真・東方夜伽話

寂しがり屋のジョバンニと出来損ないのカムパネルラ

2009/12/21 20:11:22
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寂しがり屋のジョバンニと出来損ないのカムパネルラ

ちんかめ

「どう?」

「駄目ね。見えないわ」

「駄目かぁ……」

つまらなさそうな顔をした蓮子の口から真っ白な吐息が漏れる。
厚手の手袋を嵌めた右手で、古ぼけた神社の石階段に積もった雪を払った蓮子は、不機嫌そうな様子でそこにドスっと腰を下ろすと、頬杖をつきながら空を見上げた。

私達、霊能サークル『秘封倶楽部』は、今日もその活動の一環として、web上の地図で発見した山奥の古い神社へと、わざわざローカル線を二本も乗り継いでやってきていた。
私達の活動の目的は、不思議な世界へと繋がる“境界”を探し出すこと。
サークルのメンバーはたった二人。
同じ大学に通う宇佐見 蓮子と、私ことマエリベリー・ハーンのたった二人だ。


「あーあ、これで何連敗目よ」

「15」

「戦争に15連敗もした国なんて、どこを探したってないわね。そんな国、とっくに滅びているもの」

「別に誰かと競ってる訳じゃないんだから良いじゃない」

私達は時間の有り余っている大学生活の合間を縫っては“境界”探しに精を出している。
しかし、戦果は思わしいものとはいえない。3時間近くも掛けて遠征した今回の探索でも“境界”を発見することは出来なかった。
これで現在遠征15連敗中。
蓮子が不機嫌にもなる訳だ。

「ああ、物分かりの良いメリーさんですこと。私はそこまで悟れないわ。何の収穫もなくもう8時……帰ったら11時ね。何て非生産的な1日だったのかしら」

「何か生産的な事をするためにしてる活動じゃないでしょう? それより、お腹がすいたわ」

「何をせずとも腹は減るってね……」

空を見上げている蓮子の口は、への字に曲がっている。
相当にご機嫌ななめのようだ。
私はゆっくりと蓮子の隣に腰を下ろして、満天の星空を見上げる。
何度見上げてみても星から時間なんて分かりはしない。

正直なところ、最近の私は“境界”なんて見つからなくても良いと考えるようになっている。
私は単に蓮子と一緒に同じものを見て、同じものに触れていたい。
境界なんて見つけてしまったら、私達の関係に変化が起こってしまいそうだから。

こんな風に思い始めたのには、勿論それなりに理由がある。

「……帰りに何か食べよっか」

ポツリと声がして、私は星空から自分の隣に顔を向ける。そこには、少しだけ機嫌を直した蓮子の笑顔があった。

「うん。食べたい。」

「もうこの時間じゃチェーン展開してるレストランくらいしか開いてないわね」

「じゃあ、蓮子の家の近所にオープンしたっていう新しいお店に行きましょ?」

「あんまり気が進まないわ」

「蓮子ってチェーン展開しているお店嫌いよね」

「だって、つまらないんだもの。無難なメニューと無難な値段設定、無難な接客に無難な客層。ついでに味まで無難」

「普遍的なものがあるからこそ、個性を素晴らしく感じるのよ」

「ああ、油ギットギトの個性たっぷりラーメンが食べたい!」

「こんな時間にそんな物食べたら太る」

「大丈夫。私、太らない体質だから」

「付き合う私が太るって言ってるの」

「あははっ、メリーはちょっと太ってる位の方が可愛いわよ」

「他人事だと思って!」

「あははっ、大事な恋人の忌々しき事態だと理解はしているわ!」

「余計性質が悪い!」

私に叩かれるのを避けるようにして、蓮子は石階段から立ち上がり、笑いながら石階段を降りていく。

そう、私達は今年の夏から付き合い始めた、いわゆる恋人同士というやつだった。
どちらから告白したのかは、私達だけの秘密、ということになっている。
暴走しがちな蓮子がこの話題を出すと突っ走るのを止めてくれるから、とても便利なのだ。

跳ねるようにして石階段を降りていく蓮子の後を追って、私も立ち上がった。
雪が積もる石階段を滑らないよう慎重に降りると、街灯一つない山道に出る。
ヒューヒューと尤もらしい音で北風が吹いていて、薄暗い松林が、ガサガサと音を立てて揺れていた。

「うぅ……寒い」

ハイカットのブーツに包まれた足の指先は痺れているように冷たい。
蓮子と一緒の手芸店で買った厚手の手袋の外から、ふぅっと息を吐きかけても、指先に感じた温もりは、ほんの一瞬で冬の風に攫われる。

「これ、必要なかったかも」

蓮子は右手に持っている蛍光灯が入ったカンテラを乱暴にバックの中に詰め込んだ。
明かりなんか無くても、道を見失うほどの暗さではない。
凛と冴えた冬の夜空に、氷のように蒼い月が寒々しく輝いていたから。
まるでこの寒さを水彩絵の具で表現したみたいな蒼い光が、白い雪に覆われた山道を青白く照らし出している。
頬に触れる空気は放射冷却されて、ピリピリと刺すように冷たかった。

「ほんと寒いわね……あっ!」

ようやく私が隣に追いついた途端、蓮子は嬉しそうな声をあげて走り出した。
ぬかるんだ雪に何度も足を取られそうになりながら、蓮子は道の先に見える人工的な明かりへとひた走る。
私は蓮子の足跡を辿るようにして、ゆっくりとぬかるんだ雪を踏みしめながら歩いていく。走ったりしたら、きっと私は転ぶから。

「私達ついてるわ!」

しばらくすると、ホクホク顔の蓮子が私の方に向かって駆け寄ってきた。

「こんな山道に自販機があるなんて!」

蓮子の手には一本の缶が握られている。
先ほど蓮子が走っていった先に目をやると、そこには一昔前のデザインの自動販売機がポツリと佇んでいた。

「でも、ある意味ついてないわね。温かい飲み物は、これが最後の一本だったの。冬にこんな所で冷たいコーラを飲む奴なんていないのに、何を考えて商品補充しているのかしら」

「コーンポタージュ?」

「うん。本当はコーヒーが良かったんだけどさ。たっぷり甘くて、クドい味の缶コーヒー」

「蓮子が好きなものって体に悪そうなものばかりね」

「体に悪いものは、大抵美味しいのよ」

「そうなのかも」

「メリー君、物分かりの良い子は、先生大好きだぞ」

「じゃあ、物分かりの良いメリー君が大好きな蓮子先生は、もちろんそのコーンポタージュをメリー君にあげるのよね?」

「メリー君、戦争とは悲しいね。奪い合うパイが二切れあれば、人は争わずに済むだろうに」

けらけらと笑いながら、蓮子はコーンポタージュの缶を自分のコートのポケットへと放り込む。

「譲り合いの精神があれば、そもそも戦争なんて起こらないわ」

「『人は雪山で温かいコーンポタージュを親友に譲れるか?』 これは人類最大の命題だよ、メリー君。ああ、人は何て業の深い生き物なのかしら」

「人って、悲しい生き物ね」

「しかし安心したまえ、メリー君。メリー君が愛して止まない偉大なる蓮子先生は、この命題に答えを出した」

「きゃっ!」

不意に蓮子の手が私の手を掴む。そして蓮子の手は、私の手を握り締めたまま、コーンポタージュの入ったコートのポケットへと突っ込まれた。
腕を引っ張られた拍子に雪で滑ってバランスを崩した私は、空いた左手で蓮子の腕にしがみつく。

「ね。こうすれば、二人とも温かい」

見上げた先に見た、子供みたいに無邪気な笑顔を浮かべる蓮子の横顔。トクリと心音が高鳴る。

「ついてないわ」

「ん?」

「そもそもこんな所に来なければ、自販機のコーンポタージュに喜ぶことなんてなかったでしょう? やっぱり、私達はついてない」

「あははっ、全くだわ」

手袋の先に感じるコーンポタージュの缶は暖かくて、でも私の頬はもっと熱かった。
駅までの道すがら、私は蓮子にその顔を見られないように、顔を俯かせたまま歩き続ける。
雪が降っていて良かった。地面を見つめて歩く言い訳が立つから。


今日の私はついている。



*                 *



「うわ……ここって本当に日本なの?」

「多分、ね」

歩くこと20分ほど。辿り着いた駅には、人っ子一人いなかった。
ワンマンカーしか走っていない廃線寸前のローカル線の無人駅のホームには、古ぼけた木製のベンチが一つと、裸の白熱灯が一つぶら下がっているだけ。
周囲には家の一軒もありはしない。
夕暮れ時、ここで降りた時にはこんなに寂しい場所には感じなかったのに、夜になった途端、ここが日本であることが疑わしくなるような風景に早変わりだ。

「こんな夜だとさ、来そうよね?」

「何が?」

ベンチに二人で座ると、蓮子が妙にウキウキした様子で、錆びて真っ茶色になったレールの先を見つめながら呟く。

「銀河鉄道」

「宮沢賢治?」

「3つの9じゃない方ね」

「出来れば乗りたくないわね。そんな物騒な乗り物」

「物騒? どうして?」

「だって、あれって死んだ人が乗る幽霊列車でしょう?」

「……ふーん。そっか。メリーは銀河鉄道をそういう乗り物だと思う訳ね」

「じゃあ、蓮子は違う解釈をしているの?」

「さぁ……多分、メリーの解釈で合ってるんじゃない?」

「そうは思ってない顔してるわ」

蓮子の顔は、とても納得しているようには見えなかった。
まるで絶対の自信を持って予想した実験結果と実際のデータが大きく食い違っていた時のような顔。
理屈屋が屁理屈をこねようとするときの顔。

「実際ね、そういうこと考えながら読んだことないのよ」

でも、蓮子の口から出てきたのは、意外なくらい寂しそうな声だった。

「確かに、今考えてみればそういうお話だったんだと思う。カムパネルラは死んでいて、ジョバンニは彼の夢を見る」

銀河鉄道に乗った二人は、北十字から南十字を繋ぐ鉄道に乗り込んで、不思議な世界で鉄道の旅する。
様々な乗客達と語り合って、本当に大切なものに気が付いた少年達は、最後に互いの友情を確かめると、いつまでも二人で歩いていくことを誓うのだ。
そして――

「でも、夢だと思いたくない。子供の頃に読んで、そう思ったの。ジョバンニとカムパネルラは本当に二人で旅をして、銀河鉄道から降りたジョバンニだけが戻ってきた。コールサックの先に母親を見つけたカムパネルラは、きっと母親と二人でまだ銀河鉄道の旅を続けているんだ、って思いたかった」

「……」

「ねぇ、メリー。もし私達が銀河鉄道に乗るのなら、どっちがジョバンニで、どっちがカムパネルラなのかしら」

「……分からないわ」

「私はね、きっとカムパネルラ。私のこの目は銀河でとびきり役に立つし、メリーがジョバンニなら、どうしてコールサックを見てもカムパネルラを励ます事が出来たのかも分かる。きっと“アレ”は境界だから。目に見えるものを、人は恐れない」

「……」

「それにね、例えメリーが言うようにカムパネルラが死んでいたとしても、彼は幸せ者だと思う。憧れてるの、私。彼はずっとジョバンニの心に残り続けるんだもの。ジョバンニが長い人生の中で何かを犠牲にする度、きっとカムパネルラは親友に思い出してもらえる。だから、私は……」

「……めてよ」

「ん?」

「やめてよ!! どうしてそんな寂しい事言うの!? 」

「メリー?」

「私は乗らない。銀河鉄道になんか、絶対乗ってやらないんだから!」

「メリー……」

「カムパネルラは嘘吐きよ! 一緒に歩くって約束したのに! ジョバンニの気持ちも考えずに、勝手に一人で行ってしまって!」

徐々に視界が歪んでいく。訳が分からないくらい、私の頭には血が昇っていた。
物語の最後、ジョバンニとカムパネルラは南十字星に石炭袋に恐怖を抱く。
そして、カムパネルラはコールサックの先に母親の姿を見出すと、いつの間にか消えてしまうのだ。

「どうして蓮子がカムパネルラなのよ! 何で私達がお別れしなきゃいけないのよ!」

――カンカンカン!

突然、無機質な音が二人きりのホームに鳴り響いた。この音を聞くのは、今日3回目。
1回目は、このローカル線の始発駅で、電車を待っている時に聞いた。

「……電車、来たよ」

蓮子は泣いている私の頬に手を当てながら、そっと呟く。ガタンガタンと機械的な不協和音を鳴らしながら、列車が近付いてきていた。
薄暗いホームを、眩しいくらいのヘッドライトが照らし出す。

「嫌! 私、乗らない!」

私は強く目を閉じて、蓮子にギュッと抱き付いた。

「メリー……ね? これが最終だから。帰れなくなっちゃう」

プシューという空気ブレーキの掛かる音。

『――駅、――駅。お降りのお客様は、先頭一号車からお願い致します』

スッと私の腕から抜けだした蓮子が立ち上がる。

「嫌! 駄目! 行かないで、蓮子!」

私は叫びながらも目を開けることが出来ない。目を開けてしまったら、いつの間にか私達は銀河鉄道の客席に座っていそうで。
それが、怖かった。

――カンカンカン!

またあの音が鳴る。これで今日4回目。
今度の音は電車が発車する合図だ。
行きに2回、帰りに2回。これで4回。

――プシュー……

列車のドアが開く音がする。

――カンカンカン!

頭が痛くなるくらいに発車の合図が鳴り響く。

「蓮子! 蓮子!! 私を置いていかないで!!!」

焦燥感、不安、悲しさ。
どれが原因かも分からないまま、私は涙を流す。

――プシュー……

でも、私の気持ちなんかてんで無視して、列車のドアが閉まる音がする。
そして鳴り止む発車の合図。

行ってしまう。私を置いて、一人で蓮子が行ってしまう。

「蓮子ーーーー!!」

私は、ほとんど絶叫に近い声をあげる。

――プシュー……

空気ブレーキの稼働音。

――ガタッ、ガタン、ガタン

無機質な不協和音が、駅ホームから離れていって

―ガタン、ガタン……ガタッ、ガタッ……タン……タン……

そして消えた。



*                  *



どれくらいそうして泣き続けていただろう。
合成繊維の手袋で擦り続け、ジンジンと痛む両目を開けると、私は先ほどの薄暗いホームのベンチに座ったまま動けないでいた。
白熱灯の暖かそうな光と相反するように、誰も居ない駅のホームは凍えそうなくらいの寒さ。
チラチラと白い粉雪が空を舞い始めていて、詰まった鼻を啜ると、仄かに冬の匂いがした。

置いていかれてしまった。
下らない意地を張ったせいで。

冷静になり始めた頭で考えてみれば、何て子供じみた我が儘だったのだろう。
銀河鉄道なんか、存在する筈がないのに。
蓮子だって私を置いていって当然だ。有り得ない架空の話に熱くなって、日に数本しかない、しかも終電の列車を見送るなんて。


手に何か固い物を握り締めている事に気付いて、ふと右手に目をやると、手の平にはコーンポタージュの缶が握り締められていた。
余程強い力で握り締めていたのか、中味が入っているにも関わらず、缶は少し凹んでいる。

「……なによ……これ……」

コーンポタージュの缶を見つめている内に、収まった筈の涙がまた滲む。

「ぜんぜん、あったかく、ない……じゃない」

本当に迷惑極まりない。

「……れんこの……ばか」


「陰口は感心しないわね」


不意に何者かに抱き締められた。
地味な色合いの帽子。濃いグレーのコート。真っ白な手袋。嗅ぎなれた匂い。

「君を一人にはしないよ。ジョバンニ」

「……君の言葉は……信じてあげられないよ、カムパネルラ」

「信じて。だってほら、僕らはこうして一緒にいるじゃないか」

滲んだ視線の先には、牛乳を零したみたいに白く輝く天の川。
尊大なカシオペアがカムチャツカの向こう側で輝いて、北極星が大らかに子ども達を見守っている。

プラネタリウムで見る偽物の星空みたいな夜。
偽善的で、独善的な美しさ。


「大丈夫。私はずっとメリーの側に居るから」


「それは、誰のため……?」


「みんなのさいわいの為なんかじゃない。私は、私の為にメリーの側にいるわ」


応える言葉の代わりに、私は蓮子の唇を奪った。
乾燥した互いの唇が少しだけ痛い。

「メリーは案外寂しがり屋さんね」

「それを意外に感じるなら、蓮子は恋人のことを何も知らないんだわ」

「そうかもね。なら、もっとあなたの事を教えて?」

今度は、蓮子に唇を奪われた。
お互いの唇をはむようにして、乾燥した唇に水気を与え合う。
そうしている内に、身体が奥から熱くなって、その熱を蓮子に伝えるため、舌を唇の隙間へと挿し入れる。
柔らかな肉に、ざらついた表面の感触。元々そんな風にするための器官じゃない筈なのに、舌で繋がるのはこんなにも心地良い。

「何してるんだろ、私達。こんなローカル線の寒い駅のホームで。しかも、ベッドはボロボロのベンチ。あはっ、雪印だって。ペンキが剥がれてて宣伝になんないわ」

「寂しがり屋のジョバンニが私と一緒に銀河鉄道に乗ってくれてれば、こんな想いする必要なかったのよ」

「なら、やっぱり乗らなくて良かった」

「うん」

また、どちらからということもなく唇を重ねる。
キスをしながら抱き付いていた私を、蓮子はゆったりとベンチに押し倒した。

「これ、邪魔」

私は手に持っていたコーンポタージュの缶を、蓮子の目前に突き出す。
一瞬、何のことか理解出来ていなかった様子の蓮子は、自分のコートの左ポケット辺りをポンポンと叩くと、ようやく納得がいったのか、ニヤリと悪戯を思い付いた子供のような顔で笑った。

「邪魔なら、飲んじゃいましょ」

言うが早いか、左手の手袋を脱ぎ捨てた蓮子は、コーンポタージュの缶をカシュリと開けて、そのまま中味に口をつける。

「冷製ポタージュも悪くないわ」

「お腹すいたわ」

「メリーも飲む?」

「ポタージュ怖い」

私は仰向けのまま、唇を少しだけ開いて、静かに目を閉じた。
数俊の後、私の唇に暖かな唇が重ねられて、生温いコーンポタージュが口の中に流れ込んでくる。
ちょっと粉っぽくて香ばしい匂いが鼻から抜けて、次に感じたのは喉に絡み付くような甘さ。
突然与えられた味覚への強い刺激に、頬の裏側が引きつるような感覚がして、私は背中を震わせる。

キスをしている間中、ずっとポタージュの甘ったるい味がした。私達は、その味が消えるまで舌を絡め合わせ続ける。
ようやく口の中からポタージュの味が消えると、蓮子の舌が私の口から出ていく。
その蓮子の舌を引き留めるように、私は舌を巻き付けるように絡めた。
互いの唾液の銀糸で繋がっている2人の舌が外気に触れると、真っ白な湯気が冷涼な空へと昇っていく。

そして、またポタージュを口に含んだ蓮子の唇が私の唇に重ねられて、私は生温いポタージュを口角から零しながら飲み下していく。
そうやって、普通のジュース缶より一回り細いポタージュの缶が空になるまで、私達は30分以上も掛けて、キスを続けた。
その間に私の身体は熱病を拗らせたみたいに熱くなっていって、蓮子の細い身体に必死で抱き付いた。まるで母親に甘える子供みたいに。

「私達、動物みたいね」

自分でも分かるくらいに赤い顔で私は言う。

「だって動物だもの」

そんな私の言葉に、蓮子は狼みたいにギラついた眼で私を見つめながら答えた。
蓮子の冷たい左手が私のスカートの中に入ってきても、その眼に釘付けになってしまった私は何の抵抗も出来ない。

「メリーの太もも、温かい」

「はぁっ……はぁ……っ」

蓮子の手は氷のように冷たいのに、私の身体は冷えるどころか、どんどん熱を帯びていく。
動悸が激しくなって、まともな言葉も返せない。下着の奥が熱くて熱くて、私の目にはまた涙が浮かぶ。
熱で蕩け始めた思考で何かを言葉にしようとしたけれど、私の声帯が震える前に唇を蓮子に奪われた。

「んっ……! んぅん……っ!」

冷たい蓮子の細い指が、火照った私の太ももの上をなぞる。

犯される。
これから私は蓮子の冷たい指で、私の一番大切な場所をグチャグチャに犯されるんだ。

「んんんんぅっ!!」

そんな風に想像しただけで、私の腰に微弱な電流を流されたような感覚が走って、生暖かい体液で下着が濡れていくのを感じた。

「んふふっ……ぴちゃ……くちゅ……」

軽い絶頂に身体を震わせる私を嗜虐的な瞳で見つめながら、蓮子はわざと舌を外気に晒すようにして、大きな水音をたてながら私の口内を犯し続ける。
蓮子の真っ赤な舌の肉からは、湯気が絶え間なく立ち昇っていた。
人間の内側は、どうしてこんなにいやらしい色をしているのだろう。私はぼんやりとした思考のまま蓮子と同じ色をしているであろう自分の舌を蓮子のそれに絡め合わせる。

「れん……こ……んっ! は、やく……焦らさないで……っ!」

「あら、メリーは私に何をご所望なのかしら?」

「い、じわる……わか…ってるくせに……んんぅっ!」

蓮子の手は、私の太ももの根元を焦らすように撫でつける。
私のそこは、じんじんと疼くように熱を持って、下着に更に大きな染みを形作っていく。

「言葉にしなきゃ分からないわ」

「さ、触って……蓮子に私の大事なとこを触って欲しいの……っ!」

「触る? 触るって、こう?」

「きゃぅんっ!!!」

私の下着に蓮子の冷たい指が触れる。
蓮子の指に押さえられた下着が、僅かに私の肉の中へと入ってくると、腰から背中にかけて電気的な刺激が走った。
蓮子の指は、触れるか触れないかといった加減で私の割れ目をなぞるように刺激する。

あと少し……あと少しの刺激さえあれば、絶頂できる。そんな力加減で。

「いやぁぁぁ……っ! れんこぉ! いじわるしないでぇ!」

「触って、って言ったのはメリーよ? 私はメリーの言う通りにしているだけ」

軽いオーガズムに達し続ける性器からは、無尽蔵に愛液が分泌されて、私の下着はお漏らししてしまったようにグチャグチャに濡れてしまう。限界まで性感が高まったクリトリスは、痛いくらいに固くなっている。
もう、限界だった。

「犯して! 蓮子の指で、私のいやらしいオマ〇コ犯してぇ!! もう限界なのっ!!!」

「分かったわ」

私が叫んだ次の瞬間、下着をギュッと引きずり下ろされて、ドロドロに蕩け切った膣内へと冷たい指が乱暴に侵入してきた。

「----ッ!! ------ッ!!!!」

私は身体全体をガタガタと震わせながら、声にならない絶叫をあげて絶頂する。
蓮子の冷たい指が私の中で暴れる度に、頭の中でチカチカと白い火花が飛び散っているかのような壮絶な刺激が襲ってくる。
私の腰はガクンガクンと痙攣し、あまりの息苦しさと脳の限界を超える刺激に目からは涙がボロボロと零れ落ちる。
蓮子の指にグチュグチュと膣肉を掻き回されて、私はお漏らししてしまったかのように無色透明の飛沫を性器から噴きあげた。
蓮子は、理性が吹き飛んでしまっている私の首筋に、唾液を塗り付けるように舌を這わせる。
その間も蓮子の指は、痙攣する私の膣肉をグッチュグッチュと犯していて、私の口からは意味を成さない叫びが漏れ続けた。
古ぼけたベンチが、私の身体の震えに合わせて、ギシギシと悲鳴をあげる。

やがて、見つめていた白熱灯の光が強くなっていって、私の視界が白く染まっていく。
酷い耳なりがしたかと思うと、一切の音が聞こえなくなって、膣の中で暴れる蓮子の指の感触だけしか感じなくなった。
私の思考は、蓮子に犯してもらっているという幸福感に支配されて、他のことなんかどうでも良くなってしまう。

真っ白な世界に、私は蓮子と2人きり。
蓮子は自分の玩具を弄り回す子供の様な顔で私を見つめながら、膣の襞に指を擦りつけ、すっかり馬鹿になってしまった私はボロボロと涙を流しながら絶叫して、でももっと蓮子に犯して欲しくて、浅ましく腰をくねらせる。


最早、そこがどこなのかも解らない。


真っ白な世界の空の向こう。


きっと北十字の方角だろう。


遠く、遠く


銀河鉄道の発車を告げる汽笛の音が響いた。





*                  *





「あ、起きた?」

目を開くと、そこには私の顔を覗き込む見慣れた笑顔があった。
頭には柔らかい感触。
どうやら私は膝枕されているらしい。

「……ここは、どこ?」

「ここは、僕と君だけの世界だよ。ジョバンニ」

「そう……じゃあ、あなたはカムパネルラ?」

「そうだよ。僕は君だけのカムパネルラ。君のために、ザネリを助けることを放棄して、銀河鉄道にも乗れなかった出来損ない」

「……君の言葉は信じないことにしているんだ、カムパネルラ」

「どうしたら信じてくれる?」

「何か、信じれる形が欲しい」

「それなら、君が望んでいることを何か一つだけ叶えてあげる。それで信じてくれるかい?」

「……分かった」

「じゃあ、私の可愛いジョバンニは、何がお望みかな?」

「真っ赤なリボンで包んだダイヤモンド」

「残念だけど、君のカムパネルラの甲斐性じゃあ、それは無理だね」

「それなら……油ギットギトのラーメンが食べたい」

「あははっ……きっと、それは僕に頼まなくても、この夜が明けたら嫌って程食べることになるよ」

「うふふっ……あはっ……あはははっ」

「あはははっ」



「じゃあね……うふふっ……じゃあ……」



まるでプラネタリウムみたいに、澄み切った空で輝く星々。
寒さなんて感じていないかのように力強く輝く白熱灯。
微かに舌先で感じるコーンポタージュの甘み。









「目が醒めるまで傍にいて」










愛しい人と2人で過ごす夜。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
朝になって、グースカと電車で眠った二人は、寝ぼけ眼を擦りながら入ったラーメン屋で替え玉を三回も頼んで、蓮子のマンションに着いてから飽きもせずにまたネチョって寝たんだと。

はいはい。

あと、クリスマスは爆発しろ。



クラムボンって何なんでしょうね?
さて、遅れてしまいましたがコメレスをば。

>>1様
ちゅっちゅちゅっちゅー!(挨拶)
もうこの二人は早く入籍すれば良いと思うんだ。

>>ののさ様
貴方のクリスマスは、爆発しましたか?
私のクリスマスなんて、初めからありませんでした。貴方の蓮メリも読ませて頂いてますよ……ムフフ

>>今川焼き様
蓮メリ作品は少ないですが、そのちゅっちゅぶりときたら、凄まじいものがあります。
個人的には、ナヅナさんの秘封なんかは、甘々でオススメですし、何といっても凪羅さんの「マエバリー・ハーン」は必読です。

>>4様
天皇誕生日ロスタイム1日目の夜には、どうして皆セックスするんでしょうね。
そんな無秩序なセックスをする輩共のチンポは爆発してしまえばいいと思う。

>>七星様
銀河鉄道の夜は切ないお話ですね。夏の話の筈なのに、どうしてか冬に読み返したくなります。
クリスマスは爆発しろ、と言っているだけでは何も起こらない事に最近気付きました。爆発することを願うだけではなく、爆発“させる”のです。

>>釣り針様
寒空の下の青姦なんかが出来るのは、若いうちだけです。
筆者は歳を取り過ぎました。今は、青姦をしている若者たちの妨害をするのが生きがいです……ふひひ

>>7様
砂吐かせるつもりで書きました。故意犯です、さーせん。
クリスマスの爆破に協力してくれる紳士を募集中ですので、詳細は「クリスマスを爆殺する会」までお願いします。

>>8様
蓮メリはちゅっちゅしてるからちゅっちゅで、ちゅっちゅのためにちゅっちゅなんです。
もう結婚しろよお前ら!

>>9様
私のイメージした油ギットギトのラーメンは、近所のラーメン屋の一枚150gあるチャーシューが3枚乗ったチャーシューメンです。
果たして食べきれるかな?w

>>10様
コーンポタージュに限らず、飴玉だろうが、毛玉だろうが、小悪魔が発射する大玉だろうが、蓮メリにかかれば全て性的アイテムです。
そして、貴方の褒め言葉は至極最もだと考えます。

>>11様
実は、秋姉妹の執筆を考えていたんですが、どうしても日程的に間に合わず、結局ネチョだけを抽出して現在の新作にしました。
バレンタインあたり、破壊するのもありかもしれませんね。

>>約櫃様
いつもコメントありがとうございます。
深く読みこんで頂けたようで、感謝の極みです。またよろしくお願い致します。

>>13様
1枚150gのチャーシューが3枚のったチャーシューメ(ry
クリスマスを爆発させるためには、皆さんのしっとパワーを集めることが大事です。さぁ、呪いましょう、クリスマスという名の暴挙を!

>>白臼様
いつもコメントありがとうございます。この二人の掛け合いが甘いのではなく、蓮メリという存在そのものが既に甘いのです。
クリスマスの起源を世に知らしめて、一緒にアベック達の聖夜を爆発させましょう!

>>名無し魂
いつもコメントして頂きありがとうございます。
大丈夫、クリスマスを爆破したって、蓮メリは時間、場所問わずちゅっちゅしますから。

>>華彩神護様
クリスマスという慣習自体を破壊せねばなりません。
これは独り身の男達の宿命なのです。立てよ国民!

>>その辺の妖怪様
師匠、どうやら世の中の情報弱者共はクリスマス中止の報も聞かずに、勝手にクリスマスを敢行するという暴挙に出たようです。
これは許されないぞ……バレンタインにも奴らは何らしらの計画を立てている模様なので、そこで確実に爆破しましょう!

>>今川焼き様
ぴゃー! 直前コメののささんにすべきレスを誤って貴方へのレスに書いてしまいました。
大変失礼しましたorz
貴方も投稿するつもりとのこと、楽しみに待たせて頂きます。
ちんかめ
tanzbear1192@yahoo.co.jp
http://tanzbear.blog35.fc2.com/
コメント




1.名前が無い程度の能力削除
ちゅっちゅちゅっちゅちゅっちゅーーーッッッ!!!
失礼、取り乱した。
でもやっぱりちゅっちゅ
2.ののさ削除
あとがきに激しく共感w
3.今川焼き削除
この二人が主人公の作品って極端に少ないよね                       性夜異変前に無事ちんかすエネルギーを補充する事が出来ました               あと、クリスマスは爆発しろ。
4.名前が無い程度の能力削除
24日を天皇誕生日ロスタイム1日目、25をロスタイム2日目と考えるんだ!

ご馳走さまでした。
5.七星削除
銀河鉄道切ない。
最後シアワセでよかった。
冷たくて暖かいお話ごちそうさまです。

あと、クリスマスは爆発しろ。
6.釣り針削除
ご馳走さまでした。としか言い様が無いです。
寒空の下でちゅっちゅにゃんにゃんは良いシチュ過ぎる!

あと、クリスマスは爆発しろ。
7.名前が無い程度の能力削除
ピロートークで砂吐いたのぜ。

あと、クリスマスは爆発しろ。
8.名前が無い程度の能力削除
蓮メリちゅっちゅは素晴らしい。
ネチョが素敵だ。そしてそれ以上に事後が素敵だ。

あと、クリスマスは爆発しろ。
9.名前が無い程度の能力削除
油ギットギトのラーメン一杯くれw
事後の掛け合いがいい雰囲気です。

あと、クリスマスは爆発しろ
10.名前が無い程度の能力削除
コーンポタージュは性的なアイテム、と…メモメモ
さっさと結婚しちまえこのバカップルがァ!(褒め言葉

あと、クリスマスは爆発しろ
11.名前が無い程度の能力削除
ピロートークの甘さにやられ、後書きと米で吹きました。

こうして夜伽住民から否定されたクリスマスは現実に存在できなくなり、
幻想入りした。幻想郷にてちゅっちゅする恋人達。
明日、あの二人がちんかめお兄さんにかわって立ち上がる!――任務シリーズ2009ver。
というところまで脳内補完完璧です。

あと、クリスマスは爆発(幻想入り)しろ
12.約櫃削除
ふむふむ、これは面白い。
文章の構成も仕込んであるネタも素晴らしい。
13.名前が無い程度の能力削除
油ぎっとぎとのラーメン食べに行ってくる!
後半の盛り上がりが面白かったです。

あと、クリスマスは爆発しろ
14.白臼削除
この二人、掛け合いが甘すぎる。
口からコーンポタージュ吹いた。最高。

クリスマスイブとは本来みんなで失楽園の劇を見ながら一年間自分の犯してきた罪に思いをはせる晩だということを知っている人は少ない。
そしてクリスマスツリーとは舞台に使われた知恵の木の実が成っている木の名残であると知っている人も少ない。

つまり、クリスマスは爆発しろ。
15.名無し魂削除
幸せだ…ああ幸せだ。油ぎっとぎとでも幸せなふたり。

クリスマス爆発すると蓮メリ性夜の12時間が見られなくなるからとっておいてください…
16.華彩神護削除
これは素晴らしい。イヴよ、爆発しておくれ。
17.その辺の妖怪削除
甘いなぁ・・・本当に甘くて砂糖水が出るマーライオン化しました^p^;

てか、今年のクリスマスは中止になったんじゃなかったけ?(ぱるぱる的な意味で
18.今川焼き削除
後書き「勿論あなたの蓮メリも読ませて頂いてますよ」
俺、投稿したことないんだけど
人違いでは?
まぁ、いつか投稿したいとは思っていますが
19.オスマンダ削除
油ギットギトのラーメンが食いたい。
甘いよぉ…口直ししたい…

去年もクリスマスを中止にできなかったか…
今年こそは…今年こそは…ッ
20.名前が無い程度の能力削除
蓮メリいいなぁ
油ギットギトのラーメンのカロリーはネチョネチョで消費するんですね

最後のはJAMかな?
21.英真のん削除
今なら大嫌いなコーンポタージュも飲めそうな気がするw

二人の心情を上手く銀河鉄道9(ピチュン)
…の夜に絡ませて素晴らしい!

今年のクリスマスこそ爆発しろ
22.名前が無い程度の能力削除
素晴らしいなぁ。
最近連メリに嵌って読み漁ってるんですが、こんな良作があったとは。
明日からの仕事もがんばれそうです。ありがとう。
23.名前が無い程度の能力削除
夜伽はメリ蓮が多いのでなお更蓮メリに萌えます。