真・東方夜伽話

さとりと一緒!~邂逅編~

2011/01/29 05:26:50
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さとりと一緒!~邂逅編~

タカハウス

この作品は前作「さとりと一緒!~地上で宴会編~」の続編となっております。
気になった方は是非そちらもご覧ください。

・オリキャラが苦手な方
・こんなの俺のさとりんじゃねぇ
・こんな独自設定……いらない!

という方は戻るボタンを推奨します。
そうでない方はそのままお進みください。
今回は本当に独自設定満載ですが、よろしければどうぞ!












ゆっくりさとっていってね!














《さとりと一緒!~邂逅編~》


「ん……」

ふと、眠りから覚めた。
布団から起き上がり見れば、障子の外から、朝日が漏れ出ていた。

(もう朝か……)

少し眩しいその光に目を細め、まだ眠っている頭でそう思う。昨日の宴会が、嘘のように静かな朝だ。
まぁ、地底の宴会と大差ないので、別段驚きもしないですけれども。
未だ覚醒しない僕は、枕元に置いてあるお守りを手にする。
……まだ僕が赤ん坊だったころ、僕の入れられていた籠の中に一緒に入れられていた、もうぼろぼろのお守り。
夏祭りの時以来、こうしてまじまじと見つめる事もなかった。
これを見ると、自分の過去を、つい振り返ってしまう。
捨てられて、母さんに育てられて、大きくなって、そして……。

「ん……すぅ」

隣から聞こえる寝息に気づいて振り向けば、妻のさとりがスヤスヤと可愛らしい寝息を立てて、眠っていた。
無防備なさとりの寝顔……思わず少し笑ってしまった。少し乱れた布団を掛け直して、彼女の頭を優しく撫でる。

「んん……くぅ」

さとりが気持良さそうに微笑む。口元をモゴモゴと動かす仕草が、本当可愛い。
ふと悪戯してみたくなって、さとりのふっくらした頬をつついてみる。
ぷに。

「んっ」

眉根を、少しだけ寄せる。
ぷにぷに。

「んんっ」

さとりが僕の指を掴もうとして、掴み損ねる。
ぷにぷにぷに。

「んむぅ」

やっと、彼女が指を捕まえる。
優しく、僕の人差し指を包み込む手のひらが、温かい。
さとりは満足したように微笑んで、そのまま、また可愛らしい寝息を立てだした。
……やっぱりさとりは可愛いな、うん。

そんな風に一人ごちていると、カラリと襖が開いた。

「あら、おはよう」

襖から顔を出したのは、髪を下ろした襦袢姿の霊夢さん。

「あ……おはようございます」
「ん。さとりはまだ寝てるのね」
「えぇ、まぁ」

僕の指を、さとりが握ったままの状態で固まっているので、なんとも言えない状況に。
……恥ずかしい。

「幸せそうね、あんた達」
「あ、いや、まぁ」
「まぁいいわ」

……微妙な空気だ。

「ん……?」
隣で寝ていたさとりが、もぞもぞと動き出した。さっきの会話で起こしてしまったようだ

「あ、おはよう、ございます……海斗」
「おはよう、さとり」
「……私何で、指なんか……?」

握っている指を、不思議そうに眺めるさとり。
いや、まぁ無意識にそうしたのだから仕方ないけれど。
まだ眠そうなのか、ぼーっとした表情でそれを眺めていた彼女が、

「はむっ」

急に僕の指を口に含んだ。

「!?」
「ん……」

第一関節までくわえられ、そのままさとりがもごもごと口を動かしだす。
……ちょっと舌、当たってる。

「ん……怪我ふぃふぇませんね」
「え、うん」

えーっと…寝ぼけてる?

「あー、悪いんだけどさ」
「!?」

襖に寄り掛かっていた霊夢さんが口を開く。
完全に忘れていた。

「いちゃいちゃするのは構わないけど、起きたら顔洗って来なさいよ。タオル出しておくから」
「あ、はい」
「ん……ありがとうございまふ、霊夢ふぁん……霊夢さん?」

口から指を離して、さとりが霊夢さんをぼーっと見つめる。が、

「……ふぇ!?」

ようやく自分がしていた行動に気がついたのか、徐々に徐々にさとりの顔が赤くなっていく。

「あ、そういえば、霊夢さんの家に泊まって……」

先ほどの行動に、さとりが耳まで真っ赤なる。
僕もつられて思わず顔が熱くなってきた。

「ま、取り敢えずお幸せに」
「あ、あぅ……」
「あー、後」

おもむろに、霊夢さんが僕らの寝ている布団を指さす。

「布団、外に干しといてね」
「え……?」
「濡らしたでしょ? 乾いてるけど、まぁ念のため」

……思考が止まる。

「き、聞こえていました?」
「ううん」
「え、じゃあ……」
「勘」

そういって霊夢さんは、トントンと足音を立てて、廊下の向こうに消えていった。

「……」

勘でわかるものなのか……?
兎にも角にも、恥ずかしいけれども、起きて布団を干さなければ。

「さとり、と、取り敢えず起きようか……」

隣にいるさとりに話しかけるも、反応がない。

「さとり……?」

横を向くと、さとりは赤い顔のまま固まっていた。

「さ、さとり?」
「……あ、あう、あの、し、してたの、気づいたん……ですよね」
「……」

何も喋らない僕に構わず、さとりの頭からぷしゅうと湯気が噴き出した。














始めまして、僕の名前は星熊海斗と申します。
昨日は地上で宴会を終えた地底の皆と共に、霊夢さんの神社に泊まらせていただきました。
そんな訳で、明朝の出来事に戻るのですが……。

「さとり……?」
「……」

布団を干して、顔を洗い終えても、さとり機嫌が直りそうにありません。

「あの、ごめんね? でも、その……」
「……もの、すごく、恥ずかしかった……です」
「う、うん」
「か、海斗が、昨日、あんなこと、しなきゃ……」
「ごめん」

さすがに他人の家でしたのは、まずかった。
でもその、なんというか、その場の雰囲気に流されたと言うか、なんというか。

「と、とにかく、ごめんね?」
「う……」
「機嫌直して、ね?」

さとりの眼を見つめて、あやまる。

「……」
「ごめんね、もう、しないから」
「……わかりました」
「よかった……ありがとう」

少々納得言ってない顔をしているけれど、お許しが出たのでよしとしよう。



「おーっすおはよう!」
「おはよう、御夫婦~」

廊下の向こうから母さんこと、星熊勇儀と、友人の伊吹萃香さんがやってきた。

「あ、おはようございます」
「おはようございます」
「昨日は悪かったなー、もう楽しくて楽しくて飲み過ぎたわ、はっはっは」
「勇儀ったらはしゃぎまくったしねー」
「あー? 萃香だってそうじゃないか」
「違いないねー、あはは」

朝からテンションが高いなぁ。

「あ、そう言えばこいしさん達は……?」
「ん? あいつらならもう居間にいたぞ」
「そうそう、朝食が出来たからね。私らは海斗とさとりを呼びに来たのさ」
「あぁ、そうですか」
「ごめんなさい、わざわざ」
「よっしゃ! じゃあ早速朝飯としますか!」

意気揚揚と廊下を駆けだす鬼2人に、思わず苦笑してしまう。

「まったく、子供じゃないんだから」
「でも、楽しそうですね」
「そりゃあ、親友と久しぶりに会ったからね。はしゃぎたくなるのも頷けるよ」
「えぇ……さ、朝ごはんを頂きましょうか」
「そうだね、行こうか」




居間に着くと、既に全員集まって大きな卓袱台に行儀よく座っていた。

「あー、お姉ちゃんに海斗お兄ちゃんおはよー!」
「おはよう、こいし」
「おはよーお兄さん!」
「海斗さんおはよー」
「あぁ、やっと来たのね」
「遅くなってすみません」
「ううん、別に。萃香ー、ご飯よそっといて」
「ほいきた!」

萃香さんがせっせとご飯を盛りつける。
霊夢さんは台所で味噌汁をよそい、皆に渡していく。
卓袱台を見れば、ご飯とみそ汁、鯖の味噌煮、野菜の漬物……日本の朝に相応しい朝餉だ。

「さ、そんじゃ頂きますか」
「おー! それじゃー、せーの」
「「「「「頂きまーす」」」」」

「ん! この味噌煮おいしいですねー」
「にゅ! ほんとだ! 霊夢さんが作ったの?」
「まぁね」
「へぇ、どれどれ……」

僕も鯖の味噌煮を一つまみ、口に運ぶ。
……!?

「おいしいです……霊夢さん料理上手なんですね」
「ありがと」
「本当、程よい味付けですね」
「ねー霊夢の料理ほんとおいしいんだよねー」

萃香さんが、まるで自分が褒められたかのように嬉しがる。

「はは、随分と嬉しそうじゃないか萃香」
「まぁねー霊夢にはいろいろお世話になってるし、もう家族みたいなもんさ」
「勝手に住み着いてるだけでしょ」
「えー、霊夢のいけずー」
「はいはい、いいからさっさと食べる」

霊夢さんは黙々とご飯を口に運ぶ。
萃香さんも仕方なく漬物をもしゃもしゃと頬張る。
……冷たい関係にも見えるけれど、これが信頼された関係なんでしょうか。







朝食を食べ終えた皆は、それぞれ居間でくつろぎ始めたようだ。
僕は霊夢さんに断られつつも、食器洗いの手伝いをした。

「悪いわね、客人なのに洗ってもらって」
「いえいえ、泊めてもらいましたし、これくらいしないと罰が当たります」
「ん、ありがと」

かちゃかちゃと音を立て、水と洗剤を使って、皿を洗っていく。
旅館でもよくやる作業なので、それほど辛い作業でもない。

「……早いわね」
「えぇまぁ。旅館でいつもこれの10倍くらいの皿を洗ってますし」
「あんた、副支配人? だっけ。それなのにそんなことするの?」
「だからこそです。従業員と同じ立ち位置に立って仕事をする。そうすれば従業員の悩みとかそういうのも解る気がしてやってるんです」
「……言っちゃ悪いけど、親とは似ても似つかないわね」
「はは、母さんもあれで旅館の仕事は出来るんですよ。僕なんてまだまだです」
「ふぅん」

少々驚いた様に、霊夢さんが洗った食器を拭いていく。

「……あの」
「ん?」
「えっと、布団の件は、その、すみませんでした」

しどろもどろしつつも、今朝の出来事の謝罪をする。
何せ、他人の家で勝手に行為をしていたのだから……気づかれましたし。

「あぁ、別にいいわよ」
「え?」
「迷惑したのは布団汚したくらいだし。他に泊まった人妖に貸したら、もっと酷いことになってるから、気にしなくていいわよ」
「はぁ」
「後あれね、あんた達夫婦が仲良さそうで、いいんじゃないの?」
「……はぁ」

やっぱりどこかズレているというか、不思議な人だ。

「ま、次は汚さないようにしてね」
「いや、もうしませんから、えぇ」
「ふぅん」

最後の食器を洗い終え、霊夢さんに差し出す。

「はい、これで最後です」
「ん、ありがと。ここはもういいから、向こうで寛いでて」
「ではお言葉に甘えて」

霊夢さんに後を任せて、取りあえず居間に戻ることにする。
皆それぞれ寛いでおり、こいしさんとお空さん、お燐さんはトランプをしたり、さとりはそれを見守ったりしてる。
あれ? 母さんと萃香さんは? ……あぁ、縁側か。
縁側に顔を出すと、案の定、2人は食後のお酒を飲んでいました。

「母さん、萃香さん。あんまり飲み過ぎはだめですよ」
「ん? あぁ、海斗か」
「いーじゃんいーじゃん、海斗も飲もうよ」
「はは、遠慮しておきます」

母さんの隣に腰掛け、空を見上げる。
地底の天井とは違い、どこまでも遠くに広がる青い風景を見つめる。
昨日の今日なので、まだ違和感が抜けないが……なるほど、素晴らしい風景だ。

「そう言えば、」

隣で飲んでいた母さんが、唐突に話しかける。

「あの、慧音だっけか? 寺子屋に行くのはいつにしようかねぇ」
「あーそう言えばそんな事もあったね」

あぁ、僕もすっかり忘れていた。
昨日の宴会の前に、人里で寺子屋の先生をしている、上白沢慧音さんという方と話をしましたっけ。
その人がいろいろ話をしたいから、是非来てくれ……確かそんな会話をした気がします。

「どうしますか?」
「んー、も少ししたら行ってみますかね」
「おーさんせー! 寺子屋の案内なら、私に任せてよ!」
「おう! 頼んだぜ萃香!」
「はっはっは! 任せな!」

そんな会話をしつつ、再びお酒を煽る2人。

「じゃあ、皆にそう伝えておきますね」

立ち上がりそう伝えると、僕は居間へと向かう。

「あら、お帰り」

居間には、片付けを終えた霊夢さんが、皆と一緒にトランプを行っている最中だった。
他の面々の難しい顔と違い、霊夢さんは余裕の表情で、次々と札を出している。

「はい、上がり」
「げ!? 霊夢さんつよ!?」
「にゅー……一回も勝てないよ」
「まさかお燐も勝てないなんて……」

余程強いのか、霊夢さんが余裕綽々といった感じでお茶を啜る。

「あんた達が弱いのよ」
「にゃうー……次、次!」

僕はさとりの横に座って、その光景を眺める。
楽しそうにトランプをする4人は、なんだか微笑ましく感じる。

「そう言えばもう少ししたら、慧音さんの寺子屋に行くんだって」
「あ、昨日のですね」
「んー? 何? 慧音のとこにいくの?」

持っていたトランプの札から顔を上げて、霊夢さんが訪ねてくる。

「えぇ、何でも地底の話を聞きたいそうです。ご友人の方とも色々話をしたいそうだと」
「友人……あぁ、阿求か」

何事か呟くと、霊夢さんはまたトランプの札に目をやった。

「はい、ストップ」
「にゃにゃ!? また負けた……」
「霊夢さん強すぎだよ~、なんでそんなに強いの?」
「勘」

……霊夢さんって、不思議だな。








「そんじゃ、気をつけてね」
「はい、お世話になりました」

朝の時間も過ぎ、僕たちはお世話になった神社を後にしようと境内に出ていた。

「んじゃ、ちょっくら寺子屋まで送ってくるねー」
「ん、夜までには帰ってくるのよ」
「はいはーい」

萃香さんが陽気にそう、返事をする。

「霊夢、世話になったな!」
「霊夢さん、ありがとうございました」
「ううん、またなんかあったら呼ぶわね」
「はい」
「今度は何かお土産を持っていきますね」
「ん、楽しみにしてるわ」
「うっし、じゃあ行きますか」
「「「「はーい!」」」」

かしまし三姉妹+萃香さんが意気揚揚と神社を後にする。
さとりと母さんも後についていく。

「それじゃ、これで失礼します」
「あぁ、ちょっと待った」
「? なんですか?」

霊夢さんに呼び止められて、足を止める。
彼女は僕に近づくと、耳元でこうつぶやいた。

「これから大変なことがあるけど、真正面から受け止めるのよ」
「は、はぁ……」
「そんだけ、じゃね」

霊夢さんはそう言うなり、スタスタと自分の家へと帰ってしまった。
……大変なこと、か。多分霊夢さんなりに言うなら、「勘」なのだろうか。

「おーい海斗ー! 早くこーい!」
「あ、はい!」

母さんに呼ばれて、僕も慌てて境内を後にする。
最後に、もう一度だけ、神社を見渡した。
―――人一人居ない、昨日の宴会とは違う風景に、言い知れぬ不安を抱く。
思わず、浴衣の袖にあるお守りをきつく握りしめた。









「さーついたよ! ここが寺子屋だよー!」

萃香さんの案内で、お昼前に僕たちは人里にたどり着いた。
そこから少し外れた場所、そこに寺子屋はあった。
見れば、今は丁度改築が行われている様子で、彼方此方に材木や建築道具が置かれている。
と言っても、大工さんは一人もおらず、どうやらお昼に出かけたらしいようだ。

「っと、誰かいるのかねぇ」
「うーん、多分いると思うけど……おーい慧音ー! いるー?」

トテトテと扉へとむかい、萃香さんがおもむろに扉を開けて、ズカズカと入っていってしまった。
萃香さんが寺子屋の中へと入っていく間、僕らは取りあえず外で様子を伺うことにした。

「はー、にしても改築中か? 随分古いし、まぁ当然か」
「そうですね……結構年季も入っているようですしね」

外見からしても、結構な年数が経っている事伺える。
柱も随分と色あせ、白い壁も心なしかくすんでいるようだ。

「わー、色んな道具があるねー」

興味を持ったのか、こいしさんがしげしげと大工道具を眺める。
あまり日常では見ないものばかりなので、興味を持つのも無理はないだろう。
のみ、かんな、けひき、きり等々……。

「ほんとー! お燐お燐! あれなにかな?」
「あれは……やすり、かな?」

かしまし三姉妹の二人も気になった様子で、色々と道具を見て回っているようだ。

「あ、こら! あまり触ってはいけませんよ」
「ははは、聞いてねぇな」
「まったく……」

困った様子で、さとりと母さんが苦笑いしている。
でも確かに危ない。いくら分かっているとはいえ、流石に大工さんの使っているものだし、何より勝手に触っていいものでもないし。

「こいしさん、お空さんにお燐さんも、触っちゃ……」





「何してんだ!!」

背後で、いきなり怒鳴り声が聞こえた。こいしさんが慌てて、道具に伸ばした手を引っ込める。
振り返れば、大工服に身を包んだ20代位の女性が、寺子屋の入り口に立っていた。昨日里で出会った大工のお姉さんだ。
怒りをあらわにした表情で、そのままズカズカと僕たちの元に向かってくる。
かしまし三姉妹もいきなり怒鳴られて、慌てて僕らの背後に回り込む。

「勝手に道具をさわんじゃねぇ! 危ないじゃねぇか!」
「ご、ごめんなさい」
「……ったく」

取りあえず僕らが謝ると、大工さんは道具をテキパキとかたしていった。
道具箱に全部仕舞いこむと、それをどさりと地面に無造作に置いた。
……道具箱ゆうに五つ程あったのに、早い。若いからでしょうけれども、流石は職人でしょうか。

「申し訳ありません」
「すまねぇ、何も知らないとはいえ、許してやってくれ」

さとりが代表して頭を下げる。僕と母さんも彼女の隣で同じように頭を下げた。

「ほら、貴方達も謝りなさい」
「「「ごめんなさい」」」
「……いや、あたしも急に怒鳴り声上げて、悪かったな……だけど、素人に触らせると危ねぇものもあるんだ。気をつけろよ」
「はい、すみませんでした」

三人も、深々と頭を下げて謝る。
頭を下げる僕らを見て、バツが悪いように、渋々大工さんも謝ってくれた。

「あ、いたいた!」

寺子屋から萃香さんがひょっこりと顔をだす。続けて慧音さんも姿を現す。

「皆さんこんにちは、今日は来てくれて、ありがとうございます」
「いやいや、いいんだよ」
「ありゃ? お姉さんじゃないか、おはよー」
「鬼か。生憎ともう昼近いぞ?」
「あ、それもそっか」

ペチンと頭を叩いて、ケラケラと笑う萃香さんに、思わず苦笑してしまう。

「はぁ……まぁいい。あたしゃ昼にするよ。道具は弄らないようにしてくれ。後材木も、倒れたら危ないからな」
「あいあーい」
「神楽殿、いつも世話になるな」

神楽と呼ばれた女性に、慧音さんはきっちりとしたお辞儀をした。

「いやいや、あたしらにかかればこのくらい、どうってことないさ」
「助かります。これからも宜しくお願いいたします」
「あぁ、それじゃあな」

そういうと神楽さんは、里の方へと歩いていった。
彼女の背中を見送ると、ほぅ、とこいしさんが溜息を一つ吐く。

「びっくりしたー」
「こいし、貴方が悪いんですよ? いくらなんでも勝手に触ってはいけません」
「はーい」
「貴方達も」
「「はい」」
「……なんかあったか知らないけどさ、取り敢えず中に入んなよ!」
「そうすっかね、行くぞ」

僕らは母さんの号令に合わせて、ぞろぞろと寺子屋の中へと入っていった。










慧音さんに案内され、寺子屋の中を突き進んでいく。
寺子屋の中は広く、授業スペースの他に、離れには慧音さんの居住スペースもある程だ。
その中の一つ、応接間のような部屋に僕らは通された。

「ようこそ、取り敢えず中に入ってくれ」

襖を開いて中に通されると、そこには先客が、囲炉裏の傍で座っていた。

「あら、始めまして」
「あ、はい」

僕らに気づいた彼女は、両手で持っていた緑茶を置き、此方に向き直る。

「貴方がたが、件の地底の妖怪でしょうか?」
「あぁ、そうだが。お前は?」
「これはこれは、申し遅れました。私は稗田阿求と申します。この里で、幻想郷縁起の編纂を行っているものです」

彼女は自己紹介を済ませると、深々と頭を下げた。

「げんそーきょー、えんぎ?」
「えぇ。平たく言えば、幻想郷の歴史や、妖怪の実態を書いている作品ですね」
「ほー……そいつはすげぇな」
「いえいえ、それ程でもありません」

口元を手で隠し、彼女がクスリと笑う。
何というか、「大和撫子」という言葉がこれ程似合う人も珍しいです。

「立ち話もなんですし、取り敢えず座って寛いでくれ」
「そうですね」

慧音さんに勧められ、囲炉裏を囲むように、僕らは座り込む。
囲炉裏にある茶釜からお湯を出し、慧音さんが丁寧に急須に入れ、お茶を注いでいく。
全員に淹れたてのお茶が行き渡ると、慧音さんがさて、と話始める。

「急な話にも関わらず、今日は来てくれてありがとう」
「いやいや、暇してたから構わないさ」
(……旅館の仕事、あるんですけどね)
「ありがたい。実は今日呼んだのは他でもない、私の知人である阿求殿が、是非地底の話を聞きたいと言っていてな。お空殿やお燐殿からはある程度聞いたのだが、他の方々にも聞きたいのでな」
「はい。でもまさか、こんなに急にお会いできるとは思いませんでしたが」
「それで出来れば、貴方がたの事もお聞きしたくてな。かく言う私も地底の妖怪に興味があってな」
「ほう、成程な」

それで話しをか……。
確かに、地底の行き来が出来るようになったのは、つい最近の事だ。
地底と地上が隔たれて、もうどれくらい経ったかも分らない程、相当昔のことだし……情報が無いのも無理はない。

「その代わり、と言ってはなんですが、地上の事も質問があればお話しいたします。それと……」

阿求さんがほほ笑みながら、脇に置いていた本を母さんに手渡す。

「これは?」
「幻想郷縁起、先ほどの地上の歴史などを綴ってある本です」
「おいおい、地底の妖怪にこんなもん渡して大丈夫か?」
「その点は大丈夫だ。何せ妖怪も滅多にここの人間を襲う事もなくなったし、かといって里の人間が退治することもない。お前たちも悪用しないであろうし」
「随分買いかぶられたもんだな……ま、ありがたく頂いておくよ」

ぺらぺらと本を流し読みして、母さんは本を閉じ、こいしさんに本を手渡す。
後にいるは三人は興味津々の様子で、その本の内容を食い入るように眺める。

「ま、そんな事ならいくらでも協力するさ」
「ありがとうございます」

阿求さんが深々と頭を下げる。礼儀正しい人だなぁ。

「では早速ですけれど、質問させていただきます」
「おう! どんとこい! ……と、その前に自己紹介からか? あたしは星熊勇儀、萃香の親友さね」
「はい、お噂には聞いております。噂に違わぬかたで助かりました。そちらのかたは?」
「え?」

いきなり話を振られ、さとりが困惑する。
阿求さんはほほ笑みながら、自己紹介するのを待っている。

「えぇと、古明地さとりと申します」
「あぁ、貴方がそうでしたか。お空さんやお燐さんからお話は伺っております」
「そうですか、うちの者がお世話になりまして」
「いえいえ、大変可愛らしいご主人でよかったです」
「っ!」

悪気もなくそう言われ、さとりの顔が真っ赤に染まる。
それを見て、こいしさんは楽しそうにケラケラと笑う。

「こ、こいし! ……もう」
「あはは、ごめーん。あ、私は妹のこいしっていいまーす!」
「はい、こいしさんですね。よろしくお願いしますね」
「はーい!」

こいしさんが元気よく返事をするのを見て、さとりがはぁ、と溜息をつく。
そんなさとりに僕も、つい笑ってしまう。
最後に、真正面に座っている僕に向き直る。

「それで貴方様は?」
「あ、星熊海斗と申します」
「あら? あなたが勇儀さんの息子さんですか?」
「えぇ、そうです」
「お話には聞いていましたけれど、鬼とはちょっと雰囲気が違いますね」
「ははは、よく言われます」
「それと、さとりさんのご主人でしたっけ? 随分中の良い夫婦だそうですね」

彼女柔らかく微笑んで、そう零した。

「え、はぁ。ありがとうございます」
「いえ、これからもお幸せに」
「は、はい」

……うぅむ、やっぱりこの雰囲気になれないなぁ。
幸せに、と言われて嬉しいのではあるけれど、気恥かしい。さとりも顔を伏せてしまうし。

「さ、これでやっと話が出来るな」

空気を読んだのか、読んでないのか、母さんが割り込んでくる。個人的には助かりました。
それを皮切りに、阿求さんがゆっくりと母さんに質問をしていく。

地底はどんなところなのか? 鬼は、妖怪はどれくらいいるのか? 通貨は? やはり宴会ばかりおこなっているのか?
さとりのいる地霊殿の話も振られた。
地霊殿は今はどうなっているのか? どんなペットがいるのか? 生活はどうなっているのか?
母さんとさとりは、幾度の質問に嫌な顔一つせず、豪快に、丁寧に答えていく。
後ろのかしまし娘もたまにちゃちゃなり説明を入れたり、旅館の話になると、僕もある程度母さんのフォローを入れたりする。
母さんも逆に、地上の宴会の話や、お酒の話、今の人間がどうしているのかなど、気になったことを聞いていった。

と、質問を投げかけている時だった。

「そう言えば、つかぬことをお伺いしますが」
「はい?」
「さとりさんは『人の心を読む』事が出来る妖怪ですよね?」
「そうですけど……」
「それはどんな風に見えるんですか? 例えば言葉をして脳に浮かぶとか、視覚として映るのか、気になるところです」
「あ、えぇ……」
「幻想郷縁起にも載せたいので、出来れば詳しくお話できませんか?」
「そう、ですね……先ほど阿求さんが言いましたように、言葉が頭に浮かぶ、というのが近いですね」
「なるほど、どこまで見えるのですか?」
「え、あの……」

目に見えて、さとりが動揺している。……さとりの能力は、あまりいい思い出が無いからだろうか。

「それはそうと阿求さん、どうして幻想郷縁起を書こうと思ったんですか?」
「え?」
「いえ、ちょっとした興味本位なんですが、妖怪の事や幻想郷の歴史を書こうだなんて、普通出来ませんよね? どうして書こうだなんて思ったんですか?」
「……そうですね、それにはまず、私の過去をお話するんですけれど、長いので要訳しながらでよろしいですか?」
「構いませんよ」
「では……」

そういって阿求さんは、自分の過去の話を始める。
彼女が稗田阿礼という人物であったり、転生したりだったり、僕には到底理解できない話ばかりである。それを阿求さんは静かに、しかし確かに伝わるように丁寧に説明をしていく。
ふと、右手を触られる。横にいるさとりがはにかんだ笑みを見せ、声を出さず「ありがとう」と言った。
僕も同じように笑って手を握り返す。だって、困った妻をほってはおけないからね。










「あら、もうこんな時間ですね」

ふと窓を見れば日も傾き、多分二時を過ぎた頃に思える。随分話し込んでしまったようだ。

「そろそろ家に戻って、編纂作業に戻らないといけません。皆様、今日はどうもありがとうございました」
「いやいや、なかなかたのしかったぜ?」
「今日はお世話になりました、それではこれで。慧音さん、どうもありがとうございました」
「あぁ、また何かあったらよろしく頼むよ。玄関まで送ろう」
「いえ、お構いなく。それでは」

そう彼女はお礼を言うと、綺麗なお辞儀をして廊下へと出ていってしまった。

「出来た子だねぇ」
「阿求殿もなかなかに長生きしている方ですからね……少し意味合いが違いますが」
「ははは。さて、私たちも行くとしますか」
「あぁ、待ってくれ! よろしければ、遅い昼食でもいかがかな? 折角来たんだ、もう少しゆっくりして行ってくれ」
「お! そいつぁ助かるな。どうだ皆? 食っていくか?」
「母さんが言うなら、折角なので」
「私も同じく」
「「「さんせー!」」」
「なら少し待っててくれ」

そう言うと慧音さんは廊下の方へと消えていってしまった。

「はー、色々話したなぁ」
「そうですね、と言っても母さんとさとりがほとんどでしたけど」
「それに、地上のお話も聞けて良かったですね」
「あぁ、うまそうな酒があったのが大きいな」

……そこがメインですか。

「帰りに買って帰るのも悪くないな」
「じゃあその酒屋案内するよ」
「お、サンキュー萃香!」

……母さんの中で、お酒の購入がもうすでに決定事項になってしまったようだ。
まぁ、大体予想はしていましたが。

「いやーにしても随分変わったんだな、地上も」
「何せもう何年も交流がなかったからねぇ、地上も地底も」
「そうですね、なんだか不思議な気持ちになりますね」

母さんと萃香さん、さとりが昔を思い返すように語り合う。
……昔、か。

「おい、慧音さん。悪いが作業は……って、お前たちか」

カラリと襖が開き、神楽さんが顔をだす。

「おぉーお姉さんじゃないかー。慧音なら多分台所だよー」
「あぁ、そうかい」

彼女はそれを聞くと、がしがしと頭を掻きむしる。

「どしたの?」
「いや、風が強いから作業を中止するって伝えに来てな」
「ありゃりゃ、確かに少し荒れてきたねぇ」

外を見れば確かに、風が音を立てるほど強くなっている。立て掛けてある材木も、カタカタと音を立てる始末だ。
雲行きもだいぶ怪しくなっている。

「げ、まずいなぁ」
「雨が降らないといいですけれど……」

……帰りが若干、心配になってきた。
まぁ別に傘を買ったりして、そのまま帰ればいいのだが。

「そうだ! もう一泊して……」
「駄目です」

母さんの提案を、きっぱりと却下する。

「なんでだよ! 別にもう一晩くらい……」
「旅館が心配です。それにこれ以上仕事を貯めるのも嫌です。母さんだって、残った仕事を整理するのが嫌でしょう?」
「う……だ、だけどもうちょい位……」
「駄目です」
「……い、言うようになったな、海斗」
「母さんの息子ですからね」
「ぐぐぐ……」

ぐぅの音も出ない母さんを尻目に、すっかりぬるくなったお茶をすする。
母さんの我がままも、流石に限界がありますし、何より連絡もなくまた泊まるなんて、旅館の皆に心配をかけるのも嫌です。

「とにかく、今日はもう帰りますよ」
「……ちぃ、昔はもっと可愛かったのになぁ」

ぐすんとわざとらしく泣きまねをする母さんを無視して、残ったお茶を飲み干す。

「はっはっはっ、お前ら面白いな」

縁側に腰かけていた神楽さんが、さも可笑しく笑う。……ちょっと意外だ。

「息子に尻を敷かれる母親なんて、みっともないねぇ」
「な……五月蠅いねぇ! 大人になってもいないような人間に言われたかぁないね!」
「あ? あたしはこれでも40過ぎだよ」
「……え!?」

嘘……でしょう? 随分若いイメージがあったような気がしましたが。いや、妖怪目線でなくとも。
実際周りの皆は、萃香さん以外目を丸くして神楽さんを見ていますし。

「もっと若い印象だったんですが……」
「あぁ、よく言われるよ。ま、大工仕事してっからエネルギーに溢れてるんじゃないかい?」

母さんを見ながら、悠々と笑う神楽さん。

「あはは、最初私も驚いたよーこりゃ勇儀の負けだねぇ」
「くっ……ま、まぁそれは置いておいてだ。そう言うお前さんはどうなんだい? 息子いるのか?」
「……」

不意に、笑みを浮かべていた神楽さんが、顔を曇らせる。……どうしたんだろう?

「……あ、あーあーそうだ勇儀! 折角だし、これ飲まないかい?」

萃香さんが慌てて、何かお酒を取り出す。

「……って、それはまさか……伝説の、『閻魔殺し』! お前……そんなものを……!」
「あはは、ほんとはお土産に渡そうかと思ってたんだけど、折角だし飲みたいなーなんて」
「おう、飲むぞ飲むぞ!」

母さんは俄然やる気を出したのか、自前の杯をずずいと萃香さんに差し出す。
萃香さんはゆっくりとその赤い杯を潤していく。並々と注がれたお酒を、母さんはぐいっと飲み干す。

「……っぷはぁ! たまんねぇな!」
「でしょでしょ?」
「おう、萃香も飲め飲め!」

自分の杯を差し出し萃香さんに手渡すと、同じく並々とお酒を注いでいく。
すっかり二人で宴会気分になってしまったようだ。
そんな二人をわき目に、僕は神楽さんの元へと足を伸ばす。
そうして、すっかり大人しくなった神楽さんの横へと座りこむ。

「すいません、母がご迷惑をおかけして」
「ん? あぁ、いいんだ。気にするな」
「そう言う風には見えませんが」
「……そうだな、すまない」
「いえ、貴方が謝ることではないですよ」
「……妖怪なのに、ほんと丁寧なやつだな」
「ありがとうございます」

幾分か笑顔を取り戻した神楽さんが、くしゃくしゃと髪をかく。

「……息子が、居たんだ」
「はい」
「大きくなってりゃ、お前さんみたいな成人になってたろうかね。ま、あんたは妖怪だからいくら生きてるかわかんないけど」
「……」
「病気でな、なくしちまったんだよ」
「それは……お気の毒に」
「あたしも人の……いや、妖怪の事は言えないな。母親失格だ」

神楽さんが空を見上げ、何かを見つめる。

「……偽ってるのは、もっと嫌だが」
「え?」
「あぁ、気にすんな。さーて、あたしも帰るかな」

そう言うと神楽さんが立ち上がり、腕を伸ばして伸びをする。

「悪いね、変な話させちまって」
「いえ、僕の方こそすみません」

……ここで何といえばいいだろうか。
大丈夫ですよとか、息子さんはいいお母さんに恵まれましたねとか……。
いや、ここは何も言わない方がいいのだろうか。

「おーい、待たせたな……お、神楽殿もいたのか」
「あぁ慧音さんか。作業は一旦中止にするよ、この天気じゃ危なっかしいからな」
「そうか、確かに雲行きが怪しいな……」
「ま、順調に来てるし、これくらい訳ないさ」
「それは頼もしいな。そうだ、折角だからお茶でも飲んでいかないか? 昼食はすんでいるだろうから、羊羹でもどうだ?」
「……んじゃ、そうしますか」

上げた腰をまた降ろして、神楽さんは柔らかく微笑む。

「じゃあお茶入れますね」
「あぁ、海斗殿は休んでてくれ。客人に入れさせるのも悪い」
「いえいえ、これくらいさせてください」

僕は対象的に腰を上げ、居間にある急須を取りにいく。
居間で本の内容を黙々と読むこいしさん達や、お酒を飲み、半宴会状態になっている母さん達も、慧音さんが用意したおにぎりなどを頬張っている。

「母さん、人の家ですからあまり騒がないようにしてくださいね」
「おーわかってるー」
「ったく」
「ははは、私の事は気にしなくていいぞ。ほらお前さんも」
「すみません慧音さん」

やんわりとほほ笑む慧音さんに感謝しつつ、差し出されたおにぎりを受け取る。

「海斗、お茶をどうぞ。神楽さんのも汲んでおきました」
「あ、ありがとうさとり」
「いえ」
「うん、流石は夫婦と言ったところだな。息もぴったりだな」
「け、慧音さん!?」
「あ……」

慧音さんの言葉に思わず、2人で赤面してしまう。
そうしてからかわれたり、談笑を楽しんだりして、またも時間は過ぎていった。



「っと、もうこんな時間か……そろそろ出ないとなぁ」

神楽さんの言葉に気付き外を見れば、日がとっぷりと暮れ茜色に染まりつつある。随分時間がたってしまった。
風は先ほどよりは弱くなり、それでも今帰らないとまたいつ天候が悪化するかも解りません。

「そろそろ帰らないといけませんね」
「しゃーねーな、慧音さんにも悪いし、ここは帰るとしますか」
「おや? なんだったら泊まっていってもかまわないんだぞ?」
「あー……いや、やっぱ帰るわ。旅館も心配だしな」

……なんだかんだ言って、旅館の事を気にかけていたようです。流石母さんだ。

「そうか……また何かあったら遊びに来てくれ。いつでも歓迎する」
「ありがとさん」

母さんが慧音さんと握手を結ぶ。

「んじゃ、お先失礼するわ。妖怪だから心配ないが、気をつけて帰るんだな」

いつの間にか縁側から離れていた神楽さんが、ひらひらと手を振り夕闇の向こうへと向かっていた。

「おー! お前さんも気をつけろよ~」
「……あぁ」

母さんが神楽さんに向ってぶんぶんと腕を振る。……随分酔っ払ったなぁ。

「ありがとうございました、神楽さん」
「あぁ、じゃあ……」

途端、突然の突風。
体ごと持っていかれるのではないかと思うくらいの強風。
瞬間、ガラリと何かの音が聞こえる。

「!? 神楽殿!」

見れば建築途中の、立て掛けてあった材木が風で揺らぎ、神楽さんへと一斉に倒れ出す。
神楽さんは気づいても、動けずにその場に固まってしまっている。

「萃香! 海斗!」

まさに、阿吽の呼吸と言うべきか。母さんと萃香さんが、勢いよく走る。僕もそれに続いて、縁側からかけ出す。
材木が倒れるよりも先に、小回りの利く萃香さんが神楽さんを抱きかかえて、その場を離れる。
続いて母さんが、一斉に倒れてくる材木を受け止め、防ぐ。
それでも受けきれない材木を、僕が手を伸ばし、ひっつかんで止める。

……もう、大丈夫、か。
萃香さんと神楽さんは怪我ひとつない様子だ。

「ふー間一髪」
「危なかったな人間。大丈夫か?」
「あ……すまねぇ」
「……ひとまず大丈夫そうですね」
「ったく、風のいたずらにも程があるぞ」

材木を地面に丁寧に積み重ね、ほっと胸をなで下ろす。
向こうにいるさとりと慧音さんたちもほっと一息ついている。

「ま、無事で何よりだな」
「……ほんとすまねぇ、こんなところに材木立て掛けといたのが……」
「まーまーよかったよかった」

母さんが神楽さんに近づい、バンバンと肩を叩く。まぁ、大事に至らなかっただけ良かった。

「ん、何これ? お姉さんの?」
「え?」

萃香さんの足元を見れば、古いお守りが落ちているのが見えた。
あれは僕の……。勢いあまって落としたのかな?

「萃香さん、それ僕のです」
「あーりょーかい」
「あ、違う! それは私の……」
「え?」

慌てて袖を確認すると……確かに僕のお守りはちゃんと仕舞われていた。

「お姉さんの?」
「あ、萃香さんごめんなさい。僕のはありました」

自分の袖から、お守りを出す。同じ色だったから見間違えてしまった。

「あーほんとだー」
「それ……」
「博霊神社のお守りです。神楽さんのも?」
「……それ、どこで?」
「え、ですから博霊神社のですけど」

神楽さんが持ってるお守りも、博霊神社と刺繍されているものだ。

「そ、そうか……」
「それさー海斗が小さい頃から持ってたよねー」
「そうですね、捨てられた時から握っていましたし」
「捨てられた……?」
「あー……まぁ、色々ありまして」

そう言いつつお守りを袖にしまう。
……ところで、神楽さんに腕を掴まれる。

「か、神楽さん?」
「それ! よく見せてくれ!」
「え、はぁ」

そっとお守りを差し出すと、神楽さんは恐る恐るそれを受け取り、自分のお守りと見比べる。

「あの……」
「あんた、妖怪だよな?」
「そう、ですけど」
「元人間だけどねー」
「え……!」
「萃香、別にいいじゃないか。今は立派な……」
「人間だったのか!?」

行き成り大声で言われ、思わずたじろぐ。

「は、はい」
「それで……捨て子なんだな!?」
「……はい」

何だろう?
正直あまり気持ちの良い言われようではないのだけれど、神楽さんの様子のおかしさのせいだろうか?

「お、お前! このお守りの中身は見たことあるか?!」
「無いですけど……」
「あ、開けてもいいか」
「え、それは流石に……」
「頼む!」

……もしかして、何か知ってるのだろうか。

「……いいですよ」
「すまねぇ……」

そう言うと神楽さんは震える手で丁寧に紐をほどいた。

「……あたしに息子がいるって言ったよな?」
「はい、聞きました」
「そいつの名前はな、『出雲』ってんだ」

何を急に言い出すんだろう?
……いや、もしかして。

「病気で死んだんじゃないんだ」
「え?」
「……捨てたんだよ、止む終えない事情でな」
「そんな……」
「だからせめて、捨てる時にはお守りを渡して捨てるって決めたんだ……その子の名前を、お守りの中に入れて」

……それは。

「おい、さっきから何なんだ! だからそれが……」
「捨てたのは、どこぞの洞窟だった」

吐き捨てるように、神楽さんがそう呟く。

「妖怪がいる洞窟だった。あたしはその子を置いて逃げた……ひどい話だけどな」

紐が解かれ、中身を取り出す。

「それでも大切な我が子だから……せめてこれだけでもって……」

中から出てきたのは、何か文字が彫られている木の板。
母さんと、萃香さんが息をのむ。







そこには確かに、「出雲」と彫られていた。


















僕とさとりと母さんと萃香さん、それに慧音さんと神楽さんの六人は囲炉裏を囲むように座る。
こいしさん達には悪いけれど、外で待ってもらうことにした。

「さて……事情は大体飲み込めた」

慧音さんが僕らを見回し、目を閉じる。

「神楽殿の家事情を知らなかったとは言え、まさかこのような事が起こるとは」
「……」

神楽さん、いや、生んでくれた母親をちらりと見る。
先ほどの元気などどこへやら、酷く狼狽している様子だ。

「……お前が海斗の親なのは、わかった。わかったよ」

母さんが静かにそう告げる。隣で顔を伏せる母さんの表情は、読みとれない。
けれど、わなわなと震わせる右のこぶしだけが、母さんの激情を表している。

「なんで捨てたんだ……」
「……」
「答えねぇのか」
「母さん、やめてください」

震える右手てに、自分の手をそっと添える。
さとりと萃香さんはおろおろと、母さんと神楽さんの顔色を窺うばかりだ。

「……うちは代々、人里唯一の大工だ」

神楽さんがぽそりと呟き始める。

「厳しい母親に育てられ、立派な大工頭になれと育てられた。けれど、そんな生活も息苦しくて、男と遊んだこともあった」

神楽さんが、手に持っているお守りをぎゅっと握り締める。

「その時子供が出来た……母親は激怒してすぐおろせっていってな……あたしはやっきになって反対した。当時好いていた男と一緒に育てるって」

だけど、

「子供が生まれた途端、その男は逃げたんだ……母親は辺り一帯を仕切ってる地主みたいなもんだし、権力の怖さに耐えきれなかったんだろうね……あたしと子供を置いて、逃げたんだ」
「……」
「当然、母親から捨てろと言われた。どこの馬の骨かも解らない男の子供は、一族の恥だって……」

握っているこぶしの上に、涙が一つ落ちる。

「この子の親になってくれるやつも、探した……けどやっぱり母親が怖いって嫌がるんだ。子供育てるのにだ」
「……」
「結局あたしは泣く泣く、深夜の森を彷徨って洞窟に捨てた……その時妖怪に会って、せめて安らかに……そう、思って……」
「だから、妖怪が嫌いだったの?」

萃香さんが恐る恐る尋ねる。

「……いや、本当は妖怪を見るたびに、捨てたあの子を思い浮かべるから、嫌なんだ……でも、」

神楽さんが僕を見つめる。泣き腫らした目は、赤く充血している。

「まさか……生きているなんて」
「……あの後、僕は通りかかった妖怪に拾われて、母さんに育てられました。そうして地底の妖気を浴びて、この様に妖怪になりました」
「そう、かい……そうかい」

神楽さんがまた俯き、しゃっくりをあげる。

「……話はわかった。もう過ぎてしまったことは、失礼な言い方だが、仕方のないことだ。事実、彼は生きて立派に成長しているからな」
「……あぁ」

腕で涙を荒々しく拭きとり、神楽さんがもう一度僕を見据える。

「海斗、って言ったか。立派に、成長したんだな」
「……はい、勇儀母さんのおかげです」
「そうか……すまない、勇儀殿。息子が……いや、そう言うのもおこがましいが、とにかく礼を言いたい。ありがとう」
「別に、あたしは勝手に育てたんだ。あんたに礼を言われる筋合いはないよ」

母さんはそう言うと、神楽さんから顔を背ける。

「でも、海斗は元気だしさ、これで一見落着だね! ね?」

萃香さんが場を和ませようと必死に話をまとめようとする。

「……すまない、頼みがある」
「え?」

神楽さんがこちらに向き直り、姿勢を正す。

「もう一度、私の息子になってもらえないだろうか……?」
「な……ふざけるな! お前に母親の資格なんて!」
「それは、百も承知だ。だけど……私も償いをしたい……お前は恨んでるだろうけど、せめて何か……」
「海斗、もういいから帰るぞ! いちいち話を聞いていたら、産むだけ産んで、捨てて、また育てようなんて、虫が良すぎるんだよ!」
「ゆ、勇儀殿。落ち着いてくれ」
「これが落ち着いてられるか!」

ダン! とこぶしを床にたたきつける。

「母さん、落ち着いて」
「だけど……!」
「もういいんです……神楽さん、折角ですがお断りさせていただきます」
「あ……そうか、そうだな……やっぱり、恨んでるんだよな」

がくりと項垂れ、頭を掻き毟る神楽さん。

「違います。僕は神楽さんを……生みの親を一度も恨んではいません」
「そんな……」
「このお守り、母さんが買って入れておいてくれたんですよね?」

手のひらに乗せてある自分のお守りを見せる。

「僕、思ったんです。一体どうして僕を、親は捨てたのだろうか? 要らないと思って捨てたんだろうか? って」
「……」
「でも、やっぱり違ったんですね。だってお守りを入れてくれるんですし、きっと何か理由があったんだろうなって。本当にそうで良かった」
「なら……」
「でも、僕にも家族はいます」

お守りを握り締める。

「地底の旅館の皆、商店街の妖怪、お客さん……たくさん仲間ができました」

それに、

「僕には育ての親もいます……何より、大切な妻もいます」
「海斗……」

隣にいるさとりの手を握る。その手を、さとりは握り返してくれる。

「僕には、幸せにしたい家族がいます。地上にはもういれません。でも……これだけは言わせてください。産んでくれて、ありがとうございます」

精一杯の笑顔で、神楽さんに微笑みかける。

「……そうかい、そうかい。幸せそうで、良かったよ」
「はい」
「……すまねぇ、自分勝手すぎたな」
「いいえ」

落ち着きを取り戻した神楽さんが、今度は母さんに向き直る。

「……もう母親でも何でもないですが、この子を、よろしくお願いします」
「言われなくても、そうする。絶対に」

母さんが立ち上がり、神楽さんに手を差し出す。

「え……?」
「そんな事情があっても、捨てたことは許せねぇ。でも……あんたの息子を思う気持ちは、伝わった」
「……はい」

神楽さんがその手を取り、きつく握手を交わす。









「じゃあ、気をつけて帰るんだぞ」
「はい、お世話になりました」
「世話ンなったな」

慧音さんと神楽さんに見送られ、帰りの支度を済ませる。
外にいたこいしさん達が心配そうに訪ねてきたけれど、大丈夫というと、ほっとした笑みを浮かべた。

「また何かあったら寺子屋に来てくれ、歓迎するぞ」
「あぁ、ありがとな」
「お世話になりました」

さとりも二人に深々とお礼をする。

「……あんた、さとりとか言ったね」
「は、はい」
「……いや、その子を頼んだよ」
「はい!」

さとりがこちらを振り向き、笑顔を見せる。僕も同じように微笑む。

「それでは、またいつか」
「元気でな!」

ぞろぞろと、我が家へと向かう一行。
僕はその後ろについて、最後に、もう一度寺子屋を振り返る。

「……海斗?」
「ごめん、ちょっと待ってて」

僕はもう一度、手を振る神楽に駆け寄る

「どうした?」
「いえ、もしまた地上に来ることになったら……また会ってもいいですか?」
「あ……あぁ」
「はい、ありがとうございます。……母さん」
「……出雲」
「それでは、また」

泣き出しそうになる神楽さんを背に、さとり達の元へと向かう。
そうして今度こそ本当に、地底へと足を進める。



「勇儀ー! また飲もうねー!」

洞窟の入り口まで送ってくれた萃香さんと別れ、洞窟を進み橋を渡ると、もうそこは旧都。
縁日のような光を放つ世界は、やっと帰ってきたんだと思わせてくれる。

「はー、やっと旅館だ」
「長かったですね」
「ん、そうだな」

母さんの旅館の前まで突くと、母さんがさてと呟く。

「あたしはここでだな。海斗、お前は地霊殿に行くんだろ?」
「はい、ちょっと休みたいです。まぁ、明日には出勤しますけど」
「違いない、んじゃな」
「あ、母さん!」

そのまま旅館へ入っていく母さんを呼びとめる。

「ん? なんだ?」
「……あの」

何といえばいいのだろうか。

「その、母さんは、いつまでも僕の母さんですよ」
「……なにを言い出すかと思えば、あたりまえだ。ずっと母親だよ」

じゃあなといい、そのまま母さんは旅館の中へと消えていった。

「……」
「本当は」
「え?」
「本当は、海斗が神楽さんの元へ向かうんじゃないかって、ちょっと心配してたんですよ?」
「……そうなんだ」

さとりも心なしか、心配そうな表情を浮かべている。

「いこっか、我が家に」
「あ……はい」

さとりの手を取り、五人で仲良く家路につく。











地霊殿の自室のテラス。
外の冷たい空気と、旧都を一望出来るこの場所で、僕は椅子に座りぼんやりとそれを眺めている。
皆それぞれ遊び疲れたのか、そのまま玄関で別れて自室え戻ることになった。
……旅館はどこだっけ。
そう思って旅館があるであろう場所を眺める。
旧都一の大きさを誇る「星元」は、案の定すぐ見つかった。

(……母さん、今頃寝てるかな?)

椅子の軋む音を聞きながら、そう思案する。まぁ、疲れて寝ているでしょう。

(……)

色々ありすぎて、僕は寝れそうにないですけど。
生みの親、か。まさか出会えるなんて思っていなかった。
会いたかったと言えば、半々である。
怖かったし、それでも一度でいいから会ったみたかった。
でも……。

コンコン。
不意に、部屋からノックの音が聞こえる。
振り返れば、ドアの向こうにさとりが、ティーセットを持って佇んでいた。急いで扉を開ける。

「さとり、どうしたの?」
「いえ、ハーブティーでもどうかと思って」
「じゃあ、お言葉に甘えて」

テラスに設置されているテーブルにティーセットを置き、さとりが僕の分も淹れてくれた。
ありがとうとお礼を言い、一口飲む。
ハーブ独特の味が喉を抜ける。これなら良く眠れそうだ。
―――暫く、ハーブティーと地底の景観を二人で楽しむ。

「……海斗」
「ん?」
「その……本当に、よかったんですか? あれで」
「……うん」
「そうですか」

さとりが心配そうに、僕の顔を覗き込む。

「……いや、そうだね……どうなんだろう、正直解らない」
「海斗……」
「さとりや母さんを置いてはいけないのは当然だけど……ごめん、なんだか頭がぐちゃぐちゃだ。追いつかないや」

ティーカップを置いて、空を見上げる。見慣れた、地底の天井。
あのままでよかったのだろうか? 酷なことを言っただろうか?
……自分でも、考えがまとまらない。もやもやして、気持ち悪い。

と、
ふわりと、体を包まれる。
いつの間にかさとりが、僕の後ろにまわって抱きしめてくれていた。

「前にも言いましたけど、海斗は海斗です。海斗のためなら、私も一緒に悩みますし、どこまでもついていきます」
「さとり……」
「だって、その、妻ですから」

さとりの手に、自分の手を重ねる。……温かい。

「だから……ゆっくりでいいんです。ゆっくり二人で整理していきましょう」
「そうだね、ありがとう」
「いいえ」

彼女の温かさが、全身に伝わるようだ。
……なんだ、簡単じゃないか。さとりと一緒なら、何でも解決できる。
幸せになろうって、誓ったのに……馬鹿だな、僕は。

「さとり、こっちおいで」
「え? あ、はい」

さとりを前に呼ぶと、そのまま彼女を抱き寄せる。

「か、海斗!?」
「……ありがとう」
「あ、あう……はい」

赤面する彼女の頬を触り、そっと口付けを交わす。

「ん……」

そのままぎゅっと抱きしめると、さとりが幸せそうに吐息を漏らす。
唇をいったん離し、彼女の顔を見つめる。

「海斗……」
「これからも、ずっと一緒にいて?」
「……はい!」

満面の笑みで、笑ってくれた。

「ん……」
「あ、ん」

そのままキスを再開する。彼女の柔らかい唇をついばむ。
そうしてゆっくりと唇を堪能する。
……どれくらいそうしたろうか、どちらともなく唇を離す。

「はぁ……」
「ちょっとしすぎたかな?」
「いえ、そんなことは……」
「そう? じゃあさ」

彼女の耳元で、囁く。

「この続きしても、いい?」
「あ……」

耳まで真っ赤にするさとりが、可愛らしい。

「はい……」
「うん、じゃあ」

といって、彼女の胸に手を当てる。柔らかい感触が手のひらに伝わる。
そのままふにふにともみしだくと、彼女が「んっ」と切ない声を上げる。
暫く柔らかな双丘を堪能すると、ボタンをゆっくりと外していく。

「あ、」

また顔を赤らめるさとりに口づけをし、頭を優しく撫でる。
そうすると彼女は気持ち良さそうに吐息を零す。
そうして上着のボタンをすべて外し、ピンク色のブラの中に手を差し入れる。
マシュマロみたいな柔らかい胸を、手のひら全体で包み込む。
やわやわと優しく円を描くように揉み、さとりの可愛い反応を楽しむ。

「ん、やっ……はぁ」

案の定、可愛らしい声をあげ、眉根をひそめりるさとり。

「気持いい?」
「あ、はい……ん、海斗の、指……」

艶かしい吐息を吐き出し、さとりがそう呟く。
その言葉にうなずき、彼女の胸の頂にそっと指をそえる。
その途端びくっと反応するさとりが可愛らしい。
そのまま人差し指でそっと周りをなぞり、乳首を指ではじく。

「っあん!」

体を震わせて反応するさとりに気を良くした僕は、そのまま乳首を責め続ける。
くりくりと弄り、つまみ上げるたびに嬌声が響く。
我慢できなくなって、彼女の可愛らしいそれに吸いつく。

「んぁ! か、海斗、ふわぁ!」

固くなった乳首を舌で舐めとり、優しく吸う。
さとりは僕の頭に手をまわし、迫りくる快楽を受け止めてくれる。
そうして乳首を甘噛みすると、「きゃふぅ!」と甘い声を上げる。
右胸を手で、左胸を口で愛撫する。
ちろちろと舐め上げ、きゅっと指でつまみ上げる。

「あん! ふぁ! かい、と! やぁん!」
「声、すごいね」

胸を弄るだけでこうだ、下はどうなっているだろうか?
右手をそっと彼女の下半身に伸ばし、ショーツの部分を指でなぞる。

「あぁん!」

しっとりと、ショーツまで濡らした彼女のそこを、指で優しく責め立てる。
さとりはそのたびに背中を仰け反らせ、腰を浮かせる。

「海斗、やっ! そこ、だめぇ……」
「ん。気持ちいんだね」

指をショーツの中に入れると、そこはもうぐしょぐしょに濡れそぼっている。
クチュクチュと嫌らしい音すらするほどだ。

「ちょっと弄っただけで、もうこんなになってるね」
「だ、だって……海斗の、気持ちよくて」
「よかった」

そういうとまた愛撫を再開する。
唾液で濡れた乳首を舐めたり、右手で彼女の秘所をなぞる。
入口の部分はすでにひくひくといやらしく蠢き、指を誘うように見える。
ゆっくりとなぞり、中指の第一関節まで入れる。

「はぁっ! 指、あぁ!」

そのまま掻き回すように動かすと、さとりが艶のある声を上げる。
くちゅくちゅといやらしい音を立て、指をゆっくりと出し入れする。
根元まで挿入していき、そうしてゆっくりと引きぬいてゆく。
そうするとさとりはびくびくと体を震わせるのだ。
物足りなくなって、人差し指を追加してさらに掻き回す。

「んぁ! あ、あ! そんな、いっぱい!」

愛液が指を濡らし、さとりの秘所がひくひくと指を離すまいと締め付けてくる。
さとりは僕の頭にしがみ付き、体を震わせる。
次第に少しづつ、早さを加えていく。愛液が滴り落ち、僕の着物に染みを作っていく。

「や、だ、だめぇ! も、もう……」
「いきそう?」
「は、はい……あ、ふぁ!」
「いっていいんだよ?」

そう言って乳首を再び責め立て、指を掻き回す。
ひくひくと蠢き、体を震わせるさとり。

「あ、あ、あ! も、もう、だめ、い、いっちゃう……あぁ!」

そう叫ぶと、びくりと一際体を震わせ、さとりが絶頂を迎えた。

「はぁ……はぁ……んっ」

荒い吐息を漏らすさとりの頭をなでる。
そうして右手を引き抜くと、彼女の愛液でしとどに濡れそぼっていた。

「さとり、こんなにしちゃったね」
「え……あ、や、そんな……」

僕の指を見た途端、彼女がさらに顔を真っ赤にする。
僕は指に着いた愛液を、一掬いなめとる……仄かに甘い。

「か、海斗……変態、です」
「そうだね。さとり、背中預けて?」
「え……はい」

彼女が言う通りに、僕に背を預けてくれる。
こうすれば、さっきよりもさとりを気持ちよくできる。
胸を掴み、右手を秘所に滑り込ませて愛撫を再開する。
今度はクリトリスも弄る。人差し指でなぞるだけで、彼女の可愛い嬌声が木霊する。

「ん? クリ気持いい?」
「あ! き、きもちいれす……や、や」

ぐしょぐしょになったショーツの中で、彼女の大事な部分を責め立てる。
中指で中を掻き回し、人差し指でクリトリスを執拗に攻める。
豆のような部分をクリクリと弄るだけで、愛液の量が増える。

「あぁ! あん! や、く、クリ、だめ! あ、胸も!」

左手で乳首をいじり、同時に胸を揉み上げる。
さとりの敏感に反応する部分を、一斉に責める。

「や、だめ、また! あっあっ!」
「またいきそう?」
「うん、き、そうです」

その言葉を聞いた僕は、彼女への愛撫を止める。

「え……なんで?」
「さとりばっかりじゃ不公平だから……こっちもして?」

さとりの手をとり、自分の股間へと伸ばす。すでに固くなったそれをさすらせる。

「あ……硬い」
「いい?」
「……はい」

そう言うと僕の上から降りて、床に膝をつく。
僕のモノを浴衣の隙間から取り出すと、さとりが息をのむ。

「い、いつもより、大きい……」
「そう、かな?」
「あ、し、しますね」

そう言うと彼女は舌先でゆっくりと僕のモノを愛撫し始める。
ちろちろと僕のモノを舐め、先端を吸い上げる。

「うっ……」

気持ちよさに思わず、声を上げてしまう。
気を良くしたさとりは口で咥え、頭を動かしてゆく。
彼女の口の温かさと、舌の動きと相まって、高みへと登らされてゆく。

「ん、くっ」
「ひもひいいへすか?」
「……気持ちいよ」
「ん」

上目遣いでそう呟くと、さとりは一旦口を離す。
そうすると、自分のブラを外し、胸で僕のモノを包んでくれた。

「さ、さとり!?」
「あの、こうすると、男性は喜ぶって……本で」

そりゃ、嬉しい。
あまり大きくないけれど、包むには十分な胸で、ゆっくりとしごかれてゆく。
途中唾液を絡ませて潤滑油として、より気持ちよくさせてくれる。

「くっ、気持ちいいよ」
「ん……」

彼女は僕の先端を咥え、ちろちろと先端を舐めてくる。

「っ! それ、やばっ……」

限界が近い。それを知ってか、さとりは胸を上下に動かし、舌を絡ませてゆく。

「ごめ、さとり……出る!」

その瞬間、僕のモノから一気に精液が吐き出される。
驚いて口を離したさとりの顔に、そのままかかってしまった。

「あ、ごめっ」
「いえ、いいんです」

そう言うと顔に着いた精液をゆっくりと舐めとってく。
細い指で掬い取り、舌先につけ味わうように飲み込んでいく。
その光景に、萎えだした僕のモノがまた復活していく。

「あ、またこんなに」
「っ!」

彼女の手を掴み、さとりをまた僕の上に乗せる。

「あっ!」
「ごめん、でも……!」

彼女の濡れそぼったソコに、僕のモノをあてがう。

「いいよね?」
「はい……」

入口部分で、僕のモノを擦りあげる。
そうしてなじませたあと、ゆっくりと彼女の中に沈めてゆく。

「ん、くぅ……ふぁ」

ずぶずぶと中にうずめていき、そうして彼女の最奥まで到達する。

「あっ! ……あ、温かい」
「ん、さとりの中も熱いくらいだよ」

すぐにでも果ててしまいそうなほど、さとりの中はすごい。
今にも搾りとられそうに、中がぎゅうぎゅうと締め付けてくる。
それでもお互いに気持よくなるために、ゆっくりと腰を引いてゆく。
引き剥がすまいと、彼女の中がうねり、そうして沈める。
この一連の動作だけでも、果ててしまいそうだ。

「あぁ! ふぅ! きゃぅ!」

さとりの嬌声が耳元で聞こえる。
僕をぎゅっと抱きしめて、快楽に耐えているようにも見える。
僕もさとりをぎゅっと抱き返す。
そうしてピストン運動を繰り返す。
ぐちゅぐちゅ! といやらしい音がテラスに響く。
愛液が椅子を濡らして、ついには床にまで流れてゆく。
腰を打ちつけ、彼女の中を突き進む。

「あっあっあっ! か、いと!」
「っ、ゆっくりしか動いてないのに、そんなに声上げて、さとりは嫌らしいな」
「や、ち、ちがうの……さっき、止められたから……」

寸止めされていたのが効いたのか、自分からも腰を動かしている。
僕もさとりのおしりを掴み、少し早く腰を動かす。
また愛液の量が増え、床に染みを作ってゆく

「ふぁ! あん! も、もう! か、いと! かいと!」
「さとり、ぼく、も!」

もう限界だ。
さとりの中を、壊れないように乱暴に掻き回してゆく。いやらしい水音が木霊する。
互いにぎゅっと抱きしめあい、快楽の受け止め合う。
ぐちゅぐちゅと掻き回し、さとりが涎を垂らすくらいに、掻き回してゆく。

「あ、あ! もう、かいと、イ、イく! イッちゃう!」
「僕も、もう!」
「あああああああああああああ!!」
「くぅ!!」

そうして最後にズンと突きいれると、同時に絶頂を迎えた。
二度目とは思えないほどの大量の精液を、彼女の中に出すと、その余韻でさとりの体が震える。

「あ、はぁ……」
「くっ、全部、だしたよ?」
「は、い……あ、海斗の……」
「さとり……」
「あっ……ん」

優しく口づけを交わし、さとりをもう一度ぎゅっと抱きしめる。
さとりもそれを受け止め、幸せそうに吐息を零した。










―――地霊殿の、海斗の部屋。
そこには、幸せそうに抱きあって眠る、さとりと海斗が寝息を立てていた。


Fin.
あとがき。

先日、バイト先のロ○ソンでの事。
お客様からポイントカードの提示していただいた時に、ふと名前の欄を見た。
そこに「海斗」という名前が書かれていて、思わず―――かっこいい、と思いました。
皆さんどうもお久しぶりです、タカハウスでございます。
忙しい日々の中、何となくあの名前を見て、書きたい衝動に駆られました。

反省点。
前回の伏線が見え見えで……なんというか、お恥ずかしい限りです。
物語の組み方もなっていない、成長していないなぁ、私(遠い目
ホームページでも指摘されたように、段々腕が落ちてきているのもありますが……。
やっぱりいつも書き続けていないと落ちるものだなと、改めて実感しました。
それでもやっと形に出来て、取り敢えず一安心です。あとは見てくれた人のお目汚しにならなければ幸いです。

それでは最後になりますが、御意見・ご感想・誤字脱字などがあればお気軽にコメントお願いします。
それではまたいつの日かノシ

……海斗はほんと、幸せ者だ。

以下、コメント返しとなります。
<GOJU様
育ててもらうってことは、その人の愛を一身に受けて育つものですしね。
勇儀母さんの不器用な愛は、海斗に届いているようです。やっぱり海斗は地底にいないと。
コメントありがとうございます。

<ナハト様
いや、実際腕は落ちていますよ……(汗
それでもストーリーを書ききれて一応ほっとしています。
萃香って細細したところで可愛く書かせていただきました。萃香かわいいよ萃香。

<syou様
この作品、甘く、より甘くがモットーでございます。
霊夢はかっこよく書き過ぎた気もしますが……これも勘のせいですね(ぇ

<猫軍団の幹部様
うぅ、遅くなって申し訳ありません。後、待っていてくださってありがとうございます。
伏線のコメントありがとうございます。それでも次はもうちょい良い伏線の張り方を勉強してきます。
また作品を書いていきますので、継続して頑張りたいと思います。

<J.frog様
……想像したらやだなぁ、コンデンスミルク。
海斗も立派な大人ですし、何より大切な人を置いていくことは絶対にしません。あんな可愛い奥さんを置いて行くなんて。
それと誤字報告ありがとうございます、訂正しておきました。

<6様
そ、そんなことないです! この作品を読んでくださるだけでとてもうれしいです!
そして甘々生活はたぶんいろんなところで筒抜けになっているでしょうね。間違いなく。
次回も試行錯誤して書いていこうと思います。コメントありがとうございます。

<7様
う、羨ましい名前です……! くそぅ、いいなぁ……海斗。
そしてキーボードの件についてですが、当SSでは一切の責任は負いませんので、あしからずでお願いします。

<8様
名前の発音がかっこよければいいですよね……かいと。
自分の名前と思って読んでいただけると、より一層楽しめると思いますが……予想以上にかいとの名前の人が多くてびっくりです。
……いいな、海斗。それはともかく、コメントありがとうございます。

以上、コメント返しでした!
タカハウス
http://ameblo.jp/fureitofureiya-takataka/entry-10569456876.html
コメント




1.GOJU削除
久々にタカハウスさんのお名前を見かけたのですぐさまクリックしました
やはり生みの親よりも育ての親ですよね
ベタかもしれませんが、その分海斗と地霊殿や星元とのつながりの深さがしっかり伝わってきたのでいいと思いますよ!

しばらく書いてないと書けなくなりますよね…私もリハビリ中です…

P.S.ロー○ンのくだりで思い出しましたが、そういえば小学校時代の旧友に「海斗」っていたなあ
あいつ今頃どうしてるんだろう…
2.ナハト削除
おぉう、久しぶりに貴方様の小説を見た気がします。
…これで腕が落ちてきている…だ、と? それでしたら自分はどうなるのですか(号泣)

それにしても今回もさとり様が可愛いよ、さとり様。
ま、それ以上にせっせとご飯を盛る萃香に和みましたがw

次回も楽しみにしております。
3.syou削除
毎度毎度甘すぎるでしょこれwww
たしかにこれでは腕が落ちてきているとは到底思えないw

…後、霊夢の勘が鋭すぎる件についてwww
4.猫軍団の幹部削除
しばらく名前を見てなかったので、続きが読めるこの時をwktkしていました。
確かに伏線は分かりやすかった(人の事は言えない)ですが何が伝えたいのかも理解しやすかったので、人物によく感情移入できました。

やはり「継続は力なり」、ですか……
私もこれ以上腕が落ちぬように精進せねば。

次回も期待しています。
5.J.frog削除
甘い、甘々じゃあww
味噌汁と中の“麩”を食べたと思ったら、コンデンスミルクに浸されたマシュマロだっただとっ!?
それでも海斗君は自分なりにちゃんと結論を出してくれたので、ホッと胸を撫で下ろしました。
妖怪色全開なさとり様もイイけれど、時には砂糖たんまりなさとりんも……おお、あまいあまい。

あと失礼ながら誤字報告です。
結構な年数が立っている事伺える→経っている事が
かしまし三姉妹もの二人も気になった様子→かしまし三姉妹の二人も?
二度目とは思えないほどの大量精液を→大量の精液を
6.名無しの中の名無し削除
自分は全く伏線に気づかなかった・・・
しっかり読んでない証拠ですね、分かり(ry


こいしちゃんから聞いている・・・
つまり二人の甘々な出来事も教えちゃってるんでしょうねww


次回もゆっくりとお待ちしています
7.名前が無い程度の能力削除
名前が「海斗」な俺に死角はなかった(実話)。
自分とさとりんが甘々な光景を容易く想像できるんで海斗君の名前をつけたタカさんには敬意を示すべきですなw
とりあえず敬意を示すのはいいとして、俺のキーボードを血まみれにした件については謝罪を(爆死
8.名前が無い程度の能力削除
マイネームシリーズ続きキターーー!!! 
この可愛いさとりが俺の名前を呼んでくれるなんてーー!!
漢字が違う? そんなもんかんけーねーや!
って事で、また次回楽しみに待ってます!
9.明闇削除
甘い・・・あまい・・・全世界の甘さがここに集まってるのでは?と思うほど甘かったです。
前回の伏線の一つ?であった海斗の過去は回収されたので・・・後は紫の登場の理由がどこで・・・
悶々としながら考えることにします。
それでは次回作が出るまで・・・ちょっと地霊殿に行ってきます。