真・東方夜伽話

猫友達と飼い主

2009/08/06 18:57:21
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猫友達と飼い主

金鳥

 拙作「ねこたん」「わういねこたん」の番外?


◎妹紅が猫化。精神が幼いです。
 全然原作らしくないキャラになっています。注意してください。
 橙とお燐は前半だけ、慧音は後半だけです。






 序……
輝夜「妹紅好き好き」
妹紅「大嫌い」
 妹紅と仲良くしたい輝夜のために、鈴仙と永琳が獣化(猫)の薬を作って妹紅に飲ませた。
 動物になって精神がぐんと幼稚になれば、往年の恨みも忘れて仲良くできるだろうと考えたらしい。
 が、猫になった妹紅は永遠亭を脱出して、慧音の家に住み着いてしまった。そして慧音は妹紅を飼育中。
                                                    ……という事です。









 鏡を覗く……
 頬紅をすくい、一線、細く引いて、撫でひろげて馴染ませる。朱は薄くのびて桃色になった。
 素の血色のような自然な色になった。われながら、上手くできたと思う。
 「良いかな?」
 そばに立って鏡を覗いている妹紅に、鏡にうつった目を見て尋ねた。
 妹紅はおもしろくなさそうな顔をしている。
 「にあわない。慧音、白いほうがいい」
 似合わない、がざっくり刺さる。まぁ、妹紅は化粧顔が嫌いなようだから、決して悪気はない。それに私だって、本当は化粧なんか大嫌いだから、似合わないと言われたってかまわない。
 「ねぇ、どうして化粧してるの?誰かに会いにいくの?」
 化粧なんか普段は絶対しない私が、急に頬紅を引きだしたのだから、驚くだろう。
 この頃は毎晩遅いから……顔色が青い。生徒に瓜先生などと言われる。それだけなら良いが、今日は里の子供の教育担当課、とやらの役人を寺子屋で接待しないといけない。青い顔で迎えるのはあまり良くないから、顔色を整えるために紅を引いたにすぎない。
 「仕事で、しないといけないんだ。本当は嫌だけど。会うのだって、きっと嫌いな人ばかりだ」
 私はたいがいの役人が嫌いだ。理由は、今は枝葉末節だから述べないけれど。
 言うと、妹紅は笑窪をつくって頬を赤らめた。
 妹紅の肌はただ白いのではなく、薄く透けて血色が出る。だから妹紅の紅潮は、正直で美しい。
 頬紅なんか捨ててしまいたくなる。
 「帰りが遅くなるかもしれない。燻製や桃があるから、食べていなさい」
 「うん。まってるね」
 心細そうに微笑んで、私の腕に抱きついた。その額に口づけし、鞄を取る。




     遊蕩




 「あ、べ、べ、べ、べ、べ、……?」
 慧音が出かけたあと、こっそり慧音の日記を盗み見してしまった妹紅。
 自分の事がたくさん書いてあったから、嬉しくなって、次々と紙をめくっていった。ところが、ある日の紙でヘンな文章につきあたった。酔った時に書いたのか……字がふにゃふにゃで、しかも卑猥な言葉が書いてある。見て、妹紅は顔を真っ赤にした。
 恥ずかしくて指先を震わせながら、紙を日付どおりの元の順番に並べ、そっと文机の下に戻す。
 じめじめと薄曇りの、日差しのない空だった。櫛を使って髪と尻尾を整え、爪をといで、それきり暇になってしまった。
 本はおもしろくない。いつも庭に遊びに来る猫たちは、今日は一匹も来ない。
 つまらないから、庭の垣の外を通りかかった犬に話しかけると、
 「きょう、みんなどうしたの?」
  シラネェ
 と、ぶっと鼻を鳴らした。失礼な犬だ。
 「イジワル!」
 舌を出して犬をからかう。犬はぐうっと唸って歩き去った。
 妹紅も外に出てみたくなった。猫になっている事を誰にも知られたくないから、いつも家に閉じこもっていたけれど。
 頭の上にリボンを結んで耳を隠す。着物の裾から出ている尻尾も、シャツともんぺの、いつもの格好に着替えて、だぶだぶのもんぺの下に隠した。足に巻きつけていれば、誰にもバレはしない。
 そうして里を歩き回る。……これといっておもしろい物はない。なんとなく、魚屋の前でじっと立ち止まっていた。
 魚屋と隣の酒屋とのあいだの狭い路地から、猫のか細い鳴き声が聞こえた。妹紅はふと聞きつけて、気になって入っていくと、猫が十数匹、赤い服を着た化け猫の膝元に集まっていた。
 化け猫は、膝の上にぐったりした猫を乗せている。猫は弱ってくたびれているが、目を幸せそうに細めている。
 その目の先に、生まれたての仔猫が三匹。妹紅は驚いた。
 「そこの君、見てるんだったら、どこかからきれいな水を持ってきてよ」
 化け猫……橙が妹紅に声をかけた。橙の手と、仔猫の体に血がついている。
 妹紅は駆け出し、魚屋の露台の氷水を器ごと盗ってきた。
 差し出すと、橙は氷を捨て、水に手をひたしてぬるくしてから仔猫を洗った。その手つきがとても優しい。
 「あなたの猫なの?」妹紅は橙に言う。
 「ううん。通りがかりに、苦しそうだったから……よかったね、無事で。子供も元気だよ」
 母猫の背中を撫でると、気持ち良さそうにコロコロとのどを鳴らした。
 「のら猫?」
 「そうみたい。でも、これから猫の里に連れていってあげるよ」
 「猫の里?」
 猫の里とは、橙が作った猫だらけの里。名前のとおり。橙はそのトップに立とうとしているらしいが、カリスマが足りないのか、どうも上手くいかないようだった。
 「君も来る?化け猫は私しかいないけど」
 猫だとバレている?妹紅はぞっとして、頭に手をやってリボンがあるか確認してしまった。耳はちゃんと隠れているのに。
 「私、猫じゃない!」
 「嘘!隠したってわかるよ。楽しいから来てみなよ?案内するよ」
 橙は意地悪な顔をして笑う。妹紅は恥ずかしくて赤面した。
 服の裾に母猫と仔猫たちを乗せて持ちあげ、ついでに妹紅の手を取って歩きだした。
 「あぅ、待ってよ……」
 (知らない人について行ってはいけない)と慧音に戒められていたから、猫仲間といえど、知らない場所に連れて行かれるのは不安だった。何かがあったとしても、慧音には黙っていたり、嘘をついたりしたくないし、怒られたくもない。
 「はやく行こうよ!」
 橙は手を引いてぐんぐん歩く。引かれるまま、ついて行った。


 川を跳び山を越え……
 たどり着いた所は、本当に猫だらけだった。そこらじゅうに猫がごろごろしているし、にゃあにゃあ猫の話し声ばかり聞こえてくる。妹紅は呆然として猫の里を見渡した。 
 マタタビの白い花があちこちに目につく。匂いが風にのって薄っすらと漂っていた。
 「名前はなんていうの?」
 木造りの小屋へ入り、やわらかくて清潔な藁を集めて山を作った。その上に母猫と仔猫たちとを乗せ、寄り添わせる。睦まじい親子を、二人は頭をくっつけて見つめた。
 「もこう」
 「もこー?漢字は?」
 「いもうと、くれない」
 橙は、だいだい色のダイダイと書いて橙だと名乗った。
 「良い名前だね」
 「妹紅も。色も似てるしね」
 橙は笑った。紅と橙は同じ赤系統の色だ。
 橙の屈託のない、人懐こい笑顔が気に入って、妹紅は橙が好きになった。というのは、猫友達になりたいと思ったのだ。化け猫の友達はまだいなかったから。
 親子寄り添って幸せそうな猫を見ていると、妹紅は慧音が恋しくなった。寄り合って、こんなふうに撫でてほしいと思った。妹紅にとって慧音は飼い主でもあるし、親猫のような存在でもある。
 橙に手を引かれて、妹紅は猫の里を回った。観察と言っても、目に入るのは猫ばかりだ。
 猫が歩いている。
 猫が転がっている。
 猫が喧嘩をしている。
 猫が寝ている。
 猫が空を飛んでいる。
 ……くらくらと眩暈がした。
 猫だらけに当惑して気分を悪くしたのではない。マタタビの匂いが漂っていたから、敏感な妹紅はもう酔ってしまったのだ。
 草の上に膝をつき、ぐったりと足を投げ出した。しかし、まだ眩暈がする。だんだんと、頭がふわふわ浮つくような感覚に包みこまれて、ふらっと倒れてしまった。
 「マタタビに負けちゃったの?化け猫のくせに弱いなぁ」
 「にゃぁ」
 まぶたが重い。眠いような、ぬるま湯につかっているような、不思議と心地よい感覚だった。抗わずに目を閉じると、心がとろけて胸が温かくなる。ぼうっと頭が白み、意識が薄らいだ。
 橙は妹紅のそんな様子を見て、だらしないもんぺの口を引っぱって、勝手に妹紅の尻尾をつかみ出した。耳を隠したリボンも、ほどいて取ってしまう。
 「真っ白だぁ。いいなー」
 白い尻尾を抱いて頬ずりし、毛をふさふさして揉みくちゃにする。そうされても、妹紅はぼうっとしたまま反応しなかった。尻尾は敏感だが、マタタビに酔っているせいで、不快を感じない。
 「化け猫って、ここにいないから、仲間がいなくて寂しいの。妹紅もここに住まない?」
 「やだぁ。けーねがいい」
 「ケーネ?なにそれ?」
 まぶたがくっついてしまいそうで、妹紅は返事も頷きもしなかった。
 眠くなると、妹紅はいつも慧音を思い出す。いつも慧音がそばにいるから……しかし今はいない。なんとなく寂しくて、目の前に揺れている橙の尻尾を掴んで抱いた。
 「わっ。妹紅の手、くすぐったいよ!」
 「ぅー」
 マタタビに酔いしれて、意識朦朧としている。
 橙はニタリとした。
 服のポケットから小さな木の実を取り出し、妹紅の顔の前に示す。
 「マタタビの実もあるよ。おいしいよ」
 「ぅ?」
 実のにおいにつられて、妹紅はそろそろと指を出し、手に取る。躊躇いながら一度舐めたが、それきりヤミツキになってしまった。
 うつ伏せになって指先で小さな実をおさえ、唇をあててしゃぶりだす。
 しゃぶるのに夢中になって、体はぴくりとも動かさない。普通の猫がマタタビの舐めるのと、まったく同じ仕草だった。橙はほくそえむ……かかったな、というような笑い方だ。
 と、そこへ黒猫が駆けて来た。草の上に広がった、妹紅の白い髪の上でごろんと転がる。
 「あ、お燐。なにしてるの?」
  ニャー
 転がって立ち直ると、姿変じてお燐になる。橙の猫友達らしい。
 「この白猫、どうしたの?」
 赤い髪のおさげを揺らし、妹紅のそばに膝をつく。髪にそって撫で、体に触るが、妹紅はマタタビの実を口に入れてじっとしている。
 「里にいたから連れて来たんだよ」
 「可愛いなぁ。真っ白いね……って、動かないじゃん。死体?」
 「違うよ!見ればわかるでしょ。持ってかないでよ」
 二人に囲まれている事にようやく気づいて、妹紅は酔ってうっとりした目をあげた。
 とっさに橙がポケットから首輪を出し、妹紅の首につけてしまった。
 「あぅ!なに?」
 首につけられた物を取ろうとし、もだえるが、腕が痺れて首まで届かなかった。
 じきに全身が麻痺する。うつ伏せになって倒れ、ただ驚いて目を丸める。
 風変わりな模様の首輪には、お札が縫いつけられている。実は、つけた動物を橙の式にしてしまう道具なのだ。


 お燐が妹紅をころがして仰向けにし、無防備な顎を撫でて笑った。
 「ふふっ、可哀想に。で、どうなの?」
 「んー。変化無いなぁ。また失敗かな……」
 妹紅の首を覗き込んでお札を確認したが、これといった欠陥は橙には見出せなかった。
 橙の目論見が成功していたら、妹紅にはとんだ災難であったろうが、幸いにこの首輪は失敗作らしかった。
 だが、痺れて動けない妹紅には、そんな幸福を考える余裕なんか無い。キモを抜かれたような気持ちになり、怯えた目でまわりの二人を見上げた。
 「はずしてぇ……」
 「だめ。今日一日遊んでから、はなしてあげるから」
 橙が妹紅の頭を撫でて、口にマタタビの葉をくわえさせる。マタタビをつきつけられると、妹紅はますますぼうっとしてしまう。抵抗できずにもぐもぐしているしかない。
 (けぇね……怖いよ……)
 「可愛いなぁ。橙は失敗したんだから、あたいがもらっていい?」
 「あげないよ。私が連れて来たんだから」
 死体とか、もって行くとか、なんだか物騒な話をしているのを聞いて、妹紅は心細くなった。内心で慧音を呼び、助けを求めるが、心の声が慧音に届く筈もない。せめて二人の会話を聞きたくなくて、耳を閉じてしまった。
 が、人間の耳は動かせない。
 「じゃあ、食べちゃわないの?」
 「お燐のヘンタイ!いつもそんなのばっかり考えてるの?」
 「だって、オイシソウだよ」
 ますます嫌な予感がする。
 (知らない人について行くな)という慧音の戒めをやぶったから、こんな事になってしまったのだと考えた。事実その通りである。猛烈に反省したってもう遅い。
 (ごめんなさい、ごめんなさい……)
 「もふもふだね。尻尾は?」
 「こっち」
 お燐が妹紅の体に障り、撫でる。尻尾も耳もいじられ、二人にぬいぐるみのように弄ばれた。悲しくて泣きそうになったが、マタタビを噛み、目を閉じてじっと耐える。
 服のボタンをはずして、中にお燐の手が滑り込んできた。腹を撫でられて、妹紅は驚いて鳴く。
 「やぅぅ……」
 「あはっ、可愛い」
 折から暗かった空を雨雲が覆い、ぱらぱらと降り出した。間もなくどしゃぶりになって激しく落ちてくる。
 「わぁっ、雨だ!」
 水の苦手な橙は、あわてて近くの小屋に駆け込む。お燐は小さい妹紅を抱き上げ、額に頬ずりした。
 「優しくしてあげるよ。大人しくしててね」
 どこかへ運ばれていく。妹紅は目を閉じたまま涙を零す。


 大雨になった。
 親子猫を運んだのとは別の小屋に運び入れられた。雨漏りして水が落ちてくる。
 そこでも清潔な藁が山になっていた。山に妹紅を寝かせ、二人は妹紅をはさんで座る。右にお燐、左に橙。
 本当に食われるのではないらしいと覚って、ともかく安心したものの、妹紅は別の事を心配した。
 (慧音に怒られる……)
 今朝、慧音が出掛けに口づけしてくれた事を思い出し、心が絞めつけられた。
 怖がる妹紅の顔を優しく抱き、お燐は白い耳の内側に舌を這わせる。
 「ひぅ……っ」
 「大丈夫だよ。怖がらないで……はじめてなの?えっと、名前は?」
 妹紅は口もきけない。かわりに橙が答える。
 「妹紅だよ。いもうと、くれない、って書いてモコウ」
 「へぇ。アカいね」
 橙、燐、紅。
 お燐は、妹紅がくわえているマタタビを噛み、妹紅の口から引き出した。胸に落とし、接吻する。
 熱い唇を重ねられて、妹紅は背筋に痺れが走るのを感じた。
 舌を吸われ、顎をつかんで顔を上向けられ、はぐきの裏までくすぐられる。その間に、橙が妹紅の服を脱がせた。
 「んむ、ふぁ……やめてよぉ……」
 「ちゅっ、ん、っ……ふふっ、可愛い」
 艶っぽい水音をたてて、一度唇を離す。糸を引いて妹紅の胸を濡らした。
 「んゃぁ、はぅ、ん」
 「あむ、んっ、ちゅぅ……」
 お燐が上にのしかかり、胸を重ねてゆすり動く。
 擦れて気持ち良く、妹紅の頭は真っ白になっていく。
 「お燐、独り占めしないでよ」
 「わかってる……」
 言いながら、妹紅の肩を抱いて、耳や首を舐める。食べる気満々だった。
 首輪に指をひっかけて除け、白い首筋に吸いつく。
 「ひぁ!ぁん、ぁ……」
 「ちゅっ……首、弱いの?」
 お燐は薄く笑って、妹紅の首を舐めまわす。鼓動を高鳴らせ、はやい呼吸をする妹紅の胸を撫でながら。
 「ちゅ、ぅ……ん、キスマークついてる。なぁんだ、はじめてじゃないんだ」
 赤い痕を指で突き、嘆息した。
 (けぇね……ごめんなさい……)
 目に涙をうかべ、すぐに溢れてしまう。
 零れた涙を橙が舐めた。
 「怖がらせないでよ。可哀想じゃない」
 「はいはい……でも、ショックだなぁ」
 惜しそうに痕を舐め、首から顔をあげた。
 妹紅の胸に吸いつき、先端を舌で舐めころがす。
 「ぁ!やぅ、ぅ……」
 喘いでしまいそうになるのを我慢する。けれど、橙が顎をくすぐって、耐えさせない。
 「もっと鳴いていいよ。お燐、激しくしてあげて」
 「あむ」
 妹紅にしゃぶりついたまま答え、甘噛みし、胸を下から掬うように撫でる。
 「ふゃ、っう、やぁっ」 
 快感が走り、妹紅はぞくぞくと震える。
 マタタビの実を口にふくんで、橙は妹紅の顔を横向かせて唇を重ねた。
 妹紅の口に入れて、舌でころがし、一緒に実を舐める。
 「んぅ、ぁ、はぁ……」
 「ちゅ、ん、ちゅく……モコ、舌も小さくて、可愛いね」
 二人に攻められて、妹紅は怖さも緊張も忘れてしまった。
 マタタビをしゃぶり、橙の舌も吸う。舌を絡めて、無意識に橙の腕を掴んだ。
 「ちゅぅ……んぅ、は、っ……」
 「ゃん、ぁ、モコ、可愛い……」
 橙も横から妹紅に腕を回す。
 抱き寄せ合い、口を吸い合う二人の腕が、お燐の邪魔になった。
 唇を重ねて漏らす、淫らな水音を聞かされて、羨ましくなる。
 「いいなぁ……橙、かわってよ」
 「んっ……あとで」
 接吻とマタタビとで、橙は興奮して身をよじった。
 妹紅の舌を吸いながら服を脱ぐ。
 「んぁ、ゃう、ぅぅん……」
 腿を擦ってうずきに耐える、妹紅の膝がお燐の体をこする。お燐はクスッと笑い、妹紅の腿に触れて開いた。
 「妹紅、びしょびしょだよ……いれてあげるね」
 「ぁう、やだぁ……!」
 しとどに濡れた蜜壷にお燐の指が当てられる。震えながら、足を閉じようとしたが、お燐が体を乗り入れて、閉じさせなかった。
 橙が妹紅を抱いておさえる。
 「怖がらないでいいよ。お燐は上手だから」
 「やだっ、ぁ……ゃあぁぁ!」
 お燐が中指と薬指をいれ、動かしだした。
 「ぁん!ぁ、やっ、ひ!うぁ……」
 中で指が膣を乱すごとに腹をはね、妹紅は喘ぎ鳴く。
 片手で妹紅を抱きながら、橙は自分の秘所を慰撫する。
 「気持ち良いでしょ、もっと、鳴いて……っ」
  橙の吐息を耳のそばに感じて、妹紅はよけい興奮した。
 「はぁ、ゃ、んぁ、っう!ぁ……」
 お燐は愛液を滴らせて動き、妹紅を鳴かせて楽しむ
 「橙、ずるいよ。やらしいなぁ」
 指をいれつつ、妹紅の充血した陰核を舌先で突く。
 「ああぁっ!んゃ、あぅ!ひぁ」
 喘ぎが切羽詰って、余裕がなくなっていく。
 「やぁぁ!ぁう、あ!やだぁ、はっ、やめてぇ!」
 「モコ、イっちゃ、ダメだよ……はじめた、ばかりなんだから」
 妹紅の興奮にあわせて、橙も指を早める。
 大雨が小屋の屋根を轟々と打つ……


 強い快感に躊躇いを完全に壊され、妹紅は喘ぎ、悦んだ。
 お燐は陰核を吸い、指を徐々に早めていく。
 「ぁ、っは……妹紅、気持ち良い?」
 隣で喘ぐ橙が、妹紅の耳を舐める。
 「ひぁぅ!やぁ、いいよ、ぁ、きもち、いいよぅ!」
 橙の腕にすがり、震えながら鳴く。
 「やあぁ!あぅ、ぁ、いっちゃう、ぃ、っあ!!」
 「んぁ、はぅ、だめ、私も、イきそう……」
 橙も限界に近づき、妹紅にしがみつく。
 「いいよ……イきなよ、二人とも」
 お燐は腕を振って激しく突き、妹紅をゆすぶった。
 「ああぁ!!あん、あ!やぁっ、だめ、あ!やめてぇ!!」
 「はぁっ、モコ、いっしょに、イこ、もこ、っああぁ!」
 妹紅は容赦なく突き立てられ、痙攣して鳴き叫んだ。橙も高く鳴き、同時に果てる。
 きつく抱き合って震え、余韻に浸る。
 お燐は膣から指を引き抜き、妹紅の愛液を舐める。
 「むぅ……あたいだけ、仲間はずれみたい」
 服を脱ぎ、二人の服の上に重ね置く。
 妹紅と橙の、余韻に浸っている顔を見て、二人の頬をつねった。
 「ふふっ。二人とも、やらしい顔して、可愛い」
 「あぅ……こらぁ」
 橙は妹紅のあたたかい胸に頬をすり寄せ、抱きついて離れない。
 「妹紅、大丈夫?」
 お燐が妹紅の頬を撫でると、浅く息をして、妹紅は頷いた。
 細めた目が潤み、かすかに光っている。
 「まだ欲しいの?もっと、気持ち良くしてあげるよ」
 接吻して妹紅の足をまたぐ。 
 妹紅の片方の腿を抱き、濡れた秘部を擦り合わせた。
 充血して皮の剥けた陰核どうしが擦れ、たまらない快感が走る。
 「んゃ!ああっ、ひぅ、やぁん!」
 「ぁう、あ、んっ、妹紅、やわらかくって、良いよ……」
 卑猥な音をたてて、腰をゆする。
 「ね……お燐、このコ、最高でしょ?」
 「ぁ、あぅ、うん、最高、もこう……」
 妹紅を揺すりながら、起き上がった橙と舌を絡める。
 「ちゅっ、ふ、んっ……っあ、もこう、気持ち、良い?」
 「やぅ、あ、はぅ!いいよ、いいよぉっ!」
 「あ、っは、ほんと?もこう、あたいも、すごく、いい、っひぅ!」
 淫らに腰を突き出して、妹紅にぶつける。愛液がまざりあい、二人の腿まで滴って濡らす。
 橙は昂った息をこぼしながら、二人を見ていた。
 「あぁぅ!あ、ゃあっ!!だめ、ぁ、また、いく、いっちゃう……」
 「ふぁ、んっ!もこう、だめ、まだ……!」
 腰を浮かせて逃げようとする妹紅を抱きとめ、小刻みに擦りつける。
 「ひぁ、やあぁ……」
 「モコ、がんばって……ね、私も、手でやって……」
 橙が妹紅の手を取って、指を濡れた秘部におしつけた。
 激しく喘ぎながら、妹紅は橙に突き入れる。
 「やああぁ!はぁ、ぁう!モコ、すごい、良いよっ!」
 妹紅に中をかき乱され、高い声で喘ぐ。
 狂おしく鳴きながら、妹紅は橙を何度も突き上げた。
 「ひぁ!やぁっ!あ、あ!モコ、いいよ、いいよぉ!」
 「はっ、あ、んぁぁ!あああぁっ!!」
 「あ!はぅ、ぁ、っあ、あははっ!最高、三人って……」
 お燐が笑う。三人の、はばかりない鳴き声が乱れ、混ざって、雨の音さえ凌いだ。
 「や!ぁ、あ、モコ、きちゃうっ、ぁ、もっと、突いてっ!」
 「あぁぁぅ!!ぁっあ、やぁぁ!は、イく、いっちゃ、ぁ!!いくよぉっ!!」
 「ひぁ、だめ、もぅ、っあん!もこう、いっしょに、イこ、もこうっ!」 
 三人はほとんど同時に達し、叫んだ。
 お燐も、橙も、妹紅の上にくずおれる。





 昂り、紅潮した体を重ねあった。
 どしゃぶりの激しい音をぬって、余韻にひたる三人の甘い息が、それぞれの耳をかすめる。
 「ねぇ……二人とも、疲れた?あたい、まだ足りないよ」
 お燐は妹紅の胸につかまって、身をのり出す。
 「私も。……妹紅は?」
 「……だいじょうぶ」
 恥ずかしそうに小声で答えると、お燐が妹紅に抱きついた。
 「あはは!大好き、妹紅……」
 橙が、妹紅の首輪をはずした。
 アカい舌を、三人で絡めあう。















(……そうしてですね、そういうわけでありますから、これはアアすべき事になるのでありまして、それにはやはりコノところが問題になりますので、ココをよくお考えになられてからお返事をいただきたいのでありますが、どうもこちらといたしましても……)
 長い……
 (ふにゃふにゃふにゃふにゃ)
 どしゃぶりの音と一緒になって、耳をグズグズと通り抜け、眠くなってしまう。
 背が低くて頭の丸い中年と、やたらと体の大きい若い男が来た。中年のほうはごく平凡だが、若いほうは、役所なんか辞めさせて、腰に刀でも吊るしてどこかの門に立たせたほうが似合いそうだ。
 中年のほうが最初から喋りどおしだった。その話す言葉を書き起こして文章にしたなら、どこにも句点を置く場所が無いに違いない。いつまでもくだくだしく喋り続ける、接続詞のエキスパートなのだろうけれど、なにしろ長すぎる。
 若いほうは口を利かない。たまに資料をめくる他は、じろじろと私ばかり見ている。無礼な奴だ。長話がつまらないのを、私が大人しく我慢している前で、椅子にぐたっともたれて頭を抱えたり、足を組んだりして、図々しく私を注視し続ける……資料を丸めて、その高い鼻をぶっ叩いてやりたい。
 わざわざ顔色を整えて応対する価値があったとは思えない。最低だ。
 妹紅は、私がこんなふうに時間を無駄にしている間、寂しがっているだろうか……
 腹が立つ!
 何なんだ、この若い奴は。何のつもりで私をじろじろ見るのだ?獣人だからって馬鹿にしているのか、もしくは妙な気でもって見ているのなら、あとで張り倒してやる!
 中年だって、話が長すぎる。重要な事でも話すのかと思って聞いていたが、いつまでも同じような事ばかり、言葉を変えて何度も繰り返すだけだ。もう聞く必要は無いと判断せざるを得ない。
 「……お話の途中で、申し訳ありませんが、そちらのご要求への返答はもう……」
 言い出すと、案外あっさりと話をやめてくれた。かえって拍子抜けしてしまった。
 長話のために、もう何時間かを浪費してしまったが、いい教訓になった。無駄な行為も、無駄と知りながら咎めようとしない事も、両方罪なのだ。
 妹紅に会いたい……
 おい、この若い奴はだらだらと茶菓子をかじって、帰る準備もしないじゃないか。上司の中年はそそくさと帰ってしまったのに。
 (先生の寺子屋は、なんですか、おもしろいですね)
 あぁ?
 まさかお喋りに付き合わされるのか。その前に、私を先生と言うのを止めてもらいたい。
 (えぇ、まぁ、お茶をもう一杯もらえますか)
 馬鹿野郎!妹紅との二人の生活では、ほんの短い時間だって貴重なのに、それをあんたのためにドブに捨てなければいけないのか!?
 ただの話ならともかく、これ以上馴れ馴れしくするようなら、もうこいつは役人とは言えない。蹴り出してやる!
 「……うちの猫に、エサをあげないといけませんから。そちらも、もうお帰りになられては?」
 (はぁ、猫ですか。うちにもいますが、ネズミを食ってます)
 黙れ、与太郎めが!妹紅にネズミを食わせておけというのか!?……
 ネズミを獲る妹紅か……悪くない。長い爪を出して、妖艶に舌なめずりして……良いな。ただし、ネズミを食べないなら。あるいは、私がネズミに……いや、妹紅はマゾだから……
 (どうしたんです、ニヤニヤして)
 帰れ、帰れ!貴様にこそネズミのキモでも吸わせてやりたい。今すぐ出て行け!















 いつしか雨は弱まり、静寂に包まれる。
 色に溺れ、気も絶え入ってしまうまで三人は鳴き続けた。
 はやい鼓動と余韻もおさまり、妹紅を下にして、上に二人が重なって休息する。
 屋根にたまった水が漏れ、藁の山の下まで濡らしていた。雨の音がしない事に、妹紅はようやく気づいた。
 梅雨の頃、慧音がアジサイを持って帰ってきた時の事を思い出した。
 (一緒に行くか?)
 アジサイに乗って来たカタツムリを、池のあたりへ連れて行ってあげた。
 (妹紅。一番星を私より先に見つけたら、今晩も魚を食べさせてあげる)
 一番星を見つける競争をした。慧音がわざと負けてくれた。
 まだお礼を言っていない。あるいは、言わずにおくほうが良いか、悩んでいる。
 慧音、人間の里の、慧音の家。
 ……あたりはもう真っ暗だ。黒い雨雲のせいもあって、時間はよくわからない。
 だが、日が沈んでからだいぶ経つだろう。もう慧音が家に帰る頃かもしれない。
 二人の下から滑り出て、服を取った。
 「妹紅、帰っちゃうの?」
 橙が尻尾で、妹紅の尻尾を絡めて引っぱった。妹紅は振り返り、寂しそうな目を見合す。
 「帰る……」
 「そっか。泊まっていけばいいのに」
 ため息をついて立ち上がった。小屋の戸を開けて外を見る。
 「雨、止んでるみたい」
 「あたいが送るよ。橙はここにいて」
 そう言い、お燐も服を着た。橙は頷き、藁の上に丸まって目を閉じた。
 背中を安らかに上下させ、くたびれて眠ってしまったようだ。
 妹紅も疲れてふらふらする。お燐に背負われて空を飛んだ。
 雨の後の、胸をしめつけるような冷たい風が頬に当たる。
 興奮して熟してしまうほど熱かった心と体から、余熱が引いていく。
 「お燐は、橙のこいびとなの?」
 「恋人?違うよ。友達」
 「友達でも、ああいうことするの?」
 「するよ。セーヨクショリだよ。妹紅もしたじゃない」
 思い出して、妹紅は頬を赤くした。
 「そうだった」
 間の抜けた返事をする。お燐が笑った。
 里の上を、妹紅が指さす方へ飛び、慧音の家の庭に降りた。家はまだ真っ暗だった。
 「ここ、妹紅の家?会いに来ていい?」
 「いいよ。でも、今日のこと、慧音には……私の飼い主には、内緒にして」
 「ん。わかった」
 去り際に、お燐は妹紅を引き寄せて接吻した。
 「じゃあね、妹紅」
 「うん……」
 とんだ猫友達ができてしまった。




     洗朱




 嫌な奴!
 ニヘラニヘラと無礼な話をしだしたから、外へ蹴り出してやった。あれは役人として私に対した態度ではない。だから私だって役人に対する態度は取らない。無礼を受ければ摘まみ出すまで。
 まったく散々な一日だ。慣れない頬紅の粉っぽい感覚も、気分が悪い。
 外を見ると、雨が降っていた。さっきまでの大雨は一旦止んだようだったが、また降り出したのだ。
 傘がない。濡れて帰るしかないか……そう思っていた時、妹紅が来た。
 「おつかれさま。傘、もってきたの」
 と、にこにこ笑う。しかし、妹紅がさして来た傘だけで、私が使うもう一本はない。
 「一本だけか?」
 わざととぼけて聞くと、妹紅は赤くなって俯いた。
 「わすれてきた……」
 可愛い嘘をつく。一緒の傘に入りたくて、一本しか持ってこないのだ。
 私が傘を持ち、妹紅をそばに寄せて歩く。
 「妹紅、今日はどうしていた?」
 「えっと……猫とあそんだ」
 それだけしか言わなかった。
 いつもは私が仕事の後、一日どうしていたかを聞くと、嬉しそうに話してくれるのだが。今日はそっけない。
 しかしあまり気にせずに、家まで歩いた。家に帰って真っ先に頬紅を落とした。
 部屋に鞄を置き、ふと鏡の前に目をとめると、白粉の入れ物が出してある。頬紅と一緒に、タンスの肥やしになっていたはずだけれど。
 「妹紅、白粉を使ったのか?」
 妹紅の猫耳がびくっと震えた。
 「うん……」
 「何に使った?」
 「……ぬりえ」
 塗り絵?
 妹紅は顔を赤くして、部屋を出て行こうとする。様子がなんとなく怪しい。
 手を捕まえて、後ろから抱きしめた。
 「こら!隠し事をしているな。教えなさい」
 「かくしごと、してない!」
 もがいて逃げようとする。ずいぶん必死になっている……手が妹紅の胸もとに触れた時、粉っぽい肌触りがした。
 指先が白くなった。
 「ん……こんなところに白粉を塗ったのか?」
 「やぅ……」
 胸をこすると、白粉がどんどん落ちた。ちゃんと伸ばして塗らなかったようだ。乾いて、ほろほろと落ちる……
 白粉の下の素肌に、赤い痕がいくつも見えた。これを隠していたようだ。
 ……つまり、どういう事だ?
 「……誰だ」
 「うぅ……けぇね、人間じゃないの、えっと……」
 今日一日の事を、正直に話し出す。
 猫か。……どう考えていいのか……
 「ともかく、お仕置きだ」
 「ふぇっ!やぁ、ごめんなさい、ごめんなさい!」
 痕をみな私のものに塗り替えてから。話はそれからだ。
 私以外の誰かが、妹紅に痕をつけるなど……
 妹紅を引っぱって風呂場へ連れて行く。妹紅の大嫌いなお風呂だが、服を脱がせ、無理矢理押し入れて湯をかけた。
 体のあちこちに白粉を塗りたくっていたようだ。腹からも、腕からも、白粉が落ち、痕が次々と出てくる。
 湯を怖がって耳を伏せ、縮こまっている妹紅の肩を揺する。
 「お楽しみだったらしいな。最中に、私の事はほんの少しだって思い出しもしなかったろう」
 「ごめんなさい……」
 「お前が人間だったら、相手が猫であろうと、そんな事は決してしなかっただろうな?」
 「ぅ……」
 泣きそうになっている。だが、嫉妬が燃え出しておさまらない。
 獣化の薬を飲まされ、日々猫に近づいていく妹紅は、猫になった事はそもそも不本意であるし、いずれ必ず人間に戻りたいから、自分は人間なのだと自負している。そのプライドを傷つける言葉だ。
 普段こんな事を言えば、当然妹紅は怒るだろう。しかし今は反論もしない。その大人しさが余計癪にさわった。
 「弁解もしないのか。心からみだりがましい猫になったのか、妹紅!」
 体は猫になっても、心には人間の精神を残していると思っていた。
 違うのか、妹紅?
 ぐらぐらと脅しても、妹紅は何も言わない。
 しかし……化け猫に誘われてふらりとついて行ったくらい、大した罪ではない。そのあと、化け猫の術に縛られ、動けない状態で妹紅は襲われたのだ。罪どころか妹紅は災難に遭っただけではないか?妹紅は抵抗できなかったのだから。
 だが、本当にそうなのか?妹紅の口ぶりでは、ずっと抵抗できなかったわけでもなさそうだが……
 いろいろと考え合わせて、冷静になろうとしても、嫉妬と怒りは落ち着かない。黙っている妹紅が憎い。弁解でも泣き言でも、何か言い出すなら、少しは私も楽になるだろうが。
 何がこんなに私を怒らすのだろう。妹紅が貞節を尽くさなかった事か、私以外の誰かが妹紅に手を出した事か、あるいは、妹紅を奪われてしまった情けない私自身を憎んでいるのか。
 もう、細かく考える余裕もない。いずれにせよ、激しい愛情のゆえに嫉妬が燃えるのだ。燃料ならいくらでも尽きない。妹紅への愛情に浸りきった私は、いわば油を含ませた綿のようなものだった。それに妹紅は火を投げてしまったのだ。
 めらめらと燃える。妹紅の体の白粉を落としきり、髪と尻尾をしぼって部屋へ抱きかかえて行った。


 畳に寝かせる。灯りはつけなくても、暗闇に白く浮かびあがる妹紅の肌に、痕は一つ一つ克明に見えた。
 「私が洗ってやる……痛むだろうが、我慢しろ」
 「はぃ……」
 はい、などと、いつもにない口調で許しを請うている。そんな事をされて、ますます気持ちが激すばかりだ。
 口づけもせずに、妹紅の体に触れる。首についた痕を強く、肌を破るほどに吸う。
 妹紅はか細く鳴いて、痛みに震える。痕を、もっと濃く、もっと赤く、私の痕に塗り替える。
 首から胸へとさがる。病人の肌に表れた病症のように、大小の痕が点々としている。一つずつ、あまさず吸いつく。
 唇が肌を離れるごとに、鋭く切ない音を立てた。痛がる妹紅の吐息が、慈悲心をくすぐるけれど、妹紅の体をさぐり、痕をみつけるごとに、その数だけ心を刺されるようだった。塗り替えてゆくうちにおさまると思っていた嫉妬も、どうしようもなく激しくなっていく。
 腹、下腹……わき腹には噛み痕まであった。肌が青黒く変色しようとしている。妹紅はこの傷を、どんなふうに受け止めたのか。痛がって泣いたか、悦んだか。そんな事は知らないのに、勝手な怒りがこみ上げてくる。
 「っあ……!」
 歯型にそって、傷んで硬くなった肌を舐めると、妹紅は苦痛の声を漏らす。この傷も、私は許せない。歯を立て、治りかけの傷を破る。肌をえぐるように、傷よりも深く噛み、皮膚を裂く。
 「ぃあ!ぁ、けぇね、いたいよ……」
 妹紅が跳ねる。
 他人の痕が一つでも残る事は許せない。
 生ぬるい、錆びた味が口に広がる。
 ただ嫉妬に激していた気持ちが、沈み、淀んでいった。それは激情がおさまったのではなく、ひたすら怒ったあとの、悲しみが起こる予兆だった。心は決して癒えはしない。放っておけば、もっと酷く、陰湿になるのだ。
 そんな暗い気配をまぎらしたくて、涙を浮かべた妹紅を抱き、血を流す腹に自分の腹を重ねた。妹紅を奪われた悔しさ……妹紅は私の許へ戻ったのに、少しの安堵も得られない不安、乱れ混ざって、胸が痛いほど悲しくなる。
 「けぇね……ごめんなさい……」
 「妹紅……」
 涙を舐めると、血が薄く目もとにのびた。あわてて指で拭う。血の染んだ口では接吻できない。慰めたくなる気持ちを枉げ、妹紅の唇に重ねそうになる口を、向きを変えて首につけた。私の痕が、妹紅の首を真っ赤にしている。まだ白さの残った所を吸い、さらに赤く染める。
 怒ったり悲しんだり、気持ちは乱れ続けても、行為は単純に、一方的に荒々しさを増す。細い二の腕を、血が出そうなくらい強く吸い、肌の色を変える。
 腿の内側まで……皮下の血管を破り、出血させ……妹紅を傷だらけにして、全身を赤く塗りつぶす。
 痕に指をそっと乗せても、妹紅はびくっと震えて怯える。
 しかしその表情は、苦行に甘んじているように恍惚としていた。
 もう私のものでない痕も、私の痕がつかない所も無くなった。……痛ましい体を抱きしめ、妹紅の小さな鼓動を胸で感じる。ようやく少しは安心できたろうか……私は、妹紅を傷つけなければ自分をおさめられなかったのだ。
 こういう弱さは、いかな愛情も破滅に導く。……ぞっとして、背筋が冷たくなった。妹紅を奪い、貪られた事に業を煮やしながら、妹紅を一番束縛し、貪っているのは、私ではないか……
 これ以上はもう思考が働かなくなる。くたびれきって麻痺してしまったように、疑問を投げ捨て、ぼんやりと浮かんだ結論にすがりつく。……どう考えても、結局は、妹紅が好きだという事に帰着する。妹紅を愛している、それが気持ちの乱れの、すべての原因だ。
 朱に洗った妹紅の肌は、血に触れるように熱く、とくとくと脈打っている。もう、妹紅には私の痕しかついていない。妹紅がした事も、された事も、もはや考える必要はない。……妹紅を愛したい。欲情が頭をもたげた。
 小さくてやわらかい頬を手に包むと、妹紅は目に溜めた涙を零した。私の手に伝い落ち、熱く指先を濡らす。
 「けぇね……もう、ついてない?」
 「あぁ。もう無い……」
 ほんの少し見せた、私の慈しみにすがるように、赤い目が私を見つめる。
 その微かな甘えを見逃さない。顔を寄せ、唇を重ねる。粘膜で触れ、つながる温かさを感じ合い、体を重ねて、もっと一つになろうとする。小さく震えている唇の膨らみを舐め、もう怒っていない事を伝える。
 もう問題は解決した。妹紅を愛している……それでいい。この大前提の前には、何事も些細な問題でしかない。
 妹紅の唇をわって入ると、甘い唾液が既に満ち、私を待っていた。とろけるような、粘調の水音をたて、濡れた舌を吸う。妹紅は心地良さに浸りきったように、恍惚として口を開き、私を受け入れながら、私の首に腕をまわして抱き寄せる。好きなだけ、たっぷりと満たしてやりたい衝動に駆られる。
 妹紅の口に深く侵入し、唾液を吸い、飲みながら、妹紅の頭を抱く。緻密な毛に覆われた薄い耳に触れると、湯冷めして毛の先端が冷たくなっていた。指に挟み、擦って温めるように撫で上げる。くすぐったがり、くぐもった声をのどから漏らした。
 短い毛に守られた耳の中に指を入れる。突いて傷つけてしまわないよう、慎重に入れ、毛をそっと撫でる。敏感な場所であろうが、はじめて触るから、妹紅はあまり反応しない。深い口づけを続けながら、何度も優しく撫でていると、徐々に神経が鋭くなり、妹紅は身もだえして頭を振った。
 「んぅ、ちゅ、っふ……ぁ、くすぐったいよ……」
 「ん……気持ち良くはないか?」
 毛をさかなですると、ぴりぴりと耳を動かした。
 「うぅ……ヘンな感じ」
 耳を伏せて隠そうとするが、嫌な感覚ではなさそうだった。閉じた耳に指を入れ、動かし続ける。
 その間、唇を妹紅の首へおろし、真っ赤になった痕の上を舌先でくすぐった。ほんの少し痛みが走ったらしく、短く声を漏らした。舌では刺激が強いようだから、かわりに唇を濡らし、弱く、舐めるように首に擦りつける。血の流れと妹紅の熱を感じる。
 人間の耳の下、私がつけていた、たった一つの痕は、他の痕を強く吸うのに没頭したせいで、それだけ薄くなっていた。切なさに胸を締めつけられる……その痕にも唇をつけ、優しく、長く吸って刻みなおす。……こんな事になるのなら、躊躇いなど捨てて、もっと私の痕をつけておくべきだった……
 「ひ、っあ……けぇね、ごめんなさい……」
 また私が痕を見つけたと、妹紅は勘違いしたのだろうか。痛みに身構えて、怯えたように震える。
 「いいよ、妹紅……怒っていない。怖がらせて、すまない」
 耳を唇で挟む。舌を入れると、怯えて緊張していた体が、小さく震えて一気に脱力した。指を入れて撫で続ける耳と同時に攻めると、快感を覚えだしたように、そちらの耳をぴんと立てた。
 「ひゃ、ぁう……けぇね、だめ……」 
 「ばか……お前がそんなふうに言ったら、もっとしたくなる」
 背けようとする顔をおさえ、舌先で耳をくすぐり、指も、さらに奥へ入れる。
 細かな毛が覆い隠している先は、傷つけないよう、もう指を入れないほうが良かった。そのぎりぎりの手前を指の腹でこする。こうして二箇所の耳を同時に攻められるのは、どんな感じがするのだろうか……妹紅は体を震わせて、私のえりあしの髪をぎゅっと掴んで耐えている。
 可愛らしい、小さな胸を上下して、息を切らせる。気持ち良くなってきたようだ。親指で耳の付け根も擦りながら、舌を濡らして舐める。
 「ぁ、ぁ、やぅ、っぁ、おねがい……けぇね、やめて……」
 妹紅は呼吸を早め、背をそらせて胸を私にぶつけた。我慢しきれず、苦しいのだろう。
 「やぁ、っあ、ぅ……けぇね、けぇね……」
 「妹紅、我慢するな」
 妹紅は唇を噛んで口を噤もうとした。耳の快感には慣れないから、違和感があって馴染めないのかもしれない。しかし、無視して愛撫を強める。やや顔を傾けて下をむかせた耳から、私が濡らした唾液が滴り落ちる。もっと乱暴に、耳の奥を舐める。指も、動きの調子をそろえて、撫で続ける。
 「ひぅ!ぁ、ゃぅ、けぇね、やめて、やめてっ……!」
 このままイかせるつもりで、体を重ね、小さく跳ねる妹紅の胸を押さえつけた。
 しかし、耳朶を甘噛みすると、ぐっと喉を反らせて、胸から搾り出すような鳴き声をあげた。
 きつく私に抱きつき、痙攣する。
 「妹紅?」
 腕の力が抜け、私の首から滑って畳に落ちた。
 「耳だけでイったのか。そんなに良かったか?」
 「ん、っ、は、はぁ……」
 妹紅の呼吸が落ち着くまで、頭を撫でて休ませた。私の下で昂り、苦しげに息を切る妹紅を抱いていると、興奮し、すぐにも襲いたくなってしまう。できる限り落ち着いて隠したつもりだったが、妹紅は気持ちを敏感に感じ取ったように、背に手をまわして、甘えるみたいな小声で言う。
 「けぇね、ほしいょ……」
 「ん……大丈夫か?」
 腹を撫でさすり、妹紅の目を見つめた。
 体中に無数の痕をつけられ……猫に、どんなに手荒くされたろうか。体が痛むのではないかと心配した。それに、疲れているようなら、無理をさせないほうが良い……
 妹紅は頷いた。


 妹紅の足を開かせ、その間に身を入れる。 
 いつもは妹紅を抱きながら指を挿入する。だから、このようにしたのは初めてだった。下を向いて私を見、不思議そうな表情をしている。
 「けぇね?……」
 「妹紅、落ち着いて」
 妹紅の腰を抱いて頭を伏せる。襞をひろげ、愛液を舐める。
 「ひぅ!?ぁ、やぁっ!」
 やはり、突然で驚かせてしまった。足を伸ばし、畳を蹴って逃げようとするのを抱え止め、唇を擦りつける。
 「やだっ、けぇね、やだよ!」
 「んっ……こら、大人しくしなさい」
 膝が飛んできて頭に当たりそうだ。腰を引き寄せて、口を密着させる。そうして舌を動かすと、妹紅は腰を震わせ、力が抜けて抵抗できなくなった。敏感で正直な体に、熱い息をかけながら、水音をたてて舐める。
 舌で、熱くてやわらかい膣口を圧し、溢れてくる愛液を吸う。濃厚で甘い愛液は、かすかに粘って唇と舌にまといつき、舐めるほど膣から溢れてくる。飲むほど、もっと欲しくなる。
 「はぁ、あ、っう!ゃぁ、やだぁ……」
 涙も零していそうな泣き声で喘ぐ。それを聞いて、興奮し、自分の鼓動が早くなるのを感じる。もっと泣かせたい、いたずらな気分になって、わざと淫らな音をたてて吸い、妹紅に聞かせる。
 「けぇねっ!ぁ、やめて、やめてよぉ……」
 「ちゅっ、ん、っぁ……なぜ。美味しいぞ」
 「ぅ……!けぇね、ばか、ばか!」
 腿で私の頭を挟みこむ。そうしてよけい擦れて、可愛く鳴いている。笑みをこぼしてしまった。
 締めつける腿をそのまま抱え、陰核を舐めた。びくっと跳ねて、抵抗が一瞬で止む。
 「ひゃぅ!やっ、ぁ、あぁ!」
 「ちゅ、ぅん……良い子だ」
 包皮の上から舌先で突き、転がして攻める。だんだん赤く充血し、硬くなる。自然と剥けてくる包皮を、指で上から引き、核を露にする。直接刺激するのは快感が強すぎるから、薄っすらと擦るようにして弱めに舐める。しかし、それでも妹紅は声を上ずらせて鳴き、震えがとまらず、達してしまいそうになる。
 舐めるのを止めて、唇で軽く挟んだ。これくらい手加減するのが程好いようだった。攻め立てて今すぐ落としてしまいたい欲求をこらえ、弱い快感を長く与える。
 「あ、ぁん、はぅ、やぁっ」
 強い快感に耐えるために、緊張していた体から力が抜けて、くつろいで鳴く。
 やがて呼吸の速さも整い、喘ぎに甘みがまざって、一声ずつが、聞いている私の耳を舐めるように感じた。私は、我慢できなくなる。
 「良いか、妹紅」
 「んっ、ぁ、けぇね、きもち、いいよぅ……」
 心地良さそうに甘い声で答え、尻尾を小さく振った。長く細い毛が顎にすれてくすぐったい。 
 ひくついている膣口に触れると、愛液が零れて吸いつき、指を引きこまれてしまいそうだった。指先で浅く擦って、入れずに焦らす。
 そうしていると、妹紅は腰を揺らし、尻尾の先で私の喉をくすぐった。可愛い事をする……欲しがって、喘ぎながら小さく喉を鳴らしている。それは聞こえているが、まだ焦らして、陰核を甘噛みした。
 「やぁっ!ぁ、ひぅ!けぇね、それ、だめぇ!」
 「気持ち良く、してほしいんだろう?」
 わざと意地悪い事を言って、指は入れずに、陰核を強く刺激する。舌先を尖らせてねぶる。ますます硬くなり、妹紅はよけい気持ち良く、腰を浮かして逃れようとする。
 しっかり抱いて逃がさない。舌先を激しくすりつけて、水音を立て、愛液を散らす。
 「ああぁぁ!!あ、ぁ、けぇね、ちがう、ちがうよぉ!!」
 「はぁ、っ、じゃぁ、何だ……言ってみろ」
 恥ずかしがって、きっと言えないだろう。はじめから言わせる事は望まないで、陰核をつぶす。
 落ちろ。
 「ひゃ!?ぁあああぁぁぁ!!」
 痙攣し、陥落する。
 余韻には浸らせず、尻尾をきつく握って驚かせる。
 「ぁう!はぁっ、ぁ、やぅ!」
 「気絶するなよ……まだ欲しいだろう」
 猫に手荒にされ、くたびれているのではと心配していたが、大丈夫そうだ。
 猫の事など忘れるくらい、激しく抱いてやりたい。
 濡れきって、うずいてモノを欲しがる膣に、指を三本ねじこむ。
 「ひああぁ!?」
 きつく締めつけ、腰を跳ねて指を拒む。押さえつけて無理にいれたが、幅が足らず、狭い入り口に、指の付け根を痛いくらいに締められる。引き抜けもせず、奥へも深く入れられない。
 「ひぁ、ぁ、けぇね、っ……」
 「大丈夫。痛くないから」
 肘で揺すって手を動かす。ほとんど抜きさしができないから、微動して入り口を摩擦した。
 愛液を零しながら、狭すぎる入り口に擦れて、指から快感が伝わる。深く押し入れた時には、背筋が痺れそうになった。
 妹紅は激しく喘ぎ、びくびくと震える。
 「あぁっ!あ、やぅ!ぁ、はっ」
 「妹紅、力、抜いて」
 安心させようとして、身を乗り出して妹紅の頬に口づけする。力んでいた体が徐々にやわらかくなり、入り口の締めつけが緩んだ。この機に指を引き抜き、再びいれる。入れるとまた締めつけられるが、何度も抜きさしを繰り返す。
 「やぁぁ!あぅ、ああっ!あっ、ぁ、ひぅ!」
 妹紅の痙攣が激しくなり、腹を波打たせる。
 「妹紅、イくなよ、まだ……」
 「あっ!ぁ、だめ、いく、っあぅ……!」
 もだえ苦しむように、手を丸め、腕を曲げてからだにつけ、耐えている。
 指を早く動かしているのでもないのに、三本で膣を押し広げているから、摩擦するだけでも相当快感が強い。三本に膣が馴染むまで、達しかねないギリギリで妹紅を我慢させ、指を動かす。
 「あ、ぁ、けぇね、いかせて……っ」
 「まだ……」
 少しだけ膣の圧迫が弱まった。指が深く入り、奥へ届くようになる。
 腰をきつく抱き、指を突き入れた。入り口を強引に広げて奥を突く。
 「ああぁぁ!!ああっ、あ、やあぁ!」
 「まだだ、妹紅……」
 妹紅は奥を突かれ、背を反らせて泣き叫ぶ。痛む腕の力を尽くして、奥を突いて妹紅をゆする。
 「だめぇ!きちゃう、きちゃうよっ!!」
 「はぁ、っ、妹紅……」
 腕がこわばってくる。妹紅も、目をきつく閉じ、顔を左右に振って、もう限界だった。
 「妹紅、いいぞ、イって……」
 「ひゃうっ!ぁ、けぇね、けぇねっ!」
 妹紅の手がのびる。腰を抱いた腕で握り、指をかたく絡め合う。
 「妹紅、好きだ、っ……」
 「はっ、ぁ、けぇね、すき、すきぃ……っ!!」
 深く、はやく突き続け、三本を打ち当てる。
 「やあああぁぁぁ!!!」
 指が千切れそうになる。奥を刺したまま、もう動かせない。
 妹紅の息が急に浅くなり、顔を横たえて静かになった。





 気の絶えた妹紅を抱き、接吻した。横に寝て、体を寄せてしばらく休む。
 妹紅は気づかない。もっと続けるつもりだったが、このまま朝まで眠らせよう。
 全身の痕は、つけてから時間をおいて、ますます赤く、深い色に沈着していた。
 火照りのおさまらない肩を撫で、吸い、もう一つ痕を作る。




     馬鹿




 いつも慧音がとなりにいて、抱きしめてくれてる。
 そうやっておきる朝がいちばん好き。
 いつまでも一緒にいれたらいいのにね。
 これから何十年もかけて、おわかれの言葉を考えなくちゃいけないの?






 妹紅の髪に顔をうずめて、目が覚めた。寝返りをうった妹紅を後ろから抱いている。
 今日は寺子屋も仕事もない。妹紅が起きるまでこうしていよう……
 それか一日中、ずっと妹紅を抱いて寝ていたい。昨日の事が、今になって急に寂しくなった。
 猫を……どうしようか。せっかくの猫友達なのだから、会うのを無闇に禁止するのは躊躇われる。
 たぶん、もうあのような事はしないだろう。妹紅はきっと。
 「ごめんくださいな!」
 ……誰だ。なぜ朝から大声で叫ぶのだろう。
 タヌキ寝入りを決め込む。叫ぶ声で妹紅が起きてしまわないよう、耳を四つとも塞いで、抱いたまま目を閉じていた。どうせ新聞の勧誘か、押し売りの類だろう。
 が、誰だか知らない奴は勝手に家に上がって、廊下をばたばた踏んでくる。何者だ?
 「おいっ、上白沢なんとやら!」
 油断していたら、部屋まで入ってきた……八雲藍ではないか。
 何があってこんな所へ、八雲が来たのか知らないが、私は妹紅の頭を抱いて寝たまま、八雲を睨む。
 「……なんだ。私はまだ寝ているのだ。出て行け」
 「もう八時だっ。朝から猫とイチャついてるんじゃない!」
 「用があるなら、あとで出直して来い」
 「とにかく聞け!私の式が、その白猫に怪我をさせられたんだ。あんたは飼い主だろう。何も聞いていないのか」
 八雲の式?
 という事は、八雲紫の式の式、橙という化け猫の事だ。その化け猫の話を聞いた事などない。
 いや、もしかしたら、昨日妹紅が話した化け猫とは、橙の事だろうか。
 「待て……怪我させられたのは、うちの妹紅だ。お宅の猫が妹紅を手篭めにしたんだろう!」
 「何を言う、橙の体が痣だらけなのに!」
 痣!妹紅だって痣だらけだったのに。痕をつけ合ったというのなら、わかるが……
 だが、今の八雲藍は気が立っていて、私の話を聞きそうにない。
 妹紅が身じろぎした。騒ぎのために、眠りが覚めてしまう……
 妹紅をはなれて、そっと布団を出て立った。
 「とにかく、外に出よう。じっくり話さないといけない」
 「弾幕か、決闘か?あんたのだらしない飼い主根性を叩きなおしてやる!」



 主と飼い主が外に出てぎゃんぎゃん言い争い始めた頃、妹紅は肩を揺すり起こされた。
 「にゃぁ……けぇね?」
 「妹紅、私だよ。起きて!」
 橙だった。妹紅は驚いて跳ね起きた。
 「橙!どうしたの?……慧音は?」
 「ケーネって、あの人が妹紅の飼い主なの。とにかく、こっちに来て」
 手を引いて庭に出る。妹紅は裸足でついて行った。
 玄関の前で、藍と慧音が喧嘩をしている。
 「あの人、私の主の藍様。昨日の事、ばれちゃったの」
 「うぇ……それで?」
 「お燐につけられたキスマーク、見られちゃったんだ。それで、里の猫から妹紅の事を聞いたみたいなの」
 藍は、妹紅が橙を襲ったと勘違いしているらしい。
 正確な事を知る前に逆上してしまい、ここへ来たのだった。
 「どうしよう。巻き込まれたら、私たちもすごく怒られるよ、きっと」
 「うん……お燐は?」
 「地霊殿じゃない?……首、どうしたの?真っ赤だよ」
 夜着の襟を引っぱって、妹紅の首に触れて言う。
 慧音に痕をつけられた事を思い出し、妹紅は首をすくめて隠した。
 「見ないでよぅ」
 「飼い主に怒られた?」
 「うん……」
 今、橙と話をしているのを見られたら、慧音は何と言うだろうか?
 橙のほうも、妹紅といるのを見たら、きっと藍が怒り出すだろう。
 「ね、猫の里に行かない?昨日の親子猫を見に行こうよ」
 「でも、怒られるよ」
 「大丈夫だよ。あの二人でじきに和解するだろうし」
 と、藍と慧音を見る。しかし二人はますます酷く怒鳴り合って、今にも弾幕が飛びそうに見える。
 妹紅は不安だったが、止めに入る勇気もない。
 「今日は、何もしないよね……えっと、セーヨクショリ?」
 「しないよ。さ、見つかる前に行こうよ」
 また妹紅の手を引いて飛ぶ。妹紅は引かれながら、何度も慧音を振り返った。



 「うちの妹紅はすっごくいい匂いなんだぞ!」
 「なんだと!うちの橙はすごくやわらかいんだぞ!」
 「何を言うか、妹紅のほうが、やわらかいし、ふさふさでモコモコだ!」
 「ふん、暑苦しいわ!橙はさっぱりしていて爽やかだぞ!夏でも抱いて寝たって暑くない!」
 「やかましい!妹紅を抱いたら暑さなんて忘れるくらい気持ち良いんだぞ!」
 「橙は最高に気持ち良い!肌がすべすべてぷにぷにだ!お腹だけで五回は死ねるぞ!」
 「妹紅なら二十五回死ねる!いや、死んだぞ!妹紅はすごく甘いんだぞ!」
 「やらしい奴だな!橙は私の愛情でアツアツでトロトロでぐしょぐしょだ!橙はすごく美味しいんだぞ!」
 「もこもこ!」
 「ちぇんちぇん!」
 「もこ!」
 「ちぇん!」
 …………
 ………
 ……
 …
 「同盟しようか」
 「そうしよう」



 「わぁ、くすぐったい……っあ、あははっ!」
 仰向けに寝転がった妹紅の上を、三匹の子猫が歩き回る。
 妹紅の真っ赤な首に一匹が目をつけ、舐めはじめると、ほかの二匹も舐めだした。妹紅は身もだえして笑う。
 「妹紅に懐いてるね。妹紅、これからたまに里に来てよ。この子たちに会いにさ」
 「んぁ、うん、そうする……」
 橙は膝の上に親猫をのせて撫でている。
 「名前、まだないの?」
 「うん。私たちがつけていいみたい。妹紅、つけたい名前ある?」
 「うーん」
 手のひらにも包み隠してしまえそうな、小さな三匹を抱いて、妹紅は顔を傾けた。
 「思いつかない」
 「まぁ、ゆっくり考えよっか」
 「お燐にも聞いてみようよ」
 「そうだね」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 どうもありがとうございました。
 そしてすみませんでした。3P難しかったです。やっつけた。
 近所の野良の安産祈願に。というか電波を形にしたらこうなった。
 拙作のネタを引きずったり、いきなり橙とお燐が友達だったり、いろいろと申し訳ございませんでした……


 
金鳥
コメント




1.名前が無い程度の能力削除
だめだこの飼い主達ww
2.名前が無い程度の能力削除
ねこもこ!
ねこもこ!!
いいぞ!もっと続いてくれえええ!!!
3.名前が無い程度の能力削除
>これから何十年もかけて、おわかれの言葉を考えなくちゃいけないの?
全俺が泣いた