真・東方夜伽話

eraudon16

2010/04/21 05:53:45
最終更新
サイズ
73.45KB
閲覧数
1731

分類タグ

eraudon16

紺菜

 ん?

 ドアノブに伸ばした手を止めて、耳をぴくぴくと動かす。
 くぐもった声がドアの向こうから聞こえてきた。

 ひょっとして――

 予感めいたものを感じつつ、ドアを開けて中を覗き込む。
 むわっとした人肌の空気と、濃厚な雄の匂いが私の鼻先に撫でつけられた。

 ベッドの上ではこっちのことなどまったく気にせず、発情真っ最中の獣二匹がいた。

「上手いよ。口の中でとろけちまってるようだ」

 などと歯の浮くような台詞を並べて、仰向けになったあいつは今まで見た事のないような穏やかな微笑なんぞ浮かべている。

「はむ、んっ、ちゅっ。はぁ。ご主人様、嬉しい、ですぅ。んっ」

 髪を撫でられた鈴仙はすっかり上気した顔を上げて、胸の谷間から覗くがちがちのちんぽの先っちょを熱心に吸っている。

 朝も早くから、一体どれくらいそんな真似をしているのか。
 鈴仙の顔はあいつの精液でべたべたに汚されて、棹を挟んだ谷間も垂れ落ちた精液で白く濁り、一目で泡だってるのが判った。
 精液が乾く暇もないほどあの胸と口で搾り取って、枯れることも飽きることもなく射精をしていたんだろう。
 部屋の空気が熱を持つほど。 

 定期的に盛るわねこの二人。
 大方あいつの口車に乗せられて、鈴仙がほいほい連れ込まれた口なんだろうけど。

「ごしゅりんひゃま、朝でもぉすごく、元気で、んちゅ。あふ。すてき、れふ」

「鈴仙こそ。唇も、舌も、使い方をすっかり覚えちまって。俺もう我慢出来な、おっ。おお」

 あいつの身体が震えて射精する。
 びゅっびゅっと勢い良く大量の精液が噴き出て、鈴仙の顔をさらに白く染めていく。
 私が来る前から相当射精していたはずなのに、ちっとも衰えた様子がなくぷるぷるのゼリーのようだ。

「……はぁ、温かい」

 顔に降り注ぐ精液を受け止めた鈴仙は、恍惚とため息を洩らして小刻みに震えている。
 ドアの隙間から覗いてる私にも気づかず夢中になっている姿に、手の平で顔を覆ってため息をついた。

「よぉ、てゐ」

 ため息でようやくこっちに気づいて、あいつが射精直後のくつろいだ表情を私に向けた。
 鈴仙はちらりと一瞥した後、胸を棹に押しつけて包み、精液をローション代わりにくちゅくちょ鳴らして扱き出した。
 以前こっちに気がついた時は二人揃って大慌てだったっていうのに、今回は開き直ってるのかこれっぽっちも動じなかった。

「混ざりに来たのか?」

「冗談。別件よ、別件」

 鈴仙の長い髪を指に絡めていじくるあいつに、私は大げさにため息をついた。
 
 今から混ざれって?
 バカ言ってもらっちゃ困るわ。
 このてゐ様がまんまと先を越されて――じゃなかった。
 よその発情期に当てられたりするかってーの。
 というか、まだする気なの?

「別件ねぇ。今取り込み中だから後でな」

「……んっ」

 あいつは私からふいっと視線を外して、目の前の鈴仙に戻した。

 どうやらまだする気らしい。
 実際、萎びかけていたあいつのちんぽは瞬く間にめきめきと勃起して、挟まれた胸から赤剥けの先っちょが姿を見せている。
 頬に手を差し伸べられた鈴仙はうっとりと目を細めて、その先っちょをちゅるちゅると音をたてて吸い、舌を絡めた。

 すっかり二人の世界を作って、私なんて鼻先にも引っ掛けようとしない。

 ……ムカつく。

「あっそ。せっかく私があんたに耳寄りな話を持ってきてやったっていうのに、そーんな態度を取っちゃうんだ?」

「耳寄りな話ねぇ」

 腕を組んでせせら笑った私に、あいつは気のない声を洩らして鈴仙の髪を撫でる。

「ま、いいけどね。じゃ、そういうことならこの話はおしまい。満足するまで盛ってればいいわよ」

 こいつの気を引くにはコツがいる。
 本人に直接言うよりも、目をかけている相手をダシにすればいい。

「良かったわね、鈴仙。せいぜい今のうちに楽しんでなさい」

 あいつの一番である鈴仙の気を引くことが、あいつの気を引くことになる。
 鼻で笑った私の物言いに、鈴仙の視線がちらりと動く。
 不穏当な空気を匂わせた物言いが気になったのか、視線が私とあいつの間を行き来して、動きもぎこちなくなっていた。

「邪魔したわね。じゃあ」

「――ご主人様。シャワー、お借りしますね」

 戸口から離れかけた私の背後で、鈴仙がそう呟くのを聞いた。
 そそくさと離れていく足音と、浴室のドアが閉まる音が続く。
 ぎしっとベッドが軋む音が聞こえた。
 多分、鈴仙の消えた背中でも見ているんだろう。

「それで? 耳寄りな話ってのは?」

 ここで釣り上げたなんて思うのは素人。
 私は背中を向けたまま人差し指と中指を立てて見せた。

「貸し二つね」

「あん?」

「いい話ってのは時価なのよ。聞き逃したら高くつくなんて常識でしょ」

「それが貸し一つは判るとして、もう一つは何だって言うんだ?」

 薬指を折り曲げた私に、あいつは怪訝な声で訊ねてきた。
 私は振り返って、すたすたとベッドに近づきひょいと跳び乗る。
 あいつの折り曲げた脚を跨いで間近から顔を見上げると、耳を貸すようちょいちょいと指で招いた。

 寄せられてきたあいつの耳元にひそめた声で囁く。

「鈴仙がへそを曲げないよう配慮した分」

 今もしとしととシャワーの滴がタイルを叩く音が聞こえてくる方向を、目で指し示した。
 あいつは私の視線を追って閉じた浴室のドアをしばらく見つめて、再び私へ戻す。

「借りは一つだ」

「……ま、いいわ。負けといてあげる」

 どっちを貸せたのかなんて明白だし、約束させてしまえば、不思議なことにこいつは反故にしない。
 もぎ取った貸しをせいぜい高値でふっかけてやろう。

「で。俺の兎は一体どんな話を運んできてくれたんだ?」

 ここにきてもったい振ることもない。

「私があんたの味方だってこと」

 私は手で壁を立てて、耳にかじりつきそうなくらいの距離で教えてやった。
 


xxx  xxx



 床をきしきしと軋ませて足音が近づいてくる。
 何やらくぐもった話し声を伴っているが、内容は良く聞き取れない。
 重要なのは距離感とタイミング。
 私は話し声を無視し、木と木が擦れる甲高い音に意識を傾けその時を待った。

 きしっと、近づいてきていた軋み音が壁一枚隔てたすぐ向こうで聞こえて止まった。
 カチャリと金属の噛み合う音の後、私が見ている前でノブが回った。

 勝機っ!

 私はドアのすぐ横まで動かした卓上から跳びたった。

 大きく振りかぶってえええぇっ!

 振りかざすのは家具として用意され、今は鈍器として私の両手で握る一脚の椅子。

 私と下郎とでは身長差が大いにあるため、それを埋めるのに部屋の家具を利用した。
 狙いは一点。
 人体の急所である頭頂。
 下郎はイナバを私の目の前で穢して貶めて見せたつもりだろうけど、その程度で私が大人しくなると思ったら大間違い。
 それも見抜けず油断して戒めを解くなど、実に浅はかだ。
 私自身、この自らの中に解き放たれた獣を抑えることができるとは思えない。
 加えて言うなら、例えあらゆる能力が封じられ奪い去られたとしても、私は私を見失ったりしない。
 私がこの場にかどわかされて以後、打ち倒すべき相手がこの下郎に他ならないことは揺るがない真実。

 この蓬莱山輝夜を敵に回したこと、地獄の底で悔いるがいーっ!

「死ぃぃぃぬぅええええええ!」

 気炎万丈吐き散らし、鬨の声と共に落下。
 ひょこりと現れた下郎の頭目掛けて、体重+重力+大モーション=破壊力な一撃を――

 見舞おうとした私の目前で、ドアノブを握っていた手がひょいと引っ込んだ。

 あっちょっ待ってこれなし

「えげっ」

 空中にいた私は咄嗟の姿勢制御も間に合わず、椅子を振り上げたままびったんと床に叩きつけられた。
 目の前で火花を散らしながら、ごろごろと床の上を転がり回る。

 鼻が!
 自慢の高い鼻が!

 私は振りかぶっていた椅子を放り出し、鼻を押さえて床の上で悶絶した。

「こおおおおおおぉっ!」 

「……なにやってんの」

 開いたドアの向こうからひょこりと首を出した下郎は、心底呆れた声を出した。

 こうして第一回下郎撃滅大作戦は、遺憾ながら失敗に終わりました。
 かしこ。



「馬鹿じゃねーの。ほんと、マジデ。馬鹿じゃねーの」

 私の言いつけに従い卓と椅子を元の位置に戻しながら、下郎がのたまった。
 品格の欠片も感じられない育ちの悪い物言いに、私は典雅に返してやることにした。

「バカって言う方がバカなんですー! 二度も言ったから大バカなんですー! バーカバーカ!」

 あまりの品格の差からか、下郎は動きを止めて目を剥いた。

 ふっ。
 これが貴賎の違いというものよ。

「……今時小学生低学年の餓鬼でさえ、もうちっとマシな屁理屈こねるってのに」

「なにを言ってるんだかよくわからないけどその言葉、私への侮辱と受け取ったわ! とうとう月面殺法を見せる時が来たようね!」

 ばばばばばっと余った袖を鳴らした予備動作のあと、夢想・満月の型を描く。
 家具をそれぞれ元の位置に戻した下郎は、腰に手を当てため息を一つ吐き出した。

「あのな、お姫さま。大概にしとかねぇと泣かすヨ? マジで」

「大口もここまで来ると笑えるわね。私の本気というものを見せてあげましょう。掛かってきなさいホアッ!
 〆たあとは小さなお子様にお見せできない下郎の合い挽き肉グラム盛りにしてやるわ! ホアッ、ホアアアアッ!」

 貫き手貫き手!
 地獄三日突き!

 身長差からちょうど良い位置にある下郎の鳩尾に、袖越しの貫手を連打した。

「飯抜くぞ」

「なんて思ったりしたけれど今朝のところはこのくらいで勘弁してやるわ。運が良かったわね!
 今日の朝ごはんは何かしら? さあほらなにをぐずぐずしているの。早くご飯を持ってきなさい!」

 私は直ちに攻撃を中断し、卓について下郎を急かした。

 今朝目が覚めてから何も口にしてないから、いい加減お腹もぺこぺこだし。
 別室で見つけた壁と一体型になった不思議な道具で、水だけはしこたま飲んでいるけど、姫ともあろう者が水っ腹では話にならないわ。

「ほらいつまでそんなところで突っ立っているつもり? 私に尽くす栄誉を授けてあげると言っているのよ。感激して直ちに奉仕に努めなさい」

「ナチュラルに上から目線なのは、勝ったつもりでいるからなのか?」

「過去は過ぎ去り及ばざるがゆえに、永遠を得た私に敗北の二文字は存在しないのよ」

「こおおおっ、つってたのは負けじゃねぇのか?」

「それは言ってみれば試合に負けて勝負に勝つとか、骨を切らせたら肉も削がれたってところかしら?」

「肉を切らせて骨を断つ、な。骨を切られた上に肉まで削がれてどうすんだよ。明らかに一方的じゃねぇか」

「この下郎は些細なことも一々重箱の隅をつつくわね」

「突っ込み所が有り過ぎておっつかねぇんだよ」

「箸より重いものを持ったことのない姫君なんだから、丁重かつ過保護に扱って扱い過ぎることはないわ。朝ごはん何?」

「さっき思いっきり椅子振り上げてなかったか? ……あー、夏野菜の冷製パスタにビシソワーズだ」

「そう、なるほど。いいでしょう、配膳を許可します」

「目ぇ泳いでんぞ。判ってねぇだろ? ざる蕎麦につゆをぶっ掛けたようなもんと、冷やし汁みてぇなもんだからな」

「これで勝ったと思わないことね!」

「こんな虚しい勝利はいらねーよ」

「なによ、これ」

「あのな、今説明しただろ。アルツハイマーか? アルジャーノンに花束なのか?」

「この私が、ナイフやフォークを扱えるとでも!?」

「……扱えねぇの?」

「言わずもがな!」

「また食わせろって事デスカ。ソウデスカ」

 用意した朝食を卓上に並べた下郎は、ため息まじりに頭をかきながら私の向かいに座った。
 フォークを取り上げると、緑と赤の彩り美しい蕎麦のような麺類を器用に絡めて巻き取っていく。
 思った以上に流麗な手つきと巻き取られる様子に、私は感嘆の声を咽喉の奥で留めた。

「ほら」

 スプーンですくったつゆにたっぷりひたして絡め、私の口元に差し出してくる。
 私はフォークの先に刺さった半分に割られた赤い実と、下郎の顔を見比べ眉をひそめた。

「毒見は?」

 一服盛られたことはいまだ記憶に新しい。
 というか昨日の今日だし。
 また何か怪しげな薬を仕込んでいないとも限らなかった。

 私のけん制に、下郎の眉がぴくりと跳ねた。

「そりゃ構わねぇけどさ。お姫さまは俺が口つけたもんで飯食うのか?」

 ふむ。
 それは由々しいわね。

 下郎にしては機転の聞いた言葉に、思わず袖の奥で唸った。

「その配慮に、今朝は五点ほど加味してあげましょう」

「感心されてるのか舐められてるのか、判断が難しいとこだわな」

「そのまま疑り深く育って、将来は優れた検非違使になり身内の不正を正しなさい」

「顔を合わせる度に適当な事言ってくる親族みてぇだな」

 ぼやく下郎を無視して、フュークの先で丸く絡められていたパスタとやらを頬張る。
 しゃきしゃきとした野菜の歯応えと赤い実からこぼれる酸味の利いた果肉。
 麺は始め少し固く感じたけど、歯を入れるとぷつりと切れていく。
 ぷりぷりの食感とさっぱりとした後口は美味だった。

 ここは不満しか感じられない待遇ではあるけれど、食事に関しては物珍しい上に美味しいものが供される。
 私はもぐもぐと噛み締め良く味わった後、採点を下す。

「-八点」

「……マイナスの方向に加味されたのか?」

「何を言ってるの。むしろこの待遇においてこの水準は本来あり得ないのよ? 次はそっちの肘こわーすを試してみるわ。物騒な名前ね」

「ビシソワーズ、な。何その投手殺しな食い物」

 下郎は言い直したあと、白く濁った汁をスプーンですくった。
 私はため息を一つ憚り、差しだされてきたスプーンに口をつけた。

「(ずずずずずっ)」

「お姫さまよ。音を立てないのがマナーなんだが」

「まったく一々細かいことばかり口うるさいこと。庶民の程度に合わせているのよ。ああ、私はなんとポピュリストな姫君なんでしょう」

「ポピュリストは大衆迎合主義者って意味もあるから、必ずしもいい意味じゃねぇんだぜ?」

「あらそうだったっけ。まあ迎合するのはいつの世も下々の者たちよね。米がないなら砂でも噛んでればいいじゃない」

「世間知らずなどこぞの王妃も目じゃねぇ発言だな、そりゃ」

「ふん。唯一無二の姫にして絶世の美少女であらせられる私に比べれば、地上の王妃などご学友どころか取るに足らないゾウリムシよ。愚民ともども私の前にひれ伏せばいい!」

「月から落ちてくる時代と場所が間違ってるな。古代エジプトとかだったら、随分面白れぇ事になってたろうによ」

 下郎は再び冷たいスープをすくい、滴が伝って落ちないよう器の縁で撫で付けていた。

「スプーンの腹を舌に乗っけて、唇で拭うようにして飲んでみな」

 口を開けて待つ私に、給仕の手を止めそんな二言を言づけてきた。

「……私に指図するつもりかしら?」

「おっとこりゃ失敬。下品なお姫さまに洋食のテーブルマナーは難しくあられましたかね?」

 睨みつける私に、へらっと軽薄な笑みを返した。

 イラッ。

「中途半端な敬語を用いたところで、却って見苦しいと言ったはずよ。本来なら私と口を利ける身分ですらないというのに。身の程知らずにもほどがあるわ。
 いいでしょう。そこまで言うのなら貴さの片鱗というものを、下郎に見せてあげるとしましょう」

 私は前髪の位置を直し、差し出されたスプーンに楚々と口元を寄せる。
 スプーンを歯に当てず、静かに口の中の舌で受け止め唇を閉じる。
 なだらかな表面に唇を当てて口を引き、スープだけを口の中に残してスプーンを抜き取った。

 音をたてないのは勿論、挙動所作身体の運び一つまでに気を配った完璧な一口。
 当然咽喉を鳴らして飲み込むなどという真似もせず、口元を袖で覆って下郎の反応を窺った。

「……」

「何そのドヤ顔。ひょっとして、一口上手くいったからってテーブルマナーが身についてる、とか言い出すのかい?」

 下郎はへらへらと笑っていた。
 苛立ちが口元に表われ引きつったりしたけど、袖で隠しているから大丈夫。

「やれやれ、これだから下郎は困るわ。私の一口によって醸される違いや差が判らないとはね」

「はいはい、そうですね。お姫さまにゃハードルが高かったのネ。まあ、マナーなんて気にしねぇでずるずる啜ったら? そっちのがお似合いだしな」

 下郎は軽んじた態度で受け流し、パスタをくるくると巻き取っていく。
 フォークの先で皿を引っ掻くような真似もせず、手馴れた手つきで適量だけをからめ取っていく手管を目の前で見せ付けられた。

 下郎のセンスと観察眼がないだけだというのに、これじゃまるで私が非を認めず駄々をこねているようじゃないの。

「……」

「腹ぁ減ってんだろ?」

 イライラッ。

 差し出されたパスタの奥に浮かんでいる、見透かしたような笑いが気に障る。

 そう。
 そっちがその気なら、受けて立つまでよ。

 私は下郎に供されながら、優雅に食事を続けた。
 平安の時代に身につけた作法と、それ以降も決して捨てることのなかった姫としての矜持をもって相対した。

 真剣になった私に、下郎も無駄口を叩くことなく給仕に専念した。
 私の視線にさらされても動揺することなく、見慣れない料理を丁寧に私の口元へと運んだ。
 咀嚼一つにも気を遣いながら、ふと思いついたことがある。

 そういえば。
 昨日の食事の時――結局この下郎に一服盛られたのだけど――、不躾な真似や音を立てたりはしなかったわね。
 
 馴染みの薄い料理ではあったけれど、明らかにマナー違反と思われる行動を取らなかったことを思い出していた。

 静かな食事は器の上から料理がなくなるまで続き、無くなった後も互いに言葉はなかった。
 下郎は空になった器を重ねて席を立つ。
 私は感想を問いただすことも勝ち誇ることもせずに、その姿を目で追うだけに留めた。
 久し振りに神経の張る食事で気疲れもあったけど、それ以上に私自らの矜持が口を開かせようとしなかった。

 食事の作法が問われるのなら、食後の行動も礼をもって振る舞うべき何だから。

 食器を手にして私の前から立ち去ろうとするその間際、

「やるじゃん」

 下郎はそんな一言を残していった。

 私は下品な赤い背中がドアの向こうに消えるのを見送った。

「まあね」

 遠のいていく足音に向かって、小さな呟きを投げかけた。






 そんなことが朝にあったりしたけど、それはそれとして。
 あの下郎が目下絶賛敵対中であることに変わりはないわけで。
 今朝の失敗を踏まえて、より効果的な作戦を水面下で立案・計画していた。

 ぶっちゃけると他にやることもなかったし。

 私は部屋の中に設けられた別室で、新たな武器となりえそうなものを見つけていた。

 握り締めたそれを壁に打ちつける。
 幾度も繰り返すことでだんだんコツがわかってきた。
 腕を振るのではなく、当たる直前に手首を使ってスナップを利かせる。
 一度目は気の抜けた音しかしなかったけれど、今は鞭を打つかのような小気味良い音が響き別室の中にこだました。

「……中々悪くないわね」

 私は水に濡らした手拭いを壁からはがして、しげしげと眺めた。
 別室に用意されていた一枚と、ひねれば大量に出てくる水を利用しただけのお手軽な武器。
 椅子を振り上げるよりも疲れなくて済むし、小振りで携帯性にも富む。
 唯一の難点は常に濡らしておかないといけないことだけど、奇襲に用いる使い捨てと考えるならこれは充分有用ね。

 狙うとしたら顔面ただ一点。
 無条件で肌が露出している上に、目とか口とか重要な器官が備わっている。
 不意打ちを食らわせてひるんだところで、椅子でぼっこぼこにしてしまえば勝ったも同然ね。

 そう。
 今朝の失敗は欲張ってしまったからいけなかったのよ。
 一撃で仕留めることに固執したゆえのつまづきだったわけね。

 速さに重きを置いた先制攻撃から、鈍器による威力重視・大モーション攻撃で確実に仕留めればいいわけだ。 

 これほど短時間で教訓を得て、なおかつ大幅な改善案を思いつくだなんて、さすが私。
 美しさに智謀まで兼ね備えているなんて、非の打ち所がなさ過ぎて怖いわ。

「ふふ。見てなさい下郎め。ドアを開けた瞬間きっついのをお見舞いしてやるわ」

 近々訪れるあの男の顔面を思い浮かべて、ずいぶん手に馴染んできた濡れ手拭いを壁に向かってしなられる。
 ベチーン、といかにも痛そうな音が私の耳朶を打ち、直後に下郎の悲鳴が続くかと思うと否応なく血沸き肉が踊った。

「うっわ、痛そうな音。姫様って結構えぐいこと思いつきますねー」

「ふふん、これも支配者の嗜みといったところよ。これからは教育が足りないものはビシバシいくわよ。ビシバシ」

「でも変に教育に力を入れて知恵を持たせたりしたら、かえって扱いづらくなると思いますよ?」

「……ふむ、それもそうね。教育よりもしつけの段階で留めて置く方が効果的ね。
 帰ったらまずイナバのしつけからね! 幹部に取り立てたからには部下に示しをつけないと!」

「うわー、楽しそう。私も協力しますウサ」

 ん?
 私、誰と話してるんだろう。

 振り向くと戸口に因幡が立っていた。
 人目を逃れて竹林の奥に永遠亭を構えて過ごしているうちに、いつの間にか加わっていた地上の因幡。
 というより、永遠亭に集まってきたイナバの大半が気がついたら増えてたって感じだけど。
 その因幡がちょこんと立って私の目の前にいた。

 どうしてこの子がこんなところにいるの?

「さては、貴方――」

 微笑みかける因幡を前に、私はよろめき口元を覆った。

「私を助けに来たのね!?」

 永琳でなかったのは意外だったけれど、なにかと目端の利く因幡が真っ先に駆けつけてきたのは充分頷ける範囲だった。
 警備担当のイナバと違って思考も柔軟だし、放っておくと遊んでばかりいるイナバたちをまとめ上げる統率力もある。
 統率力の方はもっぱら悪戯志向に傾いてるけど。

 とにかく増える一方のイナバを有効活用しようということで、抜擢したうちの一匹。
 少し固いけれどその分堅実な月のイナバを表において、搦め手が得意だけどむらっけも多い因幡を裏へ回し、互いの足りない部分を補い合えば本来の力を存分に発揮できるかしら、と念頭に置いたそれぞれの配置だった。

 月のイナバは遅れを取ってしまったようだけど、因幡がこうして目の前にいるってことは、どうやら私の采配に狂いはなかったようね。

「となれば、まずはあの男をひっ捕らえるところからね。イナバともども簀巻きにでもしておきましょう。
 因幡。そのあと貴方は永琳をつれてきて頂戴。それでこのバカげた有り様もジ・エンドよ」

「簀巻きにするだけでいいんですかー?」

「なにを言ってるのよ。簀巻きにしてからが私のお楽しみタイムよ。ふふふ。あの下郎にたっぷりと吠え面かかせてくれるわ。
 噴水みたくなるまで鼻から水を流し込んで、全身という全身をくすぐり倒してやるわ。力が戻ったら永遠に笑い殺してあげようかしら!? これほど無様で惨めな死に様はちょっとないわね!」

「じゃあ姫様、まずはその手に持ってるのを頂きますねー」

「これを? そうね、貴方がいればこんな貧相な武器など必要ないわ。手拭いなんだから顔を拭うためのものなんだし」

 ひたひたと近寄ってきた因幡に濡れた手拭いを渡して、指先の滴を散らす。
 さっきまでは孤立無援が過ぎて少し動揺してしまっていたけど、改めて考え直すと武器と言い張るには心許ないにもほどがあった。
 私から手拭いを受け取った因幡はスキップでもするような軽い足取りで戸口に戻っていく。

「はいこれ」

 そして手にしたそれを、戸口の向こうへと差し出した。

「……ん?」

 にゅっと手が突き出てきたかと思うと、手拭いを受け取りすぐに引っ込められる。
 私は手が引っ込んだ方向を凝視して、視線を因幡に戻した。

「今、誰に」

 ベチィッ!

 私の言葉を遮って、濡れた音が肌を叩いた。
 まるで本当に鞭で打たれたかのように私の身体が強張り、首をすくめていた。

「わぉ。迫力あるじゃない。道具も使いよう、使い手次第ってこと?」

 空気の震えすら伝わってきそうな音を耳にしても、因幡は驚いた様子もなく楽しげに話しかけていた。
 私の位置からは見えない、開け放たれたままのドアの向こうにいる誰かに向けて。

「椅子の次はたっぷり水を吸わせたタオルねぇ」

 太い声音と共に、場所を譲った因幡の隣に姿を現したのは、下品な赤い上着を身につけた男。

「いいセンスだぜ。悪くねぇ」

 私をここに閉じ込めるあの下郎だった。

 何故。
 どうして。

「言った通りだったでしょ? 姫様のことだからさぁ、ちょっと閉じ込めたくらいじゃぜんぜん堪えないって。
 一回襲撃に失敗したからって、めげるようなやわなたまじゃないんだから」

「だな。てゐの助言がなかったら今頃脳天やられてぶっ倒れてたかもな」

「ふふーん。姫様がやりそうなことくらいは想像はつくわよ。なんたって、これでも結構長い付き合いだったしねー」

 下郎は濡れた手拭いを眺めて、振り具合を確かめるように手首のスナップを利かせている。
 私は抱く疑問を因幡に向けた。

 どうして貴方が、その下郎の隣にいるの。
 そんな親しげに口を利いたりしているの。

「姫様、そんな顔しないで下さいよー。勝手に勘違いしたのはそっちの方ですし。私がここにいるってことは、姫様と同じ状況ってこともありえるんですし?」

 言葉に出来なかった意図を視線から読み取り、因幡は笑った。
 永遠亭で見かける時と同じ、何か悪戯を思いついた時の笑い方と何も変わらなかった。 

「ほら、私って可愛くってか弱いだけなただの兎ですよ? ちょびーっと長生きしてるだけの。今の姫様とおんなじで」

 因幡はそう言ってぴょんと男の背中に飛びついた。
 そのままよじ登り、肩に顎を乗せて目を細ませる。

「だから、こいつのペットになっちゃいました。姫様の命令は聞けませーん。残念♪」

 そして、私の見ている前で唇を吸った。

「んっ、んふ、ん。んふー……」

 重ねた唇と唇の隙間から荒げた吐息を洩らし、くちゅくちゅと濡れた音を漂わせている。
 昨日、イナバとの間で見せられた貪るように浅ましい口付けだ。
 それは接吻と呼ぶにはあまりにも艶かしくて、耳立つ音に肌が粟立っていくのがわかった。

「な、なにを……その娘に何をしたの!」

 私は呑まれてしまわぬよう奥歯を噛みしめ、厳しく下郎を睨みつけた。
 私が問い質しても下郎は答えない。
 因幡の黒髪を撫でる手と、薄く笑った目元が雄弁に語っていた。

 心の強い因幡をここまでにしてしまうほどの何かを、この下郎が行っていたということだけは確か。

「この外道が!」

 私の罵声が届いた素振りもなく、下郎は因幡の唇に執拗なほど舌を這わせていた。
 因幡の方も瞳を潤ませ熱心に舌を口から差し出し、互いの舌と唾液が絡み合っていた。

 屋敷の有力なイナバを、二匹立て続けに奪われてしまうなんて。
 それもまさか因幡まで屈服してしまうだなんて。

「んー……ふふ。私がここでどんなことされたのか、姫様に教えてあげるってさ」

 下郎の意志を代弁するように、因幡は私に微笑んできた。

「だ・か・ら。姫様も早く素直になって幸せになっちゃお。ね♪」

 本当に、屋敷で暮らしていた時と何も変わらない笑みだった。



 まるで私の言葉の意趣返しでもするように、簀巻きにされた。

「あはっ。ほら、ちゃんと見えてる姫様? こいつの、ちんぽが入ってるとこっ」

 その上でベッドに転がされて、見せつけられた。

「こうして、んっ、奥まで入ったちんぽ。ん、んんっ。抜くのがぁ、ああ、あぁ~……気持ち、いいのっ」

 閨で交わされる秘事が、見たことはおろか聞いたことすらない行為が、目の前で憚りもなく行われている。
 毛布一枚床に敷いた上で、逆さまになった因幡の身体が縦に揺すられる。
 背後から腰に腕を回して支えているあの男は、むき出しの汚らわしいものを、信じられないことにイナバの不浄の穴へと突き入れている。
 口にするのも汚らわしい――肛門を使った房事が、同室で平然と行われていた。

「うっ……はっ。お尻、広がって、あっ、あっ。お尻、気持ちいっ」

 穢れ以外のなにものでもない行為に、因幡は狂乱めいた声を上げている。
 身体がすっかり火照って赤らんでいるのは、決して窮屈な格好で血が滞っているわけではない。
 男が因幡の肛門に舌をつけ、水飴のような粘液を絡め、指で解していく過程のうちに、紅潮していく様子を一部始終見せつけられていた。

 昨日のイナバと同じ――或いはそれよりも艶っぽい声を出して、因幡は穢れにまみれて心地良さげにたゆたっている。
 赤黒く醜悪な肉の棒は粘液のぬめりを帯び、とても入るだなんて思えなかった因幡の雛菊を押し広げて、まるで干上がった沼の底を探るように動く。
 私は文字通り手も足も出ない格好で、見るに絶えない光景を見せ付けられても、視線は逸らせなかった。

 顔を背けようとするたびに、

「かぐや」

 あの男の声がそれを制止する。

『目を逸らしたらお前を犯すぞ』

 男が私の名を口に挙げるたび、あの刃物のように鋭い声音が耳の奥から甦ってきた。

 イナバを犯したように。
 因幡を犯しているように。
 常軌を逸しているとしか思えない方法で、穢れを身体に注がれる。
 想像することすら汚らわしい。
 まるで見えない手に頭を押さえつけられているように、私の首は固まっていた。
 黒い瞳にじっと監視されて、私はおぞましい様子をただ見つめていることしか出来なかった。

 だからせめて、睨み返していよう。
 私の意志すら飲み込まれてしまわないように。
 唇を噛んで、私を覗くように窺う一対のまなこを睨み続けた。

「なぁにぃ……私を抱いて、あっ、るくせに…姫様の名前ばっかり、呼ぶ……ん、んっ。なんてぇ」

 恍惚に染まっていたイナバの表情が不満そうに歪む。
 男の腰に自ら絡めていた脚を片方抜くと、胸元にぺたりと足の裏を押し付けた。

「もちょっと、んっ。気ぃ使いなさいよぉ」

 足の指を小指まで器用に動かし撫で回す。
 それはひどく艶かしくて、とてもあの因幡が行っていることだとは信じられない。
 この場で男からの穢れを一身に受けるあまりに、狂気に陥っているようにしか見えなかった。

 男は腰の動きを止めると、胸元を這う因幡の足を手に取る。
 腿の付け根から膝、脛、くるぶしからつま先まで。

「悪かったな、てゐ」

 いやらしい手つきで丹念に撫で回した後、よりにもよって口をつけた。
 舐めている。
 因幡の足の指を一本ずつ、唾液の音をたててしゃぶり始めた。

「んふ。くすぐったぁい」

 唾液を塗りつけるように足の裏も舐められ、くすぐったそうに身じろぎしながらも足を引っ込めようとしなかった。
 午睡を楽しむ表情で、因幡がさかしまに私を見上げてくる。

「どぉ? これがアナルセックス」

 因幡が囀る姿は、まるで時期外れの徒花を目にしているような錯覚に囚われる。
 止まっていた男の腰がまるく円を描き始めて、その徒花が濡れた花弁を開いていく。 

「姫様にはちょーっと、刺激が強かったかな?」

 おぞましくも艶やかなその笑みから、私は視線を逸らすことが出来ない。
 咽喉が強張って声もないまま、ただ私の頭の中にこの交わりがアナルセックスと呼ばれるものなのだと明確に刻まれた。

「なぁに、そんな目ぇしてぇ。姫様の考えようによったら、んく、アナルセックスも悪いものじゃ…あっは…ないのよぉ?」  

 不浄の極みに達したような真似をして。
 穢れを自ら塗りたくるようなこの行為が。
 一体、私にとってどう悪いものでないなどと言えるの。

「……なにがよ」

 たったその一言を返すだけで、私の咽喉はどうしようもなく震えて声音が乱れた。
 因幡はうっとりと目を細めて、両手を自らの股間へと伸ばした。

「だってぇ。私、まだ処女だから」

 自らの指で、閉じていた肉襞を左右に押し広げて見せた。
 笑みが徒花ならそれはまさしく熟れた果実そのもの。
 朱の差した表皮が左右に割られ、柘榴に似た赤く潤った果肉が姿を見せた。

「あはっ。すごいでしょ? 私、こいつといっぱいアナルセックスして…お尻の穴掻き混ぜられて…気を失うまでイかされてるのに…おまんこはまだ新品のまま」

 因幡は指先で処女地の入り口をなぞりながら、空いた手は裂け目の下にある小さな突起に触れる。
 突起を擦り、摘む指先がぬちゃと湿った音をたてる。
 因幡の果肉が瑞々しく濡れているのは、男が用いた水飴のようなもの以外の液体が染み出しているからだ。

 果汁でぬめる因幡の指先は滑らかに蠢き、私の目の前で慰め始めた。

「姫様も、んっ、今までずっと処女、あっ、はぁっ、なんでしょお? ……こいつに頼んだら、い、クリちゃん気持ちいっ、処女のままでいられるかもしれなっ、あっあっあっ」 
 
 今までどこか余裕を持っていた因幡の声が、切なく乱れ始める。
 呼吸に合わせて指の動きも早まり、それは男の動きにも伝わっていった。
 今まで杵でもち米をこねて馴染ませる動きだったのが、小刻みに上下に突く。
 因幡の両足をぐいと前に倒して、浅く勢い良く動き始めていた。

「あっ、あっ、こすれ。ひっ、壁がこすれてっ、ひっ、焼ける、お尻焼けそうっ」

 男の身体の下で因幡が悶える。
 悶えながらも手は股間に伸ばされたまま慰め続ける。
 丸めていた背中が反り返り、因幡の身体が弧を描くのと合わせて男は膝立ちになり、小さな身体を執拗に蹂躙する。
 肉を打つ音に混じり形容しがたい音がひっきりなしに聞こえてくる。
 男の肉の棒と、因幡の不浄の穴が擦れて、空気が吐き出される音だ。

 因幡の体内を駆け巡っているのは官能なのか、それとも言葉にすることも忌まれるなにかなのか。
 涎と涙で顔を濡らしたその表情にかつての面影はなく、痴愚に成り果てたようだった。

「ぐっ」

 うめき声を洩らした男が、一際大きな動きでてゐの腰を突き上げた。
 因幡の脚を抱いて全身をおこりのように震わせる。
 ぎしっと歯が軋む音が聞こえた。

「あ、あっ、あがっ――っの、そ、そうろおおおぉっ!」

 床に敷いた毛布に爪を立てた、因幡の声が感極まった。
 男の震えが伝播し大きく震えた後、全身から一気に力を失い毛布の上にくたりと崩れ落ちる。

「あ、へひっ、わらひ、まらイッてなへぇ……」

 どれだけ無惨な目に合わせても、これほどの顔にはなりはしない。
 因幡は丸い尻尾を痙攣させるように振りながら、完全に気をやり尽き果てていた。
 男はぐったりと力を失った因幡の身体を軽く押して、不浄の穴からそれを引きずり出した。

 今まで因幡の小さな身体の中に収まっていたのが悪い冗談のように思える。
 赤黒い肉の棒で、表面に浮かんだ青い血管がよりいっそう醜悪だ。
 男は見せ付けるように因幡の腰を固定しており、窄まっていた雛菊は花弁を広げ大輪に咲き乱されていた。
 私が見ている前で赤い菊が収縮し、花の蜜とは程遠い白く濁った穢れをこぷっと吐き出した。

 それは昨日も目にしたもの。
 部屋に一人残されて、反射的に汚らわしいものだと思い至り顔を背けたもの。
 それが何なのか、今の私には判る。
 男の子種。
 イナバの胎に直接吐き出したものを、今は因幡の肛門の奥へと注ぎ込んでいた。

「……っ」

 私は、それから目を逸らさなかった。
 睨む。
 男を睨む。
 私をじっと凝視してくる男を睨み返した。

 私たちの視線が交錯し弾指を奏でる。

「ひっ」

 先に視線を外したのは男の方だった。
 あの気味の悪い音を薄く吊り上げた口元からこぼし、何事もなかったように衣服に袖を通し始める。

「ひひっ、ひっ」

 私の視線を感じて嗤っているのか、無視して嗤っているのか。
 生々しい痕そのものの笑みを口元に浮かべ、赤い外套に袖を通したあと私に向き直った。

「ひひひっ、ひっ」

 私に近づいてくる。
 ――来るな。

「ひひ、ひひひっ」

 背後からずるりと凶暴な匕首を引き抜く。
 ――来ないで。

「ひっ、ひっ、ひっ」

 鈍い輝きが私に迫る。
 ――これ以上。

「下がれ、下郎!」

 声が出た。
 裂帛の気迫、とまではいかなかったけど、胸に巣食っていた怯懦を怒りで押し流した。
 私の怒声に、男は奇妙なしゃっくりと一緒に身動きも止めて私を見下ろした。

 須臾を腑分けするかのように、分厚い匕首を握る男の右手が動いた。
 簀巻きにされていた私の身体から、圧迫感が解きほぐされるようにするりと落ちた。

 男が切った。
 私を縛り上げていた縄だけ、親指ほどに太いそれを、頬を撫でる淡雪ほども感じさせずに。

 色の抜け落ちた表情で、腑分けした臓腑に向ける眼差しを私へと注ぎ、男は匕首を背後に収めた。
 私から興味を失ったように振り返り、ぐったりとした因幡の身体を抱き上げると、脱ぎ散らかしたままの衣服を肩にかけて部屋を後にする。

「ひっ」

 いや、その前に。

「ひひっ! ひひひ! ぃひひひひ! いぃ~ひっひっひっひひひひひぃ~~~っ!」

 ひどく耳障りな音を残していった。

 私は目を逸らさなかった。
 赤い背中がドアの向こうに消えるまで――消えた後も、虚空に撒き散らされた哄笑を睨みつけていた。

 拘束が解かれた後もそのままでいたのは、支えていたため。
 私の意志を支えていたため。
 私の身体という伽藍に閉じ込め、それを越えることのない意志を必死で守り続けた。 
 私が、壊され崩れてしまわないように。

 私は私を守れただろうか?



xxx  xxx



 ……ん。

 私はひんやりとした感触で目が覚めた。

「ん…んん~……」

 目が覚めたと言っても快眠とはかけ離れていて、ぐったりと気だるい。
 身体は疲れたままなのに、眠気の感じられないこの重たい感覚に覚えがあった。

 まぁーた気絶するまでされたのね。

 あいつとする時は大抵そうなったから、心当たりなんて嫌でも出来る。
 いい加減慣れてきたんだけど、気絶するのに慣れるってのもねぇ。

 言葉にするのもめんどくさく頭の中でぼやきながら、どこにいるかは気にしなかった。
 気絶した後はなんだかんだあったりしても、最後には部屋のベッドまで運ばれてきた。
 あいつがぶっ倒れたりしない限りは。
 だから今回も、きっと私の部屋のベッドの上で横になってるんだろう。

 ため息一つするのもだるくて(まあいくら疲れててもため息くらいはするんだけど)、横になったまま気持ちいい角度を探した。
 眠いわけじゃないんだけど、とにかく何をするのもめんどくさい。
 そのうちやってくる眠気をごろごろしながら待っていたい気分。

 まぶたを閉じたままもぞもぞと寝返りを打っていると、何か温かいものが私の身体を撫でていった。

「……んぅー?」

 一拍遅れで腕を巡らせる。
 身体を撫でていった何かを探している内に、撫でられた場所がすっとしていくのを感じた。

 なんだろ。

 撫でていった方向をおぼろげに探っていくと、指先が何かに触れた。
 叩いて、触って、何に触れているのかを探っていく。
 手だけだとなんだか良く判らなかったから、なけなしの気力を奮い起こして重たいまぶたを持ち上げた。

「……むぅー」

 特に意味もなくうなる。
 目の前がすっかり霞み川底から水面を見上げているような気分で、私は何度も目元を擦った。
 その手が何かに握られた。

「よう」

 目元が温かいもので拭われる。
 濡れたタオルで顔が拭かれているんだと気がついて、次に聞こえてきたのが挨拶だということが判った。
 眠ってたわけでもないのに頭が寝ぼけてるのは、厄介だなぁ。

 三拍ほど遅れてから挨拶を返す。

「……はよ」

 重たい頭も、はれぼったくて仕方なかったまぶたも、顔を拭かれて少しすっきりした。
 あいつは濡れタオルを手にして、私が横たわるベッドの端に座っていた。
 私の身体を拭いていたんだろう。
 すうすうして気持ちいい。
 布団が掛けられた私は何も身につけてなくて、気絶してたのは大体五分かそこらくらいかなぁと目安をつけた。

 意識がはっきりしてきても身体はやっぱりだるかったから、私は横になったままあいつを見上げていた。
 なんとなく言葉が出てこなかった。
 だからなのか、あいつも口を開かなかった。
 へらへら笑うでもなく、ぞっとする無表情でもなく、なんとなく疲れた感じに見えた。

 そりゃあそっか。
 朝っからずーっと盛りっぱなしだったわけで、もっと言うなら昨日からそんなだから。
 またぶっ倒れたりしないのかな、こいつ。

 ぼんやりと見上げていると、あいつは思い出したようにしゃがみ込んだ。
 パシャパシャと水が跳ねる音が聞こえてくる。
 たぶん足元に温めのお湯が入った桶とかがあって、持ってたタオルを濯いでいるんだろう。
 いかり肩になったあいつの両肩を背後から眺めて、ああ、絞ってるんだなぁとそのままの感想を抱いたりした。

 倒れられたりしたら、困る。
 師匠に釘を刺される前みたく倒れられたりしたら、後始末もせずにそのままだから色々とめんどくさいし。
 二人揃って姫様の目の前でお目覚めなんて――……簀巻きにしたまんまじゃなかったけ。

 思いついたままの感想とか、さっきのことを思い出したりしてる間に、あいつはきしっとベッドを軋ませてお尻の位置を変えた。

「ねーぇ」

 掛けられていた布団がめくられて、当然裸が見られたりするんだけどそんなに気にならなくて、ちょっと腿をもじりと動かして大事なとこを隠したりしながら、私は大して用もなく声をかけた。

「んー?」

 どこか気だるそうな声で応えて、こいつは本人の前で体型のことを散々酷評したり平気でしてきて、そのたびに踏んだり蹴ったりしてやるんだけど、普段のやらしさも意地悪も引っ込んでしまった丁寧な手つきで私を拭いていく。

「やっぱり、お尻から拭いたの?」

 別にどうしても訊きたかったわけじゃない。
 ただ、なんとなくあいつのお尻に目がいったから、そこから連想して頭に浮かんだだけ。
 肩から胸元を拭きながら、あいつは少しはにかむように笑った。

「ばーか」

 この手の言葉を聞くと大体売り言葉に買い言葉になるんだけど、そんな事にはならなかった。
 バカって言葉には違いないけど、なんかいつものムカつく感じとは違って聞こえた。

「……なぁによーぅ。はぐらかさないでよ。重要なことなんだから」

 なのに唇を尖らせて恨みがましい声で呟いていた。
 どうしてそんな口調になったのか、私自身わかってる。
 だって、こんなに優しくバカって言えるからには、鈴仙にはまず間違いなく言ってるってことだから。
 ちょっと拗ねていた。

「んー……そうだなぁ、尻は重要だなぁ」

 茫洋とした声音で私の言い分に同意しながら、丹念に身体を拭いていく。
 指先から手の平、手首、上腕二の腕へと、爪や指の股、肘の内側なんかは特に丹念に拭かれる。
 腕を持ち上げられて腋を拭かれた時はちょっとくすぐったくて、もぞもぞと身じろぎした。

「だってさ、あんた私の顔拭いてたじゃない」

「んー」

「その前におんなじタオルとお湯でさ、お尻を拭いてたりしたらぁ」

「まぁ、そりゃちょっと嫌だわなぁ」

「ちょっとじゃなぁーいー」

「確かに、ちょっとじゃないかぁ」

「そーよぅ」

「そーだなぁ」

 私たちはなんだか間延びした語尾になりながら、普段だったらバカにしてるって言い争いになりそうなものだけど、そんなことにはならなかった。
 なんだか部屋の中の時間の流れまでゆったりと遅くなってる気がする。
 呑気なくらいのこの速度が、妙に心地良かった。

「どぉなのよぉ」

 私の腕を引き寄せて自分は身体を倒しながら、あいつが背中を拭いていく。
 タオル越しにあいつの手の平を感じる。
 身体を倒したぶん顔がぐっと寄せられてる。
 あいつの顎先を見つめて、ちょっと剃り残された髭の跡なんかを見つけたりした。

「そっちは石鹸使って念入りに洗うからなぁ」

 間近にあったあいつの顎がくいっと下がる。
 私の身体を仰向けに横たえ顔が離れていくのを視線だけで追った。
 今の所あいつにお尻を洗われてる最中に目を覚ましたことはない。
 あいつの泡だった指が私の開いた肛門をなぞっていく様子を想像した。

「すけべぇ」

 お腹を拭きながら、後ろ手に身体を支えていたあいつの手が伸びてくる。
 私の視界を遮るように、けれど何の不安もなく近づいてくる手を見つめた。

「ばーか」

 また。
 あの妙に優しい言い方。
 はにかみは見えなかったけど、前髪を指ですくうように撫で付けて、くしゃっと頭を撫でられた。
 なでなでと撫でられて、私は何のてらいもなくその手に頭を寄せることが出来た。

「ねぇ」

「んー?」

「やっぱりあんたって下衆よねー」

 姫様がここに来ていることは昨日から知っていた。
 あれだけ騒いでたら全部丸聞こえだったし、鈴仙とのやり取りだって聞こえていた。
 私がここで目覚めて最初にやられたこと。
 あれを姫様相手にやろうとしてるって判った。 
 それを判ってて、こいつに協力した。

「そうだなぁ」

 あいつは茫洋と頷いて、私の言葉を肯定した。

「やり方がえげつないわよねぇ。今頃姫様泣いてるんじゃない?」

「そうか。えげつないかぁ」

「そうよ。ろくな死に方しないわよぉ、きっと」

「そりゃあ、ろくでもない死に方なんだろうなぁ」

 他人事のように聞こえるのは、このゆったりと流れる時間のせいなんだろうか。
 私は言葉を切って、しゃばしゃばとタオルを濯ぐ音を聞いていた。

「ねぇ」

「んー」 

「よく鈴仙のわがまま……って言うか愚痴に付き合ってられるわよね」

 端から見てて思うんだけど、鈴仙が何かに躓くたびにこいつが転ばないように手を貸して、転んだら足を止めて立ち上がるまで待って。
 よくもまあそんな真似を延々としてられるなぁって思う。
 鈴仙に対する嫉妬は、まあちょっとあるって認めよう。
 けど、こいつは一々遠回りしてるような気がする。
 もっとこう、色々とやりようがあると思うの。

「そうかぁ?」

「そうよぅ。めんどくさいって思ったりしないの?」

 私の疑問に、タオルから水気を絞ったあいつが振り向く。

「どっちかっていや、まあ面倒だわな」

 昨日の献立を思い出しているような口振りだった。
 鈴仙が面倒だって言う言質は取ったけど、それをたてに自分を売り込もうだなんてさらさらなかった。
 握った弱みを押し貸そうとも。
 ただ、私が見聞きして知っている以上に、今まで色々あったんだろうなぁと想像した。

 ヘタレイセンだし。

「だったらもっとこう、俺色に染めてやるとか思わないの?」

 一々不意打ちするみたく誰かを買ってくるのだってさ。
 へこむってことくらい判ってるんだからあらかじめ知らせておくとか、鈴仙の心境が変わるのを待ってからにすればいいのに。
 鈴仙が躓く問題はそのまま置きっ放しにしておくのは、なんだか遠回りだ。
 もっとこう、迷いがなくなるまで心酔させてから次にいけばいいんじゃないかって思わなくもない。

「その発言は親父だぜ」

「うるさいわねぇ。答えなさいよ。めんどくさいって判ってるのに、どうしてめんどくさい真似してるのよぉ」

 座る位置をずらして、私の腰から下を拭き始めた。
 閉じていた脚は、あいつに大事なとこが見えないようしっかり閉じていたけど、内股に指が差し込まれたから応じて開いた。
 脚を拭くだけだって判っていた。

「そういうのを面倒くさいって投げ出す奴はな、始めっから一人になっちまえばいいのよ」

 一人。
 一人か。

「あんたには無理そうねぇ。強がってるだけっぽいし」

「無理そうじゃなくて、無理だったんだよ」

 高草郡で過ごしていた頃を思い出して、ちょびっとからかう口調に戻った私に、あいつはため息一つ洩らして言い直した。
 私は目を丸くして、脚を丁寧に拭くあいつの背中を見つめた。

「無理だったの?」

「そ。無理だった」

「……なんで?」

 こいつが一人になろうなんて考えた理由と、それが出来なかった理由。
 両方をまとめて訊いていた。

「まぁ、色々理由はある訳なんだが。一番大きかったのは、一人が寂しかったって事だなぁ」

 私の腿の内側を拭きながら、あいつはやっぱりどこかぼんやりした声で答えた。

「寂しかったの?」

「そ。寂しさに耐えられるほど俺は強い人間じゃねーの」

 ……私とおんなじだ。
 高草郡で一人で過ごしていた私が至った結論と。

 何の力もない兎として生まれて、妖怪としての力を持つまで長い時間隠れて過ごした。
 勿論怖かったっていうのが大きい。
 世界は兎を食べる生き物で溢れている。
 ただの兎の頃は怪我や健康一つが死に直結するから細心の注意を払って過ごした。
 生き残ることに必死だった時期が過ぎて、私はいつしか今の姿になっていた。
 長生きして私が手にしたものは、妖怪兎としての力ともう一つ。
 孤独だった。

 悪戯をするのは妖怪兎として力を持ったから、だけじゃない。
 誰かに構って欲しくて悪戯した。
 悪戯するから疎まれて、いつしか高草郡には誰も来なくなってしまった。
 そんな生活が耐えられなくなり永遠亭にちょくちょく顔を出すようになって、悪戯をする相手にもこと欠かなくなって今に至る。

「……まあ、今更一人になるなんて言い出されると困るけどね。あんたがいないと、私が悪戯する相手がいなくなるし」

「そうだな。俺もてゐがいないのは困るな」

 あいつはすんなり答えてわたしの髪を撫でた。
 
「そうなの?」

「そーだよ」

「そっかぁ」

「そーなんだよ」

 私と鈴仙の差はなんだろうって思ってた。
 鈴仙よりも先に私がこいつに買われたりしたら、逆の立場になってたのか。
 それともぜんぜん違うことになってたりしたのか。
 鈴仙と同じことをしてみたら、こいつは態度を変えたりするのかなとか。
 こいつとこんな空気で話したりとか、これからもこういうことがあったりするのかなとか。
 
 なでなでされていると、そんな取り止めのない思考と一緒に胸のもやもやも消えていってしまった。
 だからかもしれない。

「……ねぇ」

「んー?」

「私の処女あげよっか?」

 変な意地も張らずにあっさりと口にすることが出来た。

「くれるって言うなら貰うぜ」

 あいつも私の揚げ足を取ったり茶化したりせずに、呆気なく頷いた。

「じゃ、あーげた」

「あいよ。でもま、今は寝てろ。疲れてるんだろ?」

「んー」

 あいつは私の身体を拭き終わってから、お風呂を使うかどうか訊いてきた。
 起き上がるのが面倒だったからいいやって答えたら、そうかいって私にパジャマを着せていった。

「ねぇ」

「んー?」

「寝るまでなでなでしててー」

「あいよー」

 手の平の温もりを枕にして、私はまどろみから眠りへと落ちていった。






 目が覚めるとあいつの姿もなかったから、ひょっとして夢だったんじゃないかなーと思わなくもなかった。
 夢なら夢で、このてゐ様とあろう者がなんてものを見たりしてたんだろって、部屋の中で跳び跳ねてたとこだけど、夢じゃなかった。
 ベッドから抜け出して頭を抱えていたとこに、あいつがノックもなしにずかずか入ってきて、身悶えたいのを堪えて固まっていた私の手の平に何か手渡してきた。 

「前祝いってことでな」

 おっきなおにぎりだった。
 赤飯の。

「腹が減っては戦は出来ずって言うしな。食うもん食ってから励まねぇとなぁ?」

 私がごま塩が振られたおにぎりを手の平に乗せて言葉を失っていると、ひっひっひとあの性悪さが滲み出る声で笑った。

「……こっの」

 がぶりとおにぎりにかぶりつき、ベッドから飛び降りてあいつの尻を蹴った。

「おおっとぉ、派手に暴れると出るもん出ちまうぜぇ? 俺が出すもん出したからな。あひゃひゃひゃひゃ! 」

「っ! っ!!」

 部屋の中を逃げ回るあいつを追いかけて蹴りを繰り出しながら、がつがつと赤飯のおにぎりを頬張った。
 もちもちしてて美味しかった。

 やっぱりこいつってさいてー。

 でも、そういうとこも込みでああいった話になったんだし、今更なしにする気もなかった。

 夜になったらやってくるあいつの様子を思い浮かべて、結局夕食の間はまともに顔を見ることも出来なかった。
 部屋に戻ってからはムカつくんだか恥ずかしいんだかなんだか良く判らない気分で、布団に潜り込んで待った。
 野兎から穴兎にでもなった気がしてきたあたりであいつが部屋にやってきて、たぶん喧嘩腰の売り言葉に買い言葉の応酬があったと思うんだけど、あんまり良く覚えてなかった。
 あいつに今から処女を奪われるんだって思うと、頭の中がごちゃごちゃで良く判んなくなってしまった。

「ちったぁ落ち着いたか」

 床に正座したあいつは、顔にパンツを乗せて私に言った。

「落ち着いてるわよ。私は。初めっから。なによその格好。そんなにパンツが好きなら風呂に浮かべて残り湯でも飲んでればいいじゃない。変態。変態。ド変態!」

 私も何故か膝を突き合わせて正座する格好で、勢いに任せて罵倒した。
 何でわざわざ床で正座してるのかは、私にも良く判らなかった。

「てゐが投げつけたんだっつーの。あーぁ、散らかしちまってまぁ」

 あいつはパンツを摘んで顔から剥がすと、部屋の中を見回した。
 いつの間にか部屋の中は台風が吹き荒れたみたいにひどいことになっていた。
 目に付くものを手当たり次第に投げつけたりしてたら、こうなってしまっていた。

「私悪くないもん!」

「もん! じゃねーよ。ったく、誰が片付けるんだ誰が」

 ため息をついたあいつの手から、にんじんパンツがすいっと抜き取られる。

「てゐ、下着は箪笥の上の引き出しで良かったの?」

「あ、うん。そう」

「じゃあ俺は――」

「あ、ご主人様は座っててください。見た所重いものなんかは特にありませんから、ちゃちゃっと片付けてしまいますね」

「いや、でもな」

「……ご主人様、てゐの下着まで片付けるんですか?」

「体裁は悪いな」

「そうです。それにてゐも女の子なんですから、家捜しの真似なんて駄目ですよ。一つ二つくらい知らない事があった方が魅力的だと思いません?」

「えー、まー、はい」

「では、そういう事で」

 にっこり微笑む鈴仙。
 私たちは、部屋のあちこちに散らばった下着や服をひょいひょいと集めていく様子を、雁首揃えて眺めた。
 やけに手際が良かったりした。

 私たちは視線を戻して互いに顔を見合わせる。

「……なんで鈴仙がいるのよ。しかも本人、いて当然みたいな顔してるんだけど?」

「いや、来る途中で出会ったんだが……なんかそのまま着いて来てな」

「なんかってなによ。まさかこのまま居座るつもりなの?」

「いや、そこまでは訊いてねぇけど」

「訊きなさいよ」

「付き合いはそっちの方が長いんだろ?」

 今までと比べてすっかり見違える鈴仙の変化に、こいつも戸惑っているようだ。
 顔を寄せ合いぼそぼそと小声で話し合っていた私たちは、当の鈴仙をちらりと一瞥した。

「~~~♪」

 鈴仙は箪笥の前に座り、鼻歌なんて歌いながら集めた衣類を膝の上で畳んでいる。
 畳んだものはそれぞれ種類別に分けたりして、普段どこか抜けてたり妙に肩肘を張っている姿とは大違いだ。

「やーよ。だっていつもと違うって言うか、なんか笑顔が怖いんだけど」

「俺もおっかねぇんだよ」

「根性なし」

「言っとくけどな、俺は人間なんだからな? 刺されたら血も出るし心臓止まったら死ぬんだぜ?」

 大げさな、と言おうとして思い直す。
 そりゃあここが特殊な環境だってのはわかるけど、鈴仙もこいつも男と女なわけだし。
 特に鈴仙って妙に思い込みが激しかったりするから、変に思い悩んだりしたらあながちあり得ないことじゃないのかも。
 なんか、私まで怖くなってきたんだけど。

「骨は拾うわよ」

「死亡前提かよ」

「こんなに可愛い小兎がいなくなったら、地上の損失は計り知れないじゃない。弔い方は磔刑とかでいいわよね?」

「弔ってねぇよ。鬼かよ」

「鬼じゃないわよ。兎よ」

「その通りなんだが、いまいち納得出来ねぇ返しだなおい」

「どうしたんですか? 二人して」

 わっ。

 横手から突然にゅっと顔を出した鈴仙に、私たちは仰け反った。

「いや、ええと」

「まあ、なんだ」

 お茶を濁す私たちを交互に見やり、きょとんとしていた鈴仙が笑う。

「内緒話でしたか? 付き合うとか、いつもと違うとか、計り知れないとか聞こえましたけど」

 にっこり笑って訊いてきてるだけなんだけど、なんと言うかこう。
 私がいるのにいい度胸ですね? とか。
 内緒に出来ると思ってましたか? とか。
 そんな感じの言葉が後に続きそうな勢いだ。

 あと、部屋の片づけをしている間もこっちの話は初めっから聞いていたみたい。
 並べる単語がどれも妙にピンポイントな気がするのは、気のせいってことにしとこう。

「あー……片付けの方はもういいのかい?」

 いつになく強気というか、言外にものを含ませる鈴仙に、あいつはバリバリと頭を掻きながら訊ねた。
 気圧されてるのか及び腰って言うか、ちょっと口調が余所余所しい。
 ヘタレが。

「もう終わりましたよ?」

 鈴仙は小首をかしげて周囲を見回す。
 私たちもつられて視線をぐるりと動かした。
 鈴仙の言う通り、あれだけ散らかっていた部屋の中が綺麗に片付いていた。

 私たちが話してる間に片付けるとか。
 落ち着いた物腰といい、いつの間に如才をなくしたりしちゃってるのよ。

 ぱっと見回した感じ、ひょっとしたら普段より片付いてるかもしれなかった。

「それで。内緒話だったんですか?」

 意表を突かれっ放しで言葉を失う私たちに、鈴仙がずいと膝と顔を寄せてきた。

 こ、こだわるわね。

「内緒話って言うか……ね、ねぇ?」

「あ、ああ。そういえば鈴仙今日は雰囲気違う気がするんだけど、化粧とか試したりしてる?」

 この野郎、日和ったわね。

「……判りましたか? 口紅を使ってみたんです」

 話の矛先を露骨に変えようとするあいつに、鈴仙は案外あっさりと乗ってきた。
 そう言われてみたら確かにいつもと比べるとちょっと瑞々しいかな、とは思ったけれど、紅を差したと言うほど赤くも見えなかった。

「ナチュラルメイク、って言うんですか? 雑誌という本をいくつか鵺さんから貰ったので、試しにお化粧道具もお願いしてみたんです。
 沢山あるので色々迷ったんですけど、やっぱり色が濃いと少し恥ずかしくて、薄めの物を。慣れてないとやっぱりどきどきしてしまいますね」

 聞いてもいないのに化粧なんかしていた経緯を喋り出した。
 私はその隙を見計らい、向かいの膝を指でつつく。

「あんた、気づいてたの?」

「いや全然」

 でしょうねー。

 半ば呆れ混じりにあいつを睨んでおいた。

「それで」

 化粧水がああだ乳液がこうだといっていた鈴仙が、唐突に言葉を切った。

「どんな内緒話をしてたんですか?」

 内緒話ってとこはもう確定しちゃってるらしい。
 すっごい笑顔なんだけど、どうすんのよ?

 私がじっとりと睨みつけ、鈴仙はいい笑顔で、あいつは苦虫でも噛み潰したように口元を歪めた。
 がりがりと後ろ頭を掻きながら、数秒間私たちを見比べたあと大きなため息を吐き出した。

「オーケー。お兄さんの負けって事で」

 最初からそう言いなさいよ。
 結局そうするのが一番収まりがいいんだから。

 全面降伏を申し出たあいつは、事の成り行きの説明を始めた。
 きわどいところにまで説明が及んでも、鈴仙は口を挟まず真剣な表情で黙って聞いていた。
 お師匠に続いて姫様までこいつの魔の手に捕まってしまったわけだけど、こうして車座で膝をつき合わせて、しかも話してる内容が惚れた晴れただなんて。
 なんて言うか、我ながら呑気よね。

 かるーく内省してみたり。

「まあそんな訳でこれからてゐを抱くんだけど、鈴仙ちゃんの意見を聞こう」

 あとお前ももうちょっと言葉選べ。
 結局ほとんどそのまま白状しちゃってるじゃないの。
 と言っても今変に口を出したら薮蛇にしかならないから、黙って睨んでおいた。

 話を聞き終えた鈴仙はしばらく目を閉じてなにか考えてたみたいだけど、

「いいですよ」

 呆気なく感じるくらい私があいつとセックスすることを認めた。

「ご主人様がもう決めた事ですし、私が否定してもいつかはそういう事になると思いますし」

 鈴仙の決断に訝しい眼差しを向けたりしたからか、その理由を述べた。

「ただ、一つだけお願いが」

「何かな」

「私もご一緒して、いいですか?」

 黙って反応を窺っていた私も、思わず目を丸くしていた。

「……一緒って、鈴仙と?」

「ええ」

 以前私からダシに使って二人でこいつに迫ったことはあるけど、まさか鈴仙からそれを言い出すなんて。

「それって、またこいつぶっ倒れちゃうんじゃないの?」

 以前は、直後にこいつが意識を失い一昼夜眠り続けた。
 それまであんまりこいつの負担なんて考えたことはなかったけど、やっぱり二人相手になると体力を消耗するんだなって気にするようにはなった。
 まあ、普段は先にこっちが音を上げるんだけど、こいつは朝っぱらからずーっと連戦が続いてるんだから、今度は白い煙昇らせて魂とか抜けちゃうんじゃないだろうか。

「そうならないように、ちゃんと私が見てるのよ。晩ご飯だってちゃんと精のつくものを用意しておいたし」

「……あんまり覚えてないんだけど、晩ってなに食べたっけ?」

「どじょうの柳川卵包みだろ、とろろだろ、牛肉とにんにく茎のサラダだろ、後はミニすっぽん鍋がついてきた」

「ガッチガチの精力料理じゃないの」

「実は晩飯から勃起止まんねぇのよ」

「あ、ご主人様。咽喉渇いてませんか? これどうぞ」

「ん? ああ、あんがと」

 鈴仙は唐突にポケットから取り出した小瓶を手渡した。
 あいつは手の平に収まりそうな小瓶を受け取り、中身もロクに確かめず軽く一飲みにした。
 飲み干した後、とてつもなく微妙な顔をした。

「すげぇ味なんだけど、ナニコレ」

「マムシの生き血を使った強壮薬です」

「あのさ、鈴仙。精力つけさせるのはいいんだけどさ。やり過ぎると暴発するんじゃないの?」

「てゐ、女の子なんだからやるなんて言わないでよ。生々しいから」

「鈴仙が言う方が生々しいじゃない。いっそ精力とか暴発に食いつく方がまだ薄味よ」

「……鼻血出そうなんデスケド」

 天井を見上げて首筋を叩いているあいつは置いとくとして。
 とにかく以前より入念に気を使ってるってことは判った。

「で。鈴仙はこう言ってるけど、どうすんのよ?」

「俺って、3Pも好きヨ?」

 聞くまでもなかった。

「一度懲りてっから下手を打つ気はねーし、こうして俺の股間も夢中性感ヤマトな事だしな。それで3Pとかすげぇ贅沢だよな」

 鈴仙が折れた――折れたって言うのかな? この場合――からか、あいつはすっかり乗り気になっていた。
 鈴仙の機嫌がこじれないとわかった途端、元通りになりやがったこの野郎。

 とはいえ鈴仙も引くつもりはなさそうだし、この様子じゃ日時をずらしたってまた手出し口出ししてきそうだし。
 このあたりで手を打っとく方が無難かぁ。

「あー、もう。いいわよ。わかったわよ。このスケトウダラ」

「スケコマシって言いてぇのか? それは」

 訂正する言葉を流して、私は鈴仙を眺めた。
 ちょっと見ないうちにいっちょ前の口を利くようになったりして。
 ヘタレイセンの癖に。

「ずいぶん調子がいいみたいだけど? 一体なにがあったのよ」

 なにがこんなに鈴仙を変えてしまったのか、少し気にもなった。

 鈴仙はちらっとあいつに視線を向けて、

「うふ♪」

 その腕に抱きついた。
 鈴仙が見せた行動に、私だけじゃなくあいつまで目を剥いたまま固まっていた。

 しばらくの沈黙。

「……す、すみません」

 沈黙に耐え切れなくなったのか、鈴仙はすごすごと引っ込み呟いた。
 肩を縮めて、茹ってしまったように顔を真っ赤にして俯く姿は、私の知ってる鈴仙そのものだった。

 ちょびっと見直したと思ったらこれか。
 ま、鈴仙らしいけど。



「はっ、はっ。んっ、あったか」

 一面に湯気が立ち込め漂ってる。

「あっ、んっ、やぁんっ」

 人肌の温もりがのたうち滑っていく。

 私たちは服を脱いでから浴室に移動して、マットの上でねそべりぬるぬるする身体を擦り合わせていた。
 ローションをたっぷり使って、折り重なっていたかと思うといつの間に抜け出て、また身体を擦り合わせる。
 くんずほぐれつっていうのはこういうことを言うんだろう。
 上になり下になり真ん中に挟まれて、冷たかったローションは生暖かい熱を帯びて、私の身体の芯まで火照らせていた。

 まるで泥の中で溺れてるみたい。
 湯船に張られたお風呂から湯気が立ち上っているから、室内の空気そのものが温められている。
 熱に浮かされて頭がぼんやりしてくる。
 私たちは目に付いたお互いの気持ちのいい場所を、触ったり舐めたり擦ったりこねたり吸ったりしていた。

 いよいよセックスすることになって、鈴仙が注文をつけたりしてきたから私も朝に一つ貸しを作っておいたことを思い出した。

「痛くしないようになさいよ」

 破瓜が痛いとか良く聞く話し出し、第一血が出るんならそれって怪我と一緒なんじゃないかって思う。
 私だって、それなりの不安の一つは持ってた。

「ハードル上げるねぇ。最善を尽くすさ」

 あいつは素直に貸しを返すと言って、それがこれらしい。
 お互いの体温で温め合うこれは、痛みからかけ離れていた。

 私は寝そべるあいつに寄り添って、手元に視線を動かした。
 
「普段よりおっきくなってる気がするんだけど」

 ローションで滑るから、にぎにぎしてるとうなぎのつかみ取りみたいになる。
 何度見ても変な形をしてるけど、なんでこれをお尻に入れられるとあんなに気持ちいいんだろう。

「マムシにすっぽんが効いてるな。二、三発抜きゃ普段通りになるだろ」

「出し過ぎなのよ、あんたは」

 毒づきながら、くちゅくちゅと扱いては余ったローションを手の平で撫で付けた。
 鈴仙は私の向かいで、こいつの腕にしがみついていた。

「ご主人様の指……中でこりこりって、それ、気持ちぃーです」

 あいつの腕を胸で挟み、手に自分から腰を押し付けて自慰をしていた。
 私はあいつの身体にもたれてその様子を見つめていた。

 気持ち良さそうねぇ。

 太股の陰に隠れて見えないけど、あいつの指が鈴仙のあそこに入っているんだろうなぁ、なんて考えながら手の中で脈打つあいつのちんぽに視線を移す。
 全身ローションでぬるぬるだけど、やけに湿った音がするのはそれだけじゃないんだろう。

「あっ、んっ。だめ、そこ弱くて、イクッ、イッちゃ、んっ、んっんっんん~~~っ」

 鈴仙がイッた。
 何度イッてるのかはもう判らない。
 身震いしたあと鈴仙の目がさらにとろんと蕩けて、満足したかのようなため息を洩らした。

 私の方にも、あいつは手を伸ばしている。
 鈴仙がイッてる最中もお尻から回り込んできた指が私の性器をなぞっている。
 おまんこの周囲にたっぷりとローションを塗りたくったあとは、私のおしっこの穴をくすぐったりしてくる。
 もじもじと腰を動かすとあいつも位置を変えながら、なんだか指に吸い付かれてるような気がしてきた。

「……」

 私が睨むと、あいつは目だけで笑う。
 甘えて擦り寄る鈴仙とすっごくエッチなキスをしながら。

 このやろ。

 イクまで先端を手の平でぐりぐりしてやった。
 料理や精力剤のおかげなのか、手がどろっどろになるほど射精した。
 あいつがイク寸前にクリちゃんをきゅって摘まれて、油断していた私もイッてしまった。

 ローションを使っているのが私の緊張を解きほぐすためなんだろうな、とは薄々判っていた。
 実際、ローションとかたっぷり使った方が痛くなかったりするのは、アナルセックスの時だってそうなんだろうし。
 私たちの身体を柔らかく解しながら、あいつは体勢を変えるように言った。

 仰向けに転がった私を背後から鈴仙が支えて、あいつは膝を両手で押し広げた。
 とろとろになった私の股間を確かめるように見下ろしている。
 私の方は、あいつの股間で反り返っているちんぽに視線が釘付けだった。

 い、いよいよか。

 知らない内に生唾を飲み込んでしまった。
 あれだけ準備に時間をかけられほぐれていた身体に、少し緊張が戻ってくる。
 それが背後の鈴仙にも伝わったのか、私の胸元を手の平でなめるように動かし、ローションを薄く延ばしていった。

「大丈夫よ、てゐ。初めはどうしても痛かったり苦しかったりするかもしれないけど……」

 胸元から下腹へと指先が降りて、私のお豆を軽く引っ掻くようにくすぐった。

「ご主人様は優しくしてくれるわ」

「う、うぅん」

 鈴仙の指の動きとあいつの視線がくすぐったくなって、私は身じろぎしながら唸る。
 ぬれてとろとろになった私のおまんこからついと動いて、あいつと目線が絡んだ。

「かさぶたを剥がすようなもんさ」

 なにその例え。
 バカじゃないの。

 そんな憎まれ口を叩こうとしたのに、言葉が出てこない。
 バカみたいなことを言ってるくせに、妙に優しい目つきで見つめてくるなんて。
 ずるい。

 あいつは鈴仙と一緒になって、指で念入りに私の膣口をローションで馴染ませた後、そっと先っぽをあてがった。
 ぴとりと触れた熱い感触に身震いする。
 私は目の前の男に、女にされちゃうんだ。

「い、一気にするつもり? それともゆっくりするの?」

「どっちがいい?」

「どっちがいいって……それがわかんないからっ」

 言い返している最中に、みちっと下腹が押し広げられた。

「い? あっ、なにっ。ちょっと」

 アナルセックスの時とは違う。
 真ん中のあたりに圧迫を感じる。
 ぬるぬるとした熱いものが私の中に入ってきてる。
 あいつはゆっくりと身体を倒してきた。

「んっ、あっ。このっ、不、不意打ちでぇ!」

 お腹を押されて少し息苦しくなってきたところで、あいつの身体の動きが止まった。
 私は目の前の身体に爪を立てるほどしっかりとしがみついて、息を整える。
 初めてアナルセックスをした時に近いけど、あの時ほど無理に腰を動かそうとはしない。
 それに私自身身体の中にちんぽを入れられてしまうっていう感覚に馴染んでいたから、初めての時よりどういうものなのかおぼろげに想像は出来ていた。

 はぁはぁと息を切らして、滑り落ちてしまわないようあいつの身体にしがみついていた。

「一気にゆっくりと。こんな感じか?」

 いつの間にか閉じていたまぶたを空けると、目の前にあいつの顔。
 余裕たっぷりに、悪戯を成功させたみたいな顔をして。

「こんな時でも、私を怒らせようっての?」

 そんな表情から視線を動かす。
 密着した身体と身体の隙間から、あいつの棹が覗いている。
 先っちょが少し入ったくらいで止まったまま、動こうともしていない。

 アナルセックスの時だってそうだった。
 最初から全部気持ち良かったわけじゃない。
 指やバイブを使って充分に慣らされて、何度も何度もアナルセックスを繰り返したから、今気持ち良くなれる。

「だったら……残念ね」

 ほんとは余裕なんて感じられなかったけど、私も余裕たっぷりに笑い返して見せた。
 あいつは肩で息をする私をじっと見つめて、言葉を待っていた。

「嬉しい」

 言った。
 言ってやった。

「あんたに抱かれて嬉しい」

 今までずっと言わずにおいたことを、息が触れる距離で言ってやった。
 私を見つめていたあいつの黒い瞳が、ほんの少しだけ意外そうに丸くなるのがわかる。
 一矢報いてやった気がして、心が躍った。

 そんな距離で、私たちは数秒間見つめ合っていた。

「苦しくはないか?」

 先に口を利いたのはあいつの方。
 私の頬を撫でて、そのまま首筋を伝っていく。 

「ん……動かないままなら、平気。あんたはいいの?」

「正直な、今下手に動くと出ちまう」

「んく、この早漏野郎」

「違わねぇが、てゐの膣内がきっつきつだからって事にしといてくれ」

 私がお腹の中を広げられている感覚があるように、こいつも狭苦しい感覚があるんだと思う。
 膣にちょっと入っただけで止まってしまった、熱いもの。
 アナルセックスの時と同じように、何度も繰り返していくうちに私の身体は馴染んでいくんだろう。
 お尻だけじゃなくて、おまんこまでこいつのちんぽの形を覚えてしまって、いつか鈴仙のようになるまで抱かれる。
 この雰囲気で。

「……まあいいわ。ここから先は、次の機会まで待つから」

 愉しみは、取っておいた方がいい。

「だから、このままひたらせて」

「ああ」

 あいつは言葉少なに頷いた。
 言った通り腰を振ろうともせずに、その代わりになでなでされた。
 べとつく手で髪を撫でられたけど、どうせ浴室で裸になってるんだから、あとでシャワー浴びてさっぱりしてしまえばいい。
 硬くて分厚い手の平を感じながら、私も腕の力を抜いてあいつの身体を撫で回した。
 ごつごつとした背中だった。

「てゐ、おめでとう」

 腋から差し込まれた手が私の胸元を愛撫してくる。

「……で、いいのかな」

「今のとこは、ね」

 柔らかい身体にもたれて、複雑な心境を覗かせる鈴仙に笑いかけた。

「うかうかしてると、私が貰っちゃうわよ」

「……あ、あげないもん」

 唇を尖らせて挙動不審に陥る鈴仙の姿に笑った。

 バカねぇ鈴仙。
 あんたは私が欲しいものをもうとっくに手に入れてるのよ。

 それを黙っておいたのは、まあちょっとした意地悪。
 いつか鈴仙が気がつくまで、あたふたおろおろしてる様子を肴に楽しんでいよう。
 鈴仙はいじってた方が面白いしね。

「てゐ。そろそろ」

 私の呼吸もすっかり落ち着いて、お腹の熱に心地良さを感じてきた頃、あいつが音を上げた。

「ん。好きにして」

 動いたら出るって言ってたし、抜くのだって変わらないだろう。
 あいつがどうするのか見たいっていう気持ちもあった。
 いつもお尻に出されてたものが、こっちで受け止めるとどう感じるんだろうって。

 あいつは言葉で答えなかった。
 ただ私にキスをしてきた。
 唇を覆われて、すぐに舌を差し込まれてきて、私もそれに応えた。
 あいつの歯を尖らせた舌先でなぞっていた時だった。

 あいつの腰が震えるのがわかったと思ったら、前にも後にも動かないままの射精が始まる。

「ん」

 私のお腹の中に精液が出されてる。
 二、三回以上は出していたはずなのに全然勢いは衰えてなくて、びゅるびゅるとあの白くて濃くてどろっどろの精液が流し込まれてくる。

「んっ……はぁ、まだ出てる」

 あいつは私の膣内にたっぷりと射精した。
 長かった射精はゆっくりと勢いを失っていって、私の下腹がじわじわと染み込んでくるように温かくなっていた。

「……はぁ。中にこんなに出して。なぁに、そんなに私のこと孕ませたかったの?」

 あいつの温もりが残ったお腹を撫でる。
 あれだけの量を注ぎ込まれたんじゃ、入り口の近くに出されても確実に孕んでそう。
 今回孕んでなくたって、どうせこいつはこれから何度も私の中を精液で溢れさせるに決まってる。
 一度出したんだから、お尻の時と同じで何度でも出すに決まってた。

「孕んだら、産んでくれるのか?」

 きっちりと射精し終わってから、あいつは腰を引いた。
 あいつのちんぽっていう栓をなくして、抜ける時にぬるっと少し精液がこぼれるのがわかった。

「ん~……どうしよっかなぁ」

 今までぴったりと閉じていた場所が少し広がった感覚を意識して、お腹を擦った。

「兎って、腹に赤ん坊がいても産める環境じゃなかったら、産まずにそのまま栄養にしちゃったりするのよねぇ」

 もったいぶった物言いに、あいつの眉がぴくりと跳ねた。
 私自身そういうことが出来るって知ってはいるけど、実際にどうするのかはわからない。
 孕んだことなんてないし、今まで男を受け入れた事だってなかったんだから。

「だ・か・ら。産んで欲しかったらもっとこのてゐ様をちやほやしなさい」

「抜け目がねぇなぁ」

 あいつは苦笑を浮かべて、否定はしなかった。

 こいつの種で孕んでぽこぽこ産んで、産めよ増やせよで子供を増やしていけば、こいつがてんやわんやになってる姿が目に浮かぶ。
 そういうのを隣で眺めて笑っているのも、いいかもしれない。
 家族が増えれば寂しくないだろうし。
 こいつも、私も。

「あ、あの。ご主人様……」

 私たちの会話に、鈴仙が混じってきた。
 何かを言い出しにくそうにもじもじと身体をよじっていた。

 私の目があるからだろうけど、二人っきりなら一体何を言い出したことやら。

「ああ、はいはい。次は鈴仙なんでしょ? 私はちょっと疲れたから、楽しんでなさいよ」

 私がマットからぬるりと滑って移動すると、自然と鈴仙とあいつが向かいあう格好になる。

「じゃあ、鈴仙。しようか?」

「……」

 鈴仙はあいつの言葉に真っ赤になって顔を逸らしながらも、こくんと頷いた。

 あざといわねぇ。

「散々精力盛られたんだしな。お返ししとかねーとだな」  

 そしてこっちは浅はかっ。

 呆れたことに、あいつの股間はすでに復活してへそに届きそうなほど反り返っていた。
 ついさっきまで私としてたけど、ほんとに先っちょしか入ってなかったんだろう。

 温度差を感じないでもなかったけど、そのあたりも込みで今があるんだから捨て置くことにしといた。
 この際だから、鈴仙たちのやり方をしっかり見ておいて参考にしよう。

「じゃあ、今日は鈴仙が上でってのはどう?」

 今日は?

「ぁ……はい。私が動く方が、ご主人様も楽ですよね」

 動くの?

 色々と疑問はあったけど、それも見ればわかるんだろう。
 差し伸べられた手を取って身体を乗り出す鈴仙の様子を、隣でじっと見ていた。
 始めるまで鈴仙は私のことをちらちらと見ては気にしていたけど、始まってすぐに壁のシミほども目立たない存在になった。

「これ、あっ。ご主人様、あっ、深い、深くまで、あっ」

「その調子、鈴仙。自分で気持ちの良い所を探してごらん」

 鈴仙はおくびもなく身体を弾ませ、あいつも円い腰使いで下から突き上げた。
 腰が弾かれ肉を打つ音がうるさいくらい響き、まさしく鈴仙は兎のように跳ねた。

 あんまり参考にはならなかったけど、一つだけわかったことがある。
 私にしろ鈴仙にしろ、このままじゃ産めよ増やせよがあっという間に実現しちゃいそうだってこと。
 あいつはこの晩だけで、鈴仙に四回、私に三回膣内射精した。

 異母兄弟とか多そうな家族になりそうね。



























































~おまけーね~



~図解! 蓬莱山輝夜の月面殺法!!~



①予備動作

  ∧_∧ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ つ =つ≡つ =つ≡つ
  ( ・ω・)=つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ つ =つ≡つ =つ≡つ
  (っ ≡つ=つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ つ =つ≡つ =つ≡つ
  /   ) =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つつ =つ≡つ =つ≡つ
 ( / ̄∪ ババババ ババババ ババババ ババババ

*シャドー


②夢想・満月の型


           ,ァ''''冖-,、                 ,,,
    ._、.,,,、    .|`    ,゚'r,       .,ll“'*r,、    ,,,#ll|e,~ly       .,,,
   : /: _,,,゚'・x,,,,: : :|      'q.lli、    ./''l゙: ,、 'll〟 ,,,,〃|_.,| ,ト|!゙i,     ,,l|゙,,l'
  .pー“゛.゙゙'l; `.,ト │ ,i、 i、゙ド'┓   .゙l_|,,√.,ト、l, .lニrーッ!┨,| ,l|, 'l:  .,,lli,,,f゙゙,゙゙'y
  .゙l..・-,v-rl,,,ill:  ゚t,: | │゙l, ゙l .゙l、   .゙!l,llill゙.,,ド,l″  ,l゙.,".,ト,l゙.l`]  llle,,ll,l",,: 】
   '|, v,,,,,,,,,,."'《、  ゚r|,、ヽ.'l,ト  ゙L   .リ.゚'lダ!l°  ,√.'・"'廴~’  廴.,li,r゙゙_ill,
   ゚L.,,,,_ .,ァ.‐.゙レ,、 .゚゙[゚''゙'″ 丶 ゙'lq,、 │  : .〔  ,iケ   ..ll,   .,,l”゚゙/゙!ll゙_,ll
    .'トミllll】-'.,r~}.゙ヘ,,,, ∥ : _   ! . , ll     :゚t,..,l°    ゙lト  ,,l″ .゙l
   ,ぃ,,,,,,,。∪'"./:    .゙|'”゙゚'[`|   ゙' r, i : .    .'lll,      .,ll,,,rぐ  .,,,ll゙
  .゚k--ry   .|  .,iil,“゚'か'",l          ゙'ln; .゙℡   .,,rlll゙°   ,l
   _,vー゚`   'l,  .'l,,,゙N┘.,l.,    ___      ゙l| .,,r・".,√   .,ll
  . lu--コ    ゙k 'l,"゚゙l゜,,lヴi  ./    \      『,,√ : ″  ..,ll  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   .,,r'',,r| .,,   ゙゚ti,゙゙|,,,i,´    | ^   ^ |     |,l°      .,√ | あれほど言ったはずだ
   .'ur“: .lyl廴   `゚'!c.廴    | .>ノ(、_, )ヽ、.|    l°      ,,,l  < わたしを怒らせるなと
: ._    .'!l,,l,,,,,_   ゙|l      ! ! -=ニ=- ノ!_   l|   .,,i*jlilllタw,,、 .,r-=-r____
'゙~``:''ヽ,,,,√   .~゚'、, .l,,gllc/ ̄\`ニニ´/ ̄\i、 ,,r"     ,レ'″   .li
、    .'《゙N,,,、    .゚'ll゙゙mr----   ̄ ̄ =`゙ニ-r/"     ,r'°     'l
゙l,、    l  `'私            ゙゙゚''l*゙^            ,rl゙゙゙゙≒,,,,,,,,,,,wll'
: ゙゚'━'#'┷x,_ .゙私,              l               ,il_,yー'''''''ー_、 |
   ,l′  ゚リh,,,,|l,               l゙              ,lll゙°      ゙''ll
ヽ-rf°      ,,゙゙%、             ,l、            ,,ll!e,、     ._,,,r
   ``':i、__,,,,,广  '゙l,,,,、     ._,,,wllll|,llli,,,,,,,,,,,     ._,,,llll″ .゚ラiぁwr='“`
      ` ̄ .゚l,、    ゙゚''*mii,,x'll゙″  ..ll"   `゙lllii,l,illllケ″   .,lヽ,,、
   ll|゙゙"゙゙'l,,,,,,,,lll,、     ,ll゙" 'l,,,,,,,,,,,,,illwrre,,,_,l°゙l、     ,!″ `゚''=x,,
   ゙ll,,|ト ゙|,、 `┓    確 : 'll"   .:ll    'l,r` .:l:     ,,l″: .___ ,,i´ ゙'l!
  .,,l゚ `   `゚X .゙|y    .喜.l,,l′   .l]  :  ,lr~:li、  .,r''゚゚゙'lザ ゚゚̄'リ: .i、ll
 √゙,ll,、   ,,il!广,l゙'N,,_  .ll,トi,゙゙|__、 ._l,l,,__,,,l,,,,r ┃ ,r'°  .゚|,  : .,l゙.,,l、゙l
 ゙',l“.,,ll・,,i、,,n″  .|   ゙゙℡, ll ,,,゚ト ̄ ̄] ` ゙̄]゙` l',,it,、    l   :!!゚,i'l゛..》
  .゙'''l,,,,とill″   ,,i´   ゚!illl| `゚゙l    l゙    j|" .l゙゜ .゚゙l,,    .2    ,}゙|rll
     ”|゙‐'ll'ニrr″   _,,,,,lll廴.i,],,,,,,,,,,,,,il_,,,,,rll、 : |ト  ゙゙l,,《゙レ.,li,,,



③地獄三日突き


                      ,,、   ,,,  、,,     ,, ,,,,,,,,,, ,,,,,,, ,,,,,  ,,, ,,,,,,
                      ヽ、,,メy ;;; r";;;;;;´ヽ`;;;;;ヽ`i;;;;;;;;;|;/;;;;;;ii;;;;;|;;,,トt、t;
                     `''フ, ii ;;;Y/;;、;;;;;;(;;;;; ;; ;;;;;i|;;;i;;;;;;;;、t;;;;;;ii;;从、;;;;、、     死 す き
                      ノノij、、;;;; ;;;t ;;;;t;t;;ノノ;;;;ノtt;;;、升込ヘ、从`;;;;;ii
   ,,、、、                  iyi)从;;;;i r'"iiii||||iiiヽ;;t'''"iiiiiii||||i體逡;; <;;;;;`      ん で  さ
  r"   '' 、                /フ-i;;;;;i:ン、zモテテ、;;t≦;;ー;rモテチゝz'"  〉;;;;;;
  't     ` ' 、              从;;;;;;t:::`:::"";;;;;リΞ :::::::"",,,",ノ"  i;;;;;リ,     で に  ま
  ヽ,        、             刈ii、t::::::::::::::;;; i::     :::::::::::::::'" i;;;;/ノ
    ' 、 ,,、、::'''  ヽ,            i;;ヽ, ;、::::::::::::;; i、__,,,_ ::::   :::::  i;r"/;;     い    は
      ~' 、""" :::;;; ヽ,           t; ;;;`it  ::::::::ヽ、;;;~''     :::  /~r;;;;;;;;;;
  ,,、--、,,,,、'ヽ,       '' 、,        ノi; ;;;| t  ::  ,,ii,,,,,       / |;;i;;;;;;;;;;;;   る
ー'";; ;;''''';;;; ''"ヽ;;;;;;'''"",,    ヽ,       ヽ;;;i ;t   ''";;",`' -     /;;:::ヽリ;;;;;;;;;;;;,,,
;; ;; ;;"  ;;;    `t''''""  ~'' ,,  ヽ,,rr"iiitt、r"t;;;i ヽ  '' ;;~;; ''ー    ,, ';;::::  "i|;;;;;;;;;ヽ"" !
,,r"  /    :::ヽ;;tヽ、,,,,,、、-'",,   ヽ,ー-;;、iiii"ヽii;;ヽ;;ヽ r';;;;     ,,r";;:::::::   i|レ"|;;;;ノ
"   /   ::::: i;`''-、;;;;;;;;;;;;'":::、,    t  ~'' 、;;;;ii"ii:::ヽヽ,ヽ-ー  ,、 ';;;  ::::    :::  |'"ヽ''';;-、、,,,,,,,,,,,,,,
   /   :::  ノ''ー、;;;;;;、,,,,,,,::::::::::;;    t ''"""'ヽ;;;; ""ii::;;;~~~~~~";;;;;  ::::::::''"  :::  |;;;;""''ヽ;;;~'- 、==~、''''' ー 、
  ソ   "r '"ヽ/ /;;;;;;;;;;;;;;;;;;、 '/:     t   '"ヽ;;;; 彡;;;;;;;::~'-、;;;;;;  ;;::::'"   ;;;;  |、;;;;"''";;;ヽ;;;;、~''ー 、,>~' 、
  ヽ,;;;""  ''""' ,ソ;;;;;;;;;;;;;;;、'" r'"     ヽ  yii;; t;;;; 彡、;;y;;;; ::~' 、  ;;::::''"   ;;;;; tヽ,、;;;;  "ヽ;;;;;;;; ;;;;~ '"'z
ヽ、;;;;;;~,二フ"~~~;;;;;;;;;;;;;;;r'" ,,r"      リ    リi;;;; 彡tヽ;;y;;;; :;;ヽ;;;;;;''"     |i ヽtヽ;;;; ミヽ;;;; ;; ;;;iii/;/
-、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、 -ーー - 、、-ーー'"   ,,,,,,,;;;;;; /;;;     i;;;; 彡;t、ヽ;y;;;; ;;;ヽr''ー、、、、,,,,、、 ー''" リ t;;;; ミ''ヽ ;;;;;;;;/;/



*当人が持つイメージ


 姫様の技は108式まであるぞ。
 放っておくとすごい勢いで暴走していく姫様を前に、紺菜はやがて考えることをやめた――



~もしあの人(?)が空気を読まなかったら~



輝夜「死ぃぃぃぬぅええええええ!」

鵺 「よんだ?」

 ぼよーん。

輝夜「私の渾身の一撃を弾き返した!?」

鵺 「ぶった」

輝夜「あまつさえノーダメージ……」

鵺 「ひどい」

輝夜「……」

鵺 「いじめる?」

輝夜「なにこれ、ぷよぷよしててちょっと楽しい」

鵺 「いじめるー」

輝夜「待ちなさーい、その出っ張った腹をもっとぷよぷよさせなさーい!」

鵺 「やめてー」

赤 「いじめるなよー」



 思わず赤いのまで和んだ。
 和み系なのかどうなのか。



~ひょっとしたらと思いました? 当然私は考えました~



「ちったぁ落ち着いたか」

「落ち着いてるわよ。私は。初めっから。なによその格好。そんなにパンツが好きなら風呂に浮かべて残り湯でも飲んでればいいじゃない。変態。変態。ド変態!」

「てゐが投げつけたんだっつーの。あーぁ、散らかしちまって……こ、このフィット感は」

「私悪くないもん!」

「もん! じゃねーよ。ったく、誰が片付けるんだ誰がフオオオオオオオォォッ!」

「(ビクゥ)」

「変・態・仮面! 参上!」

「……」

「WELCOME! 」

「バカじゃないのほんとバカじゃないの」

「くっそ、今度変態仮面全巻置いてってやる」

「ははぁ~ん。わかったわよ。あんたアホね!」



 遠き落日に過ぎたる我がバイブルよ。(訳:無くした単行本どこに行ったんだろ?)
 バ・イーヴォって書くと小洒落たバイブっぽくなってなんかいいですよね。



~本編後にありそうな二人の会話~



赤「なぁおい」

鵺「なに?」

赤「鈴仙にどんな雑誌渡したのよ」

鵺「あんあん」

赤「an-○nかよ! よりにもよってなんつー思想洗脳兵器を渡しやがる!」

鵺「……これ?」

赤「小悪魔ア○ハなんざもっと悪いわ! 鈴仙が頭に稲穂とか垂らし出したらどうするつもりだ!?」

鵺「しゅうかくする」

赤「なんで鵺が言うと上手いこと言われた感が募るんだよ! 口紅以外に変なもん渡してないだろうな!? 絶対渡すなよ!」

鵺「パフェ」

赤「……」

鵺「おおもり」

赤「……地味に安いな」

鵺「パフェうめぇ」



 こうして鈴仙のギャル化は水際で防がれたのでした マル
 お洒落は女の子にとって重要だと思うけど、実際限度があると思うの――
おまけーね追加。
誤字を修正しました。
紺菜
コメント




1.キョウ削除
てい、可愛すぎだろ
鈴仙変わったね~、これからどうなるかな?
2.名前が無い程度の能力削除
輝夜おもしろすぎwww
3.NEO削除
てゐが俺を殺しにきている……! ごちそうさまでした。加筆を楽しみに待ちます。
4.名前が無い程度の能力削除
もう全員子供作っちゃいなよ

鈴仙、てゐときたら次は永琳かな?
5.名前が無い程度の能力削除
もう一夫多妻で結婚しちゃいなYO
このeraudonとeramomijiを読んでて気付いたんだけど
何かキャラの位置づけがそっくりですな
・・・人数が合わないけど
6.名前が無い程度の能力削除
ハーレムエンドですね、わかります。
次は師匠かな楽しみだ
7.名前が無い程度の能力削除
こええ。やっぱりどっかヒビ入っちゃってる赤さんこええ。
ボスとお師匠はもっとこええ。

しかし最近のてゐちゃん、さりげなく赤さんの古傷(by前任)をえぐる発言の多いことw
てゐにとっては知らぬこと、そして赤さんにとっては半ば自業自得とはいえ
しんどい仕打ちもあったものです。
うっぷんはらすこともなかなかできないけど、めげずにがんばれ赤さん。
8.ヴァイスタ削除
こんなにも平和だから、ハードとのギャップで自分が「はわゎゎゎ・・・」ってなっちゃうんですよね。
MOとは大分違うタイプなのにコレは共通して感じるので、やっぱり何かしら似ている所があるんだと思います。

ただ、やっぱりHappyでは終わらないんですよね・・・・・。
良んです良んです。
もしやHappyか?・・・と思わせたところでBadに落とされるのが恒例みたいな感じですしね。
9.銘菓削除
…あれ?まさか俺、鵺に萌え…た…?
パフェうめぇは良い言葉だ
10.名前が無い程度の能力削除
月面殺法使うものは飯、抜きのみ
姫様可愛ええええええ
11.名前が無い程度の能力削除
新作きてた
相変わらずエロイのぅ
Gjッス!