真・東方夜伽話

月の無い夜は輝いて

2011/01/05 21:10:57
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月の無い夜は輝いて

テラガンミィ

俗に言うEXルーミアですが、成長したルーミアくらいのイメージで書いております。
扱いはほとんどオリキャラですわな。
俺のEXルーミアはこんなのじゃないぜという意見もありましょう。
あらかじめご了承ください。


急展開にご注意ください。















今となっては遠い昔。
人々は、今夜みたいな新月を作り出しているのは妖怪だと信じていた。
元々人間という生き物は自分たちの手に負えないことを超自然的なものと結びつけ、畏怖し、崇めていたわけである。
だから、月が満ちたり欠けたり、夜空から消えたりするという、なにやら恐ろしげなことは「とにかく妖怪の仕業にしてしまえ」と考えるのも頷けよう。
そこで、宵闇の妖怪は生まれた。
夜の、闇の具現として。
人々のニーズに合わせて、と言っても過言ではないかもしれない。

そうであったと言うのに、人は闇を忘れた。
あの身体に纏わりつく、どろりと濁った闇を忘れたのである。

火や光が作り物になってから、長い月日が流れた。
恐怖の象徴だった夜と闇は忘れ去られ、その具現たる妖怪もまた幻想の中で時を過ごした。
件の妖怪、ルーミアが幻想に流れ、封印されて久しい。

一体、何を思いながら、月のない夜空を見上げているのだろうか?






黒々とした夜である。


光の三妖精の一匹、ルナチャイルドは魔法の森で落ち葉を踏みしめていた。
その手には小さな酒瓶が一本握られている。
外の酒も稀に取り扱っていると言う奇妙な店、香霖堂から「途方もない」葡萄酒を一本、拝借してきたのである。
翌朝、瓶の消失に気づいた店主が絶叫することになるが、どーでもいいことであろう。


ルナチャイルドは月の光の妖精である。
その為、夜間の活動も得意であるし、夜目も利く。
だが、やはりと言うべきか、新月の日は平常と言いがたい。
なんだか今夜はやけに酷いように感じられる。
妙にソワソワとしているのが、自分でもわかっていた。


さて、どうして彼女が盗品を抱えて、木の下を独り歩いているかと言えば、全ては押しの弱さが原因である。
つまるところ、切れた酒を誰が盗りに行くかで揉め、サニーミルクは「夜目の利く妖精二人のうちどちらかが行くべき」と主張した。
そしてあのスターサファイアに勝てる筈もなく、ルナチャイルドの完全敗北が決定して今に至る。

(まったく、サニーもスターも強引なんだから。これじゃあ私が便利な使いっぱしりみたいじゃないのよ)

こうやって独り寂しく家に向かうのも初めてではなかった。
過ぎ去ったことをとやかく言いながら、ルナチャイルドは深夜の森を進んで行くのであった。

「それにしても、これ、美味しいのかしら」
手にした品をためつすがめつしてみる。
香霖堂に目ぼしい日本酒がなかったので、適当にかっぱらってきた一本である。
「こんなにちっちゃいし。大丈夫かなぁ。サニーに文句言われそう」
ボトルの容量は375ml。二合とちょっとの量でしかない。
冗談抜きでサニーミルクなら一気飲みでもしてのけそうだった。
本来ならそんなこと許される筈の無いワインなのだが、妖精には通じまい。


「あれ?」
ボトルを眺めていたルナチャイルドは、視界の隅、木の根本に何かが落ちているのを発見する。
拾い上げてみると、赤い布切れのようだった。
虫に食われたようにボロボロとなったそれは、元はリボンか何かだったのだろうか。
「どうしてこんなところに……?」
普段人が通るようなところではない。

「まあ、いいや。サニーのお土産にでも――――」

そこから落ちてきたような気がして、何気なく木を見上げた。

見上げて、「もっと押しが強かったらよかったのに」と深く後悔した。






闇の中にあって、煌々と輝く二つの赤。
それが何かの目だと認めた瞬間、一筋の恐怖が背を伝う。

妖精の足を地面に縫い付けるのに十分な貫禄。

ふと、樹上の姿が闇の中へ消えた。
「え?」
先ほど少々触れた通り、ルナチャイルドは暗中においても視界を有している。
にも拘らず、まるで本当に闇に溶けたみたいに消えて――――

「今晩は」

「――ひっ!?」
あまつさえ、同じように目の前に現れるだなんて。


「あら、可愛い妖精さん。 驚かせて御免なさい」

身体に纏うのは黒と白のツートンカラー。
ルナチャイルドより頭二つ高いところにある真っ赤な瞳は、月光色の髪に飾られて静かな輝きを放っている。

間近に出現したそれは――陳腐な表現になるが――ゾッとするほど美しかった。
最後にいいものが見れたと思えるほどに。

音を消す能力しか持たぬ、貧弱な妖精と、目の前の迫力。
力の差は、火を見るよりも明らかだった。

「貴女――――――」
しかし、八つ裂きにしてやろうとか食い殺してやろうとかいった殺気は、まったく感じられない――――能ある妖怪は総じてそれを隠すものなのだが。
それどころか、穏やかな声色で言うのである。

「妖精がこんな時間にお散歩しているなんて珍しいけれど――――私も退屈していたところなの。少しお話に付き合ってくださると嬉しいわ」
にこりと目を細め、「もし良かったら」と。

少なくともその間は首が繋がったのかな、とルナチャイルドは思った。







僅かに歩いて、案内されたのは森が少し開けた所。
見上げれば、森を覆う枝の重なりに、そこだけぽっかりと穴が開いている。
それで、星空が覗いて見える。
今夜は、空に一際輝いている月が無い所為で、いつもはそれに隠れるような星たちが目立った。



そんな空き地の真ん中に、大き目の切株が一つ、それを囲む椅子がふたつ。
まるでどこからか拾ってきたようにちぐはぐで、薄汚れた二脚だった。
「ここが私の家、みたいね」
他人事のような口振りで、傍らの彼女が言った。
家というのも冗談ではなさそうで、切株の下には縁の欠けた湯飲みとかグラスとか、申し訳程度の生活用品が落ちていた。

「どうぞ腰掛けて頂戴。少し汚れているけれど」
「ど、どうも」
蛇に睨まれた蛙みたいにギクシャクとルナチャイルドは椅子に腰を下ろした。

目の前の妖怪が心変わりしないか、とか、機嫌を損ねはしないだろうか、と気を揉んで兢々としていたルナチャイルド。
それでも、四半刻も言葉を重ねると次第に恐怖も薄れていった。半刻経てば親しげな笑い声も漏れ、先ほど感じた後悔も撤回した。
切株を挟んだ彼女は話が上手く、ルナチャイルドが知らないような、ずっと昔の出来事を語った。

妖怪は、ルーミアと名乗った。



「ルナちゃんって、チルノちゃんのお友達でしょ?」
訊きながら傾けるのは漢字で埋め尽くされた湯飲み茶碗。鯵とか鮪とか鱧とか鮟鱇とか言われても幻想郷の人々にはピンとくる筈もないが。
「チルノのこと、知ってるんですか?」
答えるルナチャイルドの手にもタンブラー。中身は言わずもがな、パクってきた葡萄酒である。
最初は機嫌をとるために献上したのだが、二人で楽しむことになった。

「知ってるも何も、お友達よ。一緒にかくれんぼもするくらい」
「か、かくれんぼ!」
ルナチャイルドは想像してみたが、あまりにあんまりな光景が頭に浮かんだ。
(この人が、あのチルノとかくれんぼ?)

「そう言えば、かくれんぼの達人を発見したって喜んでいたわ。貴女たちだったのね」
ルーミアはそう言うが、クエスチョンマークが頭の中でこんがらがったルナチャイルドの耳には入っていない。
そんな必死な顔を見て、ルーミアはくすくすと可笑しそうに息を漏らした。
「ふぇ?」
勿論、ルナチャイルドには状況が掴めない。「こんな人がいるなら、今度からチルノにちょっかいだすのやめよ」と思っていたところである。
「ああ、御免なさい。可愛かったものだから」
口元の笑みは変えず、しかし瞳には僅かな鋭さを覗かせる。

「ほんの数刻前まで、私は貴女やチルノと同じような容姿をしていたの――――封印が解けるまで」
「ふういんがほどける、って、もしかしてこのリボンですか?」
「そうそう。『彼女』の記憶も引き継いでいるけれど、木の上でぼーっとしてたみたい。そしたら突然はらりと落ちるんですもの。喜び半分驚き半分って感じだったわよ」
あと、怒りもちょっと、と湯呑みに口をつける。倣ってルナチャイルドも、淡い黄金の液体をちびりと舐めた。
途端口腔に広がる芳醇なる甘み。
安い酒だけじゃ駄目だ。やっぱり量より質が大事なのだと実感する。



「考えてみれば、おかしくもないかもね。――――いい加減古いリボンだもの。幻想郷ができた頃くらいの」
あまり酔っ払ったという様子もないが、ルーミアは饒舌だった。
それも無理もないかとルナチャイルドは大人しく聞きに徹することにした。聞いていてそれなりに興味深い内容ではあるし。
「やった、とも思ったけれど――――すぐにどうでもよくなった。だって、もうすることもないの。私は用済みだからここにいるわけだし」

静かな時間が流れていく。
夜が、丁度更け切った頃なのだった。
「こんなんだったら封印されたままでよかったかも、なんて思っていたところで貴女を見つけた、ってわけ」
「これから……どうするおつもりですか?」
「のんびりしてるけど、実はそんなに時間がないかもしれない。やりたいことがないんだからあんまり関係ない、か。――――あら、御免なさい、私の話ばっかり」
グラスに揺れる液体を、ルナチャイルドはぼーっと眺めている。
いよいよ酔いが回ってきたのか、それとも夜が濃すぎるのか。
その瞳はどこか潤んでおり、薄い胸板の上下の動きは明らかに平時より早い。



新月に、夜の具現であるルーミアと酒を酌み交わすなんてことは、月光の妖精に多大な影響を及ぼしたようである。
若干こじつけを感じないでもないが、複数のファクターがルナチャイルドに得体の知れない刺激を与えたことは、この際明らかということにしてしまおう。
そうでなければ話が進まないのだから。

(あ…………)
下着に液体が染み込むのを感じる。
未だない程の強烈な感情は、ルナチャイルドの思考を容易に沸騰させた。

しかしながら、ルナチャイルドが抱くのは肉欲ではない。
強いて言葉にするなら、絶対的な夜に対する、帰属意識。
つまり、元に戻りたい、ひとつになりたい、という回帰的欲望である。

結局のところ、やることは一緒で、一番手っ取り早い方法である。


今後の流れは既に決まっているのだが、そこは流石ルナチャイルド。
ルーミアにおねだりするとか、押し倒したりできるような気性ではない。
ただ、もぞもぞと体を捩じらせて――――時折、偶然触れた手だとか衣擦れなんかが、彼女にほんの僅かの充足を与える。
しかし、足りない。



「ルナちゃん」
ルナチャイルドの肩が震える。
少し目線を上げてみれば、変わらぬ柔和な笑み。


「おいで」

その声に、ふらふらと引き寄せられてしまうのだった。








幼い子供がそうされるように、ルナチャイルドはルーミアの膝の上に抱えられていた。大人っぽく言うなら背面座位の体位である。
目をトロンと潤ませた彼女は、満足気に吐息を漏らしている。

「気持ちいい? ルナちゃん」
背中に感じる柔らかさ、耳元への甘い囁き――――気持ちいい。



深淵なるリラックス。

見えるのは深い闇だけ。

耳に入ってくるのは闇の静けさだけ。

冷たさは感じない。無慈悲でもない。

むしろ彼女は暖かく、慈悲に溢れて――――――こんなに優しく包んでいる。

夜が冷たいなんて、嘘だ。



今にも喉をゴロゴロ言わせて眠りに落ちてしまいそうだったルナチャイルドは、しかしもう一度体を震わせる。
先程まで猫を撫でるようであったルーミアの手つきが、徐々に淫靡さを帯びていく。

「ルーミアさん……」
控えめの胸に触れられ、僅かに抗議の声を上げる。
その声に何の意味も無いことは自分でも分かっていた。
また、こうやって流されてしまうのだ。

でも、気持ちいいから、いいんだ。

「ごめんね、ルナちゃん。ちょっと我慢できないや」



力がどんどん抜けていく。
全てを任せてしまいたくなる。



首筋。
胸。
脇腹。
太もも。

そしてルーミアの指先がスカートの裾から分け入っていく。

「ルナちゃん、スカート持ってて」
言われるままに自分でスカートをたくし上げ、真っ白な太ももを夜に曝す。
「良い子ね」
左手は腰に回され、右手で秘所を弄られる。

下着越しの感覚が、この状況が、堪らなくルナチャイルドを興奮させる。
「ルナちゃんって、一人でしたこと、ある?」
ルーミアの声からも昂ぶりが感じられた。

あります、と控えめながらも正直に答える。

「どんな風にするの?」
「じ、自分のベッドで……毛布に包まって……、下着の上から、あ、あそこを触ります……」
「下着は脱がないんだ」
意地悪げに言って、右手の動きを早める。
「はぃ……まだ、直接したことは、っ、ないです」



――直接、やってみようか。

耳元での提案。

逆らえない。逆らわない。


言葉に操られて腰を浮かせると、下着が膝まで下げられた。

――やってみせて?

ルナチャイルドはこくりと小さく頷く。
スカートを押さえていた右手を放して、秘所に触れさせる。

くちゅり、と水音と共に、短い呻き声が彼女の口から漏れた。

――触って。
大陰唇を指先で押してみる。

――開いて見せて。
押し広げてみる。

――指、入れてみようか。
おずおず指先を埋めてみる。
入り口の浅瀬を徐々にほぐすように、指の第一関節を曲げて伸ばして。

拙いながらも、紛れのない自慰行動。
以外にも未知の行為に対する恐怖は少ない。
ルーミアの命ずるままに動いているからかもしれない。


「気持ち良いでしょ? 直接のオナニー」
「はい……、気持ち、いいれす」
酔いと快楽が手伝って、呂律が思うように回らない。




「もうちょっと力を抜いたほうがいいかも」
ルナチャイルドの右手にルーミアのそれが重ねられる。

彼女の手に導かれ、自らの人差し指をゆっくりと差し込んでいく。
「く、ふぅ……っ」
自分の口から吐き出された甘い嬌声が信じられなくて――背筋がゾクゾクする。

「痛くない?」
「だい、じょうぶです」
「少しの間、動かさずに慣らそうね」
言ってルーミアはルナチャイルドを抱きしめる力を強めた。

「ちょっと、こうしていよっか」





ルーミアさん、と妖精が震える声で名前を呼ぶまで、妖怪は彼女を抱擁し、髪を撫でていた。
「どうしたの?」
「あの、そろそろ、だ、大丈夫じゃないかと」
「そう? ゆっくり慣らした方が痛くないと思うけど」
ふふっという不敵な笑みが、ルナチャイルドの肩に乗せられる。



「もう、我慢できないんだ?」
一瞬の内に顔中の赤がその色味を深める。
そんな顔を俯かせながらも、ルナチャイルドは否定をしない。
「いいよ。オナニーしても」

妖精の体が震える。

「ルナちゃんのココ、掻き回しちゃってもいいんだよ」
その言葉だけで、頭の中が一色に染め上げられる。

快楽の真っ白。
深い深い真っ黒。

相反するようなんだけど、同じ色。




それとも――――

「私がしてあげよっか?」







さて、ここでルナチャイルドはどういう反応をしたのか。

おねだり?

いやいや、それができる性格でないことは先に触れた通りだ。



結論から言えば、また流された。
首を縦にも横にも振ることができなかったのである。


我慢が効かなくなっていたのはルナチャイルドだけではなかった。
なんと言っても久方振りの情事。
自分の思っている以上にルーミアもまた興奮させられていたのだ。
なんとなく分かっていただけないだろうか。








艶やかな嬌声が続いている。
ルナチャイルドの秘所に埋められている指は、ルーミアのものへと変わっていた。
妖精は腕を力なく垂らしており、与えられる快楽を甘んじて受け入れるだけ。

自慢の髪が、ルーミアの五指に梳かれる。
髪への愛撫や時折首筋に触れる指先が、堪らなかった。

右手は秘所を、左手は髪を。
的確に動き回る十指はルナチャイルドを狂わせる。


気持ちいい。

自分でするより、彼女にされたほうが、ずっと。


しかし――快感より先に安堵を感じるのはどうしたことだろう。
ついさっきまで恐怖の対象でしかなかった妖怪が、今や安心を与えているのである。
初めて自慰をした日、絶頂への恐れから寸前でやめてしまったルナチャイルドだが、この状況に何の恐怖も憂慮も無い。
考えてみれば、不思議な話だ。


「ん、ふ……ぅ」
断続的に感じる重い衝撃は、絶頂の兆候だった。
しかしながら、予測される規模は過去のデータを軽く凌駕する。

「イッちゃいそうなんだ?」
弄る右手は休ませずにルーミアは囁く。
「ルナちゃんのあれ、ひくひくしちゃってるもの」
自分の指を締め付ける秘所の感触を味わい、ルーミアは悦に入る。
「言わないで、ください、よっ……恥ずかしい、です」
「気にしない気にしない。今更じゃない」
「それは、そうかもしれませんけどぉ、っ」

「イッちゃおうか、そろそろ。本当に我慢できなくなるでしょ?」
ことも無げにそう呟かれ、ルナチャイルドは再び顔を俯かせる。


ずちゅずちゅと、響く水音はどこまでも淫らに。
幼い身体が痙攣を始める。

妖精は自らの口を手で押さえ、嬌声の上がるのを必死に堪えている風だった。
妖怪は無論それを知りながらも、その手を取り払おうとはしなかったし、言及もしない。


結局、ルナチャイルドの口から絶頂を求める声は無かった。

それでもルーミアは彼女を望みどおりにイカせてやる。



じっくり、ゆっくり。
下半身に集中した快感は腰から背筋を這い上がり、膨れ上がる。



「っあ」
指の隙間から、短くルナチャイルドの吐息が漏れる。

くぐもった声が上がる。

「――――――――――――――」

迎えた絶頂はがくがくと震える身体で以って示した。



なかなか引かない余韻が思考を溶かして、ルナチャイルドを苛む。

くたりと身体がしなだれると、唇の端から、一筋の唾液が伝った。
半分だけ開かれた瞳や快楽に酔いしれる表情は、なんとも淫靡である。






暫く、二人分の呼吸音だけの静けさが続いた。
「うう、恥ずかしかったです……」
「可愛かったわよ、ルナちゃん」

立ち上がって、乱れた衣服を整えていたルナチャイルドは、ルーミアのスカートについた染みを見つけた。
「ルーミアさん、それ」
「え? ああ、ルナちゃんのおつゆね」
「ごめんなさい、汚してしまって」
「そんなの気にするわけないじゃない。でも、こちらこそ御免なさい。私の欲望に貴女を巻き込んで」
「巻き込むだなんて……」




二人は再び、それぞれの椅子に腰掛ける。
僅かに残ったワインをチビチビと舐めた。

妖精と妖怪の間に言葉は無かった。
しかし、それは事後の気まずさから来るわけではない。
二人ともするべきことを失っての沈黙だった。


やがて、茶碗を持つルーミアの動きがぴたりと止まる。
何か足りない夜空を見上げて、息を吐いた。

「ルーミアさん?」
「もう、時間みたいね」
ルーミアがルナチャイルドの脇に立つ。
本来なら、恐怖を感じるべき状況であった。


どこにすべきか、と妖怪は一瞬の逡巡を見せてから、妖精の額に口付けた。

「そろそろ、行きなさい。貴女のお迎えも来ているみたいだし」
「え?」
「有難うルナちゃん、楽しかった」

それだけ言い残して、妖怪は妖精に背を向ける。
十数歩歩んで、森の闇と対峙した。






何かが闇の中から飛び出すのと、慣れ親しんだ声が背後で聞こえたのは、ほぼ同時だった。
「ルナ、なにボーっとしてんのよ! 早く逃げるわよ」
「え、サニー?」
サニーミルクと、傍らにスターサファイアの姿もある。
いつからいたのだろう。彼女とのアレは見られていなければいいのだが。
手を引かれ、走り出す。

闇夜に現れ、ルーミアと向かい合っていたのは――博麗の巫女。
「このままじゃあ、私たちまで退治されちゃうでしょーが! ほら、早く音消してっ!」
「う、うん」
既にこちらの姿は消してあるのだろう。言われるままにルナチャイルドも能力を発動させる。

最後に、ルーミアの姿を見た。
柔和な微笑みをこちらに向けて、ひらひらと手を振っていた。
何事か言っているようだったが、聞こえない。能力を使ってしまったから。


「じゃあね」だったのか、「またね」だったのか――――


分からなかった。


























ある日の新聞に掲載されていたのは、ルーミアの記事であった。
封印が解けたらしいので、博麗の巫女が詳細を確認し、事実なので封印をし直した、というのが記事の内容だった。
もっと苦戦を強いられると覚悟していた巫女は、件の妖怪の力に拍子抜けしたらしい。
完全に封印が解けていてあの程度の力というのは、おかしい。夜の力も衰えたのかしら、とは巫女のコメントである。





「今度こそあの巫女に一泡吹かせてやろうと思うわけよ」
現在は神社に程近い三妖精の家。
その中で、サニーミルクはそう宣言した。
彼女がそのような宣言をすること自体珍しいものではなく、いつも通りである。

「いつもやってるじゃない。圧倒的に失敗が多いのだけれど」
そういうわけでスターサファイアもいつも通り、やんわりと受け止めている。
「努力を重ねて何とかするのよ。いつかは巫女も吃驚するでしょ」
「そういうものかしらね」
「そういうものよ。というわけで今夜もやるわよ。早速――――」

「悪いけど、私はパス」
サニーミルクの言葉を遮り、不参加を表明したのはルナチャイルドである。
既に、外出の支度を済ませていた。
「じゃ」
二人の妖精が何かを言う前に、ドアは閉じた。
なぜかを問われるような事態になるよりかは、さっさと逃げるに限る。






再び新月が巡ってくる。
あれから、ちょうど一月が経った。

香霖堂へ行ってみようとルナチャイルドは考えている。
またあのお酒があったら、持って行こう。

そしたら、また彼女に会えそうな気がする。

気がするだけだ。

きっと叶わない。

だって彼女はもう一度封印されてしまったから。




でも、幼い容姿をした妖怪には会えるかもしれない。

その妖怪は大食漢だという話を聞いたから、お弁当も忘れずに。
ワインを飲みながら、お話しようと思うのだ。



さあ、行こう。

『またね』だと信じて。

















さて、夜は今もなお生きているのだ。
感受性は人によりけりだから、彼女から受ける影響も人それぞれ。
だから生半可な心持ちでいてはいけない。

たとえ幻想の外であったとしてもだよ、君たち。
そんな余所見をして歩いていると――――――





ほら、彼女にぶつかった。
妖精の羽は邪魔になりそうですが、きっと何とかなります。
漫画版だって時々オミットされてるし。



またこんな展開になってしまった。
今回は書いてて恥ずかしかったところも…………。

そろそろネチョのネタが尽きてきそうなテラガンミィです。お久しぶりです。

珍しく完全なる百合でございます。薄いけど。
おちんちんが出てこないと何か物足りないのは私だけでしょうか。

年末から会社がすごい忙しいのですが、死ぬ気で書きます。
この話もバタバタになってしまったので、一段落したら弄ろうかと思います。
テラガンミィ
コメント




1.名前が無い程度の能力削除
最近はネチョ濃い目のばかり読んでいたので何か新鮮でした。
それとは別に、この作品は不思議とスッと入り込めるものがあって
とても読みやすかったです。
2.をゅ削除
んん。
良いですね。無理矢理な部分が多い中、それすら
打ち消す文章力と続きを妄想させる書き残しは素晴らしいです。
また、あまり見ないカップリングでは何か想わせる雰囲気を醸しだし
ひとつの容として頭にインプットされました。

センスが光ってます。
3.ネガティブフェイス削除
ルナチャが可愛い
これからもたのむぜ