる。
青筋の浮かび上がる男の竿に、ぴっちりと張り付いた粘膜が潤ってくる。
余りの快感に、既に痺れた様に敏感になっている肉棒。
それが、雛の意志で、柔肉で突然きゅっと締められたり、襞でそろりと撫で上げられたりするのだからもう堪らない。

男は、雛に膣内射精する事が雛を傷つける事だと知りながら、腰が自然に動いてしまうのを止める事が出来なかった。


「高山乃伊褒理 短山乃伊褒理乎 掻別介氐 聞食左牟 聞食志氐婆、
 罪都云布罪波在良自登 科戸乃風乃 天乃八重雲乎 吹放都事乃如久・・・・!」


雛の動きが少しずつ激しくなっていく。
恐らく、『神事』とやらも終わりが近いのだ、と男は思った。
雛の顔色は全く改善されず、真っ青なまま。
しかし、男にとってはその痛みに凛として耐え続ける女神の顔が、誰よりも、どんなものよりも美しく見えた。


「朝乃御霧 夕乃御霧乎 朝風 夕風乃 吹拂布事乃如久・・・・!
 大津邊爾居留 大船乎 舳解放知 艫解放知氐 大海原爾 押放都事乃如久・・・・・っ!」


じゅぷじゅぷと音を立てる結合部が、男の情欲を掻き立てていく。
動けば動く程に増していく快楽から、既に男は逃れられずにいた。
昂ぶった脳の片隅に、うっすらと発光する雛の姿と、薄らいでいく雛の指先が焼き付けられる。
拙い。 拙い。
このままでは、雛の身体が持たないかも知れない、のに―――!

雛の肉襞が、男の竿に絡みついたまま、其れを激しく扱き続ける。


ずっぷ、ずっぷ、じゅぷっ、ずちゅっ。


「氣吹放知氐牟 此久 氣吹放知氐婆 根國底國爾坐須 速佐須良比賣登云布神、
 持佐須良比失比氐牟 此久 佐須良比失比氐婆 罪登云布罪波・・・・!」


本来であれば、女の側にも相応の快楽をもたらしたであろう激しい交接。
しかし、雛の顔に浮かぶのは、あくまで苦悶の表情のみ。
其程まで、神としての存在を賭けて自分を救おうとしてくれているのに、
自分が享受しているのが、あまりに不相応な、恐ろしいまでの快感のみというのがやりきれない。

そんな事を考えている男の理性とは裏腹に、股間の肉棒は一層昂ぶるばかり。
先にも増していきり立った其れは、再びその欲望を撃ち放とうと、痛い程に反り返る。
限界が近かった。

「・・・・あ・・・・雛様、でる・・・・出ちゃう・・・・、
 せめて、外に、だ、出さないと・・・・雛様が・・・・」

「在良自登 祓給比清給布事乎 天都神國都神 八百萬神等・・・・!
 コレで終わり。
 気にしなくて良いの。本当に、全部終わりだから―――」

雛の全身が光に包まれていく。
快感のあまり、男の意識も、白く染められてゆく。

雛の膣内が、きゅっと締まった。
男の縮み上がった陰嚢が一瞬痙攣した、その次の瞬間。



どっくん!
どくどくどくっ! びゅぶっ、びぶるるるるっ!
びゅりゅりゅっ、びゅるるるう!



「あ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛っっっ!!!!」

男が吼えると同時に、男の鈴口から、これでもかという位の大量のタールが噴き出した。



びくっ、びくっ、びゅくくく!
びるるっ、びゅぶるる、びゅるぶゅるっ!



「・・・・・っは、・・・・・っくぅぅっ・・・・・!」

男の肉棒から恐るべき勢いで解き放たれた黒い粘液を胎内に直接浴び、
雛はその逃れられぬ激痛に激しく身を捩らせた。
人間の少女の様な可愛らしい悲鳴を上げる雛。
しかし。


「共爾聞食世登 白須・・・・。
 間に合った」


先の苦悶の表情から一転。
顔色は戻らないまでも、雛は、何かをやり遂げた様な清々しい笑顔を見せていた。
力を使い果たしたかの様に、男の弛んだ身体の上にコテンと横たわる。
息を切らせて、繋がったまま横になっているその姿は、まるで結ばれたばかりの初々しい恋人同士の様であった。

雛の身体が薄く発光し、胎内に受け入れた男の大量の厄を表に引き摺り出した。
渦を巻いて宙に引っ張り出された黒い塊は、何度も逡巡して、憎らしげに雛を睨め付けた後に、神域に吸い込まれていった。
それを最後として、辺り一面を覆っていた黒い靄、男の膨大な厄は全て取り祓われ、
神域の消滅と共に神事完了と相成ったのである。




        ☆          ☆          ☆




男と雛は、繋がったままで、暫く動かずにいた。

男は、全ての憑き物が落ちた様な清々しさを感じていた。
自分の為に、命の危険を顧みずに尽くしてくれたこの女神のおかげで、身も心も救われた事を実感していた。
巫女に欲情した自分。力を以て森の魔女に狼藉を働こうとした自分。
そして、この女神にすら見境無く欲情した自分が、今となっては切り刻んでやりたい程に醜く感じた。

厄は祓われた。
きっと、これからは努力が報われる。
遠回りな人生ではあったが、これから先、自分はやっと幸せを享受する事が許されるのだ。
全て、この少女の姿をした、健気で美しい女神のおかげだ。
礼を言っても言い尽くせない。

そうだ。それならば。
自分がこの心優しい女神の信仰を増やす為に身を粉にすれば良いのだ。
幸い、自分の家系はそれを生業としてきたのであるから、丁度良い話だ。
集落を回り、人々の厄を集めては、厄神の存在と神力、ひいては厄神の健気で人間思いの人柄を広めてやれば良い。
信仰さえ集まれば、自分の為に今回、酷く傷つく事になってしまった雛も、きっと元気を取り戻してくれる。

右手を握る。しっかりと動く。
最早男の肉体を縛る制約は何も無い。
身体は少々弛んだままだが、努力次第ですぐにでも引き締められる自身が男にはあった。
血の滲む様な努力を、今までどれ程繰り返してきたかを思えば、ものの数ではない。


これから先の明るい未来を想像して、男はニヤニヤと気味の悪い笑みを零した。
神事である上、今後は許されざる行為と理解してはいるが、紛れもなく男と雛が交わしたのは男女の営みと呼ばれるものだ。
雛には、自らを苦しめてきた厄を祓って貰ったばかりではなく、三十余年守り続けてきた童貞をも卒業させて貰ったのだ。
思わず調子に乗って、自らの胸に横たわる、可愛らしい少女の背を抱こうと腕を伸ばす。


そして、愕然とした。


男の手が、雛の背に触れる事はなかった。
その手は、雛の白く透き通った肌に触れること無く、止まるべき場所をすり抜けて、男の弛んだ腹を叩いたのである。


ぺちっ。


あってはならない筈の事実を懸念して、男は自らの腹の上に横たわる雛を見た。
その美しい裸体はしっかりと男の視線に入ってきた。
一瞬安堵の吐息を漏らす男。

だが、とある事実に気が付いてしまった。

重さが全く感じられない。
元より小鳥の様に軽く感じられた雛の体躯だが、それでも最低限の重量は感じられた筈だ。
加え、未だ雛の膣内に収まっているはずの自らの肉棒が、雛が全く動いていないにも拘わらず、
いつの間にか抜けてしまっている様な妙な感覚。

「雛様?! 雛様!!」

男は身を起こして叫んだ。
見れば、雛は眉間に皺を寄せ、顔を真っ青にして、全身を襲う苦痛、倦怠感と戦っていた。
自らの肩を抱き、掻きむしり、身を震わせながら、悩ましげな苦悶の吐息を漏らしていた。
介抱しようと、雛の肩を抱こうとする男の手を、雛の身体は無情にすり抜けて行く。

「雛様! しっかりして! 雛様!」

「―――んん・・・・・っ・・・・」

抱き起こして語り掛けてやりたいのに、すり抜ける雛の身体が其れを許してくれない。
せめてはだけた上半身の衣服を整えてやりたいのに、すり抜ける雛の身体が其れを許してくれない。

雛の消滅。

不幸に慣れきった男の脳裏に、今の男が最も恐れる結末が思い浮かぶ。
生まれながらに不幸であった男にとって、不幸とは常に最悪の結果をもたらすものであった。
雛の力を以て、折角不幸の元を断ち切ったはずの男に、尚襲いかかる最悪の不幸。
男は其れを認めたくなくて、半狂乱になって雛の名前を叫び続けた。

男の必死の叫びに、雛は朦朧とした意識を表に引っ張り出して、柔らかな微笑みを見せた。

「・・・・御苦労様。
 約束通り、貴方の膨大な厄は、祓わせて頂きました。
 時間ギリギリではあったけど、間に合って良かったわ」

地に伏したままではあったが、優しげな雛の声に、男は心から安堵の表情を見せた。

「貴方もあれだけの苦痛の中、よく頑張ったわ。
 思った通り、貴方本当は心の強い人なのね。
 その強靱な心を以てすれば、きっと大概の事は上手くいくわ。
 貴方にはこれから明るい未来が待っている筈―――もう、私が力を貸さなくとも」

真っ青な顔のまま、雛はとびきり優しげな笑顔を見せる。
明らかに無理をしている、と男は感じた。
そして、言わなくても良い筈の、雛の余計な一言に不穏なものを感じた。

雛の気遣いを感じる。

もう何も気にしなくて良いのよ、と。

此処で終われば大団円。

皆が幸せ。

其れで良いじゃないか。

懸念する事など何も無い。

男の脳裏に、次々と都合の良い選択肢が思い浮かんでは消えて行く。
自分の心を誤魔化して、雛の心遣いに納得してしまえば、自分は幸せになれるだろう事も解っている。
しかし、男はその“不穏なもの”に気が付いてしまったのだ。
雛の言葉尻に微かに現れた、ほんの僅かな自己主張。


「雛様、先のまぐわいの事ですが。
 途中で止められなんだその『もう一つの理由』をお伺いしても宜しいですか」


言ってしまった。
雛の心遣いを無にする、空気を読まない最悪の言葉。
しかし、男にとってそれは、其れを知って尚、自らが雛に嫌われようとも尚、問い正さねばならぬ事であった。

雛の目が見開かれる。
男の視線と雛の視線が交錯する。
男の真っ直ぐな視線。
雛は其れを見つめ、男が本気である事を理解すると、身を引き摺って起こしながら、
仕方ないわね、と呟いて、今にも泣きそうな微笑みを見せた。

「―――約束だったわね。
 本当は、このまま思い出さずに去ってくれれば、と期待していたのだけど。
 貴方も本気の様だし、聞かれた事には答えるわ。
 ―――時間も無いしね」

雛の言う『時間』という言葉にも恐らく、男にとって思わしくない意味がある。
男の心がどんどん逸る。
そして遂に、男に対して、雛の口から、懸念し得た最悪の事実が伝えられた。


「貴方がこの場所に辿り着く前、道の入り口の看板は見たかしら。
 草で覆われて、全然見えないお地蔵様は?
 道と言うのも烏滸がましい獣道は?
 ―――あれが、今の私に対する信仰の有様なの。
 お山のてっぺんに、守矢の神様方が住み着いてから、私は忘れ去られる一方。
 稗田の『縁起』にも、私や他の八百万が記される事は無かった。
 現に、此処までやってきた貴方も、博麗に教わるまで、私の存在を知らなかった
 守矢の御本尊は、雛流しの神事を人々に教えた側の、力在る神様方だもの。
 私が出来る程度の事は、基本的に全部出来るのよ。
 ―――いまや私の力は、私の本来の姿を知る、年老いてしまった人達の数少ない信仰でもっていたの」


思い当たる節がある。
男は眉を顰めて、雛の告白を待った。


「社から遠く離れる事の出来ない“人形”である私は、此処で厄災に見舞われた人間を待つのみ。
 この場で人間の厄を祓い、人間の幸せを願うだけの神だった。
 ―――そんな程度の事は、私じゃなくても出来たのよ。
 だからこそ、私を頼ってくれた貴方の事は、何が何でも助けてあげたかった。
 ―――今、弱い信仰しか持たず、自分の力で御しきれない様な膨大な厄であっても、絶対に祓ってあげたかった」


雛の指先は、透き通って既に透明に見える。
消えゆく雛の姿を見つめながら、何の力も持たず、雛を救えぬ自分を責め続ける男が嗚咽する。


「舞を舞っている最中にね、貴方の膨大な厄を御しきれずに、指先が裂けた。
 その時にね、もう決まっていたの。
 ―――私が厄にあてられて、消滅してしまう事は。
 後は早いか遅いかだけ。いずれ厄は穢れとなり、全身を回って、神格を貶める。
 そうなれば、神の眷属としての私は、その存在を保てなくなる。
 だから、時間との勝負だった。
 私が消滅する前に、貴方から厄を全部絞り出す為に、最善の方法、最短の方法をとる必要性があった。
 ―――何故ならば、既に次の機会が無い事が、私には解っていたから」


滝の様に次から次へと流れ出る涙を拭おうともせず、男は雛の告白を、一字一句逃すまいと聞き入った。
其れが、その身を挺して男を救ってくれた、健気で優しい女神に対する最大の礼だと思った。


「貴方が初めて女神様と呼んでくれた時に、貴方から流れてきた信仰の力はとても力強いものだった。
 本来なら、神事を最後まで全うすることなく消滅する可能性もあったのだけどね。
 今この場で、こうしてお別れを告げる事が出来る迄に保たせられたのも、貴方の強い信仰の力があったから」


雛の身体が、男の目の前で、どんどん透けてゆく。
男は何とかして雛を引き留めようと、両の手で雛を抱き締めようとするが、手は空を切るばかり。
雛はその、雛の名を呼んでわめく男の必死な様子を見て、くすりと笑みを見せた。


「もしも貴方が、私が消えることを『不幸』と思ってくれるのなら、のお話だけど。
 貴方の不幸な人生は、この最後の不幸を以て一巻の終わりよ。
 貴方がこれからの人生に於いて幸せになることが、愚かにも消えゆく淫らな神様の最大の望み。
 ―――だから、幸せになって。これ以上無い位に」


思えば、最初からそうだった。
雛は、男に対して、何度も何度も、自分の運命を悟った様な『泣きそうな微笑み』を見せていた。
恐らく、雛にとっては、この結末はある意味、自らの望んだ結末であったのだろう。
雛のあまりに高潔なその心中を察し、男は涙も鼻水も垂れ流しにしながら、雛の名前を呼び続けた。


「・・・・・雛様、雛さま、・・・・びな゛ざま゛ぁ゛・・・・・」

「―――最後に、一つだけお願い。
 “女神様”でも“雛様”でもなく、“雛”って呼び捨てにしてくれるかしら。
 ―――あの、憎たらしい男がそうしていた様に。
 そうしてくれて、やっと、あの男との忌まわしい記憶を、貴方で塗り潰すことが出来る。
 本当の意味で私を必要としてくれた、貴方との想い出を胸に消えて行くことが出来るの。
 ―――駄目かしら」


雛の身体が、いよいよ周囲の景色に同化してくる。
最早一刻の猶予も無いのに、男はその名を馴れ馴れしく呼ぶことを躊躇する。
間に合わないか、と、悲しげな表情を見せる雛に、鼻水だらけの男がはたと向き直った。

「・・・・か・・・・いで・・・・」

「・・・・・なあに?」

「・・・・い、いかないで・・・・ひ・・・・・」

「・・・・・」



「・・・・いっ! いかないで、行かないでくれ、“雛”!
 僕をおいていかないでくれぇっ! 雛っ! ひな、ひなああああぁっ!!!」



絶叫する男。
雛の消えて行くその瞬間。
雛が、満面の笑みで、そっと呟いた声が聞こえた様な気がした。



『・・・・・ありが・・・・とう・・・・』




        ☆          ☆          ☆




男は、かの洋館の位置は熟知していた。
せめて一言だけでも心からの思いを伝えようと、館の前まで訪ねること数十回。

魔法の森の人形遣い、アリス・マーガトロイド。

初めて彼女を見たのは、守矢の神社に於ける祭りの際。
小さな屋台で、多くの子供達に囲まれて人形劇を繰り広げる美しい魔女に、一目で心を奪われた。

彼女を思い、歪んだ妄想で何度彼女を穢した事だろう。
だが、彼女は『縁起』にもその名を連ねる有名人。
堂々と告白したところでこの醜い容姿の自分が選ばれる訳も無く、元より自分の手が届く様な存在で無い事は承知していた。

―――それでも。



「―――どちら様かしら?」

とある快晴の日の午後のことであった。
滅多に無い来客に驚き、疑心暗鬼も半々に扉を開けたアリスの目の前に居たのは。
見窄らしいながらも清潔な胴衣を身に纏った、太った中年男。
アリスは、この男の姿に見覚えがあった。

「あら・・・・貴方は確か、以前に森で迷って、私の館に泊まっていった人ね。
 今日はまだ日も高いけど、なにか御用件でもあるのかしら?」

見かけこそ悪いが、以前出会った当時の男は勤勉で真面目であった。
内面の性癖の歪みはともかくとしても、それを表に出さない精神力と、
周りに好かれようと苦心して身につけた立ち居振る舞いが、
人見知りをするアリスにも『誠実な人間』という印象をもたらしていた。

男は無言で、アリスの前に、綺麗な紋様の描かれた紙切れを差し出した。

「―――え?」

「無礼を承知で言います。
 アリスさん、まずはこの札をお渡ししておきます」

「・・・・・え? え?」

男の真意を測りかねて戸惑うアリス。
逆に、落ち着き払って、男は自らの袖を捲った。
―――自らが何も隠しておらず、何も企んでいないことをアピールする様に。

「この符・・・・紅白巫女の、かしら。
 何故、貴方がコレを持っているの・・・・いえ、何故私に差し出すのかが、理解出来ないわ」

男が、何が目的で自分の館を訪ね、自分に何を求めているのか、アリスには想像も付かなかった。
呟く様に、自問自答するかの様に口にしたアリスに対し、いきなり男の爆弾発言が襲いかかった。



「そのお札は博麗の巫女が作った、五間四方の妖怪の力を打ち消す強力なお札です。
 僕は当初、このお札を使って、貴女に狼藉を働こうとしていました。
 ―――貴女の身体の自由を奪い、組み伏せて、犯し、孕ませようと画策していました」



ぱぁん!



男の頬に、アリスの強烈な平手打ちが飛んだ。
男の頬の内側が切れ、口の中に血の味が広がった。
鼻から冷たい筋が垂れてくる様な感覚。

戸惑いの表情から一転。
表情の変化こそ乏しいものの、アリスのその刺す様な冷徹な、見下す様な瞳は、まるで親の敵を見るかの様であった。

「よくも、ぬけぬけと」

アリスの周囲に、無数の人形が姿を現す。
自分の身体を弄ぼうとした狼藉者に断罪を下すべく、人形を統率して陣を組ませる。
あとほんの少し、アリスが指先に力を込めるだけで、男は全身を串刺しにされて命を落とす。
問答無用、とばかりに死刑を執行せんとしていたアリスは、ふと男の見せる真剣な表情に気が付いた。

「人間の癖に。
 この私を犯し、孕ませよう、ですって?
 身の程を知りなさい。
 ―――でも、この符を先に、私に差し出してきたのには、何かの理由があるんでしょう?
 貴方の言うことが本当なら、貴方は私がその事を知る前に、コレを使うことも出来た。
 私がその企みを知らずに、貴方に無防備に近付いた、今この瞬間にも。
 あの世に送る前に、遺言としてその言い訳だけはさせてあげても良いわ。
 ―――何か言いたいことは、有るかしら」

構えを解かず、男の命を掌の上で弄んだままに、アリスは男に問いただした。
冷徹な瞳で男の目を射抜くアリス。
男はその鋭利さに激痛を覚えながらも、目を反らさず、瞳を閉じず、強く見開いたまま、
―――第二の爆弾発言を口にした。



「初めて出会った時から、貴女のことが好きでした。
 貴女の存在こそが、不幸な生涯を送り続けてきた僕の、唯一の心の支えでした。
 長きに亘って、僕の心を支配してきた貴女への思い。
 死ぬ前に、どうしても正直な気持ちを、伝えておきたかった」



男の真剣な表情に、アリスは唖然とした。
人間の男性に告白を受けたことは、一度や二度のことではない。
無論、外見の優れているとは言えないこの男より、ずっと容姿の優れた男からの告白も多々あった。
その全てを『人間の男性とお付き合いするつもりは無い』と突っぱねてきたアリスではあったが、
どうにかして自らを良く見せようとアピールしてきたそれらの男性達と比べ、一体どうしたことだろう。

この男は、外見上の問題で、元よりマイナスからのスタートである筈の自分の心証を、
更に最低のランクまで引き摺り降ろしてから、最早成功率皆無に等しい告白を行ったのだ。


「・・・・ぷっ。うふふ、あははははっ!」


真剣な表情の男を前に、アリスは唐突に笑い出した。
子供の様に顔を綻ばせたアリスを見て、つられて男も笑顔を見せる。
アリスは男を囲んでいた人形達を引っ込めると、男に向き直った。

「全くもう。しょうがない人ね。
 真剣な告白を笑ったのは謝るけど、これは貴方も悪いわよ。
 貴方みたいなトンデモ告白は、私の生涯でも初めてのことだわ」

「それは・・・・光栄、と言って良いのかな」

「お馬鹿さん。調子に乗っちゃ駄目よ。
 貴方が危険人物であることには変わりないのだから」

女神の様な笑顔を見せるアリス。
煌めく金髪に、透き通る様なサファイアブルーの瞳。
男はその美しさに、一瞬心を奪われそうになり、ぶんぶんと首を振った。

「取り敢えず、貴方の武装はこの符一枚。
 コレを私が抑えている限り、貴方には私に対抗する手段は無い、という事をアピールしたかったのね。
 それに関しては理解したから、せめてお話くらいは聞いてあげるわよ。
 最も、人間の殿方とお付き合いをするつもりは無いのだけど。
 取り敢えず、お茶くらい入れるから、中に入ったらどうかしら」

アリスの提案に、男は首を振って答えた。

「いや、貴女の答えは聞けたから、僕は此処でおいとまします。
 ―――長年の僕の正直な思いを、貴女に伝えることが出来ただけで、僕は満足だ。
 多分、僕はもう二度と貴女の前に姿を現すことは無いと思うけど。
 心も姿も、今の美しいままの貴女であることを願っています」

「そうかしら?
 貴方がそういうなら、私は構わないけれど。
 ただ、貴方の様に表裏無く、自分を偽らずに、心の醜い部分まで包み隠さず晒け出して話す人は珍しいわ。
 貴方さえ良かったら、異性としてのお付き合いでなく、普通のお茶呑み友達としてお付き合い頂けないかしら。
 貴方からは、何度も苦難と死線を潜り抜けてきた、達観した人生観を感じる。
 色々と腰を落ち着けてお話ししてみたいから」

「へ?」

アリスの思い掛けないお誘いに、男は全身を硬直させた。
危険人物認定から一転、いきなりのお友達認定に驚愕する男。
アリスはにこりと微笑んで、からかう様に話を続けた。


「繰り返すけど、別に男女のお付き合い、という訳じゃないわ。あくまでお友達として。
 ―――だって、貴方、先程の告白の台詞、『好きでした』『支えでした』だったじゃない。
 あの場で敢えて過去形になっているのは―――既に吹っ切れているんじゃないのかしら?
 多分、私以外に、既に貴方の心の大半を占める女性が居るんじゃないのかしら。
 ―――貴方のことを、多分安全だと思ったのは、其処なんだけどね」


長く接することの無かった、魅力的な女性達。
付き合いも殆ど無かった自分の心を、こうも容易く看破するアリスを見て、男は苦笑した。

女は鋭い。

女性に接することの無かった男が、最初に覚えることになった教訓であった。




        ☆          ☆          ☆




「無事だったのね、良かったわ。
 あの後貴方のいた場所に戻ってみて、姿が見えなかったから、どうなったのか気懸かりだったのよ」

竹の箒を片手に微笑む博麗の巫女・博麗霊夢。
少女のあどけない笑顔と、白く細い身体、長く艶やかな黒髪は、
あの時に出会って、男を欲情させるに至った扇情的な魅力を今尚、変わらず振りまいていた。

「怪我は大丈夫なの?
 あれだけ痛そうに蹲っていたんだから、結構な深手だったんだと思ってたけど。
 もう普通に歩けるの?」

男の顔を、自らの身体を折り曲げて、下から覗き込む様な仕草をする霊夢。
この少女は、ひょっとして、知識は無くとも本能的に男を魅惑する才能を持っているのではあるまいか。
一種の天才と言っていいのだろうか。
アリスの時にもそうした様に、男は首をぶんぶんと振って邪な思いを頭から放り捨てた。

「???」

首を傾げる霊夢に向き直り、男は真剣な表情で話し始めた。

「先日は有り難う御座いました、巫女様。
 今日は、使わなかった件のお札を返すのと、助けて頂いた事へのお礼をしに。
 そして、二点ばかりお願いを申し上げたくて参上致しました」

真面目で堅苦しい男の言葉に、一瞬ついて行けずにきょとんとする霊夢。

「まず、僕は怪我などしていなかった。
 巫女様の美しさにあてられて、欲情してしまったのを隠そうとして蹲っていました。
 申し訳ありません。この二枚のお札はお返しします。
 そこでお願いが一つ。
 巫女様は自分がとても魅力的であることを理解すべきです。
 無防備に男に近付く様な仕草を見せるのは、これから先、出来る限り控えた方が良い」

霊夢の顔が一瞬で真っ赤に染まった。
反射的に箒の柄で男の顔を横殴りにひっぱたいたのは御愛嬌である。
鼻っ柱を包帯でぐるぐる巻きにされて、落ち着いた所で、男は再度話を切り出した。

「あいててて・・・・・。
 助けて頂いた身で、こんな事をお願いするのはとても気が引けるのですが」

霊夢が首を傾げ、またもや男の顔を覗き込もうとして―――気付いて身を硬直させる。
顔を赤らめて、反射的に悲鳴を上げて、男の頬を平手打ちする霊夢。
男は苦笑しながらも、巫女に最も聞いて欲しかった願いを伝えた。



「僕に、雛流しの詳しい伝承と、流し雛の編み方を教えては頂けませんか?」




        ☆          ☆          ☆




歳月が流れた。



既に齢四十に近い男は、その身体を鍛え、学問に励み、自らを高め続けて生きていた。
その身は筋肉で細く引き締まり、その聡明な頭脳は里の相談役として呼ばれる事多数。
自らの『厄を引き寄せる体質』を利用し、既に雛流しの廃れてしまっていた集落の家々に、
自ら編み上げた、厄神を象った厄避け人形を配布し、
定期的に訪問を行ってはその厄を祓い、心優しい厄神の存在を人々に広める、という事を繰り返し行っていた。

男は厄神の社のすぐ側に小さな小屋を建て、社に日参出来る様にしていた。
人里からの感謝の寄付や、厄祓いの大きな仕事も入る様になり、その報酬などを使って、
小さく寂れた社の建て替えを行い、獣道の様な参道を整備し、参道入り口の地蔵を磨き、
誰でも参拝できるように見やすく大きな看板を立てたりした。

けして楽な日々とは言えなかったが、自分が辛い思いをした分だけ周りに認めて貰えることが、
辛酸を舐め続けてきた男には何よりも嬉しかった。
長きに亘って辛い思いをしてきた男の人生は、時に他人に指針を与えることもあり、
男を心より信頼してくれる友人も二人、三人と増えていった。
遅すぎた充実の人生が、今になって男にもたらされたのである。



とある快晴の日の夕暮れ。
山伏の様な装束に身を包んだ男は、博麗の神社から帰路に着く所であった。
以前に世話になった博麗の巫女も、既に男達を一目で魅了する、美貌の女性に成長していた。
その、博麗の巫女が、婚姻の儀を結ぶことになったのである。
博麗の巫女には、一生掛かっても返しきれない借りがある。
男は、心からの祝福と、巫女とその相手から念入りに厄を祓う事で、感謝の気持ちを示したのだった。

『咲夜も、早苗も、魔理沙も。
 皆人間としての幸せを見つけた。
 後はあんただけよ』

相も変わらず、人の心を見透かした様な霊夢の言葉が男の脳裏に思い浮かぶ。
男は愚直なまでに待ち続けていた。
例え今生での再会が叶わずとも、諦めなければいずれ、必ずその時は来ると。
その愚直過ぎる男の生き方に、友人である霊夢とアリスの方が心配する有様であった。


小屋に辿り着くと、男は荷物を置いて、薪を割る為に庭に出た。
今日は巫女の祝言があったため、行うべき仕事が大概遅れてしまった。
充分に薪を割ったら、厄神の社の泉周りを掃除せねばならぬ。
参道の草が伸びてきている。完全に闇と化す前にむしり取って、綺麗にしてやらなければ。
人里の西の通りで、雛人形を取り替える時期が来ている。今日中に編み上げてやらなければ。

男は、鍛え上げられた上半身を剥き出しにして気合いを入れると、
雄叫びを上げて薪割りに勤しんだ。


入浴で汗を流した男は、守矢の参道を歩いていた。
外は既にとっぷりと暗くなっていたが、男にとっては毎日歩き慣れた道である。
足取りも軽く、右手に箒と熊手、左手に提灯を持って、
大きく『厄神様の通り道』と書かれた目立つ看板を通り過ぎる。


ふと、男の耳に、ぱしゃっ、と水の跳ねる音が聞こえた。


立ち止まる男。
まだ社までは距離があるが、この近くの水辺は社の泉と、少々遠くの河童の住む川辺りしかない筈だ。
泉に大きな木の実か、小動物でも落ちたのだろうか?

男の心中に、有り得るだろう可能性が次々と羅列されてゆく。
そんな筈は無いだろう。いや、しかし―――
男の心がどんどん逸ってゆく。

薄暗い道。
かつて獣道であった其処は、男の尽力により、歩きやすい石畳が敷かれていた。
その石畳を、一足飛びに駆けていく男。

木々に囲まれた細道を、月と提灯の明かりを頼りに進む事約半刻。
遠目に見える、明るく開けた場所―――厄神の泉から何かが聞こえてくる。



   おうち わすれた こひばりは

   ひろい はたけの むぎのなか



鈴を鳴らす様な、ひばりが鳴く様な、神秘的な澄んだ声。
全身を汗だくにしながらも、自然と男の足は速くなっていく。



   かあさん たずねて ないたけど

   かぜに ほむぎが なるばかり



男がずっと待ち望んでいたもの。
男が全てを手に入れる代わりに失ってしまった、大切な存在。



息を切らせて、男は泉の前に駆け込んだ。



その場所に居たのは――――――。




     
   
アリス「成る程ねぇ。前回のアレでいいや、くらいに思っていたけど。こっちの方が誰も不幸にならない終わり方なのね。ちょっとだけ見直したわ、うん」
ニバル「それはどうも。アリスたんは私の事をどんなヤツだと思っていたのだ」
アリス「ソレが知りたければ“チー符『幻想霊符』”のタグを辿って、『ある不幸な***の話・アリス編』をじっくりと読んでみる事をお勧めするわ」
ニバル「どうもすいませんでした・・・・」


誰だよ60kb弱とか抜かした野郎は(←自分
こんばんはいつもの情弱、ニバルさんです。

今回は予定通り、雛さんのお話ではありましたが、予定通り行かなかったのは日にちと長さ。
二月の半ば頃には70%出来ていた筈なのに、なんでそこから一ヶ月近く、加えて倍の文量ってえ事態になってんだ私・・・・
短く纏める能力の欠落っぷりがまざまざと!

因みに、実はこのお話、最初のアリスさんの書き始めあたりから、構想はずっとあったんですよ。
ここまでお読みになられた皆様なら既にお気付きかとも思いますが、
じゃあなんで書かなかったのかと言いますと、このシリーズの主題である『チー符』が、エッチ及びお話に全然絡んでこないんですね。
なので、チー符の本領発揮である最初のアリスさん、変則使用の文ちゃんを先に書いて、ソレ前提でこういう分岐もある、という可能性を提示する形になりました。

作中のブ男さんではありませんが、此処で軽く爆弾発言をしておきますと。
このシリーズはまだ続ける予定でこそありますが、この作品が最高のハッピーエンドです。
今後ブ男さんが幸せになる事は一切ありません(笑)。
まあ、スタンダードなレイプものに戻ると思って頂ければ。

今回、作中の歌として引用したのは、日本童謡の『お家忘れて』と、神社で使われる『天津祝詞』『大祓詞』です。

次の予定は、本編扱いの作品としてはパッチェさん。
番外編を少々挟む予定です。
一区切り付いたらフランちゃんに取りかかろうと思っています。

宜しくお願いします。


三月九日追記
クライマックスシーンに恥ずかしい誤字発見。指摘される前で良かった!


三月十一日追記
※返信

>>1様
毎度有り難う御座います。

>>2様
厄神様はマジ女神様だと思います。人気投票の順位も順調に上がっててニバル歓喜。

>>3様
夜伽ののんびりまったり感が好きです。点数制とか怖くて手が出せないヘタレなので。

>>4様
めーさくはナヅナ様やソースケ様にお任せしようと思います。咲夜さん結婚させちゃったし。

>>5様
この作品だけとか勿体無いお言葉。この時間軸の男は幸せになりますが、今後の作品に於いてこの男が幸せになる事はありません。御了承をば。

>>JENO様
Google先生最強です。『天津祝詞(あまつのりと)』『大祓詞(おおはらえのことば)』『日本の童謡』で普通に検索しました。

>>7様
貴方様の指摘に私歓喜。初作から読み返してみた所、一瞬、とか心を奪われた、とかの表現の多い事多い事。
癖ってこういう所に出るものなんですね。お言葉有り難く頂戴致しますが・・・・Mって何(笑

>>8様
いつもコメントを有り難う御座います。貴方の眼の中の花粉を洗い流すのに貢献出来て光栄です。

>>くさなぎとーじ様
『全俺が抜いた』と言うのは如何でしょうか。

>>10様
計画通り! 同僚の女の子に気遣われる様なリア充の方は爆発するかもげて下さい。
冗談はさておき、読んで頂いて有り難う御座いました。

>>11様
いえいえ、この無駄に冗長なお話を最後までお読み下さって有り難う御座いました。

>>12様
めーさくは(以下略
貴方様の(社会地位的な)生還を心より願っております。

>>13様
おっぱい星人たるニバルワールドに於いては、今までの作品に出てきた女の子の中では咲夜さん、めーりん、パッチェさん、けーね先生が巨乳です。
冒頭で霊夢がはぐれ天狗の存在を仄めかしているので、禍嵐は存在はするんですけど、普通に霊夢に壊滅させられました。


2011年12月11日追記
作品数が多くなり、読者様から作品検索のし辛さに付いて貴重な御意見を戴きました。
それを受けて、全シリーズ全作品の統一タグ『東方ニバーランド』を作成しました。
ニバルの旧作などを読んでみたい、とお考えの方は、上記のタグをご利用下さい。


十二月二十八日追記
統一タグとして全作品につけた『東方ニバーランド』が、作品集上のタグ情報として見た際に、
あまり見栄えが宜しくないと感じた為、全て『TNL』に変更することにしました。
お騒がせ致します。
五木降 ニバル
コメント




1.名前が無い程度の能力削除
す、すばらしい・・・
2.名前が無い程度の能力削除
厄神様マジ女神様
とにかく勢いが素晴らしい。
3.名前が無い程度の能力削除
最後の雛の歌で不覚にも涙。
たまにこういった作品に出会えるから夜伽はやめられない
4.名前が無い程度の能力削除
何これ名作すぎる(黙

俺も思わず最後の雛の歌で泣きかけた
5.名前が無い程度の能力削除
タグで避けなくて良かったと思ったのは生涯でこの作品だけだと思います。
名作を超えた名作で、もう涙腺とかいろいろやばいです。

せめてこの男には最期まで幸せになって欲しい・・・
6.JENO削除
雛の歌とか調べるのにどれだけ時間かかったのかなとか思うと・・・・・・

なんだかこの作品で忘れてはいけない昔ながらの八百万という考え方を再認識させられた気分です。

とにかく何が言いたいかというと・・・・GJ!
7.名前が無い程度の能力削除
ニバルさん来た!私歓喜!

相変わらず素敵な作品を書いてくれるニバルさんですが、ニバルさん自身はどうもM気質との噂なので(ぇ
褒めるのは他の方々にお任せしておいて、私は気になった点を一つだけあげておきます。

一瞬心を奪われた、って表現、多くないですか?
心を奪われそうになった、とか目がくらんだ、とかで充分だと思うので、一瞬という表現を多用するのに若干の違和感を感じました。

とはいえ、自分にはこんな素敵なSSは書けるはずもないので、あくまで一読者がちょっとだけ感じた戯言程度に思っていただけると幸いです。

次回作も楽しみにしています。
8.名前が無い程度の能力削除
用意したティッシュで涙を拭いた・・・
軽い気持ちで雛さんタグの作品開いたら話に引き込まれて時間を忘れてしまいました。
ありきたりな言葉ですがとてもよかったです。
本当に涙が止まらない・・・
9.くさなぎとーじ削除
あぁ、もうっ! どうやって言葉を紡いだらいいのか分からない!!
よかった? 感動した? 全俺が泣いた?
どれも陳腐な表現に聞こえてしまうので、一言だけ送らせて頂きます。
ありがとうございました!!
10.名前が無い程度の能力削除
お昼休みにiPhoneで読んでたら、涙が止まらなくなった。
同僚の女の子に見られたので、花粉症だと誤魔化しておいた。
ニバルさんアンタ何てもん書いてくれやがる
11.名前が無い程度の能力削除
はは・・・すげぇ感動した。最後のところで涙腺崩壊しました。。。ニバルさん・・・いつもすばらしい作品をありがとう!涙で画面が見えないよぉ
12.名前が無い程度の能力削除
なんですかこれ……すごい名作じゃないですか
うあー!夜伽だから友人に紹介できないのがつらい
いや、いっそバラしてでも紹介するか
では逝って参ります、ありがとうございました(敬礼)
13.名前が無い程度の能力削除
相も変わらず物語の起伏が激しくて面白いです。
しかしこの幻想郷には「巨乳という程ではないが形の整った乳房」の娘しかいないのかw
ふと禍嵐が気になりましたがこの世界には存在しないと信じたいところ。

スタンダートレイプ、楽しみに待っております。
14.名前が無い程度の能力削除
素晴らし過ぎて気の利いた言葉が出てきません。ありがとうございました<m(__)m>
15.名前が無い程度の能力削除
ブ男君が報われて本当に良かった
実用性と感動を兼ね備えた傑作でした