真・東方夜伽話

わういねこたん

2009/07/26 14:16:32
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わういねこたん

金鳥

 妹紅の日記  ○月◎日~●月×日より抜粋
 慧音の記憶

 『ねこたん』の続編です。ほのぼのイチャイチャ日記。
 ふたなりと血は、今回はありません。






















慧音さま
 お元気ですか。私はいつも元気です。けさのお魚とてもおいしかったです。ありがとうございます。
 とつぜんお手紙さしあげて、もうしわけありません。慧音にありがとうって言いたいことが、たくさんあります。どうしたら伝えられるか、けぇね先生に聞いたら、お手紙を書くといいよって教えてくれたので、書きました。
 慧音がいつもやさしくしてくれて、うれしいです。好きなたべものをたくさん食べさせてくれるのも、うれしいです。慧音がつくるごはんは毎日おいしくて、しあわせです。
 いつも遊んでくれて、たのしいです。まいにち寝るまえにお話してくれるのも、ほかにも、たくさん、うれしいです。
 書ききれないけど、慧音のこと、とても好きです。これからも仲良くしてください。さようなら。
                                                 もこう



妹紅様
 お手紙ありがとう。嬉しくて何度も読み返しました。私もいつも元気でやっています。妹紅が元気で安心しました。
 手紙は自分の気持ちをしっかり相手に伝える、一番心のこもった方法です。そうして妹紅が私に感謝を伝えてくれて、とても嬉しいです。妹紅が毎日幸せに生活していると知って、私も幸せになりました。
 私はいつも、妹紅の幸せを願っています。美味しい料理を作るのも、遊んであげるのも、妹紅の笑顔を見たいからです。だから妹紅が手紙をくれて、本当にありがたいです。私がどれだけ喜んだか、妹紅にはわかりますよね。
 これからも仲良くして、楽しく暮らしましょう。妹紅が喜んでくれるように、私はがんばります。
 私も妹紅が大好きです。またお手紙をください。それでは。
                                                 慧音












 ●月√日
 木のぼりの練習をしてたら、からすが飛んできて、びっくりして落ちた。いたかった。落ちたとき、廂のしたにつぼがたくさんあるのを見つけた。つぼににんにくがはいってたから、慧音がいないあいだにみんな食べた。そしたら、あとでふらふらして、気持ち悪くなった。いやらしいこと考えたから、罰があたっちゃった。

 魚ならなんでも好きな妹紅だが……
 猫妹紅がどんな食べ物を好きになるか、そればかりしか考えなかった私の不注意のせいだ。
 問題は食べ物の栄養にある。猫の体に必要とされる栄養や、摂取上限などのバランスは人間と大きく異なる。人間には必要でも猫には不要な栄養を多く摂取すれば体を壊し、死に至る場合さえある。が、そのところを意識せずに人間の感覚のままで食事をしていたから……
 妹紅が倒れてしまったのだ。

「妹紅、妹紅、どうしたんだ。どこが悪い?」
「ふらふらするよ……気持ち悪いよぅ」

 妹紅の鼓動が早い。ただ事ではないと思い、妹紅を抱き上げて家を飛び出した。ひぐらしがあちこちで鳴く夕方である。

「慧音、どこにいくの?」
「永遠亭へ行こう。すぐ診てもらおう」
「やだぁ!行きたくない!」
 
 妹紅はもがいて抵抗する。押さえつけて連れ出そうとしても、どうしても行きたがらず、手から抜け出して木の上へあがってしまった。枝にだらりと寝そべって真っ青な顔をする。が、木を切り倒してでも八意の所へ連れて行きたい。妹紅に何か、もっと悪いことがあったらと思うと居ても立ってもいられない。

「どうしてそんなに嫌がる?薬の事か?今はそれより……」
「いのちに別状ないからぁ。うぅ……、症状だけ言ってきて……」
「……わかった、すぐ帰るから」

 仕方なく、妹紅の言うとおりにする。
 で、飛んでいったら、

「ネギ中毒ね」
「中毒?」
「血液中のヘモグロビンの分子構造が猫と人間とでは違うからなっちゃうのよ。ネギや玉ねぎなんかのネギ類にあるアリルプロピルジスフィドとかが猫の赤血球を壊す。それで貧血をおこすの。溶血性貧血、それがネギ中毒。らっきょうやニンニクなんかもだめ。ちなみに、犬もこうなるわ」
「へも?……それで、どうすれば治るんだ」
「妹紅は子供だから勝手に治るわよ。もっと若い猫や老猫なんかだと、死ぬ事もあるけど、まぁ関係ないわね」
「それで大丈夫なのか?ほかに、食べてはいけないものは?」
「イカやタコ、なま卵や、チョコとかココアも。お茶や珈琲もよしたほうがいいわね。チョコやココアは特に注意してね……ネギ中毒をおこしたってことは、薬がずいぶん進行してるのね……」
 
 獣医というわけでもなさそうだが、よく知っているのはさすがだ。それだけ聞いて早々に帰宅した。木の上の妹紅が垂らした手を引いて下ろしてやる。

「けーね、たすけてぇ。くらくらして動けないよぅ」
「自然に治るそうだ。だから安心しなさい……」

 妹紅を抱いて部屋へはこび、布団に寝かせる。
 冷たい額を撫で、口づけした。

「お前はネギ中毒だそうだよ。人間と猫と、同じ物を食べていてはいけなかったのだ。何も考えなかった私が悪い……すまない」
「慧音、ぜんぜんわるくないよ?」

 と、妹紅が膝に乗りあがってきた。腹に抱きつき、腿の上に顔を擦りつける。それから、あれ以来服から出すようになった尻尾で私の足をくすぐる。尻尾の使い方を覚えてきたな……可愛いうえ、のりかかった妹紅が心地良くてクラクラしてしまった。

「どうした?」
「ちょっと嬉しいの……なんでだと思う?」

 嬉しい、というと、ネギ中毒とは関係ない事か?ネギ中毒や猫の体質の問題についての話は、決して嬉しいものでもなさそうだから。だが、妹紅はそこからなにか嬉しくなるような事を思いついたのだろうか。妹紅の尻尾を撫でながらしばらく考えたが、わからなかった。
 考えていたら、妹紅は幸せそうに微笑んで私を見上げた。体調不良のためくたびれた、とろんとした眼差しと目が合うと、どきっとして尻尾を触る手に力が入った。

「にゃぅ!けぇね、しっぽだめ!」
「あ……ごめん。なぁ妹紅、なにが嬉しいのかわからないよ。教えてくれるな?」
「にゃーぅ」

 鳴いてはぐらかすつもりか。丸くなって顔を隠してしまった。しかし、尻尾が手に巻きついてくる。
 意地悪というのか、逆に素直というのか。言いたくないふりをしても、聞き出してほしくて、こうしているのだ。こんな子供らしさがもう可愛くて可愛くて、また危ない事をしてしまいそうになる。
 躊躇していると、ほんの少し顔を向けて、横目で私を見た。やはりかまってほしいのだ。
 妹紅の横腹をつかんで、ごろりと仰向けにする。

「こらっ。隠さないで教えなさい」
「やうぅ、らんぼう慧音!……にゃあっ、わかった、言うからぁ」

 腹をくすぐると素直になった。猫妹紅がしてほしがる事や、考えがだんだんわかるようになってきたと思う。
 
「私の食べ物に気をつかってくれるって、ね……しばらく、慧音と一緒に暮らしていいって事なんだよね?」

 それが嬉しかったのか。
 死ねというつもりらしい。つまり妹紅は私といられるのが嬉しく、また、一緒にいたいのだ。妹紅の告白が私の心臓を打ちぬいた。大々出血そして悩殺は免れない。
 理性が破れて、愛情が溢れてくる。
 妹紅にのしかかって抱きしめた。

「当たり前だ。どこにも行くなと言ったじゃないか……」
「うん……」

 下で大人しくしている妹紅を見ると、赤面して私の服を両手で掴み、恥ずかしがっている。
 急にこんな事をするのは、まだ気が早かったか。早とちりしてしまったのを後悔した。
 私は妹紅をずっと前から想っていたけれど、妹紅も私を想ってくれるようになったのは、いつからかわからない。それに、まだ告白し合ったばかりなのだから。
 恥じている妹紅をいたわり、抱き起こして胸に寄りかからせた。
 しかし妹紅は意外にきつく抱きついて、すこしも離れようとしない。密着した胸から、早い鼓動が伝わる。もう眩暈や吐き気はなさそうだが、押し倒して、そんなに驚かせてしまったろうか。

「妹紅、大丈夫か」
「にゃぅ」
 
 尻尾が所在無く左右に動いている。あるいは、一緒にいられる事を思って、嬉しくてこうしているのかもしれない。
 私だって、妹紅に負けないくらい……もしくは妹紅以上に嬉しいのだ。
 妹紅の顎をとらえ、上を向かせて口づけした。妹紅はびくっとはねて固くなったが、背中を撫でると体の力を抜いた。
 唇を小さく開いて、中へ誘う妹紅の口を、そっと舐めて焦らす。一瞬だけ中に入れて妹紅の舌を突き、また唇を舐める。
 興奮した体の熱が、密着して擦れあううちに蒸れてくる。気が昂ぶる。犯したい……しかし、妹紅の体調を思って考えを改め、ほどほどにして止めた。
 妹紅は寂しそうに目を潤ませた。

「もっと……」
「体の為に、今日はちゃんと安静にしないと。な?」

 頬を撫でて寝かしつけ、灯りを吹き消した。きゅぅ、と細い声で鳴くのが聞こえる。こんな扇情的な鳴き方を、一体どこで覚えたのか……やっとのことで我慢したというのに、まいってしまう。
 それから仕事を片付けて床に就いたものの、私もなかなか寝付けなかった。私を誘った妹紅の鳴き声が、耳のあたりに聞こえる気がする。空耳とわかっているのに、まるで本当に聞こえるような錯覚がして胸が苦しくなる。私のせいで、妹紅はあんなに色っぽくなったのだろうか。……まさか発情期などではあるまいが。
 しかし、猫の発情期についても、しっかり調べておかねばなるまい。



 ●月≠日
 もぐらを掘りだした。もこもこしてかわいい。あなをふさいでから放すと、どこかに逃げていった。これで、桃の木や、庭のほかのお花が荒らされないようになるといいと思う。お昼ごはんの煮ものはしっぱいした。魚がこぼねだらけで食べにくい。今日は、いつもよりも寂しい。

 猫の発情は犬のように年に何度とか決まってはおらず、日照時間に周期を左右されるそうだ。……と言われてもわからない。今は夏だから日照時間は長い。ならば発情期、という事もなさそうだが。発情期間は六、七日で、平均的な発情周期は十四日から二十一日らしい。そんなに頻繁なものなのか?

「猫飼ってるんですか、先生」猫の発情期について、寺子屋からの帰り道で教えてくれた、猫好きの文具屋が言う。
「えっ。あぁ、飼おうかと思って……」

 発情期に特徴的な行動は、後ろ足をもちあげながらうずくまるとか、四足で足踏みするとからしいが、見た事がないからそれもよくわからない。いずれも妹紅には、体の形からしてできないだろう。
 ただ、転がったり、顔をすりつけたり、鳴いたりなんかも、見落としやすいものだが発情期にする行動らしい。そんな事なら妹紅はいつでもしているような気がする。特に昨日は。
 ともかく家へ帰って、廂の下にかがみこんだ。漬物石や壷がごろごろしている。そのうちから、にんにくの壷を取り出した。人から貰ったものなのだが、私はにんにくは好きでないし、妹紅は猫として、にんにくを食べてはいけないから、いっそ捨ててしまおうと思ったのだ。
 が、壷は軽い。蓋を開けると中が空っぽだ。……まさか、もしかしたら。
 あぁ。妹紅は今発情期なのだ。早くわからなかったのが悔しい。
 
「おかえりなさい!」

 抱きついてきた。出迎えで抱きつかれたのは、今日がはじめてだ。

「どうしたんだ、妹紅」
「さびしかったもん……」

 尻尾を振りながら喉を鳴らす。やはり……ふむ、どうしようか。

「妹紅、今日は風呂に入ろう。湯を沸かすから」
「えっ。やだぁ」猫らしく、湯につかるのは嫌いなのである。
「だめ。たまには湯につかって、温まらないと体に良くない。一緒に入ろうな」
「……うぅ」

 顔を赤らめ、部屋へ逃げてしまった。
 湯を沸かして浴衣を用意し、妹紅を部屋から無理に連れ出した。風呂場まで抱えて行って、着物を剥ぎ取って浴槽に入れたのである。雑なやり方だが、こうしてでも風呂に入れて湯に慣れさせなければ、いつまでも嫌がり続けるだろうから。妹紅の抵抗もなかなかだった。

「あつい!慧音ひどいよっ」ぽかと叩かれる。ネコパンチだから全然痛くない。
「肩までつかって十秒数えたら、熱くなくなるから」

 口まで湯につかり、茹でダコみたいに指の先まで真っ赤になっている妹紅の隣に、私も入る。
 体を引き寄せ、膝の上に座らせて後ろから抱いた。

「気持ち良いだろう。慣れれば猫だって入れない事はない」
「……あついもん」
「そうか?でも、お湯より妹紅のほうが熱いな」
 
 腹を撫でて、ときおり胸の下を触れつつ手を動かす。妹紅は身をよじって逃げようとしたが、唇を噛んでなにかを堪え、ただくすぐったいのではないようだ。
 しっかり抱いて離さない。後ろを向かせ、強引に唇を重ねた。

「っう、ん……!」

 やがて妹紅は抵抗しなくなった。
 私は自分の胸を妹紅の背に擦りつけながら、舌で妹紅の唇を割って口中を犯した。まるで自分の快感だけ求めているようだけれど、そんなふうに乱暴にされて、妹紅はびくびくと震え、確かに悦んでいる。
 妹紅の舌を存分に弄んでから、口を離すと、いやらしい糸をひいて妹紅の胸へ垂れた。唇を濡らし、苦しそうに速い息を漏らす妹紅は、ひどくなまめいて見えた。強い衝動がこみ上げる。今はもう衝動を耐える必要はない……妹紅は私の恋人なのだから。
 湯の中で足をからめ、猫の耳を舐める。薄い耳の毛をわけて舌を這わせると、妹紅は高く喘いだが、私の腿が妹紅の大事な所をこすっているのも気持ち良いのだろう。

「んぅ、けぇね、やぁぅ、っあ、やめて……」
「どうして。してほしいんだろう?」
「そんなこと、ない、っあ、ひぁう!」
 
 膝を曲げ、腿を妹紅に擦り当てる。同時に耳を甘噛みすると、短く叫び、痙攣した。達してしまったようだ……
 余韻にひたる余裕を与えず、胸を愛撫する。
 小さな膨らみでも、妹紅のやわらかい肌は弾力があって、掴み心地が良い。包みこむように撫でて神経を高ぶらせ、突起を指の間ではさみながら、腿の動きも止めない。
 攻め、妹紅が震えるごとに、揺らいで波になった湯が妹紅に当たり、水音を立てる。湯気の上がる熱さや、水音さえつやっぽい。規則的な波は快感に近く、気分をさらに昂ぶらせる。

「ずいぶん、嬉しそうじゃないか。してほしかったのか」
「ちが、うっ、っあ、ひぅ!」
「素直になりなさい。昨日だって……精力をつけたくて、壷のをみんな食べてしまったんだろう」
「ああぅ!やん、あ、ちがう、っあ、ちがうよぅ!」

 体は素直なのに、言う事ばかりは強情だ。まったく……ちょっと懲らしめる為、胸の突起を強く挟み、首に噛み付いた。おそらく妹紅は、首は相当敏感だろう。
 首を噛むと、可愛く鳴き叫んで、またイってしまいそうになった。
 あいた片手を陰部に伸ばし、その上を撫でた。感じやすい所には触れない。もっと焦らしてやる。

「昨日、私を誘って、どんなふうにされたかったんだ。この悪い子は……」
「んあぅ、あ、はぁっ、ごめん、なさい……ひあぁっ!」
「激しくしてほしかったのか?何度もイって、毀れるくらいの。正直に答えて」

 夢中で喘いで、答える余裕なんか妹紅にはない。わかっているけれど、わざと胸を強く攻めて、陰部にかけた手を少しずつ下へ這わせる。そうして、答えろと迫る。
 喉をそらしながら、細い声で妹紅は鳴く。

「いゃぅ、あん、ぁ、はげし、のがっ、ぁう」
「なんだ?」
「はげしいのがぁ、いいよっ!」
「ふうん。そうか……」

 耳に息を吹きかけて薄く笑った。私に従順に、気持ち良さにはすぐ負けてしまうのだ。可愛い……しかし、口ではあくまで冷たく言う。

「妹紅は、そんなに淫乱だったのか?知らなかったな……」
「ふぁっ、やぁ、けぇね、けぇねっ……」
 
 涙をこぼして私を見上げる。泣きながら喘いでいる……眉をひそめ、細めた目で、私に訴える。優しくしてほしいのか、もっと激しくしてほしいのか、どちらとも取れる表情だった。心がとろけてしまう。愛情が湧きあふれ、一瞬迷ってしまった。
 後者を選んだ……中指と薬指を、一気に奥まで突き入れる。妹紅は急に入れられて、快感はなお大きかったろう。
 
「やああああぁ!!」

 嬌声をあげ、見てわかるくらいに喉を震わす。が、一切情けをかけないで、すぐ膣内を二本の指でかき乱す。妹紅は体の力が抜け、私からずり落ちて湯に沈んでしまいそうになりながら、ひたすら私が与える快感を受け止めている。

「あぁ!はっぁ、うゃぅ、っあ!」
 
 手足を曲げて耐えながら、搾り出すような鳴き声の中にも、淫らな甘さがまざっている。そんな声を聞きたくて、手に力をこめて膣のさらに奥を突く。

「はあぁ、あっ、あっ、やぁ、だめぇ、ひぁ、ああぁ」
「激しくしてほしいんだろう?ほら、もっと鳴いて……」
「ひゃああぁっ、あ、あ!あぁぁ!」

 容赦なく、力ずくで指を動かす。喘ぎが切迫し、悲鳴のようになっても、指を弱めない。

「ああぁぁ!はぁっ、やぁぁ!あ、け、ねっ、もう……っ」
「どうした。言わないとわからない」
 
 限界が近い事だってわかっている。尋ねておいて、子宮口をつぶしにかかる。すぐにもイかせてやる。
 子宮口を突いたとたん、妹紅ははねあがって叫んだ。浮わつく腰を抱き、追いつめるように突きあげる。

「いあぅ!あん!あっ、きちゃう、きちゃう!」
「イきたいならイけ。淫乱め……」

 指を突き立てて動きを止めると、キツく締めつけられた。

「っあぁ、や、ああああぁぁ!!」

 激しく痙攣し、イった。
 妹紅は震えながら、自分で締めつける指に、感じて声を漏らす。指を動かさないのに、しばらくそうして震え、小さく鳴いていた。
 あまりに可愛くて、もうこれ以上はいじめられなかった。今にも目を閉じ、気を失ってしまいそうな妹紅の顔をこちらに向け、優しく接吻した。
 妹紅は唇を吸われてから、首を垂れ、反応がなくなってしまった。
 湯に少量の血が浮いている。妹紅は気絶していた。
 やりすぎてしまった……ぐったりした妹紅を抱き、痛み出す心で自分を責める。気持ち良さそうに鳴いていたけれど、本当は痛かったかもしれない。妹紅の体がこういう事にまだ慣れないと、わかっているのに……
 気がつかない妹紅を抱きあげて湯から出、タオルだけ取ってなにも着ないまま布団に入った。
 妹紅を抱きしめて眠る。浅く呼吸し、ときおり苦しそうにもだえる妹紅を抱き、いつか眠りに落ちてしまうまで、内心で妹紅に謝りつづけた。



 ●月⊥日
 庭につちのこがいた。さわろうとしたら、慧音がとんできてつちのこを蹴ったくった。慧音は心配しょう。つちのこがかわいそう。首輪をしてたから、だれかのぺっとのはずなのに。そういえば、私は慧音のぺっとなのか聞いたら、慧音はちがうって言った。でも慧音に飼われたい。首輪をつけてほしい。ねこに首輪って、へんかな?

「けぇね。けぇね」

 尻尾を振りながら甘えてくる。仕事中なのに構わず、また私を誘って悩殺するつもりらしい。
 今はまだ真昼だから、押し倒したい気持ちをこらえて、四角い文字だらけの原稿を振り回して可愛い猫を退散させた。
 胸が熱くなり、動悸を起こして昂ぶってしまった頭脳でもって仕事に向かう。……当然集中できない。
 妹紅は部屋の隅に丸くなって、ちらと流し目を向けたり、たまにじっと見つめたりしてこちらを伺っている。目が合うと、赤面して顔を手で隠した。短く、筒の広い袖から、腕の付け根や白い腋が露わになっている。油断してつい見入ってしまった。
 妹紅は私の気に入りの、赤い浴衣と白の帯を着ている。この二色が妹紅には最も似合う。今朝一緒に目覚めた時に私が着せたのだ。その時にはしっかり着ていたのだけれど、今はしどけなくしている。か弱そうな細い腰に結んだ帯は緩くなって、今にもほどけてしまいそうだし、浴衣の襟から肩をすこし露出し、裾もはだけて、腿が見えてしまいそうになっている。絹のように肌理細かく、血色の透いたほの赤い肌をそんなふうに見せられて、私はうずうずして、どうしても落ち着いていられない。
 その上、尻尾を股に挟んで、小声で鳴いている。重ねた腿がなまめかしい。やはり発情している……昼間だって、発情して辛いだろう。
 外から風が入り、畳の上に広がった妹紅の長い髪を揺らした。甘やかな香りが立ち、美しい花のフェロモンのように私を誘う、錯覚。しかし、もう我慢できない。
 仕事を中断して妹紅に近寄る。本当はそうして、欲情に耐えるのを放棄してしまったのだ。私だって可愛い妹紅を満たしてやりたい。妹紅にねだられるまでもなく。
 浴衣を掴んで仰向けに寝転がし、妹紅の顔の左右に肘をついて顔を寄せた。

「今日は優しくしてやるからな。昨日はすまなかった……」
「ぅうん、っ……」

 唇で、妹紅の唇をはさむ。ぎゅっと押しつけたり、ほんのちょっと舌でつついたりして、少しずつ焦らす……
 口の中は、気持ち良くしてやらない。
 唇だけで感じさせ、想像をかき立てて昂ぶらせる。
 浴衣も、脱がせない。浴衣の上から胸を撫でる。生地に擦れて気持ち良いはずだ。
 
「んぁ、やっ、ぁぅ……」
「気持ち良いか?」
「ゃぁ、ん、けぇね、いいよ、っ」

 鳴き声がひどく可愛らしい。服を脱いでいないのが、いっそう気をそそるのだ。初めて試みる攻め方だが、妹紅には思った以上に効いているみたいだ。大切な体をいたわりながら、感じさせ、中でじっくり欲情させる。可愛い妹紅にはぴったりの攻め方だ。
 妹紅の鼓動が早くなる。早くも腿を擦り、体をよじっている。
 下腹部を裾でこすると、腰を振って切なく鳴く。硬くなった胸の先を甘く噛んだ。

「やぁ!っあ、あぁ……」

 裾の中に手を入れ、触れると、もうどうしようもなく濡れていた。
 だが、そこはもっと焦らす事にする。服に染みができてしまうまで、濡らしてやろう。
 胸を撫でながら、ぴくぴくしている尻尾をつかむ。尻尾はすでに敏感になっていて、手に取っただけで妹紅は震えた。
 尻尾をきつく握って上下に動かす。

「あっ、あ!いぁぅ、んぅ」
「妹紅、大きな声を出すと外に聞こえるよ」
「ふぁっ、あん、っぁ……」

 暑い昼間、廂の戸を開け放している。だから人に聞かれてしまうかもしれない。夢中になっていて、声を我慢できない妹紅の口を、唇を重ねて塞いだ。
 しかし、愛撫の気持ち良さに耐えかねて、妹紅は口を塞がれたまま、喘ぎを漏らす。

「あぅ、んっ、あぁ」
「こら、声出しちゃだめだ……」
「ぁ、っ……だって、けぇね、きもちいからぁ……っあぁ!」

 頑張って耐えようとしているが、それでも我慢できずに、淫らに喘ぐ妹紅がたまらなく可愛い。私も、愛撫を手加減できない……はやく満たしてやるほうが良いかもしれない。
 妹紅の足をまたいで覆いかぶさり、左腕で妹紅を抱いて、右手は裾の中へ入れる。
 
「激しくしないから……我慢してくれ」
「うん……」

 指を少しずつ挿入する。
 濡れてはいても、前戯が短かったから、膣はまだ狭すぎて、指の進入を拒むように締めつけてくる。

「んっ!ぅ、っ……」

 必死で声をひそめる妹紅が愛しい。頬を舐めながら、指を奥まで入れた。

「はぁっ、あぁ……」
「妹紅……好きだ、妹紅」

 愛情を示したくて、たっぷり濡らした舌を絡ませた。妹紅の舌を吸い、互いに快感を共有し震えながら、指を抜き差しする。

「やぅ、あ、っあ、はぁ」

 指を伝って、手まで濡れる。徐々に抵抗を弱め、指に吸い付くようになる妹紅の中を、優しく攻める。

 表で戸を叩く者があった。来客。

 構わない。無視し、聞かなかったふりをして妹紅を抱き続けようとする。
 だが、妹紅は怯えた目で私を見、頑なになって、舌を交えていた口も閉じてしまった。

「……誰だろう。行ってくるよ……」

 接吻し、濡れた指を引き抜いて、妹紅の愛液を舐め取ってから立った。
 客は薬売りの、名前の長いイナバだった。

「猫さんの様子を伺いに来ましたよ」
「……だめだ。今は体調を崩して寝ている」
「そういえばネギ中毒だそうですね。でしたら、あなたに話を聞くだけでいいです」

 細かい事をいくつも聞かれる。答えに窮するような問いはなかったが、部屋に置いてきた妹紅が気がかりで、全て上の空で答えた。

「猫さんの体調が良くなったら、永遠亭へ連れて来てください。師匠が会いたいそうです」
「はぁ。なにをするんだ?」
「知りません。診察かなにかじゃないですか?どうしてもって言われてるので、ちゃんと来てくださいね。……それでは」

 イナバは帰った。部屋に戻ると、妹紅は着崩れを直し、赤みの残った顔で、髪を手櫛で梳いていた。
 待っていてはくれなかったか……しかし、気分が冷めてしまっても仕方ない。
 しとやかで、しかも火照りのまだおさまらない肌を見せて座っている姿が、においたつように艶めかしい。後ろから抱きしめた。

「イナバが。近いうちに、永遠亭へ来いって……」

 妹紅と二人の生活が、間もなく終わってしまう、そんな予感がした。
 もし人間に戻ったとしても、妹紅はここにいてくれるだろうか。私にとって最悪の結果となった時、私は妹紅を愛した事を後悔するだろうか。
 しかし、妹紅を匿う事にした日から、はじめから覚悟していたのだ。なのに、妹紅への愛情にかまけて、忘れようとしていた。いつまでも妹紅と一緒にいる事を願って、その理想だけに縋ろうとしていた。
 そうしてはいられなくなる。どんな結末が来るとしても……妹紅から引き離されるとしても、決して後悔などせぬよう覚悟しなければ……
 妹紅のふさふさの耳もとにささやく。 

「続きは夜に……それまで、我慢できるな?」
「……うんっ」

 良い子だ。妹紅。



 ●月@日
 慧音はさけくせがわるい!ぜんぜんわけてくれないし、みんなひとりでのんじゃう!もう、こんどからは、お酒をのませないようにする!
 かまってくれないし、さわってくれないし、また一人で寝ちゃった!お酒のむ慧音だいきらい!

 真っ昼間から、いやらしい格好をして甘えてくる妹紅。もこもこな耳を噛んだらころっと転がって腹を見せる。可愛い奴め。抱いてやろうとしたら、

「けぇね、おねがい」
「なんだ?」
「首輪してー」

 と。首輪だと……
 飼育プレイ?マゾヒズム?異常性癖?どういう事だ。
 妹紅に首輪をつけてリードでひっぱり、服従させ、嫌がる事も無理矢理やらせるところを妄想をした。床や壁に縛り付けてヤったり、それか吊り下げたり、妹紅が逃げたがるくらい激しくしながら、首輪とリードをしっかり私が握って逃がさない場面。妹紅はマゾなのか?そういう事がしたいのか?私に性的に飼育されたいのか?調教されたいのか?そういう趣味に目覚めてしまったのか?お前はそんなに淫乱だったのか?こんなに興奮して、私はサドなのだろうか。としたら妹紅と良い一対になる。お前は私にそういう関係を求めるのか?いじめられたいのか?なら、毎日イきまくって毀れるまでいじめてやろう。激しいのが好きなんだろう。昼でも夜でもかまわない。お前の可愛い淫らな声を近所のイモどもに聞かせて、見せつけてやろう。喜べ妹紅。小さいお前の中が裂けるくらい太いので突いてやる。お前の血もたくさん飲んでやる。それで感じるんだろう。いじめられるのが好きなんだろう、嬉しいんだろう。淫乱め、どうなんだ妹紅、その純真な顔と甘い声で、正直に答えろ妹紅!
 しかし妹紅、お前が首輪を欲しがる理由はちゃんと考えたのだ。首輪とはな、妹紅。お前を私に繋ぎ止めるためのものであるし、同時に、私をお前に繋ぎ止めるものでもあるのだ。互いを結び付けるのが首輪なのだ。飼い主と猫とても、首輪の間には何の差もない。本質の愛情があるだけだ。
 お前は私を繋ぎ止めたくて、そしてお前の愛を私に示したくて、首輪をしてくれと言うのだろう。わかっている……
 だが、妹紅。首輪なんて私たちには不要だろう?首輪がなくたって、私はお前を絶対に離さない。お前だって、首輪をつけてくれと言うくらいに私を深く愛しているなら、決して離れはしないだろう?
 安心しろ。私はお前を愛している。永遠に……私は永遠には生きられないが、愛する気持ちは永遠に生きるのだ。お前の心の中で永遠に生きるのだから。私の愛をお前が受け止めてくれるなら、私はそれでいいのだ。死ぬとしても……
 飼育プレイしたい。妹紅を飼育したい。問題は首輪をどこで調達するかだ。一級品か、それ以上でなければお前には似合わない。下賎な代物はお前の肌に触れる事だって私が許さない。ふふふふふふふ
 妹紅、妹紅、お前がしたいようにしてやる。可愛い顔した淫乱め、発情期に懲りて怖くなるくらい激しく抱いてやる。今晩だって寝させてはやらない。朝まで私に付き合うのだ。絶対に気絶するなよ妹紅!



慧音さま
 お元気ですか。私はいま、あんまり元気じゃありません。慧音もあんまり元気じゃないとおもいます。
 どうしても、お伝えしたいことがあって、このお手紙を書きました。読んで、きいてください。おねがいします。
 お酒のまないでください!
 慧音がお酒をのむと、かまってくれなくなって、寂しいです。
 今も、さびしいです。では、さようなら。
                                                もこう


妹紅様
 お手紙ありがとう。私も、頭が痛くて元気とは言えません。
 妹紅を寂しがらせて、本当にごめんなさい。私もショックです。自分が酒癖の悪い事はわかっているのですが、思い悩む事があると、どうしても飲んでしまいます。
 これからは悩みがあっても、お酒を飲まないようにします。悩んだら、妹紅に相談してもいいですか?
 それから、私がお酒を飲もうとしていたら、妹紅が止めてください。妹紅が言ってくれれば、きっと飲むのを止めます。
 私も今、妹紅が話をしてくれなくて寂しいです。どうか機嫌を直してください。
 それでは。
                                                 慧音


慧音様
 おへんじありがとうございます。おへんじを読んで、元気がでました。
 悩み事があったら、相談してください。私にはむずかしい事かもしれないけど、慧音のためにいっしょうけんめい考えます。
 機嫌なおりなした。そちらにいきます。では。
                                                もこう



 ●月б日
 慧音がたいちょうをこわした。かんびょうして、本を読んであげた。どろぼうが入ってきた。追い出そうとしたのに、慧音におこられた。どうして?どろぼう退治してどうして悪いの?

 気持ち悪い……気持ち悪い……
 断じて二日酔いではない。
 酒の瓶を傍らに転がして、畳の上に雑魚寝したせいで体調を崩したのだ。夏とはいえ、こんな事はしてはいけないのである。
 吐き気を我慢しながら眠るのだが、二十分程ごとに吐き気で眼が覚め、苦しんではまた眠り、また覚めるを繰り返す。その度に夢が現かはっきりしない、朦朧としたものを見る。
 妹紅が……いなくなり、私はまた一人でこの家に住んでいる。机に、食事がなぜか二人分並んでいる。本棚部屋には妹紅の台が置きっぱなし。妹紅の浴衣も衣文掛けに、そのまま。まるでどこかの本で読んだ、過去の思い出のみが生きがいで、自分が作った過去の幻の中で生きている人、そっくりだった。まさか私は、ああなりはすまい。妹紅がこの家を出ても、まったく会えなくなるという事は、きっとない筈だから。
 襖に紙が挟んであった。妹紅の手紙だ。取って開くと、やはりゆうべの酒の事だった。妹紅の叱責が何よりもこたえる。返事を書いて襖に挟んだ。手紙のやり取りはいつもこうするのだ。
 一緒にいるなら手紙を交換する必要はない、なんて事は決してない。きっかけは、妹紅が私に、何か伝えたいが口にはあまるから、どうしたらよいか相談してきたのだった。それで、手紙を、と教えたわけである。
 妹紅の手紙はとても可愛い。不器用ながら心を込めて丁寧に書かれた文字(教師をやっていると、文字を丁寧に書いてあるかそうでないか、わかる)や、紙の色……紙のふちがうす赤く、文字を書くところの真っ白な紙を、妹紅は気に入っているようだ。それから、たまに紙の余白に魚の絵が書いてあると悶絶する。しかし大体は、妹紅の手紙を読みながら、紙の上に涙を落としてしまう。妹紅が幸せで、嬉しい……妹紅の手紙は、私の幸せの証明でもある。そして、懸命に伝えてくれる妹紅がいじらしい。
 しかし今度の手紙は叱責だ。酒など本当にやめてしまおう。梅酒だって飲むまい。……返事が来た。そちらにいきます、とある。乱れた髪を慌てて直し、手鏡で顔色を確認した。真っ青だ。
 が、妹紅が襖を引いて来たとたん、心音が大きくなり、血の流れが速くなった。また、しどけない格好をしている……半病人相手に、そんな格好をして、肌を見せてはいけないと教えなければ。

「機嫌なおったよ!」
「あぁ……よかった。昨日はごめんな、妹紅」

 布団のそばに足をくずして座る。きれいな足だ。細くて、そのような華奢な足で、よく飛んだり跳ねたりできるものだと思う事もあるくらいだが、ちゃんとしなやかな肉も形良くついているのだ。腕も同様。
 と、その腕が伸びて私の額に触った。

「あつい」
「む……そうか」

 首をかしげ、だらしない胸元を見せながら、上目遣いで見上げてくる。……妹紅がそんな事をするから、熱くなるのだ。うぅ。だめだ、緊張すると吐き気が……

「妹紅、ちょっと教えてやろう……聞きなさい」
「ぅ?」
「人を看病する時に気をつけるべき事三つ。いいかい」

 妹紅は猫の耳をぴんと立てた。その仕草がもう……まったく。

「まず、一つ目。きちんとした格好をしなさい」
「にゃぅ?」
 
 自分の服を見回す妹紅。すぐに反応する機転も可愛い……帯を引っ張って、襟を押し込んだ。

「二つ目。病人を上目遣いで見ない。できれば看病人は、病人をいつも寝かしておくのが良いからな」
「にゃぁ。慧音、よこになってよぅ」
「もう一つ言ってからな。最後、三つ目は、病人を元気にするような何かを……」
「なにか?」

 何と言おうか。ここは……

「病人が喜ぶような事をしてあげる。かな」
「慧音がよろこぶこと?うーん」

 首をひねって考える。そういう可愛い仕草をしてくれるな……と言ったところで、ただ座っているだけでも妹紅は可愛いのだから。まさか追い出してしまう事はできない。私も、できてば妹紅にいてほしい。

「慧音、本すきだから、よんであげる!」
「あぁ……ありがたい。頼むよ」

 と、持ってきたのはなんとか物語。

「むかし、おとこありけり。おんなの、え、うまじかりけるを、としをへて、よばいわたりけるを、かろうじてぬすみいでて、いとくらきに、きにけり。……」

 寺子屋の素読みたいだ。愛らしい……それにしても、こんなに可愛い子が、夜這いとか盗み出でてとか、そんな言葉を声に出しているのは、なんとなく、興奮するような……いかん。妹紅が可愛い。しかし……
 可愛い妹紅を前にして、こんなに愛らしく音読させながら、私は、自分の顔がだんだん土気色になっていくのを感じる。可愛い、可愛い妹紅、可愛い……
 意識朦朧としていたら、いつの間にか、妹紅は音読を止めて私の顔に見入っている。

「だいじょうぶ?」
「え?あぁ、たぶん……」

 妹紅が布団に入って、横になった私に抱きついてきた。だめだ妹紅、心臓が止まる。息ができなくなる……

「きのう、さびしかったよぅ」
「うん。すまない……」
「けぇね……」

 やめてくれ妹紅、たのむ、死ぬ、死ぬ、死ぬ!

(ガラーリ)

 玄関の開く音がした。とっさに私も妹紅も口を閉ざし、身動きもしないで耳を澄ました。誰だ、戸を叩きもせずに開ける奴は?
 そいつは家に上がりこんできてしまった。忍ばせる足音が聞こえる。泥棒か。
 今は夜、この部屋しか明かりをつけず、戸もみな締め切っていたから、明かりは漏れずに外からは無人に見えたのだろう。しかし、運の悪い泥棒だ。この家に金目の物なんて本くらいしかないし、それに私も妹紅もいるのだから。
 だが、私はまだクラクラして動けなかった。
 妹紅が私を見た。
 眼の色が、おかしい……足音、衣擦れの音も立てずに、襖から出て行く。
 猫らしい敏捷な動きだ。だが、様子が変だ。ずいぶん怒ったような眼だった。
 人の悲鳴があがる……
 妹紅はなにをしたのだ?辛うじて立って、廊下に出ると、真っ暗の下に人が倒れている。こいつが泥棒。
 妹紅は……倒れた泥棒の上に立っている。

「妹紅?」
 
 生臭い。部屋の明かりをとってみると、床、泥棒のまわりに、血がたまっている。

「死んでないよ?退治したんだよ!」

 泥棒から跳んで降り、駆け寄ってくる。指の先に血が……
 妹紅が笑う顔と、血……
 あとで妹紅に聞いたのだが、妹紅は、私と二人でいるのを邪魔されて、泥棒を恨んでひっかいたらしい。
 ひっかいたと一口に言っても、泥棒は死にかけていた。外に運び出したら気がついて逃げていったものの、血をだらだら流して、この後生きられるかどうかわからない。血をなくして、じきに死にそうに見えるが……

「妹紅……たとえ泥棒や悪人だって、あんなにひどい目にあわせてはいけない。いきなり殺しかけるなんて……」
「どうして?かってに家にはいってきたのに」

 妹紅は不機嫌になってしまった。
 妹紅は人間としての手加減までも、もう失ってしまったのか?……



 ●月×日
 慧音だいすき。慧音、ありがとう。

 大きい岩に目をつけ、その下に手を入れて待ち構える。
 川の上流から妹紅が魚を追う。そして逃げ込んで来たのを捕まえるのだ。
 川魚を何匹も捕まえ、川原で焼いて昼食にした。なかなか美味い。妹紅は慌てて食べて、口を汚した。その可愛い口元を拭う。……また一つ願いが叶ってしまった。
 妹紅と一緒に暮らしたい事、妹紅を抱きしめたい事、愛したい事、口を拭ってやりたい事……これまでで願いはみな叶った。あとは、妹紅とずっと一緒にいたいという望み。しかし、これだけは難しい。
 午前中に嫌がる妹紅をなんとか説得し、今は永遠亭に向かっている。永遠亭へ行ってすぐに人間に戻るとも、妹紅と引き離されるとも、なにをされるかはわからないのだ。だから深く心配する必要はないとして、私はそう考えてとりあえず安心できたものの、妹紅は八意や蓬莱山を怖がってなかなか家を出たがらなかった。おそらく、猫にされた時のトラウマだろう。

「私がついているから、大丈夫。だから……」
「……わかった」

 抱きしめて慰め、連れ出してきた。川で魚を捕まえる間は元気だった妹紅も、今は気落ちして悲しげな顔をしている。
 私はつとめて明るく振る舞い、(きっとネギ中毒が治ったかどうか診てくれるのだ)とか、(ただどれくらい猫になったか調べるだけだ)とか言って妹紅を励まそうとした。言葉をかけるたびに、取り繕った笑顔を見せてくれたが、切なくなるばかりだった。
 永遠亭では八意に出迎えられた。また診療室のような部屋に、妹紅と二人で通される。

「やっと来たわね。まぁすぐに来るとも期待してなかったけど」
「で。なにをするんだ?」
「ちょっといろいろ調べさせてね。……体を調べるだけだから、慧音は部屋を出ていて。妹紅はここに残ってね」

 妹紅は私の後ろに隠れたまま、離れようとしない。

「調べるだけだって。安心しなさい……終わったらすぐ来るから」
「……」

 ゆっくりと手を離した妹紅を残し、部屋を出る。廊下に立って、壁にもたれて待った。
 本当に調べるだけだろうか。八意の物言いはなんとなく怪しかった。信じきれない。元々胡散臭いからそう感じてしまうのかもしれないが、妹紅が心配で、やはり不安だった。
 
 ぎゃうっ……

 妹紅の鳴き声が聞こえた。ばたばたと、誰かが暴れている。
 とうとう耐え切れなくなり、慌てて戸を引いた。妹紅はいない……八意一人だ。

「妹紅は?」
「姫のところ」
「なぜ」
「……もう説明しておこうかしらね。そこに座って」

 私は隣の患者席に座った。
 机に肘をつき、語りだす。

「どうして妹紅を猫にしたか。
 まぁ単純なんだけど、そもそも姫は妹紅が好きなの。だけど妹紅はあなたも知ってるとおり、姫が嫌いなのよね。姫は仲良くしたくても、妹紅は絶対にそうしない。だからって私の薬なんか飲ませて、無理矢理大人しくするのだって、あまり良くはないでしょう。壊れた妹紅を手に入れたって、元も子もないものね。
 ではどうするか。考え合って、(動物みたいにしてペットにすれば、大人しくなるんじゃないか)って提案したのが鈴仙。ちょうど獣化の薬を実験してたところだったから。薬を飲んだら、人間として成長する段階に、あるいは生きながら身につけた人格なんかは失う。つまり昔のもとの妹紅に戻る。そしたら、姫と仲良くなれない事もないんじゃないか、ってね。
 猫を選んだ理由は、別に。サンプルが多かったからかしら?そこのところは鈴仙が考えたから私はわからないわ。
 妹紅を猫にした理由は以上。わかった?」

 筋道はわかったが、理解したくない。

「それで、妹紅は」
「猫らしくなったところで飼い主とご対面。連れていかれたわ。薬はもう十分効果が出てた。妹紅、相当嫌がってたけど。これは失敗かもしれないわね」

 と、八意は笑った。
 蓬莱山が飼い主。妹紅の飼い主はもとから決まっていた。
 つまり、私は妹紅が猫になるまでの間、預かっていただけ。
 蓬莱山が妹紅を好きだという事は重要ではない。私と妹紅が一緒に過した間の、私たちの気持ちが重要なのだ。
 はじめから、私は妹紅を匿うだけだったのだ。自分でもそう自覚していた。しかし気持ちはそれだけでは済まない。愛し合っているのだから。妹紅が猫だからではない。私が飼い主だからではない。永遠亭の計画の上で働かされただけとしても、引き離されたくはない。
 引き離されるわけにはいかない。妹紅の気持ちだって……

「二人はどこにいるんだ」
「さぁ。広いからね。探したって見つけられないわよ。それに、私が行かせない」

 ナイフを突きつけられる。動けばすぐに喉を裂かれる至近距離。

「あなたは最初から様子がおかしかった。妹紅も、あなたに随分懐いてるみたいだし。まさか付き合ってるの?」
「……死んでも恨むぞ」
「まぁ、落ち着きなさい。あの二人、どうせ仲良くできないわ。じきに大喧嘩して出てくるわよ……それまで、邪魔しないで、龍神にでも祈って待ちなさい」
 
 そうするより他なかった。
 のうのうと茶を出される。飲めるわけがない。心配でならない。
 妹紅がもし戻って来なかったら?
 諦めるしかないのか。あるいは、
 妹紅が私を想い続けてくれるなら、命を冒してでも、取り戻すために戦う。妹紅の為に……

「師匠、ちょっと来てください」

 鈴仙が部屋をのぞいた。八意は私を一瞥し、出て行く。
 何事か。妹紅だろうか?



――――――――――――


「急に大人しくなったわね」

 輝夜の前で正座してる。一歩だって近づきたくない。

「耳が可愛いなぁ。どうして近くに来ないの?私が飼い主なのに」
「飼い主!?飼い主はけーね!」
「いたたっ。ネコパンチ痛い!けーねって何よ!やったわねっ」
「ぎにゃぁ!」

 こいつ嫌い!

「いたた、うわぁ爪が長い!イナバ、永琳を呼んできてっ」

 はい、って答えて鈴仙が走ってく。
 そのまえに輝夜殺す!
 
 でも、三人に捕まえられて、
 ごろごろ転がされて……ぜんぜん優しくない。

 けぇね……
 疲れたよぅ。


――――――――――――



 妹紅が抱えられてきた。顔に赤い痣がいくつもでき、眠り込んでいる。
 八意がベッドに寝かせた。

「何があったんだ……」
「やっぱり姫と大喧嘩したのよ。失敗ね」

 失敗ね、を強調して鈴仙に向けて言う。鈴仙は苦い顔をしてうなだれた。
 妹紅の名を呼んだが、やはり気づかない。痣以外は、どこも怪我をしていないが、浴衣の袖が破れていた。それだけで済んでよかった。腫れた額を撫でる。
 膏薬を指に乗せ、八意が妹紅の顔に塗った。

「災難だったわねぇ。まったく気まぐれなんだから……」
「もう、妹紅を自由にしてくれるんだろうな」
「そうね。あなたが連れて帰ってもいいわ」

 と、妹紅の耳の下の痣にも塗る。
 その痣は、私がつけた痣だった。恥ずかしくなって目をそらす。

「……あなたが妹紅に傷をつけたって言って、姫は妹紅をペットにしなかったのよ」
「え!?」

 傷をつけた、だと。
 妹紅がキズモノだと言うのか。

「どこだ、蓬莱山は」
「待って。……私も、姫のきまぐれに振り回されてくたびれたわ。懲らしめてくれるなら、案内するけど?」

 そんな都合は知った事ではないが、頷いて案内させる。
 この私から妹紅を奪い取ろうとしたくせに、傷があるとわかったとたん捨てて返すのか。
 傷だと……私たちを何だと思ってそう言うのだ。
 妹紅が好きだって?
 なんいといい加減な奴だ。そんな奴のために、妹紅も私も振り回されたなんて。許さない。

「おい、そこの盗人の人殺し姫!」
「誰?」妹紅みたいに痣だらけの顔で、落ち着き払っている。
「妹紅を匿った上白沢だ。あんたが妹紅に対してした事はどうしても腹に据えかねる。だから覚悟しろ!」
「あんたが“けーね”なのね。……ちょっと、話を聞きなさいよ!」

 弾幕を飛ばそうとすると、向こうもスペルカードを用意した。小癪な。
 と、その間に矢が飛んできて畳に刺さった。

「弾幕しないで。家が壊れるじゃない!弾幕飛ばしたら殺すわよ」

 廂の向こう、渡り廊下の手すりから八意が弓矢を構えて叫んでいる。
 蓬莱山が真っ青になった。どうやら、八意の言いなりになるほうが身のためらしい……
 で、ぽかぽか素手で殴りあう。

「一体妹紅を何だと思っているんだ!妹紅を、たかが人間だなどと考えるな!」ぽか
「なんのつもりよ!私はあんたの恩人なのにっ」ぽか
「恩人だと!?そりゃあ猫になった妹紅は可愛い、しかし猫だから妹紅を大切にしてるんじゃない、キズモノなどと言われて黙っていられるか!」ぽか
「待ちなさい、キズモノってどういう事よ!私は、妹紅がどうしても、あんたじゃないと嫌そうだから、妹紅を諦めたのよっ」ぽか
「嘘を言うな!妹紅は痣だらけじゃないか!」ぽか
「妹紅が先に殴ったのに!私だって痣だらけ……今はあんたのせいでもっと痛いけどっ!」ぽか

 同時にぶっ倒れる。決着はつかない。体は小さいくせに力の強い嬢さんだ。今日が満月なら、すぐにもひねりつぶしてやれるのに!
 執念の差で、私が先に起き上がる。掛け軸をむしりとって蓬莱山を鞭打った。

「いたっ、家具を壊さないでよ!」

 言いながら、花瓶を投げてくる。避けてまた掛け軸で打つ。
 硯を投げられる。掛け軸で打つ。畳に刺さった八意の矢を投げられる。打つ。すり鉢を投げられる。打つ。
 ……なんとまぁ、人から見たら、バカらしい。しかし私は大真面目だったのだ。

 だが、蓬莱山が私の恩人だったというのが、本当だったようだ。
 キズモノとは、私を仕向けて蓬莱山のきまぐれを反省させるため、八意が言った嘘だったのである。
 しかし妹紅との関係を見破られ、恐れ入る。
 蓬莱山に謝らなければ……

「あぁ、待って」

 帰る時、薬を渡された。

「妹紅を人間に戻す薬。猫になるのと同じで、効くのに時間がかかると思うけど。使いたいなら使いなさい」
「……どうも」

 妹紅を抱いて家路につく。
 また、妹紅と一緒に家へ帰れるとは。
 一時はそれも出来なくなると心配したのだ。
 夕日がまぶしい。妹紅の顔が赤く染まった。

「あぅ……けぇね」
「妹紅。起きたか」

 膏薬のおかげで、顔の痣はほとんどきれいに治っていた。

「けぇね……一緒にかえれるの?」
「そうだよ」
「ずっと一緒にいられる?」
「……あぁ」

 そうだと良いと私は願う……
 お前が、人間に戻ってから決める事だ。

「……お腹すいたぁ」
「魚だけじゃ足りなかったな」
「うん。ばんごはん、なに?」
「やっぱり魚だろう?」
「やったぁ!」

 愛しい猫妹紅とも……そろそろお別れしなければ。









慧音さま
 お元気ですか。私はきょうはちょっと疲れたけど、へいきです。慧音がたすけてくれたからです。
 きょうは、とても怖かったです。もう、慧音に会えなくなるんじゃないかって、しんぱいでした。でも慧音がたすけてくれて、嬉しいです。また慧音と一緒に晩ごはんを食べられて、幸せです。
 これから、ずっと、一緒にいてください。
 おふろからあがったら、遊んでくださいね。
 それでは。
                                                 もこう














――――――――――――













(……飲みたくない)

 どうして?

(……人間になったら、慧音、私のこときらいになる?……やだよ、ずっと、慧音と一緒にいたいよ……)

 そんな事、ない。私はお前が猫になる前から、ずっとお前が好きだったんだから…… 

 それに、私だって、お前が人間に戻ったら、ここを出て行くんじゃないかと不安だった。

 私はお前を離すつもりは絶対にない。だから、安心して。人間に戻りなさい……

(……慧音、だいすき)
 






















 妹紅……




 夢だったのか?……























 ぐらぐらと揺すられて目が覚めた。夢で泣いてしまった目に朝の眩しさが沁みて、痛い。
 背中をかかえて抱き起こされた。接吻される……
 ? 
「慧音。おはよう」
「え……?」
 妹紅。
 妹紅……猫の耳はない。
 夢ではなかったのか。
「もう八時だよ。今日、寺子屋あるよね?」
「あっ!」
 いけない。寝坊をした。
 しかし、それどころではない筈だが……
 腕を引かれて起き上がった。立つと、妹紅の身長はまだ私より小さいが、すこししか変わらなかった。猫妹紅は、頭の天辺が私の肩に届くくらいの大きさだった。
 尻尾もない。妹紅は私の浴衣を着ている。猫妹紅のために直した着物は着られなくなったからだろう。服の大きさはちょうど合っているようだ。猫妹紅の、赤と白の二色の浴衣を着られなくなったのは、あれが一番似合っていたから、惜しい。
「朝ごはん作ってあるけど、食べてく?」
「うん。食べるよ」
 机の物を鞄にさらい込む。服を着替え、いいかげんに髪を梳かして居間へ。
 いつもと変わらない、魚だらけの朝食が並んでいる。
「魚は、まだ食べたいのか?」
 妹紅は答えず、恥ずかしそうに笑った。
 猫になったばかりの時は初めに耳と尻尾ができた。その順番と同じで、やはり耳と尻尾から無くなったようだった。魚が好きなのも、いずれなくなるのだろうか?
 人間に戻れて、よかったな……
 ここにいてくれて、ありがとう。
 また妹紅といられて嬉しいのだ。こんなに幸せなのに、急いで行かねばならないのが惜しい。どうしてこんな時にかぎって寝坊などしてしまったのだろう。
 愛しい妹紅を抱きしめたい。しかし今の妹紅は、愛し合って抱きしめる事のできた猫妹紅ではない。だから躊躇した。
 妹紅はずっとうつむいている。
「どうしたんだ?」
 ぴくりと肩が震えた。驚いたらしい。が、黙って暦を指差す。
 見ると、数字の下に(休み)と書いてある。なんだ。今日は寺子屋のない日ではないか。……
「お前!」
「ごめん、ごめん!」
 堪えかねたように笑い出した。騙された。しかし、寺子屋へ行きたくないと思っていたところだから、私も安心して、嬉しくなって笑った。
 妹紅の可愛い笑顔を小突き、頬を軽くつねった。
「悪戯好きもなおらないんだな」
「これは、もとから」
 笑って見つめ合う。猫妹紅より悪戯っぽく目を光らせて、愛らしい唇をきれいな弧形に笑ませている。なんだか人の心を惑わす小悪魔みたいで、もとから、と言うのも頷ける。
 しばらく猫妹紅の幼い顔を見慣れていたから、今の妹紅の顔はずいぶん大人びて見える。ただ可笑しく笑っているだけなのに、色っぽいのだ。私の見方が、そういうふうに色眼鏡をかけているのかもしれないが。
 考え事をしながらじっと妹紅を見ていたら、妹紅は顔を赤くして目をそらした。
 妹紅は、まだ私を愛してくれているだろうか?……
「妹紅……これから、どうするんだ?」
「どうって?」
「……一緒に暮らさないか。匿うのではなく、その、ええと」
 ずばり言うのが恥ずかしくて、別のぼかした言葉を探すが思いつかない。
 妹紅は、人間に戻る前、最後に言った事を覚えているだろうか。覚えているかもしれないけれど、気持ちが今も変わらないかどうか、わからない。
 変わっていてほしくないが、全て妹紅次第だ。私はそれでいい。
 妹紅は何も言わず、うなだれていた。
 やはり、だめなのか。
 涙がこぼれそうになった。
 でも、妹紅の気持ちを尊重する為、こらえる。
 妹紅が私を見た。
「慧音……どうして泣いてるの?」
「いや……」
 妹紅も目を潤ませていた。
「妹紅は、どうして泣いている?」
「……すごく、嬉しいの。……なんでだと思う?」
 妹紅は笑った。
 そうか……
「それは、わかるよ」
 思いきり抱きしめた。
 よかった。本当に……
 嬉しい……
「好きだ、妹紅」
「私も……」
 妹紅の声は、涙にくもっている。
「愛してる……慧音」
 笑って、妹紅。
 ずっと、一緒にいよう……










 ☆月◎日
 家の荷物を運ぶ。楽しい引越し。



 ☆月・日
 モグラが帰ってきた。竹林に放した。永遠亭の花でも荒らしてやるがいい。



 ☆月・・日
 これまでの日記を読み返す。とにかく恥ずかしい。



 ☆月…日
 夏祭り。慧音と一緒に。

 仕立て屋に頼んでいた、真っ赤な浴衣と白の細帯が出来上がった。取りに行って戻り、さっそく妹紅に着てもらう。やはりこれが妹紅には一番似合う。ただ、猫妹紅より成長した体の腰のくびれに、白い細帯は艶かしい。
 今日は里で夏祭りがある。妹紅と一緒に行く為、私も浴衣を着る。いつもの服と変わらない色の浴衣だ。帯は赤。色のせいで男物のじんべいを着ているように見えなくもないが、
「慧音はその色が似合うよ」
 と妹紅は言ってくれた。赤と青、対になって、並んでいると嬉しくなる。
 月のない暗い空の下を歩いていく。しかし里の上空は、無数の提灯の赤い灯で煌々と明るい。あちこちで小さい花火や博打が打ちあがり、よけいにぎやかで星も見えない。そんな空を見上げ、妹紅は楽しそうに笑い、駆け足で進んでいった。祭りの為に履いてきた下駄に慣れなくて、転びそうになって妹紅を追う。
 博打狂の近くを避けて通り、人ごみの中に入ってから、妹紅の手を握った。まわりの人間がみな大きいから、まぎれてはぐれないように繋いだのだが、本当はただ手を繋いで歩きたかったのだ。こんな些細な事でも幸せを感じる。妹紅は微笑んで、手を握り返してくれた。
 無数の人の楽しい話し声につつまれていると、自分も自然と楽しい気分になる。妹紅もずっと笑顔を絶やさないで、あちこち指差しながら出店を見ていた。その名前を一つ一つ言って、嬉しそうに眼を輝かせる。
「お祭り、久しぶりなの」
「そうか。私はこんなに楽しい祭りははじめてだよ」
 最初は美味いが、大体においてあとでパサパサのリンゴに失望するリンゴ飴。くせになる、味付けの濃いお好み焼き。見るだけで可愛いからほとんど通り過ぎてしまうカメ釣り。景品を糊で台にくっつけているインチキな射的屋。一番好きなどんぐり飴。気の早い虫屋。心地良い鳴き声がそのあたりから聞こえ、集まる人もみな静かに聞き入っている。カエル屋なんてのもあった。ここは子供が集まってさわいでいる。いつでも人気の飴細工。かき氷。
 一通り見てまわり、折り返して金を使いはじめる。
 妹紅は水風船を指で吊るしてはねながら、綿菓子を食べ、お面屋で猫のお面を買った。
 かぶって顔を隠す。
「どう?」
「猫だな」
 それだけしか言わないと、妹紅は頬を膨らませてお面を横にずらした。そんな格好が子供っぽくて、可愛く、可笑しかった。猫妹紅の冗談だろうか。でも、お面は普通の猫というより、妖怪猫寄りの顔だった。
 イチゴ飴の店。割り箸のついた真っ赤な飴が並んで、灯りの下できらきら光っている。飴の中にはイチゴは入っていない。イチゴ味の飴なのだろう。
 妹紅は立ち止まって見入っていた。
 ピンポン玉ほどの大きさのが多いけれど、もっと小さいのも、なんの需要があってか、大きいゴマすり棒くらいの太さの、長い特大飴もあった。800円である。安いのか高いのかわからない。他のは200円と100円。
「特大のください」と妹紅。
「食べるのか!?」
「うん」にっこりと笑う。 
 私は200円のを一つ買って舐めた。かなり美味い。隣から妹紅が顔を出して舐めた。その口に押し入れてやる。
「あぅ。うぅん」
「何言ってるんだ」
 唇が濡れてつやっぽくなる。赤い唇……赤い浴衣、赤い飴、赤い提灯、妹紅の赤い眼。世界は真っ赤だ。
 妹紅の眼が一番赤くて、深い。きれいだ。
 妹紅しか見えない。
 飴を舐めさせていたら、なんだか健全でない気分になってくる。
 繋いだ手を引いて、人ごみを離れた。
 建物の影に入る。雑踏のにぎやかさは聞こえるが、ここは真っ暗だった。
「慧音、どうしたの?」
 きょとんとした妹紅を抱きしめ、唇を奪う。
 飴の甘い味がした。
 妹紅が、私の背に手をまわした。さらにきつく抱き、口中を犯し合う。
「っあ、く……妹紅、上手い」
「気持ち良い?」
「あぁ……」
 反撃しようとして、妹紅の舌をつつく。だが、妹紅に絡め取られてしまい、弄ばれ、吸われる。
 どうしてこんなに上手いのだろう。息が熱くなり、痺れてくる。
「ぁ、はぁ……慧音がしてくれた、真似だよ。今まで、恥ずかしくて出来なかったけど」
「そうか……」
 妹紅のほうがウワテかもしれない。なんとなく悔しくなって、首に爪を立てた。
「んぁ!っ、やぁ、けぇね、反則」
「お前だって、急に攻めてくるなんて反則だ。……家に、帰ろう」
 ここでは、もっと先へ進めない。妹紅は赤くなって頷いた。

 雨戸を開け放した廂から家に上がる。
 妹紅が戸を閉めようとした。その腕を掴み、引き寄せて抱く。
 畳に押し倒す。
「慧音っ、戸、閉めないと……」
「閉めなくていい。皆祭りに行って、誰もいない」
「でも……っ」
 口を塞ぐ。上から妹紅の体を押さえつけ、さっきのお返しに、激しく妹紅の舌を貪る。
「っう、あぁ、ん……」
 猫の鳴き声でなくなった妹紅の喘ぎは、ずっといやらしくて、ちょっと聞いただけで興奮してしまう。
 妹紅の細い首を舐める。耳の下、消えかけている痕を強く吸い、また私の証をつける。前よりも強く、濃く。
「あ、ぅ……けぇね、私も、つけていい?」
 妹紅が、私の顎の下を撫でる。
「あぁ……」
 顔を斜めにして下げ、妹紅の口に首を近づけた。
 妹紅は、私の首の付け根、鎖骨のあたりを吸った。強く吸われ、一抹の痛みと痺れが走る。それは徐々に快感に変わっていく。
「はぁ、ぁ……妹紅、もっと、強くして……」
「ん……」
 気持ち良い。妹紅に証をつけられ、体は悦び震える。
 首を吸われる間、横を向いて、妹紅の耳を舐めた。舌を入れると妹紅は敏感に反応し、熱い吐息を私にあてた。
「やっ、あ、ぁ……」
 首に唇をつけたまま喘ぐ。それも気持ち良くて、乱暴に舐め、もっと妹紅を喘がせた。
「あぅ、ん、っあ……」
「妹紅、可愛い……」
 胸を撫で、揉む。猫妹紅より、大きい……
 胸の快感も、増したようだ。指を噛んで耐えている。
 突起が硬くなる。浴衣の上から、唇で甘噛みした。
「やぅ!んぁ、あっぁ……」
 浴衣が濡れるのを構わず、舐め、舌で突き、吸う。
「あぁう、やぁっ……」
「妹紅、声、聞かせて。大丈夫だから」
 噛んでいる指を取り、もう一方の胸も吸う。
「あっ、ぁ、でも、はずかしぃ…っ」
「誰もいないんだ。私なら、いいだろう?」
 開いた戸から、風が吹き込んでくる。体が熱して、汗ばんだ額に冷たく当たる。
 妹紅の浴衣の、裾をはだけた。白い腿が露になる。
「やぁっ……」
 足を閉じて隠す。そのあたたかい腿を撫でた。
「妹紅は、綺麗だ。私の他に……お前を見た奴はいないのか」
 愛しくて、同じ時代に生まれ、ずっと一緒にいられなかったのが悔しい。だから、そんな悪い嫉妬をしてしまった。
「いないよ……」切なそうな顔をする。
「本当か?」
「だって、私の初めて……慧音が、とったじゃない……」
 恥ずかしがり、真っ赤になって、か細く言う。
 そうだ……
 嫉妬は無くなってしまった。心と一緒に、何もかも溶けてしまう……
「疑って、すまない」
「ううん……」
 接吻。そして、腿を撫でる。
 とてもやわらかい。ここも敏感らしく、妹紅は内腿を擦って震えた。
 細い足を見つめる。愛らしい膝、形の良いふくらはぎから、足首はきゅっと締まって、頼りないくらいに細い。小さい足も可愛らしい。
 体を起こし、膝に口づけした。妹紅はくすぐったそうに小さく笑う。
 可愛い両膝をつかみ、足を開く。妹紅は抵抗したが、腿の内側へ顔を入れて舐めると、足の力が抜け、素直になった。
 濡れた陰部を吸う。妹紅は痙攣し、息を切らした。
「っあ!やぁ、んっ、けぇ、ね、やめてっ」
 腰を振って逃げようとする。しかし、両足を抱いて頭を固定し、舌の先で陰核を突いた。
「ひああぁ!あぅ、あ!っあ……」
 皮を剥いて舐める。妹紅のここに触ったのは初めてだが、感度が高い。首も、耳も……妹紅は敏感な体なのかもしれない。
 舐めていると、充血し、硬くなってくる。そうなると、さらに感度が増すのだ。舌を尖らせてねぶる。
「やあぁ!あっ、あぅ!あ!んあぁ」
 ますます濡れ、あふれ出してくる。舌を動かしながら、指を差し入れた。
「っあ!?やあああぁぁ!!」
 とたんにきつく締まり、妹紅は達してしまった。
 ひくつく膣に締めつけられ、抜けない指……
 見ていて、ふと思いついた。
 廂に置いたままのイチゴ飴を、片手を伸ばして取る。袋から出した。
「はぁ、ぁ……けぇね?」
「……大きすぎるかな。舐めて、細くしてやろう」
 横から唇で挟んで、舌を当てて飴を動かし、妹紅に見せる。
 甘い味が溶ける。
 妹紅は恥ずかしそうに眼をそらした。
「ぅ……けぇね、ひどいよ」
「いいだろう?また買ってやるから……」
 ちょうどいい太さまで溶かすのに、時間がかかりそうだった。その間、妹紅を愛撫して……
 と、妹紅に触ろうとした時、妹紅が起き上がって私を倒した。
「ぅあ。妹紅、なにを……」
「舐めてて。私、してあげるから」
 浴衣をはだけられる。
「ま、待て。しなくていい……」
「やだ。慧音も、気持ち良くなってもらいたいもん」
 意地悪く笑う。赤い眼が光って、私は射すくめられてしまったみたいに、抵抗する力が無くなった。
「ぅ……」
「慧音も、すごく綺麗だよ……」
 じっと体を見つめられる。恥ずかしくて、顔に血が上って、燃え出しそうに熱くなる。
 大きい飴を舐めて、表情をごまかした。
 胸を触られる。妹紅の小さい手の、ぎこちない動きが愛しくて、思った以上に気持ち良い。
 飴を舐めながら、声が漏れてしまう。
「ん、ぁ……あっ」
「慧音の、大きい……ねぇ、気持ち良い?」
 口では、言えない。飴を動かして、答えられないふりをする。
 突然、強くされた。
「ひぁっ!ぁ、もこ……」
「気持ち良いの?ちゃんと答えて?」
 怖いくらいに艶かしく微笑む。これは……妹紅の天性なのだろうか?
「っ……気持ち、良い」
「そっか。よかった」
 胸に手をかけながら、私が舐めている飴を、妹紅も舐めた。
 口を開き、動かす舌が淫らで、それを見て、心が締めつけられるように興奮した。
「ぁ、ん……美味しい」
「あぁ……」
「飴じゃなくって、慧音が舐めたからぁ」
「……ばか」
 飴の先端を妹紅は舐める。
 一瞬、目の前の妹紅が赤く光り、また暗くなった。間があって、爆発の音が響く。
 花火があがったのだった。最初の一発のあと、青、黄と次々に上がる。
 空を見て、気を取られていたあいだに、妹紅が私の胸を吸った。
「やあぁっ!」
 妹紅は私を抱き、突起を舌で突く。
「あっ、あ!ひぁ、んっ、もこ……」
 止めさせようとして、妹紅の頭に手を伸ばす。だが頭に触れると、もっと吸い付いてきた。
「やぁぁ、あん、あ……もこ、だめ、もこ……」
「けぇね、可愛い」
 快感に負け、体から力が抜ける。飴を落としてしまいそうになる……
 花火が、胸を吸う妹紅を照らす。
 妹紅の舌の感覚で、快楽に頭は侵され、満たされて、空から響く轟音も、だんだん耳に入らなくなる。 
 飴を取りあげられた。
 妹紅の手が、腿に触れる。
「っあ、妹紅!」
「慧音……」
 足を閉じたいのに、力が入らなくて、抵抗にならない。
 濡れたところに、妹紅の指がさぐり入った。
 触れられ、何も考えられなくなる。真っ白になる……
「慧音、はじめてだよね……?」
「……あぁ」
「私も、慧音がほしいよ……慧音」
 私の耳の傍で、躊躇いながら、甘く囁く。妖しい、潤んだ瞳。有無を言わせない……
 でも、それ以前に……私が、妹紅にしてほしい。
「妹紅……お願い」
「……ありがとう」
 唇を重ねる。甘い……妹紅の愛撫が、とても優しい。
 飴を入り口に当てられる。心臓が跳ね上がる……
「痛かったら、言ってね」
「ん……」
 少しずつ、入ってくる。
「っ、ぁ……」
 太くて、入らない。体が進入を嫌がるみたいに、狭くなって阻む。
「慧音……」
「ぁ……もこ、お願い、入れて……」
 痛みはない。押し広げられる異物感、痺れが、お腹から胸までつながって、へんな感覚がする。
 中ほどまで入ってくる。少し、痛む。
 強くなった抵抗をおして、妹紅が奥へ入れた時、一瞬の痛みが走る。
 それも、奥まで満たされて、はじめて感じた心地良さに、塗り消されてしまった。
「はぁ、ぁ、ぅ……」
「慧音、大丈夫?」
「んっ、もこ……」
 貫かれている。妹紅に……そう思うだけで、感覚も、意識も溶けて、なくなってしまいそう……
 愛欲か、飴か、じわじわとろけて染みてくる。
「もこ、動いて……」
「うん……」
 そっと抜かれる。
 抜けたとたん、膣が妹紅を締めつけて、その痺れに似た感覚が、気持ち良くなる。
 ぎりぎりまで抜いて、また入れてくれる。入ってくる時、熱くて、苦しいくらい気持ち良い。
 ゆっくり、何度も繰り返してくれる。
「あ、あ、ぁ……やぁ、っ」
「慧音、どう?……」
「ん、ぁ、気持ち、良い、……」
 はじめはへんだった異物感も、痺れも、みんな気持ち良くなって行く。
 妹紅……妹紅を想うと、幸せで、もっと気持ち良い。
「もこぅ、好き、もこ……」
「慧音……愛してる……」
 手を伸ばすと、妹紅が来て、抱きしめてくれた。
 妹紅……好きだよ……
「ん、ぁ、ぁ……」
 妹紅を締めつけているのに、動かれ、抜き差しされて、中をめちゃくちゃにされてるみたい。
 奥を押されて、すごい……
「あぁぁ!やぁ、っあ、あぁ」
「慧音、好き……」
 妹紅……
「あ、あ、っあ、はぁっ」
 早くなっていく。
 ただ、気持ち良くて、
 意識が遠ざかり、妹紅も、遠く……
「もこぅ、こわい、もこ……」
「大丈夫、慧音……」
 ぎゅっと抱きしめてくれる。
 妹紅を感じる。
「もこ……っ」
 突かれて、
 一番気持ちよくて、
 そのあと、本当に、白く……




 
 
 
 
 























 妹紅……





































 妹紅が傍にいる感覚。
 

 妹紅……妹紅がいて、それだけで、一番幸せ。


 花火は、まだ続いている。


 妹紅は私を見ていた。


 見つめ合い、口づけする。


 妹紅、好き。


 妹紅……ずっと、いつまでも……
 
 


  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 読んでくださってありがとうございました。『ねこたん』の続きで、お終いです。
 前作(ねこたん)とはだいぶ違う雰囲気になったと思います。なぜかなった。
 蛇足ですが、タイトルは誤字ではありません。わういねこたんです。
 輝夜は良い人。恩人。正直、最後とかはかなりしんどかった……
金鳥
コメント




1.名前が無い程度の能力削除
ひいいいいぃぃぃぃぃっっっっっっっっっっっはあああああああぁああぁぁああああ

最高です
2.名前が無い程度の能力削除
作者さんよ、一体あんたはどれだけ俺を幸せにしたら気が済むんだ。
3.Toshi削除
○月☆日
金鳥さんのお話が甘すぎて、砂糖を吐いた。
ベッドがざらざらして寝にくい。

どうも。続編も楽しく読ませていただきました。
もこたんがぐーやに引き渡されたときはどうなるか冷や冷やしましたが、すごく綺麗にまとまっていて良かったです。一番すきな場面かもしれない。ぐーやが純粋なのもナイス。

次回作も、そのストーリー性あふれる文章を期待して待ってます。
4.名前が無い程度の能力削除
飴屋「計画通り。」

ともかく二人とも幸せそうで良かった。
永遠亭での一幕で常にモヤモヤしたのはきっと嫉妬心のせい。えーりんめ。