真・東方夜伽話

夜雀さんに教わろう。

2009/07/26 18:21:51
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夜雀さんに教わろう。

あか

ずっと私が眺めてきたこの幻想郷。私が把握できるだけの、詰まるところ私が見える世界というのはとても広いのに、私が関わる世界というのは狭い。
ただでさえ狭いその小さな世界で私が「私」であるための証、私の役目というのは事象から分かる地震の起きる危険性を調べて、
皆にお知らせに回ったり、上司に報告したり。そんな酷く目立たない役目ではあったけれど、私には大切な業務だった。
でも、それも今は昔の事のようになってしまう。総領娘様が地面に要石を打ち込まれて、
もうしばらくの間はこの私が見る幻想郷で地震の心配というのは必要が無くなってしまったからだ。
私にとっても大切なその世界がしばらく地震によっては失われないのは嬉しい事ではあったけれど、
結局は私の仕事そのものが何十年も先まで無くなってしまったようなものであって。
仕事という仕事が殆ど意味を為さなくなってしまった今、私にできるのはこうやって下の世界の探索に赴く事くらいだった。
……というより、こうでもしないと暇に押し潰されてしまいそうで、自然に足が向いて行ったのだ。

ふらりふらりと空を漂って景色を眺め、町に入っては人ごみをかきわけて進み町の空気を味わい、
先日お世話になった方々が日頃どのようにして過ごしているのかと散策に出かけてみれば、皆どこか忙しそうではあったけれど
それでもとても充実した生活を送っているように私には見えた。
神社を2度も壊されてしまった薄幸と思われていた神社の巫女さんは、他の方々とは違って今日は縁側で誰かと二人並んでお茶を啜っていたが、
私にとってはそれが羨ましい光景に違いない事は勿論言うまでも無い事で、
森の魔女も、吸血鬼の館も、亡霊嬢の屋敷も、どんな所であれ皆忙しそう。
私が皆と違う所をあげるとすれば、皆が皆ちゃんと関係を持っていることだ。たまに参加する宴会の席等でそれはよく痛感させられる。
皆まるで長年付き合ってきたかのように、酒宴を楽しそうにお互いが盛り上げる中で、ふと尋ねてみれば実はそこまで月日の行った仲でもなかったり。
きっと、皆さんは関係作りが上手いんだろう。人づきあいの薄い私にはそうとしか頭で考えられなかった。
他人との関係というのは第一印象で大きく左右されるというのは良く聞いた話で、その事を考えれば私の第一印象というのはあまり良いものではないのかもしれない。
豪放で快活な性格の総領娘様は、実際の性格では問題が少しあるのかもしれないけれど、少しずつ関係を深めて行っているのは、
横に座っていてよく分かった。あの方は周りに自分を売り込む力と、行動する力がちゃんとあるから。
私は、私にはそんなものは都合良くは備わってくれていないようで。何というか、私は事務的なのだ。
結局のところ宴会で電気をバチバチと操ってみたりして、一発何かしらの芸を披露するに留まる私には
そんな彼女の積極性というのは酷く羨ましい能力に思えた。

神社で非定期的に行われる宴会。割と突発で行われるのにも関わらず、集まりの良いその宴会に総領娘様と一緒に招待を受けて
宴会に参加はしてみるものの、やはり私のすることというのは大して変わることは無く。ある程度の事を披露してしまえば、
後はもうする事が無かった。皆との会話は成立はしても長続きしない。相手の話を聞いて返す分にはむしろ自信はあるのだけど、
私から振る事が出来る話題というのはとても少ないという事が、いざ自分が話す場面となって良く気付かされた。
皆から振られた世間話は本当に世間話で終わってしまい、しばらくしてする事が無いのを感じてくると
私は逃げるように一次会が終わったところ辺りで席を立って家路へと帰っていた。
一方の総領娘様は朝になっても帰ってこないという事があるくらいなのに。
別に朝帰りがしたいという訳ではないが、……羨ましかった。
で、また羨ましがるだけ羨ましがって、結局の所私は特別行動にうつすことも表す事もできない。
ただ、それだけでも宴会自体は楽しい事であるのには違いなかった。
それだけ、上の世界が楽しくないという事でもあったが。総領娘様も仰っていたが、天界というのは
羨ましがられるほどの期待には応えられない場所なのだ。

そんなわけで、私はまた何かしらお呼びがかかったりするまで、
毎日毎日こうして下の世界をお散歩中な訳で。昼間なのに真っ黒に浮いている変な球体を観察したり、
物凄い勢いで木に突っ込んでいく妖精を眺めていたり、ただ過ごせるだけの時間を下の世界でだらだらと過ごしていた。
今日もそんな事で夕方になってしまい、私の衣の装飾程に赤くなった西の空を眺めながらと私は家路へと向かって行った。
ただ今日だけは、町から少しだけ外れた道を歩いた。こうでもすれば少しでも家にいるという時間を減らせるからと、そうなんとなく思っての行動だった。
当たり前のことではあったが、空を飛ぶよりも大分時間を費やしてしまって、まだ全然進んでいないのに空にはお月さまが昇って行く。
人が住んでない場所であるから月以外の光がここには無くて、さっきまで太陽の光の射す世界だったのに、もう虫の鳴き声と月灯りだけの世界。
虫の声に夏の気配を感じながら、とぼとぼと川沿いの道を進んでいたところで、虫の音でも川の音でも無い音が私の頭に響いた。
珍しく歩いた疲れか、ここのところの暇が原因できた精神からか、最初はそれが幻聴かとも思ったけれど、
道を進むごとにだんだんとハッキリとしていくそれが歌だと気づいた時には、私の足は地面から離れていた。
酷く興味が湧いて、歌のする方向へ、誰かのいる方向へと地面すれすれを翔ける。そんな私を迎えるように現れたのは
小さな提灯を軒に下げた小さな屋台であった。誰もお客の座っていない客席の向こうから、のれんの向こうから歌が聞こえてくる。

こそこそと懐を探り、お財布を取り出してみる。
お仕事が減ったから前程よい収入は無かったけれど、私はお金を使う事が極端に少ないからか金銭面で問題はまるで無いようだった。
今日は夕食も食べてないし、何より歩いたし。家で一人食べるよりも良いだろう。一石二鳥だ。そう思い地面に足をつけて一歩踏み出したところで
歌は止んで、のれんがすっと持ちあがった。
「食べていくかい?」
屋台の主さんであり、先ほどの歌の主であろう方の顔がその隙間から見えて、にっこりと笑った。
私の存在をそんなに早く気づいた店主に少し驚きながらも私はその問いに頷いて返して屋台に歩み寄り、
のれんをくぐって備え付けられた椅子へと座った。
「いらっしゃい。」
先ほどの歌とはまた別の印象を与えそうなほどに快活そうで耳によく届く声を出した店主さんは、
驚いたことに私が想像していた人間ではなかった。まぁ、こんな夜に人間が一人でいる事がどれだけ危険な事か考えれば当然と言えば当然ではあったのだが。
その背中には羽が生えていたが、妖精の類のそれとは違う。つまりは妖怪が経営している屋台という事で、
姿だけを見れば鳥の関連の妖怪のようだった。先入観からか、こういう屋台を経営していそうな方では無かった。
でも爪はしっかりと切りそろえられて、エプロンもしている。……現に美味しそうな匂いもする。
「私の顔、何かついてるかな?」
彼女が少し不思議そうな顔をちょっと横に傾けつつそう尋ねてきたのを私は焦ってただ
「すみません。妖怪さんが経営しているとは思っていなかったもので。」
そう即座に返していた。彼女はくすくすと笑って、屋台の棚からガラスのコップとお酒の瓶を取り出すと
並々にそのお酒を注いで、私の目の前にそのコップを置いた。
「初めて来たお客さんにはよく言われるよ。この一杯はサービスさ。」
「あ、ありがとうございます。」
軽く頭を下げてそのお酒に一口、口をつけると私は傍らにそのコップを置いた。
何か注文しないと。や、焼き鳥は店主があれだからまず違う。とてもじゃないがそんな注文できるはずがない。
しまった……何の屋台かもっと提灯やのれんを見て確認しておけばよかった。
「ここはね、焼いた鰻を主に扱ってるんだ。」
少し戸惑ってしまった私に彼女が少し溜息をついてそう教えてくれた。私はただコクコクと頷きながら、
少しだけ考えて、やっぱり何も浮かばずに店主に言葉を返した。
「お勧めなものはありますか?」
その言葉に店主はすぐに頷いて、ひょい、と料理をする場所から串に刺されタレをつけて焼かれた鰻を取り上げて
少し大きなお皿にそれを数本重ねると私の前に置く。ほくほくと立ち上る白い湯気と、その湯気に持ち上げられて
漂う甘いタレの香りが空っぽになっていた私のお腹を急かすようにくすぐった。
「お客さん、来るのは最初だからね。だからお勧めは一番シンプルなこれさ。」
店主さんがそう告げて、私は軽く手を合わせて小さく
「いただきます。」
そう呟いて手をつけようとしたところで店主さんが慌てて私を止めた。
「御絞り渡すの忘れてた。ごめん。」
……私も忘れていた。熱々に熱せられた御絞りを受け取り両手を拭うと私は改めて串を手にとって、口へと運んで行った。

鰻を食べるという事自体は季節であったり行事であったりと上の世界でもまぁ、良くあることではあるのだが
屋台でこれを食べるというのは初めて。というよりも鰻を扱っている屋台なんて今まで私はみたことも無かった。
同じ鰻であるのに、日頃とまるで雰囲気が変わって見えるのはこの屋台の効果なのだろうか。
でも屋台の効果であれ何であれ目の前にある鰻はその匂いと漂う熱気から美味しそうな物であるのには違いなかった。
串を手で掴み、その熱さを確かめながらおそるおそる口に運んで一口、噛みついて見れば
そのカリカリと焼けた鰻の表面とは違う柔らかい感触が歯を包み、鰻自体は割とあっさりとしているのに
タレのおかげか濃厚な甘みのある味が口の中を満たしていった。
「何だかご飯が恋しくなりそうですね。」
手元に持っていた串から、カウンター越しの店主の方に向かってそう言った。
店主は溜息をつきつつもこちらを見て笑って、
「そのためのお酒なのさ。」
私のコップにお酒を少し注ぎ足しつつ、彼女が答えた。……このお酒の肴としての鰻か。
「ご飯はねぇ。合うのは分かってるんだ。でも、申し訳ないがそれは準備できないの。
毎日決まった数お客さんが来る訳でも無し、多く作ると余った時に私自身が処理できないからね。」
確かに、ご飯は炊いてからある程度時間が経てば味も風味も落ちてしまう。それ自体はまぁどんな食材でも同じような事が言えるけれど、
それを処理するのが自分しかいないとなると、私でもためらうだろうな。
「いえいえ。何となく合いそうだなと思って言ったまでですから。すみません。」
「ちなみに今日は貴女が最初の客だね。私、ミスティア。お名前をお伺いしても?」
彼女はエプロンの胸元をトントンと叩きながら一礼した。
釣られて私も軽く頭を下げると手に持っていた串を一旦お皿の上へと戻した。
「永江衣玖といいます。」
「ありがとう。……まぁ、私頭は良くないから物事を覚えるのはそんなに得意じゃないんだけどね。」
「お客さんを一人一人覚えていくというのは流石に大変でしょう。」
「一度コテンパンにされた相手とかなら、覚えるんだけどね。神社の巫女とかさ。」
違いない。日頃あれだけのほほんとした方であるあの巫女さんだって、いざお仕事となると鬼神のようになってしまうというのは
先日の一件で私の頭にも深く刻まれた事だ。……ただ伝えたかっただけなのに、あの時は凄い荒れてたしなぁ。
べちべちと叩かれて、あれは少し痛かった。まぁ彼女だけはあれだけ荒れていてもしょうがないとしか思えなかったが。

「この屋台はいつもやっているんですか?」
適当な挨拶も終えて、私は再び串を手にとると店主にそう尋ねた。
店主さんは何本かまた新しく串を焼きながら視線だけ私の方に移すと、
「そうだねぇ。たまにお店を出せないときはあるけれど、大体毎日やっていると思ってくれれば。」
そう答えてくれた。……落ち着いて食事もできそうだし、通ってみようかな。
「今日は晴れてくれたから助かったよ。最近雨続きだったでしょ?お客さんの足が途絶えちゃってさ。
歌声でアピールするにも雨でかなりかき消されちゃうからさ。」
くるりくるりと火の上で串を踊らせながら、彼女が続けた。……思えば動物の妖怪ではあるのに火は大丈夫なんだろうか。
慣れ、かな。手の動かし方もまるでもう手慣れたものだし、もう長いんだろう。
「美味しいのに。」
串をまず一本食べ終えて私が別の串に持ちかえ、お酒で一口喉を潤すと私はそう言った。
店主さんは、少し嬉しそうな笑顔を浮かべてはくれたけれど、
「雨の中は流石に、何だろうね。全く来ない訳じゃないけど、めったに来ないよ。」
私自身は雲の中をうろうろしたりして、びちゃびちゃまではいかずとも湿気の多さみたいなものには慣れてるからなぁ。
そこまで雨の中を苦痛に感じる事は無いのだけれど、やっぱり他の人は違うものか。
「お酒のおかわり、お願いしていいです?」
「はいよ。」
瓶を両手に持った彼女の腕がカウンター越しに伸びて、また私のコップを満たした。

「今宵のお客さんはあんまり喋らないお客さんね。」
彼女がカウンターの向こう側で椅子を取り出して腰を掛けて、そう言った。
慌てて何か話題を作ろうと頭の中で話題を探そうとして見るがこれといった話題が見当たらない。
「日頃来るお客さんの中には、始終喋ってあまり食べないって人もいるし、逆に食べるのが好きであまり喋らないって人もいる。」
「私はその内の喋らない人、なのかもしれませんね。」
「そうね。沢山のお金を払ってくれる人でもあるんだけど。」
彼女が笑いながらそう言って、カウンターの向こうで軽く伸びをした。
「そのどっちでも私は嬉しいよ。ただ、人が多くて喋るのも多いってのだと、私も返すのに忙しくて大変だったりはするのよね。」
「私もあんまり人の多い所でのお話は得意ではないです。」
……いけない、ちょっと嘘かもしれない。正しくは1対1でもあんまり得意ではない、か。
もっと得意でないのは、そうして多人数の中で一人になってしまう時間だ。
その分はこうして一人と居るというのは少し落ち着くのだけどね。
「まぁなんとなくそんな雰囲気はしてるね。」
「そう見えます?」
「うんにゃ。経験則というかね、なんとなく話し方や口調で当てずっぽさ。」
それだけのお客さんを相手にしてきたのか。
「うーん。……うん。」
カウンター越しの彼女が何かを考えているのかしらばく首をかしげていたが、
しばらくして私に向き直ると、何気ない口調で私に尋ねた。
「好きな人っているかい?」
話の方向性がいきなりずれて口に運んでいたお酒が気管に入りそうにはなったけれど、
何とかそれを堪えて涙目にはなりながらも店主を見返した。
「ここに来る連中ってのはなんでか知らないけれどその話題をするんだよ。
結構私も恋の相談だとか愚痴とか痴話話を聞かされたりするんだ。……まぁそっちが目的で来るのも案外いるのかもしれない。」
「わ、私はいませんよ。」
「そりゃ意外。綺麗だから既に誰かとお付き合いしてそうだと思ってたよ。これは失礼した。」
「……他人と縁がないのが悩みなくらいですから。」
一言そう述べたところで、カウンターの向こうでのんびりとしていた彼女がぐっと立ち上がった。
「やっと自分の話題を話してくれたね。」
「どういう事です?」
「いやぁ、質問に聞いたこと以外の別のお話がやっと出てきたなぁと思って。」
火の上でもう十分に焼けた串をお皿にテキパキとまた盛りつつ、彼女は新しいガラスのコップを取り出すと
お酒をそれに注いで私に尋ねた。
「そっちに行ってもいいかな?」
私はただ串を銜えたままそれに頷くと、彼女がガラスのコップとお酒の瓶を手にしたまますっと屋台の影へと消えていった。
ほんの少ししてのれんをくぐった彼女が横に座った。……案外にちっちゃい。
「お客さんが一人だとこうしてこっち側にまわって休みながらお酒を飲めるっていう。」
ひょいとお皿の上の串を手に握りながら彼女がそう言った。
……お店のものなのに良いんだろうか。自分で食べて。
「さっきの話だけどさ。そうやって聞かれた事だけじゃなくて、それに合わせてまた別の話題を振れば自然と縁もできると思うよ。
何より相手が返しやすくなるからね。自分から話を切り出すのが駄目なら、向こうに振ってもらえば良い話なのさ。」
彼女が何か慌ててカウンター越しに手を伸ばし、さっき私に渡したような
熱そうな御絞りをその手に握ると、そんな話を私に振った。
手を拭きながらもコップのお酒を口に運ぶ彼女の喉が上下に動くのを眺めながら、確かにそうかもしれないとは思った。
「おかわり、いいです?」
「勿論さ。」
また再び、空になった私のコップがお酒で満たされて。
それにまた一口、口をつけると私には小さなため息を吐いた。
「そうは言っても、それが簡単にできないから苦労してるんだろう。」
彼女がそう言って、首を縦に振った。

「それより、貴女ずっと飲んでるけれど酔いは大丈夫なのかい?流石に潰れられると風邪引かせない保障はできないんだ。」
彼女が半分程空になったお酒の瓶……一升瓶ではあったけれどそれをちらつかせて私に尋ねた。
「まぁ私は少しでも黒字になるのなら一向に構わないけど。」
彼女がそういうのを耳で聞きながら、すっとのれんから顔を出して外を眺めてみる。
屋台の熱気に開放されて、少し冷たい風が肌を撫でるのを感じながらよくよく外の景色を眺めてみれば、
もう遠くの景色にはほとんど焦点が合ってくれなかった。
「飲み過ぎ、かもしれませんね。」
でも、ここまで飲むのもこれはこれで久しぶりではある。
宴会はほとんど酒宴と言うほどお酒でまわっているけれど、いつもここまで飲む前に退散しているからなぁ。
「何だかんだ言って、私も結構酔ってきたしね。」
べったりと台に顔をつけて、彼女がそう言った。
「大丈夫です?」
「うん。倒れるほどでもふらつくほどでもないよ。ただ少しだけぽーっとしてきただけさ。」
……火の扱いで火傷しなきゃいいけど。にしてもあれだな。私も帰れないというのはあまりいい事じゃないし
今日はこのあたりでお金を払って家に帰ることにしようかな。
「では、私もお腹が膨れたので今日はこの辺で。」
「はーい、おやすみ。」
べったりと顔をつけたまま彼女が少し眠たそうにそう言った。
「あの。御幾らですかね?」
「酔った頭で計算なんてまともにできやしないさ。」
「ど、どうしろと言うので?」
「また、また来ておくれ。今日はとりあえず私の奢りってことで。」
……さっきまで黒字になるならとか言ってた気がするのだけど。
くぃっと顔を台からあげて彼女が私の方を見ると、お酒のせいか顔を赤くしながらただ一言強く言った。
「また、必ず来ておくれよ?」
少しだけ気迫の籠った、ちょっと力強い声だった。
ちょっと気圧されつつもそれに頷いて返すと、また彼女がべったりと台に顔をつけた。
私はただ一回、彼女に向かって軽く会釈をするとのれんをくぐり屋台の外へと出た。

我が家へと飛ぶ道。思ったよりもお酒が効いて、月がぐるぐると夜空で揺れ動いていたけれど、
それでも我が家へ帰ること自体はどうという事は無かった。ただ、家に帰る頃にはすっかりお酒で体が熱くなっていて
私は帰るなり適当に服を脱ぎ散らかすとその日はそのままベッドへと潜った。
枕へと顔を埋めたまま溜息を吐けば、どこか甘いタレの匂いが顔の周りに広がる。
今思えば鰻自体がどんな味をしていたのかはあまり思い出すことができないでいた。
それよりも話をしている方が楽しかったからだ。会話の内容が充実していたかなんて言われると
周りから笑われる程それはみっともない姿だったろうけれど、それでも私には十分すぎた。
ベッドから窓の外を眺めてみれば夜空に月が浮かんでいて、ふわりふわりと店主の顔と言葉がその光に重なって見える。
「好きな人、ねぇ。」
そもそも男の人が周りにそこまで充実していない……訳でもないか。身分は違えど、
上司であるとか、仕事の関連であるとか考えてみれば、確かに男性は居ない訳ではない。
ただ、関係は希薄だ。とっても。
「考えるだけ何だか空しい。」
ふと、ベッドの脇に置いてあった布団をぐるぐるに巻いてそれに抱きつくと、
私はぼーっと月をしばらく眺めた後、ゆっくり目を閉じた。


お昼過ぎに目を覚まし、軽くお風呂も浴びて。
何年ぶりか分からない二日酔いに少しばかり頭をフラフラとさせながらも、症状自体はそこまで重くなかったので外に出た。
今日もスッキリとした快晴で、むしろ日の光が二日酔いの頭に突き刺さるような眩しさを放っている。
でも、良いお出かけ日和だ。まぁ、晴れでも雨でも最近はお出かけする訳だけど。
昨日使う事が無かったお財布の中身を改めて確認すると、私はそれを懐へとおさめていつも漂う散歩道を外れて
昨日の屋台があったところへとフラフラ飛んで行った。

まぁ、そこには当然の結果が待っていた。屋台の跡形も……じゃない、屋台を引きずった跡しか残っていなくて。
流石に夜だけの経営みたいだ。まぁ、こうやって跡があるという事はあの後店主さんは無事に屋台を持って帰ることはできたのかな?
本人曰くはかなり酔っていたようだけれど。まぁ、流石にそれくらいの体力は残していたはずだよね。
地面に降り立って、その車輪の跡の上にしゃがみこむ。案外綺麗に残っているものなんだな。

ふと気がつけば、私はその跡を目の中に捕らえながら道の上を歩いていた。
ただなんとなく、店主さんが道端で倒れていないかとかそういう事を心配してだ。まぁ、もうお昼過ぎではあるんですけどね。
しばらくは誰もが通れる道の上を二つの長い車輪の跡が続いていたけれど、
進んでいるうちにその線は急に横に逸れると道の脇の林の中へと折れて行った。
正直な話、心配だとかいうのはうわべだけでただの好奇心ではあったけれど、流石にこのまま林の中に踏み入るのは一度思いとどまった。
もしも本人にばったりと会ってしまったとき、何も言い訳ができなくなるからだ。
でも、しばらく悩んでいるうちにやっぱり私の足は再び跡を追って林の中へと入っていった。
草木のおかげでそこまで綺麗にではなかったものの、嬉しい事に車輪の跡自体はちゃんと残っていて
私は周囲の生き物の気配が有るか無いかに気を配りながら、ゆっくりとただ跡を追って行った。
やがて、視界のずっと先に木があまり生えていない小さな広場のような場所を見えはじめ、
その広場の隅に小さな家と昨日見つけた屋台を見つけた。
「八目鰻」と書いてある。昨日はこれを見ずに入ってしまい、店主に迷惑を掛けてしまった訳だ。
足をふと止めて、周りの空気に最大限の意識を向けて誰も居ないことを確認すると、私は広場を進みゆっくりと家に近づいて
小さな窓からそっと家の中を覗き込んだ。
中に見えた部屋には誰の姿もなくて、あぁ誰も居ないんだ。そう思ってふと視線を窓から見える下の方へと向けると、
わずかではあるがベッドが見えて。良く見るためにもうちょっと良く覗きこんだところで、彼女の顔がひょいと飛び出して私の顔を見て驚いていた。

2、3秒であろうか。お互い目を合わせて固まったまま見つめ合っていたけれど、ハッとして私は首を引っ込めると、
彼女から見えない壁の裏側へとぴったり体を張り付けた。
[良い天気だから散歩していたんです。]
違う。
[道に迷いまして。]
違う。あぁ、適切な言い訳が思いつかない。
少しして私が覗きこんでいた窓が開くと、彼女が顔を出して私を探し、私に目を合わせると少し困ったような顔で笑いながら
「や、屋台は夜だけだよ?」
そう言った。その言葉に何とか顔だけは平静を保っていたものの、頭が回らなかった私は咄嗟に
「いやぁ、森林浴にきたんですよ。」
とまるで良く分からない返答をしてしまい、またお互い固まってしまった。
何とも間が悪く、そして気不味い空気が私と彼女との間に漂った。もっと必死に言い訳を考えながら来るべきだったのだ。
これならまだ、道に迷ったと言ったほうが良かった気すらしてくる。
「そ、そうなの。」
なんとも苦しい彼女の返事だ。まるで真綿で首を絞められているような気さえしてくる。
此処まで来ると、ある種の申し訳なさが心の中に広がってしまった。
「すみません、暇でしたのでつい車輪の跡を追ってしまいまして。」
「お客さんでこんな事をする人は流石に初めてだわ。」
一応正直に話はしてみたものの苦笑いで返されてしまって。まぁ、当然といえば当然の反応だ。
正直、気持ち悪く思われても仕方がない位なのだから。
「……あがっていくかい?屋台程のもてなしは期待させることができないけれど。」
彼女が言い放った一言に余計に頭の中が混乱する。
「し、仕事が!」
「たった今、貴女暇って言ったじゃないのよ……。」

彼女の家の玄関は少し小さくはあったけれど、狭くは無かった。気がつけば玄関に私は居て、
少し無様だとは思いつつも、内心少しドキドキしていた。お仕事で他人の家に出入りするというのは良くあることだけれど、
そういうのとはまた違う方向で他人の家に入るという事はそう滅多にある事ではないからだ。
だからそういう意味ではちょっとワクワクして。まぁ、良い理由でもないんだけど。
そんな事をぼーっと玄関で考えていると、玄関に彼女の声だけが響いた。
「靴脱いだら適当にあがって~。一番手前の部屋に居るから。」
その声を聞いて、慌てて靴を脱いでそろりそろりと彼女の家の廊下を進み、
恐る恐るドアの開いたままになっている一番手前のドアの影から中の様子を頭だけ出して伺った。
「……何してるのさ。」
眼のあった彼女にそう言われて慌てて部屋の中へと入るものの、
入口の敷居に足を引っかけて前のめりに倒れてしまった。それはもう酷く恥ずかしく、みっともなくて
「少し落ち着いたら?」
やれやれといった表情で髪の毛を手でかきつつ、部屋の奥の方でベッドに座ったままの彼女がそう言った。
全くその通りだとは思う。無駄に舞い上がってしまっているし、頭もまわらないし。
これはあれか、風邪か。
立ちあがってもう一度彼女を見れば彼女は自分の脇を指さして
「とりあえず、座る?」
そう言ったので、私はそそくさと部屋の中を進み彼女の横へと腰を下ろした。

「で、結局は何の用事だったのかな?流石に屋台は夜しかやってないんだよ。」
流石に森林浴が嘘であるという事は見抜かれていた。やはり、あからさま過ぎたか。
もう少しマシな嘘をついておけば良かった。
「じ、実はそのですね。」
そこまで口を開いたものの、その先を言い出すことができない。
そもそも私はなんとなく気の向くままに歩いてきた訳だからだ。好奇心は……あったけど。
「言いだし辛い相談?」
「いえ、そう言う事じゃなくて。……ただ好奇心で車輪の跡を追ったんです。」
「なるほどねぇ。でも、毎日同じ場所に私出店してないのよ。その方がいろんな人に知ってもらえると思うから。人妖含めてね。
だから基本的に同じ場所ってのはむしろ珍しくてね。まぁ、出店した場所については、歌を歌って気づいてもらってる感じなのよ。」
そう言えば私も最初は歌を頼りにあの店にたどり着いたような気がする。
なんとなく惹きつけられるうちに気がつけば屋台の前に居て、気がつけば屋台の中に誘われていた訳だ。
そんな事を思い返している時、彼女が横で小さな欠伸を漏らした。
「……ふぅ。ごめん。あれから帰って今日の分の仕込みやってから寝たからさ、あんまり寝ていなくて。」
「それは申し訳ありません。」
「いいさ。私にも事情はあるし、貴女にも事情はあるんだし。気にした所で都合の良い時間なんて
案外無いんだから。……そうね、ただひとつだけ残念だわ。」
ベッドに後ろ手に手をつくと彼女はそう言った。眼は天井を見上げ、やや眠そうな目つきで。
少ししてから、また彼女が口を開いた。
「好奇心とかじゃなくて、私に会いにきたってズバリ言ってくれたなら少しは眠気も飛んだんだけどね。」
私も彼女に合わせて天井を眺めながら彼女の言葉を聞いていたけれど、流石にその言葉を聞いて彼女の顔へと視線を向けた。
彼女もいつの間にか天井から私へと視線を向けていて、お互いの視線が重なる。
「好奇心だけじゃ流石に部屋の中をよくよく覗きこもうなんて事にはたぶんならないと思ってね。」
そ、それはそうかもしれないけれど。
「でも、その。何故だか覗いちゃいましてね。」
「そう。だから残念なのよ。……誰かを好きになったことはないのかい?」
「……好きって結局どんな気持ちなんでしょうか。」
「そんなの簡単よ。……でも口に出すのは難しいわね。私は夜まで寝させてもらうわ。」
そう言って彼女がため息を吐きながら姿勢をかえて、ベッドへと足を投げ出して寝てしまって。
私はただ邪魔にならないように、ベッドの端の方へと座る位置を変えて、今の問いを思い返していた。

好きという言葉自体は私だって勿論知っている。それがどんな感覚かだって勿論知っている。
でもその言葉から得る頭の中のイメージというのは、今のそれには合わないのだ。
一目ぼれとか、ひと夏の恋とか、そんな言葉は天上の世界でだってなんとなく聞くことではあるけど、
それはあくまでも私の中では「異性」に対しての気持ちではないかと思っていたからだ。
同じ女性である人に近い気持ちを抱きはじめているような気がする。それは良い事なのか、悪い事なのか。
仕事一筋でがんばってきた私にはどうにもその問題は解決できない悩みだった。
でも、あれから通うようになった神社の宴会では、必ずしもそれがそうではない事というのは聞いて証明されてはいる……けれど。



「正直、まだそこに座っているとは思わなかった。」
すっかり太陽が西の空へと沈みきって、月が空に輝いて部屋を照らす中、
起きてきた彼女はまずそう言った。何だか少し不機嫌そうにも見えて、やっぱり私は途中で一人帰るべきだったのかもしれない。
「それで、どうなの?」
「どうとは?」
「今の自分について整理できてる?あれから4分の1日くらいは経ったような気がするけど。」
「……あまり。」
「……そう。じゃ、行きましょうか。」
彼女が軽く伸びをして立ちあがると、私に向かってそう言った。
「どちらへ?」
「そりゃぁ、決まってるでしょ?屋台さ。」
そのまま彼女が部屋を出て行ってしまって、しばらくして水の流れる音がした。
おそらくは顔を洗ったか何かだろう。すぐに玄関の方面から
「屋台を引くの手伝ってもらってもいいかな?」
そう声を駆けられてハッとなってベッドから立ち上がると、私は急いで玄関へと走って行った。

ずっと座り続けていたからか、ちょっと服の生地がお尻にくっついている感触がする。
彼女が屋台を引く横で少し狭いながらも私も屋台を引いて、今日追ってきた車輪のあった道とは違う道を進んでいく。
空から眺めれば私たちがどの位置を進んでいるのか分かったんだろうけれど、日頃下を通らない私には
今どこを歩いているかなんて分かりようがなかった。ただ、だんだんと木々の間隔が狭まって行くのは分かり、
大きな道に出ると言うよりも、奥へ奥へと進んでいるような気分ではあった。
文句を言う立場ではないので、私はただ黙って彼女に従い、ひたすら右へ左へと進んでいった。

「この辺でいいかね。」
そう言われても、たどり着いたこの場所は小さな広場にはなっているけれど、
空を見あげても木々の葉に覆われてまるで空を見ることができない。
ほんのわずかな隙間から反射して抜けてきた光がやっとわずかに周りが見える程度に明るさを提供しているくらいで、
とても屋台を出す場所として適切な場所には私には感じなかった。
「ここですか?」
「うん、今日は生憎だけどココよ。ココがいいの。」
そう言いながら彼女が私の横からするりと抜けて、テキパキと屋台を組み始めた。
組み立てについては私は全く勝手が分からなかったので、少し離れた位置で私はそれをぼーっと眺めておくことしかできなかったのだけど。
「さ、かけなよ?」
組み立て終わった後の彼女がそう言って、私はのれんをくぐって椅子へと座ると改めて屋台の中を見まわした。
壁に貼られた沢山のメモや、洗われた食器。どことなく染み出しているタレの匂い。
屋台らしいなぁとは思う一方で、こんなに木に囲まれているのに虫の音一つしないのは少し不気味ではあった。

「ほい。」
そう言われてお酒を注がれたコップを手渡されて、彼女も自らのために椅子を置いてカウンターの向こうで座った。
昨日と違うのは、彼女自身がお酒のコップを握っていない事だろうか。あと、この場所か。
「ここだと、他のお客さんが気付かないと思うのですが。」
「そうだよ。他に誰も来られないと思う。」
すんなりと、私が全く予想もしていなかった言葉を返してきたので私は戸惑った。
「この辺の事は私が一番知ってるよ。家近いんだし。この場所はさながら密室なんだ。前からね。」
屋台の中を照らすランプの明るさを弄りながら、彼女がそう言いつつ私を見つめる。
「わざわざ長い道を引かせてしまったんだし、今日はお代いらないから。」
「昨日も私は払ってないんですけど。」
「それはそれ。これはこれ。」
手を洗い終わった彼女が、ちょっと大きな御鍋を取り出して火にかける。
昨日見たときにはこんなものは無かったような気がするけれど。
「じゃあ、質問をずらして聞こうかね。貴女は自分以外の誰かとの繋がりが増えたら良いなとは思っているんでしょ?」
「……はい。」
「うん。これは貴女自身が昨日言ったことね。」
次は串焼きを焼く道具に火を入れながら、彼女がそう言った。
「じゃあ、まぁ私の事でも聞いてもらおうかな。私割と長い間この屋台をやってるし、それがどれだけの期間かなんて数える気もないけどさ、
客商売でいろんな人を相手にするけれど、あくまで皆お客さんであって私は店主なんだよ。」
ちびりちびりと減って行く私のコップに彼女がお酒を注ぎ直しながら、彼女が続ける。
「だから、私だって貴女と近い気持ちではあるんだ。」
あたたまってきた串焼きの道具へ串を並べつつ、彼女がお皿の用意を始めながら滞ることなく話を続けていく。
「こんな感じで一対一で話をする事はあるよ?でもね、基本的にカウンターをこうして挟んでいる時点でやっぱり私は店主でお客さんはお客さんなんだ。
それを理解してしまったときは、酷くさみしかったんだよ。自分から目的を持って始めたことだから悔いとかは無いんだけどね。」
くつくつと音を立てるお鍋の中を確認しながら彼女が呟いて、軽くそのお鍋の中をかき交ぜると
彼女が少し大きなスープ用のお皿へとその中身を盛った。
「というわけで、まずは一つ。鰻とその他諸々のスープ。熱いから気を付けてね。」
彼女がお皿と一緒にスプーンを私に差し出すと、私はそれを受け取って、手を合わせた。
中を見ればホクホクと一口大に切りそろえられた少し表面の焼けた鰻が顔を覗かせ湯気をあげていた。
「串はちょっと待ってね。で、どこまで話したっけ?」
「ミスティアさんが寂しいって事に気づいたあたりでしょうか。」
「そうそう。だからさ、昨日あなたがそんな悩みを言ってくれたこと、次いで私の家に尋ねて来てくれたこと。
まぁ、覗きに来たって言った方が正解なのかもしれないけれど、屋台じゃなくて私目的なのかなって凄く気になったんだ。」
彼女がくるくると火の上で串を踊らせながらそう言うのを、私は口の中に鰻の身を放り込んで
その熱さで噛めずに頬張りながら何とかその話を聞いていた。
「なるほど。」
なんとか胃の中へと流しこんで、私はそう答えた。

「本題。私は貴女に興味がある。凄くある。でも、貴女はどうかしら?それは私にはわからないこと。貴女自身の事だから。」
すっと、お皿にのって何本かの鰻の串がカウンターの上へとのった。
私はそれを受け取ると、一旦スプーンを置いた。けれど、私には何をどうこたえていいのかまるでわからなくて、
ただ気持ちとしては、自分も彼女自身に興味があるという事は嘘ではない。事実ではあるのだ。
彼女も一本、焼いた串を手にとって口へと運びながら、一息溜息を吐いた。
「何だか押し付けがましくてごめん。必死なんだ私は。
正直、貴女にとって私がそこまで興味の対象でもなんでもないなら、私はそれであきらめられるから良い……の。」

お互いに沈黙してしまって、パチパチと鰻からこぼれる油が跳ねる乾いた音が屋台の中を響いた。
「私は、」
日頃滅多に早くならない心臓を酷使しつつ、なんとか言葉を口からひねり出す。
「私だって興味はあるんです。というか、その。昨日の席は久しぶりに楽しめたから。ただ人付き合いって仕事以外に無かったし、
その。同じ女性を好きになっていいのかとか、私にはよく分からなくて。そういう習慣があるとかは知っているんですが。」
「そう、そうね。私は生憎と頭は良くないから、そんな事情については深く考えないことにしてる。ただ、自分の気持ちには素直に従いたいからね。
急かすような言い方になるのかもしれないけれど、そこは貴女が好きに決めていい事なんじゃないだろうかね。」
果たしてそれでいいのだろうか。
好きに、なっても。

串に刺さった鰻を少しずつ食べながら、気持ちを整理し直す。
とはいえこういう思考自体は彼女が寝ている間に何度も何度も繰り返したことではあった。
結局のところ私に足りないもの。それは……
「勇気が足りないんでしょうね。」
「ん?」
私のスープ皿にまた新しく具を追加しながら彼女が不思議そうな声をあげた。
「私の本心としては、貴女と同じような気持ちですよ。」
「そう……ごめんね。答えを急がせて。」
「いえ、十分時間は頂いていたんですよ。ただ決断がし辛くて。」
でも、こうして言えば何だか少しだけはスッキリとした。
少なくともほつれた思考の糸が解けるまでいかずとも、緩みはした気がする。
「私も、飲もうかね。」
彼女が私と同じガラスコップを取り出して、お酒を注ぐ。
「そっちにまわってもいいかい?」
私の回答は、決まっている。
彼女は道具の上で焼かれていた串を全部お皿へとあげると、一旦その火を消してカウンターの向こうから姿を消した。

カウンターの向こうに森を見ながら、二人並んでコップを握り間に置いたお皿から二人で串を手にとって。
周囲の音がないからか、自分の食べている音がむしゃむしゃと頭の中に響いてしまう。
さっきまで何だか存外な事を話していたような気がするのに、そんな割には落ち着いて私は食べていた。
今まで他人との間にあった見えない空気の壁が剥がれおちたような感じで、
いつも宴会の時に感じていたどこか居心地の悪いような感覚というのは今はまるで感じなかった。
「お酒と肴はまだあるからねぇ~。」
彼女が体の向きをずらして私を見上げながらそう言った。
「何だかタダだと悪い気もしますけど。」
一応、私は客ではあるわけですから。ちゃんとお財布だって持ってきてるし、
この前被災した神社の彼女のようにお金がない訳でもないし。
「もう貴女はお店の客じゃなくて、私の客だからね。そこはあんまり気にしたくないところだよ。
まぁ、流石に経営が行き詰ってきたらいただく事も……あるかもしれないけど。」
やっぱり無理してるんじゃないか。適当に理由つけて今度お金を払っておこう。
「店主さんは、」
「ミスティアでいいよ。」
「ミスティアさんは、お酒には強い方なのですか?」
隣でくぃくぃとコップを傾けては喉を鳴らす彼女にそう尋ねる。
昨日は割とすぐ酔っていたような記憶があったから、なんとなく聞いておきたかったのだ。
今も飲んでいる訳だし、それに正直な話今日屋台を運んできた道を考えると一人酔った体で運ぶのはきっと彼女にとって骨の折れる事のはず。
「んー。気分次第だよー。酔いたい時はすぐ酔えるんだけど、酔えない時はとことん酔えないんだ。
ただ、どんなに酔えなくても次の日にはそれだけ飲めばしっかり二日酔いにはなるんだよね。困ったことに。」
……まぁ、気分次第で変わるのは私だって同じかもしれないけれど。
私自身昨日食べて話をしていた間はそこまで酔っていた感覚が無かったんだもの。指摘されてやっと感じ始めた位だ。
完全に酔いがまわったのだって、家に帰り始めてからだし。
「あぁ、私の帰り道を心配してくれているのかい?だったら心配ないよ。飛んで下を眺めればすぐどこに居るか分かる。」
「道、ちゃんと覚えてるんですか?」
「そりゃぁ、ねぇ。覚えてるも何も……。ところでそのスープ美味しかったかい?」
未だに手を暖める目的で私がガラスのコップとは反対側の手で持っているスープ皿を指さして彼女が言った。
その目自体はワクワクしているように見えるのにどこか不安そうに見えるのは何でだろうか。
「美味しいですよ?」
そう返すと、やっぱり安心したかのような顔で溜息を彼女がついた。
「あまりお客さんにはこういう事直接聞けないからね。やっぱり気になることは気になるんだ。自信はあるんだけどね。」
「他にもいろいろあるなら、是非いつかは食べてみたいですね。」
「じゃあまた今度別の物を出させてもらおうかな。何だか実験台みたいで悪いけどさ。」
私自身としては試行錯誤している最中のお料理にあやかれるのだから、悪い気はしないんだけどな。
むしろ、食費と暇が減ってくれるだろう。
「楽しみにしていますね。」
「……まぁ、あまり深くは期待しないで。」

思いのほかお酒は進んで、カウンターに載っていた一升瓶はいつのまにか二人で飲んでいるうちに空っぽになってしまった。
それでも私たちは串を片手に多少酔ってきた頭でも尚、話をしていた。他人と会話ができるというのは些細な事なのに
これがまた私にはとてもうれしい事で。時間が止まるならば、と本気で考えてしまいそうな程に、楽しかった。
おそらくは、私の人生の中で過去最長の時間を記録しているんじゃないかというくらい話をしているだろう。
「それで、その日飛んでいた奴にたまたまちょっかいだしたらさ、それがあの巫女と隙間妖怪だったんだよ。
もうね、あれは人間じゃないよ。人間の皮被った権力だ。……悪い人じゃないんだけどさ。」
「あの2人は急にワープしたりしますからねぇ。確かに人間離れですよね。」
「貴女も戦ったの?」
「戦ったというより、絡まれたんですよね。相当機嫌が悪かったみたいで、その成り行きで。」
「災難だったねぇ。」
まぁそのせいでこうして仕事が無くなって暇になって。
でも一方でこのおかげでこうして話す今の時間を得ている。一概に災難じゃないんだな。
何だかんだで+と-というのはバランスが釣り合うようになっているんだろうか。
でもそれだと私はこの後死ぬかも分からない。
「んー次のお酒出そうか。」
お互いに空のコップをしばらく手に握っていたためか、彼女がそう言った。空の瓶を眺め小さなため息を吐きながら立ち上がる彼女を
慌てて手で制しながら私は彼女を止めた。本当はまだ話していたかったけれど、このままではお互いに二日酔いになるのは目に見えていたからだ。
「もうお腹いっぱいですし、そろそろ。」
「そうかい。じゃぁここいらにしとこうかね。」
彼女が少し伸びをして、私もそれに習って伸びをしたら屋台の天井に指をぶつけた。
「背、高いね。」
確かに私と彼女は頭一個分ほどの差がある。
「屋台引くの、手伝いましょうか?」
「ん~、うん。悪いけれどお願いするよ。」

……とはいうものの、結局私には屋台の畳み方の勝手なんて分かりはしないので、少し離れたところで最初の時と同様、
彼女がテキパキと片付けて行くのを傍で立って見守っていた。お酒のせいか少しふらついてはいたけれど、火元もちゃんと処理したようで。
「じゃあ、お願いするよ。」
彼女がそう言ったのを聞いて彼女の横へと立つと再び揃って引いて歩きはじめた。
けれど、彼女がどんどん進もうとしている先は来た道ではなくて。それは全く別の方角へと向かっていた。
「帰り道、あっちじゃないんですか?」
来た方向を指さしてそう言うが、彼女は首を振って。
「いや、良いんだよ。こっちで。すぐわかるから。」
その言葉が少し引っ掛かったけれど、私は従ってしばらくの間木々の間を進んでいた。
カタカタと鳴る屋台を引いてしばらく歩いていると、視界の奥のずっと先に、昼間見たような広場が見えてきて。
「こういう訳よ。」
「家の裏だった、ということですか?」
「そ。行きはわざわざぐるぐる回って、私が今度は考え事させてもらってたんだ。……少し考える時間がほしかったからね。
だからまぁ迷う事もないし、帰れない事も無かったわけよ。」
まぁ、確かにこの距離くらいなら問題は無かっただろう。
その後すぐ二人で屋台を家の前まで引きずって、家を出発する時にあった位置まで屋台を移動させると、私たちは屋台をそこに置いた。
何だか、本当に無駄な距離を行きでは引きずっていたんだなという事を考えるとどっと疲れがきてしまう。悪い気はしなかったけれど。
「では、また。」
一息ついた彼女に一礼して背を向け飛び立とうとしたところでぎゅっと服を握られて、
思わずバランスを崩して土の上に倒れそうになるのを何とかこらえながら、彼女の方へと向き直った。
「あ、あのね。今日泊まっていかない?夜遅いからさ。」
確かにもうしばらくすれば月もすぐ山の端に消えて、太陽が顔を出すだろう。
まぁ、私が帰るまでに太陽があがることはたぶんないだろうけど。
ただそんな事は全くどうでも良くて、私の直感はその申し出を辞退する事を拒んだ。
「御言葉に甘えてもいいですか?」
お酒で赤くなった顔を少し明るくして彼女が嬉しそうに玄関へ歩くのを追って、私も玄関へと入った。
玄関で靴を脱いだところで彼女に手を引かれ、昼間居た部屋へと引きずり込まれて。ただ、足元の注意だけはお酒のせいで散漫になっていたからか、
昼間つまずいた部屋の入口では転ばなかったもののベッドのすぐ傍まで来たところで家具に足を引っかけ、
気がつけば彼女をベッドの上へと押し倒していた。

あぁ、あったかい。
本当ならすぐでも彼女の上からどいて謝るべきだったのに、私の酔った頭はそんな言葉を頭の中に浮かべていた。
しばらくぼーっと彼女の上へと居座り続けて、そのあたたかさが何とも心地よい抱き枕のように……。
「衣玖さん?」
そう声をかけられて、段々と船をこぎだしていた意識をなんとか引き戻して体を急いで起こした。
彼女の顔には窓から入る月の光が当たってはいなくて、その詳細な表情までは酔っていた私にはわからなかったけれど、
眼が返す光には少しだけ彼女が微笑んでいるように感じられた。
……今日は雲が出ていただろうか?それとも窓が小さいからだろうか。部屋の中は良く見えないのに彼女だけが良く見えるような気がして、
案外にお酒の影響がもう出てきてしまったのかも、と、そう思った。もしかしたら疲れが来たのかもしれない。
そのまま彼女に手を引かれて、ベッドの上に導かれる。昼間座っていたのであんまり感じなかったが、
こうして二人で寝そべってみれば案外に狭いベッドであった。
すぐ横を見れば彼女の顔があって、上を見ればわずかな光がほんの少し確認できる程度。
私は上半身にかけていた羽衣をベッドの脇へとかけると、そのまま目を閉じた。
ややあってか、少し小さいけれど暖かい布が私を包んで、その中でよりあったかい彼女の手が私の手を握った。
「おやすみ。」
頭の中に響くように彼女の声が聞こえる。
「おやすみ、なさい。」


果たしてどれだけの間寝ていたのだろうか。それは意識の無かった私には全く分かった事ではないが、
再び私が目を開けた時には丁度窓から朝日が出る直前のうっすらとした明るさが部屋に入ってこようとしているのが確認できた。
あまり寝ていた気はしない。むしろほとんど寝た気がしなかったが、ただひとつ私を襲う感覚があって、目が覚めてしまったのだ。
……酷く、喉が渇いた。
おそらくはお酒を飲み過ぎたせいだろう。ずっとずっとお酒でそれ以外何も口にしていなかった。
体も熱い。何だか根こそぎ体の水分を吸い取られたような気分だ。
頭痛はまだ襲ってきてはいなかったけれど、この調子ならばおそらく昼頃には地獄を見る事ができそう。
しかし何にせよ、喉が渇いた。
とはいえ、彼女はこうしてすやすやと眠っているし、彼女の家を勝手に出歩くわけにもいかない。
じっと、彼女の顔を見てみる。しばらく起きる気配はないみたいだ。私と同じようで少し暑そうではあったけれど。
彼女の露呈した首筋が、うっすらと汗に濡れているのが眼の慣れた私の目に映る。私はそっと、かけられていた布団を剥ぐと
上に着ていた服を脱ぎ去った。もともと結構ぴっちりした造りの服なのに、汗を吸っているからか余計に肌にくっついていて、
脱ぐのは少しばかり大変だった。スカートはまだ、あまり汗には濡れていなかったけれど、暑かったので同様に脱いで、
上着と一緒に羽衣の横へとかけておいた。
これで、喉の渇きはますます加速する一方で、暑さだけはなんとか消えてくれて。
私はもう一度掛け布団をかけると、彼女が起きだすまでじっとじっと耐えることにした。

すっかり朝日が昇り、窓から入る光も一本の太い光になったのに、
まだ彼女はすやすやと寝息を立てて眠ったままだった。小声で
「ミスティアさーん……。」
そう呼びかけてみても、反応らしい反応もないから起こしづらくて。
ただひたすらに彼女の顔を眺めながら喉の渇きにじっと耐えていた。
幸せそうな顔で眠っている彼女の口からは、一本の細い線が枕に向かって伸びている。
私自身がこんなに喉を乾かせている一方で彼女は涎を出せるほどに水分には困っていないんだな。

しばらくすると、その口元から目が離せなくなった。
もう、水分がとにかく欲しい。懸念していた頭痛はまだ弱かったけれど、
二日酔い特有の視界が回るような感覚と軽い頭痛に頭をいためながらも、それでもなおじっと口元を見つめて。
何だか吸血鬼という生き物の性分が少しだけ分かったような気にすらなった。
本当に、凝視しているのが自分で分かるのだから。何とかそれからしばらくの間、最後の良心か自制心なのか、
それだけが私を抑えていたけれど、寝がえりをうってこちらに顔を向けた彼女を見ているともう我慢ができなかった。

するりするりと私の手が勝手に彼女の頭と腰の後ろへと延びる。
他に探せば代替策があるなんて私だって理解できている。でも、もうそんな事を正常に考えられなかった。
そっと顔を固定して、私は緩み切った彼女の唇へと自分の唇を重ねた。
こうしてみれば自分の唇が乾いていたことが尚の事わかる。
潤っていた彼女の唇が少しずつ私の唇を濡らす感覚は少しだけ私を恍惚とさせた。
彼女のまぶたがゆっくりと開いて、私の視線と交わる。彼女が起きた。
でも私の体は、そこで体をすぐに離して水の事を頼むという選択を放棄していた。
唇をつけたまま、くるりと彼女の体を持ち上げて、彼女の体を私の体の上へと持って行く。
凄くぼーっとした目で私を見ている彼女を知っていながらも、私は口の中へと流れ込むモノを必死になって受け止めていた。
馬鹿みたいなことをしているのに、当の私は溜飲の下がるような心地だった。本当に。
渇きが少しずつおさまって行く一方で、酷く申し訳ない気持ちと恥ずかしい気持ちがこみ上げてくる。
しばらくして私は彼女の目をまっすぐに見ることができなくなり、彼女の目から視線をそらした。
少しずつ冷めて来ていたはずの頬はまた熱くなって、私はすぐに目を閉じた。

「おはよう。」
私の唇から彼女の唇が離れて、彼女がそう言った。
その声は少し震えていて、怒っているんだと私は思った。それくらい、自分のやってしまったことが酷く恥ずかしくて
穴があったら本気で隠れたい程だった。彼女の体が私の体の上から降りて、私の肩に彼女が手を置いたのを感じて
私は思わず眼を閉じたまま震えた。
「今更寝たふりは駄目よ?」
そう言われて恐る恐る目をあけると、じっと彼女が私の目を見ていた。
「おはよう、ございます。」
恐る恐るそういうと、そんな私に対して彼女は小さな溜息吐きつつももう一度さっきの言葉を私に返した。
「おはよう。それで、どうかしたの?……暑かった?」
彼女が私の格好を見てなのかそう言って、正直に言うべきかは一瞬悩んだのだけど、すぐに私は彼女に打ち明けた。
「喉が、かわいたんです。」
自分でも笑えそうなくらいに小さな声だった。
彼女はちょっとの間固まっていたが、少しして
「ふ、ふふ。」
笑いだして体を起こすとすっとベッドから立ち上がった。
「冷たいのでいいかな?」
いつも通りに戻った彼女の声に少しだけ、安心しつつ私は頷いた。
何だか急に緊張の糸が切れたようで、ちょっとした疲れと一緒に視界がぐるぐると回り始める。どうやら、始まったようだ。
彼女が部屋の外へと消えていくのをなんとか目で追って、その姿が見えなくなると私は目を閉じた。

しばらく彼女のベッドで休んでいただろう。ゆっくり休んでいると急に頬に冷たいものを押しあてられて、
少しびっくりしながらも私は目をあけた。どうもコップを押しあてられていたらしく、彼女がじーっと私を見降ろしていた。
「起きてから飲んでね。」
彼女がそう言って、私は体を起こして。改めてコップを受け取ると、一気にその中身を飲み干した。
冷たい水がまるで矢のように喉に刺さる。思わず咽そうになったけれどそれはなんとかこらえて、全部飲みほした。
「相当渇いていたみたいだね。ずっと我慢してた?」
「……そうです。」
「まぁ、実際には我慢しきれなかった、か。」
非常に痛い彼女の指摘だった。事実、そうであったのだし。
「まだおかわりがいるなら。」
彼女が後ろ手に水差しをとって、私の視界にちらつかせる。私が頷くと彼女は慣れた手つきで私が握ったままのコップに水を注ぎ、
私は半分くらいをまた一度に飲んだところで口とコップを離した。
「……ふぅ、ありがとうございます。」
「気が利かなくてすまなんだ。」
「そ、そんなことは。」
「寝てても遠慮しないで言っておくれよ。流石にああされると私だって驚いちゃうから。」
「申し訳ないです。」
ただ頭を下げて謝るしかない。
「ところで、二日酔いは大丈夫かい?私は大丈夫だけどさ。」
……あれだけ飲んでおいて大丈夫ときたか。普通にお酒強いんじゃないか。
おそらくは私と同じか……それくらいは飲んだはずなのに。
「少し、頭が痛いですね。」
「そうか。薬あるからだすよ。」
彼女がベッドの下へと手を差し込んで、小さな薬箱を取り出した。
中はちょっと独特な薬品臭がしていたけれど、その中から小さな瓶を彼女は取り出して見せた。中には小さな丸薬が見えて、
彼女がそれを瓶から出して手にとると、私のコップに水を注ぎつつ私の掌の上にその丸薬を置いた。
「噛まないで飲んでね。」
指示されたとおりに、そのまま口の中へ放り込んで水を流しこむ。
流石に何杯も飲んでいるうちに渇きらしい渇きは治まったようで、彼女にお礼を言いながらコップを返すと、
もう一度体を倒してベッドの上で休ませてもらう事にした。
……何だかんだいって、あまり寝て無かったせいもあってか
私の体は欲望にはとても忠実になってしまったようで、再び寝てしまうのにそんなに時間はかからなかった。

「衣玖さーん?」
肩を揺すられて眼をさませば腕まくりをした彼女がそこに立っていた。
どこか少し美味しそうな匂いも漂う。ご飯でも作っていたのだろうか。
「もうお昼だけど、食べられそうかい?」
2度寝をしたせいか、まだ朝のようなそんな違和感を覚える。もうお昼なのか。
彼女の手を借りて上半身を起こしてみると、不思議と頭の中に渦巻く不快感や痛みは消えていた。
……凄いよく効く薬だこと。
「大丈夫なようです。」
「良かった。じゃあお昼御飯といこう。」
待っていましたと言わんばかりに彼女がちょっと大きめのお皿を取り出した。
ひょっとしたら私がまだ食べられないときのためか、そのお皿には金属の覆いがしてあったけれど、
彼女がそれを取り外して近くの机の上へと置いた。
「おにぎりですか。」
綺麗な白い三角形がお皿の上に整列している。少し小さく感じるのは彼女の手の大きさの為なのだろう。
いいなぁ、綺麗に三角に作れるというのは。下手に拘ると硬さがあまり均一になってくれなくなったりするのよね。
「ご飯と合わせていただきたいって言ったでしょ?だから中身は御察しさ。」
初めて食べた日に私が言った言葉を思い出して、ちょっと納得して。
彼女が取り出した御絞りで手を拭うと、彼女が私の隣に座って、二人の間にそのお皿を置いた。

二人手を合わせて御握りを手に取る。まだあたたかい。
ぱくりと一口食べてみれば、はらりとおにぎりが解ける感覚とあっさりとはしつつも
濃厚な味に染まった鰻の味が口一杯に広がって行く。
「やっぱり合いますよね。」
「うな重をおにぎりにしたようなものだからね。」
「美味しいです。」
「それは何より。食べられる範囲で食べてちょうだいな。」
彼女から受け取ったコップで水を喉に流しつつ次へ次へと御握りを口へ運ぶ。
昨日も結構食べたつもりではあったのだけど、思いのほかに手はどんどん進んでいた。
最後の一個は彼女が譲ってくれて、結局それも私の口に収まって。
私は彼女に軽く頭を下げると、両手を再び合わせた。
「ところでさ、」
彼女が口を開きながら、二人の間にあったお皿や金属の覆いを回収する。
私が彼女の方へと視線を向けると、彼女が私の体を指さしながら言った。
「服、着ないと流石に風邪ひくよ?」
……ふと自分の体を見て、私はすぐ膝元にあった掛け布団を肩口まで引き上げた。
「申し訳ない。朝暑かったものでつい。」
「まぁ、過ごしやすいように過ごしてくれたらそれでいいよ。」
彼女がぐっと立ち上がって、食器を片付けるためか部屋の外へと消えていった。
おそらくは台所なのだろう、水の音と一緒に小さな声ではあったけど歌が聞こえてきた。どうも上機嫌そうだ。
しばらくして、水の音が止んで、彼女が部屋に戻ってきた。後ろ手に部屋のドアを閉めて、私の横へと座る。
少ししてから、彼女が体を私の方へと向けて、口を開いた。
「あのう、衣玖さん。」
「なんでしょうか。」
私も彼女の方へと体を向けてそう聞き返すと彼女が俯いた。
私の膝元あたりの掛け布団をぎゅっと握って、彼女が口を開く。
「もう一度、キスしてほしいな。」
そんな要望を発せられて私の顔が変な熱をもったのは言うまでも無い。
心臓も驚いてか意識が一瞬飛びそうになるほどの、私にはそんな要望だった。
今朝のアレ自体は私自身が狂ってやってしまったことで、無理やりしてしまったことじゃないか。
それを、もう一度?もう一度なの?
「わ、私にそんな事をする資格なんて……。」
それでも、私は彼女の要望にそのまま答えた方が良かったのだろう。
それは後々、私が理解する事で今のこの私にはそんな事は分かってはいなかった。
その時の私は、彼女に拒絶されるための要素を一でも作ってしまう事が怖くて、そう答えてしまったのだ。
その一言で、場の空気が歪んだ。
僅かな間、彼女は私を見開いた大きな目で見たままで固まっていた。震えた唇が何かを発しようと少しの間パクパクと動いたのちにそれは言葉になった。
「そんな事……そんな事なの?酷いよ、私の初めてだったのに。寝ている間に奪われて、でもそれでも私は貴女が好きだからそれで良かったわよ。
でも初めては良い思いでにしたいから、ただもう一度お願いしただけなのに……そんな事の一言で返されちゃ……。」
開いたままの大きな目にみるみるうちに涙が溜まって、ボロボロとそれが崩れ落ち、流れる。
「酷い、酷いよぉぉ」
彼女の拳が掛け布団越しに私の胸を叩いた。
柔らかい布ごしでの拳だったけれど、その一発一発は冷たい針のように私の心に刺さって。
一発、また一発。叩かれるごとに私の体は打ちつけられた人形のように動けなくなっていった。
「酷い……。」
彼女の手が止まって。私も息をするのを忘れて、ただ彼女を見つめているしかなかった。
彼女が立ち上がって、走り玄関へと消えていく。ガタンという扉の閉まる音が聞こえても、私は動けずにいて。
その音が途絶えてしばらくしてからやっと私の目からも涙がこぼれた。

酷くみじめで、どうしよう、どうしようと考えても何も良い考えは浮かばないで。
私は一人肩を抱いて、何も考えられなくてパニックになっていた。思考の行きつく先は何もなし。何も浮かばない。
けれどそれも時間が経てば少しずつではあるけれど収まって行く。
どんどん不安にはなっていったけれど、少しずつ冷静にもなっていった。
抱いていた肩から手を離す。じんわりと指の先と肩に痛みが走った。
そのままベッドの端にかけてあった服に袖を通して。
……この部屋に居続ける事は私にはできなかった。

玄関の扉を閉めて、彼女の家を出ると私はただ真っ直ぐに自分の家へと向かって飛んだ。

家に帰った私は、扉を閉めてカーテンも閉めて。
真っ暗な部屋の中で服を脱ぎ捨てるとベッドの上でぐるぐるに巻かれていた掛け布団を手で広げ、
その中にくるまってベッドの隅で震えていた。
慣れた家のベッドなのに、凄く、広く感じた。



1日、そして2日。いくら家中のカーテンを閉めてはいても、
カーテン自体が光を受けて放つ明るさまでは止めることはできないから、どれだけ時間が過ぎたのかはなんとなく分かっていた。
それでもその日湯浴みを終えた私はまだ部屋のベッドの上で膝を抱えて後悔していた。
私は、何がしたいんだろう。自分の意志の弱さを改めて感じさせられる。
彼女にとってはとんでもないことを平然と私は言い放ってしまったのだ。謝らなければいけない。謝らなくては。
……でも行く勇気がない。

けれども、その日の夜。私の家から食べ物と呼べる食べ物はすべて空になってしまい、
私はなんとか決心して家を飛び出した。……でも、出るなら出るでもっと早く出ていれば。
そんな後悔は、やっぱり先には立ってくれない。

天界は見事に晴れであっても、下の世界がそうであるかは全くの別問題だ。
生憎この日は私のスカートと同じくらい黒く厚い雲が空を覆っていて、
月の光さえ隠して真っ黒な空を作り上げていた。今はまだしとしとと降っている雨がいつ激しくなるか分からない程。
でもきっとこんな日なら彼女はこの夜でも家に居るはずだ。きっと。
菓子折りの一つくらいは用意すべきかとは思ったけれど、結局そのまま少しでも早く着けるように私は飛んで行った。
けれど、やっとのことでたどり着いた彼女の家にはあかりが灯ってはいなかった。玄関も、鍵がかかっている。
強めにドアをノックしたけれど、返答は無かった。
……家に着いた時から既に見えては居たけれど、やっぱりそこに視線を向ける。
「屋台が、無い。」
私が地面を蹴って再び空へと戻る頃には、雨脚は少しばかり強まっていた。
遠くで走る稲光が見え、轟音が空気を震わせるのを肌で感じつつ、彼女の家の周りをぐるぐると飛ぶ。
雷の音が近づいてくるたびに雨の勢いが増して、唯一の頼りでもある彼女の歌や屋台の灯りすら、
私の感覚では捉えられないほどになっていく。
一通り、空から捜索したけれど、やはり見つかることはなく、私はまた彼女の家へと出向いた。
でも、やっぱり戻っていない。凄く不安だった。何だか嫌な事が起こるのではないかという強い不安が私の中に広がって行く。
まだ、まだ探して無いところは?そもそも屋台はどこへ向かったんだ?
ふと、地面へ降りて車輪の跡を探してみるが、やはり雨によってそのほとんどがかき消されている。
ただ一点、林の中へと入る丁度その位置だけは、植物に守られていたのかわずかに跡が残っていて、
私はスカートの裾を引っ掴むと木々の間を道を確認しつつ飛んで行った。
この方向は、彼女と最後に飲んだあの広場へと通じる道。何故あの場所へ?

ただでさえ木々のせいで光がわずかにしか届かないのに、この雨だ。
ふと気を抜けば木にぶつかってしまいそうな程暗かったのだけど、
やがて視界の先に見えたあの小さな広場に僅かながらの明るさを見つけて。
私はその光目がけて一直線に飛んで翔けて行った。
「ミスティアさん!」
のれんを片手でめくって中を覗いて。彼女はカウンターの向こうで椅子に座っていた。
「……いらっしゃい。」
「席、良いですか?」
「うん。」

濡れた衣服で悪いとは思ったけれど、体力的にももうヘロヘロだったのでそのまま座らせてもらって。
そんな私にも彼女はお湯割りのお酒をただ無言で作って、差し出した。
それを受け取る。でも、今飲む訳にはいかない。お酒を飲む前に言わなきゃいけないんだ。
頂いたお酒で手のひらを温め直しながら、口を開く。
「この前は貴女の気持ちなんて何も考えず、一方的な断り方をしてしまって。ごめんなさい。」
一息でなんとか言葉を紡ぐ。高鳴る心臓だけど、なんとかそう言いきる事自体はできた。
でも彼女はその言葉にほんの少し表情を変えただけで、私と目を合わせると少ししてから口を開いた。
「飲んで。風邪、引いてほしくないもの。」
手に握っていたものを指さされて。少し気の迷いはあったけれど私は中のお酒を呷った。
前に頂いたお酒よりも何だかずっとキツい強さのお酒だった。
「……うん。私の方も貴女の都合を考えずに一人突っ走っちゃって。一方的に言うだけ言って。
気にいられたかと思ったの。……浮かれてたの。」
いつもの彼女の口から聞けていた明るい声とは全く別の凄く沈んだ声で、
彼女は泣き出しそうな無理をした笑顔でゆっくりと言葉を紡いでいった。
「どうか、ゆるして。」
最後のその一言だけは、消え入りそうな程に弱弱しくて。
言い終えた彼女の唇が震えているのが見ていて辛かった。その言葉はむしろ私が言わなければならない言葉だからだ。
いや、今は見ていて辛いとか考えている場合ではそもそもないんだ。少なくとも今は。私がそんな事では。
「ミスティアさん。」
「おかわり?」
「キス、させてください。もう一度、チャンス……ください。」
私を見ていた彼女の視線が私から離れる。自分がいまどんな身勝手なお願いをしているかなんて
それは重々承知。それでもその言葉の上で、彼女に信用してもらうしかない。
「無理、させたくない。」
「わ、私もミスティアさんの事は好きなんです!」
それでも彼女のリアクションはまるで好転してくれない。
私自身の身勝手が起こしたことだけど、何だかそれで急にさみしさを感じた。
「私、やっぱり嫌われましたか。」
思わず、そう呟いてしまった。

「少なくとも。」
今度は私が彼女をまともに見られなくなっていたのだが、彼女は私がそう言った後少しして口を開いた。
「その一言は、許さないわ。何でこの場所でずっとお店を出していると思ってるのよ。
貴女が嫌いになった?そんな事、私一度も言ってないよ……。」
小さくため息を吐いて、俯いた彼女の目から涙が落ちる。
「信じて、良いの?」
彼女の視線がゆっくりとあがって、そう言った。
私は彼女が与えてくれた最後のチャンスに首を一度縦に振る。
彼女がゆっくり椅子から立ちあがって、カウンターの前から姿を消した。
しばらくして背中から震えた体で抱きつかれて、私はその体をのれんの中へと引き込むと、私の横に座らせて。
彼女の背中を手のひらで支えると、目を閉じていた彼女の唇にそっと唇を重ねた。
彼女の手も私の背中へとまわる。
ぎゅっと抱きしめた彼女の体は雨で冷えた私の体には熱いほどで、
そして思っていたよりもずっとずっと華奢な体で、本当に小さな体だった。
私も目をつぶって。彼女の体温以外に今は何も、感じない。

ややあって、彼女の手が緩む。それを感じ取った私は唇をゆっくりと放した。
その後恐る恐る目を開いた私の目に映ったのはにっこりと笑った彼女の笑顔だった。
「……駄目ね。」
笑顔だったのにそう切り捨てられて、その瞬間はショックで冷や汗が背筋に流れた。
「あぁ、そういう意味じゃないわよ。……あなた見た目以上にびしょぬれなんだもの。
このままだとどうやっても風邪引きそう。とりあえず私の家まで戻るわよ?」
肩をポン、と叩いて彼女が私の額に一度口づけすると、テキパキと屋台を畳み始めた。

不思議と、雨の音が遠のいていて。雷の音もほとんどしなくなって。何だか落ち着いた天気になったのかと勘違いしそうなほど、
私が屋台から一歩外へと踏み出したときには空は静かになっていた。
「手伝ってもらってもいいかな。」
畳み終わって準備ができた彼女にそう声をかけられ急いで彼女の横へと並ぶ。
思えばこの屋台を引く部分は雨にぬれてしまうんだな。あまり私がのんびりしていると彼女まで風邪を引かせる事になってしまう。
私は彼女の歩幅よりぎりぎりせまい範囲で少し速めに屋台を引いて行った。
彼女の方は少し足元が辛そうではあったけれど、目的を理解してくれていたのか文句の声は無かった。

が、まぁしかし。結局屋台を引いたままスピードが出せるなんてのは夢の話で、
確かにこの前よりも早く彼女の家には着いたものの、やはり彼女までびしょ濡れになってしまった。
彼女の家の前に屋台を置いて二人並んで玄関へと入ると、家の中を水浸しにしないために私は彼女を玄関で待つことになった。
先にどんどんと家の奥へ進んでいった彼女がしばらくしてタオルと籠を抱えて帰ってきて。私は頂いた大きなタオルで
髪の毛と露出していた部分の水分を拭いとると、身に付けていた羽衣を籠の中へと入れた。
随分水分を吸っておもくなっていたことが籠に落ちる布の音を通じて伝わってくる。
彼女の方も髪の毛や肌を大きなタオルで簡単に拭うと、すぐに私の手を引いた。

靴を脱いで彼女の部屋へと連れて行かれて。身に付けていたものをどんどんと外して籠の中へと入れていく。
彼女は大きなタオル一枚で全身を隠せていたが、一方の私は流石に大きいタオルとはいえどそれが難しかったので、
下はちょっと濡れてはいるが下着一枚にすると上半身をタオルで覆った。
「生憎、暖炉は無いのよ。」
「タオルさえ頂ければ十分嬉しいですよ。」
「……さ、さむいしベッド行こう?」
彼女に誘われて、ベッドの上に乗っていた掛け布団を二人で分け合って。
その掛け布団はタオルの上からではあったけれど、私たち自体が雨にぬれすぎていたためか、少し寒かった。

二人でタオル越しにくっついてベッドの中で天井を見上げていると彼女がくるりと姿勢を私の方へと変えて。
「寒いね。」
小さな声でそう言った。
「ええ。少し。」
彼女の言わんとした事はなんとなく私にも分かっていた。
彼女の足が私の足へと絡んでくる。少しひんやりとしていて、しっとりとした肌の感触。
「温めてもらっても良いですか?」
恥ずかしいながらも私はそう言った。
彼女の手が布団の下で私のタオルの結び目を解いて、私の指も気がつけば彼女のタオルの結び目を片手で解いていた。
タオルの外れた体がよりくっついて、彼女の体が、私の胸の中に飛び込んでくる。
彼女の胸が、お腹が、腰が、そして足がぴったりと私の体へと張り付いて。
「……冷えてるね。」
お互いに発したその言葉はただ純粋にお互いが感じた事だ。
期待していたよりはお互いちょっと冷えていたようで。
気がつけば二人揃ってくすくす布団の中で笑っていた。
初めて裸を、こんな姿を他人の前に晒しているのにあまり緊張しない。
布団のパワーというものもあるけれど、それは今までの私からしてみればある意味奇跡の一片のようにすら感じる程だった。

お互いに冷えていたとはいえ、そのまま別々でいるより心地良かったこともあって、
ぴったりとしばらく肌を合わせて抱き合っていた。足先の冷えばっかりは流石にどうしようもなくて、お互い擦り合わせて何とか凌いでいた。
しばらくそのまま時間を重ねるうち、上半身の方はお互いになんとかあったかいと感じられる程度には体温が戻ってきていて、
何だか幸せだった。
「また、お願いしてもいいかな。」
彼女が目を閉じ、私に顔を向けて。私は彼女の濡れた後ろ髪を撫でると、そっと枕を手にとって彼女の頭をその枕の上へと移した。
彼女に上から覆いかぶさって、その唇へと顔を下ろす。
「ん……。」
彼女の方が私よりも小さい事もあってか、私はリードしなくてはならないという気が大きくて、
何とか今まで見たり聞いたりしてきた知識を思い出せる限り引っ張り出していた。
とはいえ、実際に抱いたことが無い私にはやはり彼女をどう扱えばいいというのは難しくて。
こうしてみれば仕事の報告書の書き方よりも複雑で、酷く難解な問題だった。頼れるのが聞きかじりの知識しかないのも心もとない原因である。

天界には桃が沢山実っていて、一応天界に住居を構えている私にはそれは見慣れた光景で、
下の世界でではない、こちらの天界での食事の品のひとつとしてもその桃は食べたことはある。
下で食べても、上で食べてもやはり桃は桃で。柔らかな感触と甘さが喉を潤してくれる。
自分の唇をそんな事を考えて触ったことは記憶に全く無いけれど、今こうして触れている彼女の唇は
そんな事を考えさせてしまうほどに柔らかくて、それでいてちょっぴり冷たかった。……どうしてあげればよいものか。
その答えをくれる人物や物はここには存在しない。私自身で考えないといけない。
彼女がどうしてほしいか、都合のよい答えを私は知ることはできないけれど、それならば。
私がされてドキドキするようなことをすれば良い、……のかな?
彼女の目と額にくっついていた髪の毛を指で払って、そのまま頬を指先で撫でる。彼女の肌を冷たく感じると言う事は
少なくとも彼女には私の手がほんの少しだけでも温かく感じてはもらえているはず。
彼女の閉じていた唇がわずかに開いて、唇と唇の隙間から漏れだした彼女のしっとりとした熱い息が私の唇と頬を撫でる。
私は顔の角度を少しずらして少しでも彼女の唇を感じる事ができるようにその唇をまるで食べるかのように貪って行った。
時折私の唇が彼女の舌先に触れる。少しずつ熱を持ってきた唇と違って、彼女の舌はとても熱っぽくて
今触れている彼女のどの場所よりも熱かった。恐る恐る私も舌先をその部位へと伸ばして見て。それまで受動的だった彼女も
私に合わせて舌先を伸ばしてくれた。

経験の無さ故か、たったそれだけの事でも私の心は変な気持ちで支配されるようになっていた。
どこか切なく、でも嬉しく。一言の都合のよい言い方が見つからないけれど、そんな気持ち。
妙な気分の昂りとも言えるかもしれない。
まだ少し寒い布団の中なのに、手のひらにはじっとりと汗をかいて、
自分の心臓が皮膚を通して必死に血を送ろうとしているのが不思議なくらいに良く分かった。

初めてキスをした時、私の口の中はカラカラで、形はキスでも私には感触についての印象なんてあまり無かった。
喉が少しでも潤うそのわずかで、そして案外どうでもよい感覚に恥ずかしながらその時は酔っていたからだ。
今は違う。私の喉はカラカラというわけでもない、彼女だってそうではない。
むしろお互い唇は潤っていて、その隙間からこぼれ出たお互いの唾液が彼女の頬を濡らし、私の指も濡らした。
彼女の声が、彼女の舌の裏側からくぐもって届いてくる。くすぐったそうで、気持ち良さそうで。
今まで仕事で得てきたどんなご褒美よりも生々しくて、でもとても私には嬉しかった。
私はただ彼女の舌を貪るように自分の口の中に導いて。彼女の舌の大きさから厚さ。どこがどんな感触か覚えられそうな程に彼女の舌を楽しんでいた。
……まぁ。それも息の続く限りであったけれど。
鼻で何とか息をしていたものの、何だか胸が苦しくて私は舌を解いて彼女の唇を開放した。
口から吸いこんだ外気が喉の奥を冷やして、吐いた息が彼女と私の唇を未だに結んでいる糸をゆらつかせる。
彼女の突き出された舌がゆっくりと彼女の口の中へ納まって行くのを見ながら、私は彼女の頬を指でぬぐっていた。
「大丈夫?」
そう声をかけたくなるほど、彼女はくったりとしてしまっていて、やや気だるそうな長く大きな息を
肩も動かしながら繰り返していた。その私の問いに対して彼女の口からは返答はなくて。代わりに私の背中にまわされていた彼女の手がとんとん、と背中を叩いた。
一緒に彼女がうっすらと目をあけたまま微笑んで。おそらくは大丈夫、という事なんだろう。
「……続けて。」
小さな声がちょっとしてから口から洩れて。嬉しくて喜ぶ半面、私は焦った。
キス自体もそうだが、私にはこの行為、これからの行為に対しての十分な知識がないのだ。
正直なところ、それこそマニュアルがあれば、って思うほど。

ただその時の私は羞恥心以前に考える力が殆ど無くて、何とかごまかせるような都合のいいどこかの魔法使いのような舌もなく、
気不味いながら、恥ずかしいながら頬を掻きつつも彼女に正直に打ち明けたのである。
「すみません。経験が実は無いものですから。どうしたら良いのかな……どうされたいです?」
そう言った私の言葉には眉ひとつ動かすことなく彼女は耳を傾けてくれていたけれど、
最後の一言まで言った所で彼女の口の端が少し持ちあがった。
「私だって、経験なんてないよ。でも今は貴女のそんな顔をもっと見てみたいかな。」
「……そんな顔って、どんな顔です?」
「頬が緩んで目も潤んで、頬も舌も肌も赤くして。それでいてちょっと楽しそうな、そんな顔。」
……ミスティアさんだって同じような顔してるじゃないか。

彼女が私の背中に手をまわしたまま体を少し回転させたせいで、私はそのまま彼女の横へと崩れおちた。
久しぶりのシーツの上は、彼女の体に比べれば冷たかったけれど、それが気にならなくなる程度には
私たちの体は結構あたたまりはじめていた。
彼女が私の方へと体を向けて、その手を私の首へと伸ばす。
最初は首筋を指先でなぞっていた彼女の指であったが、それがゆっくりと鎖骨まで降りて来て。
「触ってみてもいい?」
すりすりと骨の上をさすりながらそう小さな声で尋ねてきたので、小さく頷いて返しておいた。
一旦離れた彼女の手が、おそるおそるといった感じで私の胸に触れて、ぴったりと包みこんだ。
未だ触れても少し冷たいと感じてしまう足先に比べて、もう手のひらは十分にあったかくてちょっとしっとりとしていた。
しばらく彼女はそのまま私の胸元をじっと見つめていて、弱い力を入れたり緩めたりしながら私の胸で遊んでいた。
「……柔らかいなぁ。」
両手で私の胸をゆっくりと揉みながらそう呟いた彼女は、少し体を下の方へとずり下がると私の胸に頬をくっつけて上目づかいでこちらを見上げた。
何だか子供がおねだりをしているような、そんな表情でじっと私を見つめて。
「御好きなようにしていいですよ?」
私が顎を引いてそういうと、彼女が小さくうなずいた。彼女の視線は私の目から胸へと戻って。
一度大きく深呼吸したかと思うと大きく口を開けてその口を私の胸へとかぶせた。
一瞬噛まれるものかと思ったのだけれど、そうではなくてまるでキスの延長のように、私の肌の上を優しく唇で撫でていた。
やがて彼女の唇が、私の胸の一番高いところで止まって。私の胸の先端部分を口に含んだままひょっこりと彼女が視線をあげてこちらを見る。
その時の私はやや手持無沙汰な手を彼女の後ろへと回し、指で彼女の後ろ髪を梳いていたのだけれど
急に彼女の口の中から伸びてきた熱いかたまりの力強い感触に思わず指を止めた。
少し嬉しそうに彼女が頬の肉をそのまま持ち上げながら、ぐりぐりと彼女の口の中でくわえられた部分が舌先で押しつぶされていく。
一人でする時に自分の胸を弄ることはあれど、じんじんと体の芯に訴えるようなこんな艶めいた感覚は得た事が無くて、
これが一人と二人との違いか等と考えながらもそのちょっとゾクゾクする感覚を楽しんで体で受けていた。
彼女の舌先にまるで対抗しようとするかのように、ずっと舐められていた部分が少しずつ彼女の口の中で硬くなっていく。
でもそうなればそうなるほどに、彼女の舌の動きがより生々しく感じられて、そしてまた硬くなって。
「んふ~」
彼女のどこか抜けた何だか楽しそうな声が鼻から漏れだしている。
私の方はというと呼吸がところどころ止まったりしていた。より敏感になっていた私の胸をまだ更に引っ張り出そうというのか、
彼女が口の中で私の胸を吸って、彼女の口元から小さく湿っぽい音が漏れて私の頭の中へとなだれ込んでくる。
やっぱり、自分の指とは段違いだ。それよりもずっと大きくて、緩やかで。そんな波が体の芯へと響いてくる。
胸のみの刺激でさえ心地良い程だ。彼女が頑張ってくれればひょっとしたら胸だけでもイけてしまうのではないか。
いや、流石に彼女も体力が持たないよね。……だから。

私は彼女の頭の後ろで停止させた手をそっと彼女の肩へと下ろした。
私の胸を吸い続けていた彼女の動きが少しだけ緩んでいくのを胸で感じながら、彼女の肩をつたって、
フリーになっている彼女の手をそっと握る。私はそのまま彼女の手を、未だ弄ってもらえないもう片方の胸へと重ねると、
じっと彼女の目を見つめた。……できたらこれでなんとなく察しては欲しい。流石にお願いするのだけは恥ずかしくて。
私はただ何も言わず、彼女の手をほんの少しだけ胸へと押し込んで。
彼女の舌がゆっくりと止まって、すっと私の胸から口をあげた。
ピンと張ったままの私の胸の先端が、彼女の唇と透明な橋を築いていたが、彼女の頭がすっと横にずれたところでその橋は崩れた。
「こっちもしないとね。ごめんね。」
ちょっと疲れたような声ではあったけれど、彼女のその声に少し恥ずかしさがこみあげてくる。それが私の望みではあったのだけど。
ただ、先ほどと同じように唇で私のもう片方の先端を含んだ割には、もうどこか遠慮したような感覚はなくて、
すぐにぐりぐりと熱い舌の感触が襲ってきた。彼女の手が伸びて、私の濡れた胸をそっとつまんで。
体の中をジンジンと伝わってくる感覚が非常に心地よくて、私は彼女の頭へと手を回すと少しばかり胸へと押しつけていた。
期待だけひたすら膨らませていただけの事もあって、すぐにこちらの胸もジンジンするほどに彼女の口の中で敏感になっていく。
けれども、ただひとつ悲しい事には今すぐイケそうなところには今一歩及んではくれず。
でももうそこまでずっと刺激を与えられ続けた私の頭は、どんどんと私を貪欲にさせて。
さっきまではあれだけ恥ずかしいと感じていたのに、
「もっと……」
そんな声を小さいながらも出して彼女の後ろ頭を撫でていた。
彼女の視線が持ちあがって、良いの?と言わんばかりの目で私を見つめてきたのに頷いて返すと、
彼女の目がすっと閉じて、私の胸に乗せられてゆっくりと撫でていた手に少し力が籠った。
まるで胸の奥まで擦られるかのように私の胸が彼女の胸の中で形を変えていく。日頃自分でここまで揉んでみれば少し痛いくらいの感覚なのに、
今日私がここで受けていた感覚にはそんな感覚はまるで感じなかった。むしろ、酷く甘くて私の体に熱く響いてくる。
胸へと吸いついていた唇もきゅっとすぼまって、私の熱く尖った胸の先を本当に潰そうかというように唇の間に挟んでぐりぐりと責め続けた。
それに加わる舌の感触と、少しだけ隙間の開いた彼女の口から洩れる少し粘着質な音は
まるで耳を直接いじられているような心地さえ私に感じさせる。

体に羽を生やしたような少しフワフワとした感覚が体を襲い始める。
一生懸命私の為に頑張ってくれている彼女には少し悪い気もしたけれど、
私は彼女の体へと自分の足を絡めながらその感覚を我慢する事もなくただそのままに受けて。
やがてぴくりぴくりと彼女の体を抱いたまま自分の体を跳ね付かせた。
ただ単純な気持ち良さのその大きさだけを求めるのなら、自分自身でしたほうがそれだけは上だったであろうが、
心地良さだけは相手がこうしている今のこれには勝てるはずがない。味を占めさせるほどの心地良さはこの体で感じていて本当に幸せだと感じた。

しばらく彼女の体を私の体へと押しつけながらその感覚に酔いしれていたけれど、
私はずっと彼女の顔をずっと押し付けっぱなしだった事に気づいて慌てて彼女の頭を解放すると急いで謝った。
「その、ごめんなさい。」
彼女の顔が私の胸から持ちあがって、少し疲れたような顔ではあったけれどくすくすと笑った。
「私の慣れない舌で喜んでもらえるんだもの。むしろお礼をしたいくらい。楽しいし。」
彼女の体が上へとずりあがってきて、私の唇に軽くちょんと口づけした。
でもやっぱりずっと口でするのは疲れたんだろう。漏れだす息はやっぱり息苦しそうだった。
背中へと手を回してしばらくさすって、彼女の息がある程度まで落ちつくのをまって私は口を開いた。
「では、次は私が。」
少々狭い……彼女に言ったら怒られるな。ベッドの上を少しずつ体をずらしていって、彼女の胸の前まで顔を持って行って。
きっとこれも彼女に言っていい言葉ではないのだろうけれど、少女らしい体付き。
私の掌に完全にすっぽりと納まってしまうほどで。手を這わせて少し擦り動かして見ても、
その手のひらに主張する事のない、埋まった彼女の乳首。……昔は私の胸もこんな風だったな。
「触られて、痛い事なんかは無いです?」
胸の先端部を擦るように指先でゆっくり撫でながら、顔をあげて彼女に尋ねた。
彼女はじっと私の事を見ていたようですぐに視線が合って。少し恥ずかしそうに彼女が笑った。
「もう痛くはないよ。でもその、ちょっと敏感かな。そこは。」
私が昔こんなだったころは、まだ痛かったりしたものなのだけど、その心配がないのなら私も安心だ。

ぐりぐりと、胸に押しつけた手のひらを押しこむように揉んでみれば、
胸の脇にもちらりと見える肋骨が、やわらかな水風船程の揉み心地の肌の下にしっかりと延びているのが分かる。
少しだけ胸から手を逸らして、腋のあたりの肋骨もぐりぐりと指先で撫でまわしてみると、流石にくすぐったいのか彼女が身をよじった。
ちょっと不謹慎だけど、他人の体で遊ぶ事も割と楽しい事だと私はなんとなく感じた。
頬をぴったりと彼女の胸の間にくっつけてみる。
胸の間ということもあってか、やはりそこだけはちょっと骨っぽくて、でもそれゆえにぴったりと肌がくっついた。
ピコピコと肌の奥が跳ねて、この下で私とおなじように彼女の心臓が動いているのを教えてくれる。
まぁ感じなかったら感じなかったでそれは大問題な訳だけど。にしてはちょっと鼓動が早いな。
落ち着いた様子に見えるのにどんどん早くなっているようにすら思える。
ひょい、と顔を少しだけあげて彼女を見てみれば真赤な顔をしてこちらを見ていた。
「どうかされました?」
「あ、や。私胸おっきくないからさ、恥ずかしくて。」
「恥ずかしくはないですよ。皆がみんなおなじ胸してたら私はちょっと嫌ですよ?」
「それは、確かにそうなんだけどね。」
気にはしているんだな。やっぱり。あまり深く話を引っ張るべきではないようだ。
そう考えて、先ほど揉んだおかげかほんのちょっとばかり周りの肉ごと一緒に盛り上がっている彼女の先端へと舌先を伸ばした。
「痛っ」
敏感だと言っていたから、ちょっと可愛い声が聞こえるんじゃないかと期待していたのに、
急に聞こえたその言葉はさっきの言葉も合わせて私の頭の中を混乱させた。
「え?」
「舌、噛んじゃって。気にしないで。」
ひょっとしたら喋ろうとしたところだったのかもしれなくて、ちょっと申し訳ない気持ちになった。
彼女が開いていた口を閉じて少し辛そうな顔をして。目は何とか笑っているけれど、やっぱり痛かったんだろうな。
でも、下から見上げるそんな顔も舌先を少し動かせばふるふると綻んで行くところは
何とも分かりやすくて申し訳ない等と思っている半面で嬉しく感じていた。
彼女は口に胸の先っぽをそのまま含んでいたけれど、私はそうはせず、……というよりするにはちょっと小さいので
彼女の目をじっと見上げつつ少し出した舌先で下から上へと持ち上げるように舐めていた。
背中にまわした腕で時折跳ねる彼女の体を固定して、舌先で遊ぶ。酷く単純な行為ではあれど、
彼女が潤んだ眼で口を閉ざしたまま悶えるような顔をしてくれるのは私には嬉しいもので。
舌を這わせる度に少しずつぴくりぴくりと上下する頬を眺めながら、私はもう片方の胸へも同じように舌先を伸ばした。

先ほどまで舐めていた部分へと手を這わせてみれば出きれない彼女の乳首が頑張って周りの肉を持ち上げていて、
ぽっこりとした感触が手の中でぷるぷると揺れていた。やっぱりこれはこれで少し苦しそうだ。
私がいま舌先を伸ばしたこっちだって、やっぱり同じように舐めただけじゃ出きれないでいる。
……周りの肉を舌でなぞってこの反応なら、直接舌で舐めたらどんな反応をしてくれるのだろうか。
私と同じように気持ちいいのかな?それとも敏感すぎるなら少し痛いだろうか。
でも例え後者の可能性があったとしても、試してみたい。
私は舌の上でぽっこりと盛り上がったその部位を唇の先に包んで軽く吸って見た。
固定しているはずの彼女の体が少し跳ねてベッドの上に投げ出されていた彼女の腕がくるりと私の頭を包んだ。
少し力の抜けたような表情で、潤んでいた目も閉じてはいたが、痛そうではないようなのでそのまま安心してまた吸ってみる。
明らかにさっきまでとは声色の違う、少しくぐもった声が鼻から抜けて彼女から届いてきた。
背中を支えていた手を下の方へとおろして、もじもじと動く彼女の下半身を支えながら、ゆっくりと吸い続けていると
「ひぁぁ……」
気の抜けた声と一緒に彼女の口が開いて、同時に私の舌の上にぽこりと硬い感触がこぼれでた。
柔らかかった周りの肉に比べてほんのりと硬いそれを舌先に乗せて、できるだけゆっくりと軽く動かして彼女の様子を探る。
口の中で左右に揺れると同時に私の頭にまわされていた腕が震え、お料理をするからか短くは切りそろえられた爪先ではあったけれど、
それがチクチクと私の頬に埋まっていった。それがちょっぴり痛くても、彼女の口元から出る長くて震えた湿っぽい息は
その爪の痛み以上に私にとってはとても嬉しい情報で、痛がっていないというのは何よりも吉報だった。

頭が半端に彼女の腕で固定されているおかげで、彼女がどんな表情をしているかまでは今は分からない。でもどうも私の方は見ている様子は無くて、
ちょっとずれたところに顔が向いているというのは私にはわかった。もう片方の胸も、と思いなんとか頭を横へとずらしてみる。
無理に動こうとして唇と触れたからか、頭を締める力は一瞬強まったけれど、もう片方の胸までは何とかたどり着くことはできた。
彼女の動きを模倣するかのように今度は今まで舐めていた方へ指先を伸ばして、……思いとどまった。
そのまま指先を口にくわえて、唾液で濡らして。直接指で触れるよりはこちらの方が痛くはないだろう。
私たちを照らす分の光はあまり無かったけれど、それ自身がきれいな真珠のように小さな山の上にちょんと乗っているそれを見るのは
経験の浅さが相まっての事なのか、彼女の恥ずかしそうな震える声と合わせて妙に艶っぽく見えた。
そっと乗せた指の腹でゆっくりと転がして見て彼女の腕が先ほどと同じ程度に震えるのを確認すると、
私はあらためて目の前の方へと口をつけた。
何だかさっきまで弄っていた方を出そうとしたときよりも、そのぽっこりと膨れたそれは余計に硬くなっている気がした。
ここで引っかかっているんだなというのが分かるほど、周りの皮が隆起していて私は穴の周りまで唾液を行きわたらせると
ゆっくりと舌先でその皮を剥がしにかかた。けれど、やっぱり頑固なのか表面で引っかかっている皮は滑るだけで、
私の舌先では想定通り事は進んでくれず、結局唇を密着させるとさっきと同じように吸い出しにかかった。
でも、先ほどと同じくらいに吸っては見てもこちらは出てくれる様子がなくて。困っているところで頭の上から声が響いた。
「痛い……痛いよぉ。」
泣き声が少し混じった、でも甘い声で。
「突っ張ってると痛いから早く出すなら出してよぉ。」
続いてそんな声が少しだけ小さい声で続いた。言葉が終わるのと同じくらいに彼女の体がくねるように動いて
私の腰や足に彼女の足が絡み付いてくる。私の足も巻き込んでまでもじもじとするその動きを感じながら、私はいっそのことと思い
ひと思いに吸えるだけの強い力で思いっきり吸いだした。とたんに彼女の腕の力が一気に強まって
私の頭をぎゅうぎゅうと締め付けるのと同時に、ぽこり、とこちらも何とか顔をだしてくれた。
彼女の口から満足したようなため息が漏れて。待ちくたびれたと言わんばかりの長い息が彼女の口からさらに続いて漏れた。
ゆっくりと腕の力が抜けて行くのを待って、濡れた舌先を押しあててみる。
私の舌先よりも何倍も硬いそれは主張したい気持ちは激しいのか私の舌を避けるかのように右へ左へとぐりぐり方向を変える。
「うぅ」
いつの間にか長かった息も段々と短い息に変わってきていて、
今は私の方へと顔を向けているのか、私の頭に当たる彼女の息がとても熱かった。
さっきよりも余計に絡み付いて離れない彼女の足の付け根がじっとりとした感触を私の腿に訴えて。
口でこそ彼女もその後は言わなかったけれど、おねだりされているようなそんな感覚は私の気持ちをまた少しずつ昂らせていった。
「イっても、良い?」
そんな困惑した小さな声が聞こえて、私は口に銜えたまま彼女に分かる程度に小さくうなずいた。
元より先ほど一人勝手に達している手前私にはそれを断る理由なんてあるわけがないのだし、
そうでなくても断ることなんてしない。それに、それは我慢できるものでもないとは思うし。
舐めまわしていた舌を休めるために、ぷりぷりとしているそれを解放して唇で挟みこむ。
腕がまた再びきゅっと締まるのを確認すると、私は唇と指の腹でそれを押しつぶした。
彼女の息がすごく苦しそうに詰まって、無音の世界でベッドが揺れる音と掛け布団が擦れる音が響いた。
彼女の肌から伝わってくる心臓の鼓動が、まるで大雨の中に立っているかのように早く激しく私の頬を叩く。
まるで万力のように腕が締まるから、本当にそれは良く分かった。……そして息が苦しい。
私を抱えこんだままピクピクと跳ねる彼女の背中をゆっくりと撫でながら、詰まった息が少しずつ元の呼吸に戻って行くのを待った。
彼女の腕の力が弱まったところで、私は一気に顔を動かすと胸いっぱいに息を吸い込んだ。
「ごめん。」
少ししてそんな声をかけられて、一気に腕の力が抜けた。
彼女は解いた腕で今度は目を覆い隠していたが、下の方ではまだ足が私に絡み付いていた。
「上手く出来たのでしょうか。」
「気持ち良かったよ。……でも、もっとしたいよ。」
彼女の体がまだ続きをと訴えているのは分かっている。私だって彼女に自分自身のそれを訴えたい位ではあったからだ。
「でもどうしたものでしょうか。」

お互いに大切なところを弄り合う。それだけでも私にはどこか魅力的ではあったけれど、それ以上に画期的な方法というのが思いつかない。
彼女の頭の中にどんな方法があるのかも、知っている訳ではないし。自分の知識の無さをこれ程までに
恨めしく感じるのは何だか久しぶりだ。
「そう言えば……。」
彼女の体がずるずるとベッドの上を這って、ベッドの下から薬箱を取り出した。私がこの前もらった薬が入っていた薬箱。
ひ、避妊具か!そう思ったけれど、女同士だから必要というわけでもないし。
彼女が箱をあけて奥の方にあった小さな透明な小瓶を取り出すと私にそのラベルを向けた。
「試供品?」
ただ一言、試供品とだけ書いてあって私にはその薬が何なのかさっぱりわからなかった。
「いつだったか、ウナギのお代にこの薬箱一式は貰ったんだけどね。」
「じゃあこれ、新種の酔い止めですか?」
「いや、その。うーん説明しづらい。説明では生えるらしいんだよ。こう、にょきにょきと。」
「きのこ?」
彼女が顔を赤くして口ごもる。
「いや、キノコじゃなくて、そのさ。男の人にしかない、あれ。」
彼女が私から目を逸らして恥ずかしそうにそう言った。私もその言葉を聞いて口をつぐんで。
「や、やめとこうか。私自身使ったことないから、どんな副作用があるかもわからないんだよ。試供品だし。」

たぶんきっとそれは、彼女の理性が支えた譲歩だったのだろうけれど、私は顔が熱くなるのを感じながらそんな問いに
「た、試してみます?試供品な訳ですから。」
割とトンチンカンな返答をしていた。……期待をしていなかったといえば、嘘になるけど。
ただお互いが女性では無くて、何かしらの区別がついたほうが、勝手が分からなくても何とか少しは動けそうな気がして、
そんな気持ちが私の喉からそういう事を言わせたのだ。
瓶を握ったまま、ごくりと彼女の喉が動くのが見えて、二人ともじっと瓶を見つめる。
今の問題は、ただひとつ。

「どっちが、飲む?」

彼女が困惑し、緊張した声でそう確認するように言った。
薬であるから、お菓子のように半分半分で分けるなんて事はできないし、できたところでそれでは何だか意味がない気がして。
お互いにちらりちらりと視線を交わすものの、お互いが焦ってしまって上手く話も纏める事ができず。
だから私は意を決して、彼女の手を握ると一度深呼吸してから改めて口を開いた。
「わ、私は貴女の唇の初めてを奪ってしまったんですから、私の純潔はその……。」
……途中まで。最後は言いづらくて。
なんとなく前提がおかしいような気がするのは自分でも分かっているのだけど、
私自身に生やしてこんな小さな女の子に差し込むような真似をするよりは断然にこちらの方がマシなのではないかと思った。
でも……うぅ、恥ずかしい。

そんな言葉を聞いた彼女の方は、一旦口を閉じてしばらく考えていたようであったが、私にしっかりと目を合わせると口を開いた。
「良いの?」
「ええ。」
彼女の喉がまた一度鳴り、ガラスの擦れる音がしてガラスの小瓶から蓋が外れる。
腐っているような意味での危険な香りというのはなかったけれど、どこか不安にさせるようなそんな匂いがちょっとだけ部屋に広まった。
彼女の喉が上下して、みるみるうちに瓶の中身が彼女の中へと消えていく。
全部飲みほし終わって彼女が瓶と薬箱を床へと置くと彼女は座ったまま少しずつ下半身をもじもじさせはじめた。
「ご、ごめん。かぶってて。」
急に掛け布団を顔に引っかけられて、戸惑う私を余所に
「あ……ぅ。うぅん。」
苦しそうな、それでいてちょっと艶っぽい声と息が布団越しに届いた。
「大丈夫?」
「……は、生えた。」
私の顔に布団をかぶせていた力がおさまって、私は恐る恐る布団をゆっくり顔から離した。
もしかしたらボーイッシュに変身した彼女がそこにはいるかもしれないとも思いながらゆっくりと布団をとって顔を確認してみても、
顔が赤いだけでいつも通りの彼女の顔がそこにはあって、私は安心した。
そーっと視線を下ろして、彼女の体を確認する。相変わらずぷっくりと胸の先を腫らしていたけれど、
彼女の股の間にはちょっとかわいい男の子のそれが生えていた。何だかいつか本で見たとおりだな。
「わ、笑わないでよ。」
「ご、ごめんなさい。」
笑っていたつもりはないのだけど。何だか禍々しいものがそこにあるような気がしていたのだが、そうではなかった事はちょっと安心ではあった。
胸がこんなに女の子なのに下半身には男の子のそれが生えているというのはアンバランスではあったけれど、
恥ずかしそうにモジモジと太ももを擦り合わせている姿は可愛いという以外に言葉が見つからなかった。
「が、頑張りましょうか。」
焦りが都合の良さそうな言葉を探すのを邪魔して、変な掛け声だとは思ったけれど、私はそう言って彼女の体を自分の元へと引き寄せた。
ここからは、宴会や日頃得てきた数少ない知識を総動員しないと。

彼女の背中を自分の胸に抱いて、私の足の間に彼女を座らせる。
彼女に言えば怒られるだろうが、彼女の肩から顔を出して覗いてみれば、
胸で視界が遮られることなくおへそからその下に生えた物までしっかりと見降ろすことができた。
えーっと、まずは。皮、剥かないといけないんだっけ。
彼女の胸がそうであったように、ほんの少しだけ皮を被っているそれを見ながら私はまずそう判断を下した。
彼女の太ももの上に手を下ろして、そこからゆっくりと手を這わせる。
時折ぴくりと手の中で動いて、妙なぬくもりが伝わってくる。ただ話には硬いって聞いていたんだけどな。
思ったよりずっとずっと柔らかい。くにくに動くし。
「あ、あのぅ衣玖さん?」
「あぁ、はい。何でしょうか。」
「そんなにいじられると……。」
い、痛かったかな?そう思って持っていた手をずらして、表面をさすった。
何気ない行動だったつもりだけどそんな事をしているとどんどんと脈動を始めて、
私が手を止めたときには少しだけ大きさを増してピンと上を向いてしまっていた。なるほどこれならちょっと硬い。
ただ、やっぱり胸と一緒で皮だけは、ほんの少しだけ被っていた皮だけは頑固にもそこに居座っていた。
「痛くないですか?」
「皮の部分はピリピリするけど、きもちいいよぉぉ」
痛くはないんだな。
「皮、剥きますけどよろしいですか?」
「うん、お願い。」
彼女の手が、股に生えたそれを掴む私の手と太ももに添えられる。
私は皮の部分を包むように握ると、ゆっくりと根元の方へと皮をおろしていった。
「い、痛い。」
くぐもった苦しそうな声が彼女の口から響いて、慌てて手を止める。
彼女は大丈夫、とはいいながら首を振ったけれど、私にはそれをそのまま見過ごすことはできなかった。
一旦彼女のそれから手を放すと彼女の体を自分の方へと向けた。
きっと皮の部分が少し乾いているから、余計に神経を過敏にさせて、剥けにくくも痛くもしているんだろう。
彼女の胸の一件もあってか私はそう思い、彼女をベッドの端にもたれかけさせると、足を伸ばして座らせた。
乾いていて駄目なら、胸と同様濡らすまで。ただ相手は未知のものではあるけれど。

私はベッドに寝そべって、彼女の股の間に体を割り込ませると、股の間で苦しそうに時折脈動するそれの根元をそっと握った。
こうしてみれば改めて分かるけれど、独特のにおいがあるんだな。
何だか考える力を奪ってしまいそうなどこかクラクラとさせる匂い。
それに、視線を外すことをできなくさせる、そんな匂い。
「では、失礼して。」
一度深呼吸すると、少し大きめに口を開けて、先っぽをぱくりと口の中に取り込んだ。
とたんに彼女の腰と体が跳ねて、私の口の奥までずるりとそれが侵入しかけたが、それをなんとか堪える。
「あ、あつくてぬるぬるするよぉ。」
両腕で自分の肩をがっちりと抱きながら、私が唾液を馴染ませるために舌を這わせる度に
彼女が目をぎゅっと閉じたまま体をくねらせる。開いて貰った太ももも私の頭を軽く挟んで
まるで私の頬を撫でるようにすりすりと動いていた。
その表情が何とも気持ち良さそうで、私から彼女に生やすようにお願いしておきながらも、
彼女の見せるそんな表情はとてもうらやましい事のように私は感じた。

彼女自身の汗なのか、それともこれ自体の味なのか。舌先で舐めていたこれは、
ほんの少しだけしょっぱくて、それでいて熱かった。最初口の中に入れたときよりも何だか大きさも少しではあるが大きくなったような気もする。
満遍なく慣らしたころには彼女の太ももはじっとりと汗に濡れていて、未だに両腕で肩を抱いたまま肩を上下させて彼女は息をしていた。
彼女にじっと視線を送って、彼女もそれに気づいてか私に視線を合わせて小さくうなずいたので
私は彼女のそれを口に含んだまま、舌先でゆっくりと皮を剥がしていった。
最初に手で剥こうとしたときよりはすんなりと皮が剥げていく。
彼女の体は私の頭をきつく挟んだままもじもじと左右に揺れて私の頭を揺らして。
最後は皮自体が引っ張り合ったのか、私が舌先で送り出すまでもなく、自然に動いて剥げて行った。
一応頭の中での知識によると、この状態でこれは準備完了のはずだ。

彼女の太ももから力が抜けて行くのをまって、刺激を与えないように彼女のそれを口から引き抜いた。
口の中でどうにかしてしまったのか、口から引き抜いた時にはそれは何だか咽かえるような強い匂いを放っていて
彼女の蕩けた表情と相まってとても淫らなものに私は思えた。
ぴくりぴくりと、私の口が離れても時たま上下して、何だか物欲しそうにしているそれを置いて体を起こす。
彼女が落ち着こうとしているのか目元を手で拭っているのをいい事に、私は自分の股の間へとそっと手を伸ばした。
……うん。一応濡れているから大丈夫なはず。
それだけ確認して、彼女が手をどけるよりも早く股の間から手を引き抜いた。
すっかり眼尻を落として蕩けた表情になっている彼女の手を引いて、ベッドの真ん中まで導くと私は彼女に声をかけた。
「私の、いただいて貰えますか?」
少しだけ間があったけれど、彼女が頷いて私の肩に手をかけゆっくりとベッドの上へと寝かせて。
私が軽く膝を立てると、彼女がその足を持ち上げて、足の間へと割って入って行った。
「とっちゃうよ?」
私の下着に指を這わせて彼女がそう呟いて。私が何かを返すまでも無く私の下着に割って入った指は下着をするりと抜き去ってしまった。
後ろ手に彼女がどこかへとその下着を置いた。
「良いかな?」
小さな彼女の声が部屋の中に響く。
「お願いします。」
自分で頼んでおきながら、私の声は少し震えていた。その言葉にぴったりと濡れたあたたかい感触が私の入口と重なって、私は思わず息を飲んだ。
ぐっと押しあてる力が強くなって、いよいよと思った所で、それが跳ねて私の敏感な部分の上を削る様に滑って行った。
「あ、焦っちゃって。」
彼女がちょっとだけ裏返った声でそう告げて再び入口に押し当てると、今度は少しずつそれが私の中へと埋まっていった。

初めては痛い。そういうのは事前の前知識として聞いていたことであったが、それは想像していたよりもずっとずっと痛かった。
何だか紙やすりで体の中を削られているような気がする程で。
さっきまで期待していたのに、どこか恐怖心が湧いて、怖いという気持ちに押されつつも私は何とかそれに耐えていた。
彼女のゆっくりと腰をすすめる動きがとまって、少しだけ目を開ける。
心配そうな顔が私の足の間から見えて私はどこか申し訳なかった。
ただ彼女は何も言わず、私がお腹の上でぎゅっと握っていた拳を手で包むとゆっくりと体を奥へ奥へと進めていった。
私も手を開いて彼女の手を握り直して。……痛さはちっとも変ってはくれなかったけれど、怖さはお陰で少し減った。
私はそれがどこまで私の中に入りこんでくるのか分からなかったけれど、しばらくして彼女の太ももや足のつけねが体に当たったのを感じて
ここまでか、と少しばかり安心した。私の中もそれ以上に奥というのはなくて。というか一番奥をほんの少し押されているような感覚がある。
彼女の動きが止まって、私の太ももあたりを撫で始めると彼女がここまできてやっと口を開いた。
「辛いならやめておこうか?無理して今日する必要はないよ?」
私をいたわっての言葉ではあって、嬉しい事は嬉しい事だったのだけど一方でそれはちょっと残酷な言葉にも私は聞こえた。
そもそもの目的が、キスの一件のお詫びも含めての彼女に喜んでもらうがための事。
第一今日だって彼女にとってのキスがそうであったように、私にとっても大切な日だもの。
また後日になんて事にはしたくなかった。できるなら今日、今しか。

首を振って彼女の誘いを断った。
「じゃあ、ゆっくりと動くけど良いかな?」
「……うん。」
言葉のやりとりをしている内にか、腰を止めている間に私の血で少しは滑りやすくなったようで、
引き抜いて行く時はややすんなりと彼女の腰が引いて行った。
太い部分が抜けそうなところまで戻って、そこからまた彼女の腰が進んでくる。
さっきまで私の顔を見て申し訳なさそうな顔をしていた割には、割と楽しんでもらえているようで、
ぴくぴくと跳ねる体やゾクゾクとさせた表情は私にとっても嬉しかった。
太ももを支えていた彼女の腕が動いて、私にとっての一番敏感な部分へとその指を重ねて。
腰の動きと同じくゆっくりではあるけれど、そこを揉まれ指先でつぶされる感触は
痛みの大半を忘れさせてくれるほど痺れるような感覚を私の体に走らせた。自分の指じゃないから余計にそう感じさせたのかもしれない。
「良かった。そういう表情の方が私も嬉しいから。」
彼女がそう漏らして。ほんの少しだけ彼女の動きが早まったように感じた。
ズキズキとしていた体の中の痛みも、その手の動きによってどちらかというとジンジンとした感じのものに代わり耐え易くなった頃、
私は体を起こして彼女の体に抱き付かせてもらった。
彼女の汗ばんだ首、少し震えた息。くぐもった声。
「い、衣玖さん。息がくすぐったいよ。」
首元に顔をのせていたらそんな事を言われた。でも、そう言われても私はその位置から動きたくなかった。
お股は痛くても、こうしているのが心地よくて。反対側も向きたくないし、離れるのも嫌だ。
少しだけ顔を動かして息があまりかからないようにして、それで我慢してもらう事にした。
体を起こしたおかげか、私の敏感な部分を弄んでいた指は彼女自身が私と彼女の体を支えるためにベッドの上へと行ってしまったため
無くなってしまったけれど、抱きついたおかげもあってか腰を進める度に一緒に巻き込まれるように擦れていくその感覚だけで
割と痛みも消えて満足できるほどにはなっていた。痛みが完全に消えたわけじゃないけれど、体は少しずつ昂って行く。
初めての感覚だった。

不意に彼女の動きが止まって。何が起きたのかと思って、うっすらと目をあけて彼女の方へと視線をあげると、彼女は必死そうに何かを堪えていた。
「ご、ごめん。何だかもう我慢できそうにない。動いたらもう、何か出ちゃいそうなんだけど。」
辛そうな声ではあったけれど、それは私にとっては嬉しい情報だった。楽しんでもらえているんだ。
私は彼女の背中を撫でおろしながら耳元で口を開いた。
「もう痛くないですから、好きなように動いて。早くてもいいから、好きなように楽しんで。」
痛くないというのはウソだけど。あとの事は私が本当に思っている事だ。
「が、我慢できないよ?良い、良いんだね?」
震えた声でそう言われて、抱きついたまま頷いてそう返すと彼女の腰が一気に進んで私の一番奥を叩いた。
ガクガクと揺れる彼女の腰が私のお腹の中をかき交ぜて、出たり入ったりするたびに酷く粘着質なにちゃにちゃという音が、
繋がっているところから小さく響いてきた。
「うぅ……はぅぅ……。」
激しい動きになってから常に聞こえるようになった彼女の酷く弱弱しい漏れだす声が私の頭の中を溶かそうとするかのように響いてくる。
その激しい動きで巻き込まれてぐりぐりと彼女の体に押し潰される敏感な部分が、追い打ちをかけるように頭の中をぐちゃぐちゃに混ぜて行く。
「も、もうだめ!」
彼女がそう叫んで、彼女の体がぐっと私の体に乗ってそれを押しこんで。
私の中に埋まっているそれが彼女の体と一緒に上下に跳ねあがって、私の中を暴れて。
ほんの少ししてから体の一番奥を叩くかのように、脈動とともに熱いものが流れ込んでくるのを感じた。
勢いの良いその流れがまるで打ち付けるかのように体の奥深くで放たれている。それを感じることが、
まるで彼女に深く愛されているようなそんな感覚を私に与えて、痛みを忘れてしまうほどに嬉しく。
耐えがたい気持ち良さを彼女から貰いながら、私も我慢ができなくなってぎゅっと彼女に強く抱きついた。
彼女の体が跳ねるのと同じように私の体も跳ねあがって。私の中で熱いものを出し続けるそれの勢いはなかなか衰えず、
耐えきれなくなった彼女の体重が完全にかかってくるのも感じながらも、私は足まで彼女を抱いてその感覚を楽しんでいた。
彼女が私の胸元に顔をうずめて。感覚に酔ってくれているのか、人差し指を銜えて目を閉じて。
ぴくりぴくりと未だ続く脈動に合わせて体が震えていたが、上から見下ろす彼女のそんな様子が愛おしくて、
片腕ではまだ彼女の背中を抱いたままだったけれどもう片手で彼女の頭を撫でていた。
さっきまでは何だか頼りあるような感じだったのにこうするとまるで可愛い子供のようで。

私の中で吐き出し続けていたそれの勢いが衰え止んで、彼女の動きもとまって。
それでもたまにぴくりと彼女が震えたりしていたが、しばらくして彼女が長い溜息を吐いた。
「ありがと。」
酷く疲れて眠たそうな声でそう呟いた彼女に頭を撫でて返して。
彼女が私の上から転がる様に降りて私の横に仰向けになって転がった。
ずるりと引き抜かれる感覚はちょっとゾクゾクするものだったけれど、何だか熱い杭を抜かれたおかげで
注がれたものがゆっくりと逆流してきているような感覚があって。
「あの……シーツ汚しちゃうかも。」
「いいよ、替え位はあるから。」
そう言ってこっちを見ながら力無く眼を閉じたまま彼女が笑った。
そんな彼女にかけ布団をかけようとしてふと思いとどまる。
股もとでぐったりとしてしまったそれは、白と赤が混じってぐちゃぐちゃになっているのだ。
あからさまに汚れると分かっていてかけるのはどこか忍び無くて。
私は体を下にずらしてもう一度彼女の足の間へと割って入った。
「ふぇ?」
変な声をあげる彼女を余所に、私は彼女の体へと舌を這わせる。
タオルがそこにあるからそれで拭う事も考えたけれど、たぶんここはこれで擦ると痛いだろう。ただでさえ真赤になっているのに。
少なくとも私の赤と彼女の白さえなめとってしまえば、とりあえずシミになる部分は減るだろう。
ちょっと苦いな、とはおもいつつも舌を伸ばして私の中でずっと暴れていたその子を口の中に含む。
唇と舌の先で汚れてしまった部分を拭うように、ゆっくりと舐めとっていると彼女のそれがまた口の中で大きくなって。
「そ、そんな体力もう無いよぉ」
彼女が泣き声のようにそんな事を呟いた。それを言えば私だって無い。ただ、綺麗にしておきたいってだけなんだもの。
でも流石に大きくしたままじゃ寝れない……か。
「動かないでいいですから、そのままゆったりしていてください。我慢もしなくていいですから。」
溜息のような声が彼女から洩れて。とりあえずは了承としてそれを私は受け取った。

たまには口から引き抜いて、それの周りの彼女の太ももやお腹のあたりも舌でなめとりながら、また口に含んで。
おそらくはここから出ていたのであろうと言う場所から少しずつ苦くてどろりとしたものが未だに少しずつあふれているのが分かる。
まだ中に残っているのだろうか。そう思って吸いだしてみれば、思ったよりもたくさんの量が口の中にびゅるびゅるとあふれてきた。
「ま、また来ちゃう。」
彼女が震えながらそう言って私の頭に手を這わせた。
私は口の中に溜まってしまったものを一旦喉の奥へと流しこみながら、噴き出し終わったその部分を舌先でぐりぐりと舐めとっていて。
「ご、ごめんよぉお」
彼女が急に声をあげて私の頭をちょっと強めにつかんだかと思うと彼女の体と口の中のそれが同時に跳ねた。
掴まれたおかげで喉の奥まで突っ込まれたそれが跳ねて、直接喉にかけられるのが苦しくて、思わず涙が目に溜まる。
でもそれでも見上げて見える彼女の顔が気持ち良さそうではあったので、何とか我慢してそれに耐えていた。
流石に悪いとは思ったのか跳ねる中で彼女の手もすぐ緩んで、私の頭を開放して。
少しせき込みながらも私は口の中で放たれるそれを受け続けた。流石に2回目とあってか量はそこまででもない。
脈動だってすぐ止まって、私の口の中でそれもまたぐったりとしてしまった。
一度頬に力を入れて、まだ中に残っている最後のものを吸いだして、口を引き抜く。
……よし、なんとか綺麗にはなった。
大量に口の中に残ったものをなんとか喉の奥に流しこんで、溜息を吐く。
なんとも謝りたそうなそんな申し訳なさそうな顔で見つめる彼女の横まで体を再び移動させて。
「寝ましょうか。」
そう言って改めて自分と彼女に再び布団をかけた。
やっぱりその布団は私には小さくて、私は布団の中で丸まると彼女に寄り添ってそのまま目を閉じた。


長い間行為に及んでいたような気がするのに、二人とも起きたのは朝日が昇ってからそこまで経っていない頃。
私たちは寝がえりを打つたびに苦悶の声を漏らしていた。彼女は腰が少し痛む様で、私はお尻がちょっと痛くて。
でも看病する人が誰かいるわけでもないので、なんとか二人して起きてベッドに並んで座る。
彼女の股の間からはすっかりと生えていたものは消えてしまっていた。
「あー、やっちゃった。」
彼女が部屋の中を見て呟く。
何の事だと思い、私も部屋の中を見てなんとなくそれが何かに気づいた。
「衣玖さんの服、干し忘れてる。」
すっかり籠の中で一晩放置してしまったそれは、もちろんのこと取り出して見てもぐっしょりしていて、
とても着られる様子が無かった。幸い無事なのは、ベッドの中で放置されていた私の下着だけ。こちらはシーツと布団に水分を奪われたのか、
感触はそこまで良いとは言えなくてもちゃんと乾いていた。
「急いで干してくるよ。天気もいいからさ。」
確かに今日は快晴で、雲もほとんど出ていないようで。昨日の雨が嘘のようだ。

お昼頃になって、彼女がお昼ごはんといいながらお盆を抱えて部屋に戻ってきた。
当たり前というか彼女には服の替えがあるから、彼女はすでに着替え終えていて、私だけがベッドの上で下着一枚で布団にくるまっていた。
「お昼過ぎには乾くと思うよー。風も少しあるみたいだから。」
ちなみに彼女の服は試させてもらったが裂けてしまいそうになったので途中で断念した。
お昼御飯はこの前彼女の屋台でも出ていたスープと串数本にあったかいごはん。彼女が言うには
昨日作ってしまった分は消費しないと、ということなので二人で箸を伸ばしながら少しずつ減らしていった。
「何だかお酒が恋しくなりますね。」
「あるけど、流石にそれは夜にしようよ。」
まぁ、そうだよね。
「ところで今夜、屋台はどうするんですか?」
「んー、頑張るよ?高熱出してるとか大けがしているとかじゃないんだから。」
腰痛いのによく頑張るな。あぁ、後で私がマッサージしようかな。少し自信がある。他人に試したことないけど。
凄く弱めに放電しながらやれば、少しは彼女の腰の痛みも減ってくれるだろう。私の方の痛みばかりは流石に治せないようだけど。

お昼過ぎて、私の服が乾くのを待ちながら私はうつ伏せの彼女に馬乗りになっていた。
マッサージをしていると彼女が悲鳴をあげながら暴れるので、なんとか組伏せている内にこうなってしまった。
どうも電撃に慣れた私にとって弱い放電でも彼女には強かったようで。物凄く弱めて今は腰を押している。
これくらいじゃ効果なさそうな気がするんだけど、とは思いつつも彼女にはこの程度が気持ちいいらしくて、
うっすら笑いながら涎を流しつつ枕に顔をのせていた。……というより気がついたら寝ている。
夕方近くなって、彼女も目を覚まして。服もちゃんと乾いていたようで取り込んでもらった服を早速私も着た。
やっぱり彼女の服よりかは大きいな。ぴっちりしてるけど。
腰の痛みは完全には消えなかったらしいけれど、普通に動ける程度には治ったようで少し嬉しそうに彼女がはしゃいで屋台の準備をしに行った。
お尻が痛い私は手伝えないのでベッドの上で横になってしばらく休んで。太陽が完全に沈みそうになったころ、彼女に呼ばれて並んで玄関の外へと出た。

家の中とは違って少しだけひんやりした風が肌を撫でる。季節の割にはちょっと涼しくて、蒸した感じが無いのは嬉しい事だ。
一緒に並んで屋台を引こうとしたが、やっぱりお尻がズキズキと痛むから今日だけは辞退させてもらって、
彼女に並んで今日は近場の川のほとりで屋台を組み立てることになった。
今日も二人きりの楽しい空間、になるかと思ってはいたけれど、今日は私以外にもお客さんが現れた。
「焼酎と串頼むわ。」
横に座っている彼女は森の魔法使い。不敵な笑みを浮かべてミスティアさんに注文している。
「珍しいな。てっきり天界の方で食事しているものと思ってたが。」
私を見ながらそう呟く彼女に
「こっちで食べる方が楽しかったりしますから。」
そう返しておいた。実質向こうで食べても孤食になりがちで、本当にただの食事になり下がってしまう。
だったらこうしてまだ何人かで集まって食べた方が私には楽しかった。
カウンターの向こうで私たちが話すのをどこか楽しそうに串を焼きながら見つめるミスティアさんをちらりと見つつ、
宴会でよく会う割には話さないこの方に遠慮なく話を振って。なかなかに奇想天外な返答をしてくれる彼女ではあったが、
話が続く分には楽しかった。

3人で串焼きとコップを手にとって、この前の一件について話して。ミスティアさんには実質の被害は無かったけれど、
色んな意味で私たちは被害者だ。まぁ、一番の被害者は勿論の事あの人で、ある意味でその後の加害者でもあるわけだけど。
「あいつ本気でキレてたからなぁ。相当ショックだったみたいだし。」
「そりゃ自分の家が潰れれば誰だってそうなるんじゃないかね。」
「むしろ局所的だった事が嫌だったみたいだな。私の家が全く被害もなく残っているのを見てすげぇ悔しそうだったし。」
「上に上がってきてもすごい当たり散らしてましたからねぇ。」
「まぁ、そんな奴だから。」
「そんな奴だもの。」
何だか酷い言われようだけど、確かにそんな人だ。
日頃はあんなにゆったりとお茶飲んでいるのにな。
「あー、お前さんはあれか?少人数の方が話せる性分なのか?」
横に座っていた彼女が私を見ながらそう言って。
私はただ、分からないと口にした。もしかしたらこれから少しずつでも直りそうな気がして。
彼女はそれを聞いて一度溜息を吐くと、
「よし。んじゃ今日はこのくらいにしておく。」
「今日は払えるの?」
「おう。気分が良いからな。」
ど、どういう理由なんだか。ミスティアさんも苦い顔というか凄いもの言いたげでお金を受け取っているし。
何だかんだで彼女の財布は空っぽになってしまったようでもあるけど。

「それじゃミスティア。頼んだ。」
「んぁ?予約か何かかい?」
「いや、衣玖を人並みに宴会が楽しめる程度になるまで付き合ってやってくれ。そういう仲だろ?」
「ちょ、そういう訳じゃ」
「伊達に恋符なんて名前つけちゃいないぞ。それに嘘つきは泥棒の始まりだぞ?
いい事無いぞ泥棒は。二人以上の心を奪うとあとはもう修羅場しかないからな。」
おお怖い、とそう言いながら彼女が逃げるように箒に跨って空に駆けだして。
何も言えずにただその一部始終を聞いていたけれど、彼女が居なくなって改めて二人で視線を合わせた。
「だ、そうよ?」
「……精進します。」


数日経ったある日、宴会の召集がかかって、神社に集まった。
日頃いつもそこに姿のないミスティアさんの姿も何故かあって。彼女は屋台をなんとか引っ張ってきて、串を振舞っていた。
お陰で心細さが薄れて、少し宴会が楽しめるようにはなったけれど、直接彼女に話せる時間はあまりなくて。
そんな中先日の魔法使いに引っ張られいろんな人の前に案内され、私はあまり喋れなかったけれど、話は振ってもらえた。
案外に彼女の言ったとおりなのかもしれない。振れないなら振ってもらえば良い。それを実感させられた。
遠くで彼女がこちらを見ながらほほ笑むのをちらりと見ながら、私もなんとか返していく。
今までの宴会で一番大変な夜だったけれど、その日は朝まで私は彼女と共に居残った。
読んでいただき有難う御座いました。

一度書いたものを横に置いて書きなおしてみたのですが、くどくなってしまった感がいがめません。もう少し、相手を表現する言葉を多彩に操れないといけないとつくづく感じました。
でも何より酷いのはやっぱり誤字脱字ですね。「彼女にはがを」って私は一体何を表現したかったんでしょう。
もう此処まで来ると誤字脱字のない文章を書いた日に私死ぬんじゃないかと心配しそうです。

--以下追記--
違和感がないというコメント、マイナーというか誰も書かないようなカップリングをかいていると凄くうれしく思います。
誰でも良いじゃないかって思われない事が一番大事ですからね。これからも精進しようと思います。

魔理沙は脇役として登場させるとこれ程までにと思うほどに扱いやすいのに、メインで扱おうとすると挫折してしまいますね。行動力があるからでしょうか。
もうちょっと上手く扱えるようになりたい所です。
--以上追記 07/27 02:05 以下再追記--
日頃テキストファイルのサイズで100kb程度を目処に作っているため、大体こんな長さになってしまうのです。
メモ帳で書いてるので。Wordもあるのですが、強制終了した時の虚脱感が苦手で。
そのせいか誤字脱字にすぐ気づけないのが痛いところですね。
コメントありがとう御座います。次何を書くかはちょっと考えてはいませんが、
今ここしばらくで生活を圧迫しているものが片付いたらまたゆっくり書いてきます。あと脳みそは貸し出せません。
--以上追記 7/28 23:05 以下7/29 01:35--
報告どうもありがとう御座います。誤字について修正しました。
何でだろうね。自分だと誤字に気づけないもので。話の展開を知っているからなのでしょうか。脳が補完してるんですね。
お尻が痛い→お股が痛い についてですが、確かに指摘されればそうで、実は最初お股だったんです。
ただ「もう痛くないから~」というくだりを使用した為、一応後日に当たる文にお股が痛いって書くのはどうかと迷いまして、
結果的にミスティアにできる限り気負いさせるような要素はないようにという事でお尻へ。
思えば、台詞とそうでない部分で両方下りがあれば分けて書けたのですね。
指摘して頂いて仰る事ご尤もなのですが、どうかその一点はご容赦頂けたらと思います。
ただ、次にはできる限りこういう要素が生まれないように頑張ろうと思います。重ねて、ご指摘有難う御座いました。
--以上 7/29 02:00 以下更に追記--
一部誤字脱字等を修正
お魚さんがお魚さんを食べるシーンは結構見た気がしたから、大丈夫ではあると思うよ!
--以上 7/31 22:35--
あか
コメント




1.喉飴削除
あかさんの新作きた!
かなりマイナーな組み合わせでしたが、違和感無くすらすら読めました。うん、面白かったです。
次回の作品も楽しみにしております。
2.名前が無い程度の能力削除
戸惑いながらも生やしてネチョるのもなかなか良いですな。
誰でもいいようなカップリングに見せかけて、しっかり双方のキャラを押さえててイイ。

魔理沙ってどこにでもトリックスター的な立ち位置で出てくるのがやっぱ似合うな。名脇役。
名前は一切出てないけど薬といえばあの人GJ。
3.名前が無い程度の能力削除
うーむ、全体的に上手い。日常シーンが特に上手い。
あと、喉の渇き癒すためにキスするところはニヤニヤしっぱなしでした。
4.名前が無い程度の能力削除
割と長めでしたがとても読みやすく、面白かったです。
珍しいカプなのにしっかりとストーリーが出来るのはあかさんのすごいところですね。

衣玖さんのフェラがすごくエロかったです。
5.名前が無い程度の能力削除
これはありえる!!

あかさんの脳内は桜色だといわざるえない。
たまにでいいからかしてほしいです。
6.名前が無い程度の能力削除
誤字脱字とおかしいかな?と思った点

窓のから見える→窓から見える
好きとういう言葉→好きという言葉
止まっていかない?→泊まっていかない?
スカートはあまりまだ汗には→スカートはあまり汗には
やっとこのことで→やっとのことで
結び目も解いて→結び目を解いて
さっき間で→さっきまで
というおおが、→という音が、

"言葉のやりとりをしている内に、なのか私の血で腰を止めている間に少しは滑りやすくなったようで、"
読点が不要か、もしくは表現がおかしい?

"私はお尻がちょっと痛くて。"と"お尻が痛い私は"と"やっぱりお尻が"
あにゃるせくーすしたわけじゃないのでお尻より"お股"とか"股"とか"股間"の方が適切ではないかな?
7.名前が無い程度の能力削除
焼き鳥撲滅を掲げる鳥の焼き魚屋に
魚が通い詰めるとはこれ如何にw

長かったですが不思議と簡単に読めました
批評能力が乏しく申し訳ない
そして言うまでも無い事ですが面白かったです
8.名前が無い程度の能力削除
ラブラブな二人を見ているとこちらも幸せになってくるようで・・・
また一つ新たな正義が生まれてしまいそうです。

・・・ミスティアの料理がおいしそうでおなかが減ったのは内緒です・・・
9.gj削除
名前参照