真・東方夜伽話

ほしかったものはなに?

2010/05/23 00:34:34
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ほしかったものはなに?

arlys
この作品に含まれているのは、血、自傷、鬱要素です。
この上記の要素が苦手な方は今すぐに逃げてください!
あと、ネチョ要素も薄いと思います。
それでもオッケーというかたはよろしくお願いします。




「お姉ちゃん、私に近づかないで」

二人だけで、安息の地を求めて歩いているとき、妹は憔悴しきった声でぼそりと呟いた。
私がゆっくりと恐れながらも見返すと、妹はあわてて否定をした。
胸の中には罪悪感が広がっていた。
だから、私は妹の一時の心の迷いだと受け止めることにした。

その数日後妹の瞳は閉じられた。
妹のほうから私の傍からいなくなっていった。
だから、きっと私にとって妹はいらない存在。
正しく言えばいなくなって欲しい、他人になって欲しい存在。

「私はどうしたらいいの?
ううん、どうしたらいいんでしょうか?」

妹とどう接したらいかわからなくなった私は、虚空に問いかけるしか手段がない。
無意識に漂う妹を見つけられない。
きっと、妹は見つけて欲しくも気づいて欲しくもないだろうから……




地霊殿という安息の場所にたどりついた。

「私には会わなくていいです。
でも、ここはあなたの帰る場所ですよ。
疲れたときにでも帰ってきなさい」

妹に鍵を手渡した。
それは、少しでも繋がりが欲しいという私の傲慢な願い。
無意識の操り手である彼女には、鍵など要らなく、いつでも部屋を開けてあげればいいだけなのにだ。
結局、私はどんな理由であっても、ただ同じキーホルダーというだけでもいいから、繋がりが欲しかったんだ。


ただただ、でかい屋敷。
一人で淡々とこなす仕事。
相手の恐怖心というご飯がないため、定期的にご飯を食べる。
いつの間にか増えていくペット。
ご飯にはあまり執着がなかったため、食料庫をあけておく。
そうすれば、純粋な喜びという感情が私を占領してくれる。
それが、私にペットに何かを与えるという行為に走らせた。
『お名前、うらやましいな』
ペットの一人から、そのような声が聞こえた。
それは、一匹の地獄烏。
いつも、明るくて素直で好意を伝えてくれる優しい娘。

「あなたの名前は……
外の世界の空のように変わりやすくて、きれいですから、空にしましょう」

それが嬉しかったから、その子の傍にすぐ駆け寄って思いついたことを口にした。
色んな事をすぐに忘れてしまうのに、与えた名前を覚えてくれているのが嬉しかった。
動物は単純だから、大丈夫かなって希望を持ってしまった。
求めてくれる子にも求めてくれない子にもまるで、鎖のように名前を与えてしまった。
過ぎたる好意、執着に

「逃げろ!」

ペットたちは逃げていった。
私が何もしなければしないほど、ただ食料を与えることがいいのだとわかった。


「さとり様、こわい……
いなくなればいいのに」

昔は飽きるほど聞いた罵倒の言葉が胸に刺さって離れなくなった。
それは、共有する相手がいなくなったからか、誰からも必要とされなく、自分の存在を見出せないままだからか。
どちらかは、定かではないけど、おそらくどちらも本当なのだろう。
忌み嫌われても、生き続ける理由。
それはいったいどんなものなんなのだろう?
私が生きていて、何かいいことがあるのだろうか?




「さっとりさま~!」

『して欲しい、いいかな?
いいのかな、頼んで』
勢いよく飛びついてくるのと同時に流れ込んでくる思考。

「ん、何をして欲しいのですか?」

具体的に何をして欲しいのかわからなかったので、きいてみると

「本、本読んでほしいのです!」

人型を取れるようになったからか、燐は知識を欲しがるようになった。
それは、喜ぶべき、喜ばないといけないはずなのに

「えぇ、わかったわ」

私はどうしても不安になってしまう。
だけど、望むのならかなえてあげよう。
私に出来るのはそれくらいなのだから。

「これ、これ読んで!」

一冊の本を差し出される。
可愛い挿絵がついた絵本。
一体、どこから拾ってきたのだろうか?

「はい、かしなさい」

本を受け取って、読む。
いつも目を輝かせて聞く燐。
何回も何回も燐はやってきた。

「あたいはですね~、お燐ですよ~」

本の登場人物の言葉を真似るようになっていった。
だんだんとお燐の個性が確立していくにつれて……
来る回数は減って、とうとうお燐は私の前に現れなくなった。



「おいしいですか?」
「ありがとうね」

ご飯を作ってくれたペットにお礼を作る。
ペットたちが全てをできるようになったため、私にはほとんど仕事がない。
主従でもなく、ただのギブアンドテイク。
私が食料を与え、向こうは労働力を提供する。
ただそれだけの関係。

「えへへ、自信作なんですよ」

さくさくっとデザートのミルフィーユを噛む。

「へえ、そうなのね」

これがおいしい。
自分の感情がわからない。
私にはまるで、砂を噛んでいるよう。
何を食べても感じられない。
甘い、苦い、すっぱい、辛い。
全ての味覚は、食べているペットたちから間接的に感じる。




「な、何やってるんですか!?」

手が滑って、カミソリが私の右頬を切り裂いた。
つっと流れ出た血は止まることなく溢れる。
それなのに、あせれない。
これくらいでは死なないから?
生きることにどこか飽き飽きしてきたから?

「と、とりあえず、救急箱持ってきます」

ばたばたと廊下を走る音。
頬に自分の手を当ててみる。
べとべととした手が自分の手に張り付く。
落ちそうになった血を手で受け止める。
その時勢いで『グチュ』っと頬に当てていた手に力が入って、指が入り込んでいた。
ここで指を引き抜けば、おそらく血があふれ出すだろう。
そうなったら、掃除がめんどうだな……

「さ、さとり様」
「お燐」

名前を呼ばれたのでゆっくりと振り返る。

「な、何してるんですか」

駆け寄られ、指が抜かれて、さっと応急処置。

「こんなことしたら、痛いでしょう?
なんで、なんでですか?
さとり様が痛いと、私も痛いです」

涙をためた目でお燐が見上げる。

「ごめんなさい」
「くれぐれも気をつけてくださいね」

私の謝罪をどのように解釈したのか一回頷いて、お燐は仕事に戻っていった。

「痛みがなんだかわからないの」

ガーゼをつけていても、未だあふれ出る血。
指で触れたら、ぐちゅっと音がなる。
トラウマの想起、痛みがどんなものかは理解しているなのに。
血が流れた瞬間、触れた瞬間、得たのが安堵だった。
どんなものかはわからなかったけど、笑みを浮かべそうな自分がいた。

「あはっ」

笑ったのって一体何十、何百年ぶり?

『なに、あれ?』

ペットの声が耳に入った。
ゆっくりと、その方向へ振り返ると、呆然としている。

「なんでもないのよ。
そう、なんでもない」

ただ、安心できるものを見つけただけ。
心の痛みなんかも、身体の痛みもわからないけど……
血という液体だけが、私にリアルを与えてくれるってわかったから。
感情は変わっていって、痛みも薄れていくもの。
だけど、血という液体だけは変わらない。
切り裂けば、ぶしゅっと出てきて、いつもと変わらぬ赤色を見せてくれる。
また、もう一回ガーゼの上から傷口を抉る。



「さとり様、さとり様~!」

部屋で読書を楽しんでいると、地獄烏のお空が嬉しそうに部屋に入ってくる。
『仕事終わったよ、できたよ!』

「はい、お疲れ様でした」

なでてなでてという思考を感じ取ったので、ちょいちょいと指を動かして、近づくように手招きする。
ぱっと顔が輝き、私の前に座り込んで目を輝かせる。
『えへへっ。大好き』

「ありがとう」

血もリアルだけど、この感情も本当?
人型になっても、変わらず向け続けてくれるまっすぐな好意。
ある程度撫でると満足したのか部屋から出て行く。
手に残った熱が冷めていく。
消えていく、変わっていってしまう。
わからないけど、全てあの子の感情も冷めていくのだろう。
ゆらゆらと部屋に備え付けてある洗面所へと向かう。
変わらぬものを求めて、カミソリを握る。
いつもの要領で、右の袖をまくって、すっと一回引き裂く。
だけど、切れてくれなかった。
さび付いて切れ味がなくなった。
ほら、カミソリも変わってしまった。
私は新しいカミソリを取り出して、切り裂く。

「うふ、あはっ」

ずたずたと切り裂かれて、跡が残る右手首は変わっていってしまうもの。
だけど、血だけは変わらない。
いつも同じ結果を見せてくれる。
赤く赤く、最後は黒くなってかたまる。

「あはは」

このときが一番、安心できる。



「あの、さとり様?」

おずおずとお燐とお空が近づいてくる。
一体、何があった?

「これ、なんですか?」

差し出されるのは私の洋服。

「なんで、こんな」

右手首の箇所についている血。
『やめてください、やめてください』
二人の思考。
おそらく、ペットたちの中でも強いから選ばれたのだろう。
そう、私が死んだりなんかしたら、後が面倒だから。
ひょっとしたら、ココを追い出されるかもしれないから。
『傷つけないで、きずつけないで』

「大丈夫ですよ」

あなたたちが心配するように血まみれになって死ぬことはありませんから。
私はただ、変わらないものを求めてるだけだから。

「どこがですか!」

お燐が右手首をめくられる。

「こんな、こんなになってまで」

お空が私の手を握り締める。
妖怪の力で抱きしめられたからか、傷口から血が出てくる。

「ひゃっ」

お空は驚きの声を上げ、右手首から手を離す。
二人の言いたいことはわかってますから、

「死にはしませんよ。
変わらないものがあれば、それでいいんです」

あなたたちが求めているものも同じでしょ?
私が死なずに今の生活が続くこと。
それなら、それを邪魔はしないから。
私の求めるものを邪魔しないで。



「お姉ちゃんはどうして瞳を閉ざさないの」

無意識に漂う妹は時々こうして聞いてくる。
近づかないで欲しいけれど、気まぐれに近づいてくる妹。

「変わらないものを失うのが怖いからよ」

瞳を閉じたら、今と変わってしまう。
それに無意識になってしまったら、血をいつでも見れない。

「ふぅん、臆病だね」

妹はそれだけを言って消えていく。
えぇ、そうよ。
私は臆病だから、これだけでいいの。
いつものようにまた、私は右手首を切る。



「ほら、変わってしまった」

お空とお燐が起こした異変。
お空は私のことを好いてくれるわけじゃない。
それよりももっと魅力的なものを見つけた。
お燐は私を慕っているわけじゃない。
思慕から、畏怖へと変わった。

「あははぁっ、ははっ」

両手首を一気に切る。
もっと、いつもよりたくさん、変わらないものを見たかった。
傷口が増え続ける右手首と新しく傷が出来た左手首。
変わらないものが大好きなのに、安心できるのに、また変わる。
そう思うと、怖くなって安心できなくて……
もう一回手首を切り裂く。
何回も何回も切り裂いていく。
ぎゅうってカミソリを握り締めて、指からも出てくる血を見て、ようやく安心できて……
安心できるものに抱かれて、私は目を瞑る。



「どうすれば、どうすればいいんですかぁ」

目を開けると、ペットが泣いている。

「さとり様、よかった」

ぎゅうっと抱きつかれる。
熱い、熱い、左右両方ともで抱きしめられる。
しばらくすると、離れて熱がなくなって、冷めて変わっていってしまう。

「どうしたら、やめてくれるんですか?」

お燐が耐えられないように呟く。

「あたいは変わっていってしまうだろうから、距離をとっても……
さとり様は自分で自分を傷つけ続けるのをやめない。
じゃあ、どうすれば、あたいは何をすればいいんですか?」

傷つけているんだろうけど、痛みは感じないのだから……
それは、傷つけているんじゃなくて、安心感を得るためなのに。

「「ねえ、さとり様」」

そんな目で見ないで。
かみそりがほしい。
『大好き』
『笑っていて欲しい』
いやだ、いやだ、こわい。
変わるものを私に突きつけないで。
全て、全て変わって言ってしまうんだから。
血だけでいいの。
それだけでいいから……
かみそりを探したいのに、両方のベッドの柱に手錠で動けないようにされてしまって探せない。
お願い、やめて、こわいの。

「「愛しております」」

近づいてくる、近づいてくる。

「いやあああっ!?
やだ、やだ、いやだっ」

変わってしまうんだったら、近づけないで。
そんなものを向けないで。

「なんで、なんでですかぁ」

二人がボロボロと泣き出す。

「さとり様は、何が欲しいんですか」
「うわ、あ、ぁあ」

変わらないものが欲しいの。
変わってしまうものを手に入れたら怖いから。
手に入れたと思って、失うのが怖いから。
それくらいなら、何もいらないの。

「傷が治るまで、安静にしててくださいね。
これ以上は私が無視するのが、無理ですから」

お空を引きずるようにお燐が出て行く。

「いやだ、やめて、これはなして!?」


「欲しいの、ほしいのよ」

何かを呟かないとたえられない。

「変わらないのが欲しいの。
いつでも、変わらずに切ったらあふれ出る血が欲しいの。
ここから出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して、出して」

同じような言葉を呟き、また同じ言葉に戻っていく。
なぜだか、わからないけどおかしくて顔が歪んで笑みを作ってる。

「みんな、私をひとりにするなら……
最初から、何も与えないで、血だけがあればいいから」

だから、元のところに戻して?
ここから出してよ。


「あはっ、ははっ」

ようやく私は血を見る方法を思いついた。
歯で唇を噛み切る。
そうしたら、ちょっとだけ出てきてくれる。
変わらぬものが姿を見せてくれる。
『ガチャッ、カチャッ』

「ふふっ」

最初は外そうと動かしていた手も動かし続けてこすれば血が出るってわかったから、ただそのために動かす。
血がちょっとずつこっちに伝ってくる。
よかった、よかった。
変わらないと思っている血はこうして変わらずいてくれている。
私に変わらないものでいて続けている。



「なに……これ?」

久しぶりに聞く声。

「ねえ、なにこれ!」

ベッドのそばへと駆け寄ってくる妹。
その表情は怒っている。
妹がまた変わってしまった。

「なんで、こんなことするのよ。
ねえ、答えてよ!」

涙を流しだす。
この子は何がしたいのかしら?

「あなたこそ、どうしてここにいるの?
私なんて近づいて欲しくないんでしょ。
あなたは、変わり続ける感情を求めるんでしょ。
私は、もう変わらないものがあればそれでいいの」

妹が私の服を握る。
そして、わなわなと唇を震わせながら

「じゃ、あ、私のせいなの?
お姉ちゃんがこうなったのは」

かわいそうなものを見るような目。
えぇ、わかってる。
いやなほどもうわかりきっている。
私はおかしいということくらい。

「そんなこと、もうどうでもいいの。
変わらないものが確かに一つあるのだから。
ねえ、それだけでいいの。
あなた達の欲しいものの邪魔はしないから……
私の欲しいものの邪魔をしないで」

妹であるあなたの私に近づかないで欲しいって願いも、ペットたちのここでの暮らしも邪魔しないから。
私の変わらないものが欲しいって願いも邪魔しないで。

「変わらない血があれば、それでいいから」
「へぇ、そうなの」

妹の何かを決心したかのような言葉。
そして、こちらにその目を向ける。

「じゃあ、お姉ちゃんに変わる血を見せてあげるよ」

妹が私の上に馬乗りをする。
かちゃりと右手首にはめられていた手錠がはずれる。
そして、何の脈絡もなく、服を脱ぎだす。
何をするのだろう?
身体を引き裂いていって、血が出ない場所でも見つけるつもり?
じぃっと見ていると、妹が下着まで脱ぎだす。
私の妹はこんな趣味があったのね。
がちゃっと私の手首を拘束していた手錠が一つはずされる。
私の右手がぷにぷにした頬や、首に当てられる。
そして、胸にも当てられていく。
好き勝手に動かされていく。
頂をなぞるように動かされたり、時々指を包み込んで握るかのような動作をさせられたり

「ん、ぅ、ふ」

浅い呼吸を繰り返している。
目を潤ませながら、こちらを見る。

「はっ、ねえ、指だけじゃ触ってるだけじゃ血が出ないでしょ?」
「そうね」
「だけどね、お姉ちゃん」

にやりと笑っている。
そして、私の人差し指をためらいなく

「ひぅっ、は、ぅあ」

自分の女の子の場所へと入れた。
ぎゅうっと、締め付けられる。
締め付けられて、血でも出るのかしら?
さすがにそこまできつくはないと思うけど……
そして、一気に中へといれられる。

「あぅっ、いぃっ、やっ!」

どろりとあたたかい中の何かを突き破る感覚。
ゆっくりと声を上げながらも、私の手を出す。
鮮血が私の手についていた。

「ほら、指で力をいれずに血が出たでしょ?
他のところなら出ないよね?
血は変わるよ。
次こうやっても、私のここから血は出ないよ。
変わらないものなんてないから……
きちんと、こっちを見て?」

抱きしめられる。
人肌特有の熱。

「そうかもしれないわね。
でも、手首は変わらない。
切り裂けば血が出るわ」

認めたくない、認めるのは怖いの。
変わらないものがなくなるのはいやなの、こわいの。
私の身体から離れて、頬を細い指がなぞる。

「うそだ、わかってるんでしょ?
どんどんと血が出る量が減ってることくらい。
だから、不安になってもう片方の手首、指までずたぼろにして求めたんでしょ」

いやだ、言わないで。

「私は変わるけど……
もう、お姉ちゃんから逃げないよ。
お空だってお燐だってそうでしょ?
おそれたり、怖かったり、色々したけど、もう逃げないって……」

気だるそうにゆっくりと服を着なおしながら

「みんな、お姉ちゃんのことが大好きなんだよ」
「こ」

名前を呼ぼうとした声はどこかにつっかえて最後まで出てこなかった。

「思えば、ごめんね。
きちんと、謝るの忘れてたよ。
近づかないでなんていってごめんね。
私、お姉ちゃんに傍にいて欲しいよ」

ゆっくりと私にもたれかかってくる。

「じゃあ、あの子達ともきちんと話してね。
私はもう疲れた~。
ちょびっと目瞑るね」

この子の言っていることは本当?
それとも、無意識で適当に言っていること?

「さとりさまぁ!」

ばたんと扉が開く。
そして、ベッドに駆け寄ってくる。

「すいませんでした」
「ごめんなさい」

二人の声が重なる。

「さとり様をこんなところに閉じ込めてしまって、だけどもうみたくなくて」

ぺろっと傷口をなめられる。

「本当はあたいがするっていったんですけど……
こいし様がどうしてもって、私のせいだろうからやるって」

『大好きです、さとり様』
『好きです、さとり様』
変わるものは怖い。
ころころと変わってしまうあなた達はこわいの。
なんで、どうして?
あれだけ、畏怖して距離をとったのに……
また、戻そうとするの?
そうやって、また私と近づいたふりをして距離をとるの?

「さとり様、あなたはどうやったら信じてくれるんですか?」

お燐が私の掌に舐めながら、キスをする。
くすぐったい、舌がざらざらとする。

「さとり様、好き、好き、大好き。
前みたいに笑って?」

お空が頬にキスをする。
この子の頭の中の私は満面の笑顔とはいかなくても、穏やかな笑みを浮かべている。
今のお空の瞳に写っている私はクマができて、頬の肉もなくなったやつれた姿とは違う。

「変わらないものがあればいいって言ってたけど……
さとり様も、私達と同じように変わるじゃない!」
「わかってても、こわいのよ!」

誰だって、自分のトラウマと向き合うのは怖いでしょ?
久しぶりに叫んだ言葉は途中でかすれた。

「嫌われるのなんて、日常茶飯事よ!
だけど、好きになったものに離れられるのは怖いのよ……
恐れられるのが、嫌われるのが、どうしようもなくこわいのよ!」

妹であるこいしに明確な言葉で拒絶されたことも
ペットたちに心の中時々気まぐれのようにやってくる拒絶の言葉も
それなら、変わらないものを求めていいじゃない。

「あたたかさを知って、捨てられるなら……
ひとりがいいの」

涙が溜まっていく。
感情がせきとめられなくなっていく。

「みんなからひとりになるのは、こわいの」
「じゃあ、私ずっとそばにいます!」

『あ、でも、お仕事どうしよう……』
お空の単純な思考が流れ込んでくる。

「え、あ、ずっとは無理ですけど~。
いられる時間はすべています!」
「あ、あたいもですよ」

『ずっとってどれくらいだろ?』
疑問に思いながらも頷くお燐。

「さとり様……
あたい達ひとりをみんなにしてくれたのはさとり様ですよ」

ぎゅっと舐めていた手を握られる。
少し目を向けると、手首からまた血が出ていた。

「そりゃあ、あたいは変に知識つけたりして、さとり様をおそろしいって思いました……
きっと、この先もそのようなことがあると思います。
だけど、さとり様が私を捨てない限り、一緒にいますよ」

カチャリともう一つの手錠が外れる音。

「今夜はずっとそばにいますよ」

右手にお燐、左手にお空がしがみつく。
上には、そのままこいし。

「「おやすみなさい、さとり様」」

そのまま目を閉じだす二人。
手首からは血があふれ出ているのに、安心できない。
そのまま、何時間後に二人の寝息が聞こえてくる。

「おやすみ、二人とも」

心の声も聞こえない、二人の言葉が返ってこないのを見計らって声を掛ける。


怖い、三人分の温度は怖い。
ぎゅうっと誰かが強く私を抱きしめた。

「こわ……い」


この温度はいつ消えてしまうもの?

to be continued?
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
一応、注意はしたつもりでしたが不十分で、不愉快にさせたかたがいらっしゃったらすみません。
何か、コメント、アドバイス、誤字指摘していただくとありがたいです。

もともと、このお話は前から考えてたものでした。
お母さん要素と強いイメージが多いけど、弱弱しい少女でもいいじゃないがこんな形に……
さとりとアリスと早苗は東方で自傷が似合うベストスリーだと思います。
それぞれ、理由は違いそうですけどね。

前回のリクエストの家族話で特にカテゴリーとかに指定がなかったので、こんな鬱話にしちゃいました。
次はほのぼの話も書いていきたいですね~。
でも、思いつくのがほとんどくらい話という罠!

また、リクエストしてもらえたらありがたいです。
それではありがとうございました。
次回も、どうかよろしくお願いします。
arlys
コメント




1.クルセイダー削除
鬱過ぎる!可哀想過ぎる!
トラウマを呼び覚ますさとりがトラウマを抱える描写が切な過ぎる!

頼む!さとりを助けてやってくれ!
2.名前が無い程度の能力削除
あれ、目から汗が…orz
3.名前が無い程度の能力削除
こういう話好きですわー、この家族の明日はどっちだ;;
>さとりとアリスと早苗は東方で自傷が似合う
小さ目の刃物も似合いますよね、包丁とかウフフ
4.名前が無い程度の能力削除
ナイス鬱。このさとりは少し精神が安定し始めたら布団にくるまってぶるぶる震えてそうです。
これ読んで実は本編の地霊殿って既に関係が崩壊してんじゃなかろうかと思いました。
5.JENO削除
鬱々大歓迎。欝作家仲間として歓迎しますよ(ぇ

変わっていくのは怖いけれど変わらずにいられない。
久しぶりにそんな当たり前のことを思い出した気がします。
6.arlys削除
コメントありがとうございます!
鬱話だったんで、他tかれるかとひやひやしてました。
下カラコメント返しさせてもらいます。

クルセイダー様
さとりが自身のスペルカードで想起でトラウマを掘り起こすのは一番おそれているのがさとりだからかなって思います。
描写がうまく伝わってたら、よかったです。

助けられるかはあやしいですけど、続きというか他の家族全ての視線でお話を書いてみたいです。

2.様
い、今すぐハンカチもってきます!

3.様
そういってもらえてよかったです。
蛇足になったらもうしわけないですけど、続きはちょびちょびとかいてます。

おぉ、確かに似合いますね!
次はそっちけいのお話も書きたいです。

4.様
確かにそんな感じになっちゃいそうですね。
それはそれでかわいいですが(え?
仲良し家族が好きなんですが、実際のところはあやしそうですよね。
それを文章にしてたら、鬱々となってしまいましたが……

JENO様
ぜひ、入らせてください!
書くのも好きですが、読むのもやっぱり好きなんで!

変わっていくのは当たり前なんですけど、第三の目を持っているから、それをまざまざと実感してしまうのってものすごくこわそうです。
でも、変わるのは悪いことといいことでもありますよね。
7.名前が無い程度の能力削除
こういう雰囲気、嫌いじゃないです
まるで物悲しい
8.性欲を持て余す程度の能力削除
確かに血は美味しいし、みてて癒されますからね。ただ、それを見てしまった人はどう思うのでしょう?