真・東方夜伽話

地霊殿へお泊り

2009/06/11 02:57:04
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地霊殿へお泊り

あか

==前書き==
「ねぇ、私の笑顔って、ちゃんと笑顔?」の続き、になります。
かなり引っ張ったので、酷く長い文章では御座いますがこれ単体では分からない部分があるかと。申し訳ありません。
==以上前書き==

「幽香さん~。忘れものないですか?」
「ええ。」
確認したもの。それにたくさん持って行く訳じゃないし忘れる事はないわ。
お花の種をいくつか。あと、またたび。完璧ね。……そもそもその2個しかないけど。
「一応聞いておきたいのですが、暗い所が苦手であるとかは?」
「無いわ。というより経験そのものがないから……。」
怖くなったら袖握ればいい話だしね。一人じゃないんだし。
「そうですか。とりあえず私を見失わないでくださいね?」
「ええ。」
「後、周りには注意してくれると助かります。その、私自身があまり良く思われてないので。
私に被害がなくても、その。保障できないので。」
……そういえば、そうだったんだっけ。でもそんな初めてみるような私をすぐに攻撃してくるだろうか。
「仲間意識は持っているんですが、地上と地下ではその。あまり良く思ってない方がいるから。」
そうか。じゃぁ用心はしておこうかな。
「自分の身は守ることができます。でも、他の人の身を守れるほど私は器用じゃない。」
「肝に銘じておくわよ。でも、私これでも結構自信はある方よ?」
くすくすと彼女が笑う。
「知ってますよ。だから正直な話心配無いとは思ってますし、
もしも、もしも怪我することがあってもある程度なら向こうでも治療できますから。」
「それにしても今日は良く喋るのね。」
「久しぶりですもの。こうやって遊びに来るの。」



話は昨日へ遡る。最後に分かれたあの日から、ゆっくりと日付が変わり、ちょうど一週間経った晴れの日。
お昼御飯を済ませ、向日葵畑をのんびりと散歩していた私の上から
「傘のお陰でここに居るっていうのが分かりますね。」
そう声を出しながら彼女が手提げを一つ片手にふわりと降りてきた。
「久しぶりね。」
「そうですね。ちょっと向こうで色々と片付けておかなければならないこと等があったので、
あまりこちらに出向くという事ができませんでした。」
向日葵畑に漂う風でなびく髪の毛を押さえながら彼女がそう言った。
ちょいちょい、と指で誘って傘の下に入れる。
「ありがとうございます。」
「いいのよ。元よりこういう使い方なんだし。」
といっても、こういう使い方ができるようになったのは、ほんのごくごく最近でしかないのだけど。
「とりあえず、家まで戻りましょうか。」
「ええ。」
そのまま彼女の周りをまわるようにして反転すると、二人で地面に降りて家までの道を歩くことにした。

「いつ来ても、いつ見ても綺麗に咲いていますね。」
彼女が周りへ視線を動かしながら楽しそうに呟く。確かにこの地域のこの向日葵はどの季節であろうが
等しく綺麗に咲いた姿を見せてくれる。それだけに、私のお気に入りの場所。
「私も好きですよ。」
「うん。」
彼女が視線を私に向けながらそう言ったので、同じように視線を向けてそう返した。
うーんやはりこれだ。一緒に傘の下誰かと他愛もない話をしながら歩くことの楽しさ。
いや、楽しさとはまた違う。どこか心が落ち着くというか、穏やかになるというか。
心も躍るけど、それ以上に何だかスッキリとしてくる心地良さ。
「私はずっと幽香さんと喋っていれば幸せでもありますけど。」
「嬉しい事言ってくれるじゃない。」
「だって返答が面白いんですもの。」
……褒めているのかな?それ。

やがて、自分の家の玄関が視界の先に見えた。
「案外歩いてみると距離あるものですね。」
彼女が横で少し伸びをしながらそう言った。そういえばずっと片付けをしていたとか
言っていたけど疲れているのかしら。
「全く、というと嘘になりますね。でも大丈夫ですよ?」
「そう。何かあったらちゃんと前もって言ってちょうだいよ?」
「ええ。頼りにしてますから。」
玄関にたどり着いて、扉を私が開いた。
「それではあらためて、いらっしゃい。」
「お邪魔します。」
さとりが玄関に入るのを確認すると私は玄関の扉を閉めた。
「うぅ~ん」
何だか一仕事終えたような声をさとりが漏らす。
「どうかした?」
先ほどああ言っていたから、ただなんとなく不思議に思えてそう尋ねてみた。
「あぁ、自分の家じゃないけどこう、帰ってきたなぁって感じがするんですよね。」
まだ数回しか家に来たことないのにそう言えるというのはある意味では
凄い能力のような気もしなくはない。まぁ、それだけ寛いでくれているという意味では
私も嬉しいのだけどね。
彼女は扉が閉まるのを確認すると、ゆっくりと靴を脱いでこちらを向いた。
靴を脱ぎ始めた私に対して彼女が口を開いた。
「とりあえず話しておかないといけない事が2つ、あるんですけど。」
「リビングで聞きましょう。」
「はい。」
彼女の口を人差し指一回ぽん、とつつくと私は彼女に先だって廊下を歩いた。
彼女には先にリビングに入ってもらって、私は台所でお湯の準備。
……ついでだ。今のうちにお風呂の準備もしとこう。
「泊って行くんでしょ?」
「ははは。1つ目はそれですね。」
やはりか。うーんじゃあもう一つは何だろう。まぁ、後で彼女の口から聞けるのだから
そう急ぐことではないわね。とりあえずは、お湯。お湯よ。
薬缶に二人でお茶を飲めるだけの水を入れて火にかけると
私はさとりに待ってもらうよう頼み、お風呂場へと向かった。
お掃除自体はマメにしてるからどちらも水の準備だけっていうのが楽なところよね。
ガタガタと浴槽の蓋をずらしながらそう思った。……あとでちゃんと水止めに来ないと。

手を洗って台所まで戻ると、丁度お湯が沸いていた。
今まで彼女と過ごした食事の風景を思い出す。最初は雑炊で、
御握り、そして次がおかゆ。あとクッキーか。クッキーは彼女が持ってきたものだけど
私まともな食事ほとんど出して無いのよね。おかゆに至っては彼女の分無かったわけだし。
そもそも、どうにもお米よね。

彼女が来なかった一週間、ふとそんな事を思い返して、なんとも情けないというか
お米だらけというか。次来たときこそは何か良いもてなしをしなくてはと思っていた。
まぁ、あの時は急だったり体調悪かったりしたのもあったんだけどね。
「フフン」
鼻を鳴らしてしまいながら、がさごそとティーポットを取り出す。
だからこそ、今日こそは。少しはマシな対応をしようと思って。
今日用意したのは前もって乾燥させておいたラベンダーの葉。
いつも長い道歩いて来てもらっているのだもの。少しくらいはこういうので疲れを取ってくれればね。
「ハーブティー、飲んだことあるかしら?」
「いや、えーっと。ないです。」
そうか。じゃああんまり煮出さない感じでいいかな。あまり香りと味が強すぎてもかえって飲めないかもしれないし。
一人であれこれと考えながら、二人分の葉とお湯をポットに入れて蓋をする。
余ったお湯をカップに注いで、気休めに暖めるとお湯を捨ててポットと一緒にトレイにのせ、
彼女の待つテーブルへと私は向かった。
「ちょっと待っててね。」
なんだかポットを見てそわそわする彼女を制して、待ってもらうように頼む。
それでも何だかじっとポットを見つめる眼は目新しいものを見つけた子供のような眼で。
「大人ですよ!」
おっと。……それだけ可愛いって事にしておいてちょうだい。

うーん。もういいかな。
いつもより少し早めに蓋をずらして、香りの出具合を確認すると彼女のカップへと注いだ。
「綺麗な色ですね。」
薄紫になって流れるそれを眺めながら彼女が呟く。そういえば以前夜中に彼女の髪の毛を見たときは
こんな色に見えたりもしたかしらね。どこか透き通るような薄紫で。
「ちょっと癖があるけどね。」
ラベンダー独特の、というものだ。まぁあまり時間をかけて出して無いから大丈夫だとは思うけど。
あぁ、不味かったら残して大丈夫よ。飲め!ってものじゃないから。
自分のカップに注ぎながら心の中でそう呟く。
「しませんよそんなこと。」
笑いながら彼女がお茶を入れる手の向こうで答えた。
入れ終わったポットをトレイにのせてテーブルの端まで寄せると
「まぁ、飲んでみればどのようなものかはわかるわよ。」
そう私は勧めた。
彼女が頷き、カップにちょこんと唇をつけて一口飲んだ。
彼女の動きが少し固まる。やっぱり飲んだこと無い相手にラベンダーを持ってくるのはまずかったかしら?
彼女が少し首を横にかしげながら口を開いた。
「ちょっと癖があるとは思いますけど、飲みやすいですよ?」
「それなら、良かったわ。」
ほっと胸を撫でおろす。あぁ、これで大丈夫ならきっと他のハーブティーもたぶんいけるだろう。
そんな様子を見てか、彼女が穏やかな顔で笑う。
「美味しいわ。」
そんな事をしている間に飲み切ってしまったようで、カタリ、とソーサーとカップが音をたてた。
まぁ、とりあえず楽しんでもらえたならこれ以上嬉しい事はない。
私もカップへ口をつけてゆっくりとあおる。
……なるほどこのくらいの時間だとこの程度しか癖が出ないか。
残りを一気に飲みほして、彼女と私のカップをトレイの上に片付けると、私はあらためて彼女に聞くことにした。

「それで、もう一つの要件っていうのは?」
「あぁ、ぼーっとしててすっかり忘れてました。明日からお時間の都合大丈夫です?」
「ん~」
何かあったっけ、と思ったけど暇な私にとってはむしろ予定がある日の方が珍しいのよね。
「空いてるわよ?」
そう答えると、彼女の顔が少し綻んだ。
「前話した通り、泊りに来てみませんか?私の家へ。」
つまりは、明日からか。
「明日急にお邪魔邪魔して大丈夫なの?」
ふと尋ねると、彼女がぐっと親指を立てた。
「そのためにいろいろ既にやっておきました。」
……思ったより用意が早かった。えーっと何が要るんだろう。着替えは確か持たせたから、
うーん。何か眼についたら持って行くか。特別思いつかない。あぁ、手土産に花の種いくつか持って行こう。かさばらないし。
「大丈夫そうですね。」
こちらの顔色と心の中を窺ってか、彼女が安心したようにほっと息を吐いた。
「じゃあ、お世話になるわ。……ねぇ、さっき私が思い浮かべたほかに何か必要なものってあるかしら?」
「大切なものを忘れてますよ?」
あら?何だろう。すっとさとりが私の顔を指さした。
「健康な幽香さんが必要不可欠です。」
あぁ、そういうこと。
「大丈夫よ。急に寝込んだりしないから。たぶん。」
「分かっていますけど、つい。」
あの時はあの時、今回は今回よ。うん。大丈夫、大丈夫。
今日はあったかいお風呂も……お風呂?

「み、水止めてくる!」
思わず席を立ちあがり、お風呂場へと走ると、引きこんでいた水がダバダバと浴槽から溢れていた。
水たまりのようになってしまったお風呂場に足を踏み入れ、引き込み口を止める。
……浴槽パンパンに水が入ってしまった。まぁ、大丈夫だろう。
溜息をつきながらお風呂場を出て、リビングへ戻ると彼女がティーポットを手にとって中を覗いていた。
「うちの子、飲めるのなら是非にって思ったのですが、たぶん無理なんだろうなって。」
声をかける前に、読んだのか私より先に彼女が口を開いた。
確かに感覚がより鋭いから少しきついものがあるかもね。
あぁ、そう言えばマタタビが机の中にあったような。
「マ、マタタビですか」
「ええ。猫なら好きかなーって。」
「好きなのは好きみたいなんですけど。」
何か含みある言い方だなぁ。
「マタタビをあげると狂暴化するとか?」
「いや、うーん。使ってみると分かりますよ。」
うむむ。まぁ、とりあえず持って行くことにしよう。
流石に何か入れ物を用意しておかないとなぁ。彼女みたいな手提げが必要かもしれない。
でも、あったかしらねぇ。買い物袋なんて物で包むのはちょっと。うーん。
「あぁ、そうですそうです。」
思考をさえぎって、彼女がひょいっと持って来ていた手提げを取り出した。
「そう言えば何が入っているの?」
その私の問いに対して彼女が手提げから服を取り出した。
「私の服です。幽香さんの服預かっているんだし、私のも預かってもらおうかなと思って。
それにこれなら手提げ空になるから、代わりに使います?」
テーブルの上に彼女の服と、手提げ袋を彼女が並べた。
「それじゃ、お借りするわ。でもとりあえずはさとりの服、しまっておいて。
ここに出しておくと、もしかしたら汚れてしまうかもしれないわ。」
彼女が一度頷いて、手提げの中へと戻す。私はその手提げを受け取ると膝元にそれを置いた。
さっきまで彼女の膝の上にあったからだろうか、手提げ自体がちょっとぬくい。

「まぁ、話の筋は読めたことだし、私の部屋に来る?できるうちに準備とか片付けしておきたいし。」
「そうですね。直前に慌てるより良いでしょう。」
お互い納得して、手提げを持って立ち上がると、私は彼女と一緒に私の部屋へと入った。
ひょいひょいと私の前を進んで、ベッドに倒れこむさとり。
「やっぱり落ちつきますねぇ。」
枕を手に取り、仰向けになり伸びをすると枕をそのまま胸元に抱き込んだ。
「そういうものなの?」
「ベッドの上って落ち着きませんか?」
まぁ、なんとなく気持ちは分かる。私にだって落ち着く場所ってのはあるからね。
落ち着く時間、状況、場所。気付かないだけで案外沢山あるんだろう。
「それに、お茶頂いてから実は……そのぅ、少し眠くて。」
まぁ眠くなる人は眠くなるのよね。加えて緊張が解けたのもあるんだろう。
「じゃあ、夕飯ができるまで少し横になってるといいわ。」
「来て早々すみません。」
「いいのよ。大変だったんでしょ?」
「ちゃんと招きたかったので。」
そこまで段々と小さくなる声で言うと、一度欠伸をしてそのまま目をつぶってしまった。
「……何か夕食で希望みたいなのはある?」
「……幽香さんの料理。」
これはこれは。難しいなぁ。
「ごゆるりと。」
私は手提げを机の上に置き、タオルケットを取り出して彼女にかけると部屋を静かに後にした。

「うーん。夕食、お風呂、明日の準備ってところかしらね。」
となればお風呂の準備は半分程度終わっているようなものだから、夕食か。
さて今日は何を作ろう。できればお米から離れたいところだけど、難しいわね。
それに、私の料理が食べたいって言ってたけど、私の料理のイメージって何なんだろう。
やっぱりあれだけ御米中心に出したから、そんなイメージついちゃっているのかな。
いや、違うよね。きっと。……たぶん。
あーでももしそう思っていたら、それをむげにする事もできないし。
とすれば、ドリアかしら?結局ご飯の感触が雑炊とおかゆに続いて似てそうだけど。

結局私はぶつぶつ言いながらも、棚からチーズなどをおろして、ちゃんと量があるかを確認すると
早速ドリア作りに手を動かしたのである。


なんだかんだで御米の準備のために時間を取られ、窯の向こうにドリアのお皿を送ったころには
既に日が落ちてしまっていて、ちょっと横になってもらうどころか、もうかなり時間が経ったような気がしてならない。
まぁ、もうそろそろできるんだし、流石に起こしてこようかな。
コツコツと、暗くなってしまった廊下を歩いて、自分の部屋に向かう。
カーテンを閉めていなかったせいか、月灯りが部屋の中で灯り代わりになっていて、
丁度その月の光の中、ベッドの上でさとりが寝ていた。
流石に少し冷えたのか、枕をがっちりと抱き込んだまま丸くなっている。
何だかお団子みたいね。1個だけだけど。そーっと足音を消してゆっくりと近づく。
寒いみたいではあるけれど、穏やかな顔で眠っている。ちょっと頬が赤い。
熱は無さそうだし良いんだけど。……柔らかそうな頬だな。
人差し指を出して、そっと頬へと指を伸ばす。
触れるか触れないかのところまで指が降りたとき、さとりの目がパッチリと開いた。
「お、おはよう。さとり。」
慌てて指を引っ込めて顔を取りつくろって話しかける。
「おはようございます。……何だか不穏な意識を感じたので。」
不穏って。私はただ頬をね。
「押したかったんですか。」
「うん。」
「だったらもうちょっと無心でやらないと……悶々とした意識で挑まれるとその。分かっちゃいますから。」
そんな風に感じたのか。むむむ。
「と、とりあえず夕食できそうだから、リビングに行きましょう?」
「もうこんな時間だったんですね。すいません長く寝ちゃってたみたいで。」
「いや、私がちょっと手間取っちゃったのよ。もう月まで出ちゃっているわ。お待たせしたわね。」
「美味しそうな匂いですね。」
「あれ、ここまで届いてる?」
「幽香さんからしますよ。頭の中からも。」
ベッドから降りて、伸びをしながら彼女がそう言った。……あぁ、私のエプロンからということか。
確かに、いやでも汚れた形跡ないからなぁ。
「匂いは目じゃ見えませんよ。」
苦笑いしながら彼女が続ける。まぁ、そうなんだけどそう言われると見てみたいじゃない。
「まぁ行きましょうか。」
何だか途方もないとも思い、部屋をゆっくりと出て彼女を部屋の外へと導く。


廊下を二人で進み私は台所へ。彼女にはリビングのテーブルへとついてもらった。
天井とテーブルの上に灯りをつけてテーブルを照らす。
窯からホクホクにチーズの焼けているドリアを取り出すと、それを更に一枚の木製の皿の上に置いた。
「熱いから気を付けてちょうだいね。」
「はい。……でも熱いのがいいんですよね。」
「舌や上あごを焼いちゃ元も子もないわよ?」
「そうですねぇ。」
お皿を運び終え、食器を棚から取り出して彼女に手渡すと
二人で両手を合わせた。
一口目を、と思いスプーンを突き刺すものの恐ろしい湯気が口に入れるのを躊躇させる。
息を吹きかけ、少し冷ましてから口へと運ぶ。あぁ、スプーンが熱い。
でも我慢できないほどじゃない。表面の焼けたチーズの下の少し溶けたチーズとソースが混じり合って。
自分でもちょっと満足、かな。うん。結局お米になっちゃったけど。
「御米だと都合が悪かったのですか?」
同じように一口目を緩んだ頬に入れて頬張っていた彼女が飲みこんでそう尋ねてきた。
「いや、さとりの前に出した料理のほとんどがお米だらけっていうか。
御米から離れないというか。だから少しは違ったものを出そうかなって思ったんだけど。」
「なるほど。」
二口目をすっと口へ運ぶさとり。……熱くないのかしら。
「多少は慣れてますので。熱い事に関して。」
「……なれる事ができる程度の熱さなの?」
「うん。」
溶けたチーズって相当熱いと思うんだけどな。もしかしてさとりの冷めちゃってるのかな?
「いや、そんな事はまったく。ほら、湯気だってこんなに。」
そうなんだよなぁ。ということは本当に慣れてるのか。
「凄いわね。」
「それと、お米ばっかりって言うけれど、今まで出して貰った料理、変わってる事がたくさんありますよ?」
「どんな?」
二口目を息を吹きかけ冷ましながら、彼女に尋ねる。
「作っているときの気持ちですよ。感情、作っている気持ちだって立派な調味料です。」
「それは、そうかもね。私もさとりのクッキーは凄く楽しんで食べることができたし。」
「美味しいじゃなくて楽しいですか。これは手厳しい。」
「美味しいのは言わずもがなだったわよ。苦手でも頑張って作ってくれたことが嬉しいのだし、
それで四苦八苦している姿が想像できるから、楽しいんだもの。」
「むむぅ。」
そんな頬を膨らませたまま苦笑いしなくても。

「ところで。」
半分くらい食べただろうか。もう直接口に運べないほどの熱さからは少し冷めて、
食べやすくなってきた頃私は切りだした。
「ここからさとりの家までって遠いの?」
「そうですねぇ。行きと帰りじゃ私にとってかかる時間が違いますから。」
「それはまた、どうして?」
「ここに来るときは気が早まって足を急がせて、帰る時は後ろ髪を引かれるような気分ですから。
さておき、飛んでしまえばそこまで距離はありませんよ。」
「そうなの。じゃあいつ頃明日出発すればいいのかしらね?」
「できれば一杯おもてなししたいですからねぇ。」
彼女が難しそうに答える。
「じゃあ今日は早く寝て明日の朝に出ましょうか。」
「う、むむ。分かりました。」
……?都合悪いのかな。朝弱い、という程でもないし。
「あぁ、御気になさらず。」
彼女がそう言ってまた一口スプーンを口へと運んだ。
まぁ、問題がないのならいいだろう。私も一口スプーンを運ぶ。

ことり、と最初にスプーンを置いたのは彼女で次いで少ししてから私もスプーンを置いた。
「美味しかったです。御馳走様。」
「それを言ってもらえれば何よりね。」
背もたれにもたれかかって、少しだけ体を休める。
「御風呂の水に火入れてくるわ。落ち着いてきたら入りましょう?」
テーブルの向こうで同じようにもたれかかってお腹に手を置いている彼女にそう伝える。
彼女は落ち着いたように微笑むとそれに合わせて首を縦に小さくおろした。
「じゃあ、行ってくるわ。休んでてちょうだい。」
「ありがとうございます。」

もう空っぽになってしまったグラタン用のお皿を流し台に置いて、お風呂場へと向かう。
後は火さえ入れてしまえば入れるところまできているから、食事の後にいろいろしなくていいっていうのは嬉しいところね。
火元を確かめて、準備を終えると私はまた再び台所へと足を運んだ。
「少しすれば入れるわよ。」
「は~い。」
台所からリビングへ向かいそう声をかけると、
少し間延びた返事が返ってきた。……まだ浴槽に入るにはちょっと苦しいかな?沸いてからしばらく待っておこうかしら。
「確かに少し時間を置いて欲しい、というのが正直なところです。」
背中の後ろの方からそう声をかけられる。あぁ、やっぱりそうなのか。
まぁ私自身も食べた直後はあんまり入りたくないのよね。
後でどっと疲れが来ちゃうし。

食器を片づけて、台所からリビングへと入る。
沸くまで何をしていようか。ふと、さとりの方を見ればテーブルの椅子にもたれて
お腹に手をあてたまま眼を閉じていた。一体閉じた瞼の下で何を見ているんだろう。
「ちゃんとあの子もご飯食べているのかしらってね。」
片方の目だけあけてこちらを見つつ彼女が答えた。
……あの子とは、猫のことだろうか。まぁ妖獣なら一人でも普通の食事に困る事はないだろう。
地下が食糧豊かな場所かは知らないけれど。
「それなりですよ。町だってありますし。」
町か。こちらで言うところ、町というか里に人間が集まっている訳だけど、
じゃあ地下は、妖怪が町を営んでいる世界とでもいうのだろうか。
「形式的にそんなものになるというだけですよ。お互い必要なものと持っている物は違う訳ですから。」
そんなものか。まぁ私だって必要なものがあるから里に行ったりするんだけどね。
「そのようなものですよ。……そろそろ、入れます?」
「えぇ、もちろん。」
「浴びさせて頂きましょうか。」
「ええ。先に脱衣所へどうぞ。私、着替えの準備してくるから。貴女のもね。」
「ありがとう。じゃあお先に。」

椅子から立ち上がり、二人でリビングを出る。
彼女には先に脱衣所に行ってもらう事にして、私は自分の部屋へと入った。
「私の着替え、と。さとりの着替えは~」
自分の代わりの服を取り出し腕に掛けて、さとりの持ってきた手提げを開く。
いつも彼女の着ている服と同じ服が一着入っていた。
……彼女の唇と同じ色の下着まで。うーん。
もやもやと頭の中に彼女がこれを身に付けている姿が浮かぶ。
ぶんぶんと頭を振ってそんな妄想をかき消すと、私はその服を自分の服の上にさらに掛けて部屋を出た。
まぁ、今から下着や裸くらいは見るんだけどね。

灯りがともっている脱衣所へ入ると、彼女が服を脱ぎきって鏡の前に立っていた。
ぼーっと鏡を見つめて何をしてるんだろう。
「え、あぁ。」
彼女が顔だけこちらに向け笑いながら、
「これから先、もっと魅力的になれるのかなって。」
両手の掌を胸の上に載せてそう呟いた。
「あら、私以外に魅了したい方でもできたのかしら?」
「いえ、そういうわけではないんですが。」
「……胸がコンプレックスなの?」
ふと彼女が私の方、もとい胸元をちらりと見る。
「羨ましくて。つい。」
「良いじゃない。そのままで。私は好きよ?」
後ろから彼女の手にそっと手を添える。
「大切なのは胸の大きさじゃなくて、胸にしまうものの大きさよ。その点では貴女の方が大きいのではなくて?」
彼女が珍しく難しそうに口をつぐむ。
「さ、その格好じゃ風邪引いちゃうわよ?」
「……幽香さんが脱ぐのを待ってるんですよ!」
あぁ、そうだった。
さとりの手から自分の手を引いて、急いで上着に手をかける。
「着替え、こっちに置いておくから。」
私の服と彼女の服を小さな台の上に避難させると、私は服を急いで脱いで籠に放り込んだ。
カタン、と音を立てお風呂場への仕切りを開く。
中に入って彼女を手まねきすると、少し遅れて彼女もお風呂場へと入った。

「さ、座って頂戴。」
一旦湯で椅子の上を洗い流してから、彼女を導く。
ひょい、と椅子に座ったのを横眼で確認してから、洗面器でお湯を再び掬うと彼女にそのまま洗面器を差し出した。
「温度大丈夫?」
彼女が手のひらを御湯へと挿して、首を縦に振る。
「うん。じゃぁ目を軽く閉じておいて。あぁ、熱かったらちゃんと言ってよ?」
そう言いつつ、背中へと一旦かけてから、頭へお湯をかけた。
ぶるぶるっと彼女が震えるところを見ると、やっぱり相当冷えていたんだろうな、ということが分かる。
御風呂場の中でさっきの話題を振ればよかったのかもしれない。

後ろ手に手ぬぐいと石鹸を取り出して、彼女の体があまり冷えないうちに泡立てると、
そのまま肌の上に石鹸で泡立った手ぬぐいをおろした。
「あ、自分でやりますよ?」
彼女が前を向いたまま慌ててそう言った。
「今夜の客人はどっちかしら?もとい、ここは私の家なんだし、客人はさとりじゃない。」
ポンポンと肩を叩いて、そのまま首から背中へとタオルで擦っていく。
「じゃあ、お願いします。」
やや遅れて彼女がそう答えた。
「痛くはない?」
「大丈夫ですよ。」
彼女に確認しながら、背中、肩、腕から手の先まで洗っていく。
よいしょ、と私が身を乗り出して後ろから体の前の部分まで手ぬぐいを持って行くと、彼女がビクリと動いた。
「ん?」
思わず私が声をあげてしまう。
「あ、いえ。くすぐったかったので。」
あぁ、まぁ分かる気もするけど。それは我慢してね。
「そんなっ」
「痛くはないんでしょ?」
「そうです……けどッ」
むずむず彼女が動きながらそう答える。ここか、ここが弱いのか。
顎から鎖骨までのラインを優しく手ぬぐいで擦る。
「正直どこもくすぐったいんですけど」
彼女が声を震わせつつ言った。あぁ、だめだ。なんだかくすぐったがっているのを見てると少し楽しい。
そのまま片腕で彼女の体を抱いて、手ぬぐいを鎖骨から胸元へと下ろしていく。
「あは、あははは!」
肩に少し乗った彼女の頭から笑い声が漏れる。そこまで弱いか。
やめる気は、さらさらないのだけど。
「明日あっちに戻ったら幽香さんに風呂に入っていただきます!」
笑いながら、もとい苦しんでいるように見えるけれど、そう言いながら彼女が身をよじる。
「耐えるわよ?私。」
実際耐えられるかは知らないけれど。くすぐられたことないわけだし。
あーでも、こことか、この辺はあんまり触られるのは得意じゃないかもしれないわねぇ。
「覚えておきますよ……!」
そんな親の敵みたいな目しなくても。
少し手を緩めて、お腹周りと腰まで洗うと、彼女に立ちあがってもらった。
……なんだかフラフラになっているようにも見える。
「あれだけ、くすぐっておいて。」
「そうは言いつつも、ちゃんと洗わせてくれるのね。」
「ええ。明日私も洗わせていただきますよ。」
変な恨みを買ってしまったようで。
「まだ足の裏が残っている訳だけど。」
「むぅ……。」
やっと息の落ち着いてきた彼女にそう言いながら、
太ももから下へと手ぬぐいを下ろしていく。うーん、やわらかいなぁ。
「揉まないでください!」
「あぁ、つい。」
でも、擦ってくすぐったいって言われたら揉むくらいしか選択肢が無いのよ。
「そうかもしれないですけど、手つきがその。」
「だって柔らかいんだもの。」
手を被せて少し力をいれば指が埋もれるほどに。

「じゃあ、足の裏出して貰えるかしら。」
彼女にもう一度座ってもらって、今度は正面にまわって私がかがみこむ。
ひょい、と目の前に出された足の足首を手で受け取ると、それだけで彼女が身をよじった。
「いくらなんでも考えすぎよ。もっと無心にならないと、余計くすぐったいわよ?」
「その言い方ですらもう、くすぐったいって前提じゃないですか!
それとなく、幽香さんがくすぐろうとしているのは分かるんですよ!」
むぐぐ……。良いじゃない。明日さとりも私を洗うのでしょ?
「うぅぅ……。」
今日はよく苦しそうに難しそうに唸るわねぇ。
そのまま手ぬぐいを手にとって、くるぶしを擦る。
「ふふふ」
私の頭の上から彼女の笑い声が再び漏れてくる。
笑い声というよりも何か怨恨の詰まった声にも聞こえるけれど。
そのまま甲を洗い、手ぬぐいを滑らせて足の指の間へと潜り込ませると、
彼女の足が支えている手の中で跳ねた。……なんだか手を緩めると顔を蹴られてしまいそうね。
「しませんよ!そんなこと。たぶん。」
自分でも自信がないってのを露呈されると尚怖い。
まぁ我慢できないのは火を見るというより、足を見れば明らかだし
あんまり時間をかけるまでもないか。
そう思いながら、ぐりぐりと指の間を拭うと、足の裏を手ぬぐいで強めに揉んだ。
「ひぃぃ」
何だかもう、悲鳴だ。それでも顔をちらりと見れば
緩んでいるというか笑顔で固まっているというか、ひきつっているというか。
そんな何か矛盾した良く分からない顔で目を瞑って耐えていた。

「終わったわよ。」
「ふぅ、ふぅ。終わり、ですか。」
「ええ。片足が終わったわ。……もう片方、自分で洗う?凄い辛そうだけど。」
「明日徹底的に仕返ししますよ!」
「じゃあ、本当にもう片足もやっていいの?私はそこまで気にしないわよ?」
まぁ、今さらな提案ではあると思うけど。
「自分でさせてください。」
彼女ががくりとうなだれて、手を差し出した。その手に渡して、彼女の少し後ろへと下がる。
彼女が息を切らせながら、同じようにもう片方の足を洗っていく。
「駄目、変な癖がつきそう。」
少しずつ息の調子を戻しながら彼女がそう呟く。
今の彼女じゃ箸が転んでも笑いそうだ。
「流石にそこまでは、」
と苦笑いで呟きはじめた彼女の横腹をつんつんと人差し指でつくと、震えながらぴたりと言葉が止んだ。
「そこまで、みたいね。」
少ししてから彼女が長い溜息を吐いた。

「洗い終わりました。」
彼女がこちらを向いて、手ぬぐいを返してくれる。
「洗ってないところ、どうする?」
そう、それはつまり、お股なわけだけど。あぁ、あとお尻。
うーん、私が洗っていいのかな。手ぬぐい返してくれたけだし。
あぁ、でも自分で洗いたいって言うのならその。渡すわよ?
「お任せします。あぁ、言い方が悪いかな。お願いします?」
彼女がまた立ち上がって、くるりとこちらを向く。洗っていいのか。
あーでも、どう洗えばいいんだろう。
「いや、自分で洗っているのと同じように洗えばいいと思うんですけども。」
少しずつ顔の緊張もほぐれてきた彼女が苦笑いしながらそう言う。
そうか、じゃあ、うん。無心ね。
そう自分に言い聞かせながら、彼女の腰を腕で支えつつ、腿の隙間から手ぬぐいを潜り込ませる。
「そんな無心にって。日頃何考えてるんですか。」
彼女が少しだけ呆れた声でそう言ったような気がする。
「いや、だって自分以外のを洗うって、何だかその。ベッドの延長線上の事みたいで。」
つまりはその、この前二人でした事の。
「まぁ、確かに少しもどかしいし、気持ちも良いですけど。そこまで気にしなくてもいいんですよ。」
そうなのかな。
「むしろ変に意識されてしまうと、あの。私読めちゃいますからかえってもどかしくて。」
あぁ、そう言う事か。確かに裏目に出てしまうわね。
「ごめんなさいね。」
「良いですよ。それが普通なんだと思います。」
ならまぁ、今度からはそうしよう
自分がいつもする通りに洗い終えて、ゆっくりと手ぬぐいを抜くと、私はあらためて洗面器を手に取った。
何だかずっとお湯に触れて無かったからか、洗面器ですくったお湯にささる指が少し熱い。
案外に時間をかけすぎたかな。さとりも冷えちゃったみたいだし。
「かけるわよ。」
そう彼女に伝えて、差し出された頭と、その首元へと洗面器のお湯をかけた。
部分的にぽこぽこと残っていた泡が流れおちて、濡れた素肌だけの彼女の体がどんどんと露わになってくる。
何だか食器を磨いた後のような感覚みたいで、これはこれで小さな達成感があるようで。

石鹸が全部流れるように御湯をかけおわると、一旦私は手ぬぐいを洗い、
再度泡立てると彼女に声をかけた。
「それじゃ先にあたたまっていてちょうだいな。」
頷いて、彼女がすっと浴槽を跨いで御湯へと浸かる。
ぶるぶると震えながら体を沈めて行くところを見ると、ちょっと悪い事をしたかなとも思う。

自分の体はやっぱり自分の体であるからか、多少緩く洗おうともとてもくすぐったいという事はない。
まぁ確かに一部敏感なところはあるんだけど、それだって自分の手なら十分我慢が効く範疇だ。
「自分の手じゃないからくすぐったいんですよ。」
浴槽のふちに顎を載せて、彼女が口の先をとがらせてそう言った。
まぁ、自分の手じゃなければどんな動きかって分からないしね。
「分かっていてもくすぐったいものはくすぐったいです。」
「それはそれで大変ね。」
「ええ。」
お腹を撫でるように手ぬぐいで擦りながら、イスから立ち上がる。

「私の時とは手つきが違うのね。」
彼女がじっとりとした目でこちらを見ながら、私が股の間から手ぬぐいを引き抜くのと同時にそう呟いた。
「意識しようとしてもしなくても。そのどちらにしても、やっぱり無理させるといけないもの。」
自分のだと勝手が分かっているってのがあるしね。
「ぶー。」
「どうかした?」
「明日私はどう洗えばいいのかなって。」
「なるようになるわよ。たぶん。ただ洗うだけじゃない?」
「それはそうですが。」

「よいしょっと。」
太ももと膝を同じように洗っていったあと、ふくらはぎへと滑らせつつもう一度椅子に座る。
「さぁ足の裏でございます。」
彼女が浴槽の中からそう囃し立てる。そんな事いってもねぇ。自分の脚よ?
「いやぁ、少しはこう言っておくとくすぐったさが増すかと思って。」
「それは、難しいんじゃないかしらねぇ。」
手ぬぐいでくるぶしをくりくりと撫でるように擦りながら、彼女の言葉に返す。
「気持ちはいいんですが、くすぐったいんですよ。
何だかこう、触れられた部位からゾクゾクと柔らかな電撃みたいなのが駆け抜ける感じで。」
彼女の話を聞きながら、足の指の間をゆっくりなぞる様に擦っていく。
「むぅ、こういう話してもくすぐったくないですか。」
「だって自分の手だもの。まぁ確かに足の裏は他の所に比べたら弱いのは確かだけどね。」
「良いんですか?ばらしてしまって。」
「どのみち弱い部分なんて触られたらその瞬間さとりにはバレてるわよ。」
「まぁ、分かっちゃいますからね。」
「よし。さとり、ちょっと避けてもらえる?」
足の裏まで洗い終わって洗面器を手に取ると、彼女にそう伝えた。
彼女がそのまますーっと浴槽のふちから離れると、私は洗面器にお湯をついで頭からかぶった。
「あっつい……。」
「でしょうね。早く一緒にあたたまりませんか。」
そのまま浴槽の隅によりながら彼女が呟く。
「そうさせてもらうわ。」
どうせ溢れるに決まっているのだから、と思い洗面器でお湯を掬ってはかけて掬ってはかけて。
体中の泡を洗い落すと、浴槽に手をついて彼女の横へと並ぶように座った。
ざぁぁ、と溢れたお湯がすごい音を立てる。
「なんか、もったいなく感じるのよね。」
「今日は特別多かったですからね。」
「水の量調節し損ねたからね。……あったかいわ。」

二人でそこまで大きくない浴槽の中、膝を抱えて座り込む。
「やっぱり、狭いわね。二人だと。身動きあんまり取れないわ。」
その分ぴったりくっつける、とも言うのだけど。
「そうですねぇ。」
どっちの言葉に返したのだろう。
「身動きは取れなくても楽しい時間には違い無いですから。」
「そう言ってもらえれば何より。」
肺の中に溜まった息を吐きながら、ゆったりと目を閉じると私の肩に濡れた髪が落ちた。
「肩お借りしますね。」
私の肩にのった彼女の頭から、そんな声が漏れる。
「じゃあ私は頭を借りようかしらね。」
そう返しながら、おもくならない程度に彼女の頭にそっと自分の頬をのせた。

「やっぱり御風呂の中ではこの時間が一番幸せですねぇ。」
「そうねぇ。」
「うちの猫も素直にお風呂に入ってくれればいいんですけど。」
「猫は水が嫌いだからね。」
「幽香さん、よかったら手伝ってくれません?」
「御風呂につれこむのを?」
「ええ。……私一人では少々骨が折れるので。」
「まぁ、力になれる範囲なら。」
「助かります。」
彼女がそう一言私に返したあと、彼女が小さな欠伸をした。
「すいません。あれだけ寝たのに。」
「良い事じゃない。寝る子は育つわよ。」
「子供じゃないですよ。」
ぐっと私の肩から彼女が頭を離した。私の頭も元の位置まで戻る。
「のぼせる前に出ましょうか。」
少し瞼が降りつつある彼女にそう囁くと、小さく首を縦に振って立ち上がった。

「今日はちゃんとタオルあるんだから、遠慮せずに拭いてちょうだい。」
脱衣所から出た彼女にバスタオルを渡しつつ、そう伝える。
「ありがとう。」
彼女が一言そう答えて受け取ると、髪の毛をもさもさと拭き始めた。
傍目でそれを眺めつつ、浴槽の底の栓を引き抜くと、私も脱衣所へと出る。
「ふかふかですねぇ。」
「最近は天気も良かったからね。室内干しとはやっぱり違うところがあるわ。」
……地下で洗濯した時、外で干しても中で干しても、違いが出るのだろうか。
ある意味どっちも室内干しと変わらない気がする。
風通しはあるけど、日光ないわよねぇ。
「まぁ、そうですね。でもちゃんと乾きますよ。」
「でないと洗濯できないものね。」
「まぁ火に当てて乾かすって意味でなら、うちの近所に適してそうな場所もありますが。」
「へぇ、そんな場所もあるんだ。」
「ええ。気持ちのいい場所ではないですが。」
「凄い熱いとか?」
「……凄い熱いです。」
髪を簡単に拭いて、タオルで首から下もゆっくり拭きながら彼女の話を聞く。
うーん、こっちの世界の事は大体経験とかで分かってはいても、
あちらの世界についてはまるでわからないことだらけだ。
……私かなり無知、なのね。
「まぁ、しょうがないですよ。」
「そうは言ってもねぇ。」
私の横で彼女が早くも拭き終えたのか、下着をつけはじめる。
うーん、やっぱり下着の色が気になる。
というよりは、見ていると落ち着かなくなってくるような変なもどかしさが胸を襲うようで。
体をまげて足を拭きながらちらりと彼女の方を見ると、見上げた視線とさとりの視線がぴたりと合った。
2、3秒視線が合わさったままだったのだけど、ひょいと彼女が顔を元に戻して再び服を着始めた。

……どこ見てるのよ!程度でも何か言ってほしかった。
何だか妙な間を与えられて、こちらがどう反応するべきか悩んでしまう。
まぁ、良かったのかな?たぶん。うん。

私も体を拭き終えて、下着をつける。
それを彼女がじーっと眺めた。
「うーん。」
そのまま彼女が平然とした顔をしたまま唸る。
「どうかした?」
上下の下着をつけ終えてから私が服を着始めると彼女が口を開いた。
「幽香さんの下着もよっぽど刺激的だと思いますよ!」
急に言われたことにびっくりして、手にとっていた服が落ちそうになるのを必死に膝で受けとめる。
「そ、そうかしらね。」
「ええ。私にはそう見えますよ?」
完全に服を着終えて、もう一度髪の毛を拭きながら彼女が答えた。
ううむ、かなり抑えているつもりなんだけどなぁ。
「刺激的に見えるのは、何も下着の柄だけじゃないですよ?」
「というと?」
「流石に下着が地味すぎたらどうかとも思いますけど、着る側の柄やスタイルだって大切ですよ?」
彼女が拭き終えたタオルを片付けながら、完全にこちらを向いて話を続ける。
「例え下着が地味でもその方の内面を知っていたりしたら、こういう下着もいいな、とか。ありますよ。」
……それって、さとりだからそう思うんじゃないかしらね。
「そうかもしれません。」
「まぁ、でも下着を見せるような相手なんて、今はさとり以外居ないんだしそれならそれでいいわ。」
「ええ。良いところ独占できてうれしい限りです。」
「一体どういう意味よ。」
呆れてそう私が返しながら服を着終えると、二人揃って寝室へと向かった。

「それじゃ今のうちに用意してしまうわ。」
彼女に先にベッドへと行ってもらって、一人彼女の手提げを広げつつ明日持って行くものを考える。
まずは彼女の猫への手土産のまたたび。確かこの辺だったわよね。
そう考えながら、机の引き出しをガラガラと開けて、中を探る。
またたび、花はちっちゃくて可愛いのよね。あぁ、うん。これだ。
小さな袋に入った粉を確認すると、もう一度袋をしっかりと閉じて、手提げの中へと入れる。
「一応、気をつけてはくださいね。」
ベッドに腰をかけた彼女が、私にむかってそう言った。
「そこまで危ないかしら?」
「うーん、というよりは驚くとは思いますよ。たぶん。」
それとなく猫がこれを好んでいるという事しか知らないから、実際使ったらどんなものかというのは
私にはあんまり分からないのだけど。うーん、酒乱みたいな感じで暴れるのかしら。
「落ち着いて与えれば問題ないです。」
「じゃあ、渡すタイミングはちゃんと選ぶことにするわ。」
「それが良いかと。」
彼女に確認しながら、次に何を入れようかと考える。
まだまだ入るけれど、そこまで大荷物にもしたくはない。
「そういえばまだあの薔薇は元気かしら?」
以前彼女が来たときに渡した薔薇、私の力と御日様から離れてはたしてまだ無事なんだろうか。
「ちょっと元気がなくなりましたね。」
「やっぱり、環境もちょっと特殊だからしょうがないのかもね。」
「ある意味では私達からすればこっちのほうが特殊にも感じたりして。」
それはそうなのかもしれない。
「他の花の種も持って行こうかしら。」
「それも楽しそうですね。あの子も喜びそう。」
まぁ、私の事をあんまり知らなかったら、花を咲かすのはそれこそ手品に見えるんでしょうね。
思いっきり種のある手品ではあるけど。
「後は何があるかしら。服はもっていってもらったし。」
「そうですねぇ。特別思いつきません……。健康的な幽香さんくらいじゃないですか?」
「そうね。じゃあ明日何か必要そうなものが目に入ったらついでに持って行く事にすればいいわね。」
「それでいいんじゃないでしょうか。」
手提げの袋を机の上に置いて、ベッドまで歩いて彼女の横へと座る。
「寝ましょうか。」
「あら、今夜は抱いてはくれないんです?」
彼女がくすくすと笑いながら、ベッドへと入る。
「疲れているさとりの体に鞭を打ってまで愛し合うよりは、明日一緒に並んで元気なさとりと出発したいわよ。」
部屋の灯りを消して、私もベッドに入るとそう告げた。
「案外鞭も似合いそうですよね。幽香さんは。」
「そう言う意味で言ったんじゃないわよ?」
「分かってますよ。でも想像しちゃって。」
「私は獣使いじゃないわよ?」
「そういえばあちらには猫がいますね。」
「……怖いなんて第一印象もう持たれたくないわ。」
「……ごめんなさい。」
ぽんぽん、と彼女の頭を叩きながら、ベッドの中彼女を自分の体へと引き寄せる。
「構わないわよ。悪気が無いのは心が読めない私だってすぐ分かるもの。」
「だからこそ、読める私はそこまで考えて喋らないといけないのに。」
「それだけ気兼ねなく話す事ができるって考えれば、何の苦もないわ。
……それじゃさっきとは意味が違うけれど、今日はこれで勘弁して頂戴な。」
胸の中に彼女の頭を抱く。やっぱりこのあたたかい感触は良いわ。
「じゃあ、我慢します。おやすみなさい。」
「おやすみ。」

あれだけ夕方寝ていたというのに、私の胸の中の彼女は
すぐに寝息をたててすやすやと気持ち良さそうに身を預けてきた。
胸にかかるちょっと重めの圧力。苦しくもあれ、それと同時にちゃんと
休めているということでもあるからそれが嬉しくもあれ。
私も一呼吸小さく欠伸をすると、瞼をゆっくりと閉じた。



思いのほか早く寝たこともあって、二人とも揃って目が覚めたのは日が昇りはじめるより少し前で、
それでも十分な程に私の頭はすっきりとしていた。
「おはよう。」
「おはようございます。」
彼女が少し身を離して、こちらに振り返ってそう言葉を返した。
「まだ眠たいなら寝ていてもいいのよ?」
薄目で口の端だけちょっとあげて笑っている彼女にそう告げると、
くるりと私に背中を向けてずりずりと迫り、また私の胸の中へ頭をおさめた。
「好きね。」
「幽香さんだって、まんざらじゃないって感じですけど?」
「そうね、あったかいから何か安心感があるわ。」
自分の手の届くところに居て、自分の胸の中に居て。
ここにさとりが居るから、さみしさを感じなくて済むしね。
「起きたままもう少しこのままで。」
彼女が私に背を向けたまま、そう呟く。
「気のすむまで。と言いたいところだけど、出発に差し支えない程度にね。」
「流石にそこまでは休みませんよ。昨日だって思いっきり休ませてもらったんですから。ただ、ここは心地がいいから。」
そのままくたっと体重がかかってくる。
「私が行ったら私の方が今度は疲れてそうなっちゃうかもね。」
「それならそれで、介抱するつもりですよ。」
頼もしい事で。
あまり声をかけるのも悪いと思い、私も口を閉じるとそのまま枕の位置を直して目を閉じた。
遠いところから聞こえる雀の声に混じって、とても小さな息だけが私と彼女との間に響く。
ぴったりとくっついた私のお腹と彼女の背中、その部分からは私の心臓が鼓動する感覚と
彼女の心臓が小さくなっている感覚が布を超えて皮膚を超えて伝わってくる。

どれ程たったのか、あまり外の様子を観察していないので自分では分からなかったが
ゆっくりと窓から入り込む光の量が増え、部屋の中を照らすようになってくると、
彼女の頭がゆっくりと私から離れ、そのまま上半身を起こした。
「起きますか。」
「そうね。」
ベッドの上に座ったまま伸びをするさとりに習って私も伸びをする。
思わず欠伸が出るが、もう眠さというものはない。
「御握りでも作って食べ終わったら出発しましょうか。」
「分かりました。何か手伝える事は?」
「ん~……今のところ特別ないわよ。それに今はまださとりは客人よ?」
彼女がくすくすと笑って、ベッドから立ち上がる。
私も彼女の背を追ってベッドから降りると、私は手提げを片手に持って二人揃って部屋を出た。

やっぱり朝の床は少し冷たくて、もう十分に冴えてきた頭にこれでもかと喝を入れようとする。
「嬉しいですよ。」
急に彼女が口を開いた。
「久しぶりに客間に人が泊って行ってくれるというのは。」
前を歩く彼女のかかとがちょっと浮いて、背延びをしながら楽しそうに歩く。
そういえばあまり人が来ないんだっけ?さとりのお家は。私の家もそうだけど。
「これからもっと幽香さんが来る機会があれば、その心配はなくなるわけですね。」
くるりと振り返ってそう言いながら薄目で笑うとさとりがリビングへと入って行った。
彼女の姿を目で追いつつ、台所へ入ると昨日ドリアに使ったごはんの残りを確かめる。
うん、量は大丈夫だ。ちょっと……カチカチになっちゃっているわね。

「焼きおにぎりという手段もありますよ!」
テーブルに早速座っているさとりが、リビングからそう叫んだ。
なるほど、それならご飯の硬さなんてあんまり問題でもない。少しは暖まりそうだし。
網使うと……匂いついちゃいそうだな。フライパンでいいか。
作り方をなんとなく思い出しながら、手を洗って棚からフライパンを取り出すととりあえず残っていたご飯で
かなり固めに握った御握りを作った。といっても、本気で握るともはや御握りでなくなってしまうので、
形は維持させているつもり、ではあるけども。
料理用の刷毛を引っ張り出して小皿に醤油とごく少量の砂糖を入れて混ぜたものに刷毛を浸す。
……こんなものだろうか。
味付け用のしょうゆの味を確かめつつ、フライパンに火をかけると、私は御握りを手に取った。
「フライパンで焼くのって難しくないですか?」
リビングから彼女の声がする。
確かに、魚を焼くような網を使った方が楽と言えば楽だけど。魚の匂いついちゃいそうだからね。
「網で焼けば案外さとりの所のネコなら喜ぶかもしれないわね。」
「かもしれませんねぇ。あの子なら少し喜びそうな気もします。ただ、魚を欲しがりそうですが。」
まぁ確かに匂いだけじゃね。
フライパンの温度を手のひらでなんとなく確かめながら、そっと御握りを置いていく。
下手をすると焦がしてしまう。けれど、火が足りないと後が崩れる。フライパンで作る時に気をつけないといけないのはこれだ。
「私だったら焦がしますね。失敗して。」
彼女が何だか恨めしそうに言う。……案外に経験があったのかもしれない。
「私だって料理はしますよ?」
苦しそうに言うところを聞くと、なんとなく四苦八苦している姿が想像できる。
焦がしながらあたふたしつつ、それでもフライパンを握ったまま慌てているさとりの姿というのも可愛いかもしれない。

軽くフライパンを左右にゆすりながら、表面の焼け具合を確かめつつ、表面が焼けたものをひっくり返していく。
う、1つちょっと焦げた。まぁいいや私が食べれば。
反対も同じように焼きながら、刷毛を使って表面に赤い醤油を塗っていく。
「良い匂いですねぇ。」
確かに、醤油の焦げて行くような匂いがゆっくりと立ち上るこの瞬間は、食欲を酷くそそる。
まぁここで気を抜くと、後で食欲をごっそり持って行くほどに酷い目にあうのだけど。
焼け具合を確認したところで、もう一度ひっくり返す。
あぁ、今度は1つ崩れてしまった……。いいやこれも私が食べればいい話。

フライパンの上で、少し焦げた御握りと形が崩れてしまった御握りと、なんとかうまくいっている御握り二つが、
私が揺らすフライパンの上で踊る。ある意味ご飯の醤油炒め、とも言う。
最後に表面の焼き色を合わせるために軽く塗り直して少しだけ焦がすと、
まず彼女のための焼きおにぎりを彼女のお皿にうつした。
残ったちょっと焦げた御握りと醤油炒めを自分のお皿に盛りつけ、
フライパンを置くとそのまま箸と皿を持って私はリビングのテーブルへと向かった。

彼女は私のお皿を見るなり少しだけ口の端を持ち上げてにやりと笑った。
「私にだって失敗はあるわよ。」
「私も人の事は言えませんよ。……2個とも貰っても良いのですか?」
「ええ。できれば上手にできた方を食べてほしいもの。」
「わざわざ難しい注文をしたのは私ですから。半分食べません?」
「いや、そこまで気を使う必要はないわ。」
「あら、食事は皆で楽しむものですよ?」
彼女が上半身を乗り出して、彼女のお皿を持ってきつつそう言った。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
彼女が頷いて、私のお皿からちょっと焦げた焼きおにぎりを受け取り、
私は彼女のお皿からちょっと小さ目の焼きおにぎりを貰うと口へと運んだ。

「見た目も味も美味しく出来るのは羨ましいですよ。」
彼女が箸で口に運びながら、そう言った。
今日のはちょっと形崩れちゃってるけどもね。
「料理の見た目も、料理の味も、料理をしているときの幽香さんの焦りも
一緒に味わえるんだから、一粒で3度美味しいですね。」
何かそういわれるとちょっと悔しい気持ちもするのだけど。
まぁ、美味しく頂いてくれるのなら悪い気なんて全くしないわ。
うん、自分でやっといてなんだけど美味しいわ。

そのまま二人でパクパクと食事を口へ運ぶと、私たちはお皿を片付けてリビングのテーブルで少し休んだ。
外は完全に日が昇って、雀以外の鳥も空を飛び始めた頃、私達は玄関を出たのである。






家の外で少し話をした後、私達はすぐ飛んだ。
日がまだ高くないから、日傘として二人で、なんてマネができないのが少々残念ではあるけれど、
それでも並んで飛べるというのは気持ちが良い。
「ワクワクしてくれています?」
彼女が顔を前に向けたまま口を開く。それはそうだ。
ある意味では私にとってのはじめてのお泊りでもあり、どこか緊張もあり、
楽しみであり。こんな年で言うものでないのかもしれないけれど、
ワクワクするなというのは少々無理な話でもあった。
「楽しみにしてるわよ?」
私がそう返すと、彼女が嬉しそうにそれでいてもどかしそうに笑いながら、少し速度をあげた。
それに合わせて私も少し速度をあげる。
「どのあたりから地下へ?」
理解できる友達が欲しいとはいえ、この幻想郷には顔をできるなら合わせたくない者というのもいる。
例えばその、……多すぎる。いろいろだ。「私がしてきたこと」と「私がしたこと」というのは必ずしも一致しない。
しょうがないといえばしょうがなくあり、私自身がふがいないとも言う。
その点では関係のほとんどなかった地下というのは魅力の対象でもあり、
太陽の手の届かない不安の場所でもある。

「こっちですよ。」
さとりが、急にスピードを緩めつつ、降下しはじめた。
眼下に広がっていた風景の片隅に、さとりの行く先にやがてほら穴が見え始める。
こうして見られるという事は案外でかい穴なんだなぁ。
二人で穴の入口に立って、改めて中を眺める。……相当奥まで続いていそうだ。
「そりゃそうですよ。私の家までも、その先までも続いているんですから。」
「広いのね。」
「ええ。あっちもあっちで。」
彼女がふと私の顔を覗き込む。
「……私を見失わないでくださいね?私は慣れてるのですが。」
「大丈夫よ。たぶん。」
たぶん。そんな壁に爆弾が仕掛けてあるとか言わない限りは大丈夫よ。
「爆弾は無いですが、よからぬものは多いんですから。……そうですね、まず蜘蛛の巣には触れない方がよろしいかと。」
ここからじゃ、蜘蛛の巣なんて一つも見えないけれど。
「まぁここからじゃ見えませんね。すぐわかるとは思います。でもあまり刺激しないでくださいね。」
「うん。そう言うのなら。」
家の傍にあった林の中で見た蜘蛛の巣、そこにかかった蝶の哀れな姿を思い出しながら、
そう答えた。まぁ私は蜘蛛の巣にかかっても壊せるくらいの力はあるつもりではあるけども。
「その行動が嫌われるんじゃないですか?」
……そうでしょうね。
なんだかんだ力に頼ってしまうというのは私の悪いところだろうと思う。
地霊殿でこんな無様な考えはしたくないわね。とりあえず滞在している間だけでも穏便にしておかないと。
下手な私の行動で迷惑をかけてしまう相手がいるのだから。
「そこまで硬くならなくてもいいですけど。……リラックスしてくださいね?」
「努力するわ。」
彼女が床を蹴って、宙を飛び始めたのを慌てて追いかける。

中は最初思っていたよりも薄暗くはあったけれど、また一方で入口からさしているわずかな光が
洞窟の中をほんのりと遠くまで照らしていて、全く見えないという程でもなかった。
しばらくとんでいると、彼女が話していた蜘蛛の巣、というのも洞窟の隅の方で見かけたりもして、
確かに絡み合いになりたくはないな、とも感じた。
加えて何か、そう。異様な雰囲気がする。ここからは。
「まぁ、地上の方々から見れば嫌われ者が集まりに集まったような場所ですからね。
そう思うのは無理のない事だと思いますよ。」
むぅ、申し訳ない。でもやっぱり、異様なのは異様だ。
ドキドキして余計に神経が敏感になっているのか、どこからか気配までも感じる。
明らかに見られているようなこの感覚。
「私達側からしても、幽香さんみたいに地上の方が来るっていうのは相当異様な事なんですよ。」
そういわれると、そうだ。でもやはりこれは息がどこか詰まる。
みしり、と変に握ってしまった傘から嫌な音まで響く。駄目だ、落ち着かないと。

けれど進めば進むほどに視線の数が増えているような気がして。
錯覚なのだろうか。いや、たぶんそうじゃない。なんだか呼吸まで乱れてきた。
「幽香さん?大丈夫?」
もう、だめだ。手当たりしだいに撃ちたいくらいだ。息苦しい。
なんなのよこの感覚。
「幽香さん!落ちてる!」
あれ、落ちてる?いや、それよりどっちが上だろう。私はどっちに向かって飛んでいるんだ?
ズキッと背中に強い痛みが走り、次いで全身が打ちつけられるような痛みに襲われた。
「……あれ?」
こっちが下、か。
「大丈夫ですか!」
どうやら上らしい方向から彼女が降りてくる。
「あぁ、うん。大丈夫。大丈夫よ。」
とりあえず返すものの、背中が痛い。不意打ちを食らった気分だわ。
「視線、まだ感じます?」
「ええ。」
「うーん。」
彼女が私の手を取って立ち上がらせてくれる。ちょっと汚れちゃったわね。
「確かに入って最初は見られていたのは本当なんですが、あれ以降視線無いんですよ……?」
言っていいものか、といった表情をしつつ彼女が小さくそう言った。
思わず聞き返してしまいたい気分ではあったけれど、今は……その視線を感じない。
「やっぱり、不安ですか?」
「そんなことない、って言いたいけど。不安だったみたいねぇ。」
一度深呼吸をして、さとりの顔を見る。
うぅ、いかにも心配そうな表情だ。
「だって、心配だもの。」
案外に私の心は弱いんだな、と改めてそう思った。
「不安になったら、ちゃんと頼ってくださいよ?」
彼女がとっていた私の手を一度強く両手で握る。
……そうだな。次はそうさせてもらおう。でも少し恥ずかしいわ。
疑心暗鬼になって動揺して墜落するというのも。
「それを言われると、異変に気づいていながらも一歩遅かった私はどうなるんですか。」
「ごめん。」
情けないな、私は。

彼女に握られたまま、地面を蹴って再び彼女の家があるだろう方へと飛びはじめる。
握られ少し引っ張られるような形になっている私はただただ深呼吸をしていた。
あれから何度か確かな視線を感じはして、落ち着かない気分になったりもしたけれど
彼女にじっと見つめられるうちに少しずつだが慣れてはいった。

穴に入ってからどれだけ経ったのか。太陽も月もないようなこの世界で、
正確な時間を知る術を私は持っていないが、もうお昼頃なんじゃないだろうか。
「ん~、まだお昼よりは前ってところですかね。」
「あれ、まだそんな時間?」
「ええ。大体今いる位置でどれだけ時間かかっているかはわかりますから。」
そういえばいつも彼女はここを通ってくるのか。
「もう少しですから、安心してくださいな。」
そういわれ、顔をあげたさとりの行く先にわずかばかりの灯りが見える。
やがて、開けた場所に出たと思えばそこは薄暗いながらも小さな町で。
人間の里のお祭りの後のような……まぁ、遠巻きにしか見たことがないのだけど。
妙な静けさというか、そういうものが漂っている。

「あれですよ。」
きゅっきゅと彼女が手を引っ張って、見上げた私と視線を一度合わせると、
前に視線を戻しながらはるか前方を指さした。
目を凝らした先に確かにお屋敷が見える。
……いや、見えるけど、大きくない?
「まぁ、地霊殿って言われるくらいですからねぇ。」
「やっぱり殿だけあるわね。」
近づいて行けば近づいて行くほどに余計に大きく見えるようなそれは、う~む。
二人で玄関の前に降り立つ。
「でっかいわね。」
「やっぱりそう見えます?」
「そりゃあ、ねぇ。」
でかいんだもの。
かちゃり、とさとりが扉を開いて、手まねきする。
「ようこそ、我が家へ。暗い所だけど、それなりにおもてなし、頑張るわ。」
少し安心したようなにっこりとした笑顔を浮かべて彼女が言った。
私も頷いて招かれるままに扉の内へと入る。
カタン、と後ろで扉が閉まる音がして、彼女が私の隣に並ぶ。
「あら、てっきり燐が出るものと思っていたけど。」
彼女が不思議そうにそうぽつりと呟く横で、私はじっと上を見上げていた。
高い部屋の天井、そしてステンドグラス。外はあんなに薄暗かったのに、この建物の中の方がより暗いからか、
そのわずかな光さえ取り込んで部屋の中をいろんな色で照らしている。
「綺麗ね。とても。」
「ええ、頑張って磨きました。」
……だから、来たときあんなに疲れてたのね。
「……実は燐がしたんですけど。」
違ったか。
「あぁ、こっちです。先に客間へ案内しますよ。」
あまりにも長い間暗いこの世界に居たからか、とても暗い廊下なはずなのに、割とハッキリと見える。
彼女の後を歩いて、何人も並んで通れそうな廊下を進むと1つのドアの前で彼女が止まった。
「ここがお客様用の部屋です。……ん、燐はここにいるみたいね。」
ドタドタドタ、と部屋の中から音がして、ガチャっとドアが開いた。
「おかえりなさい!」
元気の良い声とともに、ドアが勢いよく開き、そしてドアが私の顔に直撃した。
私の顔で跳ねかえっていくドアの向こうに、心配そうな顔で私の顔を見るさとりと、
以前花畑で見た彼女の言っていた猫、今は私達と同じような人型の姿の彼女が
真っ青な顔で冷や汗を流しながらこっちを見ていた。

「こ、こんばんは。」
顔面がものすごく痛いのだけど、たぶんここで泣いたり怒ったりしたら負けなんだと思う。
痛いのをなんとかこらえて、必死に笑顔でなんとか挨拶をした。
「ヒィッ!ごめんなさいぃぃ!」
叫びながら部屋の中へと逃げ込んでいく彼女。一方でさとりは何とも言えない顔で私を見ていた。
「ごめんなさいね。」
「私何か、悪い事した?」
「いえ、その。必死に我慢して作った笑顔がすごく凶悪だったんだと思いますよ。」
どう見ても苦笑いな顔で、そうさとりに言われた。
にしても凶悪って言われると何だか辛いわね。確かに私の作った笑顔は怖いって言うけど。
凶悪って……。何だかがっくりと肩が落ちる。
「私の第一印象が……。」
「あはは……。燐も全く同じ思考みたいだけど。」
つんつんと部屋の中を指さした彼女のその指の先を追って、中途半端に開いたドアから中を覗き込むと
部屋の隅の方でガタガタと膝を抱えて小さい動物のように震えている彼女が目に入った。
どう見ても、私には怯えているようにしか見えないんだけど。
「ええ。少なからず。」
とりあえずこのままでは何もできないので、二人で部屋に入ってドアを閉めた。
ガタン、と音をたてたドアに彼女が吃驚して膝を抱えたまま跳ねる。
手提げ袋や傘をさとりに預けて、そのまま一人彼女へと近づく。
「もしもーし。」
そーっと声をかけたつもりなのだけど、膝を抱えたままガタガタ震えている彼女が返した返事は
「ひぃぃぃぃ!!」
悲鳴だった。駄目だ、せめてこの子くらいには好かれようとは思っていたのに。
さとりがいつも楽しそうに話してくれるこの子くらいは。なんて情けない。
これでは出鼻を挫かれたというより、出鼻をたたき折られた気分だ。
いや、実際鼻も相当痛かったんだけど。私、鼻ちゃんとついてるよね?

後方で、パンパンと手を叩く音がしたので振り返ると、さとりが歩いて来て彼女の前にしゃがんだ。
「燐、ちゃんと謝る時は相手の顔をみなさい。それに幽香さんは今そこまで怒ってはないわよ?」
まだ、ガタガタと震えつつも、顔をあげて私達を見上げる彼女。
私もさとりの横にしゃがんだ。というよりこんな辛そうな顔で見上げられるのは、辛い。
「も、申し訳ありません!」
彼女が正座をして、ベットリと頭を下げて謝る。
「気にしてないわよ。私、頑丈だし。」
理由としてはどうなのかとも思うけど、そうでも言わないと彼女が納得してくれなさそうで。
とりあえず頭をポンポンと撫でると、手のひらにあたる彼女の耳がペコペコと動いた。
……これは新しい感触ね。ふむふむ。少しふさふさしていて、でも柔らかいようで、どこか弾力がある。
「あ、あの。」
ぼーっとしばらく触っていると、彼女がそう口を開いて我に返って彼女の顔へと視線を向けると、
真赤な顔をして慌てている顔が目に入った。慌てて耳をさわっていた手を引っ込める。
「いや、つい。」
くすくすと横でさとりが笑う。
「とりあえず、挨拶したら?」
口元を抑えて笑いながらさとりが言った。
「あ、あの。火焔猫燐です。」
「風見幽香よ。よろしくね。……なんて呼べばいい?お燐ちゃんでいいのかしら。」
「お、お好きに読んでくださぃ」
「そう、じゃあよろしくね。お燐ちゃん。」
かしこまったままの彼女が、再び一度ぺこりと頭を下げた。

「そういえば何でまたここに居たの?」
気がついたら私の横から既にベッドまで歩いて行ってその上に腰かけていたさとりがそう言った。
そういえば聞いていた話だと玄関で健気に待っていたりしたそうだしね。
「花の水換えをしないとって思って。何か不備があってはいけないと思って。」
私の前でかしこまっていた彼女が立ち上がってそう答えた。
私もたちあがり何気なしに部屋を見回すと、ベッドの脇にこの前渡した花瓶を見つけた。
……確かに薔薇がちょっと元気ないわね。でもあれから経った時間を考えるとよく持った方だわ。
手入れちゃんとしてくれていたのね。
「ありがとうね。さとり。それに、お燐ちゃん。」
二人とも笑ったままで返事はなかったが、お燐ちゃんの方は尻尾がひょこひょこと揺れていた。
耳と一緒であれもやっぱり感触が気持ち良さそうだ。……なんで私の手こんなに汗かいてるんだろう。
「ええ。あれも一品ですよ。」
楽しそうに横で笑うさとり。一方で何の事か分からないお燐は立ったままキョトンとしていたが、
急にハッとなるとそのまま私の横をすり抜けてドアまで走って行った。
「お昼御飯、準備してきますね。」
くるりと顔だけドアの端から出して、笑顔で引っ込めると
床を足で蹴る音が小さく部屋の中に響いた。

「少しはお燐の調子も戻ってきたみたいね。」
さとりが部屋のドアを閉めに行ってそう呟く。確かに聞いた話ではもう少しこう、
元気で活発なイメージがあったんだけどね。
「萎縮しちゃったみたいで。相当申し訳なく思ってたみたいですよ。
本当、頭の中真白になって[やっちゃったー!]、って叫んでたし。」
「私の立っている位置が悪かったのよ。」
「それを言うとあの位置で止めさせたのは私なんですよ?」
うぐぐ。
「こうなるとは思わなかったので。それよりお鼻、大丈夫?」
「ええ。勿論。どっちかっていうと、ここのお花の方が問題ね。」
「お燐も私もそこまでお花について知識がないもので。これが精いっぱいって所なのよ。」
それはしょうがない。どのみち環境があちらと比べたらあまりに特殊すぎるのだもの。
「あまり無理させるのもちょっとね。さとり、手提げ袋から種の袋取ってもらえる?」
さとりが手に持っていた手提げ袋から、種の袋をとって私に手渡した。
中から向日葵の種を一つとって、もう片方の手で花瓶の薔薇を引き抜く。
「この子、もう休まさせてもらうわよ?」
さとりにそう伝えながら、手の中の薔薇に意識と力を向ける。
私の手の中の薔薇が縮み、そして種に戻ると入れ替えるように私はその手に向日葵の種を握りなおした。
今度は私の手の中で種から成長した向日葵が手の内側から広がっていく。
しかしまぁ、あまりにも普通に成長させると花瓶に収まらないのでちょっと小さくなってもらったのだけど。

ちらりちらりと花瓶を見ながら、大きさを少しずつ合わせて行く。
案外に小さく咲かせるというのも難しいものだな。
「やっぱり何度みても凄いですよね。」
後ろから覗きこみながら、さとりがそう言った。
「そういわれると何だかする甲斐があったような気がするわ。」
その言葉に返しながら、調整を終えた向日葵を花瓶に挿しこむと私はベッドに座った。
薔薇の種を花の種の袋に収納しながら、再び手提げの中に戻す。
改めて部屋の中を見渡す。やっぱり私の部屋よりは大きいのね。
ベッドは、我が家と同じくらいの感触で助かるけど。それに広いし。
……というか一人で寝るには広すぎるわよね、これ。
「あら、独りという事はないので、安心してくださいな。」
さとりがぴったりと私の横に座り、私の手を取る。
しばらく私の手をじーっと眺めていると、さとりがそのまま手を彼女の耳まで持って行った。
「?」
「わ、私の耳じゃそこまで気持ち良くない?」
「……妬いているの?」
「ち、違う!」
「確かにあの耳も気持ち良かったわよ。正直さとりが羨ましいくらいに。
でもそれは、それ。これは、これ。私はさとりをさとりとして見るし、お燐ちゃんはお燐ちゃんとして見るわよ?」
まだ少し悔しいのか、さとりがちょっと口を閉じて俯いた。
「私はちゃん付じゃないもん。」
「その方が良かった?でも、変えないわよ。対等に話してくれる今のところ唯一の存在だもの。」
それに、今のこういう感情がちょっとむき出しになったような表情見ている方が私は楽しいし。
気持ちが小さくても妬いてくれるというのはちょっとこれはこれで気分が良い。
いやまぁ、こんな気持ちも読まれている事を考えると少し複雑ではあるけどね。
「そうですよ!全部丸聞こえですよ!」
「二人に仲良くしちゃ、いけないかしら。」
「うぐ。」
彼女が息を詰まらせたような苦しそうな声をあげる。
元より彼女は私がどんな考えでここまで来たか、くらいは知っているはずだもの。
確かにさとり自身から見れば良い気持ちじゃないかもしれないけど。
少しでも輪を広げておきたいんだもの。
「申し訳、ありません。」
「まあ、謝る事でもないとは思うわよ。」

「デキタヨ~!」
部屋のドアの向こうの遥か遠くから、先ほど出て行ったお燐ちゃんの声が聞こえる。
どうやら元気は取り戻してくれたのか、少し間延びしてるけれど明るい声には違いが無かった。
「行きましょうか。」
彼女が何かを諦めたような観念したような、そんな表情をしながら、
ベッドに座っていた私の隣から立ち上がり私の手を取る。
その手の力を借りて私もたちあがると、二人で廊下へと出た。

どうやら部屋の中は廊下よりは明るかった為か、急に暗くなったようなそんな印象を受ける。
「灯り、必要でしたかね。私達慣れちゃってるもんで気が行きませんでした。」
「さとりが急に走り出さない限りは必要ないわよ。」
さとりの肩を掴めば、目を閉じていてもたどりつけるだろうし。段差とかは別としてね。
「同じ階ですし、段差もないので安心してください。……夜には何か燐に用意させましょうかね。」
さとりの肩へ手を置いて、廊下を二人で進んでいると、少しずつ良い匂いがしてきた。
お魚を焼いた匂い。そして溶けたバターの匂い。やがて視界の先に扉から灯りの漏れた部屋が見えた。
ひょっこりとお燐ちゃんが顔を覗かせてぶんぶんと手を振る。
向こうから暗闇の中の私達が見えるというのは正直凄いとは思ったが、元が猫であることを考えたらどこか納得した。

部屋の中へと足を踏み入れると、割と小ぶりな丸いテーブルの上に少し大きめのロウソクが1本。
それを囲むように料理が3人分既に並べられていて、既に引かれた椅子が用意されていた。
漂ってくる匂いが、テーブルの上に並べられたお魚のムニエルの匂いが、自然と唾液を口の中にださせる。
「美味しそうね。」
「お燐の食事は保障しますよ。」
「ささ、食べましょ!」
3人揃ってテーブルにつくと、パチンとお燐ちゃんが手を打って
「いっただきまーす!」
そう叫んで魚にフォークを刺した。
「元気ねぇ。」
「ええ。燐の長所ですよ。」
本当にそう思う。美味しそうにもう一口目を口に運んでいる彼女を見ながら、私もフォークを魚に立てると
焦げた表面の感触の向こうに食べる前から分かってしまうほどの柔らかい身の感触が伝わってくる。
ほくほくと湯気をたたえるそれを口へと運ぶと、舌いっぱいにやや濃厚なバターの匂いとそれでいて
あっさりとした身の感触が広がる。
「美味しいわ。どう褒めたものか迷うほど。」
「日頃から不器用な私に代わって作ってますからねぇ。」
「へへーん!」
自信満々といった感じに胸を張るお燐ちゃん。……あら、案外さとりより胸あるんじゃない?
ちらりとさとりの方を見ると、物凄くじっとりねっとりした目つきでこっちをにらんでいた。
……ごめんなさい。と心の中で謝っておいて、料理を口へと運ぶ。
「さとり様以外の口にも合ってくれるってのは嬉しいですねぇ。」
椅子の向こうで尻尾を横にぶんぶん振りながら、ひょいひょいと口へ料理を運びつつお燐ちゃんが言った。
いやぁ、十分な御馳走だと思えるほど美味しいんだけどね。
そう思いながらふと視線を下ろす。気がついたら私のお皿の上のムニエルももうほとんど無くなっていた。
「猫の手も借りたいって言葉もあるけど、この猫の腕は本当に借りたくなるわね。」
「貸せませんよ!」
隣のさとりが、そう口をはさむ。むぅ、また妬いてる?
ただ褒めたかっただけなのだけど。というかそれは分かっていて突っ込んでるわね。

じーっと目があう私とさとりを見ながらなのか、少し豪快にお燐ちゃんが笑った。
「今日のさとり様すっごい楽しそう。」
ちょっと疑問符が頭の中に浮かぶような言葉だったが、確かに私からもややイキイキとして見えた。
かくりとさとりが肩を落として、溜息を吐く。
「そうね、二人の考えてる事が頭に入ってくるから、これ程愉快で不愉快な事はないわね。
「どっちなのよ。」
「どっちもよ。でも愉快には違いないわ。」
「さとり様、妬いてるんですか?妬いてるんですか?」
にやにやしながら、既に食べ終わったお燐ちゃんが食器を先に片付けながらそう言った。
視線をさとりに戻すと、真赤な顔でぎりぎりとフォークを握っていた。……ちょっと怖い。
「じょ、冗談ですよぉ?」
そそくさと後ずさりしながら、お燐ちゃんが謝る。
「本当、妬いちゃうわよ?」
少々ふてくされた顔でさとりが言った。
「仲が良いのね。」
そんな二人を見て、思ったことをそのまま口からぽろりと漏らす。
今度はその言葉で、お燐ちゃんとさとりの両方が口から苦笑いにもとれる笑いを漏らした。

「御馳走様でした。」
「ごちそうさま。」
私とさとりも食べ終わり、
「ほいさ。食器はそこに置いておいてくれたらいいよ~。」
「じゃあ、部屋まで戻りましょうか。」
「ええ。ありがとうね。」
一度食器を片付けるお燐ちゃんにお礼を行って、さとりと二人で廊下へと出る。
やっぱり明るいところから暗い所に出たからか、自然とさとりの肩へ手が伸びる。
というよりもこの方が安心できる。

「お燐の方が私より魅力的?」
「そんな不安そうに訊ねられると、私まで不安になっちゃうわよ。」
「だって。」
「……そうね。先ほどの答えにはならないけれど、さとりが羨ましいくらいよ。」
最初案内された客間に入り、扉を閉めてから私はそう返した。
あそこまで慕ってくれている者がいるというのは、私には無かったんだもの。
「でもそうねぇ。言葉として何か表すとしたら、お燐ちゃんと一緒に居るのは楽しい。
さとりと一緒に居るのは嬉しい、って感覚かしらね。」
みてる方を楽しくさせてくれる方と、私の事を理解してくれる方。
ある意味では反則的な二人だとも思うほど。

「それなら、良いでしょう。」
何か納得したのか、さとりが安心したように溜息を吐き出すと、くるりと背を向けてドアへと歩いて行った。
「それでは私はちょっと用事があるので。代わりにお燐が来ますから、ゆっくり休んでいて下さいな。」
そう言い残して、さとりが出て行く。

ベッドに座って少しした頃だろうか、軽快なノックの音と共にお燐ちゃんが部屋に入ってきた。
「へへへ、さとり様久しぶりに張り切ってますよ!」
「何かあったの?」
「秘密ですよぅ~。で、それより。」
ひょい、と彼女がベッドに飛び乗って、正座する。
私も彼女の方を向いて、姿勢を正すと、彼女が口を開いた。
「さとり様、よろしくお願いしますね。」
「また、唐突ね。」
「あの日、向日葵畑までさとり様を連れて行った。少しでも楽しんでもらえたらって思ってね。
その晩は帰ってこなくて心配だったけど、久しぶりに凄い嬉しそうな顔をしてさとり様が帰ってきたの。
こっちが聞かなくても熱心に語ってくれてね。嬉しかったんだ。私も。だから、これからもお願いします。」
ペタン、と頭を下げる彼女。本当、さとりは慕われているのね。
「あの子、あっちではお燐ちゃんの事を凄い楽しそうに話してたわよ?」
先日あった事を思い出しながら、私が返す。
「それに、私としてはこれからもさとりにも、お燐ちゃんにもよろしくお願いしたいところよ。」
「へへ。でも、私にばっかり構っているとさとり様妬いちゃいますよ?
まぁ、分かっていて私もそうなるように返しているんですが。あんな表情見たこと無かったですし。」
確かに私も分かっていてそうしている部分がある。
「さとり様、心は読めるけどそれが原因でちょっと灯台もと暗しな事になってるんですよね。」
「そうね。でもお陰さまで私は助けられたんだし、そんなさとりも好きよ。」
こくり、と彼女が頷く。

「さて。それとはまた別に。長旅でお疲れじゃないですか?」
「長旅というほどでもないけど、ちょっと疲れたのは疲れちゃったわね。」
精神的にも、だけど。案外にさとりとお燐ちゃんの二人の間に立つってのは難しいものね。
まぁどちらかというと、お燐ちゃんも私もさとりで遊んでいるところがあるのは否定できないのだけど。
「マッサージしましょう!ささ、お召し物をお取りになって、うつぶせになって。」
い、いきなり脱げと言われても。まぁ、さとりにはもう見せたから良いのは良いのだけど。
「じゃ、お願いするわ。」
「はい!」
背を向けた私にそう言いながら、お燐ちゃんがベッドの掛け布団をめくっていく。
ちゃんと気遣ってはくれるのか、ちらりと後ろを振り返ると、彼女は向こうを向いてくれていた。
「下着でいいのかしら。」
「ええ。脱げる範囲で結構ですので。」
その言葉を聞きながら、スカートを脱ぐ。
ここの部屋はなんというか、思ったほど寒くない。むしろちょっとあったかいくらいで。
料理を食べた後だからなおさらそう感じるのかもしれないけど。

服を畳んで端の方に置くと、私はめくられた布団の内側へと横たわった。
「良いです?」
未だ向こうを向いたままの彼女にそう聞かれる。
「ええ。お願いするわ。」
「ああ、先にこれを渡しておきますね。」
くるりとこちらを向いて、何かに気づいたのか彼女がひょい、とタオルを取り出して私に手渡した。
「顔の下に敷いておくといいですよ~。」
「お気づかい、どうも。」
そのタオルを頬の下に敷いて、顔を横に倒したまま載せた。
「楽にしてくださいねぇ~」
彼女が私に跨って、体重をかけないように体を支えながら私の肩に手を置いた。
手のひらがとても……柔らかい。そしてなんともいえない弾力がある。何だかこう、ぷにっとした。
普通の手にみえたのだけど、やっぱり違うものなのかしらね。
「あぁ、一応。寝たくなったら遠慮なく寝てくださいな。」
……そこまで自信があるなら楽しみだな。というかもう手の感触だけで楽しみではあるのだけど。

ゆで卵の殻を剥いて中身を取り出したとき、その感触もぷにぷにとしていて気持ちが良いのだけど
それとはまた違った感覚なのよね。もっとこう弾力があるけど、やわらかくて。
しかも自分が押しているんじゃなくて、押しつけられているんだからなぁ。
「痛かったりしたら、言ってくださいねぇ。」
痛いというか、もう頭が段々とぼーっとしてきているんだけど。
羨む程に柔らかい手のひら。本当にこの猫を借りていきたい程に。
あー、駄目だ。まぶたが段々と降りてくる。まぁいいか。寝ても良いって言ってたような気がするし。
お言葉に甘えてしまおう、かな。


「スー……。」
単調で落ち着いた寝息。頬の緊張も解けたような顔で寝ている幽香さんの寝顔を確認して
せわしなく、できるだけ快適に楽しんでもらおうと押していた指をゆっくりと緩める。
どうやら、眠ってくれたようで。
ベッドを揺らさないように体を起こして、幽香さんの上から身をどける。
予めベッドの端の方へやっていた布団を、肌剥き出しのその体へとかけると、
私、お燐は部屋を後にした。



ギィィ、と開いたドアの金具の軋む音が寝ていた私の耳に届き、ゆっくりと目を開ける。
部屋の灯りは消されていたのか、本当に真っ暗で、自分がどこに居たのかすら分からなくなりそうなほどだった。
それでも柔らかいベッドに手をついて体を起こす。……何だか丸一日寝たようなスッキリとした気分。
「おはようございます。」
この完全に真っ暗な部屋とは違い、まだほんの少しだけ明るい廊下の方からさとりの声が聞こえる。
「ん、と。今は朝なの?」
いかんせん、ここでは朝と昼と夜をどう判断するべきかは私にはわからないのだけど。
おはようってことは朝なのかしら。それとも単に目覚めの挨拶かしら。
「まだ夜ですよ。ぐっすり眠れました?夕食が出来たので呼びに来たのですが。」
まだ少し眠たい目を擦り、細めた眼でドアの方を見る。
ぼんやりと見えるさとりの輪郭と、その中でわずかな光をも反射して光るさとりの眼。
笑っているように見える目が私を見ていた。
「ちょっと待ってもらっても良い?服着たいのだけど。」
「ええ。勿論。手伝いましょうか?」
「うーん、大丈夫。」
僅かながら、目もほんの少し慣れてきた。ベッドの端の方にしっかり畳まれていた服を手にとって袖を通す。
ベストまでは、今は着る必要はないか。あったかいし。
スカートも履き直して、身支度を整えると、私はさとりの元へと歩いた。
「肩が軽くなったわ。」
「それは何より。……私も後でやってもらおうかな。」
相変わらず暗い廊下は心もとなく、さとりの肩に手を置いてゆっくりと進む。
む、何だか昼食前よりさとりが疲れているように感じる。
「ええ。ちょっと頑張ってみました。……お燐!そろそろお願い!」
部屋を出て歩きはじめてすぐ、さとりが廊下の先へ向かって叫んだ。
「はーい!」
しばし間があって、廊下の先からお燐ちゃんの声が響く。
一方私はただ肩に手をのせたままキョトンとしている他なかったのだけど。
「あぁ、夕食の都合ですよ。」
うーん、どういうことだろう。
「美味しい状態で食べていただけるのが一番うれしいですからね。」
私の問いに対する答えにも結局疑問符を浮かべる事しかできなかったのだが、
次第に廊下の先から漂ってくる香りでなんとなく理解ができた。
「お蕎麦ね。」
「ええ。流石に先に茹でると調整がききませんから。」
灯りの漏れた、昼食をとった部屋からお燐が出てきて手まねきする。
なんだか招き猫をそのまま形にしたような、そんな構えでちょっと滑稽にも思えたが
待ちきれないのかぶんぶんと体の横から出たり引っ込んだりしている尻尾を見ると
それはそれで可愛くも見えた。

……あら。こんな事考えてたら一言くらい突っ込みを入れられるかと思ったんだけど。
ふと暗い中さとりの方へ視線を向けると、何だか少し不安そうな目で前を見ていた。
私の視線にやっと気付いたのか、ハッとなってこっちを見ると、一言
「すいません、ちょっと考え事していたもので。」
そう答えた。
二人で開いたドアから部屋へ入る。
お燐ちゃんがさとりの様子を見つつ笑いながらドアを閉めて席に着いた。
私達二人もそれぞれ席に座る。
「それでは、あったかいうちに。」
「そういえば、あなた熱いもの大丈夫なの?」
ふと、猫舌という言葉を思い出して、箸を取りながらそうお燐ちゃんに尋ねる。
「熱いのや暑いのには慣れてますからねぇ。」
湯気をたてるお蕎麦をそのまま口の中に消えさせていくお燐ちゃんを見ると、
これはこれで違和感だけれど、美味しいうちに食べられるというのは良い事だ。
私も蕎麦を箸で持って……、あら。
さとりの方をふと見ると、じーっとこちらを見ている。
私と視線が合うと、恥ずかしそうに視線をこちらから離し箸を持って蕎麦を食べ始めた。

何だったんだろう、そう思いながらお蕎麦へと視線を戻したとき、
なんとなくお蕎麦が握っている秘密を掴んだような気がした。
……どことなく一本一本の太さが違う。そしてちょっと逞しいお蕎麦だ。
「さとり様が今日は作ったんですよ~。私も少しは手伝ったんですが。」
なるほど。
一口目を口に運びながら、ちらりとさとりの方を見ると、顔は平静を保ってはいたが
耳だけは真っ赤にしていて、どう見てもそれを気にしているようだった。
また再び、ちらりと視線が合わさる。
「そんなに心配しなくても、美味しいわよ?」
一口目を喉の奥へと飲み込んでからさとりにそう言った。
長い溜息とともに、じーっとこっちを見ていた視線が外れる。
「それなら、良かった。」
「まぁ、確かにか弱そうなほど細いのと、逞しく太いのが混在しているっていうのは
言える事だけど。最初はこんなものよ。これ案外難しいし。」
「関係は太く、疑いは薄く行きたいものですねぇ。」
お燐ちゃんが適当に返事を返した。まあそんなところよね。
さとりも箸を持って、3人でずるずるとお蕎麦を啜る音が薄暗い部屋の中に響く。
傍から見ると貧乏そうな光景なのかもしれないが、内から見ればこれ程までに相手が近いと感じる食事もない。
「ふぅ~。」
相変わらずお燐ちゃんが一番先に食べ終わって、ふらふらと台所の奥の方へ消えていった。
少し程間を置いて私、そしてさとりも蕎麦を食べ終わって箸を置いた。
「美味しかったわ。」
少しだけ背もたれにもたれかかってそう呟くと、さとりがちらり、とお燐ちゃんが消えた方へ視線を向けた。

食卓から離れた先というのは此処からのろうそくの光が届かなくて見えないが、やがて暗闇の中に
お燐ちゃんの目が光って浮かび上がる。
ニコニコした顔でお盆と小さなお皿を持って戻ってきたお燐ちゃんが、それをお蕎麦の横へと並べた。
「ババロアなんて懐かしいわね。」
器の中に視線を落として、思わず呟いた。
ふとさとりを見る。やっぱり視線がさっきと同じようにこっちをじっと見ているという事は、
つまりはそう言う事なんだろう。
「同じくさとり様の手づくりですよ~。」
お燐ちゃんが今度はスプーンを私達の、そして自分の前にならべながらそう付け加えた。
「これなら、見た目で言われたりしませんもの。」
さとりがほっとした様な声を漏らす。まぁ確かに器に移す作業で変なミスしなきゃ、良い訳だしね。
「でも、一番大事なのは気持ちだと思うわ。」
「それは、勿論籠めた……つもり。」
「まあ、それだけ心配するんだもの。それを知っていて籠ってないなんて言う輩が居るのなら、
ちょっと許せたものじゃないわねぇ。」
ババロアをのせたスプーンを銜えたままお燐ちゃんがクスクスと笑う。
私達のやりとりを見て、というよりはさとりを見て笑っていた。
「やっぱりイキイキしてますねぇ。」
「あら、日頃はどうなの?」
「遠い目をしてたり、ぼーっとしてたり。」
相当不健康な生活じゃないんだろうか、それは。
……そうは思ったけれど、さとりが来る前の私の家での生活も大して変わらないか。
案外にこう指摘でもされない限りあんまり自分でも気付かないというのは
やはり少々自分が情けない。

スプーンを口に運べば、プルプルした感触と甘いソースの味が舌の上に広がる。
デザートまで付いてくる贅沢さ。まぁ一番の贅沢はさとりの料理を食べられる事なんだけどね。
じーっとさとりの顔を見ながら、心の中でそう考えていると、
ちらりと視線を合わせたさとりの顔が段々と赤くなっていった。
そこまで変な事を考えていたつもりではないのだけど。

「それじゃ、食べ終わったら食器は置いておいてくれれば片付けますので。」
やっぱり先に食べ終わったお燐ちゃんが、私達のお蕎麦の食器を持って台所の奥の方へと消えながらそう呟く。
……そういえば水が嫌いなのに洗い物とかは大丈夫なんだろうか。
「大丈夫みたいですよ?……なんだかここから先は許せない!って範囲があるみたいですけど。」
私の考えに対してさとりが答えた。ふむ……。
「お燐~?お風呂沸いてる~?」
台所の洗い場、少しここからだと暗くも見えるが、お燐ちゃんが
食器を洗っているところまで聞こえるようにさとりがそう大きい声で言った。
「沸いてますよ~。」
カチャカチャとリズムよく食器が擦れる音をたてながら、お燐ちゃんが答えた。
「お燐も今日は入りなさいよ~?」
さとりの放った言葉の直後に、ガシャン!という食器同士をぶつけたような音が部屋に響いた。
割っちゃった、だろうか。というか、そこまで嫌なのか。私に手伝えるのかしらね。
「大丈夫ですよ。たぶん。あと、割ってはないみたいです。」
小さな声でさとりが答える。
「……絶対ですかぁ?」
明らかに下がったテンションの声が台所から響く。

……あぁ、そういえば私あれ持って来ていたんだっけ。
「お燐ちゃん?一緒に入ってくれたら、またたびあげるわよ?」
またガシャンと食器の擦れる音が響く。というより、今割れた音も聞こえたような気がしないでもない。
「も、物で釣ろうとするなんて卑怯ですよ!」
洗い場から悲鳴が混じったような声が響く。
「あら、それでも入ってくれないの?」
「入る!」
なんだ、思ったより簡単じゃないか。……まぁこういうの本当は良くないんだけどね。
さとりが一度短い溜息をついて、ババロアを食べ終えた私とさとりの器を手に持つと、
ひょい、と台所の流し場まで持って行ってくぃくぃと私の袖を引っ張った。
そのまま引かれるがままに廊下に連れ出される。
「先に行って準備しましょう。入る直前で駄々こねられてはいけないので。」
あそこまで威勢よく答えたのだから、今さらそんな事はないと思うのだけど。
「念には念を入れたくて。」
……今までどんな闘争があったんだろう。
「どちらかというと、またたび被害の方が酷かったんですけどね。」
「え?」
「いえ。何でも。今晩は私一人じゃなくて幽香さんが居ますし。」
「……内容はやっぱり秘密なの?」
「ええ。たぶんすぐわかるとは思いますし。」
二人で客間まで戻ると、さとりがそのまま部屋の隅にあった小さな箪笥まで歩いて行った。
そのままごそごそとタンスを開いて、私とさとりと、そしてお燐ちゃんの服を取り出した。
……客間なのに準備良いのね。
「客間と言って案内はしたんですけど、ここ元々私の部屋なんですよ。実を言えば。
お恥ずかしい話、他の部屋をうまく整理するよりその方が楽だろうと思って。それに、」
とっとこ歩いて来て、私に服を手渡すと続けて言った。
「一人ではこのベッドは広すぎるんです。3人でもちょっと広いくらい。」
そういうことか。お燐ちゃんの服もあったってことは、3人で今夜は寝るのかな。
何だか小さな家族みたいねぇ。私の位置はどこかしら。右?左?それとも、真ん中?
まぁ、どこでも文句は全くないわね。
「私は真ん中がいいですねぇ。」
「それはまた、どうして?」
「あったかいからですよ。」
「そう。ところで、今まで廊下あるいてみて浴室なんて見た覚えがないのだけど?」
「あー。それはですね。単純な見落としですよ。」
さとりが私の横を歩いて部屋のドアを開け、私を廊下に連れ出すと、
今居た部屋とは対面に当たるドアをかちゃりと開けた。
結構明るい少し大きな脱衣場が視界の先に広がる。
「目の前だったのね。」
「だって、この配置の方が便利ですもの。」
まぁ、確かに。シャワー浴びてそのままの気分でベッドに飛びこめるというのは
これ以上に贅沢な気分だからねぇ。勿論体は拭くけど。
「さ、入りましょ?」
手まねきに招かれるまま、脱衣場へと入ると、廊下の奥の方から一緒にお燐ちゃんも駆け付けた。
「早いわね。」
少し息を切らせているお燐ちゃんに私が話しかける。
「ま、またたびは?」
「……後よ、お燐。準備なさい。」
一度溜息を吐くと、しぶしぶといった感じでお燐が服を脱ぎ始めた。
それを見て、私達も服を脱ぐ。といっても私自身は上はワイシャツ一枚にスカートはいているだけだから
上1枚下1枚脱げばもう下着な訳だけど。それすら脱ぎ終えて、
ふと、お燐ちゃんを見れば、案外に服の作りは簡素なのか既に何も着けて無かった。
少し遅れて、さとりが全てを脱ぎ終える。
「どこに服を置けばいいかしら。」
「脱いだ服はあちら、着る服はそこの台の上へ。」
さとりが両手を伸ばして、片方の腕で部屋の隅にあった大きなかごを、
もう片方の腕でバスタオルの山の傍にあった、少し大きい台を指さした。
……何だか私の家とはスケールが違うのね。

3人服を置いて、さとりが浴室への扉を開き先に浴室へと入る。
肌を撫でるようにあったかい少し湿った空気が中から流れ出てくるのを感じながら
私は、少したじろいだお燐ちゃんの背中を押しながら、浴室に入った。
なんというか、硬直してるわね。この子。
「大丈夫?」
そう声をかけるものの、首すじをふと見ればすっかり鳥肌を立てていた。
奥でさとりが小さな椅子を用意して、こちらに手まねきしているので、
そこまでずりずりとお燐ちゃんの背中を押していく。
小さな子なのに、まるで石像みたいに硬くなっちゃって。
……面倒だな。
「よいしょ。」
お燐ちゃんの腰と膝の裏に手を回して、そのまま抱きかかえる。
押していくより数段運びやすい。何だか視界の向こうでさとりが恨めしそうな顔をしているけど。
ふとお燐ちゃんの顔を覗きこめば、私の顔とさとりの顔を交互に見ながら歯をガチガチさせていた。
これは、水が嫌いというより、怖いのかしら。
「どっちもみたいですよ。」
難儀ねぇ。
抱きあげていたお燐ちゃんを椅子の上におろす。相変わらず、私とさとりを交互に見ながら震えていたので
「死ぬんじゃないんだから。」
とりあえずそう声をかけた。いや、その言葉が適切なのかは私にも分からなかったけれど。
さとりが早速洗面器でお湯を掬って、お燐ちゃんにぶちまけた。……なんとも豪快だな。
「いやああああ死ぬうぅぅぅぅ!」
お湯を浴びせられてお燐ちゃんが悲鳴をあげる。
お燐ちゃんがわたわたと手を前に伸ばすものの、そこには何も無い訳だけど。
そのままお燐ちゃんの肩を軽く押さえながら、ポンポンと頭を撫でる。
「我慢して、早く終わらせればその分またたびあげるのが早くなるのよ?」
彼女からしたらある意味外道にしか見えないような発言なのかもしれないけれど、
これ以外に元気づける言葉が特別見当たらない。
「うぐぅ」
その言葉を聞いて少しだけ暴れていた体が収まる。
……というか遠慮なく体にバサバサとさとりが洗面器のお湯をかけるからか、
もう諦めたようにも見えるのだけど。なんだか一気にお燐ちゃんがしょんぼりしてしまった。
「さー洗うわよ!」
一人何故だか凄い元気になったさとりが、石鹸と柔らかそうな布を取りだして泡だて始めた。
それを見てか、お燐ちゃんがめそめそと泣きはじめる。
本当に嫌いなんだな、この子は。
さとりが私にひょいっと泡立てた布を手渡すと、もう一枚同じ布を取り出して泡だて始める。
とりあえず受け取った布で後ろからそっと首すじを拭うとお燐ちゃんの体がぶるぶると震えた。
「お構いなしにやっちゃってください。」
さとりが、泡だてた布を持ってニヤニヤしながら私にそう言った。
……何だか少し気が引けるのだけど、やらないとダメかしら?
さとりが首を縦に振る。やっぱりやらないと駄目か。

さとりが前から、私が後ろからゴシゴシと体を擦る。
何かを悟ったような、もう全てを諦めたような顔で、お燐ちゃんがしくしくと泣きながら
洗われて行くというのは、こうして背中を擦っている身としては、何だか酷い事をしているような気分にすらなる。
何の事はない背中を擦っているだけなんだけど。
にしても、スタイル良いわねこの子。日頃からよく運動でもするのか腰の括れがすごい。
柔らかい肌の下にうっすらと筋肉の存在が分かるわ。……胸もおっきいし。
ふと視線をあげると、さとりのジト目とぶつかって、何事も無かったかのように視線をお燐ちゃんに戻す。
「なんでお燐も幽香さんも大きいのに。」
その先は私の胸は、なのだろうか。
「良いじゃない。きっとまだ大きくなるわよ。」
「それ、気休めだとしてもあまりにも気が遠くなりますよ。」
まぁ、私達の寿命ってそんなもんだしねぇ。
何だかさっきからさとりが執拗にお燐ちゃんの胸を洗っているような気がしないでもない。
「お燐ちゃんの胸、そんなに擦っていると腫れて大きくなっちゃうわよ?」
ふと、そう声をかけるとぴたりとさとりの腕が止まって、下にずるずると降りて行った。
なんというか、正直だな。本当。

上半身を洗い終えて、お燐ちゃんを抱きかかえながら持ち上げて立たせる。
既に泣き終えてはいたものの、痛くグロッキーだ。
視線もどこか遠いところを見ているような感じだし。
太ももを擦りながらちらりとさとりに目配せしても、あっちは意図に解さず真剣に擦ってるし。
えっと、次はどこを擦ればいいのかしら。尻尾?
そう思いながら、洗うために尻尾を片手でつかむと、
「ひぁ!」
そんな声が頭上から響いて、泣きそうな顔で見降ろされた。
何だか無抵抗の女の子を力づくで従わせているようで、これはこれで辛い。
「乱暴しちゃいやぁ」
こんな事まで言われちゃうし。何だか私が泣きたくなってきた。
「そんな事を考えたら負けですよ!ほら、尻尾洗っているだけなんですから。」
さとりが思考に割って入る様につんつんと向こうから私をつつく。
その言葉に急かされて、私も尻尾をくるむ様に包んで、擦っていく。
「ぅー」
神経が過敏なのか、単純に弱いのか。お燐ちゃんが辛そうなうめき声をあげる。
「またたびまでもう少しよー。」
なんとかそうやって元気付けつつも、尻尾を洗い終える。
一方でさとりは股の間やお尻を洗い終えたようで、一息ついていた。
「そうよ。もうちょっとなんだから我慢しなさい。」
元気無さそうに耳がひょこひょこと動く。……ある意味またたびが
心の最後の柱になっているみたい。私ちゃんと持ってきていたわよね?うん。
もう一度お燐ちゃんを椅子に座らせて、膝の裏やふくらはぎを洗っていく。
ぉー、足の裏、手のひらとおなじくらい柔らかいのね。
布ごしに少し揉むと
「うふ……ふふふ」
全く力無い笑い声がお燐ちゃんの口から洩れた。あまり遊ぶもんじゃないか。
そう思いながら指の間を擦っていく。思えば、さとりよりはおとなしいわね。洗っていても。
やっぱりさとりが特別弱いだけなんじゃないかしら。
「まだ幽香さんが残ってるもん!」
「あら、さとりもまだ残っているわよ?今日の分が。」
「うぐっ」
おー悔しそう悔しそう。まぁ確かに洗ってもいいって言った訳だし、
別に良いのだけど、何だか今日はちょっと疲れてしまった。精神的に。

お燐ちゃんの足の裏も洗い終わって、さとりと洗面器を受け取ってお燐ちゃんにかける。
これが最後だと思っているのか、少しずつだがお燐ちゃんの眼に力が戻ってきた。
泡まみれになっていた体がつやっつやの肌をあらわす度にそわそわと足が動きはじめる。
「手提げ袋の中にあるから。」
そう声をかけると、ひょっこりと耳だけがこっちを向いた。
「もういい?もういい?」
さとりに懇願するように、お燐ちゃんがすがりついてさとりに言った。
「せめて1分くらいは湯につかっていきなさいよ……。」
やれやれ、といった様子でさとりがお燐ちゃんの頭をぺちぺち叩きながら言った。
少しむすっとした様子でそのまま立ち上がると、湯船の方へふらふらと歩いて行き、
思ったより素直に湯に身を下ろした。なんだ、大丈夫じゃないか。

そう思いながら洗面器に掬ったお湯で洗っていた布を浸して、
「いーち!」
そんなお燐ちゃんの叫び声が後ろから聞きながら
「にー!」
洗いはじめると
「ろくじゅぅ!」
……いきなり数字が飛んでお燐ちゃんがお湯から走って逃げだした。
猫まっしぐらってあんな感じなんだろうか。
よくもまあ、滑らないなと思いながらもそのたった数秒しかない光景を見送る。
「やれやれだわ。」
一方で後ろを見むきもしないでさとりが言い放ち、すぐに大きい声で叫んだ。
「ちゃんと体拭きなさいよ?!」
「はーい!」
さっきまでとは打って変わったような声で脱衣所からお燐ちゃんの声が聞こえて
どこかほっとする。良く頑張ったな、と思いかけたが良く考えれば体を洗っただけなのよね。
なるほどこれをいつも一人で洗うとなれば大変なんだろう。
「そういうことで。」
「で、結局どうするの?私の体洗うの?」
そうさとりに投げかけながら、さとりの方を見ると
既にもう泡だてきった布を持ってこっちを向いていた。……返答は見たままかな。
「あーでも先に私の体洗っていいです?」
「ええ。それは構わないわよ。」
待っている間に洗面器でお湯をすくって自分の体にかける。
洗っている間冷えていたからか、思ったよりも結構熱かった。
といっても我慢できないほどでもないし、たぶん最初だけなんだろう。
私は浴槽まで歩いて行くと、その縁に腰をかけてさとりの方を見た。
さっきまでのお燐ちゃんを洗う速さとは見違えるほどの速さで体を洗っていく。
まぁ、言いかえればお燐ちゃんを洗うのに相当手こずっていたともいうのだけど。
「昨日の幽香さんもこんな感じだったんじゃないですか?」
洗いながらそうさとりが答える。まぁ確かに、私もさとりを洗ったあとはそんな感じだったわねぇ。
一仕事終えて疲れたからぱっぱとやっちゃった感じがあるわ。

「あいにく、私まだもう一仕事残っているんですよね。」
すっくと立ち上がり、洗う布をどんどん上から下へと下ろして行きながら、さとりが呟く。
やっぱり私を洗うつもりでいるらしい。また椅子に座って、足を拭きはじめたので床においてあった洗面器に
お湯をくんで膝元に置いて彼女が洗い終わるのをじっと待つ。
足の裏やくるぶしまで洗い終わるのを目で確認すると、立ち上がって彼女に尋ねた。
「OK?」
「うん。お願い。」
その声を聞いて、肩口からお湯をかける。
……浴槽がでっかいから、お湯が使い放題なのよね。実質。
次のお湯を、次のお湯をと組みながらそんな事を考える私は案外に貧乏臭いのかもしれない。
「そんな事はないと思うんですけどね。」
お湯をかけられながら、さとりがそう呟く。
「それに大きければ大きいほど、後で手入れが辛いんですから。」
確かになぁ。この浴槽を洗うときたら少し骨が折れそう。
こんなに大きいの洗ったら台無しになるかもしれないけれど、ひと風呂浴びたいものよね。
「ですねぇ。」

泡を落とし切ったさとりが、すっと立ち上がって手まねきする。
「じゃ、座ってもらいましょうか。」
その言葉に洗面器を床に置いて、皆が座っていた椅子に座る。なんだかちょっと温い。
それにここに座っただけで、立っているさとりがちょっと大きく見える。
「それじゃ失礼しますよ。」
再び泡立てた布を一枚用意してぺたりぺたりと近づいてくる。
下から見上げれば笑った唇がより大きく見えて、とても凶悪な笑顔に見えなくもない。
「お願いするわ。」
そのまま後ろに回り込んださとりに一声かけて、少し待つと首の上に布が降りてきた。
「それじゃ、遠慮なく。」
彼女の手が布と肩に乗って、タオルが私の背中を駆け下りる。
お燐ちゃんを洗っていた時のように、彼女が彼女自身を洗っていた時のような力強さみたいなものはなくて、
本当に少しだけ力を入れたような洗い方。まぁ確かにくすぐったいといえばくすぐったいけど、
どちらかといえばこれだと、むずがゆい、よね。
「……というより、そこまで弱点探しに必死なのかしら?」
声に出してそう言うと、彼女の手に入る力が一瞬変わった。どうやら図星のようで。
「まぁ、精々我慢するわ。」
「えぇ、精々見抜いて攻撃するまでですよ。」
あらあら、開きなおっちゃって。まぁ私も昨日は楽しませてもらったから良いんだけどね。
とりあえずはこれで、おあいこでしょう?
ひょい、とさとりが腕を持ち上げて、腋から二の腕、そして腕の先へと滑らせていく。
「むぅ~」
……腋で反応してほしかったのかもしれないが、生憎とそこは弱点ではない。
まだ、普通に我慢できるところだ。両腕を洗い終えて、彼女がぐっとタオルを後ろから前へと回してくる。
すっと、首の横からタオルを前に出されたかと思うと、彼女の胸がぺったりと私の背中に乗った。
「そこまでペッタリじゃないです!」
「ごめん、そういう意味じゃないのよ。」
そう、ペタっと乗った。……いや、大して変わらない気がするけど。過剰反応しすぎよ。
鎖骨の辺りをすりすりと擦られながら、そんな事を思っていると、
ふぅーっと耳に弱い息を吹きかけられた。
ゾクゾクとした感覚が背骨から駆け昇ってくる。
「これには弱いんですね。」
「お、脅かさないでよ。それにそれはくすぐったいのとは違うじゃない!」
「誰もくすぐったい事に限定するなんて、言ってませんよ?」
確かにそれはそうだけど。
「じゃあ、構いませんよね。」
そう言いながら、さとりが私の耳たぶをくわえた。
「ひゃ!」
思わず声を出して慌てて口を押さえる。……お燐ちゃんは無事に脱衣所を出ているんだろうか。
「そうですねぇ、もしかしたら聞こえているかもしれませんねぇ。」
く、くわえたまま喋らないでよっ
さとりが唇を離し、そのまま背中に抱きつく。
「……もう脱衣所には居ないんですよ。だから叫ばなければ大丈夫です。」
そう耳元で囁かれて、顔が熱くなる。
「それは、そう言う事をするっていう前提なの?」
横にあるさとりの顔に、そう尋ねた。
「私の目的は、洗う事ですので。」
ニヤニヤした顔でそう答えられた。どう見ても嘘ですと言わんばかりだ。
背中にすがりついているさとりが、ずっと私の顔を見たまま私の胸へと手をおろす。
恥ずかしくて顔を少しそらすと、今度は反対側からひょいっとさとりが顔を出した。
「恥ずかしいんだけど。」
「何故?」
さとりが胸をすりすりとほとんど力を入れずに擦りながら、そんな事を尋ねる。
何故っていわれても、ねぇ。

姿勢を直す度に背中にくっついたさとりの胸の感触が生々しくて、
それに加えて胸を擦る彼女の手が、ぴりぴりとしたものを背骨へと走らせる。
しばらく、そして昨日もお預けのようなものだったからか、体が変に反応してしまう。
「胸、かたくなってますよ?」
先の部分をすりすりと撫でまわしながら、さとりが耳元で囁く。
「ずっと同じ部分刺激してるからよ!」
その答えに耳もとに息を吹き返され、ぶるぶると体が震える。……駄目だ、何か妙に心臓がどきどきしてきた。
胸を撫でていた手がようやく降りて、お臍を撫でる。
依然、さとりがじっと私の顔を見たままで、何だか恥ずかしい。
視線自体が体を撫でているような気さえするほどだ。
ただ腰を撫でられていくのでさえ、これではもどかしい。

眼を閉じてそんな気持ちを抑えつつ、耐えているとすっと彼女の体が私から離れた。
よ、ようやく終わったか。
「何言っているんですか。足洗わせていただきますよ?」
そう言いながらさとりが私の横に座って、ごしごしと太ももを擦る。
でも結局じっと私の目を見て。なんだか顔で目玉焼きでも焼けるんじゃないだろうか。
「もうちょっと広げてもらっていいですか?」
そう言いながらさとりがじりじりと私の脚を広げさせる。
何だか酷い羞恥心のようなものがわき上がってくる。
「洗っているだけですよ?」
彼女がくすくす笑いながら、目を閉じている私に対してそう言った。
何だかまんまとハメられたような気分だ。……もとより、これが最初から狙いだったんだろうか。
彼女が膝の裏、ふくらはぎへと手を伸ばしながら足の先へと布を滑らせていく。
さとりが、足の裏へと手を伸ばし私の足首部分を支えると、足の裏に布を滑らせた。
……何だか恥ずかしさが勝って、かえってくすぐったくない。
一方でバクバクと私の心拍数が跳ねあがってくる。
「大丈夫です?」
初めてどこか心配そうな声でさとりが尋ねる。
正直、大丈夫じゃないと返したい。
「というか、分かってるならそんなに見ないでよ。」
ちらりと、目をあけてさとりの方を見つつそう言う。彼女は一度くすりと笑って、
「いやぁ、洗っているだけなんですけど。」
駄目だ、完全に手のひらの上で遊ばれている。
「さて。じゃ、立ってもらっていいです?」
彼女がすっと立ちあがってそう声をかける。
「やっぱり、さとりが洗うの?」
「勿論。立ってもらった方が洗いやすいですし。」
その返答にしぶしぶあんまり力が入らない足で立ち上がると、
ぎゅっとさとりが前から抱きついた。
……何でこのタイミングでこう、抱きつくのかしら。
「支えないといけませんし。それとも後ろからしてほしいですか?」
「……良いわよ。このままで。」
私の返答に、抱きついていた腕の一本がはがれ、お尻の方から布と手が差し込まれる。
ぴっとりと私の大事な部分まで届いたさとりの指が布を押しつける。
それだけで腰の骨がどうにかなってしまいそうだ。下唇を少し噛んで、その感覚に耐える。

ほんの少しだけの間を置いて、彼女の指が撫でまわすように動きだす。
布自体はとても柔らかいのだけど、それでも一番敏感な部分へとそれが触れる度、
腰の骨が砕けたような感覚が私の体を襲った。
唇を噛んでいるので声は出さないで居られるものの、それこそ、耐えさせられているという言葉がふさわしい。
私の鼻から、だらしのない息が漏れる。
「気持ちいい?」
私の顔を見上げながら嬉しそうな顔でさとりが尋ねる。
反則だ。これはひどい反則だ。何か答えようにも答えることもできないし。
結局体を支えるために私もさとりの体へと抱きつきながら、そんな感覚に耐える。
とはいえ、だんだんと体に流れる刺激が頭の中を真白に塗り染めていく事に変わりはなくて。

駄目。もう、耐えられない……!
辛うじてまだ動き続けている思考回路がそう告げたときさとりの手が急にふっと止まった。
「前はこれくらいで良いですかね。」
そう言いながら、布を少し後ろまで刺激しないようにずらして彼女が笑った。
「流石にここで幽香さんの全体重、支えて足を滑らせてもいけないので。」
……体の良い言い訳にしか聞こえない。
もうちょっとで……うん。
「とりあえず仕返しはできたので満足ですよ。」
そう言いながら私の体を支えつつ、お尻をすりすりと撫でる。
「洗い流しましょうか。……座れます?」
何だか抱きついている腕放したらそのまま下に落ちそうなんだけど。
それに、息がしづらい。眼もあけていられない。
彼女が私を支えたままよたよたと1歩程動くと、ゆっくりと体を落として行った。

合わせてゆっくりと沈む私のお尻に椅子がぺったりと当たる。
なんとか体を支えながら、お尻の位置をあわせると、彼女の体から腕を離した。

何かさとりが言っているような気がするが、丸で耳の中に入ってこない。
やがて体にお湯をかけられて。泡が流れて行くのと同じくして、体がなんとなく落ちつきを取り戻してきた。
「大丈夫?」
再び、さとりが私に声をかける。
「え、ええ。たぶん。」
とりあえず大きく息をして、心臓の調子を整えてみる。
「洗い終わったけれど、浴槽浸かれそう?」
少しオロオロした口調で、つづけて尋ねてきた。……そこまであとで心配するなら、
最初からもうちょっと、ねぇ。あんなにしておいて。
「いやーそれとこれとはまた話が別ですよ。」
別にされてしまった。
……まぁ、いいか。私もさとりに近い事やっていたんだし。
「浸かって見てから考えるわよ。」
そう言って、さとりの手を借りながら立ち上がって、浴槽へと足を進める。
砕けていた腰がまだ完全に言う事を聞いてくれないのが少々辛いが、歩けないほどでもない。

やっとこさ浴槽を跨ぎ、お湯の中へと体を沈める。
あったかい流れが一気に体の中を走ってくる。何だかちょっとお婆ちゃんになった気分ね。
「まだまだお若いですよ。」
「さとりさんや、肩を貸してくれんかねぇ。」
そう言って、無理矢理さとりの肩の上へ頭をのせる。
この方が、楽だ。そのままさとりにすがりつくように腕を回す。
「結局、幽香さんの家でもこっちの家でもぴったりくっついて入るんですねぇ。」
「原因は誰のせいだったっけ。」
「さぁ、誰だったんでしょうね。」
「……少し休ませてね。」
「ええ。しばらく脱衣所で休みましょうか。水差しも用意してありますし。」
「それは、助かるわ。」


流石に私が体調を崩してはいけないとのことで、結局その後ちょっとしてさとりに脱衣所まで肩を借りて出ることになった。
浴室とは違い、少し涼しくて熱さで回らなくなっていた頭に、だんだんと思考が戻ってくる。
「幽香さん、はい。タオル。」
そう言って、タオルの山から何枚かタオルをとって私に手渡した。
「ん、それ何枚ってよりそれで一枚ですよ。」
……あら、でっかいのね。これ。
広げて見れば、そのまま胸元から足元まですっぽり包めそうなほどの大きさ。
「ほら、これならそれつけたままそのままベッドまで直行できますから。」
「確かにこれなら、身に付けたまま部屋くらいには戻れそうね。」
「で、そのままその気分で体と髪の毛を拭いた後、ベッドに潜るのがまた気持ち良くて。」
「裸で寝るってこと?」
「ええ。服が体を引っ張ったりしないですから、あれはあれで気持ち良いのですよ。」
夏ならまぁ、気分は分かるけど。あぁ、こっちはあっちと環境が違うんだっけ。
確かにこっちの方が、特にこの家はあったかいし。普通にできることなのかもしれない。
貰ったタオルで髪の毛の水分を拭いながら、そんな事を考える。
こっちのタオル、日光がないから乾く時独特の部屋干しの匂いが残るのかなと思ってはいたが、
マッサージの時に貰ったタオルといい、このタオルといい、よく乾いてるし、匂いも無い。
ただ、さとりが持っているタオルの端っこが少々焦げているのがちょっと気になった。

「座りますか?」
そう言いながらすすめられた鏡台のイスに、タオルを体に巻いた後腰を下ろした。
「ふう。」
何だかやっと一息つけたような気分だ。
鏡台に腕を置いて、ちょっと腰休め。うーん、ちょっとだけ冷たい台が気持ちいいわ。
頬も台にひっつけて、顔までのぼっていた熱を下ろしていく。
あんまりやりすぎると風邪をひくかもしれないけれど、気持ちいいのよね。

コポコポと少し後ろの方で音がして、私の前にコップが置かれた。
「とりあえず何か飲んでおいたほうが良いかと。」
「ありがとうね。」
体を起こして、コップの中の水を流しこむ。こういう時の飲み物って何か特別よね。牛乳とか。
「流石にミルクはでませんねぇ。」
「うん……、うん?」
たぶん聞き間違いか何かだろう。駄目だなぁ相当頭疲れてるな私。
「あら、お燐服着て無いのかしら。」
そんな驚いたような声をあげたさとりを見るために振り返ると、さとりが確かに着替えのために持って来ていた
お燐の服を掴んでいた。……脱いだ服はこっちにあるし。あぁ、体にタオル巻いたまま行っちゃったのか。
またたびは逃げないんだけどなぁ。
「あー、そうでしたね。そうですよ。」
彼女が苦笑いともとれる顔で切り出した。
「……そろそろ、部屋戻りますか?お燐がたぶん待ちくたびれていると思うので。」
「そうね。休ませてもらったし、部屋に行きましょうか。」
そう答えて立ち上がった後私が自分の着替えに手を伸ばそうとすると、さとりが手で制した。
「どうしたの?」
「そのー、ですね。着替えを持ったまま部屋に行きましょう。」
さとりが、彼女自身の服とお燐ちゃんの服を抱えたまま、脱衣所のドアを開けて出て行く。
慌てて私も着替えを腕に抱えてタオル一枚のままさとりを追った。
……とはいえ、部屋が目の前であるのでドアの前すぐのところでさとりが難しそうな顔で待ってたのだけど。
難しそうな顔のままのさとりにかわって部屋のドアを開くとふわりとまたたびの匂いが舞った。

もしかして全部使っちゃったんだろうか。
部屋の中を見ようとしても、奥にあるろうそくが一本燈してあっただけで、床の様子などは見えない。
ただ、ベッドの上だけは少しだけ明るく照らされていてそこに真白なタオルで包まれた塊があった。
尻尾が1本、タオルの塊からひょっこりと顔を覗かせて、ふらりふらりと左右に揺れている。寝ているのかしらね。
後ろでかちゃり、とドアが閉まる音がしてさとりも部屋の中に入ってきた。
ベッドの端の方に服を置いたので、私も同じ位置に服をとりあえず置く。
「お燐ちゃん~?」
ベッドの真ん中でタオルにくるまっているそれにそう声をかけながら近づく。
「そのまま寝ちゃうと風邪引いちゃうわよ?」
そう言いながらタオルに手をかけた瞬間、腕を掴まれたのと同時に灯りの位置が逆転した。
最初はろうそくが倒れて落ちたのかと思ったがそうではない。背中が妙にあたたかい。
目の前にはロウソクの光をわずかにしか受けていないのにもかかわらず赤く光るお燐ちゃんの目。
脱衣所で確認した通り、何もその体にはつけていない。そんな体でお燐ちゃんが馬乗りになっていた。
「お燐ちゃん?」
またたびの匂いでいっぱいだった部屋の入口とは違って、
ここからは、というより彼女の体から、そして今寝かせられているベッドから
酷く甘い匂いが漂ってくる。……頭がフラフラしそう。
依然として目は私の目をじっと見据えている。この目はあれと、さっきお風呂場で私を見ていたさとりの目と同じ目だ。
ただ、こっちの方がより攻撃的にも感じるけれど。
ロウソクの光の影響もあってなのだろうが、燃えるようにその光を反射して光る瞳が、
よりそんな雰囲気を増させて私を見る。
「ねぇ、さとり。どういうことなの?」
思わずさとりにそう声をかける。腕を抑え込まれて馬乗りされている私と違って、さとりはベッドの端に頬づえをついて私の方を見ていた。
「そのですね、またたびあげると自制心外れちゃうみたいなんですよね。
お燐もいい年の女の子なのに、ずっと生活の世話ばかりさせているから、反動でその。周りにいる人を巻き込んじゃうんですよ。」
遠い目でどこかを見つめるさとり。……言わないでいたのはそのためか!
「で、まきこむってのは具体的にはどういう?」
なんとなくお燐ちゃんの目で察しはついてはいるのだけど、一応聞いてみた。
「分かっているなら言う必要もないわ。……私はしばらく見ておこうかしらね。」
「……幽香さん?」
初めて、お燐ちゃんが口を開く。その表情は笑顔なのだけど、
どこか威嚇するようでもあり、少々怖い。
ゆっくりと顔が私の顔へとおりてきて、ぴたりと鼻先がくっつく。
見た目にはわからなかったけれど、凄い呼吸が早い。
「お相手してぇ?」
私の腕を押さえていた手とは別の手で、顎を持ち上げられる。
指はこれだけ柔らかいのに、伸びた爪が顎に刺さって痛い。

嫌と言おうと思えば言える。
突き飛ばそうと思えば突き飛ばせる。
形勢を逆転しようと思えば、できる。けれど、この子にも勿論さとりにも、そういう意味での敵意は向けたくない。
そのまま持ち上げられた顎、その唇にお燐の唇が触れる。
顎にほんの少しだけ刺さっている爪が痛くて、口を動かすことも顎を動かすこともためらう。
どこかしっとりとしていて、載せているだけなのにまるでくっついたかと思うほどに
その唇の感触がハッキリと感じられる。
顎を押さえていた指が位置を変え、私の顎にかかっていた爪が外れると、
お燐ちゃんの舌が閉じた私の唇を舐めた。
「あけて。ねぇ、あけて。」
ツンツンと鼻先で唇をつついて、彼女が催促する。さ、さとりが見てるのに。
声は甘いのに、匂いも甘いのに、目だけが冴えたようにしっかりとしていて、それだけが少し怖い。
でも降りかかる息が、その目が、私の唇を気づいたら開かせていた。
こつん、と一度鼻先が当たり、少し擦れてお燐ちゃんの唇が私の唇に覆いかぶさる。
私だって少しは躊躇したこと、舌を相手の口の中へと伸ばすことを彼女は平気でやってのける。
熱く、少し細いのにしっかりとした弾力のある舌先が私の口の中を削る様に走る。
下になっている私の口の中に自然とお燐ちゃんの唾液がおりてくる。……凄い量だ。
でも、今まで味わったことのない……いや、これはまたたびが混ざっているのだろうか。
けれど、どこか体が焼けつきそうな甘さ。まるで私から水分を奪っているんじゃないかと思うほどで。
私の腕におかれていた手が離れ、私の頬に触れる。柔らかく熱いその手のひら。
まるでぴったりと包むように顔を固定されて、舌がより奥へ、より私の中へと伸びてくる。
もう口で息なんてしている余裕すらなく。
彼女の舌が動く度に、私の唾液どころか、いろいろな物まで削り、奪っていく。
せっかく落ち着けた心の安定、心臓の安定。体の安定。
顔を包んでいるだけなのにまるで直に心臓に触れられているんじゃないかというような
キュウキュウとした感覚が胸を襲い、その一方でお臍の下が同じようにキュウキュウとした感触を産んでいる。

この私の胸を押さえるのは何なのか。
さとりに見られている羞恥心か、
さとりに申し訳ないと思いつつも反応する自分の体への罪悪感か、
手玉に取られている私自身へのプレッシャーか。あるいは、その全部か。
私はこの空いている手でどうすればいいのか。

気持ちよくないの?そう問われたとしても、NOと答えたらそれは嘘だもの。
でも、素直にそう答えていいの?それに従っても、いいの?
気持ち良いのだもの。舌が、私の顔に降りかかる彼女の息が、この手のひらの感触が。
ねぇ、さとり。さっきから何で黙っているのよ、気不味いわよ。
「だって見ていて可愛いんだもの。二人が。」
そ、そんなのんきな。耐えられないわよ?……屈服しちゃうわよ?
「そういう姿も可愛いんですもの。……それに、ちょっと嬉しい。」
身捨てられた訳じゃないけれど、その言葉はその言葉でどこか胸に刺さる。
不安定に高く鳴る心臓が一瞬だけ活動を狂わせるほどに、刺さる。
けれど、苦しい思いをし続けるくらいなら、もういっそ、少しでも楽になりたい。
行き場の無かった私の手が、彼女の腰を彼女の肩を抱く。
気がついたら視界が少し歪み、頬に熱いものがおりた。
ぐっと降りかかる彼女の肌の感触、体にタオルを巻いていたとはいえ生々しい感触がどこかほっとさせる。
でも、これだけじゃ。

腕をまわして抱き込んだところで不意に彼女の舌が、唇が離れた。
「我慢できない?我慢したくない?ねぇ、脱いじゃおうよ。」
彼女が体を起こして、私の腕から抜け出して、私を包んでいるタオルの一番端を掴む。
「ね?」
彼女がひらひらとその部分で遊びながら呟く。
私が自分で脱げということか。
「ふふ、私はさとり様じゃないから、何か意志表示してくれないと伝わらないんですよ?」
私の手をそっと掴んで、タオルの端をその手に握らせる。
何だかこのまま脱ぐともう後戻りとか、そういうのができないような気がするけれど、
もう、我慢ができない。
巻いていたタオルを開いて、体を露出させる。脱いですぐ、
部屋に漂っていた空気が肌を撫でるのが異様なくらいに冷たかった。
「良い匂い。」
さっきと同じように彼女が馬乗りになって、ぺたんと私の体に倒れこんでくる。
その体に手を回して、自分の体に密着させる。
ぴったりとくっついて重みを感じさせる熱い彼女の体が、
それだけで不安定になりっぱなしだった私の心を半分安心させた。
彼女の片方の足が私の股の間に割って入り、その隙間をゆっくりと開かせる。
「もっと気持ち良くなりたい?ねぇ、なりたい?」
そう言いながら、小さな膝を腿に擦り合わせてくる。
その動きがもどかしい。もう少し上なら、と思うほどで。

お燐ちゃんの顔が私の前からすっと横にスライドして、私の顔の横に降りた。
それを視線で追って、私が顔を動かすより早く、私の耳を彼女がくわえた。
「ふぁ……!」
自分でなんて声出しているんだとは思ったが、思うように口が動かない。
それ以前に、くわえられた時から腰から背骨へと走る衝撃が、我慢できないでいる体を余計刺激して
尚更うまく自分をコントロールできない。
唇と歯先でこりこりと遊ばれる感触が、その音が頭の奥まで響く。
耳の中に彼女の湿った熱い息がなだれ込み、私の歯がカチカチと音をたてる。
「気持ちいい?」
くわえていた唇を外し、耳の奥へ直接話しかけられる。
もはやちっとも抵抗できないその感覚に歯を震わせながらも、首を一度縦に振った。

彼女の小さな手のひらが、私の股の間に入りこむ。
その柔らかい手のひらが包むように私の大事なところを覆い、そのまままさぐる。
「熱くて、とろとろ。こっちでもっと気持ち良くなりたい?でもね、でもね。」
そのまま彼女の濡れた手が私の手を掴み、彼女の股の間へと潜り込ませる。
「私だって同じ、いいや、もっと。ずっと待ってたんだもの。
お風呂から出てくるのを。一人で。独りで。我慢して。」
そう言って彼女が彼女自身の人差し指と私の人差し指を絡ませてその指ごと彼女の大事なところへと潜り込ませる。
私以上に熱く、私の以上にとろとろとしたものを湧きあがらせて、
そして何より彼女の中で包むように指をくわえる彼女の体が私の心をさっきよりも余計にかきみだした。
私の顔までもが恐ろしい勢いで熱くなっていくのを自分で感じる。
「ねぇ、ご褒美ちょうだい。先に気持ち良く、して?」
耳元で延々と艶々と囁かれる言葉が、どんどんと私の手の、そして体の神経を敏感にさせていく。

彼女の指が、私の指を中に置き去りにしたままふっと離れる。
不安定で落ち着かない私が彼女の方へと顔を向けると既にお燐ちゃんの目の力が少し緩んでいた。
というよりもどこか、さみしそうで。涙を浮かべた目が少し痛々しくて。
……でも、興奮させて。

視線と顔を私が戻すと、彼女が腕を私の肩へと伸び、私にしがみついた。依然顔はこちらを見ているようで。
私も残っている片手を彼女の腰へとまわすと、その腕にするりと尻尾が巻きついた。
あったかいけれど、少し震えている。
私は軽く眼を閉じると、彼女の中へと埋まっていた指を動かした。
彼女の体がぴくりと反応し、閉じきらない口から洩れた息が私の耳の中を撫でまわす。
……なんだかそれだけでも体が負けそうになりそうなのだけど。
彼女の中を、できるだけ彼女自身が苦しまないようにとは思いつつもゆっくりと撫でまわす。
まるで指をくわえられているような熱さと感触、口じゃないけれど、口の中に似た感覚。
きゅっきゅと締め付けてくる指が心地よい。
「もっとぉ……。」
今までで一番弱弱しい声で耳の中で囁かれる。
まきついていた尻尾がもどかしく私の皮膚を撫でる。
その要望にこたえるように、私の指がより抉る様に、でも痛くならないように動く。
体の外に取り残された手のひらと指で私にとっても一番敏感な部分を撫でまわすと、
「いいよぉー」
彼女が嬉しそうな声をあげた。ほんの一瞬、少しだけ心が落ち着く。
彼女の体がもっと、と欲するかのように腰を動かしている私の指先へと押しつけてくる。
でも、そんな彼女の体もヒクヒクと震えていて。
指を少し強めに押しつけて、一気に揉みこむ。
そのとたんに一気に彼女の体が反って、ビクビクと震えた。彼女の息が止まって、
まるで静かな部屋の中に一瞬私の息だけが響いているような感じで。
私が手を止めると、体にあわせて上を向いていたさとりの顔がこっちを向いた。
「止めちゃいやぁ……今が一番気持ちいいのに。」
……大丈夫なんだろうか。でも、そう頼まれたのならそうせざるをえないのだけど。
恐る恐る、といいたいけれどさっきとは比べ物にならない力で掴まれている指を
なんとか動かしてさっきまでと同じ程に揉んでいると、その顔の表情が緩んだ。
「ありがと。」
そのまま私の肩にのせていた腕を一本私の股の間まで滑らせた。
「お礼しなきゃ。」
ぴっとりと、彼女の指が私の割れ目にくっつく。
「指、入れて良い?」
「……うん。」
あれ、私指を入れた経験あったっけ?入れられた経験、あったっけ?
さとりはあの時……。

つぷっという小さな音が体の中に響いて、お燐ちゃんの指が少し私の中へと埋まった。
……やっぱりこれは。これは初めての感触だ。皮膚の下を直接撫でられているような妙な感覚と、
緊張した私の体が彼女の指を押しているのが自分でも分かってしまう。
それに、息が苦しい。指一本なのに肺が圧迫されているみたいだわ。
「あれ、はじめて?」
そんなとろけたままの無邪気な顔で聞かれても。
「指を入れたのは、はじめてね。」
「てっきりもうさとり様にされてたのかと思ってた。」
くりくりと中に入っていた指が回る。
「落ち着いて息すって、……うん。」
そのまま彼女がまた私の耳を食んだ。
「はぁっ」
体中の力が抜けて肺の中にため込んでいた空気が、ゆるゆると口から漏れる。
「少し、楽になった?」
言われてみれば、どことなく。
「そんなに緊張しないで。相手を信用してね。そうしたら負担軽くなるから。」
ぺろり、とお燐ちゃんが私の頬を舐める。
「あと、手、とめちゃ嫌よ?」
ハッとなっていつのまにか止めてしまっていた未だ彼女にささったままの指を少し動かす。
平静だった彼女の顔がまた再び赤色を差した。
「うん。」
満足、という返事なのか、ただ急に動かしたからそういう声が出たのか分からないが、
くすぐったそうな、嬉しそうな声が彼女の口から洩れる。
同時に私の中に埋まったままほとんど動いていなかった彼女の指が少しずつ動き出した。
最初程ではないけれど圧迫した感覚がお腹を襲う。
「幽香さんの中、熱くてすっかり熔けてるのに、それでもぎゅっと握ってくれるよ?」
くりくりと指先だけを折り曲げる彼女に思わず私自身が手を止めそうになる。
「もっと。もっと、激しくして?さっきみたいに。私もそれに答えるから。」
浮いたままだった彼女のてのひらが下着のように私の体にくっつく。
その親指が私の一番敏感な部分に載った。
ただでさえ柔らかい指先にまるで包まれているような妙な感覚ではあったけれど、
先ほどまでの圧迫感が薄れて背筋をぞくりぞくりとしたものが走る。
「私、あんまり刺激に強くない、わよ?」
「私だって、ずっと気持良いままの状態をキープしてるんですよ?私だってもう、そんなに長く耐えれないもん。」
彼女の指がぐりぐりとまるで間の肉を押しつぶすように私の体をその小さな指で挟んだ。
挟まれたお肉が、耐えられないほどの気持ち良さを私の体に流して、思わず身がよじれる。
「私にも、ね?辛かったら、私の体をもっと抱いて。」
彼女が念を押すように耳元で囁く。
力もうまく入らず半分とじたまぶたの向こうにお燐の赤い顔を確認すると、私は指先に力を奮い起した。
同じように、同じように。彼女がしてくれていることを実践するように。

今私が受けているように、彼女の中と外から間のお肉をくりくりと揉みあげる。
酷く湿った息と嬉しそうな彼女の声が私の耳から頭の中をひたすら揺さぶってくる。
思わずぎゅっと腰にまわした手に力を入れて彼女の体を抱き締める。
押しつぶされた私のお腹が、喜んだようにくすぐったい感覚を体中に流してくれる。
「ねぇ、お燐ちゃん。私、もうだめよ?」
視界がくらくらして、指先にも力が入りづらくなってきた。正直に私がそう伝えると、
「揉んで……。連れて行ってあげるから。」
耳元でそう甘く囁かれた。
今思えばあんなにちっちゃく見えた子なのに、よくこんな声が出せるとも思った。

残っている感覚で指先に力を入れて、指先をのせていた彼女にとっても一番敏感な部分を、
ほんのり硬くなっているそこを擦りつぶすように揉みあげた。
彼女の体が私の体の上で、私の腕の中で跳ねあがる。
体が反ったおかげで視界の中に飛び込んできた彼女の表情は、
それだけでどこか私をゾクゾクとさせた。……私にもあれくらい気持ちいいのが今からくるのかな。
一瞬そんな事を考えているうちに、反ったままの姿勢のお燐ちゃんの目が私の目を捕らえて、
私の体を掴んでいた指でお返しと言わんばかりに一番敏感な部分を柔らかい指で擦りあげた。
その指が私の体ごと、私の下半身ごと根こそぎ削っていくかのような感覚が、
背筋を通って体中に溢れる。もう許容なんてできないそんな量が頭の中になだれ込んでくる。
下だったはずの私の体が、お燐ちゃんの体を抱えたままベッドの上で跳ねあがった。
……何だか、真白だ。それに良く私これだけの力残ってたわね。
未だお燐ちゃんを載せたままビクビクと跳ねる自分の体を見て思う。
腕の中のお燐ちゃんも完全にくったりとしてしまって、目だけがぼーっと私の目を見ていた。
お互いの中に取り残されて居たままだった指がするり、と抜け落ちる。

「すっきり。」
未だほっとんどまわらない頭の中に、お燐ちゃんの声が響いた。
この部屋に入って、お燐ちゃんにベッドに押し倒されて最初に聞いた声とはまるで違う、
いつも通りの声。まだ点滅を続けるような視界の向こうに見えるお燐ちゃんの顔も、
食事のときのような嬉しそうな表情に戻っていた。
「私はもう、限界ねぇ。」
というか、体がもう持つ気がしないのだけど。
お燐ちゃんがころころと私の体から転がって離れた。
そのままベッドの端の方へ行って小さく丸まる。
「幽香さん。」
「なあに?」
「ありがと。」
「どういたしまして。」
「さとり様。」
びくっと私の体が跳ねる。……しまった、ちょっと忘れていた。
視線だけなんとか力を振り絞ってさとりへと向けると、ニヤニヤした顔でずっとこちらを見ていた。
けれどその顔も、とても顔が赤い。それこそ林檎みたいに。
「ごめんなさい。」
「いいのよ。お燐はもう寝るの?」
「はい。……満足です。後はお楽しみください。」
丸まったままのお燐ちゃんが答える。
……お楽しみください?お楽しみください?!

お燐ちゃんがベッドの隅の方ですやすやと寝息をたてはじめた一方で、
私の視界の端に居るさとりが真赤な顔で笑いながらぺたりぺたりとベッドの上を近づいてくる。
「気持ちよさそーでしたねぇ。私、まるで空気みたいになっちゃったわ。」
「ご、ごめんなさい。」
「いいのよ。首を突っ込まずに傍観して楽しんでいた私も私だし。」
ロウソクの光が弱まる向こうに、ぎらぎらとさとりの目が光る。
「お燐は楽しそうに爛々とした意識で楽しんでいたし、
幽香さんは私の事を考えながらも最後は負けちゃって、ねぇ。
傍からその様子を心の中で聞いていて、目で見ていて、ゾクゾクしたわ。」
な、なんだか怖い。
「あら、ごめん。でも、ゾクゾクさせられるだけさせられて、私の体だって我慢できないのよ?」
彼女が膝立ちになって、纏っていたタオルを外す。
先ほどとはまた違う咽かえるような甘い匂いがこちらまで漂ってくる。
この部屋、お香とか炊いてないわよね。
「炊いてないわ。強いて言うなら待ちきれない私自身の匂いよ。」
再びぺたりぺたりと四つん這いになって私の方へと近づいてくる。
……お燐が猫ならさとりは何だろう、ご主人以前にもっと獰猛な何かに見え始める。
「美味しそうなご飯が目の前にあって、蕩けた顔と幽香さんが気づいていない幽香さん自身の凄い甘い匂いが、
トッピングされているんですよ?こっちはお腹を空かせてずっと眺めているしかなかったんですから。」
彼女が未だだらしなく開いた私の太ももの上に載った。凄く、熱い。
さとりの指先が、私の腰に触れる。敏感になっている私の肌が異常なくすぐったさを体に感じさせた。
「腰に手を置いただけでピクピク震えちゃって。……ねぇ、一応聞くけど、まだ動ける?」
それは……
「私に聞く前からなんとなく答えが分かっているんじゃない?」
「そう。」
彼女ががっくりと肩を落としてうつむいた。ごめんね。
「じゃあ、しょうがない。」
彼女がすりすりと太ももにお股を擦りつけてくる。ねっちゃりとした熱い感触と、
粘着質で酷く頭の中をかきみだすような音が、その間から洩れる。
「さ、さとり?」
「私だって、我慢できないもん。ずっとお預けだったんだもん。」
少し涙目になった彼女が、顔をあげてそう言った。
「今度は一人占めしてやるぅぅ」
色がついて見えそうなほど甘い吐息を口から漏らしながら、さとりが恨めしそうに言った。

なんとかまだ残っている体力を引きずり出して、手を彼女の方へと伸ばす。
といっても、空中に伸ばした指はもうへろへろになってふらふらと震えているだけだったのだけど。
私の腰を掴んでいた彼女の腕にそっと手を添える。
さとりがふと私の顔を見ると、その腕をとって彼女自身の股の間に持って行って擦りつけはじめた。
「いや、あの、そういう意味で手伸ばしたんじゃないのよ?」
「一人であのままやってもどこか惨めじゃない。」
「それは、確かにそうかもしれないけれど。」
もう指一本まともに動かせないのよ?
「いいもん。恥ずかしそうに悶える頭の中が覗けるから。」
酷い言い方だ。まぁ確かに事実なんだろうけれど。
……おあいこ様って言いたいのかしら。
「後だしじゃんけんにすら参加させてもらえないんだもの。」
よりぬめった感触をふとももと指先に感じて、
ずっと動かしたままの股の間から響いてくる音が段々と小さくくぐもってきた。
「恥ずかしそうにこちらを見ている幽香さんの頭の中を覗きながらするのも悪くないわね。」
「恥ずかしいじゃない。」
「そうなるように言ってるのよ。次はちゃんと相手してくれると嬉しいんだけど。」
「努力するわ。」
「うん。」
彼女の体が私の上でぴくんぴくんと跳ねる。

「……ふぅ。」
顔は、まだ満足したって言ってはないわね。
「当然よ。二人が何度も達している瞬間見ているんだもの。同じくらいは味わいたいものよ?」
わ、私は一回よ?たぶん。
「耳を噛まれて、息を吹きかけられて、凄い気持ち良さそうだったけど?
次の機会から有効に活用させてもらうわ。……さて。」
彼女が股の間から私の指先を引き抜いて拭った。
「やっぱりみじめだから続けるのが辛いわ。」
顔は笑っているものの涙目で再び言い放たれる。……ごめんね。
体をなんとかずらして、彼女の体を力を振り絞って引き寄せる。
「今日は、許してちょうだい。」
そのまま胸元に彼女の頭を抱いた。
思えばお燐ちゃん一回も私の胸をいじったりしてないのよね。
「そうね。じゃあまだここは私の領地だわ。」
ぺったりと彼女の横顔が胸の中に埋まる。一応私の体よ?
「ここまでお燐に奪われたら、私の寝るスペースがないもの。」
「腕枕じゃダメなの?」
「ここがいいもの。」
「そ、そう。」
「おやすみなさい。」
「おやすみ。ねぇ、このまま寝て風邪引かないかしら。」
「大丈夫ですよ。あっちとちがってこっちはそんな温度変化ないですから。」
それなら、大丈夫か。あたたかい湯たんぽもあるし。
「あったかい枕もありますし。」
「……おやすみなさい。」

部屋の中を唯一照らしていたロウソクの光が消えて、部屋の中が全く分からないほど暗くなった。
まぁ、ここに抱いているからさとりがここに居るという事だけは何にもおいてまず分かる事だけど。
やっと休むことができる。そう思いながら私はもう力の入らない瞼を閉じた。






「さとり様ぁ~幽香さぁ~ん、朝食ですよー!」
急にそんな声が室内に響いて、ガタン!とドアの開く音が部屋に響いた。
この声は、お燐ちゃんか。……今どのくらいの時間なんだろう。
眼を少しあけてみても、ただ漠然と暗いだけで時間を推測するものが何もないから、
時間ってのが全く分からないわ。ただ、朝食らしいってことしか。

「起きないと冷めちゃいますよ?」
その声になんとなく体を起こすと、胸の中にあったさとりの頭が私の体から転げ落ちそうになった。
慌てて両手で支えながら、ゆっくりと普通の枕に寝かせる。
「おー、やっぱりさとり様が起きない。」
「早いのね。お燐ちゃん。」
「昨日は申し訳ありません。つい、こう。」
「良いのよ。……良い匂いね。」
「朝はやっぱり焼き魚ですよね。」
お燐ちゃんが部屋に抱えこんできた台車に、3人分の食事がのっている。
これは鮭の焼けた匂い、かしらね。あとお味噌汁かしら。
「いやぁ、その実はですね。あんまり時間が無かったものですから。」
彼女が台車の下の方から、私の服とさとりの服を取り出した。
今思えば昨晩ベッドの隅の方に置いていた服が無くなっている。
「私、どうもお二人の服を枕にしちゃったみたいで。その、よれよれになっちゃったので。」
ベッドの脇まできて渡された服はどこか妙に熱かった。
これは、アイロンをかけたのか。
「ありがとう。」
「……さとり様、そろそろいい加減起きてください。」
お燐ちゃんがさとりの頬をぺちぺちと叩いている。
この二人って一応主従だったような気がするんだけど。
「うぐぅ~」
苦しそうなうめき声をあげつつ、さとりが体を起こした。
「おはよう。」
「おはようございます。」
眼を閉じたまま、さとりが答えた。

お燐ちゃんがさとりに服を手渡して、それを受けてさとりが目を閉じたまま服を着始めた。
それにならって、私もあたたかい服に身を通す。思ったより体冷えるものね。
一方で、お燐ちゃんが台車にのった料理を一人分ずつトレイに載せていく。
「お味噌汁気を付けてくださいね。」
そう言いながら着終わったところでひょい、と渡されたトレイを膝の上に置いて、さとりの着替え終わりを待つ。
まだ意識がイマイチハッキリしていないのか、頭を通すところで詰まったりしている様子を眺めながら待っていると、
やっとさとりが着替えを終えた。ゆっくりとさとりの目が開く。
「眠い。」
随分な、まあ簡単な意思表示だこと。
「でも、気持ち良く寝れたわ。」
お燐の渡したトレイを受け取りながら、さとりがベッドの上で伸びをした。
……味噌汁よく落ちないな。

私達二人に渡し終わったからか、お燐ちゃんもベッドの上にちょこんとすわって、台車から彼女自身のトレイを取った。
「いっただっきまーす。」
相変わらず手をつける早さは変わらず、パチンと手を打ったお燐ちゃんが早速食べ始める。
「元気ねぇ。」
「そりゃ、我が家のムードメーカーですから。」
私達二人も手をあわせて箸をとる。あぁ、やっぱり家で作るよりもこう、良いわね。主菜副菜がある朝食。
おなか減っていたからか、塩味が舌にいい味を出してくれるし。
「お燐ちゃん持って帰りたいくらいねぇ。」
「だめですよー。さとり様が苦しみますから。」
「……私のお持ち帰りはないの?」
「美味しいわね。お魚。」
「そこで逃げられると辛いんだけど。」
「からかうのが楽しいのだもの。」
「ははは……」











--後日--
「とまぁ、そんなわけでお泊りに行ってきたのよ。」
里の花屋で、既に袋に包んで貰った様々な花の種を懐へとしまいつつ、
椅子の上で花瓶を磨いている店主へと言った。
「そっちじゃ花は育ちそうにないなぁ。」
「そうねぇ。造花とか、押し花でもないと、物として保つのは無理でしょうねぇ。」
「ハハハ、行く理由ができるな。」
「他人の事でよくそこまで楽しそうになれるわねぇ。」
「そりゃあな。話している本人が楽しそうだからしょうがないんだ。」
店主が磨いていた花瓶を台の上に置いて、また新しい花瓶を取り出しはじめる。
「なんだかんだ行って、ちゃんとここで種を仕入れたりするところを見ると、また行くんじゃないのかい?」
「まぁ、行くかもしれないわね。」
それが近いうちか遠いのか分からない。
「その前にあちらから来るってか!良い仲な事で。」
確かに来るでしょうね。あの子なら。
「自分の知らない花ってのは、育ててみると勝手が分からないから色々行き詰ったり、どこかで失敗してしまったりする。
けれど、だからこそその花の一面がより見えてきて、育てるのが楽しくなるんだよなぁ。」
「そうね。」
「大切にしなよ?」
「言われなくても。それじゃ、また次の機会に。」
「またのお越しを。」
お燐の一人称をどうするべきか、が一番未だに私には難問だなぁ。
さておき、幽香受けを軽いノリで書いただけなんですが
何だか書いてるとお腹減ってくるんですよね。

誤字、脱字もしも何かしら埋まっていたらご一報頂ければと思います。
読んでいただき有難う御座いました。

--追記--
誤字、修正しました。今度は無いぞと意気込んだのに……。
御報告、どうもありがとうございました。
--6月11日19時追記--
追加で指摘のあった誤字について修正をしました。
うつほ、こいしについては私の中でまだキャラクターが上手く固定できてないので少々不安なのですが、
書けるなら書こうという気持ちはありますので、
遅筆なのも重なり遅れるとは思いますがどうかお許しいただければと思います。
--6月12日21時30分追記--
あか
コメント




1.喉飴削除
あか様きた!
まさかあの続きが読めるなんて、嬉しいです。面白かったし、嫉妬するさとりんが可愛くて仕方なかった。
もしまだ続きがあるのなら、次は満足いくまで攻められる受けさとりんに期待。
あと誤字報告です。
>>「でも、気持ち良く練れたわ。」
おそらく『寝れた』の誤字かと。

それでは、良い作品をありがとうございました。これからも頑張って下さい。
2.名前が無い程度の能力削除
うはww砂糖吐いたwwwGJ

・・・所でうにゅほどこ?
3.名前が無い程度の能力削除
ヤキモチ焼くさとりん可愛すぎる><

もう2828が止まらないwwwwww
4.名前が無い程度の能力削除
楽しく読ませていただきました。
幽香さんすばらし~

・・・こいしちゃんは?

えぇえぇ、もちろんわかってます。

正座をしてればよいのですね?
5.名前が無い程度の能力削除
GJ!GJ!
6.名前が無い程度の能力削除
幽香とさとりのカップリングがストライクしました・・

かわいいよさとりんかわいいよ・・

後、誤字報告です。

>何だか抱きついている腕話したらそのまま下に落ちそうなんだけど。

「話したら」ではなく「放したら」ではないでしょうか。

次回も楽しみにしてますw
7.名前が無い程度の能力削除
続ききたぁッ!これでかつる!
この異色のコンビの話、期待していますw
8.名前が無い程度の能力削除
幽香かわゆいよ幽香
ところでうつほとこいしが居ない者扱いなのはかなしす
9.名前が無い程度の能力削除
あかさんの幽香、好きだぁw
面白かったです。ご馳走様でした。
10.名前が無い程度の能力削除
あまあまーいいですな
みんな可愛いですぅ
ちなみに嬉しいときに尻尾振るのは犬であって、猫が尻尾振るのはイライラしてるときですよ