真・東方夜伽話

わたしのなまえは さいぎょうじユユコ     下

2010/04/11 22:36:25
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わたしのなまえは さいぎょうじユユコ     下

喚く狂人
前書き
下編へようこそ。80kbあります。
以下の要素を含みます

ふたなり
アナル
落書き
露出
痴漢
便所でのプレイ
放尿
道具使用のプレイ
輪姦
フィスト
複数同時挿入
罵倒
名無しの汁男優 いっぱい

お気を付けて。





















「協力を願いたい」
「……アレですか、にっちもさっちも行かなくなったから泣き付かれてる、と。そういう解釈でよろしいでしょうか?」
「いやそうじゃないらしい。スパイスだとか何とか」
「スパイスねぇ……まあ、いいでしょう。で、何をすれば?」





 西行寺幽々子がマヨヒガの地下室で暮らし始めてから、一ヶ月と一日。
 例の腰が抜けてしまうほどのセックスから、ちょうど一日が経った計算になる。
 一日に一回自分の友人がやってきて、自分とセックスをする――そんな現実感の薄い生活にも、いい加減、彼女は慣れてきていた。
 性に溺れるのも悪くないと、幽々子は思い始めていた。拷問はゴメンだが、尻をはたかれる位の痛みなら別に構わない。
 むしろ性行為に及ぶ時は、それが何故か気持ちいい。
 ベッドに横たわりながら、彼女はそんな事をぼんやりと考えている。外と隔絶された地下室では、そのくらいしか考えることがないのだ。
「……はぁ、んっ」
 寝返りを打つ。身体の中で、紫に挿れられた玩具が擦れ、幽々子は小さな声を上げた。身体に食い込む縄が、彼女を火照りから冷まさせない。
 彼女に特に不満は無い。脚の落書きは悪趣味だと思ったりもするが、紫がすることは基本的に気持ちいい。二十四時間の大体すべてが退屈な事を除けば、甘く官能的な楽しい生活だった。
 さらに言えば、幽々子にとって、紫が相手であるのは、万更でもなかった。
 自分の送っている生活が当たり前のものでないこと、それどころか人倫にもとるものであることを、幽々子は百も承知している。
 だったら出ればいい、という話になる。少なくとも、出る努力をして普通だ。嗜虐的で好色な紫も、無二の友人が本気で頼めば、流石に身柄を解放するだろう。
 けれども幽々子は、外に出たいと願うことができないでいる。
「んっ、ふぁぁ……」
 また、熱い吐息が漏れた。
 紫に与えられる圧倒的肉悦。幽々子の身体には、それが消せないほどに刻み込まれてしまった。無くてはならないもののようになっていた。
 一度出てしまったら、紫はこの遊びから興味を失うのではないか。幽々子はそれを怖がっている。
 この一ヶ月間、彼女にとって、紫を待つ時間は等しく苦痛だった。ただし、その意味合いは変わっていた。
 最初は、退屈で退屈で仕方がなくて苦痛だった。この部屋には娯楽が足りない。つぶせない暇は苦痛になりえた。
 けれど、今は、苦痛である理由が違うのだ。
 幽々子は今も確かに、紫が居ない時間を苦痛に思っている。けれどそれは、退屈で仕方がないからではない。身体が紫を求めて、疼くからだ。
「はっ、ンッ」
 彼女の和服は、はだけられ、下着の前のチャックは開かれている。――紫が昨日、それをきちんと閉めたにも関わらず、だ。
 では誰が? ――そこを開いたのは、紛れもない、幽々子本人だった。
 そのチャックの下で幽々子を苛み続けていた玩具を、彼女はゆっくりと抜き差しする。
「はぁんッ」
 膣の敏感な所が擦られ、彼女の身体はびくんと震える。
 けれども、この程度では足りなかった。紫から与えられる淫楽は、こんなものではない。
 彼女の身体には縄がきつく食い込み、たわわな乳の先端は堅く尖っている。
 幽々子は、はだけた和服を脱ぎ捨てた。もう我慢ができなかった。
 玩具に膣を苛めさせている幽々子の手が、彼女も知らず、速まる。それはつまり、彼女の得る快楽が大きくなる、ということ。
「あッ、は、ッ!」
 彼女のそこは、それでも足りないとばかりに、スイッチの切られたバイブレータを求める。
 膣だけでなく、彼女は縄によって強調された自らの豊かな乳房をこね、乳首を苛める。紫がしているように。
 けれど、紫にされる時ほどには、彼女は快楽に溺れることができないでいる。
「ひ、は、あぁぁっ……」
 じゅぷ、ずぷと、黒の張り子と自分の膣が結合する音を聞き、空いた手で胸を虐げ続ける。
 気持ちよくないわけではない。気持ちいい。ただ、彼女が欲しいと思っているよりも、その量がずっと少なすぎるだけだ。
(自分でするのは、ちょっと抵抗あるけど)
 それでも、幽々子は、胸を弄っていた手を、そこへ伸ばすのを止めない。
 黒いエナメルの下着の、後ろのチャックへ。
 そこを、じぃ、と開く。
 幽々子には見えないが、彼女の尻穴からは、アナルビーズの紐が垂れ下がっている。――いやらしい紐が。
「ん、んぅッ」
 幽々子は、淫裂に差し込まれたバイブレータで秘部を苛めながら、紐を手探りで掴むと、ゆっくりと引っ張る。
 微かな抵抗の後、にゅるんと珠が這い出る。
「ひぁッ!」
 その刺激で、幽々子の声は多少高くなった。
 けれども、その快楽はやはり、紫にされたときに比べれば、小さなものだった。
 それでも、何もせずじっとして疼きを堪えるよりも、自らを慰めたほうがずっと良かった。
 紫にされた時のような、脚から力が抜けてしまうほどの快楽を得ることはできない。それを知りながらも、幽々子は、自らの尻穴から生える紐を一息に引っ張ろうと――、
「あらあら幽々子。お嬢様なのに、はしたないわよ? 一人でするだなんて」
「――っ!?」
 慌てて声がした方へ振り向く。この部屋には幽々子以外に誰も居ないはずだった。
 だが、いつの間に入ったのだろう、閉まった入り口の扉に紫が寄りかかっていた。
 音がしないからと、幽々子は安心していた。――隙間という、紫特有の移動手段のことを、彼女はすっかり失念していたのだ。
 何か言わないと。幽々子はそう思って必死に言葉を考える。しかし、こんなときに限って、言うべき言葉が出てこない。結局彼女は、口をぱくぱくと開閉するだけに終わる。
 そんな彼女に対して、紫はどこか小馬鹿にしているような笑いを見せて、ゆっくりと語りかける。
「幽々子ったら、私が毎日毎日これでもかってくらい犯してあげてるのに、それでも満足できないのかしら?」
 口元を隠し、どこか軽く馬鹿にしたような目線を、紫は向ける。
 幽々子は呆然としながら、それでも必死に頭を回転させた。
「な、なっ、私は」
 私は――、その後に続けるべき言葉を失っている内に、紫はベッドの上の幽々子に近づいてゆく。
 その手には、ハケといくつかのボトルが握られていた。
「まぁ、幽々子が満足できなくて悶々としてるっていうなら、好都合なのよね」
 紫はそう呟いた。ただ、幽々子に聞かせるためというよりは、ただの独り言のように思われた。
 そして彼女はボトルとハケを幽々子の側に置くと、おもむろに、幽々子の身体を戒める縄を解き始めた。
「え、え?」
 突然の事に幽々子は困惑する。押し倒されて、また性の宴に没頭される・するものだと思っていたからだ。
 けれども、紫は手慣れた手つきで縄を解いていく。幽々子の身体が、久々に縄の圧迫から解放される。
 拘束の跡が、赤い線となって彼女の身体に残っていた。
「あら、ちょっとキツすぎたのね、結構赤くなってる――ちゅる」
「ちょっと、紫、くすぐったいっ」
 紫は、幽々子の肌の赤線を、ちろちろと舐めていく。鎖骨から、下へ下へ。
 幽々子は身を捩ってその舌から逃れようとしたが、紫が手でもって押さえ、それは叶わなかった。
「っと、これも外してあげなくちゃ――」
 ナメクジのように這い回っていた舌が、幽々子の臍まで達した時、紫は幽々子の下着を下ろしていった。
 膝へ、足へ。抜かれる下着。
 露わになる、女穴と尻穴の玩具。幽々子は今更ながら羞恥に顔を染め、紫から顔をそらした。
 紫は幽々子に慈しむような視線を向けると、それに手をかける。
「ん、辛くないようにゆっくり抜いてあげる」
 幽々子の膣をずっと苛み続けていた張り子、尻穴を押し広げ続けていた珠。
 彼女に大きすぎる刺激を与えないよう、体内からゆっくりと出て行く。
「はっ、ふぅぅ」
 足りない刺激のもどかしさから、彼女はようやく解放された。
 相変わらず、身体は欲しい欲しいと主張していたのだけれど。
 紫はゆっくりと、幽々子のそばに置いたボトルを手に取った。――ピンク色だ。
「紫、……それ何?」
 何か嫌な予感を感じながら、幽々子は紫に尋ねる。
 よくぞ訊いてくれたというような表情になる紫。ボトルの蓋をゆっくりと回転させていく。
 その中には、どろりとした、粘っこそうなピンクの液体が入っていた。ボトルのピンク色は、どうもその液体の色のようだった。
「塗料よ、塗料」
「塗料?」
「そうよ、貴女に塗ってあげるの」
「……何で?」
「質問ばっかりね、貴女は。――だって、丸裸で外を歩きたくないでしょ?」
 幽々子は、紫のその言葉の意味を捉えかねた。
 何を言っているというのか?
 紫は、幽々子の疑問に応える。
「幻想郷の外をお散歩しましょう、幽々子。そのための服を『描いて』あげる」




















 幻想郷ではなく、その外側の世界。
 そろそろ人々が家に帰ろうかと言い出すような時間帯、日本の、中規模の駅。その外にある広場。
 そこに、紫と幽々子は居た。紫の隙間経由でだ。
 紫の姿とて大概だが、幽々子の姿はそれ以上に、外の世界では――仮に幻想郷であっても――ある種異様だった。
 幽々子は首輪を嵌めている。首輪からはリードが伸び、紫の手元へと繋がっている。
 いつもの和服ではなく、鮮やかなピンクのレオタードを着ている。――ただ、その服をレオタードと言って片付けてしまうにはどこか違和感が残った。
 それは、レオタードの尻部から生える、長く黒い尻尾のせいでもない。
 ただ唯一言えるのは、それらがとても扇情的だということだ。
 幽々子の顔は真っ赤だった。
「……紫、ここ、人が一杯居るんだけど……」
「そうよ? 折角外の世界に来たんだから、栄えてるところを見て回った方が良いでしょう?」
 紫は余裕の笑みを見せる。
 絶世の美人二人に気づいた通行人達が、彼女らへちらちらと視線を向けている。
 ただその視線は、殆ど幽々子に向けられていた。
 それは、幽々子の服装が原因だった。
 とはいっても、レオタードを着ているからでも、首輪を嵌めているからでもない。
「ねえ、――妙に視線を感じるんだけど、ばれないんじゃなかったの?」
「んー? 気のせいでしょう。さ、入りましょう? 目的地までは電車に乗らないちゃならないから」
 そう言って、紫は駅の建物へと、ゆっくりと歩き始める。
 幽々子は遅れないようにそれに付いていく。一歩歩くごとに、抑えるものがない胸はふるふると揺れる。尻尾はゆらゆらと揺れる。
 今の格好で、駅前広場よりずっと人が居る(と、幽々子は聞いている)駅の中へ入るのは勇気のいることだったが、しかしそうせざるを得ないのだった。じっとしていたら、首輪が引っかかって息が詰まってしまう。
 ばれているのでは?
 歩きながら、幽々子はそう考える。というよりも、どう考えたって、ばれていない方が不自然だった。
 幽々子が着ているのは、実はレオタードではない。というか、彼女は何も着ていない。
 彼女の身体のレオタードは、紫によって精巧に描かれたボディペイントだった。――彼女は今、何も身につけていなかった。
「ねぇ紫。……これ、ばれてない?」
「大丈夫よ、大丈夫。汗をかきさえしなければ。汗かいて塗料が落ちちゃったらバレるかもしれないけど、そうでないなら問題はないわ」
 そうは言っても、紫の言葉は大嘘のように、幽々子には思われた。明らかに、自分には過剰な視線が注がれているし、その視線が孕むものは、普通のそれとは異なる。
 好色、批難、好奇、欲望。そういう視線が、彼女に注がれていた。外の世界の人々がどういう生活をしているのか、幽々子は詳しく知らない。けれども、こんな視線を日常的に交わしているはずが無いのは、彼女にも分かった。
 信用できない。そう思いながらも、幽々子は紫に従って歩くしかなかった。首輪で息が詰まって窒息するなどというのは、勘弁願いたいところだったからだ。
 エントランスホール、平たくいえば広場らしき場所に着く。ここから券売所や各ホームに行けるようだ。吹き抜け五階建ての駅舎内は、様々なテナントが入り、もはや何のための建物なのか分からなくなってきているが――幽々子はそんなことを知らない。
 分かるのは、各階に大勢の人間がいることだった。幽々子は人だかりに慣れていない。足がすくんだ。
「ふぅぅッ……」
 幽々子は熱い吐息を一つつく。休みたかった。だが、紫は立ち止まらず、先に進む。電車に乗るというのは、なかなか忙しいものらしい。
 行き交う人々――家に帰る人が多いらしい――は、すれ違うたびに二人をちらちらと眺めていった。抑えるものが無いために歩くたびに揺れる幽々子の胸や、レオタードには本来ついていないはずの黒い尻尾などを。
「ふふ、幽々子――尻尾はどう? 気に入ってる?」
 尻尾。それは幽々子の尻から生えているもののことだ。
 パッと見には、レオタードから生えているように見えるだろう。だが、レオタードは偽物だ。ということは当然、レオタードの布から生えているはずもない。
 それは、幽々子の尻から生えている。文字通り、幽々子の尻穴から。
 俗に言うアナルプラグ。それに、細工を施して尻尾部分を取り付けたものだった。
「……歩きづらいだけよ――それに、気付かれでもしたら――」
「あら、それはそれでいいんじゃないの? 外の世界に出る機会なんて滅多に無いんだし、旅の恥は掻き捨てってことで、いやらしいところを見せつけちゃえば」
「そんなッ! ……あ」
 思わず上げた大きな大きな声。周りの人々が、幽々子に視線を向ける。――ごまかしているとはいえ、ほぼ裸体の彼女へ。
 紫は、あらあらとでも言いそうな顔をした。
 人々は、一部を除いて幽々子から目を離し、再び思い思いの方向へ歩き始める。
 だが、相変わらず、幽々子は視線を感じ続けていた。新たに通りかかる見知らぬ人々。その人々が向けてくる視線を。
「うぅ……ッ」
 込められた感情こそ多々あれ、同様にギトギトとした視線に晒されながら、幽々子は歩き続ける。顔を赤らめ、うつむいて。ピンクに塗られた豊かな胸と、尻穴から生える尻尾を震えさせながら。
 改札(紫がすでにチケットを買っていた)を通る。その向こうは上り階段になっていた。広大な駅舎内を歩くうち、いつのまにか地下に下っていたらしい。建物の構造は、幽々子が感じたよりも複雑だった。
 そして、長い階段は、腸内のプラグに幽々子を責めさせた。
「あ、くぅ……」
 足を踏みだすたびに、性感器官と化した腸壁に、硬いものがこすれていく。
 その微妙な快楽に、幽々子の息は熱くなり、そしてなんとも言えないもどかしさを感じる。
 上るにつれ、下からの視線が増えている気がした――下からならば、色々と丸見えだった。幽々子はさっさと駆け上がりたかった。が、わざとらしく紫はゆっくり歩いていた。
 ようやくホームに出た。幽々子はそう感じた。実際の時間がどうであれ、幽々子には一時間ほどにも思えた。
 一日の疲れを肩に乗せた人々が、帰りの電車を待っていた。
 何も着ていないという幽々子の痴態に気づいた数人が、ちらちらと視線を寄こす。幽々子がそちらを向けば、慌てて気づいていない振りをする。
 露骨に視線を寄こす人もいた。顔へ、胸へ、尻へ、膣へ、足へ。そんな視線は皆同様に、好色だった。
 そんな眼に晒されることに、悦びを覚える自分がいると、幽々子は気付く。
 痴態を見られることで快楽を感じてしまう。だから、誤魔化せるはずはないのに、身体を塗って服を着ているかのように見せ掛け、全裸で外を歩き回る痴女。しかも、カモフラージュに選んだのは、レオタードなどという露出の高い服。挙げ句の果てには、自分は淫らな雌だということを主張するかのような尾、それもアナルプラグ。
 そういう女に対し、周りはどんなレッテルを貼るか――変態。
 彼女の子宮は疼いていた。
 電車がやって来る。紫のスペルカードで見たことはあったが、実際に運用されているところを幽々子が見るのは、これが初めてだ。
 停車する電車。空気が抜けるような音とともに扉が緩やかに開く。たくさんの人が吐き出される。
 降りる人々は、偽りのレオタードを着た幽々子に視線を向けながらも、無関心を装ってホームから出て行く。
 自らの恥部が湿り気を帯び、胸の先端が尖り始めていることに、幽々子は気づいていた。それがどれ程、はしたない事か――彼女にはもちろん分かっている。分かっているからこそ、見られることによる快楽が、助長されてしまう。
 それは露出癖と呼ばれる傾向、立派な変態的嗜好だが、彼女はそのことに気づいていない。
「ほら幽々子、乗りましょう?」
 そう言って、紫は躊躇なく歩を進める。
 初めて乗る電車にいささか不安はあったが、首輪に繋がるリードが引かれる以上、幽々子は紫に付き従うしかなかった。
 二人の後ろで、扉が閉まる。幽々子にその理屈は分からないが、便利なものだった。
 ほどなくして、電車は発進する。車内は、一日の疲れを肩に乗せた人々であふれていた。隣の人と肩がぶつかってしまうほど混みあっていて、当然、椅子には座る余裕など無い。二人は四方八方をぎゅうぎゅうに囲まれた。いわゆる満員電車である。
 妙に男性が多いことを、幽々子はいぶかった――落ち着かない。
「旦那が働いて、妻は家で家事をすることが多いの。仕事帰りの時間帯にこうなるのは、良くあることよ」
 紫が耳元で呟く。幽々子にとって最も信用できない相手だったが、しかしこの場では、最も信用するしかない相手だった。
 ただ、原因が分かったところで落ち着けようはずも無い。近くの男性らは、物珍しい目で、幽々子をちらちらと眺めていた。明らかに、レオタードが偽物であることに気づいている。
 たくさんの殿方に裸体を見られている――今までの幽々子には考えられないことだった。
 それは、今でも大して変わっていない。
 痴女だと、変態だと思われている――まんざらでもない幽々子がいた。
「で、幽々子、ちょっと命令」
 幽々子にしか聞こえない程の大きさで、紫がささやいた。
 優しげながら否定を許さないその口調に、不吉なものを感じながら、幽々子は問う。
「……何?」
「あのね……んー、あの子がいいかしら」
 紫が顎でしゃくった先には、黒い服――幽々子は知らないが、それは学生服と呼ばれている――を着た少年。十四・五といったところだろうか。幽々子らと反対側の扉の辺りに立ち、流れる景色を眺めているようだった。
 鞄を肩にかけた彼もまた、背中に疲れを乗せていた。
 ただ、幽々子に気付いては居ないようだった。
「あの子がどうかしたの?」
「ん。襲いなさい」
 紫の口から滑り出した言葉は、幽々子の常識の範疇をあまりに超えていた。
 そのせいなのか、言葉が意識のうえを滑っていった。
「――ごめん、何って?」
「だからね、あの子にえっちな事をしてきなさい」
 幽々子は眼を見張り、紫の顔をまじまじと眺めた。
 だが、その顔は明らかに正気だった。
 紫は幽々子の首輪からリードだけ外すと、促すようにその背中を押す。
 無論、促されたからといってそんな行動に出られるほど、幽々子は非常識ではない。
 だいいち、人混みが邪魔だ。少年と幽々子の間には、みっちりと人が詰まっている。掻き分けるのは大変なことだった。
 しかし、だからといって、紫には許すつもりが無いらしかった。
「あなたを置いて帰っちゃおうかしらぁ」
 それは明確な脅しだった。「帰る」というのは、幻想郷へ、ということだろう。
 幽々子がこのまま何もしなければ、確実に、紫は帰るだろう。八雲紫とは、そういう事ができる妖怪だった。
 幽々子は、幻想郷へと帰る手段を持っていない。紫は生命線に等しい。
「……卑怯よぉ」
「あら、知らなかった?」
 恨みがましい目で紫を見るも、白々しい笑顔が返ってくるばかりだった。その表情は、本気であることをうかがわせた。
 何をどうしようと、逆らいようが無い。
 幽々子は意を決した。少年には申し訳ないが、紫の命令に従うしかない。
 そして、目の前の男たちを、掻き分けていく。とはいえ、人混みを経験したことなど、幽々子には殆ど無い。しかも、電車の中であるから、揺れる。足場は不安定だ。
 だから、肩がぶつかる。腰がぶつかる。乗車率が軽く三ケタに達するような車内では仕方の無いことだ。そんな中を突き進もうとするのだから尚更だ。
 ぶつかられた男たち――中年なり青年なり、はたまた老人なり――は、得をしたといわんばかりの表情になる。
「ふぅっ」
 人の隙間に身体を滑り込ませ割り込む幽々子。スーツ姿の中年の背に、豊かな胸が押し当てられる。下着も何もつけていない乳房がむにむにと形を変え、乳首が擦れる。狙ってそうしているわけではない。そうでもしないと通り抜けられないのだ。
 相も変らぬ好色な視線を向けられる。男たちは、間近に来た幽々子の身体を、嘗め回すように眺めていた。
 やたら厚い人の壁を掻き分け掻き分け、幽々子は、反対側の扉、すなわち少年の元へようやくたどり着く。
 すぐ背後に着いたにも関わらず彼は未だに彼女に気づいていない。淫らなことを仕掛けるならば、今が好機だった。
 だが、幽々子は動けなかった。何をすればいいのか分からないのだ。
 それもそのはず、彼女は今までの一ヶ月間に経験こそ積んだが、自ら攻めたことはない。
 愛撫するにしても、言われたことをこなしていたのだ。いわば、受動的な立場にしかなかった。
「とりあえず、ズボンの上から撫でたりしてあげたら?」
 耳元で聞こえた囁きに、幽々子は思わず驚く。
 間違いなく紫の声だった。長年の付き合い、聴き間違えるはずがない。
 だが見渡すと、紫は、元の場所に居るままだ。
「そんなに驚かないの。あなたの耳元に隙間を開いて声を送ってるのよ」
 再び、耳元からの声。驚くなと言う方が無茶だった。
 楽しそうな声で、紫は続ける。
「何やっていいか分からないんじゃないかと思ってね。アドバイスしてあげる」
 アドバイスとは名ばかりで、実質は命令だ。――しかし、幽々子にとって、無いよりマシなのは事実だった。本当に、無いよりマシなだけだが。
 とにかく、アドバイスどおりにするため、幽々子は手を伸ばす。坊主頭の少年は、未だ彼女に気付いていない。ドアから外の風景を眺めてこそいるが、目を奪われるようなものはない。単に、疲れて注意力が散漫になっているようだった。
「たぶん野球部なのね、この子」
 紫が何か言ったが、幽々子には理解できなかった。
 莫大な申し訳なさと羞恥を感じながら、少年の横から手を回し、布越しに股間をなぞる。少年は違和感に気付きぴくりと反応した。そして後ろをちらりと見、目を見開いて、再び前へ向き直る。学生服の黒い背中は強ばっていた。恐怖か、緊張か、はたまた他の感情か。レオタードが偽物であることには気付いたのだろうか。いずれにせよ、異様なわけだが。
「密着したら?」
 そんな指示。ためらいを覚えながら、幽々子は少年に身体を寄せていく。胸をぴったりと押しつける。柔らかな胸は圧力に負けて形を変える。少年は振り返りこそしなかったが、何が自分の背に当たっているか分かっているようだった。
 周りから、あからさまな視線が向けられていることに、幽々子は気付いた。ニヤニヤと、いやらしい視線が注がれる。
 彼らは自分のことをどう考えているのか――ちらりと幽々子は思った。
 ボディーペイントで露出して、菊門から尻尾を生やしたままで歩き回り、電車に乗る変態女。先程まではそれだけだった。そして、公衆の面前で痴漢すらはたらく。
 それは幽々子の頭の中に浮かんだ一つの考えにすぎないが、我が身へ精液のように浴びせられる視線が、そんな風に言っているように思われた。
 そんな目を無遠慮に浴びせかけられることで、幽々子の身体は疼いた。
 幽々子は再び、少年の股間をやさしく撫でる。
 先程とは感触が違った。硬くなっている。勃起しているのだ。
 恐れからか緊張からか、それとも興奮からなのか、少年の息はかすかに荒い。
 幽々子の吐息もそうだった。こちらの原因は、身体の興奮以外のなにものでもない。
 プラグは入ったままであるし、視線も浴びせられ続けている。何より彼女は今、性行為に及んでいるのだ。その身体は、否応なく欲しがってしまう。
 幽々子の道徳観は、一月の間に変質している。しっかりと刻み込まれた淫楽。それによって、快楽を積極的に肯定するようになっていた。今の彼女が、そんな自分を否定することは、無い。
 苦しそう。
 少年のモノは、勃起したせいで、ズボンに抑えつけられていた。その辺りの感覚は、男性器を持たない幽々子にはよく分からなかったが、痛いだろうという程度の見当はついた。
 幽々子は、少年のズボンのジッパーを下ろしていく。
 解き放ってやらないと。彼女はそう思っていた。
 膨らみに引っ掛かりながらもジッパーを下ろしきり、ソレを露出させる。
「う」
 少年が初めて声をあげた。どういう意味合いの「う」なのか、幽々子にははっきりしなかった。だが、少年のその声を、幽々子はどこか嬉しく感じた。
 彼の一物は、紫のモノ(唯一の比較対象)よりも幾分か小振りだった。
「あらら、これは鎮めてあげないとね」
 耳元から紫の声が流れてくる。だが幽々子は、言われずともそうするつもりだった。「そうしなくては可哀相だ」という免罪符のもとに。
 白い手が、指が、露出した彼の性器を包み込む。
 どうやったら人間の身体がここまで硬くなれるのだろう。そんな感触だった。
 無機的な声を幽々子の耳は捉えた。それは彼女の頭上から聞こえ――二秒ほど後には、二人の目の前の扉が、プシュンという音とともに開いた。
 目の前に並ぶ人人人。幽々子と少年の有様に気づき、一様に目を見開いた。
「ひっ」
 言葉にならない小さな悲鳴を、彼はあげた。
 けれどそれとは裏腹に、彼の一物はより硬く大きくなっていた。
 この子は見られて興奮している――幽々子はそう判断した。「自分と同じように」。
 何の根拠もない親近感を覚えながら、幽々子は指を動かし始めた。
「うぁぁッ」
 裏返りかけの声。その声に幽々子は恍惚感と興奮を覚える。
 少年は背を震わせ、その刺激――おそらくは人生初の刺激――を受けた。
 少年は、ホームへ走るなりなんなりして逃げることができた。――だが、彼は残っていた。
 それは何故か、幽々子には分かった気がした。自分があの地下室から出られないのと同じなのだ。
 呆けていた人々は、ようやく我にかえり、いそいそと電車に乗り込み始めた。
 人の波に、二人は内へ内へ押し込められる。
 そして、扉が閉まる。
「その調子よ、幽々子」
 自分の行為を肯定されて、幽々子はさらに自分の行為へと没頭していく。
 だから、自らの身体へと後ろから伸びてくる手に気付かなかった。
「んっ、……?」
 胸を触られた。
 不意に訪れた刺激に、幽々子は甘やかな声をあげる。
 幽々子の知らぬ間に後ろから伸びてきていたその手は、そのまま、ゆっくりと、その胸を揉みしだき始める。
「はぁぁ……」
 触っているのは、紫ではなかった。その手は紫のものではなかった。
 では誰が、と幽々子は回らない頭で訝しがったが、密着するほどに人が密集した車内では、振り向きようもない。
 柔かな乳房を、塗りたくられた塗料の上からやわやわと堪能するその指先。幽々子に、儚く、けれども確かな快楽を与える。
 そのもどかしいような感覚に、幽々子はしばし惚ける。
「幽々子、手がお留守」
 紫にたしなめられ、ようやく幽々子は我に帰る。
 彼女は、少年のモノを握ったままだった。そのつもりは無かったにせよ、結果的に焦らすことになってしまった。
 申し訳ないと思って、幽々子は『一歩先に進む』。
 少年の肩を掴んでクルリと回し、自分の方に向けさせた。上気したその顔は、幽々子の姿を見て、尚更紅くなった。
 いくら塗料を塗ったとはいえ、服などは身に着けていない幽々子。
 せいぜいが、紫に着けられた首輪程度だ。そしてそれは、むしろ全裸よりも淫靡となる。
 思春期の男子が間近で見るには、あまりにも刺激的な姿だった。
「わ、うわぁ――」
 少年の口から、ため息がこぼれた。
 だが、幽々子がこれからしようとしていることは、刺激的の一言でも済まないほどのことだった。
 少年のもとに、幽々子は屈みこんだ。上を指す男の象徴へ、顔をゆっくり近づける。
 さらに、口を開いて、その若々しい陰茎を迎え入れた。
 一日中下着の中で蒸れていたソレは、汗の匂いと、かすかな恥垢の匂いがする。
「あぁ、う、うぅ」
 驚きと羞恥と刺激で、少年は情けない声を上げた。
 その反応に、幽々子はどこか満足すらも覚えた。
 自分の行為を悦んでもらえている。そんな意識が、幽々子の脳に有った。
 周囲の男たちは、二人に交互に視線を送る。幽々子に淫らな視線を、少年に羨望の視線を。
 露骨に荒い呼吸をしているものもいれば、状況をしっかり目に焼き付けようと、凝視している者もあった。
 そんな視線をもっと浴びたくて、そして何より、少年をもっと悦ばせたくて、幽々子は舌を動かしはじめる。
「あらあら積極的ね。私とするときも、それぐらいしてちょうだいな」
 耳元から紫の声。
 今度からは自分からやろうと、幽々子はぼんやりと考えた。だが、そんなことよりも、今は少年のモノの事だった。
 どのように慰めるか考えるのに、紫への口淫の経験が役に立った。
 紫に教わったとおりにすれば良いのではないか。
「じゅる、んっ、ふぅぅ」
 若々しい匂いに興奮を覚えながら、幽々子は舌を絡めていく。微かに溜まった垢を、舌でこそげ落とすかのように。
 その舌使いは、紫によって磨かれた技術だ。一ヵ月の急仕込みとはいえ、かなりのテクニックだった。
「うっ、わ、やめっ」
 そんな幽々子の愛撫に、童貞であろう少年が、堪えられるはずもなく。あがったのは、裏返った声だった。
 女の子みたい――幽々子の口が、笑みを形作る。
「いいわよ幽々子。でも、もっとサービスしてみたら?」
 紫の助言。しかし、サービスと一口に言われたところで、この状況から他に何が出来るか、幽々子には分からなかった。
 一ヵ月みっちりたたき込まれたということは、裏を返せば付け焼き刃ということだ。基本は出来ても、応用が利かない。
 紫もその辺りは心得ていたのか、アドバイスを具体化する。
「そうね、例えば……口でしながら、自分で慰めるところを見せてあげるとかね。それは、他の乗客へのサービスにもなるわ」
 紫が言っていることは、要するに、公衆の面前でオナニーしろということだ。それも、フェラチオで奉仕しながら。
 それは、あまりにも淫らな行いなのだが――ただ、幽々子がそのとき考えたのは、それが素晴らしいアイデアだ、ということくらいだった。
 モノから口を離すことなしに、幽々子は自らの秘部へと指を伸ばしていく。
 白い指先が優しく触れる。既に濡れそぼっていたそこは、たったそれだけで、くちゃっと水音を立てた。
 解れたそこは、甘い蜜を滴らせ、穴を埋めるものを求めていた。
 そんな淫らな裂け目へと、幽々子は自らの指をゆっくり沈めていく。
「んふぅぅ」
 恥肉が割り開かれていく感触に、幽々子は官能の声をあげる。周りの男みなが、一も二もなく指を咥えこむ幽々子の秘所を見ていた。
「気持ちいいっていうのはね、幽々子。とってもいいことなの」
 幽々子の常識に、新たな一文が書き加えられる。
 紫の言うことが事実なら、自分がしていることは正しく、奨励されるべきだ――そんな意識が芽生え、勢い良く育ってゆく。
 幽々子は指の動きを速め、さらに、もう片方の手で、肛虐を与えるものを弄り回す。
 けれど、口を離すことはなかった。それで口を離してしまえば、本末転倒だ。
「……きもひいい?」
 肉棒を口に咥えたまま、幽々子は少年に問うた。
 少年は、コクコクと首を縦に振った。
 ギャラリーは、口にするのもはばかられる程に卑猥な幽々子のさまに、舌なめずりをしている。
 けれど、そんなことには構わず、幽々子は一心に唇を蠢かし、肉幹を扱く。舌先で、亀頭をれるれると舐めまわす。
「あ、あッ、うわぁっ!」
 少年の腰が浮き上がる。刹那、彼の一物の先端から、白濁が勢いよく放たれた。
 幽々子は、その若いたぎりを、余すことなく口腔で受けとめた。
 若々しい精子を、彼女は味わい、嚥下していった。その苦味と匂いに、どうしようもない興奮を覚えてしまう。
 尿道に残るごくわずかな精子まで、残さずきちんと吸い取ってから、幽々子はモノから口を離す。
 少年は腰をかくつかせながら、荒い息を吐いていた。顔は紅潮し、受けた羞恥と快楽の大きさを物語っている。
 電車が止まった。どこかの駅に止まったらしい。幽々子は立ち上がる。中途半端に自慰をしたせいか、足がふらついた。
 ふと、幽々子の肩が叩かれた。誰かと思えば、いつの間にやら紫が、幽々子の元まで移動していた。
「到着。降りるわよ?」
 そう言って、隙間妖怪は、亡霊の首輪にリードをはめ直した。
 周囲は異様な二人に、思わず道を譲る。
「じゃぁね、またいつか。――そうね、今度は私が食べてあげる」
 去り際、紫は少年にそう言い残した。少年はほうけた顔で頷いた。
 紫はいつでも幻想郷の外に出られる。そのことを思い出して、幽々子は少しだけ、羨ましくなった。
 まさか本当の意味で食べるわけではあるまい。
「さ、行きましょうか幽々子」
 促されて、幽々子は足を踏み出そうとするのだが、その足取りはおぼつかなかった。
 幽々子はさきほどのオナニーで絶頂を迎えていない。中途半端に焦らされた身体は、虚脱していた。
 歩けない。膝がカクカクと震えた。
 見かねた紫が、その肩を抱くようにして、歩かせる。
 熱い虚脱の中に置かれた幽々子は、逆らうこともなしに、歩いて行く。
 いくらかの人々に続き、電車から降りる。抱き合うようにして歩く二人を、周囲は好奇の目で眺めた。まして幽々子の姿が姿であった。
 乗った駅よりも、広く綺麗なホームだった。とろんとした眼で、幽々子は周囲を不安げに眺める。見知らぬ土地だ。紫とはぐれでもすれば、すぐに迷子になる。
 ここは人も多い。男――ペニスを持つもの――も多い。
 今のような姿で迷子になれば、どうされてしまうのか。そう考えて、幽々子の脳はさらに桃に染まった。
 幽々子はどこかに連れられていく。どこに向かって歩いているのか気にする余裕も、幽々子には無かった。さんざん焦らされたツケが、今になって回ってきたのだ。
 なんでもいいからイきたかった。身体の奥で蛇が暴れ回っている――それを鎮めることばかりが、幽々子の頭の中にあった。
 通行人全てが、いや世界全体が、自分を淫らな眼で見ている気がした。
 いやらしく媚びを売れば、抱いてくれるだろうか、イかせてくれるだろうか――そんな、何もかもをかなぐり捨てたような考えすら浮かんだ。
 歩かされる。歩かされる。周りの人間達が自分を見ている。幽々子は今視線で犯されていた。
 それが、幽々子にとっては何よりも辛い。視線だけで達することは出来ないからだ。精神の悦びでは足りなかった。肉体の悦びが必要だった。
 ――気がつけば、便所らしきところに連れてこられていた。
 個室の中に入る。二人入っても動ける程度の余裕があった。
 便器を背に、幽々子は紫と向かい合った。
「紫っ……、ここは?」
 言葉を喋るのも辛かった。
 誰かと身体を交えたくて、仕方がなかった。
 交えることの出来る相手が、目の前に居た。
「ん、ちょっとね、あなたを抱きかかえて歩くのも大変だから、荒療治といこうかとね」
「荒療治?」
 言葉の意味を理解するのに時間が掛かった。熱に浮かされているからなのか、幽々子は今、頭の回転すらも遅くなっているのだ。
 もっとも、普段どおりの思考であっても、紫の言うことは迂遠すぎて分からない。
「うふふ、幽々子、喜んでいいのよ――イけるんだから」
 そう言うと、紫はおもむろに、導師服を脱ぎ始める。
 艶やかな下着。それをずらし、――現れるのは男性器。
「あ、あぁ」
 それが欲しくてたまらなかった。幽々子の声帯が、思わず震えた。
 交われば、達することが出来るのだ。
「あらら、物欲しそうな顔しちゃって。――そんなに欲しいの?」
 その問いに、幽々子は首を縦に振った。
 にやぁぁ、と、紫の口が吊り上がったが、そんなことを気にするほど、幽々子に余裕は無かった。
 タンク部分に背でもたれかかり、紫が入ってこれるように、脚を広げた。
 晒されたその場所は、蜜を滴らせて、男を欲していた。
「じゃ、挿れてあげるッ、――ふふ、せいぜい乱れなさいな!」
 紫が滑り込んでくる。遠慮も何もない。
 膣の奥までが一息に肉棒で埋まり、幽々子は眼を見開いた。
「はぁッ――んむぅぅぅッ!」
 紫が、口を塞いでいた。唇で唇を。舌がぬるりと滑り込み、絡み付く。
 脳髄が蕩かされているようだった。幽々子の目じりは恍惚で垂れ下がっている。より多くの愉悦を求めて、彼女はその両手を紫の背中に回し、ぎゅうと抱きついた。
 紫は口で繋がったまま、抽送を始めた。さらには、幽々子の尻に手を回し、アナルプラグを抜き差ししはじめる。
「んッ、うぅっ、れろっ、はッ、んんぅ!」
 三箇所から訪れる性感に、幽々子は翻弄される。
 下半身も上半身も快楽に蕩けてしまった。風呂場の中で眠る時のような感覚。その中で、早鐘を打ち続ける心臓だけがはっきりと知覚できた。
 幽々子の肉穴は泥濘となり、紫の運動に合わせて淫らな音を鳴らす。本人へ、オーバーキャパシティな快楽を叩きつけていく。
 紫は遠慮もなしに、幽々子の恥部へ腰を叩きつけ続けていた。その激しさは、次第に強くなっていく。
 さらには、そのピストン運動に合わせて、他の愛撫をも強めていく。胸にまで手を伸ばし、突かれるたびにふるふると震える乳を鷲掴みにした。
 声帯は震え続けていた。だが、それが明確な嬌声となることは無い。繋がった口腔の中で反響するばかりだった。
 急に、そこへ乱入する者があらわれる。
「それで、取引は上手くいきそうなんですか?」
「いやぁそれが中々。先方の頭とサイフが堅い」
 男二人の声。幽々子の心臓が凍った。
 彼女は事態を了解した。入るときは気にする余裕などなかったが、ここは、男子便所だったのだ。
 個室とはいえ、声など丸聞こえだ。声を出したらばれてしまう。うめき声でも嬌声でも何でも、そこに誰かいるということは伝わる。女がいるということが伝わる。
 しかし、そんなことで、紫が淫虐を中断するはずも無い。
 手足ががくがくと痙攣していた。タンクにもたれ掛かっていなければ、幽々子は今頃くず折れていただろう。紫の背中に回した指は、力を込めすぎて真っ白になっていた。
 男たちは、幽々子に理解できない会話を続けている。今は気づかれていないらしい。だが、いつ気づかれても、おかしくなかった。
 じゅぷり、くちゅり、ずぷん。三種の異なる音が、それぞれ異なったリズムで鳴る。
 今の幽々子は、紫によって奏でられる楽器だった。それも、とびきり淫らな楽器だった。
 そしてその演奏は、次第にクライマックスに近づいてゆく。
 終わりは、案外早かった。
 アナルプラグが思い切り引き抜かれ、それが火種となった。
「んッむ――ぅぅウんッ!!」
 高まりきった快楽が、風船のようにあっさりと弾けた。
 けれど、解放された中身は幽々子の全身を駆け巡って、焼き尽くした。声など、我慢できるはずもなかった。
 絶頂。口胸尻膣、四箇所での絶頂だった。視界が白に染まり、ここが公衆便所だということを忘れる。男二人のことを忘れる。その瞬間、幽々子の世界には、性の悦びしかなかった。
 収縮した膣が紫のモノを締め付けた。その刺激で、紫は射精する。粘つく濁ったリキッドが、幽々子の子宮を白く染める。腹の奥に叩きつけられる熱さで、幽々子はえもいわれぬ恍惚を味わった。
 紫が、一物を引き抜く、幽々子の体を解放し、便器へ座らせた。
 荒い呼吸の収まらない幽々子。彼女の尻穴から引き抜いたプラグを、紫は本人に舐めさせた。
 幽々子の尿道括約筋が弛緩し、黄金水がちょろちょろと零れだす。それにあわせて、あふれた精液も零れ落ちていった。
 導士服を再び着込みながら、紫はその痴態を凝視している。幽々子は、紫の視線に、たまらなく気持ち良さを感じる。
 排泄を見られることにすら、幽々子は興奮を覚えてしまっていた。
 幽々子が黄金水を出し終えてから、紫はプラグを隙間に放り込み、幽々子を立たせ、個室の扉を開けた。
 個室の外の様子が、幽々子の目にも映る。
 中年男が二人、小便器の前に立っていた――だが、明らかに姿勢が硬かったし、用も足していなかった。幽々子の先ほどの嬌声が丸聞こえだったのだろう。
 二人は、自分たちの後ろで扉が開いたことに気付き、ちらりと視線を向けた。
 そして、慌てて視線を前に戻した。男子便所に女が居るということ自体、異常なことなのだが――まして幽々子の姿が姿だった。
 露出目的でのボディペイントという時点で、十分に淫猥だ。その上、分泌された愛液で、恥部周りのボディペイントが溶け落ちていた。胸のペイントも、鷲掴みにされたせいで、掠れている。
 紫が、中年二人に手を伸ばした。肩を掴み、幽々子の方を向かせる。
 間抜けなことに、二人とも、男性器を露出したままだった。そしてそれは、硬く硬く勃起していた。
 彼らに紫が何をするのか、幽々子はぼんやりと見ていた。――まさか食べたりはしないだろうとは思っていたが。
「幽々子、この人たちがこんな風になっちゃったの、あなたのせいよ?」
 そうかも知れない、と、幽々子は考えた。
 さっきの声に、この姿。男が興奮するのも無理は無い、という事だ。
 少年への愛撫で生まれた、「新たな道徳」が、幽々子の中で主張をはじめる。
 鎮めなくては、と。
「どうすればいいの?」
「簡単な事よ、鎮めてあげればいいの。――そうね、お口に、胸に? 思いつく通りにやってみれば?」
 貞操も何も無い提案。しかし、幽々子は頷いた。
 彼女の中で、理屈は一応通っていた。彼らをそういう風にしてしまったのが自分だというならば、鎮めるのが責任だ。そういうことだった。
 幽々子は二人の間にかがみ込み――二本の怒張、まずは右側を舐り、唾液をまぶし始める。
「ちょっ、うおお」
 彼らは、自分が今置かれている状況を、現実だと思っているのだろうか。とても信じられない、という表情をしていた。
 ただ、これは紛れもない事実だった。
「んっ、よいしょ……」
 男の肉棒が十分に濡れ、てらてらとした輝きを放ち始めてから、幽々子はソレを豊満な双丘で挟み込んだ。
 指による圧迫で、それはむにゅう、と、形を変える。怒張を柔らかに包み込んだ。
 さらに、もう一人を引き寄せると、そのモノを、口に迎え入れた。ぷっくりした唇が、男自身を包む。
「うわッ」
「く、これは……」
 従順な幽々子へ、男達は、何かしら感動したような表情さえしている。
 幽々子はただ申し訳なさでそうしているだけであり、彼女にとっては当然のことであったのだが、常識の中で生きている彼らからすれば、夢のような話だった。
「ぺちゃ、ぢゅる」
 奉仕をしながら、幽々子は、口内に漂う微かな尿の味と、雄臭さが気に入り始めていた。
 淫らな雌としての下地は、一ヶ月の内に、紫によって作り上げられていた。それが、度重なる異常な経験で、目覚め始めていた。
 彼女の中で眠っていた被虐が目覚め、見も知りもせぬ男たちの慰み者となることに、喜びを見出していた。
 今や、奉仕することが悦びに繋がりつつある――少し男のモノを舐っただけで、幽々子の股間は再び熱い蜜を滴らせ始めていた。
 そうやって口淫に興じながらも、もう一方を胸で挟み擦ることを忘れない。にちにちと卑猥な音を立てる胸は、擦れるたびにペイントが落ちていっている。
 上目遣いで、幽々子は、男たちの表情をうかがった。彼女の技術に、恍惚としている。幽々子はそれを嬉しいと感じて、さらに愛撫を加えていく。
 ぴちゃぴちゃと、唾液の音がする。
 幽々子は両方の剛直をいったん解放すると、愛撫を逆転させる。舐めていたほうを挟み、挟んでいたほうを舐めはじめる。
 積極的にそれを行って、自らの胸と口を、雄の欲望で汚していく。
 男自身の熱さを、幽々子は肌でじかに感じていた。その熱さが、たまらない興奮を引き寄せていた。
 両脚を淫らに開いてみせる。したたる蜜が床を濡らした。解されきった尻穴は、ぱくぱくと、男根を求めるかのように収縮していた。
 いつまでもこうしていたい、幽々子の脳裏にそんな考えすら浮かんだ。しかし、終わりは直ぐにやって来る。
「う、うぉぉ、射精るっ」
 胸を堪能していた欲棒が、びゅるびゅると射精した。
 見知らぬ男の精液が幽々子の頬へ勢いよくぶちまけられ、汚していく。
 特濃のタンパク質。少し呼吸をすれば、精液の匂いが肺一杯に充満するだろう。
 さらにそれは、重力に従いどろりと滴って、胸にも零れ落ちた。
「くぅっ」
 もう一人の男、幽々子が口淫を施していた肉棒が、彼女の口から自身を引き抜いた。
 そして、その艶やかな髪に、たっぷりと白濁液をぶちまけた。
 女の命とでも言うべき二ヶ所をどろどろに汚されて、しかし幽々子は目じりをたれ下げた。
 頬に付着したそれを、少し指で掬い、ぺろりと舐めた。赤い舌は誘うような動きをしていた。
「満足していただけました?」
 口を閉ざしていた紫が、笑顔で男たちに問うた。
 二人はしばし呆けていたが、やがて頭を縦に振った。
「それはよかった。今日はここまでしかお相手してさしあげられませんが、またいつか、今度は私が」
 そう言って、妖怪の賢者は恭しく頭を下げた。
 幽々子もそれにあわせ、立ち上がり、頭を下げた。
 中年たちはなんとも奇妙な顔をして、どうすればよいのかに困っていた。
「さあ幽々子、きれいなお化粧をしてもらったことだし、行きましょう」
 そう言って、紫はリードを軽く引いた。
 幽々子はそれに従って、足を進める。
 彼女の隠すべきところは、何もかも丸見えになっていた。恥部、胸、肝心な所だけ、ペイントがはげてしまっているのだ――酷く扇情的だった。
 ホームに戻る。乗ってきた駅よりも、人の数がかなり多い。視線の数に比例して、幽々子の官能も高まる。
 事情を知らない人々は、あんぐりと口を開けるか、連れ合いとひそひそと話す。
 冷たい目を向ける者もいる。だが、幽々子はそれにすら、何かしらの興奮を覚えていた。
 尻穴からの刺激がない。それが淋しく思われた。今や尻尾は抜かれていた。亡霊は、今度は逆に、刺激を望んでいた。
 紫に誘われて、駅舎の外へ向かう。幽々子はわざとゆっくり歩いた。もう少しだけ、視線を楽しみたかった。
 紫が、リードをくいと引く。
「だめだめ、こんなところで時間をつぶしたら。メインディッシュはもう少し先なの」
 メインディッシュという比喩に、幽々子の心は踊った。食事を用いた比喩であったし――何より、さらなる性感が、自分を待っているとわかったからだ。
 駅舎の外に出て、幽々子は目を見張った。
 輝かしい大通りだ。輝かしい、というのは比喩ではなかった。日はとうに沈み、月が浮かぶころだというのに、科学の力に後押しされた町はこれでもかと光っている。星など見えない。
 そして、通りに居る人の多いこと。人里の人口を全部足してもこれほどまでに居るだろうかと、幽々子は驚きを隠せなかった。なるほど、紫が「メインディッシュ」と呼ぶのも頷けた。
「さぁ、行きましょう」
 二人は、通りへと足を踏み出していく。
 沢山の人間が溢れる中で、二人はやたら目立った――特に幽々子が。
 カメラのシャッター音。
 若い男が一人、小さなカメラを二人にかざしていた。いわゆるデジタルカメラだ。
 自らの痴態があの中へ取り込まれたと、幽々子は悟る。写真をどう使うのか。そんなことは自明だった。
 見知らぬ男たちのオナペットにされることを想像して、幽々子は官能を覚えた。
 少なからず紫も撮られているのだが、そんなことは気にもかけず、別の男たちのところへ幽々子を連れていく。
 三人連れで、皆、あまりガラの良くない仕事をしているようだった。
 アーケードにいる人間の中で、彼らが一番、ギトギトとした視線を送り付けていた。
「その嬢ちゃんはチンコをハメられたいのかい?」
 兄貴分らしい男の、開口一番の野卑な問いにも、紫はまったく動じない――どころか、同調した。
「ええ。どうしようもない好き者で。ちょっとお願いがあるのですけど」
 そう言って紫は、懐からマジックを取り出す。黒で、油性と書かれていた。
「この子のカラダに、寄せ書きしてあげてくださいな」
「良いのか?」
「この子が望んでることですから、ねぇ?」
 何を書かれるのか――わずかな不安を感じながらも、幽々子はゆっくりと首を縦に振った。
 その方が興奮できるのなら。
「それじゃっ……と、おーおー、エロい顔だ」
 精液に汚れ恍惚とするその表情を舐め回すように眺めながら、男はペンを取り、幽々子の下腹へ手を伸ばした。
 ペンが肌を撫でる。こそばゆさがあった。
 書かれたのは、矢印だった。その先は幽々子の恥部へ向けられ、根元には「一回百円」の文字。
 お前の性の価値はワンコインぽっきりだ――あからさまな侮蔑に、しかし幽々子は感じた。
 値段が安いということは、それだけ手を出しやすいということで――。
 自分の膣を、沢山の男根にかわるがわる貫かれる、そんな妄想が彼女の頭をよぎった。
「お前らも書いとけ書いとけ、記念だ。……かまわないよな?」
「ええ。是非お願いします」
 男は、弟分らしい二人を促し、それぞれに「寄せ書き」させる。
 片方は、幽々子に猥雑な言葉を吐きかけながら、左鎖骨近くに「Fuck me!」と、汚い字で。
 もう片方は、上気した彼女の頬に、「精液便所」としっかり書き殴った。
 書かれた単語の卑猥さに、幽々子の秘部は蜜を垂らす。
「さぁ! 皆さんもどうぞ書いてあげてくださいな!」
 紫は声をあげ、アーケードにいる男達に呼びかけた。
 すでにそこは、正気の場では無くなっていた。ぎらぎら、あるいはどろどろとした欲望がひしめいている。
 彼らは幽々子の元へ、光にたかる蛾のように集う。
 皆ペンを取り、幽々子に淫語を書き連ねてゆく。
 「私はド変態です」「娼婦以下」「肉便器」「雌犬」「ダッチワイフのほうがマシ」「淫乱」「真剣勝負エロ大根」「性処理専用」「公共にご奉仕」「究極マゾ女」「雌豚」「オナニー猿」「性奴隷」「リョナってください」「肉人形」「売女」「趣味・被レイプ」「全身性感帯」「露出痴女」。
 「尻穴狂い」「アナル一回五十円」「尻穴妊娠希望」「フィストでもいいのよ」「尻穴が脳味噌」「ケツまんこ」「セックス専用アナル」「排泄大好き」「スカ狂い」「精液で浣腸して」。
 「搾乳して」「乳首チンポ」「ニプルファック一回十円」「乳家畜」「純正巨乳」「存在価値・乳」「変態ミルクサーバー」「勃起乳首しごいて」。
 「ヨガり顔ドブス」「抜くぐらいならぶっかけて」「特技・アヘ顔」「I LOVE FUCKING!」「耳姦OK!」「フェラ・スカ専用口」「口まんこ」「洗ってないのをしゃぶりたい」「好物:精液・汚物・チンカス」「鼻姦OK」。
 「ゆるゆる尿道ほじって」「肥大クリ」「セックス中毒」「チンポ依存症」「妊娠希望」「孕みたい」「種付け最高」「膣内射精専用」「子宮ほじって」「精液中毒」。
 「獣姦は文化」「ぶっかけは人生」「淫語は文学」「スカトロは芸術」「レイプは青春」「髪コキは宗教」「多人数は筋肉」。
 性器をかたどったマーク、性行為を連想させる記号、示すものが分からない落書き。
 一つ一つ書き込まれるたびに、幽々子の興奮が高められる。一つ一つ刻まれるたびに、幽々子の価値は引き下げられていく。
 自らの肌に書き込まれた猥語の数々だけで、幽々子の精神は達してしまいそうになる。
 かしゃりかしゃりと、シャッターの音が鳴る。
 もはや人としてみられているのかすらも疑わしい自らの姿を、写真として収められていることに、幽々子はどうしようもない興奮を覚えていた。
 精液で顔を汚して、淫語を刻まれた状態で、写真に撮られていく。
「こっち向いてー」
「ほらピースピース」
 猥雑な撮影会。被写体は幽々子。今の彼女は、亡霊でも何でもなく、ただの愛奴だった。
 媚びを売る様が、何枚もの写真となった。幾つものデータとなった。
 そうやって、どれほど時間が経ったろう、紫が手を叩いた。
「それでは皆様、申し訳ありませんが、私たちはこの後に用事がございますので、これでお開きとさせてください――機会があれば、いつかまた」
 そういって、紫は演技臭く頭を下げた。
「次ん時はアンタが脱げよー!」
 そんな下卑た呼びかけにも、紫は笑顔を返すばかりだった。
 男たちは、残念がりながらも、仕方がないと解散していく。案外に素直だった。
 いずれにせよ、得をしたことに変わりはないのだ。
「どこに行くの?」
「ん? 楽しいお店」
 楽しいの意味がすさまじく歪められている気がしたが、それでも幽々子は何も言わず付いていく。
 アーケードの一角、古く汚い寂れたビルの中へ。店、と紫は言ったが、こんなところに店を作ってやっていけるのか、外の世界の知識がない幽々子でも疑わしく思った。
 薄暗い階段を上り二階へ。幽々子の懸念とは裏腹に、そこには店があった。
 センスの無い扉を、紫が開ける。カランコロンと音がした。
 目を疑いたくなるような光景が広がっていた。
 淫靡な道具が、店内に並んだ棚に、びっしり陳列されている。
 膣用尻用各種バイブ、アナルビーズ、ローター、ペニスバンド。
 縄やギャグボール、手錠、アイマスク。
 大がかりなものでは、拘束台や三角木馬、姿見の鏡に各種衣装。
 その他その他、上げていけばキリが無いほどの数の道具が並べられ、妖しい雰囲気を醸し出していた。
 いわゆるアダルトグッズショップ。しかし、見るものが見れば、ここが法に触れる店と分かる。
 搾乳機やクスコといった道具は、どう使うつもりであれ医療器具だ。さらに、店の片隅に並べられた各種薬品。媚薬やローションはまだしも、避妊薬や排卵誘発剤なども、普通に店頭に並べていいような代物ではなかった。
 ここは、ビルの二階にはあるが、アンダーグラウンドだった。
 客は、四・五人といったところだろうか。アーケードにいたような男達とは、放つ雰囲気が違っていた。
 その内の一人が、幽々子に眼を向ける。彼女の様子を見ても、まるで動じなかった。どろりとした目には、正気が見えなかった。
 幽々子は、少しだけ、怖いと思った。
「さ、幽々子、お買い物しましょう」
 もっとも、そんな中で平然としていて、しかも正気な――少なくともそういう風に見える――紫が、一番恐ろしいのだが。
 紫は、はたと気付いたように手を打った。その動作が、何ともわざと臭い。
「ああそうだ――幽々子、あなた自分で買いなさい。お金は出したげるから。いい?」
 聞いておいて返事を待たず、紫は幽々子に付けたリードを外した。
 こんな格好で淫具を買い求めれば、果たしてどのような目で見られるのだろう。そう思って、幽々子は、じんとした疼きを感じた。
 ふらふらと、棚に陳列された商品を眺める。
 自分に買わせて、紫はどうするつもりなのだろう。――使うのだろうか。そんな思考が彼女の頭をよぎる。
 誰に使うかとなれば、それは当然幽々子なわけで――彼女は、自覚せず、より気持ちの良さそうな商品を選ぼうとしていた。
「試用されますかな?」
「やっ!?」
 不意に、真後ろから紳士的な声。どきりとして、幽々子は跳ねた。
 後ろに人が立っているなど、まったく気付かなかった。それほどまでに、品定めに夢中になっていた自覚は、幽々子には無い。
 しかしそんなことより、幽々子の目を疑わせたのは、その男の風貌だった。
 髪型や服装、その他細部こそ違えど、その面影を見間違えるはずは無かった。
「――妖忌……なの?」
 目の前にいる人物は、かつての庭師、魂魄妖忌そのものの顔だった。
 しかし彼は、怪訝な顔をするだけだった。
 どうやら、妖忌ではないらしい。
 だが、別人と言い切るには余りにも似すぎていた。
「試用なんてして構いませんの? 買い取り?」
「いえいえ、試用された商品の方が、ウチの客には受けが良いのです。くく」
 彼は店主なのだろう、にやりと笑った。穏やかな語り口であるが、その笑みには、下卑たものが見え隠れしていた。
 まるで女を人と思っていないような、そんな笑みだった――そんな表情を、妖忌は見せたことが無かった。
 店にいた客達が、耳ざとく聞きつけたのか、彼と彼女らの方を見ていた。
「よかったわね、幽々子。試せるんだって」
 試してもいい――というよりは、試さなくてはならないのだろう。
 紫の口調には、有無を言わさないものが含まれていた。
 だからといって、幽々子が仕方なしに選び取るのかといえば、そうでもない。この状況を楽しいと感じるのは、他ならぬ彼女なのだ。
 棚の中から一つ、肉棒を精巧に模した張り子を選びとった。
 肉幹にあたる部分には、いぼ状の突起がつけられ、使用者に無機質な刺激を与えるようになっている。
「せっかくだわ、店主さんに使い方を教えてもらいなさい」
「使用法ですか? かしこまりました、では――」
 男の言葉を、紫は否定する。
「いえ、この子がきちんとお願いできたらにしてくださいな」
「ははぁ、なるほど」
 店主は幽々子に出しかけていた手を引っ込めた。
 そうして、意味深に顎をさすった。
 二人とも――いや店にいる客中が、幽々子に注目していた。
 幽々子が、自分から求めるのを、待っていた。
 彼女は、手にとった淫具を店主に見せ、ゆっくりと言う。
「使い方がわからないんです――私のカラダに教えてくれませんか?」
 つたない誘い文句だったが、二人とも満足したようにうなずいた。
 店主は幽々子から肉色の張り子を受け取ると、彼女の脚をわずかに開かせた。
「お教えする前に、摩擦を無くさなくてはなりませんが――おやおや、前戯は不要のようですな」
 店主は彼女の肉濘を見ると、軽蔑したように笑って見せた。
 まるで、妖忌にそんな視線を向けられているようで――そうなれば、彼女は使用人に痴態を見られ嘲られていることになる。幽々子はその被虐的な背徳に、甘い何かを覚えた。
 呼吸をするたびに香る、顔と髪にぶちまけられた精液の香りが、それを助長した。いい加減乾きつつあったが、匂いは残る。
「その子、もう見られるだけで濡らすようになっちゃってるから」
「はは、これは失念しておりました。確かにこのような格好でここにやって来るようなマゾ女ならば、前戯などせずとも構いませんわな」
 屈辱的な言葉を浴びせられることも、被虐を得た幽々子にとっては快楽の一因だった。
 まして、相手の容姿が容姿だった。
 相手が妖忌にこれほどそっくりな人物でなければ、幽々子も幾分か冷静だったかもしれない。
「では、このどうしようもない淫乱肉穴に、ウチの玩具の味を教え込んでさしあげましょう」
 そういって、店主は、彼女のぬかるんだ膣口に、張り子の先端部をあてがい――ずぶ、ずぶと、少しずつ呑み込ませていく。
 「一回百円」という銘を持つ、その女性器へ。
「あ、はあ、ぁ、あああっ」
 それは、ひたひたと静かに押し寄せる波のようだった。いきなりやって来る嵐のような快楽とは違う。
 切なくなるような感覚に、幽々子はため息を漏らす。
「これはこれは。咥え込んだら離さないとは、名器ですな。はは、楚々とした顔をしておいて、こうまで淫蕩とは」
 根元までそれを飲み込ませると、幽々子の膣穴を道具でえぐりながら、店主は幽々子を、言葉の上でも嬲る。
 その顔、体格、声、それらは妖忌に瓜二つで――幽々子は勘違いをしそうになる。
 自分を責めているのが、アンダーグラウンドな店の主なのか、それとも白玉楼の元庭師なのか、忘れそうになってしまう。
「では、スイッチを」
「や――あはッ!」
 何のためらいも無く、店主は張り子のスイッチを動かした。
 とたんに、甘やかだった刺激は、強烈なものに変化する。
 急な刺激に幽々子の腰は砕けそうになった。
 妖忌とそっくりな人物に弄繰り回される――それが、幽々子にとっては、嫌ではなかった。
 ひょっとすると、彼に、愛情とはいかないまでも好意を抱いていたのかもしれない。そんなことを、幽々子は思った。
 もっとも、今となっては確認のしようもない。
「こればかりというのも何ですから、他の道具も試用しましょうか」
 幽々子を弄びながら、手近な棚からヒョイと取り出したのは、また張り子だった。
 しかし、微妙に形状が異なっている。
 肉幹部分が、凸凹したリングが積み重なった構造になっている。
「これなど、なかなか面白いかと」
 そう言いながら、店主は無造作に幽々子に反対を向かせ、尻たぶを開いた。
 露になる肛門。客が、そこへ濃密な視線を向ける。
「尻穴は一回五十円ですか。そういえば前の穴は百円でしたな。名器っぷりからすれば格安ですが……あぁ、格安のほうが、この淫乱娘にはよろしいのですかな。たくさん客が取れて」
 悪し様に言われる。庭師に詰られる。いや違う、これは妖忌ではない。
 しかし――幽々子には、もうどちらでもいいような気がしていた。
 彼女は、いずれにせよ、目の前のこの男から受ける屈辱が、気に入ってしまっていたのだ。
「さて、こちらの具合はどうですかな……とっ」
「うぁ――んひぃ!」
 ずぶずぶと侵入してくるバイブの感触に、幽々子の声は裏返る。
 そうしているあいだにも、女陰に突き立つバイブは、彼女を苛め続けているのだ。そこに、後ろからも新たな刺激が来ては、耐えようも無い。
 リング部分の凹凸が、腸壁をごりごりと擦っては、幽々子に目の裏ではじけるような快楽を叩きつけるのだった。
 ――妖忌に。
 身体中に黒く淫らな言葉やマークを書かれ、膣穴と肛門とに張り子を咥えこんだ様を、見られている――。
 かちり。
「や、はぁぁぁッ!?」
 小さな音。そして、尻穴に強烈な快感が走った。
 何が起こったのか、理解できなかった。理解する前に思考がさえぎられた。
「こちらの駆動は独特でしてな、通常の振動に加え、リング部が回転するようになっておるのです」
 そんな説明も、頭の中に入らなかった。
 仕組みが理解できずとも、その効果は身体が嫌というほど理解していた。
 過ぎた刺激が電気信号となり、彼女の脳へ伝わり、苛む。
 二穴のバイブは、生きているかのようなコンビネーションを見せた。膣壁が腸の側から押され、そして腸壁が膣の側から押される。そして押されるということは、幽々子の受ける快楽が増すということだ。
 ぐちゃぐちゃという、濁った水音。
 淫猥な相互作用は終わりを見せず、幽々子を一気に上り詰めさせる。
「らめっ、止め――んぁああッ」
「どの口が駄目などと抜かしますか? こうまで愛液を垂らし、いやらしくヨガり、それでよくそんなことが言えるものですな!」
 そう言うと、店主は、幽々子の恥穴から生える二本の棒を掴み、激しく抜き差ししはじめる。自分がいかに淫らな生き物か、思い知らせようとするかのように。
 そのストロークは、バイブレーターの振動と絶妙に合い、そして幽々子を終わりへと導いた。
「ひッ、あ……はぁぁぁぁん!!」
 いっとう高い声を上げ、幽々子は床にくずおれた。
 妖忌にイカされた――違うが、もうそれでいい。彼女はそう思った。
 いずれにせよ、あの庭師に顔向けできるかと聞かれたら、そんなわけは無いのだ。
 店主は幽々子の股間から張り子を引き抜いた。事務的な手つきだった。
「ええと、お勘定を頼んでもいいかしら」
「ええ。構いませんよ」
「じゃあ、これと、これと、それから――」
 店主が段ボールを取り出し、指定された商品を入れていく。そんなものを使わなくてはならないほど、買う量が多かった。
 そのほとんどが自分に使われるのだろうなと考えて、達したばかりだというのに、幽々子は高ぶりを感じた。
 紫は店主に金を渡し、一杯になった段ボールを抱え、幽々子に話しかける。
「ちょっとは落ち着いた?」
「ええ、まあ」
「そう。それは残念だわ」
 そう言うと、紫は段ボールを置き、その中から小さな瓶を取り出した。
 薬瓶らしきそれには、どろりとした、白い液体が入っていた。色と粘りけが、何ともアレを想像させた。
「……精液じゃないわよ、残念ながら。精液の方がよかったかしら?」
「そんなこと」
「まぁそれはどうだって良いの。幽々子、コレ飲みなさい」
「え……」
 一言で言えば、嫌だった。
 誰がどう見ても、飲みたくなるような薬ではなかった。薬かどうかすら怪しい。
 だが、紫は許さない。
「わがままは駄目。せっかく買ったのに勿体ないじゃない」
 瓶を幽々子の口に近づける。「フェラ・スカ専用口」と、その真横に銘打たれていた。しかし、そんなことは気にも留めない。
 幽々子は口を閉ざした。得体の知れないものを、飲む気にはならなかった。
 紫は少し眉をひそめると、幽々子の鼻をつまんだ。
「んぅ……」
 口を開けなくては呼吸ができない。だがそうすれば、間違いなく薬を飲まされるだろう。
 だが、紫がとった行動は、幽々子の予想と異なっていた。
 そのまま、紫は、自分で薬を飲んだ。
「――え?」
 呆気にとられた幽々子が一言、そう呟いた瞬間、
「んんっ!?」
 紫に口付けられた。
 しまったと思っても、遅い。
 彼女の舌は素早く幽々子の咥内に潜り込む。
「ぐ、んむぅぅ」
 唾液とともに、ぬるりとした液体を送り込まれる。
 間違いなく、例の薬だった。それは味も匂いも、とにかく精液を連想させた。
 これで精液でないというなら、作ったやつはわざと似せて作ったに違いなかった。
「んーッ」
 いけないと分かっていながらも、幽々子は怪しげな薬(とても薬とは思えない味だったが)を嚥下してしまった。
 幽々子が薬を飲んだ以上、紫の目的は果たされたはずなのだが――しかし、紫は口を離さない。
 舌と舌が絡み合い、濃厚な水音を立てる。幽々子の口には、先ほどの薬の残り香。それのせいで、彼女はまるでザーメンを二人で分け合っているかのような感覚を覚えた。
 ――薬による変化は、案外早く訪れた。
 もっとも、即効性の強い薬だったのだろうが。
「んッ――!!」
 紫と繋がった口腔から、何もかもがとろけるような性感が訪れた。
 キスをしているだけなのに、まるで天国へと突き上げられているかのような感覚を得た。
 全身が熱く、つま先から頭のてっぺんまで燃えているような気分だ。
 その全てが、触られただけで達してしまいそうなほどに、鋭敏になっている。
 その恥部からは、触れられてもいないのに、愛液が溢れ出ていた。
 幽々子は口を離そうとした。過ぎた快楽だった。キスだけで狂ってしまえそうだった。
 だが、紫は幽々子の頭をがっしりと掴み、離さない。
 歯茎を舐められ、舌を絡められ、それだけで、幽々子の頭は爆発しそうになる。
 少なくとも、全ての思考はそれだけで吹き飛ばされていた。
 まして、先ほど達したばかりだった。だから、あっという間に頂点に上り詰めても仕方がない。
「うぅううううッ!!」
 もはや悲鳴に近い嬌声をあげて、幽々子は達した。
 背筋は反り、たわわな乳房が震えた。
 キスだけで。接吻だけで、絶頂を迎えたのだ。
 だが、その屈辱的な事実を認識する余裕は、幽々子になかった。
 紫が口を離したところで、全身の燃えるような疼きは消えない。
 それが徹底的に、幽々子の思考をかき乱していた。
 少しでも快楽を与えられたなら、気が狂ってしまいそうだった。
 だが、このまま放っておかれても、狂ってしまうだろう。
 あの薬のせいなのか、全身がひどく敏感になり、思考はひどく淫らになっている。
 理性など、簡単に吹き飛んだ。
 幽々子は今、セックスのことしか考えられなかった。犯されたくて、あるいは犯したくてたまらなかった。
 紫を見る。その股間へ目をやる。服に隠れて見えないが、その下には凶悪な男根が隠されているのだ。
 それで膣を満たしてもらいたくて仕方なかった。
 一人では、一箇所しか満たしてもらえない――そう気づいて、幽々子は、周りを見渡した。
 先ほど幽々子を道具でもてあそんだ店主。そしてそれを凝視していた客。男がたくさんいた。
 大丈夫だ。
「幽々子ぉ、最後のお楽しみと行きましょうか」
 紫がそう言った。
 その顔には、先ほど店主が浮かべていたような笑み――女を人として見ていないかのような笑み――が浮かんでいたが、そんな表情を向けられるだけで、幽々子は軽くアクメを迎えた。
 紫は隙間を開くと、その向こう側へ幽々子を促す。
 その先へは、どんな快楽が待ち構えているのだろう。幽々子の胸は、否応なく高まった。
 一歩、一歩、彼女は歩を進めていく。胸を高鳴らせながら、陰部を熱く湿らせながら。
 幻想郷を知らないただの人間であるはずの店主や客に、隙間を見せてしまってもいいのか。そんな疑問が小さく小さく頭に浮かんだが、一瞬で消し飛ばされてしまった。



**********



「お疲れさん。これ、バイト代」
「どうも。ひぃふぅみ……確かに。にしても、えらく割りのいい」
「ま、いろいろあってね。金に糸目はつけないってことだし――さて、と。君らのお仕事はこれでおしまい。せっかくだから……私で楽しまないか?」
「それはもちろん、喜んで」



**********



「ここは……?」
 暗くてよく見えなかった。どうやら屋外、公園か何からしい。
 布ともなんとも分からない、青い素材で出来た、テントのようなものが、いくつも並んでいる。
 幽々子にそんな知識はないが、ホームレスの住居だった。
 例の店に入ったときよりも、だいぶ暗くなっていた。知らぬ間に、時間が経っていたらしい。
 ここには、目を見張るような淫らなものも、男根も、存在しない。
「うふふ……幽々子、朝になったら迎えに来るわ。しばらくここをうろついてなさい」
「え?」
 それだけか。
 無理だと言い返そうとした。朝までこの身体を抱えて悶え続けろというのか。
 しかし、その言葉は紫によって遮られた。
「大丈夫、大丈夫。歩いてれば分かるわ。後悔したくなるくらいの快楽に溺れるといいわよ。それじゃあ、また朝に会いましょう」
 そう言い残すと、紫は一人、隙間の向こうに消えた。
 後には、途方にくれる幽々子が残るばかり。
 こんな殺風景な所、うろついて何になるというのか。自分に待つ余裕などないというのに。
 だが、彼女の抱いた不満は、すぐさま消え失せる。
「うぁッ」
 後ろから、誰かに押し倒された。
 荒い吐息が吐きかけられる。酷い匂いがした。――いや、吐息だけではない。全身から悪臭がした。
 のしかかった誰かは幽々子を仰向けにする。そこには複数の男たち。
 揃いも揃って、汚らしい外見だった。まるで、何日も風呂に入っていないかのような。――ホームレス。
 幽々子を押し倒した男は、彼女にのしかかったまま、下半身を露出させる。
 半分皮を被ったイチモツ。何日も洗っていないのだろう、垢が溜り、汚臭を放っている。
 そんな最悪とも呼ぶべき男性器を、しかし幽々子はうっとりと眺めた。
 男根。男根。男根。
 彼女の頭に浮かんだのは、それだけだった。紫に与えられた薬物が、彼女を強力に呪縛していた。
「助けてー、なんぞ言ってみい、殺すぞ」
「見ろこの落書き。痴女だな、痴女。趣味はレイプされることだとさ。喜べぇ、たっぷり犯してやる」
 軽口を叩きながら、男たちは、幽々子を犯しにかかる。
 のしかかる男が、先端を痛いほど尖らせた胸を、両の手でむんずと掴んだ。
 脂肪の塊は、その圧力に、むにゅうんと形を歪めながらも反発する。
 技術も何もない、ただ自己満足を得たいが為の、愛撫とも言えない指の運動。
 だがそんな刺激すらも、薬の力が、官能へと変える。
「あはッ!」
 幽々子の声に、男たちはびくりと体を強張らせる。助けを呼ぶのかと思ったのだろう。
 しかし、程なく、それが嬌声だったと悟る。
 一瞬揺らぎかけた自信を、すぐ取り戻した。
「おいおい、このアマ、これから犯されるって時に感じとるぞ」
「性処理専用だの肉便器だの、身体に書かれてるだけあるな、へっへ」
 下品な笑い声。
 他の男たちも笑った。同様に下品だった。
「しっかし、イイ身体してやがる。こんな上玉犯せるんだからツイてるな」
 男達の一人が、感心したようにもらした。他の連中も、同調して頷く。
 のしかかっていた男が、切羽詰まったように言う。
「いかんもう我慢できねぇ、オイ」
 その男は、幽々子から降り、顔をがっしと掴んだ。そして、自分の股間に向かせた。
 眼前に、汚れにまみれた屹立が突き出される。
 その汚臭に、幽々子は目尻を垂れ下げた。
「しゃぶれ」
 短い命令。だが、彼女が待ち望んでいたものでもあった。
 ああ、ようやく――。
 一にも二にもなしに、幽々子はそれを迎え入れた。
 途端、口腔内に広がる、恥垢の味と悪臭。
 理性どころか意識まで吹き飛びそうな恍惚――もっとも、理性の方はとっくに吹き飛んでいる。
 もっとそれを味わおうと、舌を動かす。表面を舐めていく。
「うはは、自分からしゃぶってるぞオイ」
「こんな格好でここまで来るんだからな、真性の変態なんだろ。顔自体は清楚なくせに、美味そうにちんこ咥えやがって」
 男たちは口々に勝手な事をさえずる。
「おい皆ァ! 起きろ起きろ、いーもんがあるぞォ!」
 その呼び掛けに、ビニールシートハウスから、なんだなんだと出てくる男たち。
 二十、三十、いや、もっと居るかもしれない。汚らしく、社会で敗れ、人生に倦んだような連中。
 人の汚れを集めて煮詰めたような悪臭が漂う。
 欲望をぶちまける対象――西行寺幽々子を見るや否や、彼らの目はぎらぎらと欲望でたぎりはじめた。
 いったい何人居るのか――人数と男根の数はイコール。何回セックスできるのか。
 幽々子の体勢が変えられた。仰向けから、尻を突き出す獣の姿勢へ。
 丸見えになった恥部へ視線が集まる。
「おい、一回百円だとよ。ふざけてるな、百円なんか払えるかって」
 そう言いながら、誰かが幽々子の膣口を指で開く。
 その奥、秘められるべき場所まで、環視の下へ明らかにされ、欲まみれの視線を浴びせかけられる。
「んんぅ――」
 男を求めてやまないそこから、濃厚な愛の蜜が滴った。
「おーおー、見ろ見ろ皆。なんもしてないのに涎垂らしてるぞ」
 もっと見てほしい。そんな意識から、幽々子は腰をくねらせる。おお、と、感嘆の声が漏れた。
「オイコラ口がお留守だろうが」
「ッ、!」
 口淫を強制させる男から、ビンタが飛ぶ。ばちんと音がした。容赦ない一撃、鋭い痛み。
 それですら、幽々子は悦びを覚えてしまった。肉体の悦びなのか、精神の悦びなのか、判然としない。
 自分のことしか考えていなかったと幽々子は反省し、命令どおり、丁寧に丹念に、奉仕を再開する。
「洗ってないのをしゃぶりたいって書いてあるな。……よかったなァおい、洗ってないチンポばっかだぞ、ここは」
 男は幽々子の前髪を掴むとぐいと引き、彼女の顔を見る。その愛くるしい唇が、己自身で汚されるさまを楽しむ。
 モノのように扱われているが、しかし幽々子は不満を覚えない。その逆ですらあった。
 さらに、一人の男が彼女の腰をがっしり掴み、言う。
「一回百円なんか払えねぇけどよー、たっぷり中出しして、孕ませてやるから、タダにしろよっ、と!」
 名も知らぬ男に、レイプされる――そう幽々子が思った矢先。
 雄棒が、容赦無く膣肉を割り開き、ずぶりと奥まで貫いた。
 宵闇が、真っ白に光った。幽々子の視界すべてが、白く爆発した。
 絶頂――!
「ぅぁあ゛あああッ!」
 獣の声にすら聞こえる声。
 快楽しかこの世には無い。彼女はそう感じた。
 過ぎた情報量。淫楽の地獄に突き落とされたかのような感覚。挿入されただけで迎えるアクメ。
 あの媚薬は、それほどまでに、彼女の感覚を書き換えていた。
「口を離すなァ!」
「ごぷッ」
 口のなかにねじ込まれる汚棒。男は、幽々子が自らの爛れた欲棒を離さぬよう、彼女の頭部をホールドした。
 その小さな口に、自らの腰を叩きつける。己の境遇への根拠無き不満、自らに冷たい社会への無責任な恨み、そんなものまで、ちっぽけな支配欲と共に、叩きつける。
 口腔を犯されて、幽々子は背徳的恍惚と退廃的快感を覚える。
「やべぇ、締まりがよくてっ、すぐにでも出そうだッ」
 後ろから彼女を貫いた男が、その腰を動かし始める。
「んっ! ご、お゛ほぉッ!」
 幽々子の膣肉は男根をこれでもかというほどに締め付ける。彼女の腰は淫らにくねり、自らと男がより快楽を得られるように働く。
 彼女は至福を得、それでも口を離すことはない。舌をぬめらせ、口腔にピストンされる屹立を吸いしゃぶり擦る。さながら雌奴隷のような奉仕。じゅぷる、ぐぷると、聞くだけで興奮を煽るような音が漏れる。口の端から唾液が零れる。
 この時の幽々子は、どんな性奴隷よりも、淫らで惨めで煽情的だった。
 口腔をほじくられることが、気持ちよくてしかたない。
「ううッ」
 奇妙なうめき声、直後、幽々子の口腔に苦味があふれた。
 口内射精。口すら妊娠させそうなほどに特濃の精液が、肉棒から容赦なく射出され、彼女の舌や歯茎を白く染めていった。
 穢された。精液で刻印された。そんな感覚に、幽々子は精神的絶頂を覚えていた。
「いいか吐くなよ、全部飲み干せぇッ」
 そう言いながら、男は彼女の口から己自身を引き抜いた。
「んぉっ、ふあッ!」
 とたん、自由になった口から嬌声があふれ出す。後背位から突き込まれる剛直が、彼女の膣をいたぶり続けていた。そうされるたびに、胸がふるふると揺れる。
 それでも懸命に口を閉じ、ホームレスの子種を、こくりこくりと嚥下してみせた。
 溜まりに溜まった欲望だ。なかなか降りてゆかない。喉に絡みつき、強烈な臭気を放つ。
 支持に従った幽々子に満足した男は、肉棒をしごき、尿道に残った己の精子を、幽々子の顔になすりつけた。
 顔に書かれた「雌犬」の上に、白くマーキングされる。彼女はその濁りを指ですくい、ぺろりと舐めた。
 ――爛れ、腐臭を放つような欲望。どうしようもなくグズグズになって自ら崩壊して。だが、そんな不細工なものに犯されているのは、他ならぬ自分なのだ。
「ッ、あ゛! は!」
 雌犬の膣肉がどんどん調教されていく。しつけられ、男を悦ばすための器官として、その完成度を高めていく。
「イクぞっ、子宮に出して孕ませてやるッ!」
 その宣言が、幽々子の精神を高ぶらせる。
 膣内射精への期待で、彼女の身体ははちきれんばかりだった。
 その期待が、彼女に淫猥な言葉を吐かせる。
「はいッ、せーえきっ、わたしの子宮にぶちまけてぇ、孕ませてくださいぃぃ!」
 言ったが最後、もう戻れない類の言葉だった。
 これで名実ともに、西行寺幽々子は男たちの性奴隷となる。股を開き男を誘う、性処理の道具へ堕ちた。
「よォし、イクぞっ、イクぞッ、――ッぬぅ!」
 暑苦しい声とともに一撃、彼の一物が根元まで突き込まれた。
 がつん――幽々子の奥の奥行き止まりのような場所にそれがぶつかった。
「――あ゛あ゛あ゛あああ――!!!」
 子宮口を嬲られ、苦痛と快楽が同時に全身へ叩き込まれる。
 痛みによる絶叫なのか、悦楽による嬌声なのか。どちらなのかも分からない。
 ただ電気のように全身を駆け巡る感覚が、彼女の全身をびくびくと激しく痙攣させる。
 絶頂。
 さらにそこへ駄目押し。
 子宮口を突いたその剛直から、噴出するDNA。
 減数分裂の果てに生まれた男の分身が、幽々子の子宮へ直に注がれていった。どぷどぷと、何のためらいもなく。
 彼女の女としての聖域が、汚らしい欲望で穢されていく。勢いよく子宮壁を汚す精液は、彼女を孕ませようと、いっせいに泳ぎだした。彼女の卵子へと。
「んぁっ、ふわアぁぁ……」
 思わずこぼれる至福の溜息。
 小さな支配欲を満たし、自己満足を得たいがための膣内射精。その犠牲となったという事実。
 しかし、そんな屈辱と被虐ですらも、彼女はやはり快感を覚えるのだ。
 そして、その快感で心が絶頂。
「ッおお、出した出した」
 膣口から肉棒が引き抜かれる。こぽ、と、脱落した精子が零れ落ちた。
 腹に残る暖かな精液の感覚と絶頂の余韻が彼女を包んでいたが、しかし男たちはそんなことお構いなしだった。
 道具は使ってこそ意味がある。
「次俺な、俺」
 別の誰かが進み出、獣の姿勢をとっていた幽々子を抱えあげる。
 いわゆる、駅弁のスタイル。幽々子の恥部が、また汚らわしい欲望で汚されようとしていた。
 ただ、その男の狙いは、微妙に違っている。
「俺よォ、普通に犯るの飽きちまったから――まぁ気絶しないように頑張れよ」
「ひぁ」
 軽い口調で、下卑た笑みを見せ、男は幽々子の股間に、己の一物を擦り付ける。
 そして、その中へ、一息に挿入した。
 彼女の尿道へ。
 股間から頭にかけて焼けた鉄棒を突き立てられ、掻き回された挙句体を引き裂かれたような、そんな地獄。
「い゛――ぃ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああッ!?」
 死ぬ間違いなく死ぬ絶対に死ぬむしろこれなら死んだほうがマシだ。
 急激な拡張を受けた尿道はぎちぎちと嫌な感触をさせる。
 目から涙、口から唾液があふれる。
「おーいい声いい締り、最高ォォ!」
 幽々子を抱える腕が、突き出された彼女の尻を、ばしぃんと思い切り張った。強烈な一撃だった。
 だが、その程度、本来通るものなど液体しかないようなところを無理やりに拡張される痛みにくらべたら、なんでもないようにすら思えた。
「死ぬ゛ッ……死んじゃ、うぅ」
「あぁ? 大丈夫だっつの、五六人にやってきたけど、死んだやつは居ないから」
 幽々子の声をむしろ楽しげに聴き、その男は、尿道への抽送を開始する。
 性器で交っているときのように、激しく、激しく、激しく。
 ぎちゅり、ぐちゅりと音がした。まともな交わいの音ではない。
「あ゛ーッ! あ゛、う゛ぅぅッ!」
 激痛という言葉を作り出した奴は、この激痛を知っていたのだろうか。
 苦痛という言葉を作り出した奴は、この苦痛を知っていたのだろうか。
 性奴隷、それは所詮モノ。鈍の風にでも扱われうる。だが、そうはいっても元はヒト。痛みだって感じる。
 いっそ最初からモノであったなら。本気でそう思えた。
 だが――それでも。
 それでも、そんな地獄の中ですらも、彼女の身体は女としての悦びを見出しつつあった。
「う、ア゛、あ゛~ッ」
「おお、意外と持つなぁ」
 半ば白目を向き、涙と涎を留処なく溢れさせる幽々子。
 ぐちゅりぐちゅりと、その股間へと肉棒が出入りしている。
 尿道で感じる熱き棒。人語を忘れさせ、死すら感じさせるほどの痛み。死ねるほうがよほどマシかもしれない。
 しかし少しづつ、少しづつ、それが快感へとコンバートされている。
 卓越した被虐の才能。
「おい、誰かこっち使わねぇのか」
 男は腰を振りながら、幽々子の尻を、周りの男たちに突き出した。雑巾か何かを渡すように。
「おう、じゃあ俺がめでたい一発目犯るわ」
 一人が進み出て、その肛門に己の一物を押し当てる。
「あ゛、『一回五十円』? お前にそんな価値ないんだよこの肉ダッチワイフが!」
 後ろから、たわわな果実を鷲づかみにしつつ、硬い亀頭を彼女の排泄口に突き入れた。
 いや、そこはすでに排泄口ですらない。彼女の存在価値はいまやその豊かな身体のみ。ならばその穴も、やはり性交のための器官なのだ。
 もちろん排泄はする。だがそれも、性交の一環としてのものに過ぎないだろう。
「アッ、んはぁァっ」
 腸から伝わる、背筋が蕩けるような甘い刺激。脊椎の中身を全てホットチョコレートに変えられたかのような。
 それは、尿道を引き裂かれる苦しみと対極に位置していた――そして、苦痛が快楽へ転換されるのを、さらに助長する。
 幽々子の声に、快楽の色が交ざり始める。
「へへ、この便器、尿道レイプされて感じてるぜ――オラ、もっと尿道締めろよッ」
 前の男はそのストロークをさらに速める。幽々子が壊れるかもしれないなどとは、全く考えていないようだった。いやむしろ、壊す気ですらいるのかもしれない。
 後ろの男も、彼女の尻膣の壁を、ごりごりと己のモノでブラッシングしていた。
 周囲では、何人もの男たちが、性奴隷・西行寺幽々子を眺めつつ自慰をしている。
 だが、そこらへんに射精するような真似はしない。皆、幽々子の体内か、あるいは体表を、たっぷりと汚すつもりでいるのだ。
「んほ、ぉぉおッ」
 人語を忘れ、狂ったかのような嬌声を垂れ流す幽々子。
 痛みと性感がない混ぜになって、何が何なのか分からなかった。
 尿道をほじくり返され、果たして痛いのか気持ちいいのか。
 尻穴をほじくり返され、果たして苦しいのか楽しいのか。
「ッはあ――イイ乳してやがる」
 乱暴に揉みしだかれ、そこは形を変え続ける。
「んひぃ゛ッ!」
 触られることそのものが、無情で無上の快楽を産んでいた。
『後悔したくなるくらいの快楽に溺れるといいわよ』
 紫の言葉。なるほど、間違っていなかった。
 どう考えても、一度に受けるには過ぎた快楽だ。
「出るぞ、出るぞっ、喜べ、膀胱に直出ししてやるッ!」
「は、ッ゛、はひぃィぃっ! ゆゆこの膀胱子宮にッ、中出ししてくださッ――」
 奴隷として、主人らに従順な言葉を。
 目尻からこぼれ落ちた、一筋の涙。それは何による涙か。
 ――レイプされることが。性奴隷として扱われることが。嬉しいのか、悲しいのか。
「不細工なアヘ顔さらしやがって――そらイけ、膀胱孕めッ」
「あへッ、ッ゛お゛はぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
 膀胱に注がれていく汚濁。
 尿とは違う生温かさに、幽々子は身を震わせて、また絶頂した。
 びゅるびゅると一切遠慮なく吐き出される精液は、幽々子の尿と混ざって混沌とした液体を作り出す。
「――かーッ、出した出した」
 男は幽々子の股間から己自身を引き抜いた。後ろの男が西行寺幽々子の足を抱え、尻穴を貫く棒とでバランスを取り抱える。
 脚を開かれ、恥部は露出された。先ほどまで犯されていた尿道に、視線があつまる。
「んひ……はぁぁぁ……」
 緩んだ尿道括約筋は、しかし緩んでいるとはいえ、一応彼女の尿道を戒めていた。
 それを開き、彼女は放尿する。
 しょろしょろと、暖かな黄金の水が排出される――白濁がたっぷり混ざった液体だ。
 幽々子の無様な排泄を、皆がじいいと見つめていた。
 彼女は思う、もう普通の排泄など出来ないだろうと。
 それは緩んでしまった尿道のせいではない。これほどまでに気持ちいい放尿を覚えてしまったら、もう二度と元には戻れない。
「ようやく前が開いたな、チンコ扱きすぎてすぐ出そうだ」
「うへへ、ぶち壊してやるよ」
 二人、近づいてきた。
 二人ともが、幽々子の恥部に近づく。
 一人が指でそこを割り開き、まじまじと覗き込む。
「はぁぁッ……」
 貫かれるのを待つ幽々子は、甘いため息をひとつ。そして、腰を緩やかに振る。
 もう片方の男が、下卑た笑いを見せた。
「おい、さっさと犯っちまおうぜ」
「だな、ふへへ」
 そうして、二人まとめて、幽々子の膣口へ亀頭を押し当てる。
 そこで初めて、幽々子は自分が何をされるのかに気づいた。
 ――壊れる! 裂ける!
「ま、まって、そんなの無゛ッ」
 だが最後まで言い切ることは無い。頬を張られた。
 顔を掴まれる。ぎりぎりと締められる、こめかみから痛みが伝わる――アイアンクロー。
「うるせぇよビッチが。お前は黙って股開いてりゃいいんだ」
 言い聞かせるように、耳元でつぶやいた。
 そして男は、幽々子の顔面を解放するやいなや、膣口へ押し当てた一物を、幽々子の内部にねじ込んだ。
「あひぃッ!」
 もれる嬌声。状況がどうであっても、肉体の快楽は消えない。
 さらにもう一人が、無理矢理に、彼女の体内へ侵入しようとする。
 一人だけで一杯一杯の名器は、それでもどうにか男を受け入れようとした。
「ああ゛あ゛あ゛、……い゛あぁ゛ぁッ――」
 かひゅかひゅと、絶え絶えな呼吸が肺から漏れる。
 そんなことはお構いなしに、ごりゅごりゅと、無理矢理に突き入れられる肉の棒。
「さて俺も動くぞッ」
「え゛――あはああん!」
 幽々子の直腸が、痺れるような官能で燃え上がる。
 肛門が擦り切れそうなほどに激しいピストン。腸液が、ぐぷぐぷと汁気の少ない音を立てる。
 前は地獄、後ろは天国。女として最も大切な部分を壊されかける苦しみと、性感器官に成り果てた菊門で交わう悦び。
 痛みをともなう快楽は、簡単に被虐を進化させる。
 痛みが心の悦びに換わる。
 己も知らず、狂った言葉を吐く。
「わ゛らひのほォっ、おまんことッ、けつまん゛こッ、ほじって、いっぱいイカせてくらひゃあぁ゛いッ!」
「よく言った! 俺ら全員が飽きるまで、延々肉奴隷として扱ってやる!」
 そしてその宣言の直後、荒い吐息が後ろから一つ。
 尻穴が温かな汁に満ち、幽々子はまた嬌声を上げた。
「んぉ゛、あ゛はぁあああッ!」
 肛門への射精。
 今日何度目の精液か。ここの男たちは、誰も彼も、濃密な精を持っていた
 獲物となった不幸な女を、溜りに溜まった欲求で汚すためにだろうか。
 腸壁の襞一つ一つに、精液が染み渡ってゆく。
「ッぁー、出した出した、まだ足りないけどな……あぁ? 垂れてきてるな」
 尻穴から男性器が引き抜かれる。栓の無くなった直腸から、重力に従って、どろりと精液がこぼれ落ちる。
 だが、男はそれを許さない。尻穴に指を押し当てる。
「零してんじゃねぇよって」
 そして、何のためらいも無しに、その拳を突き入れた。
 指の一、二本ではない。拳丸々だ。
 無理矢理拡げられた肛門が悲鳴をあげる。
 苦痛と快楽が、苦痛と苦痛に変わった。
 それも、莫大な。
「い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!!?」
 絶叫、悲鳴、絶叫絶叫絶叫悲鳴絶叫。
 暴れる全身。だが力でもって押さえつけられる。
「けけけ、まんことケツマンコほじれっつったのはお前だろうがよォ!」
 そして始まる、膣への抽送、二人分。
 視界へ、ガラスのようにヒビが入り、割れる。
 痛みは痛みで動かしようもなく存在するというのに、それでも身体は快楽を伝えてきてしまう。
 その相対する感覚は、幽々子をどうしようもなく狂わせてしまうのだ。
「あ゛ーっ、お゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
 色々な汁が垂れ流しになる。
 最早何なのか判然としない幽々子の声は、男達を喜ばせるばかりだった。
「へへへ、えっぐいアヘ顔だぞコレ、最高だな」
「コレだからやめらんねぇ」
 口々に呟かれる言葉は、生け贄のことなど全く気にもしていないような自分勝手なもので。
 苛烈な責めはヒートアップしていく。
 ぐじゅぐじゅと、ぬぐぬぐと。
 股間から鳴る間抜けな水音は、次第にそのリズムを速めていく。
「あ゛ぁ゛ぁ、んはぁぁあああ」
 それでも、そんな地獄の中でも、幽々子の身体は小さな小さな快楽を見つけて、それを梅雨の黴のように増殖させ増殖させ、塗りつぶしていく。
 ただ、塗りつぶしたとしても、元あったものを消し去りはしない。ただただ、共生する。
 苦痛と悦び二つしか存在しない世界に彼女は堕ちた。
 知覚出来るのもその二種のみ。自分の声すらも意識を通り過ぎる。視界は茫洋としている。
「オラもっと締めろよ肉奴隷ィ!」
 時折そんな声は聞こえた。そんな時、彼女は自分が肉奴隷だったと思い出すのだ。
 そして奴隷らしく、その指示に従うのだ。
 苦痛と快楽と苦痛と快楽と苦痛と快楽と。何度も往復し、時折の指示に従い――そんなことを繰り返す。
 拳と肉棒が気持ちよくて気持ちよくて気持ちよくて。もうそれ以外世界に必要なかった。
「ひゃはははは、出してやるぞビッチ、子宮の中に注ぎ込んでやる、有り難く思えッ!!」
 そんな命令。
 奴隷としてのレスポンスは一つ。
「はい゛い゛ッ、わらひのほぉ゛ぉ゛おまんこにッ、な゛かだしししてくらひゃぁぁぁぁああ゛あ゛あ゛あ゛――!!!!!」
 その瞬間、幽々子は、彼岸でさえも味わうことの出来ない悦楽を全身に浴びた。
 津波に呑み込まれるのと同じだ。全身をもみくちゃにされ、四肢が千切れそうなほどの衝撃に晒され、自らの意志ではどうしようもないのだ。
 子宮に二人分の精液がぶつけられる。たたき込まれる。兆単位での生命の素が、幽々子を孕ませるために泳ぎ出す。
 男達は肉棒を扱き、尿道にとどまった精液すらも幽々子の中に注ぐ。一匹たりとも無駄にするつもりは無いらしかった。
 津波が引いて、幽々子はようやく淫獄から抜け出す。
 地面の固い感触。いつの間にか地へ降ろされていたらしかった。
 彼女の二穴は、拡張され、ぱくぱくとその口をだらしなく開閉させていた。
「ッ……はぁぁッ、ぜっ……はぁッ……」
「さぁ休む間はねぇぞ、これから朝まで延々マワしてやるんだからよッ――」
 容赦のない宣告。
 幽々子を見下ろす、幾つもの好色な視線視線視線。
 続く地獄を想像し、幽々子は――、




 ――笑った。






 彼女は、到底人として扱われなかった。
 男達が扱き、その精を全身にぶちまけていく。不特定多数の人間の精子で、肌をパックされる。
 幽々子が口を開き、何人もの男がそこへ射精した。口腔に溜まる濃厚なスープ。ザーメンタンクとされながらも彼女はそれに悦びを見いだした。
 代わる代わる、二穴を犯される。子宮と尻穴に欲望を注ぎ込まれる。だが穴はそれだけではない。口で奉仕を強要される。さらに胸で奉仕を強要され、それでも彼女は応じた。それが奴隷の仕事だと知っているからだ。
 拳を突き入れられる。膣へ、肛門へ。彼女は腰を揺らしそれを求めた。痛みすらも求めるようになっていた。
 衆人環視の元で自慰をし、淫らな言葉を思いつく限り幾つでも並べ、放尿した。排泄も性行為の一つと成り下がっていた。
 何本もの欲棒から尿が放たれ、浴びせかけられる。そのアンモニアの香りは彼女を魅惑してみせた。
 汁と精子と罵倒と嬌声と苦痛と快楽と欲望の宴。
 それは、日が昇るまで続いた。







 公園の端、一目に付かないような場所。
 全裸の雌が、うち捨てられている。
 西行寺幽々子だ。
 全身白と黄に染まり、酷い悪臭を放っていた。蛋白質の香りと、アンモニアの香り。
 生きているのか死んでいるのか、一目では分からない。
 微かな甘い吐息が、唯一彼女の生存を知らせていた。
 眼に理性の光は無い。そんなものは、とっくの昔に消し飛んでいた。
 何十人もの男に輪姦され、そして一夜で飽きられた、元・性奴隷。
 それを見下ろす、女が一人。
「お疲れ様ァ、幽々子ぉ」
 八雲紫。
 その声に反応して、幽々子の眼に微かな理性がともった。
 けれども、それは、欲望に濁っていた。
「……ゆかりぃ」
「疲れてるでしょ、帰りましょっか――でもその前に、スペシャルゲスト」
「スペシャル、ゲスト?」
 怪訝な顔をする幽々子。
「そう。呼ぶわ、おいで――」
 すぐ近くの木陰から、現れる人影。
 まだ年端もいかぬような少女。
「よう、む?」
 それが誰か、幽々子にはすぐに分かった。
 その少女は、彼女の従者なのだから。
「妖夢、探してた幽々子。よかったわね、見つかって」
「……」
 にこやかに話す紫。
 無言の妖夢。冷たい眼で、幽々子を見下す。
「え、あ、あ――?
 鈍っている幽々子の思考では、状況を飲み込めなかった。
 見られている。
 ようやく、そう思えた。
 見られている。この無様な姿を。穢され汚され汚濁にまみれたこの姿を、見られている――。
「……紫様? これは幽々子様ではありません」
「――え?」
 怪訝な顔の妖夢に、またしても幽々子の思考は止まった。
「紫様、幽々子様はお美しく気高い方です。こんな――汚物をぶちまけられて悦ぶような変態とは、違うんですよ」
 その言葉が、幽々子に絶望を与えた。
 確かに自分がしてきたことは、彼女の主人として、失格のことばかりだったのだ。
「あら、人違いだったかしら、ごめんなさい。結界の外にはじき出されたんだと思って探して、ようやく見つけたと思ったのだけど――」
「残念ですが、違います。似てるけど、徹底的に別物ですよ。……結局振り出しですね。とりあえず、私は白玉楼に戻ります。隙間をお願いできますか?」
「お安いご用よ」
 紫が隙間を開く。その向こうの景色は、幽々子も見慣れた、白玉楼。
 背を向ける妖夢。隙間に消えようとする。
「よ、妖夢ッ」
 幽々子は手を伸ばした。己の従者へ。
 鼻先に、刀が突きつけられていた。
「屑が気安く呼ぶな……」
 本当に、塵屑を見るような目だった。見るのも嫌だと言わんばかりの。
 妖夢は刀を収め、そうして本当に隙間へ消えた。
「あ、あぁぁぁっ……」
 もう駄目だ。
 もう、どうしようもない。
 かけがえのないものを失ってしまった。
 こぼれ出す涙。
 現実を認めたくないあまり、幽々子のどこかが、軋み、歪み、折れた。
「……もう白玉楼へ戻れないわね、幽々子」
「あは、あはははッ……」
 言葉と裏腹に、紫は笑みすら浮かべていた。
 だが、笑いながら涙をこぼす幽々子は、それに気づいていなかった。
「幽々子、ウチに来て暮らしなさい。ただ……只で食わせてあげるわけにはいかない。ペットという扱いに、なるけれど、ね……」
「ぺ、っと?」
「そう。私は、あなたの、飼い主。ご主人様」
 一言一言、言い聞かせるように、すり込むように、囁く紫。
「ごしゅじんさま」
 壊れた機械のように返す幽々子。
 言葉を覚えた子を可愛がるように、紫は微笑んだ。
「そう。ご主人様。――帰りましょうか、私たちのおうちに。一杯楽しいことしてあげる」
 楽しいことと聞いて、幽々子は反応した。
 身体が覚え込んだ習性だった。
 そして、幽々子は笑った。
「はぁい、ご主人様」
 淫蕩に、淫蕩に。

















 時間が過ぎる。
 マヨヒガ、地下。
















「『ユユコ』、あなたに新しいご主人様を紹介するわ」
「新しい、ごしゅじんさま?」
 ユユコと呼ばれたペットは、その言葉に怪訝な顔をした。
 淫らなペットだった。首には、被所有を表す輪。
 人並みの扱いを受けていたころよりも大きくなった胸、尖った乳首にはピアス、微かに滴る母乳。
 クリトリスにもピアスが嵌められ、膣と尻には肉棒を模した玩具が突き立ち、震えている。
「そう。あなたはその人のところで暮らすの」
 ユユコはゆっくりと頷いた。
 物わかりの良さに、紫は微笑んだ。
「新しいご主人様は、この子。白玉楼の現当主、魂魄 妖夢さんよ」
 銀髪の少女は、ユユコの頭を軽く撫でた。
「こんにちは、ユユコ。――これから、仲良くしていきましょうね?」
「新しいごしゅじんさまは、タノシイコト、してくれますか?」
「もちろん。何だってしてあげる。これからよろしくね?」
 妖夢は笑った。
 ペットも、笑った。
 淫らに、淫らに。






























***GAME OVER***
マヨヒガから早めに脱出しよう!
コメント




1.名前が無い程度の能力削除
枯れた
2.名前が無い程度の能力削除
シーンは多いのですが1シーン毎の分量が少し少なく消化不良気味でしたがそれでも十分エロく、枯れそうになりました
終盤の尿道挿入辺りからは残念ながら守備範囲外だったので読めせませんでしたがその前は大変エロかったです
3.最古符「霊夢」削除
好きだねぇ…
4.名前が無い程度の能力削除
…これはもしや実は最初から妖夢の依頼でゆゆ様の調教を頼んでたのか…えぐいなさすが従者エグい
とりあえず枯れるまでするまでにこれの続編をお願いしたいです(*´д`)
5.塩キャラメル削除
通行人と乗客のシュールさに感動しました!
あと、エロいですね…枯れちゃいますねこれは。
6.喘ぐ狂人削除
1 様
誰かたんぱく質と亜鉛を!

2 様
なるほど……これ以上やるとさすがに長すぎるかなと思って削ったりしたとこが結構あるのですが、いらんことしちゃった感じですねぇ。
尿道以降は多分人を大いに選ぶだろうなと思いました。でもニッチな需要にこたえようと思いまして。

最古符「霊夢」 様
好きです大好きです綺麗な人が汚い男どもにまわされるとかもう本当ウフフ

4 様
おっしゃるとおりです。どうも只の悪者みたいになっちゃったかなぁと反省はしておりますが……。
続編……ね、ネタのストックが消化できたらでっ(汗

塩キャラメル 様
汁男優は不細工で滑稽なほうが良いと思ってます
だってそのほうが、犯される穢されるっていう意識が強調されると思いません?
枯れていただきありがとうございます。
7.その辺の妖怪削除
ガチで枯れそうになったから困る。
こんなゆゆ様だったらみょんが引き取りに来る前に回収しちゃいそう^p^
8.名前が無い程度の能力削除
とんでもなく枯れそうになったけれど、素朴な疑問が1つ。

なんで亡霊のゆゆ様が死ぬのを怖がってるんでしょ?
9.喘ぐ狂人削除
>その辺の妖怪 様
ありがとうございます。
しかし回収するには紫様の目を掻い潜らねばッ!

>8 様
うわぁあああああああああやっちまったぁぁぁぁあああああああああ!?
まぁ言葉のアヤということで一つ……。
10.名前が無い程度の能力削除
やべえ俺の性癖にストライクなんですけど!
特に体に落書き、元々好きなんですがここまでエロいと感じたのは初めてだぜ…
11.白臼削除
GAME OVER? HAHAHA...
バッドエンド上等だよこん畜生ッ!!
12.JENO削除
その辺に捨てユユコいないか探しときます
13.喘ぐ狂人削除
白臼 様
バッドエンドじゃないとご都合主義になる気がしたのです。
逃げてたらハッピーエンドだったかと訊かれるとまぁ困るんですけどね……。

JENO 様
ダンボールに入れられて鳴いてるユユコ……!!
うほっ劣情ッ
14.七星削除
勝てる気がしない…
幽々子様素敵ですゆかりん鬼畜です
ごちそうさまですとしかもう!もう!
15.名前が無い程度の能力削除
だめだ、あんたには勝てる気がしない

・・・ふぅ
16.喘ぐ狂人削除
>七星 様
ありがとうございます。お粗末さまでした。

>15 様
賢者タイム……それは自分の行いを反省することの出来る唯一の時間……!
17.名無しの人削除
バットエンド・・・

やれやれだぜ・・・

おや、家の前になんか捨ててあんな・・・?